(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インピーダンス調整手段は、主として、アンテナ垂直部におけるアンテナ水平部が延出していない側の縁部である反延出側縁部およびアンテナ水平部における接地導体部に臨んでいない側の縁部である反接地導体側縁部に対して、地板導体が近接もしくは重なる位置および重なる面積を調整するものであることを特徴とする請求項1に記載の広帯域アンテナ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る広帯域アンテナの実施形態を示し、(a)は広帯域アンテナのアンテナ素子配設面側を示す斜視図、(b)は広帯域アンテナの地板導体配設面側を示す斜視図である。
【
図2】アンテナ素子と地板導体との相対位置を示す説明図である。
【
図3】
図1に示す構造の広帯域アンテナの周波数特性と、地板導体の無い逆L形モノポールアンテナの周波数特性を示す周波数特性図である。
【
図4】広帯域アンテナにおける180MHzと430MHzと650MHzの指向性特性図である。
【
図5】アンテナ素子の垂直部における右側縁部をA方向へ0.5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図6】地板導体の垂直部における右側縁部をB方向へ0.5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図7】地板導体の水平部における下側縁部をC方向へ3mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図8】アンテナ素子の水平部における第1水平部の下側縁部をD方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図9】アンテナ素子の第1水平部における上側縁部をE方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図10】地板導体の上側縁部をF方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図11】地板導体の水平部における右側縁部をG方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図12】地板導体の左側縁部をH方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図13】アンテナ素子の第2水平部における右側縁部と誘電体基板の右側縁部をI方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図14】アンテナ素子の第1水平部における上側縁部をJ方向へ3mm増減させてテーパ部の上側縁部を変化させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図15】アンテナ素子の第1水平部における下側縁部をK方向へ5mm増減させてテーパ部の下側縁部を変化させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図16】アンテナ素子の第2水平部における上側縁部をL方向へ5mm増減させてテーパ部の上側縁部を変化させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図17】アンテナ素子の第2水平部における下側縁部をM方向へ5mm増減させてテーパ部の下側縁部を変化させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図18】アンテナ素子の第2水平部における上側縁部をN方向へ5mm増減させてテーパ部の上側縁部を変化させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図19】アンテナ素子の第2水平部における下側縁部をO方向へ5mm増減させてテーパ部の下側縁部を変化させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図20】接地導体部を有限の面積で変化させた場合の特性変化を示す周波数特性図である。
【
図21】空力的に優れた形状の誘電体基板を用いて構成した広帯域アンテナの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る広帯域アンテナの実施形態につき詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る広帯域アンテナの第1実施形態を示すものである。広帯域アンテナ1は、略四角形の板状に形成した誘電体基板2の一側面をアンテナ素子配設面21として逆L形モノポールアンテナとなるアンテナ素子3を設け(
図1(a)を参照)、他側面を地板導体配設面22として地板導体4を設けて(
図1(b)を参照)、平面アンテナを構成し、この平面アンテナを導電性の接地導体部5の平坦面へほぼ垂直に立設し、地板導体4を接地導体部5と電気的に接続することで平面アンテナを接地したものである。なお、アンテナ素子3には、接地導体部5側に設けた給電部6より送信信号の入力および受信信号の出力を行う。
【0014】
誘電体基板2は、厚さhが0.8mmのポリテトラフルオロエチレン(εr=2.17,tanδ=0.0008)で、アンテナ素子3および地板導体4を構成する銅箔の厚さtは35μmとし、
図1中に記載の寸法(単位:mm)は、約175MHz〜675MHzの周波数帯(比帯域は約118%)で整合するようにHFSS(高周波3次元電磁界解析ソフトウェア)を用いて誘電体基板2、アンテナ素子3、地板導体4の設計を行った結果である。なお、接地導体部5は、平面アンテナの誘電体基板2を立設し得る程度に平坦な取付面51を有する金属板、例えば車両の屋根やボンネット等を適用できるが、本シミュレーションでは、誘電体基板2のアンテナ素子配設面21および地板導体配設面22に平行な向きであるGx方向と、これに直交する向きであるGy方向へ無限に続く無限広さの平らな鉄板(厚さは0.5mm)を想定した。
【0015】
上記誘電体基板2のアンテナ素子配設面21にエッチング等で形成されるアンテナ素子3は、逆L形モノポールアンテナとして機能するもので、給電部6より接地導体部5に垂直な方向へ立ち上がる任意幅のアンテナ垂直部32と、このアンテナ垂直部32の突出端に連なって接地導体部5に平行な一方向へ延出する任意形状のアンテナ水平部33と、を有する。
【0016】
また、誘電体基板2の地板導体配設面22にエッチング等で形成される地板導体4は、接地導体部5と導通する接地幅で立ち上がる地板垂直部41と、この地板垂直部41の突出端に連なりアンテナ水平部33の延出方向へ延出する任意形状の地板水平部42と、を有する逆L形である。
【0017】
そして、L形のアンテナ素子3と地板導体4とは、誘電体基板2を挟んで対峙するもので、夫々の形状を適宜に設定することで、アンテナ素子3のアンテナ垂直部32やアンテナ水平部33の各部に対して、地板導体4の地板垂直部41や地板水平部42が一部重なる、或いは重ならないよう近接させるなど、両者の状態を任意に設定することが出来る。そして、地板垂直部41や地板水平部42が誘電体基板2を挟んでアンテナ素子3のアンテナ垂直部31やアンテナ水平部32に近接もしくは重なる部位、重なる量を変化させると、電波の送受信に伴う信号の伝送路として機能するアンテナ素子3の各部における線路インピーダンスを変化させることができる。
【0018】
すなわち、アンテナ素子3の形状に応じて地板導体4を適宜な形状に設定することによりインピーダンス調整手段を構成でき、このインピーダンス調整手段によってアンテナ素子3の各部におけるインピーダンス調整が適切になされることで、広帯域アンテナ1の整合周波数帯を広域化できるのである。
【0019】
しかも、175MHz〜675MHzの周波数帯で整合するような寸法で設計した広帯域アンテナ1は、接地導体部5に立設する誘電体基板2の高さを246mm(170MHzの0.14波長)程度に抑えることができ、低姿勢で薄いフィン型アンテナに構成できる。なお、アンテナ高さが25cm程度あると、通常の車に装着するには十分な低姿勢と言えないものの、赤色回転灯等が装備されている緊急車両に広帯域アンテナ1を設ける場合には、十分許容され得るサイズである。
【0020】
次に、アンテナ素子3と地板導体4との相対的な位置関係を
図2に基づいて説明する。なお、広帯域アンテナ1を使用するとき、上下左右といった向きは関係しないが、本実施形態の説明においては、便宜上、接地導体部5の基板接地面から離隔する側を「上(Top)」、その逆側を「下(Bottom)」、アンテナ素子3のアンテナ垂直部32に対してアンテナ水平部33が延出する側を「右(Right)」、その逆側を「左(Left)」と呼び分けることにする。
【0021】
アンテナ素子3のアンテナ垂直部31は、その右側縁部31Rと左側縁部31Lがほぼ平行で、線路幅が一定の直線路である。このアンテナ垂直部31の上部より右側方へ延出するアンテナ水平部32は、例えば、第1水平部321とテーパ部322と第2水平部323とからなる。
【0022】
アンテナ水平部32における第1水平部321の上側縁部321Tと下側縁部321Bは接地導体部5の取付面51にほぼ平行で、線路幅が一定の直線路である。第1水平部321の上側縁部321Tは下側縁部321Bよりも短く、テーパ部322の上側縁部322Tが第2水平部323へ向けて上昇傾斜する位置は、テーパ部322の下側縁部322Bが第2水平部223へ向けて下降傾斜する位置よりもアンテナ垂直部31に近い設計値である。
【0023】
アンテナ水平部32における第2水平部323は、テーパ部322の上側縁部322Tおよび下側縁部322Bに各々連なる上側縁部323Tと下側縁部323Bを接地導体部5の取付面51にほぼ平行とした広い線路幅の直線路である。第2水平部323の右側縁部は、アンテナ水平部32の右側縁部32R(誘電体基板2の右側縁部2Rと一致)であり、上側縁部323Tが下側縁部323Bよりも長くなる設計値である。本実施形態では、テーパ部322の上側縁部322Tは、水平方向右側に88.37mm進んで44.59mm上がる傾斜であり、下側縁部322Bは、水平方向右側に151.36mm進んで53.01mm下がる傾斜である。
【0024】
一方、地板導体4は、誘電体基板2の左側縁部2Lと一致する左側縁部4Lと誘電体基板2の上側縁部2Tと一致する上側縁部4Tを備え、地板垂直部41の上部右側に地板水平部42を連設した逆L形状である。なお、地板垂直部の上部に横長の地板水平部を連設した逆L形状と捉えても同じであるが、便宜上、上記のように解釈して説明する。また、地板導体4の下側縁部4Bは、その全幅が接地導体部5と低抵抗で導通されることが望ましく、誘電体基板2の下側縁部2Bと接地導体部5の取付面51とが密着構造にならない場合(例えば、誘電体基板2の下側縁部2Bが直線状で接地導体部5の取付面51が曲面形状であった場合など)には、任意形状の接地補助部材等を介在させて、地板導体4と接地導体部5とを間接的に導通させるようにしても良い。
【0025】
地板垂直部41は、誘電体基板2の左側縁部2Lと一致して接地導体部5の取付面51にほぼ垂直な左側縁部41Lと、アンテナ素子3におけるアンテナ垂直部31の左側縁部31Lよりも右側寄りであるが右側縁部31Rよりも左側寄りの位置で接地導体部5の取付面51にほぼ垂直に立ち上がる右側縁部41Rおよび仮想右側縁部41R′(
図2中、破線で示す)で囲まれる領域であり、地板導体4の右側縁部41Rとアンテナ素子3における左側縁部31Lとの相対位置を変えれば、アンテナ素子3の垂直部31と地板導体4の地板垂直部41との重なり具合(設計例では、重なり幅1.21mm)を変化させられる。すなわち、地板垂直部41における右側縁部41R周辺は、アンテナ垂直部31に対するインピーダンス調整手段として機能する。
【0026】
また、地板水平部42は、アンテナ素子3における第1水平部321の上側縁部321Tよりも適宜上方にある仮想右側縁部41R′より右側(アンテナ水平部32の延出する側)へ突出する領域であり、右側縁部42Rと下側縁部42Bが交わる右下角部42Cが、誘電体基板2を挟んで、アンテナ素子3におけるテーパ部322と若干重なる。すなわち、地板水平部42における下側縁部42Bを延出させる上下位置や右側縁部42Rを延出させる左右位置を任意に設定することで、右下角部42Cがテーパ部322と重なる位置や重なる面積を調整できるので、右下角部42Cは、アンテナ水平部32に対するインピーダンス調整手段として機能する。
【0027】
上述した本実施形態に係る広帯域アンテナ1における反射係数S
11の周波数特性として、有限要素法ソフトウェアHFSSを用いて計算した結果を
図3に示す。地板導体4を設けることにより、175MHz〜675MHzの比帯域118%でS
11が−10dB以下に整合されることがわかる。一方、地板導体4を設けていないアンテナでは、広帯域特性を実現できない。すなわち、アンテナ素子3と地板導体4を適切に設計することで、有効なインピーダンス調整手段としての機能を発揮させれば、低姿勢で平面構造の逆L形モノポールアンテナを広帯域化できるのである。
【0028】
また、広帯域アンテナ1における接地導体部5を有限の広さ(Gx方向が1.27m、Gy方向が0.88m)とした場合の指向特性を
図4に示す。φ=0°面の絶対利得Ga[dBi]を
図4(a)に、φ=90°面の絶対利得Ga[dBi]を
図4(b)に、θ=90°面の絶対利得Ga[dBi]を
図4(c)に夫々示し、180MHz、430MHz、650MHzそれぞれについて、φ方向成分とθ方向成分の計算結果を示す。周波数による指向性の変化は見られるものの、垂直偏波はほぼ水平面に無指向性となり、水平偏波はx軸方向を向いたダイポールアンテナの指向パターンとおおむね同じである。
【0029】
次に、上述した実施形態に係る広帯域アンテナ1の設計値を基準として、アンテナ素子3や地板導体4の各部寸法を変化させることによる、反射係数S
11の周波数特性への影響をみる。
【0030】
図5に示すのは、アンテナ素子3におけるアンテナ垂直部31の右側縁部31RをA方向へ増減させたときの周波数特性である。アンテナ垂直部31の右側縁部31RをA方向へ+0.5mmして線路幅を太くした場合の周波数特性を太実線で、アンテナ垂直部31の右側縁部31Rを−0.5mmして線路幅を細くした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。若干の特性変化は見られるものの、全体として、それほど大きな劣化や向上は見られない。
【0031】
図6に示すのは、地板導体4における地板垂直部41の右側縁部41RをB方向へ増減させたときの周波数特性である。地板垂直部41の右側縁部41RをB方向へ+0.5mmしてアンテナ素子3におけるアンテナ垂直部31との重なり幅を広くした場合の周波数特性を太実線で、地板垂直部41の右側縁部41RをB方向へ−0.5mmしてアンテナ素子3におけるアンテナ垂直部31との重なり幅を狭くした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。このように、アンテナ垂直部31と地板垂直部41との重なり幅を変化させると、顕著な特性変化が生じており、重なり幅が広過ぎても狭過ぎても広帯域特性を得難いことが分かる。適切な設計によるインピーダンス調整が重要なのである。
【0032】
図7に示すのは、地板導体4における地板水平部42の下側縁部42BをC方向へ増減させたときの周波数特性である。地板水平部42の下側縁部42BをC方向へ+3.0mmして右下角部42Cがアンテナ素子3のアンテナ水平部32におけるテーパ部322と重なる面積を広くした場合の周波数特性を太実線で、地板水平部42の下側縁部42BをC方向へ−3.0mmして右下角部42Cがアンテナ素子3のアンテナ水平部32におけるテーパ部322との重なる面積を狭くした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。このように、アンテナ水平部32と地板水平部42との重なり具合を変化させると、顕著な特性変化が生じており、重なる面積が広過ぎても狭過ぎても広帯域特性を得難いことが分かる。また、地板水平部42の下側縁部42BをC方向へ増減させることで、アンテナ素子3のアンテナ水平部32との近接度合いも変化することから、そのインピーダンス変化の影響により特性変化が生じたとも考えられる。
【0033】
図8に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第1水平部321の下側縁部321BをD方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第1水平部321の下側縁部321Bを上下移動させることに伴って、テーパ部322の下側縁部322Bの傾斜状態は若干変化する。第1水平部321の下側縁部322BをD方向へ+5.0mmして線路幅を太くした場合の周波数特性を太実線で、第1水平部321の下側縁部323BをD方向へ−5.0mmして線路幅を細くした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。若干の特性変化は見られるものの、全体として、それほど大きな劣化や向上は見られない。
【0034】
図9に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第1水平部321の上側縁部321TをE方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第1水平部321の上側縁部321Tは、長さを変えずに上下位置のみを変化させるので、テーパ部322の上側縁部322Tの傾斜状態は若干変化し、地板導体4の右下角部42Cと重なる面積が変わる。第1水平部321の上側縁部321TをE方向へ+5.0mmして地板水平部42の下側縁部42Bに近接させた場合の周波数特性を太実線で、第1水平部321の上側縁部321TをE方向へ−5.0mmして地板水平部42の下側縁部42Bから離隔させた場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。テーパ部322の上側縁部322Tの傾斜状態が変わって、地板導体4の右下角部42Cと重なる面積が変化することから、若干の特性変化は見られるものの、全体として、それほど大きな劣化や向上は見られない。
【0035】
図10に示すのは、地板導体4における上側縁部4TをF方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、地板導体4の上側縁部4Tの上下位置を変化させることに伴って誘電体基板2の上側縁部2Tの上下位置も変化させる。地板導体4の上側縁部4TをF方向へ+5.0mmした場合の周波数特性を太実線で、地板導体4の上側縁部4TをF方向へ−5.0mmした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。地板導体4の高さを設計基準値から多少変化させても、周波数特性への影響はほとんど無い。
【0036】
図11に示すのは、地板導体4における地板水平部42の右側縁部42RをG方向へ増減させたときの周波数特性である。地板水平部42の右側縁部42RをG方向へ+5.0mmして右下角部42Cがアンテナ素子3のアンテナ水平部32におけるテーパ部322と重なる面積を広くした場合の周波数特性を太実線で、地板水平部42の右側縁部42RをG方向へ−5.0mmして右下角部42Cがアンテナ素子3のアンテナ水平部32におけるテーパ部322との重なる面積を狭くした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。地板水平部42における右側縁部42Rを右側に移動させて地板水平部42の右側突出量を大きくし、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも増やした場合は、大きな特性変化が見られない。一方、逆に地板水平部42における右側縁部42Rを左側に移動させて地板水平部42の右側突出量を小さくし、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも減らした場合は、整合特性の変化が大きい。このことから、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を一定以上確保しないと、広帯域特性を得られないことが分かる。
【0037】
図12に示すのは、地板導体4における左側縁部4LをH方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、地板導体4の左側縁部4Lの左右位置を変化させることに伴って誘電体基板2の左側縁部2Lの左右位置も変化させる。地板導体4の左側縁部4LをH方向へ+5.0mmした場合の周波数特性を太実線で、地板導体4の左側縁部4LをH方向へ−5.0mmした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。地板導体4の左右幅を設計基準値から多少変化させても、周波数特性への影響はほとんど無い。
【0038】
図13に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32の右側縁部32RをI方向へ増減させて、第2水平部323が右側に延出する長さを変化させたときの周波数特性である。なお、アンテナ水平部32の右側縁部32Rの左右位置を変化させることに伴って誘電体基板2の右側縁部2Rの左右位置も変化させる。第2水平部323の上側縁部323Tおよび下側縁部323BをI方向へ+5.0mmしてアンテナ水平部32の右側縁部32Rを右側へ延ばした場合の周波数特性を太実線で、第2水平部323の上側縁部323Tおよび下側縁部323BをI方向へ−5.0mmしてアンテナ水平部32の右側縁部32Rを左側へ縮めた場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。若干の特性変化は見られるものの、全体として、それほど大きな劣化や向上は見られない。
【0039】
図14に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第1水平部321の上側縁部321TをJ方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第1水平部321の上側縁部321Tの長さを変化させるので、テーパ部322の上側縁部322Tの傾斜状態は変化し、地板導体4の右下角部42Cと重なる面積が変わる。第1水平部321の上側縁部321TをJ方向へ+5.0mmしてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜始点を右側へ移動させた場合の周波数特性を太実線で、第1水平部321の上側縁部321TをJ方向へ−5.0mmしてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜始点を左側へ移動させた場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。第1水平部321における上側縁部321Tを右側に延ばしてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜始点を右側へ移動させ、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも減らした場合、多少の特性変化はあるものの、極端な劣化は見られない。一方、逆に第1水平部321における上側縁部321Tを左側に縮めてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜始点を左側へ移動させ、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも増やした場合、整合特性の変化が激しく、全体として劣化する傾向が見られる。このことから、アンテナ素子3のテーパ部322が地板導体4の右下角部42Cと重なる面積を必要以上に確保してしまうと、広帯域特性を得られないことが分かる。
【0040】
図15に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第1水平部321の下側縁部321BをK方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第1水平部321の下側縁部321Bの長さを変化させるので、テーパ部322の下側縁部322Bの傾斜状態が変化する。第1水平部321の下側縁部321BをK方向へ+5.0mmしてテーパ部322における下側縁部322Bの傾斜始点を右側へ移動させた場合の周波数特性を太実線で、第1水平部321の下側縁部321BをK方向へ−5.0mmしてテーパ部322における下側縁部322Bの傾斜始点を左側へ移動させた場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。アンテナ素子3の水平部32における下側縁部の形状を設計基準値から多少変化させても、周波数特性への影響はほとんど無い。
【0041】
図16に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第2水平部323の上側縁部323TをL方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第2水平部323の上側縁部323Tの長さを変化させるので、テーパ部322の上側縁部322Tの傾斜状態は変化し、地板導体4の右下角部42Cと重なる面積が変わる。第2水平部323の上側縁部323TをL方向へ+5.0mmしてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜終点を左側へ移動させた場合の周波数特性を太実線で、第2水平部323の上側縁部323TをL方向へ−5.0mmしてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜終点を右側へ移動させた場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。第2水平部323における上側縁部323Tを右側に縮めてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜終点を右側へ移動させ、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも減らした場合、多少の特性変化はあるものの、極端な劣化は見られない。一方、逆に第2水平部323における上側縁部323Tを左側に延ばしてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜終点を左側へ移動させ、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも増やした場合、整合特性の変化が激しく、全体として劣化する傾向が見られる。このことから、
図14の周波数特性と同様に、アンテナ素子3のテーパ部322が地板導体4の右下角部42Cと重なる面積を必要以上に確保してしまうと、広帯域特性を得られないことが分かる。
【0042】
図17に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第2水平部323の下側縁部323BをM方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第2水平部323の下側縁部323Bの長さを変化させるので、テーパ部322の下側縁部322Bの傾斜状態も変化する。第2水平部323の下側縁部323BをM方向へ+5.0mmしてテーパ部322における下側縁部322Bの傾斜終点を左側へ移動させた場合の周波数特性を太実線で、第2水平部323の下側縁部323BをM方向へ−5.0mmしてテーパ部322における下側縁部322Bの傾斜終点を右側へ移動させた場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。アンテナ素子3の水平部32における下側縁部の形状を設計基準値から多少変化させても、周波数特性への影響はほとんど無い。
【0043】
図18に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第2水平部323の上側縁部323TをN方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第2水平部323の上側縁部323Tは、長さを変えずに上下位置のみを変化させるので、テーパ部322の上側縁部322Tの傾斜状態は若干変化し、地板導体4の右下角部42Cと重なる面積が変わる。第2水平部323の上側縁部323TをN方向へ+5.0mmしてテーパ部322が地板導体4の右下角部42Cと重なる面積を増やした場合の周波数特性を太実線で、第2水平部323の上側縁部323TをN方向へ−5.0mmしてテーパ部322が地板導体4の右下角部42Cと重なる面積を減らした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。第2水平部323における上側縁部323Tを下方へ移動させてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜を若干緩やかにし、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも減らした場合、多少の特性変化はあるものの、極端な劣化は見られない。一方、逆に第2水平部323における上側縁部323Tを上方へ移動させてテーパ部322における上側縁部322Tの傾斜を若干急にし、右下角部42Cがアンテナ素子3のテーパ部322と重なる面積を基準設計値よりも増やした場合、整合特性の変化が激しく、全体として劣化する傾向が見られる。このことから、
図14や
図16の周波数特性と同様に、アンテナ素子3のテーパ部322が地板導体4の右下角部42Cと重なる面積を必要以上に確保してしまうと、広帯域特性を得られないことが分かる。
【0044】
図19に示すのは、アンテナ素子3のアンテナ水平部32における第2水平部323の下側縁部323BをO方向へ増減させたときの周波数特性である。なお、第2水平部323の下側縁部323Bは、長さを変えずに上下位置のみを変化させるので、テーパ部322の下側縁部322Bの傾斜状態は若干変化する。第2水平部323の下側縁部323BをO方向へ+5.0mmしてテーパ部322における下側縁部322Bの傾斜を急にした場合の周波数特性を太実線で、第2水平部323の下側縁部323BをO方向へ−5.0mmしてテーパ部322における下側縁部322Bの傾斜を緩やかにした場合の周波数特性を太破線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。アンテナ素子3の水平部32における下側縁部の形状を設計基準値から多少変化させても、周波数特性への影響はほとんど無い。
【0045】
以上は、広帯域特性を実現する適切なインピーダンス調整手段として機能させるためのアンテナ素子3と地板導体4の形状設定について検討するため、無限広さの接地導体部5を用いるものとしたが、本発明に係る広帯域アンテナ1を車両等に実装する場合、有限面積の接地導体部5でも十分な広帯域特性を発揮できなければならない。
【0046】
図20に示すのは、種々の面積の鉄板(厚さ0.5mm)を接地導体部として用い、その中心をアンテナ素子3への給電部6としたときの周波数特性である。軽乗用車を模した1.5m×3.4mの鉄板(Gx方向:3.4m、Gy方向:1.5m)を接地導体部5に用いた場合の周波数特性を太実線で、面積をより小さくした1.0m×1.0mの鉄板を接地導体部5に用いた場合の周波数特性を太破線で、面積を一層小さくした0.5m×0.5mの鉄板を接地導体部5に用いた場合の周波数特性を太点線で、比較のための基準設計での周波数特性を細破線で示す。1.5m×3.4mの地板導体部5を用いれば、無限広さの場合と同等程度の広帯域特性を実現でき、地板導体部5の寸法が1.0m×1.0mになると、低周波数帯での整合特性の変化がみられるが、整合特性の傾向は維持され、広帯域特性の著しい劣化はない。なお、地板導体部5の寸法が0.5m×0.5mにまで小さくなると、広帯域特性の維持は困難なようである。
【0047】
また、本実施形態の広帯域アンテナ1において、種々の部位を変化させたときの特性変化を例示したが、周波数特性に影響のないものもあった。従って、アンテナ素子3や地板導体3において周波数特性に影響のない部分を除去することで、平面アンテナの形状を四角形から変化させ、空力特性に優れた形状とすることも可能である。
【0048】
図21に示す広帯域アンテナ1′は、空力的に優れた形状の誘電体基板2′にアンテナ素子3および地板導体4を形成したものである。具体的には、特性変化の影響が大きい領域(アンテナ素子3におけるアンテナ垂直部31、第1水平部321およびテーパ部322、地板導体4における地板垂直部41の右側縁部41R、地板水平部42の右下角部42C)をそのままに、特性変化の影響が少ない領域から選定した第1除去領域32a(基板2における右上角部を含む略三角形の領域)と第2除去領域32b(基板2における左上角部を含む略三角形の領域)を除いて誘電体基板2′とし、この誘電体基板2′の外形と一致させるように、アンテナ素子3′の第2水平部323および地板導体4の外縁部を形成する。
【0049】
上記誘電体基板2′の外形は、上縁の左側が膨らんで右側へ傾斜してゆく流線形状を呈するものである。誘電体基板2′の右側外形は、接地導体部5の取付面51に垂直な右側垂直縁部2R1から左側へ急峻な傾斜となる右側傾斜縁部2R2に連なる。この右側傾斜縁部2R2の上端に連なる上側傾斜縁部2T1は、左側に向かって上昇する比較的緩やかな傾斜であり、誘電体基板2の上側縁部2Tと同じ高さの上側平坦部2T2の右側端に連なる。比較的短い上側平坦部2T2の左側端は上側曲縁部2T3に連なり、この左側曲縁部2T3の左側端縁が左側縁部2Lと連なる。
【0050】
なお、第1,第2除去領域32a,32bを選定するに当たっては、アンテナ素子3′と地板導体4′によるインピーダンス調整手段の機能を著しく阻害しないことが重要で、例えば、上側傾斜縁部2T1はテーパ部322の上側縁部322Tよりも上に位置させたり、地板導体4の有効面積を極端に狭くしないといったインピーダンス調整機能保持条件を満たすように除去領域を選定すれば良い。
【0051】
以上、本発明に係る広帯域アンテナの実施形態に基づき説明したが、本発明は、これらの実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての広帯域アンテナを権利範囲として包摂するものである。