(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440194
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】情報表示媒体
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
G06K19/077 212
G06K19/077 112
G06K19/077 252
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-57318(P2015-57318)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-177546(P2016-177546A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】井口 愛
(72)【発明者】
【氏名】本泉 光
【審査官】
境 周一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−076136(JP,A)
【文献】
特開2014−119803(JP,A)
【文献】
特開2009−271824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 1/00−21/08
G09G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材上に形成された複数の表示電極からなり、前記複数の表示電極が正または負の電位に選択的にされる第1の電極層と、前記第1の電極層に対向して透明基板上に形成され、接地電位とされる第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に挟み込まれた情報表示層とを有し、前記複数の表示電極と前記第2の電極層との間の電位差に応じた前記情報表示層による色が前記第2の電極層側から認識される情報表示媒体において、
前記第2の電極層と電気的に接続されて前記ベース基材上に形成された導電部と、
前記ベース基材上に形成され、一端が空隙を介して前記導電部と対向し、前記一端から前記第2の電極層とは反対側の方向に延びたアンテナ素子部と、
前記アンテナ素子部の前記一端と前記導電部とに接続された非接触通信素子とを有することを特徴とする情報表示媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された2つの電極層間に挟み込まれた情報表示層において2つの電極層間の電位差に応じて情報を表示する情報表示媒体に関し、特に、非接触通信機能を有する情報表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報を表示する表示装置として、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等が用いられており、これらは、テレビ受像機に用いられることによりテレビ局から送信されたテレビ映像を表示したり、パソコンのディスプレイとして用いられることにより、パソコンに保存された情報やインターネットを介して配信された情報を表示したりすることができる。
【0003】
昨今、上述したような表示装置に加えて、デジタル情報を紙のように薄い表示媒体に表示する薄型の情報表示媒体が普及しはじめている。このような薄型の情報表示媒体としては、例えば、対向配置された2つの電極層間に、帯電性粒子が液体内に分散した情報表示層を挟み込み、2つの電極層に電圧が印加された場合に帯電性粒子が液体内を移動することにより、情報を表示する電気泳動ディスプレイがある。
【0004】
さらに近年では、このような情報表示媒体に非接触通信機能を付加したものが考えられている。
【0005】
図3は、非接触通信機能を有する情報表示媒体の一例を示す図であり、(a)は内部構造を示す図、(b)は(a)に示したA−A’に対応する領域の断面図である。
【0006】
本例は
図3に示すように、情報を表示する表示部130と、非接触通信を行うためのダイポールアンテナ120とを有する情報表示カード101である。
【0007】
表示部130は、ダイポールアンテナ120の長手方向に沿って配置されている。表示部130は、ベース基材110上に表示パターンに応じたセグメント形状に表示電極131やそれに接続された配線電極(不図示)が形成されており、表示電極131に透明導電膜基板132が対向配置されて構成されている。これら表示電極131と透明導電膜基板132との間には、これら表示電極131と透明導電膜基板132との間の電位差によって表示色が変化する情報表示層133が挟み込まれている。このように構成された表示部130は、表示ドライバ170から供給される電圧によって表示電極131と透明導電膜基板132との間に電位差が生じ、この電位差によって情報表示層133の表示色が変化し、その色が透明導電膜基板132側から視認されることにより、情報が認識されることとなる。表示ドライバ170には、表示用電源160から供給された電力によって駆動するCPU150が接続されており、CPU150の制御によって表示ドライバ170が駆動する。
【0008】
ダイポールアンテナ120は、ベース基材110上に空隙を介して直線状に形成された帯状の2つの導電部121a,121bから構成されており、外部に設けられたリーダ/ライタに近接することによって電流が流れる。この2つの導電部121a,121bの空隙を介して対向する端部が給電点となってICチップ140が接続されている。ICチップ140は、ダイポールアンテナ120に流れた電流が供給されることによって駆動し、ダイポールアンテナ120を介した非接触通信によって情報が送受信され、情報の書き込みや読み出しが行われる。
【0009】
このように、ダイポールアンテナを有する情報表示媒体においては、ダイポールアンテナが、帯状の2つの導電部が給電点を介して直線状に並んで配置された構成であることから、例えば特許文献1に開示された非接触ICカードのように、表示部がダイポールアンテナに沿って配置されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−200291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したように、電極層を有する表示部がダイポールアンテナに沿って配置されて構成された情報媒体は、表示部による情報が視認される方向については、電極層等の部品において電波による通信を阻害する作用が働き、ダイポールアンテナの感度が低下して通信距離が短くなってしまうという問題点がある。
【0012】
図4は、
図3に示したダイポールアンテナ120の通信範囲の変化を示す図であり、(a)はダイポールアンテナ120単体の通信範囲を示す図、(b)は
図3に示した情報表示カード101と同様にダイポールアンテナ120の長手方向に沿って表示部130が配置された場合の通信範囲を示す図である。
【0013】
ダイポールアンテナ120単体では、ダイポールアンテナ120の通信範囲は
図4(a)に示すように、ダイポールアンテナ120を中心軸とした回転体に近いものとなる。そのため、ダイポールアンテナ120を中心軸とした放射方向についてはどの方向においても通信範囲が同じものであり、どの方向にリーダ/ライタを配置しても、ダイポールアンテナ120単体の通信特性による距離内であれば、ダイポールアンテナ120に接続されたICチップ140に対して情報の送受信を行うことができる。
【0014】
一方、ダイポールアンテナ120の長手方向に沿って表示部130が配置された場合は、表示部130が、表示電極131や配線電極、さらには透明導電膜基板132が有する透明電極を具備することで反射器として機能し、
図4(b)に示すように、ダイポールアンテナ120の表示部130とは反対側の方向については、ダイポールアンテナ120の指向性が増幅され、ダイポールアンテナ120による通信距離が短くなることがない。ところが、ダイポールアンテナ120と表示部130とが配置される面に垂直方向においては、ダイポールアンテナ120単体の場合と比べて通信距離が短くなってしまう。
【0015】
ここで、
図3に示した情報表示カード101において、表示部130に表示された情報を、ダイポールアンテナ120を介した非接触通信によって書き換える場合、作業者は、表示部130にて表示される情報を見ながらダイポールアンテナ120を介した非接触通信を実施することになる。そのため、ダイポールアンテナ120と表示部130とが配置される面に垂直方向の通信距離が短くなってしまうと、表示部130に表示される情報の書き換え作業が困難となってしまう場合がある。
【0016】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、非接触通信機能を有する情報表示媒体において、情報を視認する方向の通信距離を十分に確保することができる情報表示媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材上に形成された複数の表示電極からな
り、前記複数の表示電極が正または負の電位に選択的にされる第1の電極層と、前記第1の電極層に対向して透明基板上に形成され、接地電位とされる第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に挟み込まれた情報表示層とを有し、前記複数の表示電極と前記第2の電極層との間の電位差に応じた前記情報表示層による色が前記第2の電極層側から認識される情報表示媒体において、
前記第2の電極層と電気的に接続されて前記ベース基材上に形成された導電部と、
前記ベース基材上に形成され、一端が空隙を介して前記導電部と対向し、前記一端から前記第2の電極層とは反対側の方向に延びたアンテナ素子部と、
前記アンテナ素子部の前記一端と前記導電部とに接続された非接触通信素子とを有することを特徴とする。
【0018】
上記のように構成された本発明においては、非接触通信素子に導電部を介して接続された第2の電極層が接地電位とされることにより、この第2の電極層と、非接触通信素子に接続されたアンテナ素子部とにより、第2の電極層が接地されたモノポールアンテナが構成される。このように、情報表示層にて情報を表示するための第2の電極層を用いてモノポールアンテナが構成されるので、第2の電極層によってアンテナ素子部による通信距離が短くなることがなく、情報を視認する方向においても、通信距離が十分に確保されることになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、情報表示層にて情報を表示するための第2の電極層と、非接触通信素子に接続されたアンテナ素子部とによりモノポールアンテナが構成されることにより、第2の電極層によってアンテナ素子部による通信距離が短くなることがなく、情報を視認する方向の通信距離を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の情報表示媒体の実施の一形態を示す図であり、(a)は内部構造を示す図、(b)は(a)に示したA−A’に対応する領域の断面図である。
【
図2】
図1に示した情報表示カードの通信範囲を示す図である。
【
図3】非接触通信機能を有する情報表示媒体の一例を示す図であり、(a)は内部構造を示す図、(b)は(a)に示したA−A’に対応する領域の断面図である。
【
図4】
図3に示したダイポールアンテナの通信範囲の変化を示す図であり、(a)はダイポールアンテナ単体の通信範囲を示す図、(b)は
図3に示した情報表示カードと同様にダイポールアンテナの長手方向に沿って表示部が配置された場合の通信範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の情報表示媒体の実施の一形態を示す図であり、(a)は内部構造を示す図、(b)は(a)に示したA−A’に対応する領域の断面図である。
【0023】
本形態における情報表示媒体は
図1に示すように、表示部30と、導電部22と、アンテナ素子部20と、ICチップ40と、表示用電源60と、CPU50と、表示ドライバ70とを有する情報表示カード1である。
【0024】
表示部30は、電子ペーパーからなり、PETフィルムやガラスエポキシ等の絶縁材料からなるベース基材10上に、銀や銅、あるいはカーボン等の導電ペーストを用いたスクリーン印刷によって、表示パターンに応じたセグメント形状に第1の電極層を構成する表示電極31やそれに接続された配線電極(不図示)が形成されており、表示電極31に透明導電膜基板32が対向配置されて構成されている。透明導電膜基板32は、ガラスや透明フィルム等からなる透明基板32aの一方の面に、第2の電極層となる透明電極32b(例えば、ITO)が表示電極31に対向して形成されて構成されている。これら表示電極31と透明導電膜基板32との間には、表示電極31と透明電極32bとの電位差によって表示色が変化する情報表示層33が挟み込まれて構成されている。情報表示層33としては、例えば、電気泳動タイプや電子粉粒タイプ、エレクトロクロミック等が挙げられる。このように構成された表示部30は、透明電極32bが接地電位とされた状態で、複数の表示電極31が正または負の電位に選択的にされることにより、この表示電極31と透明電極32bとの間に生じた電位差に応じて情報表示層33の表示色が変化し、その色が透明導電膜基板32側から視認されることにより、情報が認識されることとなる。
【0025】
導電部22は、表示部30に隣接してベース基材10上に形成されており、導電性部材23を介して透明電極32bと電気的に接続されている。
【0026】
アンテナ素子部20は、メアンダ形状を有してベース基材10上に形成されており、その一端が空隙を介して導電部22と対向し、その一端から表示部30とは反対側の方向に向かって延びている。すなわち、アンテナ素子部20は、導電部22と対向する一端から透明電極32bとは反対側の方向に向かって延びて形成されている。アンテナ素子部20は、後述するように、透明電極32bとによってモノポールアンテナを構成し、外部に設けられた外部送受信機であるリーダ/ライタから送信された、極超短波(UHF)帯の交流からなる搬送波を受信することによって交流電流を取得し、この搬送波に乗せられた電力によって電流が流れる。
【0027】
ICチップ40は、本発明における非接触通信素子となるものであって、導電部22とアンテナ素子部20の一端とに跨がって接続されている。そして、導電部22が導電性部材23を介して透明電極32bと電気的に接続されていることにより、ICチップ40は、導電部22とアンテナ素子部20の一端とがそれぞれ給電点となって、透明電極32bとアンテナ素子部20とに接続されていることになる。このような構成において、上述したように透明電極32bが接地電位とされることにより、この透明電極32bとアンテナ素子部20とによってモノポールアンテナが構成される。このように透明電極32bとアンテナ素子部20とによってモノポールアンテナが構成されることで、ICチップ40は、アンテナ素子部20に流れた電流が供給されることによって駆動し、アンテナ素子部20を介した非接触通信によって情報が送受信され、情報の書き込みや読み出しが行われることになる。
【0028】
表示用電源60は、CPU50及び表示ドライバ70を駆動するための電力を供給する。
【0029】
CPU50は、表示用電源60から供給された電力によって駆動し、ICチップ40にて処理された情報を表示部30に表示させるために表示ドライバ70を制御する。
【0030】
表示ドライバ70は、表示用電源60から供給された電力によって駆動し、CPU50の制御によって、表示部30に電圧を供給する。
【0031】
上記のように構成された情報表示カード1においては、表示部30にて情報を表示したりアンテナ素子部20を介して非接触通信を行ったりする際に透明電極32bが接地電位とされた状態となる。それにより、透明電極32bとアンテナ素子部20とによってモノポールアンテナが構成され、外部送受信機となるリーダ/ライタに近接すると、アンテナ素子部20に電流が流れ、この電流がICチップ40に供給されてリーダ/ライタとの間にて非接触通信が行われて情報が送受信される。そして、リーダ/ライタから受信された情報に応じて、ICチップ40にて処理された情報や、ICチップ40に記憶された情報が表示部30に表示されることとなる。
【0032】
情報表示層33は、例えば、顔料で着色された隔壁内液体中に、高屈折率の光散乱成分を含む帯電性粒子が分散して構成されており、表示電極31と透明電極32bとの間の電位差に応じて帯電性粒子が隔壁内液体中をクーロン力で移動して表示電極と透明電極とのいずれか一方の側に引き寄せられていく。それにより、表示部30において、透明導電膜基板32側から見た場合に、帯電性粒子と隔壁内液体との色の違いによって所望の情報が認識されることになる。
【0033】
また、ICチップ40にて処理された情報や、ICチップ40に記憶された情報が、アンテナ素子部20を介してリーダ/ライタに送信されることになる。
【0034】
以下に、上述した情報表示カード1の通信特性について説明する。
【0035】
図2は、
図1に示した情報表示カード1の通信範囲を示す図である。
【0036】
上述したように、
図1に示した情報表示カード1は、ICチップ40が、導電部22とアンテナ素子部20の一端とがそれぞれ給電点となって、透明電極32bとアンテナ素子部20とに接続されていることにより、表示部30にて情報を表示したりアンテナ素子部20を介して非接触通信を行ったりする際に透明電極32bが接地電位とされた状態となると、透明電極32bとアンテナ素子部20とによって、透明電極32bが接地されたモノポールアンテナが構成される。
【0037】
このモノポールアンテナの通信範囲は、
図2に示すように、アンテナ素子部20を中心軸とした回転体に近いものとなる。そのため、非接触通信を行うためのアンテナ素子部20の近傍に、表示電極31や透明電極32bを有する表示部30が存在していても、その表示部30を構成する透明電極32bがモノポールアンテナの一部となることで、アンテナ素子部20を中心軸とした放射方向についてはどの方向においても通信範囲が同じものとなり、表示部30による情報を視認する方向についても通信距離が短くなることがない。そして、透明電極32bとアンテナ素子部20とから構成されるモノポールアンテナの通信特性による距離内であれば、このモノポールアンテナに接続されたICチップ40に対して情報の送受信を行うことができる。
【0038】
このように本形態においては、情報表示層30にて情報を表示するための透明電極32bを、ICチップ40に接続されたアンテナ素子部20を用いて構成されるモノポールアンテナの一部とすることにより、非接触通信を行うためのアンテナ素子部20の近傍に、表示電極31や透明電極32bを有する表示部30が存在していても、アンテナ素子部20による通信距離が短くなることがなく、情報を視認する方向の通信距離を十分に確保することができる。
【0039】
なお、本形態においては、アンテナ素子部20として、メアンダ状のものを例に挙げて説明したが、本発明におけるアンテナ素子部としてはメアンダ状のものに限らず、その一端が給電点となって空隙を介して導電部22と対向し、その一端から表示部30とは反対側の方向に向かって延びているものであれば、帯状やボウタイ状のものであってもよい。また、アンテナ素子部20が、給電点となる一端から延びる方向は、表示部30とは反対側の方向にベクトル成分を有していれば、延びる方向が途中で若干変化したり、給電点と表示部30とを結ぶ直線の延長線上から若干ずれていたりしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 情報表示カード
2 通信範囲
10 ベース基材
20 アンテナ素子部
22 導電部
23 導電性部材
30 表示部
31 表示電極
32 透明導電膜基板
32a 透明基板
32b 透明電極
33 情報表示層
40 ICチップ
50 CPU
60 表示用電源
70 表示ドライバ