特許第6440106号(P6440106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440106
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ポータブルトイレ
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/04 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   A47K11/04
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-6266(P2014-6266)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-134040(P2015-134040A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 誠
(72)【発明者】
【氏名】村上 仁
(72)【発明者】
【氏名】寺島 正之
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−024242(JP,A)
【文献】 意匠登録第1208976(JP,S)
【文献】 特開2000−271040(JP,A)
【文献】 特開2002−039125(JP,A)
【文献】 特開2002−330893(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0219529(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便槽および便座を支持する外郭と、
前記外郭に形成された中空の挿入部に挿入され、前記挿入部に挿入される長さに応じて前記便座の高さを変化させる複数の脚と
前記脚の端部と一体化し、前記脚よりも太い足と、
を備え、
前記足の底面の形状は長手方向を有する楕円形状であり、
前記複数の脚は、ポータブルトイレの前後方向において前側に設けられる前脚、および、前記前脚よりも後側に設けられる後脚を含み、
前記挿入部の高さ方向に並べられた複数の凹、または、少なくとも1つの凸が前記挿入部の内面に形成され、
前記挿入部の凹に嵌め込まれる少なくとも1つの凸、または、前記脚の高さ方向に並べられて前記挿入部の凸が嵌め込まれる複数の凹が前記脚の外面に形成され、
前記挿入部に挿入された前記脚が前記挿入部に対して回転することにより、前記挿入部の凹または凸と前記脚の凸または凹が互いに嵌め合わせられた状態である固定状態と、それら凹および凸が嵌め合わせられていない状態である調整状態とが切り替えられ、
前記調整状態において前記脚の高さ調節が可能であり、
前記固定状態における前記足の向きを所定の角度に調節することが可能であり、
前記脚の前記足の底面の中心が前記脚の高さ方向の中心線に対して偏心しており、
前記前脚の前記足の底面の中心は前記前脚の高さ方向の中心線に対して後方に偏心し、
前記後脚の前記足の底面の中心は前記後脚の高さ方向の中心線に対して前方に偏心し、
前記前脚の前記足の底面の中心および前記後脚の前記足の底面の中心が前記ポータブルトイレの前後方向の中心側に偏心している状態とすることにより、前記外郭に作用する荷重の方向が変化しても前記足が傾斜しにくくなることを特徴とする
ポータブルトイレ。
【請求項2】
前記挿入部および前記脚が、前記ポータブルトイレの前後方向と前記底面の長手方向との関係が互いに異なる複数の前記固定状態を形成し得る
請求項1に記載のポータブルトイレ。
【請求項3】
前記複数の固定状態の1つによれば、前記底面の長手方向が、前記ポータブルトイレの前後方向と実質的に一致する
請求項2に記載のポータブルトイレ。
【請求項4】
前記複数の脚のうちの前方の2本に関する前記複数の固定状態の1つによれば、前記底面の長手方向が、前記ポータブルトイレの前方に向かうにつれて前記ポータブルトイレの幅方向の外方に向かうように前記ポータブルトイレの前後方向に対して傾斜する
請求項2に記載のポータブルトイレ。
【請求項5】
前記複数の脚のうちの後方の2本に関する前記複数の固定状態の1つによれば、前記底面の長手方向が、前記ポータブルトイレの後方に向かうにつれて前記ポータブルトイレの幅方向の外方に向かうように前記ポータブルトイレの前後方向に対して傾斜する
請求項2または4に記載のポータブルトイレ。
【請求項6】
前記ポータブルトイレは、前記挿入部および前記脚の両方に挿入されて、前記挿入部に対する前記脚の回転を規制するピンをさらに備え、
前記挿入部および前記脚に挿入された前記ピンのヘッドが前記外郭または前記便槽の底面の下方に存在する空間に位置するように、前記ピンを挿入するための穴が前記挿入部および前記脚に形成されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポータブルトイレ。
【請求項7】
前記ポータブルトイレは、前記足の底面に取り付けられて、前記外郭の姿勢を前傾姿勢または後傾姿勢に保持するためのスペーサーをさらに備える
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポータブルトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護等に用いられるポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポータブルトイレは、使用者の体型に合わせて便座の高さを調整できるように、脚の長さを変化させる構造を有している。
特許文献1は、このようなポータブルトイレの一例を開示している。このポータブルトイレは、便槽および便座を支持する外郭、外郭に形成された中空の挿入部、挿入部に挿入されて外郭を支持する複数の脚、および、脚と個別に形成されて脚の端部に取り付けられる足を備える。脚は、複数の部品により構成され、上部支柱、ベース支柱、ロック部材、および、補助脚部を備える。このポータブルトイレによれば、上部支柱をベース支柱に対して上方にスライドさせ、ロック部材により上部支柱とベース支柱とを互いに固定することにより、便座の位置を高くすることができる。また、足をベース支柱の底に嵌め込むことにより、便座の位置をさらに高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−240166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ポータブルトイレによれば、便座の高さを調整するため、複数の部品により構成された脚を外郭から取り外し、部品の組み合わせを変更して脚の長さを調整し、または、上部支柱とベース支柱との関係を変化させて脚の長さを調整し、その後に脚を再び挿入部に挿入する必要がある。このため、作業者に煩わしさを感じさせるおそれがある。
【0005】
また、便座の高さが高くなるにつれてポータブルトイレの重心が高くなるため、使用者が便座に着座するときなどのように便座にかかる荷重の方向が変化するときに、ポータブルトイレの姿勢が不安定になりやすい。しかし、特許文献1のポータブルトイレは、そのようなポータブルトイレの姿勢について特に考慮していない。
【0006】
本発明の目的は、便座の高さを調整する作業にかかる手間が小さく、かつ、姿勢が不安定になりにくいポータブルトイレを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕本ポータブルトイレの独立した一形態によれば、便槽および便座を支持する外郭と、前記外郭に形成された中空の挿入部に挿入され、前記挿入部に挿入される長さに応じて前記便座の高さを変化させる複数の脚と、前記脚の端部と一体化し、前記脚よりも太い足と、を備え、前記足の底面の形状は長手方向を有する楕円形状であり、前記複数の脚は、ポータブルトイレの前後方向において前側に設けられる前脚、および、前記前脚よりも後側に設けられる後脚を含み、前記挿入部の高さ方向に並べられた複数の凹、または、少なくとも1つの凸が前記挿入部の内面に形成され、前記挿入部の凹に嵌め込まれる少なくとも1つの凸、または、前記脚の高さ方向に並べられて前記挿入部の凸が嵌め込まれる複数の凹が前記脚の外面に形成され、前記挿入部に挿入された前記脚が前記挿入部に対して回転することにより、前記挿入部の凹または凸と前記脚の凸または凹が互いに嵌め合わせられた状態である固定状態と、それら凹および凸が嵌め合わせられていない状態である調整状態とが切り替えられ、前記調整状態において前記脚の高さ調節が可能であり、前記固定状態における前記足の向きを所定の角度に調節することが可能であり、前記脚の前記足の底面の中心が前記脚の高さ方向の中心線に対して偏心しており、前記前脚の前記足の底面の中心は前記前脚の高さ方向の中心線に対して後方に偏心し、前記後脚の前記足の底面の中心は前記後脚の高さ方向の中心線に対して前方に偏心し、前記前脚の前記足の底面の中心および前記後脚の前記足の底面の中心が前記ポータブルトイレの前後方向の中心側に偏心している状態とすることにより、前記外郭に作用する荷重の方向が変化しても前記足が傾斜しにくくなる。
【0010】
〔2〕前記ポータブルトイレに従属する一形態によれば、前記挿入部および前記脚が、前記ポータブルトイレの前後方向と前記底面の長手方向との関係が互いに異なる複数の前記固定状態を形成し得る。
【0011】
〔3〕前記ポータブルトイレに従属する一形態によれば、前記複数の固定状態の1つによれば、前記底面の長手方向が、前記ポータブルトイレの前後方向と実質的に一致する。
〔4〕前記ポータブルトイレに従属する一形態によれば、前記複数の脚のうちの前方の2本に関する前記複数の固定状態の1つによれば、前記底面の長手方向が、前記ポータブルトイレの前方に向かうにつれて前記ポータブルトイレの幅方向の外方に向かうように前記ポータブルトイレの前後方向に対して傾斜する。
【0012】
〔5〕前記ポータブルトイレに従属する一形態によれば、前記複数の脚のうちの後方の2本に関する前記複数の固定状態の1つによれば、前記底面の長手方向が、前記ポータブルトイレの後方に向かうにつれて前記ポータブルトイレの幅方向の外方に向かうように前記ポータブルトイレの前後方向に対して傾斜する。
【0013】
〔6〕前記ポータブルトイレに従属する一形態によれば、前記ポータブルトイレは、前記挿入部および前記脚の両方に挿入されて、前記挿入部に対する前記脚の回転を規制するピンをさらに備え、前記挿入部および前記脚に挿入された前記ピンのヘッドが前記外郭または前記便槽の底面の下方に存在する空間に位置するように、前記ピンを挿入するための穴が前記挿入部および前記脚に形成されている。
【0014】
〔7〕前記ポータブルトイレに従属する一形態によれば、前記ポータブルトイレは、前記足の底面に取り付けられて、前記外郭の姿勢を前傾姿勢または後傾姿勢に保持するためのスペーサーをさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本ポータブルトイレによれば、便座の高さを調整する作業にかかる手間が小さく、かつ、姿勢が不安定になりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態のポータブルトイレの斜視図。
図2】実施形態のポータブルトイレの底面図。
図3図1のD3−D3線に沿う外郭の断面構造を示す断面図。
図4】(a)実施形態の前脚の側面図。(b)後脚の側面図。
図5】実施形態の前脚を底面側から視た斜視図。
図6】実施形態の挿入部および前脚を底面側から視た斜視図。
図7図1のD7−D7線に沿う断面構造を示す断面図。
図8】実施形態のポータブルトイレの側面図。
図9】スペーサーが取り付けられた実施形態のポータブルトイレの側面図。
図10】実施形態のポータブルトイレの側面図。
図11】実施形態のポータブルトイレの底面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図3を参照して、ポータブルトイレ1の構成について説明する。
図1に示されるように、ポータブルトイレ1は、便器10、脚30、キャスター70、および、ピン80を有する。
【0018】
便器10は、便槽11、便蓋12、背もたれ13、肘掛14、および、外郭20を有する。便槽11は、外郭20に嵌め込まれている。
便蓋12は、外郭20の上面かつ後端部に取り付けられている。なお、便槽11と便蓋12との間には、図示しない便座が取り付けられている。便蓋12は、便槽11の上面に形成されている穴と便座の上面に形成されている穴とを覆うことができるように、外郭20に回転可能に取り付けられている。背もたれ13は、外郭20の上面かつ後端部に取り付けられている。肘掛14は、外郭20の幅方向の両端部に取り付けられている。すなわち、外郭20は、便槽11および便座を支持している。
【0019】
図2に示されるように、外郭20は、外郭20の下面において下方に突出する4つの挿入部21を有する。外郭20の外周は四角形状を有し、挿入部21は、外郭20のうちの四隅に形成されている。挿入部21は、内部に中空を有する。挿入部21には、脚30が挿入されている。また、挿入部21の付近には、挿入部21に取り付けられる脚30の種類を示す目印24(図6参照)が備えられている。外郭20は、例えば樹脂材料により形成されている。
【0020】
図3に示されるように、挿入部21の内面21Aの内部には、周方向に延びる3つの凸22が形成されている。3つの凸22は、周方向に120度ごとに並べて配置されている。すなわち、凸22は、挿入部21の高さ方向において1つだけ並べられている。右側の挿入部21および左側の挿入部21は、3つの凸22が互いに左右対称となるように形成されている。また、挿入部21には、外郭20の中心20C側にピン80を挿入するための穴23が形成されている。
【0021】
図2に示されるように、4つの脚30は、2つの第1脚30A、および、2つの第2脚30Bを有している。また、脚30には、第1スペーサー91および第2スペーサー92(図9参照)を取り付けることができる。第1脚30Aは、右側かつ後側の挿入部21と、左側かつ前側の挿入部21に取り付けられている。第2脚30Bは、右側かつ前側の挿入部21と、左側かつ前側の挿入部21に取り付けられている。脚30は、挿入部21に挿入される長さに応じて便座の高さを変化させる。脚30は、例えば樹脂材料により形成されている。
【0022】
図2図4、および、図5を参照して、脚30の構造について説明する。
図4に示されるように、脚30は、脚部分40、足50、および、足底60を有している。
【0023】
脚部分40は、円柱形状を有する。脚部分40の外面40Aは、周方向において3つの突出部42が形成されている。隣り合う突出部42の間には縦溝41が形成されている。縦溝41の周方向の大きさは、凸22の周方向の大きさよりも大きい。
【0024】
3つの突出部42は、120度ごとに形成されている。突出部42は、脚30の長手方向に並ぶ複数の凹43が形成されている。凹43は、脚30の周方向に延びている。凹43は、周方向の一方の端部43Aが閉鎖されており、他方の端部43Bが開放されている。
【0025】
図4(a)および図4(b)に示されるように、第1脚30Aと第2脚30Bとは、端部43Aと端部43Bとの関係が反対になっている。脚部分40は、第1脚30Aおよび第2脚30Bのいずれであるかを示す目印44を有している。
【0026】
図5に示されるように、足50は、脚部分40の端部において脚部分40と一体的に形成されている。足50は、長手方向を有し、平面視において楕円形状と同一または類似した形状である。足50は、一対の短辺51と長辺52とを有する。足50は、脚部分40よりも太い。足50の底面は開放されている。脚部分40の高さ方向の中心線40Cと、足50の底面53の中心50Cとはずれている。すなわち、中心50Cは、中心線40Cに対して偏心している。
【0027】
足50の下方には、足底60を取り付けるための取り付け構造54が形成されている。足50の底面53の外周には、溝55が形成されている。足50の一方の短辺51側の端部には、キャスター70を取り付けるための差し込み口56が形成されている。
【0028】
足底60は、足50の底面53と対応する楕円形状と同一または類似した形状である。足底60は、例えばゴム材料により形成されている。足底60は、上面61の上方に取り付け構造62を有し、上面61の上方の外周に凸部63を有している。取り付け構造62は、取り付け構造54に嵌め込まれる。凸部63は、溝55に嵌め込まれる。図2に示されるように、足底60の裏面64には、足底60が前足底60Aおよび後足底60Bのいずれかを示す目印65が備えられている。
【0029】
図6および図7を参照して脚30と挿入部21との取り付け操作について説明する。
凸22および凹43は、周方向において3つ形成されている。このため、挿入部21および脚30は、嵌め込まれる凸22と凹43との関係に応じて、ポータブルトイレ1の前後方向と底面53の長手方向との関係が互いに異なる3つの位置で固定した固定状態を形成することができる。
【0030】
作業者は、1つの脚30の先端を、この脚30の目印44と一致する目印24の付近、かつ、目印65が示す前側または後側の挿入部21に挿入する。このとき、足50の底面53の向きが所望の固定状態となるように、縦溝41の周方向の位置を設定する。
【0031】
例えば、図2に示されるように底面53の長手方向を、ポータブルトイレ1の前後方向と実質的に一致させるとき、各脚30と、挿入部21とを以下ように設定する。
第1脚30Aは、底面53の長手方向をポータブルトイレ1の前後方向と実質的に一致させた状態よりも時計回りに略60度回転させた状態を形成する。これにより、凸22を挿入したい凹43と時計回りにおいて隣り合う縦溝41に凸22が嵌め込まれる。
【0032】
第2脚30Bは、底面53の長手方向をポータブルトイレ1の前後方向と実質的に一致させた状態よりも反時計回りに略60度回転させた状態を形成する。これにより、凸22を挿入したい凹43と反時計回りにおいて隣り合う縦溝41に凸22が嵌め込まれる。
【0033】
作業者は、脚30の縦溝41の周方向の位置と凸22の周方向の位置を合わせた状態(調整状態)において、脚30を挿入部21の中に押し込む。作業者は、脚30を脚30の外周に記載されている目盛等を目安にして所望の長さまで挿入部21に押し込んだとき、脚30を挿入部21に対して回転させる。脚30は、凸22が凹43の端部43Bに向かって回転されたとき、凸22が凹43の中に嵌りこむ。作業者は、脚30をさらに回転させ、凸22が凹43の端部43Aに接触する状態(固定状態)に切り替える。作業者は、ピン80のヘッド81を持ち、挿入部21の穴23にピン80の先端82を挿入する。作業者は、ピン80の先端82を縦溝41に嵌めこむ。作業者は、全ての脚30について同様の取り付け操作を行う。
【0034】
上記の取り付け操作により、凸22は、高さ方向に並んだ凹43のうちの1つに嵌め込まれている。凸22の一端は、溝の閉鎖している端部43Aの端面に突き当てられている。ピン80は、穴23に挿入されている。ピン80のヘッド81は、外郭20から露出し、外郭20の下方に位置する空間に位置している。ピン80の先端82は、縦溝41の端面41Aに突き当てられている。すなわち、脚30は、凸22およびピン80の先端82により回転が規制されている。図8は、最も下方の凹43に凸22が嵌め込まれた状態を示している。このとき、ポータブルトイレ1の便座の高さが最も低くなる。
【0035】
図9および図10を参照して、第1スペーサー91および第2スペーサー92について説明する。
図9(a)に示されるように、第1スペーサー91は、平面視における大きさおよび形状が足底60と略一致している。第1スペーサー91の上面91Aは、平面視における長手方向の一方から他方に向かうにつれて下方から上方に傾斜している。上面91Aには、取り付け構造54に嵌め込まれる取り付け構造91Bが備えられている。第1スペーサー91の下面には、図5に示される取り付け構造54および溝55と同様の構造が形成されている。このため、第1スペーサー91は、脚30の下面に取り付けることができる。また、第1スペーサー91の下面に足底60を取り付けることができる。
【0036】
図9(b)に示されるように、第2スペーサー92は、平面視における大きさおよび形状が足底60と略一致している。第2スペーサー92の上面92Aは、平面視における長手方向の一方から他方に向かうにつれて下方から上方に傾斜している。上面92Aには、取り付け構造54に嵌め込まれる取り付け構造92Bが備えられている。第2スペーサー92の下面には、図5に示される取り付け構造54および溝55と同様の構造が形成されている。このため、第2スペーサー92は、脚30の下面に取り付けることができる。また、第2スペーサー92の下面に足底60を取り付けることができる。
【0037】
第2スペーサー92の上面92Aの傾斜角度は、第1スペーサー91の上面91Aの傾斜角度と等しい。また、第2スペーサー92の厚さは、第1スペーサー91の厚さよりも大きい。
【0038】
図10に示されるように、第1スペーサー91および第2スペーサー92は、脚30と足底60との間に取り付けることができる。第1スペーサー91が、脚30と前足底60Aとの間に取り付けられ、第2スペーサー92が脚30と後足底60Bとの間に取り付けられるとき、ポータブルトイレ1は前傾姿勢に保持される。また、第2スペーサー92が、脚30と前足底60Aとの間に取り付けられ、第1スペーサー91が脚30と後足底60Bとの間に取り付けられるとき、ポータブルトイレ1は後傾姿勢に保持される。
【0039】
図11を参照して、図2とは異なる固定状態になっているときについて説明する。
図11の固定状態においては、脚30のうちの前方の2本は、底面53の長手方向が、ポータブルトイレ1の前方に向かうにつれてポータブルトイレ1の幅方向の外方に向かうようにポータブルトイレの前後方向に対して傾斜している。
【0040】
脚30のうちの後方の2本は、底面53の長手方向が、ポータブルトイレ1の後方に向かうにつれてポータブルトイレの幅方向の外方に向かうようにポータブルトイレの前後方向に対して傾斜している。
【0041】
ポータブルトイレ1は以下の効果を奏する。
(1)先行文献に開示(従来)のポータブルトイレは、脚部分と足とが別体の部品により構成され、足を脚部分に組み付ける、または、脚部分から足を取り外すことにより便座の高さを変更する。このため、作業者に煩わしさを感じさせるおそれがある。
【0042】
ポータブルトイレ1は、挿入部21に挿入される足50が一体化した脚30の長さに応じて便座の高さを変更することができる。このため、先行文献に開示(従来)の構成と比較して、作業者が煩わしさを感じにくい。
【0043】
また、便座の高さが高くなるにつれてポータブルトイレ1の重心が高くなるため、使用者が便座に着座するときなどのように便座にかかる荷重の方向が変化するときに、ポータブルトイレ1の姿勢が不安定になりやすい。ポータブルトイレ1の足50の底面53は脚部分40より太く、長手方向を有する。このため、ポータブルトイレ1にかかる荷重に合わせることができるため、ポータブルトイレ1の姿勢が不安定になりにくい。したがって、ポータブルトイレ1は、便座の高さを調整する作業にかかる手間が小さく、かつ、姿勢が不安定になりにくい。
【0044】
また、足50が脚部分40に一体化しているため、足50と脚部分40とにクリアランスが生じない。このため、足と脚部分とが別部品により構成される構成と比較して、脚30が安定する。
【0045】
また、足50の底面53が長手方向を有しない構成と比較して、すなわち、足50が略正円形状を有する構成と比較して、対応できる荷重を大きくすることができる。
(2)ポータブルトイレ1は、凸22と凹43とを嵌め込むことにより便座の高さ位置を固定している。このため、例えば、穴23を介して脚部分40の外周を締めつけるねじ等により便座の高さ位置を固定する構成と比較して、脚30と挿入部21をしっかりと固定することができる。
【0046】
(3)足50の底面53の形状は、楕円形状と同一または類似した形状である。すなわち、底面53は、角を有しないため、使用者の足が当たる等したときに痛みを感じさせにくい。また、卵形状と比較して、短辺51の曲率を小さくすることができるため、使用者の足が当たる等したときに痛みを感じさせにくい。
【0047】
(4)ポータブルトイレ1の足50の底面53の中心50Cの中心が脚部分40の高さ方向の中心線40Cに対して偏心している。このため、中心50Cを中心線40Cも外郭20の中心20C寄りに位置させることにより、足50が外郭20よりも外側にはみ出る量を小さくできる。このため、ポータブルトイレ1の設置面積を小さくできる。
【0048】
また、中心50Cと中心線40Cとが一致する場合と比較して、脚部分40に傾斜するような力がかかったときに脚部分40からの力により足50が傾斜しにくい。このため、ポータブルトイレ1の姿勢を安定させることができる。
【0049】
(5)ポータブルトイレ1は、脚30を回転させることにより固定状態と調整状態とが切り替えられる。このため、簡便に便座の高さを調整することができる。
(6)ポータブルトイレ1は、複数の位置において固定状態を形成し得る。このため、設置場所や目的等に応じて足50の向きを変更することができる。
【0050】
(7)ポータブルトイレ1は、底面53の長手方向がポータブルトイレ1の前後方向と実質的に一致させることができる。このため、ポータブルトイレ1の幅方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0051】
(8)ポータブルトイレ1は、前側の脚30の底面53の長手方向が前方に向かうにつれてポータブルトイレ1の幅方向の外方に向かうようにポータブルトイレ1の前後方向に対して傾斜させることができる。このため、ポータブルトイレ1のうちの前側の部分においてポータブルトイレ1に前後方向、および、幅方向の力がかかったときにもポータブルトイレ1の姿勢が安定する。
【0052】
(9)ポータブルトイレ1は、後側の脚30の底面53の長手方向が後方に向かうにつれてポータブルトイレ1の幅方向の外方に向かうようにポータブルトイレ1の前後方向に対して傾斜させることができる。このため、ポータブルトイレ1のうちの後ろ側の部分においてポータブルトイレ1に前後方向、および、幅方向の力がかかったときにもポータブルトイレ1の姿勢が安定する。
【0053】
(10)ポータブルトイレ1は、外郭20の下方にピン80のヘッド81が位置するように穴23および縦溝41が形成されている。このため、ピン80を外郭20の下方から挿入することができる。このため、ピン80を簡単に差し込むことができる。また、外郭20の下方にピン80のヘッド81が位置するため、使用者がピン80に当たる等することが抑制される。
【0054】
(11)ポータブルトイレ1は、スペーサー91,92を取り付けることにより、前傾姿勢、または、後傾姿勢に保持することができる。このため、使用者の好みに応じて前傾姿勢、および、後傾姿勢に変更することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
本ポータブルトイレが取り得る具体的な形態は、上記実施形態に例示された形態に限定されない。本ポータブルトイレは、本発明の目的が達成される範囲において、上記実施形態とは異なる各種の形態を取り得る。以下に示される上記実施形態の変形例は、本ポータブルトイレが取り得る各種の形態の一例である。
【0056】
・実施形態の底面53を、長手方向を有する楕円形状、または、長方形状にすることもできる。また、卵形状にすることもできる。要するに、長手方向を有する形状であれば、底面53をいずれの形状に変更することもできる。
【0057】
・実施形態の足50の中心50Cを中心線40Cと一致させることもできる。
・実施形態の凸22および凹43を周方向において1つだけにすることもできる。この場合、凸22および凹43は、ポータブルトイレ1の設置時における足50の底面53の向きに応じた位置に形成されている。
【0058】
・実施形態の凸22および凹43を2つまたは4つ以上にすることもできる。
・実施形態の凸22を凹とし、凹43を凸とすることもできる。
・実施形態の内面21Aに高さ方向に並ぶ複数の凸22を形成することもできる。この場合、凹43を高さ方向において1つにすることもできる。
【0059】
・実施形態のスペーサー91,92を足50にねじを用いて固定することもできる。この場合、スペーサー91,92および足50に形成されるねじ穴が取り付け構造62に相当する。
【符号の説明】
【0060】
1…ポータブルトイレ、11…便槽、20…外郭、21…挿入部、21A…内面、22…凸、23…穴、30…脚、40…脚部分、40C…中心線、40A…外面、43…凹部、50…足、50C…中心、53…底面、80…ピン、81…ヘッド、91…第1スペーサー、92…第2スペーサー。
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