特許第6440244号(P6440244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 首都高速道路株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000009
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000010
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000011
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000012
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000013
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000014
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000015
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000016
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000017
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000018
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000019
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000020
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000021
  • 特許6440244-橋梁の制振構造の設定方法 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440244
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】橋梁の制振構造の設定方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 1/00 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   E01D1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-146975(P2014-146975)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-23444(P2016-23444A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】蔵治 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝典
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】若原 敏裕
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−332478(JP,A)
【文献】 特開2014−020141(JP,A)
【文献】 米国特許第06233884(US,B1)
【文献】 磯田和彦 他,慣性質量ダンパーを組み込んだ低層集中制震に関する基礎的研究,日本建築学会構造系論文集,2013年 4月,Vol.78 No.686,pp.713-722
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
F16F 15/00−15/36
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側を上部構造に接続し、他端側を下部構造に接続して、支承と並列配置されるように制振ダンパーを設置して構成されるとともに、
前記制振ダンパーとして粘性減衰系ダンパーと慣性質量ダンパーが併用され橋梁の制振構造の最適な諸元を設定する方法であって、
前記慣性質量ダンパーの慣性質量Ψと減衰係数cを下記の式(1)と式(2)で設定し、
且つ、予め橋脚頂部の質量(橋脚が複数の場合はその総合計)をm/橋桁質量(多径間の場合は一体化された橋桁の総重量)mをパラメータとしてΨ/mと橋脚部の総水平剛性k/支承の総水平剛性kの関係、hとk/kの関係を求めておき、橋梁のm/mおよびk/kから最適なΨとhを設定し最適なcを得ることを特徴とする橋梁の制振構造の設定方法。
【数1】
【数2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の制振構造の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、橋梁技術の進歩に伴い、振動、騒音の減少、走行性の向上に有効な多径間連続桁橋が数多く設計、施工されている。また、橋梁規模の大型化に伴って、上部構造(桁、床版などの上部工)の地震時慣性力を下部構造(橋脚、橋台などの下部工)に分配する構造が多く採用されている。例えば、下部構造と上部構造の間の支承部にゴム支承を用い、このゴム支承の水平剛性(せん断剛性)を調整することにより、下部構造に作用する地震時慣性力を任意に調整、配分できるようにした構造が多く採用されている。
【0003】
一方、ゴム支承は、従来のピン支承よりはるかに水平剛性が小さく変形能力が大きいが、LRB(鉛プラグ入り積層ゴム)や高減衰ゴム支承のような免震装置と比較すると減衰が数分の1程度しかなく変形能力も小さい。このため、設計時に想定された地震時慣性力を上回る過大な地震力が作用すると、支承部や下部構造に損傷が生じるおそれがある。特に、阪神大震災や東日本大震災を受け、設計用地震動が見直されて入力地震力が増大しており、これに伴い、長周期地震動への対応など既存インフラの耐震性向上技術の開発が急務とされている。
【0004】
そして、従来建物などに適用されてきた免震技術や制振技術を橋梁の耐震性能を向上させる技術手法として採用することが提案、検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−228296号公報
【特許文献2】特開2006−9503号公報
【特許文献3】特開平7−317822号公報
【特許文献4】特許第3046192号公報
【特許文献5】特開2004−332478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まず、免震構造は、固有周期を長周期化することで免震対象の構造物の応答が小さくなる場合に有効である。これに対し、橋梁の免震化においては、橋梁の変形を抑えることが必要であり、建築用と比較してせん断剛性Gが3〜4倍程度の大きな積層ゴム支承を使用することになる。このため、固有周期が2秒程度となり、効果的に長周期化を図ることができず、特に地盤条件が悪い場合や長周期地震動の対応が求められる場合には、十分な免震効果が発揮されにくく、その適用が困難になる。さらに、既存橋梁を免震化する場合には、高コスト、施工時に橋梁を利用できなくなるなどの課題もある。
【0007】
一方、制振構造は、橋梁の下部構造と上部構造の間に制振ダンパーを追加設置し、減衰性能を付与することにより、比較的容易に且つ低コストで応答を低減することができる。橋梁の耐震性能を向上させることができる。
しかしながら、地震時に下部構造が変形することによって制振ダンパーの効きが悪くなる問題があり、逆に、ダンパー性能を増大して支承部の変形を抑制すると下部構造のせん断力や上部構造の加速度が大幅に増加してしまうという不都合が生じる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、制振によって確実且つ効果的に橋梁の耐震性能を向上させることを可能にする橋梁の制振構造の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の橋梁の制振構造の設定方法は、一端側を上部構造に接続し、他端側を下部構造に接続して、支承と並列配置されるように制振ダンパーを設置して構成されるとともに、前記制振ダンパーとして粘性減衰系ダンパーと慣性質量ダンパーが併用され橋梁の制振構造の最適な諸元を設定する方法であって、前記慣性質量ダンパーの慣性質量Ψと減衰係数cを下記の式(1)と式(2)で設定し、且つ、予め橋脚頂部の質量(橋脚が複数の場合はその総合計)をm/橋桁質量(多径間の場合は一体化された橋桁の総重量)mをパラメータとしてΨ/mと橋脚部の総水平剛性k/支承の総水平剛性kの関係、hとk/kの関係を求めておき、橋梁のm/mおよびk/kから最適なΨとhを設定し最適なcを得ることを特徴とする。
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【発明の効果】
【0014】
本発明の橋梁の制振構造の設定方法においては、支承部と並列に制振装置を設置するだけで支承部の水平変位を抑制できるとともに、下部工(橋脚部)に作用する力(せん断力、モーメント)をも低減でき、基礎に作用する地震力も低減できる。
【0015】
これにより、既存橋脚部や杭の耐力が小さく、制振しない場合に大きな損傷を生じていた部位における応答が制振により大幅に低減され、損傷を防止または軽減することができる。特に、杭のように改修工事でも補強することが困難な部材の耐力を増大させることなく耐震性能を向上させることができる。すなわち、耐震余裕度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造(a)及びこの振動解析モデル(b)を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造の慣性質量ダンパーの一例を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するシミュレーションを行う際に用いた振動解析モデルを示す橋梁の側面図(a)、床伏図(b)、(b)のX1−X1線矢視図(c)である。
図4】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造の設定方法で用いるΨ/mとk/kの関係の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造の設定方法で用いるhとk/kの関係の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、加振振動数比と加速度応答倍率の関係を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、加振振動数比と反力応答倍率の関係を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、加振振動数比と変位応答倍率の関係を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、加振振動数比と変位応答倍率(制振構造を備えたケースのみ)の関係を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するシミュレーションで用いた入力地震動の波形を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、橋桁部の時刻歴加速度応答波形を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、支承部の時刻歴変位応答波形を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、橋脚部の時刻歴せん断力応答波形を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造を設けた橋梁の耐震性能を確認するために行ったシミュレーションの結果であり、橋脚頂部の時刻歴加速度応答波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1から図14を参照し、本発明の一実施形態に係る橋梁の制振構造及び橋梁の制振構造の設定方法について説明する。
【0018】
本実施形態の橋梁の制振構造Aは、図1に示すように、例えば多径間連続桁形式の高架橋などの橋梁の制振構造であり、橋梁1の下部構造3と上部構造2の間に制振ダンパー(制振機構)B1、B2を設置して構成されている。
【0019】
さらに、この橋梁の制振構造Aは、制振ダンパーB1、B2を支承4に並列に配して構成されている。また、本実施形態では、橋桁(上部構造2)の連続部下の橋脚部(下部構造3)を対象とするため、橋脚部を挟んで橋軸O1方向の一方の側の制振ダンパーとしてオイルダンパー等の粘性減衰系ダンパーB1が設けられ、他方の側の制振ダンパーとして慣性質量ダンパーB2が適用されている。
なお、本実施形態のような場合に橋脚部を挟んで一方の側と他方の側の両制振ダンパーB1、B2をオイルダンパー等の粘性減衰系ダンパーとしてもよい。
【0020】
ここで、本実施形態の他方の側に設けられる制振ダンパーである慣性質量ダンパーB2の一例を図2に示す。
【0021】
この慣性質量ダンパーB2は、中心軸線O2を慣性質量ダンパーB2の軸線O2と同軸上に配して設けられたボールねじ10と、ボールねじ10に螺着して配設されたボールナット11と、ボールナット11に取り付けられ、ボールナット11の回転に従動して回転する回転錘12とを備えて構成されている。
【0022】
ボールねじ10は、その一端10aに、橋梁1の上部構造2又は下部構造3に接続するためのボールジョイントやクレビスなどの連結部材13が取り付けられている。
【0023】
また、ボールねじ10に螺着したボールナット11は、軸受け14に支持されている。軸受け14は、軸線O2周りに回転不能に且つ軸線O2方向に移動不能に固設される円環状の外輪14aと、外輪14aの内孔内に配されて軸線O2周りに回転可能に支持された円環状の内輪14bとを備えて形成されている。そして、ボールねじ10が軸受け14の内輪14bの中心孔に挿通して配設されるとともに、ボールナット11が軸受け14の内輪14bに固設されている。これにより、ボールナット11は、軸線O2周りに回転可能に、且つ軸線O2方向に移動不能に配設されている。
【0024】
さらに、ボールナット11に回転錘12が一体に固定して設けられている。回転錘12は例えば略円筒状に形成され、ボールねじ10を内部に挿通し、ボールねじ10と互いの軸線O2を同軸上に配した状態でボールナット11に固着して配設されている。
【0025】
また、慣性質量ダンパーB2の他端側、すなわちボールねじ10の他端10b側には、円筒状に形成された筒体15が設けられている。
この筒体15は、所定長さの高軸剛性かつ高曲げ剛性の中空円筒体であって、その他端(図中左側の端部)15aに内部を閉塞させるように円板状の接続板17が固着され、この接続板17に、慣性質量ダンパーB2の他端を、橋梁1の下部構造3又は上部構造2に接続するためのボールジョイントやクレビスなどの連結部材18が取り付けられている。また、筒体15は、その一端側(図中右側の端部)15bが軸受け14に固着され、ボールねじ10の他端10b側が内部に挿入されている。
【0026】
そして、上記構成からなる慣性質量ダンパーB2においては、地震などが発生し、橋梁1に振動エネルギーが作用して下部構造3と上部構造2に相対的な変位が生じると(入力されると)、この変位差に応じてボールねじ10が軸線O2方向に進退し、軸受け14の内輪14bに支持されたボールナット11が回転するとともに回転錘12が回転する。なお、このとき、ボールねじ10は、軸線O2方向に進退するとともに筒体15の内孔に挿入・出する。
これにより、回転錘12の実際の質量の数千倍もの慣性質量効果が得られ、オイルダンパーなどの従来の制振装置を設置した場合と比較し、応答変位が大幅に低減することになる。
【0027】
なお、慣性質量ダンパーB2は、両端に作用する相対変位で錘12を回転させ、錘質量の数千倍もの大きな慣性質量効果を得るものであるため、作用する相対加速度に比例した反力が得られる。このため、橋梁1の上部構造2の温度による伸縮(低速)にはほとんど反力を生じさせずに追従することになる。
【0028】
そして、本実施形態の制振構造Aは、このような慣性質量ダンパーB2とオイルダンパーB1が、図1(a)及び図3に示すように橋脚部を挟んで一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、橋梁1の下部構造(橋脚頂部など)3と上部構造(橋桁など)2とに接続し、支承4に対して並列配置した形で設置される。この橋梁の制振構造Aは、慣性質量ダンパーB2の慣性質量Ψ、オイルダンパーB1の粘性減衰や慣性質量ダンパーB2の内部減衰を合計して減衰係数cとし、図1(b)のようにモデル化することができる。また、本実施形態の制振構造Aでは、各諸元を橋梁1の1次固有振動数近傍における周波数伝達関数の応答倍率のピーク値が最小となるように設定する。
【0029】
ここで、本実施形態の橋梁の制振構造Aの設定方法においては、橋桁質量(多径間の場合は一体化された橋桁の総重量)をm、橋脚頂部の質量(橋脚が複数の場合はその総合計)をm 、支承4の総水平剛性をk、橋脚部の総水平剛性をkとし、慣性質量ダンパーB2の慣性質量Ψと減衰係数cを次の式(3)、式(4)で設定する。
なお、下部構造3となる橋脚部の構造減衰を1次固有振動数に対して5%とし、支承部4の減衰については無視する。
【0030】
【数3】
【数4】
【0031】
また、本実施形態における橋梁の制振構造Aの設定方法では、予め、図4図5に示すように、m/mをパラメータとしてΨ/mとk/kの関係、hとk/kの関係を求めておき、この図4図5を用いて諸元を設定する。
すなわち、橋梁の構造諸元としてm/m2、/kを設定し、式(3)または図4からΨ図5からhを求め、式(4)からcを求めることで最適な諸元を得る。
【0032】
これらオイルダンパー等の粘性減衰系ダンパーB1と慣性質量ダンパーB2は支承4の剛性kと並列に配置する。また、これらの値は一体化した橋桁部分にとりつく諸元の合計値である。
そして、ダンパー諸元は小さすぎると応答低減効果がなく、大きすぎると支承剛性を高めた(ピン支承にした)のと同様で変形は抑制できるが応答低減効果は得られなくなる。これを考慮し、本実施形態では上記のような最適諸元を設定している。
【0033】
なお、オイルダンパー等の粘性減衰系ダンパーB1のみで制振機構B1、B2を構成してもよい。この粘性減衰系ダンパーB1、B2としては、オイルダンパーやビンガムダンパー、その他の粘性系ダンパーが挙げられ、慣性質量ダンパーB2を用いない場合でもダンパーなしの場合に比べれば支承部4の変位量を低減し、耐震性を向上させることができる。
【0034】
但し、この場合には、設置する制振ダンパーB1、B2が過大だと支承部4の変位は低減できるが下部構造(橋脚部)3の応答が増大する。このため、付加する制振ダンパーB2の減衰係数c’には次の式(5)で示す制約条件をつけるものとする。
式中の不等号を等号にすると、慣性質量を用いないで粘性減衰のみを用いた場合の最適減衰となる。
【0035】
【数5】
なお、想定外の入力地震動に対するフェールセーフ機構として、オイルダンパーはピストンにリリーフ弁を設けシリンダー内の過大な圧力上昇を抑制する過負荷防止機構を内蔵させることもできる。
【0036】
次に、本実施形態の橋梁の制振構造Aを設けた場合の橋梁1の耐震性能をシミュレーションした結果(試設計)について説明する。
【0037】
本シミュレーションでは、制振機構を設けない非制振のCase1と、慣性質量ダンパーとオイルダンパーを並列配置して制振機構を設けた本実施形態のCase2(本実施形態の橋梁の制振構造A)の2ケースについてシミュレーションを行い、互いのシミュレーション結果を比較した。
【0038】
また、制振対象として3径間の橋梁1をモデル化した。この橋梁1の諸元は、橋桁部質量m=1578ton、橋梁部質量m=319ton、支承部剛性k=73.5kN/mm、下部工剛性(下部構造の剛性)k=477kN/mmとした。これにより、m/m=0.2、k/k=6.5となる。
また、慣性質量ダンパーB2の慣性質量は式(3)からΨ=816tonとなる。
【0039】
そして、上記のように各諸元、ひいてはΨ/m=0.517、k/k=6.5を決めると、図4図5からh=0.9を得ることができる。これにより、式(4)からc=19.4kN・sec/mm=194kN/kineを得ることができる。
【0040】
次に、周波数伝達関数を用い、制振ダンパーB1、B2の有無(Case1、Case2)による振動特性の違いを周波数領域で検討した結果について説明する。
【0041】
図6は、地表面加速度x(上に「・・」)に対する加振角振動数(x(上に「・・」),x(上に「・・」))の比率を応答倍率して示した結果である。
なお、加振振動数比ζはω=√(k/m)に対する加振角振動数ω=2πf(fは加振振動数)の比率である。
【0042】
この図6図7から、制振(Case2)を行うことにより共振時の応答倍率が大幅に低減することが確認された。また、m>>mであることから、下部構造3の反力が概ね橋桁部の加速度に比例することになり、且つ下部構造3の反力も同様に低減することが確認された。
【0043】
本実施形態の制振構造Aの場合(Case2)について、当該部より上部にある全質量に加速度を乗じた値に対する当該部の反力の比率を応答倍率とする。制振機構の反力応答倍率は(制振機構の反力)/m (上に「・・」)、下部構造の反力応答倍率は(下部工の反力)/(m+m)x (上に「・・」)で表される。
【0044】
そして、図7に示すように、「支承4+制振機構B1、B2」及び下部構造3の応答倍率は、概ね加速度応答倍率と同様になることが確認された。また、制振機構B1、B2の応答倍率からこの制振機構B1、B2はもはや共振しない振動特性をもつ。
【0045】
図8は、地表面変位xに対する各部変位(相対変位x−x,x−x)の比率を応答倍率として示した結果である。また、図9は、本実施形態の制振構造Aを備えた場合についてのみ縦軸を拡大して示している。
【0046】
これら図8図9から、本実施形態の制振機構B1、B2により共振域での応答倍率が大幅に低下し、支承部4の変位が抑制されることが確認された。
一方で、応答を大幅に抑制してできるのは1次のみであり、高次については大きくなる場合もあるので、高次モードが卓越するような構造に適用する際には留意する必要があることも確認された。
【0047】
次に、時刻歴解析を用い、制振機構B1、B2の有無(Case1、Case2)による応答の違いを検討した結果について説明する。
【0048】
ここでは、公益社団法人日本道路協会:道路橋示方書に示されたレベル2地震動で2種地盤に対応するII−II−3地震波(最大加速度736gal)を入力し、時刻歴波形で応答結果を比較した。
なお、この入力地震動の波形は図10に示す通りである。
【0049】
図11は橋桁部の加速度、図12は支承部の変位、図13は橋脚部のせん断力、図14は橋脚頂部の加速度を示している。
【0050】
図11から、本実施形態の制振機構Bにより最大応答加速度が半減するとともに、揺れの継続時間も大幅に低減することが確認された。
【0051】
図12から、支承部4の変位は制振により2割に低減し、一般的な支承4の可動代200mmに収まることが確認された。これにより、支承部4の変位が過大になりストッパーに衝突する危険性を大幅に低減できる。
【0052】
また、制振時のダンパー最大反力(各12台の合計)は、慣性質量ダンパーB2が5000kN、オイルダンパーB1が9960kNで、両者の合力は位相差があるため10520kNとなり、単純和よりかなり低減することが確認された。
【0053】
図13から、下部構造(下部工:橋脚部)3に作用するせん断力も制振により半減し、応力振幅も速やかに減衰することが確認された。これにより、大きな応力を生じる回数が減るので、疲労破壊も生じにくくなることが実証された。
【0054】
図14から、橋脚頂部(支承部下部)の加速度は制振によりやや低減されるもののその低減効果は顕著ではないことが確認された。これにより、本実施形態の橋脚の制振構造Aは、橋脚頂部の加速度の応答低減を図るものではないことが確認された。
言い換えれば、橋脚頂部側の加速度が大きいほど、制振構造A、特に慣性質量ダンパーB2が効きやすくなるため、効果的に制振構造Aの性能が発揮されると言える。
【0055】
したがって、本実施形態の橋梁の制振構造A及び橋梁の制振構造の設定方法においては、支承部4と並列に制振ダンパーB1、B2を設置するだけで支承部4の水平変位を抑制できるとともに、下部構造(橋脚部)3に作用する力(せん断力、モーメント)をも低減でき、基礎に作用する地震力も低減できる。
【0056】
これにより、既存橋脚部や杭の耐力が小さく、制振しない場合に大きな損傷を生じていた部位における応答が制振により大幅に低減され、損傷を防止または軽減することができる。特に、杭のように改修工事でも補強することが困難な部材の耐力を増大させることなく、耐震性能を向上させることができる。すなわち、耐震余裕度を向上することができる。
【0057】
また、支承部4を交換する必要がなく、単に制振機構(制振ダンパー)B1、B2を付加するだけなので、橋梁を工事中も継続使用できる。
【0058】
さらに、支承部4と並列に大きな振動諸元をもつ制振ダンパーB1、B2を追加することにより、支承部4の水平変位を大幅に抑制できる。ここで、一般的な支承4ではストッパーに衝突するまでの可動代が200mm程度であるが、本実施形態の制振構造Aにより、レベル2地震時においても支承変位をこの寸法以下に留めることが可能となり、既存の支承(ストッパーを含む)4をそのまま継続使用しながら大地震でも可動代の範囲内に支承変位を抑制することが可能である。
【0059】
また、慣性質量ダンパーB2は相対加速度に比例した反力を生じ、オイルダンパー等の粘性減衰系ダンパーB1は相対速度に比例した反力を生じ、支承(ゴム支承)4は相対変位に比例した反力を生じる特徴がある。そして、本実施形態では、これら制振ダンパーB1、B2を支承部4と並列に配置するため、各々の制振ダンパーB1、B2に同一の変位が作用することになり、反力に位相差が生じる。すなわち、支承4の反力に対し、粘性減衰系ダンパーB1は位相が90度ずれ、慣性質量ダンパーB2は位相が180度ずれる(逆位相になる)。これにより、これらの合力が各々の反力の合計値より大きく低減されることになり、この合力が下部構造3に作用する外力になるので、下部構造3のせん断力を抑制することが可能になる。
【0060】
また、制振機構B1、B2を支承4に並列配置するだけの比較的簡単な作業なので、施工に当たり特別な技能は必要とされず、新築だけでなく既存橋梁1の制震改修にも適用できる。
【0061】
また、従来、このような作用効果を得るための制振装置の最適条件が何ら検討されていなかったが、本実施形態のように制振機構(慣性質量ダンパーB2やオイルダンパーB1)の最適諸元を設定することで、確実に上記のような作用効果を得ることができ、応答低減効果を最大に発揮させることが可能になる。
【0062】
以上、本発明に係る橋梁の制振構造及び橋梁の制振構造の設定方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 橋梁
2 上部構造(上部工)
3 下部構造(下部工)
4 支承(支承部)
10 ボールねじ
11 ボールナット
12 回転錘(錘)
13 連結部材
14 軸受け
15 筒体
17 接続板
18 連結部材
A 橋梁の制振構造
B1 制振ダンパー(制振機構、オイルダンパー、粘性減衰系ダンパー)
B2 制振ダンパー(制振機構、慣性質量ダンパー)
O1 橋軸
O2 制振機構の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14