(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の圧力検知形逆止弁の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の圧力検知形逆止弁は、給水システムの流路に設けられ、流路の圧力を検知する機能、検知した圧力に応じて流路の遮断/開放を制御する機能、逆止弁の機能等を備える点において特徴を有する。
以下、圧力検知形逆止弁(以下、高機能バルブ1という。)を、水を流体とする給水システムの流路に設けた場合について説明する。
ただし、高機能バルブ1は、他の流体(例えば、温水、燃料などの液体、気体等)を供給する流体供給システムに用いることもできる。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る高機能バルブの外観図である。
図1に示すように、高機能バルブ1は、複数の段部を有する変形円柱状の弁箱2によって構成される。
弁箱2の形状は、これに限らず、四角柱状、多角柱状など、様々な形状にすることができる。
弁箱2は、上部箱部2a、中部箱部2b、下部箱部2cの3つの箱部によって構成される。
弁箱2の下部箱部2cには、入口3と出口4とが設けられている。
入口3は、水の流入口である。
入口3には流路をなす配管が接続され、ポンプ40(本発明の流体供給手段)から供給され、上流側の流路を流通してきた水がこの入口3を介して弁箱2の内部に流入される。
出口4は、水の流出口である。
出口4には流路をなす配管が接続され、弁箱2の内部を通過した水がこの出口4を介して下流側の流路に流出される。
本実施形態の高機能バルブ1において、入口3と出口4とは反対方向(180度の角度)を向き、かつ、ともに水平方向を向く態様で設けられているが、様々な角度や向きにすることができる。
例えば、入口3と出口4との角度が90度でもよく、また、一方又は双方が鉛直方向を向く態様でもよい。
弁箱2の上部箱部2aには、弁箱2と一体構造の半円柱状の支持部材24が設けられている。
そして、この支持部材24には、本発明の制御手段の一例であるマイクロスイッチ25が設けられる。
なお、マイクロスイッチ25の機能・動作等については後述する。
【0011】
図2は、高機能バルブの要部断面図である。
なお、弁箱2を構成する上部箱部2a、中部箱部2b及び下部箱部2cは、ボルトなどの結合手段により結合されるが、これら結合手段の図示は省略する。
図2に示すように、弁箱2の内部には、入口側流路5、流路空間室6、及び大気室8が形成されている。
入口側流路5は、入口3につながる流路である。
入口側流路5は、具体的には、入口3から流路空間室6に亘って形成されており、流路空間室6とは当該入口側流路5の下流側出口である円状の連通口(以下、弁座口13という。)を介して連通されている。
【0012】
流路空間室6は、入口側流路5と連通する空間であるとともに出口につながる空間である。
流路空間室6は、中部箱部2b及び下部箱部2cの内部に設けられた空間であり、
図2の網点部に示すように、入口側流路5の上方及び側方に配されて底部に段差をもった空間によって構成される。
具体的には、中部箱部2bに設けられた部分では円筒状の空間を形成し、下部箱部2cに設けられた部分では、出口側が一段下がった形状となっており、上段部分の空間と下段部分の空間とが連通された1つの空間を形成している(
図2の網点部参照)。
なお、上段部分の空間と下段部分の空間の間には、これらの空間を仕切るように後記第1ダイヤフラム10が介在しているが、この第1ダイヤフラム10の部分には連通孔15が設けられているため、両空間は互いに連通している。
ただし、説明の便宜上、上段部分の空間における圧力(水圧)をP3、下段部分の空間における圧力(水圧)をP2と称して区別する場合がある。
このような高機能バルブ1の基本的な構造によれば、上流側の流路を流通してきた水を、入口3→入口側流路5→弁座口13→流路空間室6→出口4といった流れを経て下流側の流路に流出させることができる。
このほか、流路空間室6の上方には、両側の内壁からせり出した隔壁状の取付部材9が設けられている。この取付部材9には、コイルバネが取り付けられる。
【0013】
流路空間室6は、入口側流路5とは、円板状のダイヤフラム(以下、第1ダイヤフラム10という。)に設けられた弁体部11(本発明の第1変位部材)によって仕切られている。
これにより、第1ダイヤフラム10の弁体部11は、流路空間室6の隔壁(本発明の壁部材)を構成している。
第1ダイヤフラム10は、具体的には、その中心部に一体に設けられた弁体部11によって、流路空間室6と入口側流路5とを仕切るようにしている。
弁体部11は、第1ダイヤフラム10において、弁座口13の周縁部(弁座7)を塞ぐことが可能な大きさの円状領域によって構成されている。
ダイヤフラムは、ゴム、樹脂など、可撓性(弾性)を有する部材からなり、一方向から外力(圧力による力)を受けると反対方向に伸びて変形し、外力がなくなるとその弾性により元の形状に戻る性質を有する。
なお、ダイヤフラムとして、金属の薄膜を同心の波形にプレス加工して弾性を持たせた、いわゆるメタルダイヤフラムを採用することもできる。
メタルダイヤフラムによれば、耐久性を著しく向上させることができる。
【0014】
第1ダイヤフラム10の弁体部11は、流路空間室6と入口側流路5との間にある弁座口13の真上に位置し、取付部材9に取り付けられたコイルバネ(本発明の第1付勢部材。以下、第1バネ14という)によって下方に向けて付勢力が加えられている。
これにより、弁体部11は、上方からは流路空間室6の水圧(内圧)P3による力と第1バネ14の付勢力Fxを受け、下方からは流路空間室6に対する外圧として入口側流路5の水圧P1による力を受ける。
弁体部11が受ける力のうち、「水圧(圧力)による力」は、具体的には、「弁体部11において水圧が作用する領域の面積」×「水圧」である。
このため、例えば、前記「水圧P3による力」は、具体的には、「弁座口13の面積」×「水圧P3」であり、後記「差圧(P1−P3)による力」は、具体的には、「弁座口13の面積」×「差圧P1−P3」である。
なお、第1ダイヤフラム10のうち、中心部の弁体部11を除いた場所には連通孔15が設けられているため、圧力P2と圧力P3とはほぼ同じとなり、この場所において上方と下方に作用する圧力による力はほぼ等しくなるため無視できる。
【0015】
このように、第1ダイヤフラム10の弁体部11は、第1バネ14の付勢力Fxと、当該付勢力に対抗する力として、入口側流路5の水圧P1と流路空間室6の水圧P3との圧力差である差圧(P1−P3)による力(本発明の「流路空間室における圧力による力」)を受ける。
そして、弁体部11は、流路空間室6の圧力、入口側流路5の圧力、及び第1バネ14の付勢力Fxの関係を利用し、入口側流路5の水圧P1と流路空間室6の水圧P3との圧力差である差圧(P1−P3)による力が、第1バネ14の付勢力Fxより大きい場合には、その差圧による力に基づいて上方に移動し、この結果、弁座口13を、入口側流路5から出口4へ向かう方向に水が流れるように開放する(流路の開放)。
一方、差圧(P1−P3)による力が第1バネ14の付勢力Fxより小さい場合に、その付勢力Fxに基づいて、下方に移動し、この結果、弁座口13を遮断する(流路の遮断)。
このような弁体部11の給水システムにおける具体的動作については、後記「給水システムにおける高機能バルブの動作」において説明する。
【0016】
流路空間室6の上方には、上部箱部2aの内部空間として大気室8が設けられている。
大気室8は、室内が大気(空気)で満たされた空間である。
大気室8には、外部に通じる通気孔20が設けられており、これにより内部の圧力が常に外気(大気圧)と等しくなるようにしている。
流路空間室6と大気室8とは円板状のダイヤフラム(本発明の第2変位部材。以下、第2ダイヤフラム16という。)によって仕切られている。
これにより、第2ダイヤフラム16は、流路空間室6の隔壁(本発明の壁部材)を構成している。
ダイヤフラムは、ゴム、樹脂など、可撓性(弾性)を有する部材からなり、一方向から外力(圧力による力)が加わると反対方向に伸びて変形し、外力がなくなるとその弾性により元の形状に戻る性質を有する。
なお、ダイヤフラムとして、金属の薄膜を同心の波形にプレス加工して弾性を持たせた、いわゆるメタルダイヤフラムを採用することもできる。
メタルダイヤフラムによれば、耐久性を著しく向上させることができる。
【0017】
第2ダイヤフラム16は、流路空間室6と大気室8との間に配置され、大気室8の上壁部にその一端が接しているコイルバネ(本発明の第2付勢部材。以下、第2バネ17という)により下方に付勢力Fyが加わるようにしている。
これにより、第2ダイヤフラム16は、上方からは第2バネ17の付勢力Fyを受け、この付勢力Fyに対抗する力として、下方から流路空間室6の水圧(内圧)P3(ゲージ圧)による力(本発明の「流路空間室における圧力による力」)を受ける。
このため、第2ダイヤフラム16は、第2バネ17の付勢力Fyが流路空間室6の水圧P3による力より大きい場合は下方に移動(変位)し、水圧P3による力が付勢力Fyより大きい場合は上方に移動(変位)する。
【0018】
この第2ダイヤフラム16には、棒部材(以下、ロッド18という。)が取り付けられる。
具体的には、ロッド18の一端(上端部)を大気室8(弁箱2)の上壁に設けたロッド用穴を通して弁箱2の外部上方に配置し、他端(下端部)を第2ダイヤフラム16の中心部に設けた穴に通してナット19で固定する。
これにより、ロッド18を、鉛直方向に起立させた状態で第2ダイヤフラム16に固定することができる。
このため、ロッド18は、第2ダイヤフラム16の下方への変位に応じて下方に移動させ、第2ダイヤフラム16の上方への変位に応じて上方に移動させることができる。
ロッド18の上端部には、高さ調節が可能なネジ式のアジャスタ21を取り付けている。
また、ロッド18には、ロッド用穴に対する抜け防止用のEリング22が取り付けられている。
【0019】
ロッド18の上方には、ポンプ40を制御可能なマイクロスイッチ25が、弁箱2の上部箱部2aと一体構造の支持部材24を介して設けられる。
なお、マイクロスイッチ25は、公知の制御装置であることから、本発明との関連事項を除き、詳細な説明を省略する。
【0020】
マイクロスイッチ25は、押圧操作によって変位する凸状のアクチュエータ23を備えている。
本実施形態のアクチュエータ23は、
図1,2,4等に示すように、スイッチ本体の下部から下方に突出した態様で用いられ、下方から外力(押圧力)が加えられていない状態では最下位置に配置されるようにバネ等により付勢されている。
アクチュエータ23の下端部は、ロッド18からの押し上げに応じて上方向に移動し、ロッド18の押し上げ位置を下げるとその分だけ下方向に移動するようにしているため、ロッド18の上下方向の移動に応じてアクチュエータ23の高さを変位させることができる。
【0021】
マイクロスイッチ25は、アクチュエータ23が所定の高位置(以下、ポンプ停止位置という。)まで上がったときにはポンプ40の動作を停止する制御を行い、アクチュエータ23が所定の低位置(以下、ポンプ起動位置という。)まで下がったときにはポンプ40を起動(作動)させる制御を行う(ポンプ40のオン・オフ制御)。
具体的には、マイクロスイッチ25は、図示しない端子を介して回路を開閉する機能(回路の開動作/閉動作)を有しており、この端子やリード線等を介してポンプ40の電力供給路(電源を含む)と接続している。
これにより、マイクロスイッチ25は、アクチュエータ23がポンプ停止位置に到達すると開動作を行って電力供給路を遮断し、アクチュエータ23がポンプ起動位置に到達すると閉動作を行って電力供給路を接続することができるため、ポンプ40のオン・オフ制御が可能となる。
【0022】
アクチュエータ23は、具体的には、流路空間室6の水圧P3が上限設定値(例えば、0.25MPa)のときにポンプ停止位置に配置し(
図4(c)参照)、流路空間室6の水圧P3が下限設定値(例えば、0.15MPa)のときにポンプ起動位置に配置するようにしている(
図5(a)参照)。なお、ポンプ停止位置とポンプ起動位置との距離差を応差という。
すなわち、流路空間室6の水圧P3の大小に応じて第2ダイヤフラム16の上下方向に対する変位位置が異なり、第2ダイヤフラム16の上下方向の変位位置に応じてロッド18の高さ位置が変位し、ロッド18の高さ位置に応じてアクチュエータ23の高さ位置が変位するため、例えば、流路空間室6の測定水圧P3が0.25MPaのときのアクチュエータ23の高さ位置がポンプ停止位置となるように調整を行い、流路空間室6の測定水圧P3が0.15MPaのときのアクチュエータ23の高さ位置がポンプ起動位置となるように調整を行う。
この調整は、例えば、ロッド18に設けたアジャスタ21によるロッド18の長さ・高さの調整、対応する応差を有するマイクロスイッチ25や対応するダイヤフラムの選択、バネの選択などにより行うことができる。
【0023】
これにより、高機能バルブ1では、流路空間室6の水圧P3が0.25MPaまで上昇したことに伴いアクチュエータ23が高位置であるポンプ停止位置に到達したことに基づいてポンプ40を停止させ、他方、流路空間室6の水圧P3が0.15MPaまで低下したことに伴いアクチュエータ23が低位置であるポンプ起動位置に到達したことに基づいてポンプ40を起動させることができる。
【0024】
<高機能バルブの給水システムにおける動作>
上述した構造及び構成を備えた高機能バルブ1の給水システムにおける具体的動作について
図3〜
図5を参照しながら説明する。
図3は、高機能バルブを備えた給水システムの概略図である。
図4は、高機能バルブの状態遷移を示す第1の図であり、
図5は、高機能バルブの状態遷移を示す第2の図である。なお、
図4(a)〜(c)及び
図5(a)〜(b)の各図上部にはアクチュエータ23部分の拡大図を示す。
【0025】
図3に示すように、給水システムは、ポンプ40、水栓50、水が貯水されたタンクや給水路等を備えて構成され、給水路の所定箇所に高機能バルブ1を設けている。
この給水システムでは、タンクに貯水されている水がポンプ40により吸い上げられて給水路に提供され、給水路を流通した水が下流流路に取り付けられた水栓50(開閉手段)を介して外部に供給するようになっている。
このように、ポンプ40から供給される水が水栓50から流出されている場合、高機能バルブ1では、入口側の水圧(入口側流路5の水圧P1)の方が出口側の水圧P2よりも高い状態となっている。
流路空間室6において上段部分の空間と下段部分の空間とは一連につながっており、水圧P2と水圧P3とは同じ圧力であるため、入口側流路5の水圧P1の方が流路空間室6の水圧P3よりも高い状態である。
加えて、入口側流路5の水圧P1と流路空間室6の水圧P3との差圧(P1−P3)による力は、第1バネ14の付勢力Fxより高いため、弁体部11は、弁座口13を開放する位置にある(
図4(a)参照)。
このため、高機能バルブ1の内部では、
図4(a)の矢印に示すように、入口3から流入した水が、入口側流路5→弁座口13→流路空間室6を経て出口4から流出している状態(第1状態)にある。
なお、このとき、マイクロスイッチ25のアクチュエータ23は、ポンプ起動位置(
図5(a)参照)とポンプ停止位置(
図4(c)参照)の間に配置されている。
【0026】
この状態(第1状態)において、水栓50が閉じられると、出口側の水圧P2が徐々に上昇する。
流路空間室6の上段部分の空間と下段部分の空間とを仕切る第1ダイヤフラム10の部分には連通孔15が設けられているため、水圧P2の上昇とともに水圧P3も上昇する。
これに伴って、入口側流路5の水圧P1と流路空間室6の水圧P3との差圧(P1−P3)が小さくなり、第1バネ14の付勢力Fxに抗する力が弱まる。
このため、第1ダイヤフラム10の弁体部11は、第1バネ14の付勢力Fxによって弁座口13を遮断する方向(下方)に移動する(
図4(a)→
図4(b))。
なお、
図4(b)は、弁体部11が弁座口13を遮断する直前の状態であり、弁体部13が、遮断位置よりやや上方に位置している状態を示している。
他方、流路空間室6の水圧P3の上昇とともに、第2バネ17の付勢力Fyに抗する力が強まる。
このため、第2ダイヤフラム16が上方向に変位し、これに伴うロッド18の上方向への移動によって、アクチュエータ23は上方に移動する。
【0027】
流路空間室6の水圧P3が上限設定値(例えば、0.25MPa)まで上昇すると、アクチュエータ23はポンプ停止位置に到達する(
図4(b)→
図4(c))。
マイクロスイッチ25は、アクチュエータ23がポンプ停止位置に到達したことに基づいてポンプ40の電力供給路(電源を含む)を遮断する。
これにより、ポンプ40の動作が停止され、水の供給が停止する。
【0028】
ポンプ40が停止されると、入口側流路5の水圧P1が低下する。
これにより、流路空間室6の水圧P3が入口側流路5の水圧P1よりも高くなる。
このため、第1ダイヤフラム10の弁体部11は、流路空間室6の水圧P3と入口側流路5の水圧P1との差圧(P3−P1)による力と第1バネ14の付勢力Fxとを上方向から受ける。
これにより、弁体部11は、さらに下方に下がり、弁座口13を遮断する位置まで移動する(
図4(b)→
図4(c))。
この結果、高機能バルブ1の内部において流路空間室6から入口側流路5に向かう流路が遮断され、流路空間室6に残存する水は適度な高圧(例えば、ほぼ0.25MPa)のまま、かつ、上流側に逆流しないように保持される(逆止弁の機能)。
仮に、逆止弁の機能がない場合、水栓50を閉じた状態で流路空間室6の水圧P3は低下するため、水圧P3が下限設定値になるとポンプ40が起動され、ポンプ40の動作により水圧P3が上限設定値になるとポンプ40の動作が停止される、といったポンプ40のオン・オフ動作が繰り返される、いわゆるハンチングと呼ばれる問題を生ずる。
高機能バルブ1は、逆止弁の機能を有するため、水栓50が閉じられた状態において、ハンチングが発生しないようにすることができる。
【0029】
この状態(第2状態)において水栓50が開かれると、流路空間室6に残存する水が出口4から下流流路に流出され、出口側の水圧P2が低下する。
流路空間室6の上段部分の空間と下段部分の空間とを仕切る第1ダイヤフラム10の部分には連通孔15が設けられているため、出口側の水圧P2の低下とともに流路空間室6の水圧P3も低下する。
流路空間室6の水圧P3の低下とともに、第2バネ17の付勢力Fyに抗する力が弱まる。
このため、第2ダイヤフラム16が下方向に変位し、これに伴うロッド18の下方向への移動によって、アクチュエータ23は下方に移動する。
流路空間室6の水圧P3が下限設置値(例えば、0.15MPa)まで低下すると、アクチュエータ23はポンプ起動位置に到達する(
図4(c)→
図5(a))。
マイクロスイッチ25は、アクチュエータ23がポンプ起動位置に到達したことに基づいてポンプ40の電力供給路を接続する。
これにより、ポンプ40が起動し、水の供給が開始される。
【0030】
他方、流路空間室6の水圧P3が低下することにより入口側流路5の水圧P1との差圧(P1−P3)が所定値(例えば7kPa以上)になると、弁体部11は、弁座口13を通して入口側から出口側へ水が流通するのに十分な位置(開放位置)に移動する(
図5(a)→
図5(b))。
これにより、ポンプ40からは再び水が供給され始め、入口3から流入した水が、入口側流路5→弁座口13→流路空間室6を経て出口4から流出する。
給水システムでは、タンクに貯水されている水がポンプ40により吸い上げられて給水路に提供され、給水路を流通した水が下流流路に取り付けられた水栓50を介して外部に供給される。
なお、水栓50は、手動による蛇口の他に、電磁弁や水洗トイレ等に使用されているタップ式などの開閉手段でもよい。
【0031】
このように、高機能バルブ1によれば、水栓50の開閉に伴う水圧の高低に応じてポンプの起動/停止、流路の開放/遮断を行うことができる。
このため、従来の給水システムのように、遮断弁や圧力スイッチをそれぞれ設けなくても、高機能バルブ1だけでこれら複数の機能を担うことができる。
【0032】
ここで、高機能バルブ1が備えるチャタリング防止機能について説明する。
図4(b)の状態から
図4(c)の状態に移った際に流路空間室6の圧力が瞬間的に若干低下する。
このため、仮に、ポンプ40の起動点と停止点(つまりは設定圧力)に差を設けないと、ポンプ40の起動による圧力上昇や、ポンプ40の停止による圧力降下が短い周期で繰り返されて、弁体部11が弁座7を叩くような動作(チャタリング)を起こし、弁体部11の損傷を招く。
そこで、高機能バルブ1は、応差を有するマイクロスイッチ25を制御手段として採用している。
すなわち、高機能バルブ1は、このようなマイクロスイッチ25を備えることで、アクチュエータ23がポンプ停止位置(流路空間室6の水圧P3が例えば0.25MPaの状態)のときにポンプ40を停止させ、アクチュエータ23がポンプ起動位置(流路空間室6の水圧P3が例えば0.15MPaの状態)のときにポンプ40を起動させるようにしている。
このため、高機能バルブ1によれば、チャタリングの発生を防止することができる。
【0033】
また、高機能バルブは、第2ダイヤフラム16を壁部材とする流路空間室6を備えることによって蓄圧機能を有している。
第2ダイヤフラム16は、外力を受けて変形する可撓性部材である。
このため、流路空間室6の圧力P3の上昇/下降に伴い、第2ダイヤフラム16は室外側/室内側に変形し、この第2ダイヤフラム16の変形に応じ、流路空間室6は膨張/収縮する。
例えば、流路空間室6の水圧P3が0.25MPa程度の高圧もしくはこれ以上の高圧になる場合でも、流路空間室6の容積を拡大することによって一定の高圧状態を維持することができ、他方、その高圧状態から、流路空間室6の水圧P3が下がる場合でも、流路空間室6の容積を縮小することによってその高圧状態を維持することができる。
すなわち、流路空間室6が、一種の蓄圧器(アキュムレータ)の役割を果たすことになる。
このため、応差が同じでも、流路空間室6に蓄圧機能がある方が、水栓50が閉じられた状態が続いたときに、弁体部11や水栓50などの弁部から水漏れがあるなどしても、水圧P3の降下が遅くなり、直ちにポンプ40の起動には至らず、ポンプ40の停止期間を長くすることができる。
したがって、このような流路空間室6の蓄圧機能によって、例えば、夜間や休日などで、給水が長時間不必要になる場合などでは、水栓50が閉じられた状態が続くが、そのような状態のときにポンプ40の起動が度々起こるというような問題がなく、電力の削減ができる効果がある。
なお、上記ポンプ40の停止期間を更に長くするために、流路空間室6に蓄圧器を繋げることも有効である。
【0034】
また、図示しないタイマーによってチャタリングを防止することもできる。
例えば、水栓50が閉じられた後から水圧P3が基準値を下回るまでの時間をタイマーにより計測し、その時間が所定時間(短時間)を超過する場合にはポンプ40を起動させ、その時間が所定時間以下である場合にはポンプ40を作動しないように制御することができる。
【0035】
次に、高機能バルブの改良実施例について説明する。
<第1の改良実施例>
図6は、第1の改良実施例に係る高機能バルブ1aの要部断面図である。
図6に示すように、第1の改良実施例に係る高機能バルブ1aは、前述の高機能バルブ1では第2ダイヤフラム16をコイルバネ(第2バネ17)により付勢することで構成していた圧力検知機構を、スプリング機能を有するベローズ16aだけで構成している点において異なる。
図6(a)は、管開放部が上方に向くように設けられ、管内部において、ロッド18をその下端部を管下端部に固定して起立させた構造としている。管内部は通気口を通じて弁箱2の外部と通じている。
これにより、管内部は大気圧に保たれ、管外部は流路空間室6と連通された空間を形成している。
図6(b)は、管開放部が下方を向くように設けられ、管外部において、ロッド18をその下端部を管上端部に固定して起立させた構造としている。
これにより、管外部は大気圧に保たれ、管内部は流路空間室6と連通された空間を形成している。
なお、
図6(a)と
図6(b)とは、
図6(a)は、管内部が大気で満たされた低圧の空間であり、管外部が水圧をうける高圧の空間である一方、
図6(b)は、管外部が大気で満たされた低圧の空間であり、管内部が水圧をうける高圧の空間である点でも異なる。
このような構造の高機能バルブ1aによれば、ダイヤフラムとコイルバネといった複数の部品を用いず、ベローズ16aだけで圧力検知機構を構成することができるため、構造を単純化して、小型化することができる。
また、
図6(a),(b)に示すように、ベローズ16aを弁箱2の側壁ではなく、上部又は下部の構造物にロー付け(溶着)等により取り付けることができるので、弁箱2の側壁に対する支持が必要なダイヤフラムに比べ、弁箱2の横幅(直径)を小さくすることができる。
【0036】
<第2の改良実施例>
図7は、第2の改良実施例に係る高機能バルブ1bの要部断面図である。
図7に示すように、第2の改良実施例に係る高機能バルブ1bは、前述の高機能バルブ1と比べ弁体部11の構造が異なる。
具体的には、前述の高機能バルブ1は、ダイヤフラムと一体の弁体部11を用いたが、第2の改良実施例に係る高機能バルブ1bは、ダイヤフラムなしの独立した弁体部11aを用いている。
より具体的には、弁体部11aは、上部がテーパ状に広がった駒状の部材であり、このような弁体部11aの形状に合わせ、弁座口13a(座面)の形状をすり鉢状にしている。
そして、弁体部11aの下部に設けた棒部材30に円錐バネ14aを設けることで、弁体部11aに対し下方(弁座口13aを塞ぐ方向)に付勢力が加わるようにしている。
このような構造の高機能バルブ1bによれば、ダイヤフラムのように弁箱2の側壁に支持する必要がないため、ダイヤフラムを用いる場合に比べ弁箱2の横幅(直径)を小さくすることができる。
また、付勢部材である円錐バネ14aを弁体部11aの下部に配置することで、本実施形態のように流路空間室6の上方に隔壁状のバネの取付部材9を設ける必要がないため、高さ方向の寸法を小さくすることができ、弁箱2の分割数を抑えることができる。
【0037】
<第3の改良実施例>
図8は、第3の改良実施例に係る高機能バルブ1cの要部断面図である。
図8に示すように、第3の改良実施例に係る高機能バルブ1cは、前述の高機能バルブ1と比べ弁体部11の構造が異なる。
具体的には、前述の高機能バルブ1は、ダイヤフラムと一体化した弁体部11を用いていたが、第3の改良実施例に係る高機能バルブ1cは、ダイヤフラムとは異なる部材(例えば、プラスチック)によって独立した弁体部11bを構成している。
また、弁体部11bのうち、弁座当接部31はゴムなどのシール部材を用いることで密閉性を高めている。
このような構造の高機能バルブ1cによれば、ダイヤフラムのように弁箱2の側壁により支持する必要がないため、ダイヤフラムを用いる場合に比べ弁箱2の横幅(直径)を小さくすることができる。
以上のように、本発明の圧力検知形逆止弁は、前述の高機能バルブ1の他、第1〜第3の改良実施例に示されるような様々な構造によって実現することができる。
なお、高機能バルブ1a〜1cにおける上述以外の構成、動作、機能は、高機能バルブ1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の高機能バルブ1は、入口側流路5と、入口側流路5と連通する空間であって、出口4につながる流路空間室6と、を設け、流路空間室6の壁部材として第1バネ14により付勢された第1ダイヤフラム10の弁体部11、第2バネ17によって付勢された第2ダイヤフラム16を設けている。
これにより、流路空間室6における圧力による力と付勢力との大小に基づいて、第1ダイヤフラム10の弁体部11を、流路を遮断する位置と開放する位置とに移動させ、第2ダイヤフラム16を、ポンプ40を起動する位置と停止する位置とに移動させることができる。
このため、圧力検知機能、流路の遮断/開放機能、逆止弁の機能等を有する小型で高機能な弁を低コストで提供することができる。
また、高機能バルブ1によれば、従来の給水システムのようにコントローラやリレーなどの外部機器を必要とせず、直接、ポンプ40等の制御を行うことができる。
すなわち、従来の給水システムでは、これらの外部機器を介してポンプ等の制御を行っていたため(
図9参照)、高コストで信頼性の低下を招く問題があったが、高機能バルブ1によれば、外部機器を必要としないため、低コストで信頼性の高い流体供給システムを構成することができる。
【0039】
以上、本発明の圧力検知形逆止弁について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明の圧力検知形逆止弁は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述の実施形態では、入口と出口とが1つずつある2方弁を例示して説明したが、3方弁など、入口や出口が複数ある弁に本発明を適用することができる。
【解決手段】入口3と、出口4と、入口側流路5と、入口側流路5と連通するとともに出口4につながる流路空間室6と、第1バネ14により付勢され外力を受けて変位する第1ダイヤフラム10の中央部に設けられた弁体部11と、第2バネ17により付勢され外力を受けて変位する第2ダイヤフラム16と、を備え、弁体部11と第2ダイヤフラム16は、ともに流路空間室6の壁部材であり、弁体部11は、第1バネ14の付勢力Fxと付勢力Fxに対抗する流路空間室6における圧力による力に基づいて、弁座口13を開放する位置と遮断する位置とに変位可能であり、第2ダイヤフラム16は、第2バネ17の付勢力Fyと付勢力Fyに対抗する流路空間室6における圧力による力に基づいて、ポンプ40を起動させる位置と動作を停止させる位置とに変位可能な構成としてある。