(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440102
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】レーザ駆動ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 65/04 20060101AFI20181210BHJP
H01J 9/385 20060101ALI20181210BHJP
H01J 61/36 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
H01J65/04 Z
H01J9/385 B
H01J61/36 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-176110(P2016-176110)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-41674(P2018-41674A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年7月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】朝山 淳哉
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/175760(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/00−65/08
61/36
9/385
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ガスが封入され、レーザ光を集光入射してプラズマを生成させるレーザ駆動ランプであって、
前記レーザ駆動ランプは、
凹面反射面が形成された胴体部と、当該胴体部に金属製の窓取付け筒体を介して取り付けられた、共に透光性の結晶材からなる光入射窓及び光出射窓とからなり、
前記胴体部の前記凹面反射面の中心には光軸方向にレーザ光通過孔が形成されてなり、
前記胴体部、前記光入射窓および前記光出射窓により密閉空間を形成し、該密閉空間内に前記発光ガスが封入されてなるとともに、
前記窓取付け筒体には、前記密閉空間内に連通して、前記密閉空間内を真空引きし、前記発光ガスを封入するための、端部が封止された排気管が取り付けられている、
ことを特徴とするレーザ駆動ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ駆動ランプに関するものであり、特に、ランプ本体と反射鏡が一体となったレーザ駆動ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体、液晶基板およびカラーフィルタ等の被処理物の製造工程においては、より出力の大きな紫外線光源が求められている。そしてこのような紫外線光源として、従来の高圧放電ランプに代えて、レーザにより放電空間にエネルギーを投入し、発光ガスを励起して紫外線放射を得る技術が提案されている。特開2010−170112号公報(特許文献1)がその一例である。
【0003】
特許文献1に開示された従来技術では、
図5に示すように、プラズマ発生容器20が、石英ガラス製の発光部21と封止部22とからなり、発光部21には発光物質として、例えば、水銀とキセノンが封入されている。
この例では、プラズマ発生容器20は、無電極プラズマ発生容器である。楕円反射鏡30の一方の焦点F1にプラズマ発生容器20が配置される。一方、楕円反射鏡30の外部には、レーザ光発生器40が設けられ、レーザ光発生器40から、例えば、パルスレーザ又はCW(Continuous Wave)レーザからなるレーザ光がプラズマ発生容器20に導入される。
レーザ光発生器40から出射したレーザ光は、平面鏡50の窓部51を介して導入され、この窓部51とプラズマ発生容器20との間に配置された集光レンズ60によって集光されてプラズマ発生容器20に照射される。レーザ光を集光することにより、集光点F1でエネルギー密度を高めることができ、発光物質を励起させ、放射光(紫外光)を発生させることができる。放射光は楕円反射鏡30で反射され、被照射物側に反射する。
【0004】
このような従来のレーザ駆動ランプでは、プラズマ容器の材料として石英ガラスが使用されているが、プラズマからの高出力のUV光及びVUV光の照射を受け、プラズマ容器には紫外線ひずみが生じ易いという問題がある。
こうした紫外線ひずみが蓄積するとやがてガラス表面にクラックが入り、そこが起点となって、ランプが破損する危惧がある。
これを回避すべく、プラズマ発生容器として水晶、サファイアなどの結晶材を使用すれば紫外線ひずみは低減できるが、結晶材で円筒形状、あるいは球状の容器を成型することは、製造上、極めて困難であって、現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−170112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、発光ガスが封入され、レーザ光を集光入射してプラズマを生成させるレーザ駆動ランプにおいて、プラズマからの高出力のUV光及びVUV光の照射を受けても、プラズマ容器に紫外線ひずみが生じることがなく、しかも、入射レーザ光の立体角を大きくとれて、高密度のプラズマを発生させることのできる構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係わるレーザ駆動ランプは、凹面反射面が形成された胴体部と、当該胴体部に窓取付け筒体を介して取り付けられた光入射窓及び光出射窓とからなり、前記胴体部、前記光出射窓および前記光入射窓により密閉空間を形成し、該密閉空間内に前記発光ガスが封入されてなり、前記密閉空間内に連通する排気管が、前記胴体部または前記窓取付け筒体に取り付けられていることを特徴とする。
また、前記窓取付け筒体は金属製であって、当該窓取付け筒体に前記排気管が取付けられていることを特徴とする。
また、前記胴体部はセラミックス製であって、当該胴体部に前記排気管が取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ駆動ランプを胴体部とその前後面の光出射窓と光入射窓とにより構成し、これらによって密閉空間を形成したので、胴体部の構成材料として石英ガラス以外の材料、例えば、セラミックスや金属等を使用でき、また、光入射窓や光出射窓に透光性の結晶材を使用できるので、プラズマからの高出力のUV光及びVUV光の照射を受けても、紫外線ひずみが生じることがなく、より高出力で長寿命のレーザ駆動ランプを実現することができる。
また、前記密閉空間内に連通する排気管を、前記胴体部または、該胴体部に前記光入射窓および前記光出射窓を取付ける窓取付け筒体に、取付けたことにより、前記光入射窓から入射するレーザ光が排気管に遮蔽されることがなく、その立体角を大きく取れ、プラズマに投入されるエネルギー密度を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明の実施例が示されていて、レーザ駆動ランプ1は、柱状の胴体部2と、その前後面に設けられた光出射窓3と、光入射窓4とからなる。この胴体部2は、多結晶アルミナ(Al
2O
3)などのセラミックス材料からなる。
そして、この胴体部2の前面側には凹面反射面5が形成されるとともに、その中心にはこれを光軸方向に貫通するレーザ光通過孔6が穿設されている。このレーザ光通過孔6は、その後端側、即ち、入射側が面取りされてテーパー部6aが形成されている。このテーパー6aは、集光されたレーザ光が光入射窓4を経て導入されてレーザ光通過孔6に導かれるときに、このレーザ光通過孔6の入射側で蹴られて遮断されることを防止するものである。
前記凹面反射面5は、放物線形状や楕円形状によって構成され、この実施例では放物線形状の反射面として記載されている。この凹面反射面5は、胴体部2の凹面部にアルミニウムなどが蒸着された金属蒸着膜や、あるいは、誘電体多層膜によって形成されている。
【0011】
前記凹面反射面5の前方に設けられる光出射窓3は紫外光透過性であり、後方の光入射窓4はレーザ光透過性であって、ともに水晶やサファイアなどの結晶材からなる。そして、それぞれの外周面は、例えば、モリブデンおよびマンガンの混合物からなる金属によって被覆されてメタライズ加工されている。
また、胴体部2の外周面の前後端部にも、前記光出射窓3や光入射窓4と同様にメタライズ加工が施されている。
そして、外周面がメタライズされた光出射窓3および光入射窓4は、それぞれ金属製の弾性的なリング部材10、12と銀ロウなどのロウ付けにより接合され、一方、胴体部2の外周面のメタライズされた前後端部にはそれぞれ金属製の窓取付け筒体11、13がロウ付けにより接合されている。そして、前記リング部材10、12と窓取付け筒体11、13とが、TIG溶接やレーザ溶接などにより溶接接合されている。
【0012】
このようにして組み立てられた胴体部2と、光出射窓3および光入射窓4とによってプラズマ容器が構成され、その内部には密閉空間Sが形成され、該密閉空間S内には発光ガスとしてキセノンガス、クリプトンガス、アルゴンガス等の希ガスや水銀ガスなどが所望の発光波長に合わせて封入されている。
【0013】
そして、光入射窓4の窓取付け筒体13には、排気管15がロウ付けして取り付けられていて、密閉空間Sと連通している。この排気管15を介して密閉空間Sを真空引きした後に、前記発光ガスを封入し、その後に排気管15の端部15aが圧接切断されて封止される。
【0014】
本発明のレーザ駆動ランプ1には、図示しないレーザ光発生器からのレーザ光Lが集光レンズ14によって集光されて光入射窓4を介して導入される。このとき、レーザ光Lの集光点は、前記凹面反射面5の焦点位置Fにある。レーザ光Lによって焦点位置Fに発生するプラズマによって発光ガスが励起されて紫外光(励起光)ELを発光し、この紫外光ELは凹面反射面5によって反射されて、光出射窓3を介して前方に出射されるものである。
【0015】
図2には他の実施例が示されていて、この例では、排気管15が光出射窓3の窓取付け筒体11に取り付けられている。その他の構成は、前記
図1の実施例と同様である。
【0016】
図3には更に他の実施例が示されていて、この例では、排気管15が胴体部2に取り付けられていて、胴体部2には排気管15を密閉空間S内に連通するための連通孔16が形成されている。なお、排気管15の取り付けに際しては、胴体部2の所定の取付け領域をメタライズ加工し、ここに排気管15をロウ付けにより取り付けることができる。その他の構成は、前記
図1の実施例と同様である。
【0017】
以上のように、密閉空間Sを真空引きし、発光ガスを封入するための排気管15が、胴体部2または窓取付け筒体11、13に取り付けられているので、入射窓4から入射するレーザ光Lが、この排気管15によって遮蔽されず、該排気管15の制約を受けることなく、入射立体角を最大限に大きく取れる。そのため、プラズマに投入されるエネルギー密度を高くすることができるものである。
【0018】
なお、上記実施例においては、出射窓3および入射窓4は、いずれも弾性的なリング部材10、12を介して窓取付け筒体11、13に取り付けるものが示されているが、窓取付け枠体を介して取り付けるものであってもよい。
その一例が、
図4に示されていて、入射窓4は、金属製の窓取付け枠体17にロウ付けにより接合されていて、この金属製窓取付け枠体17が、窓取付け筒体13にTIG溶接やレーザ溶接などにより溶接接合される。
このような窓の取り付けは、出射窓3側においても同様の構造とすることができる。
ただ、このいずれの場合も、入射窓4側では、窓取付け枠体17は、入射するレーザ光Lの最大の入射立体角を確保できる範囲の大きさであること、また、出射窓3側では、出射される紫外光(励起光)ELの有効出射範囲を確保できる範囲の大きさであることが必要であることは当然のことである。
【0019】
以上説明したように、本発明のレーザ駆動光源は、凹面反射面が形成された胴体部と、当該胴体部に窓取付け筒体を介して取り付けられた光入射窓及び光出射窓とからなり、前記胴体部、前記光出射窓および前記光入射窓により密閉空間を形成し、該密閉空間内に前記発光ガスが封入されているので、プラズマからの高出力のUV光及びVUV光の照射を受けても、プラズマ容器に紫外線ひずみが生じることのないという効果を奏するものである。
また、密閉空間内を真空排気し、発光ガスを封入する排気管を、レーザ光の入射位置とは別の位置に設けることで、レーザ光の入射立体角を最大限に大きく取れて、高密度のプラズマを発生することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 レーザ駆動ランプ
2 胴体部
3 光出射窓
4 光入射窓
5 凹面反射面
6 レーザ光通過孔
6a テーパー部
10 リング部材
11 窓取付け筒体
12 リング部材
13 窓取付け筒体
14 集光レンズ
15 排気管
15a 圧接端部
16 連通孔
17 窓取付け枠体
F 焦点
S 密閉空間
L レーザ光
EL 紫外光(励起光)