特許第6440112号(P6440112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6440112-板状体凹条部の加飾方法および板状建材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440112
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】板状体凹条部の加飾方法および板状建材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/04 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   E04F15/04 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-230640(P2014-230640)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-94727(P2016-94727A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100143926
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 公敏
(74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 周子
(72)【発明者】
【氏名】山田 司
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−101504(JP,U)
【文献】 特開2012−224005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0174566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02 − 15/04
B05D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の化粧面に形成された凹条部に、インクジェット装置を用いて加飾を行う板状体凹条部の加飾方法であって、
前記板状体は、基材の表面に化粧材を貼着して構成され、該基材が前記凹条部の表面側に露出するように形成されており、
前記凹条部に対して、浅い部位よりも深い部位のほうに、インクの厚みが厚くなるようにインクを重ね塗りして加飾することを特徴とする板状体凹条部の加飾方法。
【請求項2】
板状体の化粧面に形成された凹条部に、インクジェット装置を用いて加飾を行う板状体凹条部の加飾方法であって、
前記板状体は、基材の表面に化粧材を貼着して構成され、該基材が前記凹条部の表面に露出しており、
前記化粧材の厚みが薄いものほど、幅広く加飾することを特徴とする板状体凹条部の加飾方法。
【請求項3】
板状体の化粧面に凹条部が形成され、該凹条部の表面に加飾が施された板状建材であって、
前記板状体は基材の表面に化粧材を貼着して構成され、該基材が前記凹条部の表面側に露出するように形成されており、
前記凹条部には、浅い部位よりも深い部位のほうに厚めの加飾層が複数のインク層の重ね合わせにより形成されていることを特徴とする板状建材。
【請求項4】
板状体の化粧面に凹条部が形成され、該凹条部の表面に加飾が施された板状建材であって、
前記板状体は基材の表面に化粧材を貼着して構成され、該基材が前記凹条部の表面側に露出するように形成されており、
前記凹条部は、前記化粧材の厚みが薄いものほど、幅広く加飾されていることを特徴とする板状建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体の化粧面に形成された目地溝や面取り部などの凹条部に対して加飾する板状体凹条部の加飾方法、および化粧面に凹条部が形成された板状建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状体の化粧面に形成された凹条部に加飾を施す方法が多く提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この文献技術は、凹条部に対して、インクジェット装置を用いて加飾するものである。よってこの方法によれば、目地溝や面取り部などの凹条部を種々の色、柄に加飾することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−224005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、化粧面として貼り付ける化粧材には突板や化粧シートなど種々のものがある。それらは、おおむね0.5mm以下と薄いため、加飾する前の板状体の凹条部の表面の下部には基材の一部が露出する。そのため、そのような凹条部に対して少量のインクで薄く加飾しただけでは、化粧面の色、柄とは異なる基材の端面の素材の色(たとえば黒味のある色)、柄が透けて見える基材写りが発生し、化粧面全体の意匠性が損なわれるおそれがある。また、凹条部全体を厚く加飾すれば、想定していた立体感が出せないおそれがある。
【0005】
さらに、化粧材が薄厚であればあるほど、化粧材が薄くなっている凹条部の上部や化粧材と凹条部との境界では、基材が化粧材を通して透けて見える基材写りが発生するおそれがある。そのような基材写りにより意匠性が損なわれないようにするためには、化粧材が薄くなった上記境界にも確実に加飾する必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、化粧面の凹条部に対して工夫して加飾を施すことで、板状建材の化粧面の意匠性を向上させることのできる板状体凹条部の加飾方法およびそのような板状建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の板状体凹条部の加飾方法は、板状体の化粧面に形成された凹条部に、インクジェット装置を用いて加飾を行う板状体凹条部の加飾方法であって、板状体は、基材の表面に化粧材を貼着して構成され、基材が凹条部の表面側に露出するように形成されており、凹条部に対して、浅い部位よりも深い部位のほうに、インクの厚みが厚くなるようにインクを重ね塗りして加飾することを特徴とする。
また、本発明の他の板状体凹条部の加飾方法は、板状体の化粧面に形成された凹条部に、インクジェット装置を用いて加飾を行う板状体凹条部の加飾方法であって、板状体は、基材の表面に化粧材を貼着して構成され、基材が凹条部の表面に露出しており、化粧材の厚みが薄いものほど、幅広く加飾することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の板状建材は、板状体の化粧面に凹条部が形成され、凹条部の表面に加飾が施された板状建材であって、板状体は基材の表面に化粧材を貼着して構成され、基材が凹条部の表面側に露出するように形成されており、凹条部には、浅い部位よりも深い部位のほうに厚めの加飾層が複数のインク層の重ね合わせにより形成されていることを特徴とする。
また、本発明の板状建材は、板状体の化粧面に凹条部が形成され、該凹条部の表面に加飾が施された板状建材であって、板状体は基材の表面に化粧材を貼着して構成され、基材が凹条部の表面側に露出するように形成されており、凹条部は、化粧材の厚みが薄いものほど、幅広く加飾されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の板状体凹条部の加飾方法によれば、上述の手順となっているいため、できあがった板状建材には基材写りが発生しにくく、それにより意匠性や立体感が損なわれる可能性は低い。
【0010】
また、本発明の板状体凹条部の加飾方法によれば、上述の手順となっているいため、薄めの化粧材を用いた板状体であっても、凹条部の上部での基材写りをほとんどなくすことができ、製造された板状建材の凹条部を含む化粧面の意匠性を向上させることができる。
【0011】
本発明の板状建材によれば、上述の構成となっているため、化粧材が薄めのものであっても基材写りが少なく、それにより意匠性や立体感が損なわれる可能性は低い。
【0012】
また、本発明の板状建材によれば、上述の構成となっているため、凹条部の上部において基材写りがほとんどなく、そのため凹条部を含む化粧面の意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る板状建材を説明するための図である。(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に対応した拡大縦断面図および要部をさらに拡大した縦断面図、(c)は(a)のB−B線に対応した拡大縦断面図である。
図2】(a)(b)は、板状建材の凹条部(目地溝)への加飾態様の2例を示す縦断面図である。
図3図1に示した板状建材の凹条部を加飾する方法を説明するための図である。(a)は加飾方法を実施するためのインクジェット装置を含む搬送ラインの概略斜視図、(b)(c)は加飾の2例に対応した要部拡大縦断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る板状体凹条部の加飾方法を実施するための搬送ラインの部分拡大平面図である。
図5】本発明のさらに他の実施形態に係る板状体凹条部の加飾方法を実施するための搬送ラインの概略斜視図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る板状体凹条部の加飾方法を実施するための搬送ラインの概略斜視図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る板状体凹条部の加飾方法を実施するための搬送ラインの概略斜視図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態に係る板状体凹条部の加飾方法を実施するためのインクジェット装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、板状体凹条部の加飾方法および板状体凹条部に加飾が施された板状建材についての実施の形態について説明する。まず、図1を参照しながら、板状建材1の概略構成について説明する。
【0015】
本板状建材1は、板状体10の化粧面に目地溝13や面取り部14などの凹条部が形成され、その凹条部の表面に加飾が施された建材である。板状体10は基材11の表面に化粧材12を貼着して構成され、基材11が目地溝13や面取り部14などの凹条部の表面側に露出するように形成されている。この凹条部には、浅い部位よりも深い部位のほうに厚めの加飾層17が形成されている。
【0016】
板状建材1は、たとえば床材などに用いられる建材である。板状建材1を形成するための基体としては、化粧面を有した矩形の板状体10が用いられる。板状体10は、合板などよりなる木質系の基材11と、その基材11の表面に貼着された化粧面を形成するための化粧材12とを備えている。また、板状体10の四周には、床下地上で建材同士を連設するための実部が形成されている。図1(a)に示すように、雄実部11a、11aが2辺の外側に突出している。
【0017】
以下の実施形態では、化粧材12として、複数のフリッチ材を集成し、0.20mm〜0.45mm程度の厚さにスライスして形成した集成化粧材が用いられている。化粧材12は複数の木質素材が集成してあるため、床材として設置したときには、異なる色、柄の化粧材12a、12aを個別に敷き詰めたようになる。
【0018】
このように、本実施形態の板状建材1は、隣り合う化粧材12a、12aの化粧面の色、柄などが相互に異なる板状体10を用いて構成されている。なお以下では、個別の化粧材については「化粧材12a」と表記し、板状体10の全表面に対応した化粧材については「集成化粧材12」と表記する。
【0019】
この集成化粧材12の化粧面には、図1(a)に例示したように、個々の化粧材12a、12a間の境界に目地溝13が形成してある。また、板状建材1の表面側の角部には面取り部14が形成してある。なお、この化粧材12は複数列(図例では3列)よりなり、さらにそれぞれの列は種々の長さの化粧材12a、12aよりなる。
【0020】
ついで、図1にもとづいて、板状建材1の詳細について説明する。
【0021】
図1(a)に示すように、目地溝13のうち、長手方向に形成された列方向の溝が縦溝であり、同列内の化粧材12a、12aを区切る溝が横溝である。これらの目地溝13、13はいずれも、図1(b)に示すように、溝底13cが尖鋭形状となっており、その溝底13cの両側には対称的な断面形状となった溝領域13b、13bが形成されている。また、面取り部14は、目地溝13の一方の溝領域13bとおおむね同様の断面形状となっている。
【0022】
目地溝13および面取り部14は、化粧材12の厚みよりも深く掘り込まれているため、加飾する前の目地溝13の溝領域13b、13bおよび面取り部14の上側には個々の化粧材12a、12aの傾斜端面が表れ、下側には基材11の傾斜端面が表れている。
【0023】
目地溝13および面取り部14などの凹条部は、縦断面がいずれも斜め上方向にアール状に膨出した形状となっており、それらの表面にはインクによる加飾が施されている。なお、目地溝13への加飾は、後述するインクジェット装置30(図3参照)による方法や、その他種々の方法でなされればよい。
【0024】
図1(b)に示すように、目地溝13の両溝領域13b、13bの表面にはインクによる加飾層17が形成されている。その加飾層17は、表面側の浅い部位が薄く、溝底13c近傍の深い部位が厚くなっている。本図例のものでは、溝底13c側の加飾層17は、図1(b)の拡大図に示すように、複数のインク層17a、17aが重なって厚くなっている。このインク層17a、17aの重ね合わせ層構造は、インクの重ね塗り(インクの複数回吐出)によるものであるが、重ね塗りではなく、一度のインクの吐出量を異ならせることで薄め、厚めの加飾層17が形成されたものでもよい。
【0025】
また、面取り部14についても、図1(c)に示すように加飾層17は深い部位が浅い部位よりも厚く形成されている。面取り部14の加飾層17についても、その厚い部分は、目地溝13と同様に複数のインク層17a、17a(図1(b)参照)よりなる構成であってもよいし、たんにインクの吐出量により厚くなったものでもよい。
【0026】
ここで、目地溝13や面取り部14における深い部位とは、すくなくとも化粧材12、基材11間の境界線19(図1(b)(c)および図4など参照)を含む凹条部内の下部領域をいう。
【0027】
このように、凹条部に加飾が施されているため、化粧材12aや基材11の傾斜端面は露出しない。特に、凹条部の化粧材12、基材11間の境界線19を含む下部に厚めの加飾層17が形成されているため、化粧材12a、基材11間の境界線19および、化粧面の色、柄とは異なる色、柄を有した基材11の傾斜端面は露出しにくく、基材写りは発生しにくい。そのため、想定していた意匠性や立体感を創出することができる。また、凹条部の全体を厚く加飾しなくてもよいため、多くの量のインクを使用しなくてもよい。
【0028】
なお、厚めの加飾層17を形成する箇所は、その目的が上述したものであるため、化粧材12の厚みを考慮して種々異ならせればよい。種々の厚みの集成化粧材12を用いたものに対応できるように、あらゆる板状建材1に共通的に、化粧材12の厚みの下限値を考慮した値(たとえば表面から0.15mm)よりも深い部位に厚めの加飾層17を形成してもよい。
【0029】
また、集成化粧材12の厚みによって、表面側の加飾の態様も異ならせるようにしてもよい。すなわち、集成化粧材12が薄いものほど、幅広く加飾されていることが望ましい。図2(a)(b)の例は、目地溝13の幅が同じであっても、集成化粧材12が薄いもの(図2(a)参照)のほうが、厚いもの(図2(b)参照)よりも幅広く加飾されている。
【0030】
具体的には、たとえば集成化粧材12の厚みが所定値(たとえば0.35mm)未満の板状建材1は、図2(a)のように、目地溝13と化粧面との境界15を化粧面側に超えて加飾が施されている。また、集成化粧材12の厚みが所定値(上記の値)以上の板状建材1は、図2(b)のように、目地溝13と化粧面との境界15を超えないように加飾が施されている。
【0031】
このように、化粧材12の厚みが薄いものほど凹条部に対して幅広く加飾が施されているため、凹条部の上部において、化粧材12が薄くなっている部分(特に境界15)で基材11が透けて見える基材写りを防止することができる。
【0032】
もちろん、集成化粧材12の厚みに関係なく、どのような厚みのものでも、基材写りを確実に防止するために、目地溝13と化粧面との境界15を超えて加飾が施されていてもよい。すくなくとも集成化粧材12の厚みが薄いものほど、幅広く加飾が施されていればよい。
【0033】
このように、目地溝13に対して、目地溝13と化粧面との境界15を超えて加飾が施され、つまり化粧面側にはみ出て加飾されているものでは、境界15があまり目立たず、目地溝13をどのような色、柄で加飾したものでも意匠性が悪くならない。
【0034】
なお、凹条部の加工の精度や凹条部の加飾の方法によっては、加飾がなされない境界15が目立つ場合があるが、境界15に確実に加飾が施されていると、境界15は目立たない。また、目地溝13の傾斜面を湾曲面ではなく平面に形成したものでは、湾曲面としたものより境界15が目立つが、そのようなものでも、目地溝13と化粧面との境界15を超えて加飾されていれば、境界15の目立ちを軽減することができる。なお、これらの効果は、面取り部14についても同様である。
【0035】
つぎに、板状体10の凹条部への加飾方法について、図3図8を参照しながら説明する。なお、以下の種々の実施形態に係る加飾方法は、目地溝13や面取り部14への加飾が、それに隣接する化粧材12aの色、柄に合わせてなされるようになっているが、これには限定されず、どのような色、柄の加飾がなされるようにしてもよい。
【0036】
これらの図に示した板状体凹条部の加飾方法は、板状体10の化粧面に形成された目地溝13や面取り部14などの凹条部に、インクジェット装置30を用いて加飾を行う方法である。なお、図6および図7に示した加飾方法は凹条部形成工程も含んだものである。
【0037】
まず、図1に示した板状建材1についての目地溝13への加飾方法について、図3および図4を参照しながら説明する。
【0038】
この板状体凹条部の加飾方法は、板状体10の化粧面に形成された凹条部に、インクジェット装置30を用いて加飾を行う加飾方法である。板状体10は、基材11の表面に化粧材12を貼着して構成され、基材11が凹条部の表面側に露出するように形成されている。そして、この加飾方法では、図3(b)(c)や図4に示すように、凹条部に対して、浅い部位よりも深い部位のほうに、インクの厚みが厚くなるように加飾するようになっている。
【0039】
図3は、目地溝13の加飾工程に用いられる装置を模式的に示した斜視図である。この加飾工程は、目地溝13および面取り部14が形成された板状体10が搬送ライン(搬送装置20)により搬送されながら、凹条部に加飾が施される工程である。
【0040】
搬送ラインには、加飾を施すためのインクジェット装置30が配されている。このインクジェット装置30は、凹条部に対して加飾を行う前に、加飾情報として、凹条部の位置、幅と、凹条部に隣接する化粧材12aの色、柄とを搬送ライン上で取得する構成となっている。
【0041】
なお、図3および後述する図5図7には、搬送ライン上に複数の板状体10が搬送されているように示してあるが、白抜き矢印を付記してあるように、これらは1つの板状体10の流れを示したものである。
【0042】
インクジェット装置30は、図3に示すように、インクをインクノズル31aより吐出して目地溝13を加飾するインクジェットヘッド31と、その上流側に設置された化粧面画像を検出するための画像センサ32とを備えている。
【0043】
このインクジェット装置30は、搬送ラインの所定の位置に固定され、移動する搬送装置20上に載せられて移動する板状体10に対して加飾を施すことのできる装置である。インクジェットヘッド31は、複数のインクノズル31a、31aを有し、それらは搬送ラインを横切るように移動制御される。なお、インクジェットヘッド31、画像センサ32などを制御する制御部については、図示を省略した(図5図7においても同様)。
【0044】
画像センサ32は、たとえばレーザ変位計や撮像素子(CCD)を用いたセンサであり、板状体10の表面の凹条部の位置、幅の加飾情報を、搬送ライン上で移動する板状体10より取得する。そして、画像センサ32で取得した加飾情報はインクジェットヘッド31に入力される。なお、本実施形態のインクジェット装置30は、凹条部に隣接する化粧面の色、柄に合わせて凹条部に加飾を施すものである。そのために、画像センサ32は化粧材12aの色、柄なども検出しているが、目地溝13に対して特定の色、柄を加飾するものでは、化粧材12aの色、柄を検出しなくてもよい。
【0045】
このように、インクジェット装置30は、すくなくとも、加飾情報として目地溝13や面取り部14の位置、幅などを搬送ライン上で取得し、その情報にもとづいて目地溝13や面取り部14に加飾を施す構成となっている。
【0046】
具体的には、インクジェットヘッド31は、目地溝13については、画像センサ32で取得した目地溝13の位置、幅にもとづいて目地溝13と化粧材12aとの境界15、15を把握する。そして、インクジェットヘッド31は、同時に取得した化粧材12a、12aの色、柄にもとづいて目地溝13に加飾を施す。面取り部14についてもおおむね同様であり、化粧材12aとの境界15を画像センサ32で検出すればよい。
【0047】
図3(b)に示した例は、複数のインクノズル31a、31a、31aを用いて、目地溝13内の深い部位には多量のインクを吐出する一方、浅い部位には少量のインクを吐出することで、深い部位に厚めの加飾層17(図1参照)を形成するようになっている。また、図3(c)に示すように、インクノズル31aが、溝幅間を移動しながら、深い部位に厚めの加飾層17を形成できるようにしてもよい。
【0048】
なお、図3(b)では深い部位と、その両隣の浅い部位とに3つのインクノズル31aでインクを吐出するように図示してあるが、これはイメージ図である。したがって、部位ごとに複数のインクノズル31aで対応するようにしてもよい。また、図3(c)の例についても、複数のインクノズル31aが溝幅間を移動しながらインクを吐出する構成としてもよい。さらに、複数の目地溝13に対して、搬送を一時的に止め、共通のインクノズル31aを移動させて吐出するようにしてもよい。
【0049】
また、図4に示すように、搬送ラインに沿って複数のインクジェットヘッド31、31を部位(深い部位とその両隣の浅い2つ部位)ごとに並設して、加飾を施すようにしてもよい。なお、加飾が施されていない状態では、図4の左側の拡大図に示すように、溝底13cの両側には化粧材12aと基材11との境界線19が表れている。
【0050】
この方法では、上流側のインクジェットヘッド31で目地溝13内の深い部位(すくなくとも境界線19、19を含む中央部X)にインクを吐出する(図4の中央の拡大図参照)。そして、下流側のインクジェットヘッド31で目地溝13の幅全体にインクを吐出する(図4の右側の拡大図参照)。このようにして、図4の右側の拡大図でクロスハッチングが付されているように、中央部Xを重ね塗りすることで複数のインク層17a、17a(図1(b)参照)を形成でき、厚めの加飾を施すことができるようになっている。
【0051】
このように複数のインクジェットヘッド31を並設して加飾する方法は、板状体10の幅寸法(たとえば、300mm程度)よりも小さい寸法のインクジェットヘッド31を用いる場合にも有効である。すなわち、そのような場合には、当然に1台のインクジェットヘッド31ではカバーできないが、複数台のインクジェットヘッド31を並設することで、板状体10の幅寸法の全長分をカバーすることができる。
【0052】
なお、面取り部14の加飾についても目地溝13への加飾と同様であり、図4に示した装置で目地溝13の加飾と同時に加飾することができる。
【0053】
このような加飾方法によれば、薄めの集成化粧材12を用いて基材11が凹条部に露出していても、その部分に十分に厚い加飾が施されるため、できあがった板状建材には基材写りが発生しにくく、それにより意匠性や立体感が損なわれる可能性は低い。
【0054】
また、図3図4に示した加飾方法において、図2(a)に示したような板状建材1を生成するために、凹条部と化粧面との境界15を超えるように凹条部に加飾を施してもよい。
【0055】
図2(a)(b)に示すような、化粧材12の厚みに応じた加飾ができるように、インクジェット装置30は、インクノズル31aの移動制御を化粧材12の厚みに応じて異ならせるようにすればよい。つまり、図2(a)のように、化粧材12の厚みが薄いものに加飾する場合は、インクジェット装置30は目地溝13の境界15を超えるようにインクノズル31aを制御すればよい。
【0056】
このように、この加飾方法は、表面に集成化粧材12を貼着した基材11が凹条部の表面に露出しており、集成化粧材12の厚みが薄いものほど、凹条部に対して、幅広く加飾する構成にもなっている。
【0057】
たとえば、このような加飾をするために、集成化粧材12の厚みが所定値未満の場合には、凹条部に凹条部と化粧面との境界15を超えるように加飾し、化粧材12の厚みが所定値以上の場合には、凹条部に境界15を超えないように加飾するようにしてもよい。
【0058】
このような集成化粧材12の厚みを判別するために、インクジェット装置30(画像センサ32)が、たとえば平面視における目地溝13内の境界部19の位置を検出することで化粧材12の厚みを検出すればよい。また、搬送する板状体10の化粧材12の厚み情報をあらかじめインクジェット装置30に入力しておいてもよい。
【0059】
このような加飾方法を実施することで、化粧材12が薄いことによる境界15近傍での基材写りの発生を防止することができる。また、境界15を超えて加飾を施すようにすれば、つまり化粧面側の印刷限界を境界15を超えた位置に設定すれば、境界15の色、柄が薄くなっていても、その部分を加飾により補修することができる。特に、凹条部の加工の精度によっては境界15が剥げて目立つおそれがあるが、境界15に加飾を施すことで境界15が目立たなくすることができる。
【0060】
また、凹条部に対して白地などの下地塗りを行う場合も、図4に示した並設態様のものと同様に、インクジェットヘッド31を並設すればよい。たとえば図5に示すように、加飾用のインクジェットヘッド31の上流側に、下地塗り用のインクジェットヘッド33を配設すればよい。なお、下地塗りは、このような態様に限られず、搬送ラインの上流の別工程で実施されるようにしてもよい。
【0061】
以上に説明した、図3図4に示した加飾方法は、あらかじめ目地溝13が形成された板状体10に対して加飾を施すものであるが、目地溝13や面取り部14などの凹条部の形成も加飾の直近上流側で行うようにしてもよい。なお、図6図7の例は、面取り部14についてはあらかじめ形成されている。
【0062】
たとえば、インクジェットヘッド31の直近上流側に目地加工装置を設置し、その目地加工装置が、さらに上流側に設置した画像センサ32から加飾情報を受け取って目地溝13を形成するようにすればよい。この加飾情報には、目地溝13形成前における化粧材12、12間の境界線19の位置情報が含まれていればよい。目地幅については、インクジェットヘッド31に目地溝13を加工する目地加工装置ごとの値を保存しておけばよい。また、面取り部14については、図2の例と同様、加飾情報に面取り部14の位置、幅を加飾情報として含ませればよい。
【0063】
目地加工装置としては、切削工具35(図6参照)やレーザ加工機36(図7参照)、切削加工ヘッド(不図示)などが用いられる。なお、図6図7に示すように、縦溝のみの目地溝13を切削する場合は切削工具35を用いてもよく、縦溝と横溝が混在する目地溝13を切削する場合はレーザ加工機36を用いることが望ましい。
【0064】
以上では、目地溝13のおもに縦溝に対する例を説明したが、横溝に対しても図2図6図7に示した加飾方法で加飾することができることはいうまでもない。
【0065】
また以上には、搬送ライン(搬送装置20)で移動する板状体10に加飾する方法を示したが、板状体10を固定し、その板状体10に対してインクジェットヘッド31を移動させながら加飾する方法をとってもよい。図8は、そのような加飾方法を実施できるインクジェット装置30の平面図である。
【0066】
このインクジェット装置30は、印刷テーブル25に加飾対象である板状体10を載せ置いて使用するものである。このインクジェット装置30は、印刷テーブル25に固定された板状体10の凹条部に対して加飾を施すインクジェットヘッド31と、板状体10の化粧面画像を検出するためのCCDラインセンサなどで構成された画像センサ32とを備えている。なお、符号39はインクジェットヘッド31および画像センサ32を制御する制御部である。
【0067】
インクジェットヘッド31および画像センサ32は、図8に示すように、印刷テーブル25の短手方向Xに架け渡すように設置され、それぞれが長手方向Yに移動できるようになっている。
【0068】
まず、画像センサ32が長手方向Yに沿って移動しながら板状体10の化粧面画像を検出し、板状体10の表面の目地溝13、面取り部14の位置、幅および化粧材12の色、柄などの加飾情報をインクジェットヘッド31に送出する。その後、インクジェットヘッド31は、長手方向Yに沿って移動しながら加飾情報にもとづいて、板状体10の目地溝13、面取り部14に加飾を施す。
【0069】
以上、図2図8などで説明したように、ライン型のインクジェットヘッド31を用いる場合、インクジェットヘッド31に対して板状体10を相対移動させながら目地溝13に加飾を施すようにすることが望ましいが、他の方式を採用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 板状建材
10 板状体
11 基材
12 (集成)化粧材
12a 化粧材
13 目地溝(凹条部)
14 面取り部(凹条部)
15 境界
17 加飾層
30 インクジェット装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8