(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440159
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】バルーン製造用チューブ、バルーン、およびバルーン製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20181210BHJP
【FI】
A61M25/10 502
A61M25/10 510
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-207480(P2014-207480)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-73557(P2016-73557A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】大角 真太郎
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−155656(JP,A)
【文献】
特開平01−122414(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/094541(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0182833(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0016278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に直交する切断面の外側が円形で、内側が多角形であり、且つ非正多角形であることを特徴とする、バルーン製造用チューブ。
【請求項2】
前記非正多角形が、外接円を有していないことを特徴とする請求項1に記載のバルーン製造用チューブ。
【請求項3】
前記非正多角形が、少なくとも2つの異なる角度の中心角に対応する辺で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバルーン製造用チューブ。
【請求項4】
前記非正多角形が、3つの異なる角度の中心角に対応する辺で構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のバルーン製造用チューブ。
【請求項5】
前記非正多角形が九角形であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のバルーン製造用チューブ。
【請求項6】
角度が最大の中心角、2番目に大きい中心角、3番目に大きい中心角において、角度の比が60:50:10〜60:30:30であることを特徴とする、請求項4または5に記載のバルーン製造用チューブ。
【請求項7】
直管部とテーパー部を有するバルーンであって、請求項1〜6のいずれかに記載のバルーン製造用チューブを用いて製造された、直管部の肉厚が円周方向に略均一であるカテーテル用のバルーン。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のバルーン製造用チューブを、二軸延伸ブロー成形してカテーテル用のバルーンを製造することを特徴とするバルーン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末梢血管成形、冠状動脈血管成形及び弁膜成形を含む経皮的内腔手術において血管内狭窄部を拡張治療し、血流の回復をすることができるバルーンカテーテル用のバルーンを製造するためのバルーン製造用チューブ、バルーンおよびバルーン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経皮的血管形成術(以下、PTAと称することがある。)、あるいは経皮的冠動脈形成手術(以下、PTCAと称することがある。)は、血管内腔の狭窄部や閉塞部などを拡張治療し、冠動脈や末梢血管などの血流の回復または改善を目的として広く用いられている。PTAあるいはPTCAに使用されるバルーンカテーテルは、シャフトの先端部に内圧調節により膨張・収縮自在の拡張用のバルーンを接合してなるものであり、該シャフトの内部にはガイドワイヤが挿通される内腔(ガイドワイヤルーメン)と、バルーン内圧調整用の圧力流体を供給するルーメン(インフレーションルーメン)とがシャフトの長軸方向に沿って設けられている構造が一般的である。このようなバルーンカテーテルを用いたPTCAの一般的な術例は以下のとおりである。
【0003】
まず、ガイドカテーテルを大腿動脈、上腕動脈、橈骨動脈等の穿刺部位から挿通し大動脈を経由させて冠状動脈の入口にその先端を配置する。次に、前記ガイドワイヤルーメンに挿通したガイドワイヤを冠状動脈の狭窄部位を越えて前進させ、このガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを挿入してバルーンを狭窄部に一致させる。次いで、インデフレーター等のデバイスを用いてインフレーションルーメンを経由して圧力流体をバルーンに供給し、バルーンを膨張させることで当該狭窄部を拡張治療する。また、体内管腔に複数の狭窄部が存在する場合、拡張用バルーンをある部位で膨らませ収縮した後、再度、別の部位にバルーンを通過させ(リクロス性)、拡張することがある。
【0004】
拡張用のバルーンの構造は、円柱状の直管部とその両端に円錐状のテーパーからなる。一旦膨張させたバルーンを再度収縮させると、バルーンの直管部とテーパー部には翼部と縦部が交互に形成され、それら形状がバルーンの先端から基端まで長手方向に延在した折り畳み形状となる。このとき、一対の対向した翼部が放射方向に延在した扁平現象、すなわち翼部が2枚となるウィンギング形状がみられることがある。このような形状をしたバルーンは狭窄部への挿入が困難となる。したがって、バルーンが折り畳まれたときの望ましい形状は翼部の枚数が多いこと(3枚以上)である。これにより、放射方向への寸法が短くなるため折り畳み時のプロファイル径を小径化でき、通過性が容易になる。
【0005】
また、折り畳み時のプロファイル径の小径化の点で、バルーンのシャフトへの巻き付け性も重要な要素である。バルーン折り畳み時に翼部の枚数を多くするとともに、シャフトへの巻き付け性を付与することにより、リクロス性が一層向上し、より困難な狭窄部への通過性が容易になる。これを目的としてバルーンの折り畳み方法が種々提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、テーパー部が多角形断面であるバルーンによって、バルーンの折り畳み時の外径を小さくする方法が開示されている。しかしながら、直管部は、断面の内側が円形であり、安定的なシャフトへのバルーン巻き付け効果は不十分であり、そのため、再度同じ又は他の狭窄部に再挿入する際の通過性(リクロス性)が得られず、カテーテルとして挿入操作性が十分ではなかった。また、拡張時にはバルーンのテーパー部が多角形断面のため、バルーン直管部が周方向にわたって均一に拡張しにくく、狭窄部を十分に広げることができず、治療効果が十分に得られないという課題もあった。
【0007】
特許文献2には、螺旋状の溝部や突部を有するバルーンによって、折り畳み時にバルーンを小径化する方法が開示されている。しかしながら、螺旋状の溝部や突部をもたせることでバルーンのシャフトへの巻き付け効果は得ることができるものの、形状付けに使用するバルーン成型用金型が複雑な形状となるため、設備コストが非常に高くなってしまい、実用面で課題があった。また、レーザーで溝部を形成する製造方法が開示されているが、加工時のバルーンに対する熱影響が大きく、耐圧性能の低下に繋がるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−506655号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/101057パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の問題に鑑み、本発明が解決しようとするところは、バルーンカテーテルに用いられるバルーンにおいて、直管部に肉厚ムラがなく、且つ安定的な折り畳み制御ができ、更にはシャフトへの巻き付け性に優れるバルーンを製造するためのバルーン製造用チューブを提供することにある。また、バルーンチューブからバルーン製造までの工程が簡便で、成形収率が良い製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前述の課題解決のために、鋭意検討を行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、下記(1)〜(7)のバルーン製造用チューブを提供する。
(1)軸方向に直交する切断面の外側が円形で、内側が非正多角形であることを特徴とする、バルーン製造用チューブ。
(2)前記非正多角形が、外接円を有していないことを特徴とする前記(1)に記載のバルーン製造用チューブ。
(3)前記非正多角形が、3つの異なる角度の中心角に対応する辺で構成されていることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のバルーン製造用チューブ。
(4)前記非正多角形が九角形であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のバルーン製造用チューブ。
(5)角度が最大の中心角、2番目に大きい中心角、3番目に大きい中心角において、角度の比が60:50:10〜60:30:30である非正多角形であることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載のバルーン製造用チューブ。
また、本発明は、下記(7)のバルーンを提供する。
(6)前記非正多角形が、少なくとも2つの異なる角度の中心角に対応する辺で構成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のバルーン製造用チューブ。
(7)直管部とテーパー部を有するバルーンであって、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバルーン製造用チューブを用いて製造された、直管部の肉厚が円周方向に略均一であるカテーテル用のバルーン。
更に、本発明は、下記(8)のバルーン製造方法を提供する。
(8)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバルーン製造用チューブを、二軸延伸ブロー成形してカテーテル用のバルーンを製造することを特徴とするバルーン製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバルーン製造用チューブによれば、バルーン直管部の肉厚が略均一であり、且つ安定的な折り畳み制御が可能であり、更には、シャフトへの巻き付け性に優れるバルーンを提供することができる。また、本発明の製造方法により得られるバルーンは、全体的にバルーンのプロファイル径を小径化し、狭窄部に対して通過性を容易にすることが可能である。また本発明のバルーンの製造方法によれば、バルーンチューブからバルーン製造までの工程が簡便であり、成形収率が高いため、低コストでバルーンを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一般的なバルーンカテーテルの全体簡略図である。
【
図2】一般的なバルーンの外観構造を示す側面図である。
【
図3】本発明のバルーンの折り畳まれた状態を示す図である。
【
図4】本発明のに係るバルーン製造用チューブの概略図である。
【
図6】
図5から成形されたバルーンの折り畳まれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、
図1〜6を参照しながら説明する。なお、以下に示す図面は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明はこれらの図面の記載に限定されるものではない。
【0015】
本発明に用いるバルーン材質として、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドエラストラマーなどの高分子材料が挙げられる。また、これら高分子材料を2つ以上混合させたブレンド材料でも良い。
図1は一般的なバルーンカテーテルの全体簡略図である。本発明の拡張用のバルーンは、たとえば、このようなバルーンカテーテルに用いられる。本図に示すバルーンカテーテル1は、バルーン2、長軸方向に伸びるカテーテルシャフト3とを備え、バルーンカテーテル1の遠位部にはバルーン2が配置される。カテーテルシャフト3は、二重管構造を有し、バルーン2の近位部に接合される。
【0016】
図2は一般的なバルーンの外観構造を示す側面図であり、バルーン2は外径が円柱状の直管部4とその両端にある円錐状のテーパー(遠位側:5a、近位側:5b)から構成されている。
【0017】
このようなバルーン2を用い、例えば
図1に示すバルーンカテーテルを組み立て、バルーン2を一旦拡張させた後、収縮させると、
図3に示すように、直管部とテーパー部全体に翼部6と溝部7が交互に形成され、シャフト8に巻き付けられる折り畳み形状ができる。このとき、狭窄部への通過性や操作性に有利となるのは、収縮したときに形成される翼部の枚数を増やすこと(翼部の枚数が3枚以上)であり、且つシャフトにバルーンが巻き付けられることで折り畳み径(以下、プロファイル径と称することがある。)を小さくすることである。また、バルーン直管部に極端な肉厚ムラがないこともプロファイル径を小さくする上では重要となる。したがって、前記の通過性や操作性をより向上するためには、周方向に膜厚が略均一であるバルーンの折り畳み形状を安定的に制御し、プロファイル径を小さくし、且つプロファイル径を安定的に保つことが必要不可欠である。
【0018】
これを実現する方法として、本発明ではバルーンのブロー成形で使用するバルーン製造用チューブを押出成形法によって作製する際、チューブ切断面の外側(外周形状)を円形、内側(内周形状)を非正多角形とし、当該チューブをブロー成形する方法で作製したバルーンを用いる方法を採用した。
本発明のバルーン製造用チューブにおいて、前記非正多角形が、シャフトに巻き付けられる形状で折り畳まれやすいという点で、外接円を有していない非正多角形であることが好ましい。
【0019】
また、前記非正多角形は、シャフトへの巻き付け性に優れる観点で、少なくとも2つの異なる角度の中心角に対応する辺で構成されている事が好ましく、特に、3つの異なる角度の中心角に対応する辺で構成されていることが好ましい。更には、前記非多角形は、3つの異なる角度の中心角に対応する辺で構成されている9角形が好ましい。
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施態様の1つとして、切断面の内側が3つの異なる角度の中心角(A、B、C)に対応する辺で構成されている9角形であるバルーン製造用チューブの例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0021】
図4は本発明に係るバルーン製造用チューブ9を示す図である。
図5は、
図4のB-B’切断面における断面図である。このような内側が非正多角形のバルーン用チューブを作製する方法として、バルーン製造用チューブの断面に対応する形状の押出ダイ(金型)を用いても押出成型することで作製できる。また、別の作製方法として、9角形の芯材にチューブを被せ、さらにその上に熱収縮チューブを被せた後、熱風を熱収縮チューブにかけることで、バルーン製造用チューブが収縮し、内側が芯材と同型の形状を有し、外側が円形を有したチューブを得ることもできる。ただし、簡便さやブロー成形の収率の観点から、押出成形によりチューブを作製するほうが好ましい。
【0022】
次いで、前記バルーン製造用チューブ9をバルーン用金型に配置し、二軸延伸ブロー成型によりバルーン製造用チューブを軸方向と径方向に延伸することにより、目的のバルーンを作製できる。なお、二軸延伸ブロー成型は加熱条件下で行われても良いし、また、複数回行われても良い。また、軸方向の延伸は径方向の延伸と同時に行なっても良いし、その前後に行っても良い。また、バルーンの形状や寸法を安定させるために、アニーリング処理を実施しても良い。
【0023】
バルーン用金型のキャビティの形状は、バルーンが例えば
図1あるいは2に示した外形のバルーン2の場合、即ち、外径が円柱状の直管部4、外径が略円錐状のテーパー部5a、5b、であるバルーンの場合は、このバルーンの外径に対応した形状を有する。使用可能な金型としては、例えば開閉可能な対をなす構造を有し、閉じたときにバルーン外形に対応する形状を有するように、対をなす各金型に凹形状を設けたものが挙げられる。
【0024】
図4あるいは
図5のバルーン製造用チューブから製造されたバルーンを一旦拡張し、収縮させると翼部と溝部が形成され、それらがバルーンの長手方向に延在する形状で折り畳まれる。翼部、溝部を形成するのは、二軸延伸ブロー成形中にバルーンチューブが径方向へ膨張する際、金型までの拡張率が頂点部と直線部とで異なるためである。一般的に、金型までの拡張率を変化させると、バルーン強度やバルーン伸び特性が変化するようになり、バルーン物性(分子配向や結晶化度等)に大きく影響する。したがって、これら拡張率の違いによるバルーン物性変化により、翼部、溝部となりうる。
【0025】
尚、本願におけるブロー成形時の拡張率とは、バルーン用金型の内径/バルーン製造用チューブ内径(バルーン用金型の内径をバルーン製造用チューブ内径で除した値)であり、また、バルーン製造用チューブ内径とは、バルーン製造用チューブの外周形状の円の中心から、内周形状の辺までの距離の平均値である。
【0026】
図6はチューブ切断面の内側が非正多角形である、中心角の角度の比率がA:B:Cである9角形のチューブから成形されたバルーンの折り畳まれた状態を示す図である。これら中心角の比率を有したバルーンチューブから成形されたバルーンが折り畳まれると、翼部の枚数は3枚となり、巻き付け性を有した形状となる。これは頂点部10を中心として中心角の比率A、B,Cからなる直線部12、13、14が翼部、比率が最も大きいAからなる直線部12の一部が溝部となることで翼部が3枚となり、また翼部の一部である直線部13、14の間の存在する頂点11がヒンジポイントとなることで、巻き付け性が付与される。
【0027】
また、角度が最大の中心角、2番目に大きい中心角、3番目に大きい中心角において、角度の比A:B:C、は巻き付け性の効果が大きい点で60:50:10〜60:30:30が好ましく、60:45:15〜60:32.5:27.5がより好ましく、60:40:10〜60:35:25が特に好ましい。一方、チューブ切断面の内側が正9角形のチューブから成形されたバルーンが折り畳まれると、翼部の枚数は3枚となり、安定的な折り畳み制御は可能となるが、巻き付け癖となるヒンジポイントがないため、バルーンに巻き付け性には改善の余地があった。
【0028】
また、本発明によって作製したバルーン直管部の膜厚は円周方向に略均一である。略均一とは、変動係数(標準偏差/平均値)が6%以内であることを指す。変動係数がこの程度であれば、バルーンが折り畳まれたときのプロファイル径に何ら支障をきたすものではなく、安定したプロファイル径を維持できる。
【0029】
本発明の製造方法により得られたバルーンは、末梢血管成形、冠状動脈血管成形及び弁膜成形を含む経皮的内腔手術によって血管内狭窄部を拡張する目的として使用される。経皮的内腔手術は、体外からバルーンカテーテルを挿入し治療部位までバルーンを進入させた後、拡張し、血流を回復させる。当該カテーテルを体外に取り出すときや再度、他の病変部へ進入させるときには、一旦拡張したバルーンを収縮させた際、シャフトへの巻き付けが付与されることで、よりプロファイル径が小さくなり有利となる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について詳説するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
バルーン製造用チューブとして、デュロメーター硬度で72Dのポリアミドエラストマー(商品名:PEBAX7233SA01:アルケマ社製)を用いて、チューブの切断断面が
図4ないし
図5で示されるようにチューブ切断面の外側が円形、内側が非正多角形である中心角の角度の比率が60:35:25である9角形から構成されるチューブを押出成形により作製した。このとき、チューブ寸法はチューブの外径を0.98mm、チューブ内側を構成する9角形の半径が約0.44mmとなるよう設計した。次いで、押出したバルーン用チューブをバルーン成形用金型内部にセットし、二軸延伸ブロー成形を行い、直管部の外径が3.00mm、直管部の長さが15mmのバルーンを作製し、それらバルーンを搭載したカテーテルを5本作製した。
【0032】
(実施例2)
実施例1と同じ材料と同じ寸法をもって切断面の外側が円形、内側が非正多角形である中心角の比率が60:40:20の9角形から構成されるバルーン用チューブを作製し、次いで、実施例1と同方法によりバルーンを作製し、それらバルーンを搭載したカテーテルを5本作製した。
【0033】
(実施例3)
実施例1と同じ材料と同じ寸法をもって切断面の外側が円形、内側が非正多角形である中心角の角度の比率が60:30:30の9角形から構成されるバルーン用チューブを作製し、次いで、実施例1と同方法によりバルーンを作製し、それらバルーンを搭載したカテーテルを5本作製した。
【0034】
(実施例4)
実施例1と同じ材料と同じ寸法をもって切断面の外側が円形、内側が非正多角形である中心角の角度の比率が60:45:15の9角形から構成されるバルーン用チューブを作製し、次いで、実施例1と同方法によりバルーンを作製し、それらバルーンを搭載したカテーテルを5本作製した。
【0035】
(比較例1)
実施例1と同じ材料と同じ寸法をもって、切断面の外側、内側が正9角形のバルーン用チューブを作製し、次いで、実施例1と同方法によりバルーンを作製し、それらバルーンを搭載したカテーテルを5本作製した。
【0036】
(評価)
各実施例および比較例にて作製したバルーンを37℃水温中にて1.82Mpaで30秒間拡張した。その後、バルーンを収縮させ、折り畳まれたときに形成される翼部数を数え、シャフトへの巻き付け性を確認した。また、各実施例のバルーン直管部の中央部とその両端部の膜厚をマイクロメータにより周方向へ60°間隔で測定し、計18点の膜厚を算出した。さらに、冠動脈の狭窄部を模擬した内径1.20mmの模擬狭窄管にバルーンを収縮させたカテーテルを手動により推し進め、バルーン部の通過性を確認した。評価した結果を、表1に示した。
【0037】
(評価結果)
表1より、実施例1〜4及び比較例1のバルーンを折り畳ませたときに形成される翼部数は3枚であった。一方、巻き付け性は実施例1及び2が最も良く、次いで実施例3及び4、比較例では全く巻き付け性が付与されていなかった。カテーテルを用いた模擬狭窄管への通過性(リクロス性)は、実施例1及び2が5本中5本、次いで実施例3及び4は5本中4本、比較例は5本中0本であり、巻き付け性が良いほどプロファイル径の小径化を図ることができ、リクロス性に対する効果が大きかった。したがって、実施例1〜4で作製したすべてのサンプルは安定的に折り畳みが制御され、且つシャフトへの巻き付け性が優れていることを確認した。さらに、各実施例のバルーン膜厚は、比較例と同程度の厚みであることも確認した。また、本発明に係る全実施例において、一連の成形工程は簡便であり、成形収率も極めて高かった。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1.バルーンカテーテル
2.バルーン
3.シャフト
4.バルーン直管部
5.バルーンテーパ部
6.翼部
7.溝部
8.カテーテルシャフト
9.バルーン製造用チューブ
10、11.頂点部
12、13、14直線部