(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、監視カメラでは、吹雪の中では、鮮明な画像が得難く、積雪高さの定量的な計測が困難という問題があった。また、監視カメラは人物の動線解析には使用されるが、積雪位置等の3次元座標を計測するには2台以上の撮像カメラが必要であり、また、カメラの方向調整が必要になり、調整機構が複雑で高価になるという問題があった。さらに、既存の通信キャリアが提供するサービスでは、カバーできない地域もある。
【0005】
本発明は、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である積雪検知装置を提供することを目的とする。また、既存の通信キャリアのサービスではカバーできない地域でも検知可能である積雪検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る積雪検知装置1は、例えば
図1に示すように、雪面5を照射して、雪面5にそれぞれスポット12a、12bを形成する2個の光照射器10a,10bと、2個のスポット12a、12bを撮影する撮像カメラ20と、撮像カメラ20で撮影された2個のスポット12a、12b間の距離から積雪高さhを計算する積雪高演算部51と、温度を含む気象データを計測する気象センサ31,32と、過去の温度・積雪高さを含む気象データと、除雪作業データとの関係を収集・記録した気象除雪データベース52と、計測された温度・積雪高さを含む気象データと気象除雪データベース52の除雪作業データとを比較して、除雪作業の必要性を判断する除雪作業判断部53と、除雪作業判断部53による判断結果を通信する送受信部54とを備える。
【0007】
ここにおいて、気象データとして温度の他に、湿度・風向・風速・雨量等があり、これらは計測されても良いが計測されなくても良い。また、水中のCOD(化学的酸素要求量)、土中の水分等も計測されても良いが計測されなくても良い。気象除雪データベース52として、積雪検知装置1内蔵のメモリ、外付けの記憶装置又は複数の積雪検知装置1A〜1Nに共用のデータベースを使用しても良い。また、除雪作業データとして、例えば、除雪地域・除雪時間・除雪機器・除雪方法・除雪人員等が挙げられる。また、積雪高演算部51、除雪作業判断部53、送受信部54は、積雪検知装置1内蔵のコンピュータ内に構成されるのが好ましいが、除雪作業判断部53は例えばネットワークNWの機能サーバ50S内に構成されても良く、送受信部54は例えばコンピュータ外に送受信器等として構成されても良い。なお、送受信部54を有すると、外部と通信可能になるので、通信ネットワークNWを構成可能となる。
【0008】
このように構成すると、撮像カメラ20で撮影された2個のスポット12a,12b間の距離から積雪高さhを計測するので、積雪高さhを定量的に検知できる。また、かかる積雪高さhの計測には複数の撮像カメラの精密な方向調整用の機構を設ける必要がないので、簡易で廉価な構成にできる。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係る積雪検知装置1は、例えば
図1に示すように、第1の態様に係る積雪検知装置1において、光照射器10a,10b、撮像カメラ20、積雪高演算部51、除雪作業判断部53及び気象センサ31,32を内蔵可能または外側に取り付け可能な筐体2であって、光照射器10a,10b、撮像カメラ20、積雪高演算部51、除雪作業判断部53、気象センサ31,32に電力を供給するための蓄電器41及び蓄電器41に電力を供給するための太陽光発電パネル40を取り付け可能である支柱に、取り付け可能な筐体2を備える。取り付け治具4aにより
【0010】
ここにおいて、支柱4は典型的には垂直方向に展延するパイプが使用されるが、アングル等を架橋状に構成して、積雪検知装置1又はその部品等を架橋の梁に固定しても良い。
このように構成すると、光照射器10a,10b、撮像カメラ20等が支柱4に固定された筐体2に安定にとりつけられるので、積雪検知装置1近傍の積雪高さを安定に計測できる。
【0011】
また、本発明の第3の態様に係る積雪検知装置は、例えば
図4に示すように、第1の態様又は第2の態様に係る積雪検知装置において東西南北に全方位を監視するための広角カメラ21を備える。
【0012】
ここにおいて、全方位を複数の広角カメラ21の取得画像によりカバーしても良く、1台の広角カメラ21の方向を変更しながら複数の撮像画像を取得してカバーしても良い。
このように構成すると、広角カメラ21を備えるので、積雪検知装置1を囲む広範囲の領域の積雪状況と異常を監視できる。
【0013】
また、本発明の第4の態様に係る積雪検知システムは、第1の態様ないし第3の態様のいずれかに係る積雪検知装置1において、更に、線路の歪を検知するためのレーザセンサ又は防犯・防雪害・防水害・防獣害のいずれかのための監視カメラ又は第2のセンサを備える。
【0014】
ここにおいて、監視カメラとして、公知の監視カメラを使用できる。また、レーザセンサも公知のものを使用できる。また、第2のセンサとして、例えば光センサ、触覚センサ、水位センサ、雨量センサ等が挙げられる。
このように構成すると、積雪検知に加えて、線路の歪を検知できる又は防犯・防雪害・防水害・防獣害の予防ができる。
【0015】
また、本発明の第5の態様に係る積雪検知システムは、例えば
図6に示すように、鉄道又は道路に沿って設置された複数の第1の態様ないし第3の態様のいずれか1つの態様に係る積雪検知装置を通信ネットワークNWで接続した積雪検知システム1Sであって、積雪検知システム1S全体及びそれを構成する各積雪検知装置1A〜1Nを制御する機能サーバ50Sと、システムで計測可能な地域の積雪状況を表示する監視モニタ60Sとを備え、通信ネットワークNW内の通信には特定小電力無線方式を使用する。
【0016】
ここにおいて、特定小電力無線方式とは、データ伝送用等特定の用途において、電波の型式、周波数、空中線電力、占有周波数帯幅等が所定の範囲であれば、無線局の免許を受けずに利用できる無線方式である。しかしながら、例えば920MHz帯を使用すれば、電波到達距離を最大で約30kmとれる、また、通信キャリアが提供する携帯電話サービスエリア外での通信も可能になる、等の利点がある。
このように構成すると、通信ネットワークNW内の通信には特定小電力無線方式を使用するので、通信キャリアがカバーできない地域でも積雪高さを検知可能となる。
【0017】
また、本発明の第6の態様に係る積雪検知システムは、第5の態様に係る積雪検知システムにおいて、通信ネットワークNW内の通信には、920MHz帯でのスペクトラム拡散方式を使用する。
【0018】
このように構成すると、スペクトラム拡散方式を使用するので、通信内容の遺漏を抑制できる。また、920MHz帯の電磁波は水に吸収され難いので、降雨・降雪による減衰が少ない。
【0019】
また、本発明の第7の態様に係る積雪検知システムは、第5の態様又は第6の態様に係る積雪検知システムにおいて、いずれかの積雪検知装置は、線路の歪を検知するためのレーザセンサ又は防犯・防雪害・防水害・防獣害のいずれかのための監視カメラ又は第2のセンサを備える。
【0020】
ここにおいて、第2のセンサとして、例えば光センサ、触覚センサ、水位センサ、雨量センサ等が挙げられる。
このように構成すると、積雪検知に加えて、線路の歪を検知できる又は防犯・防雪害・防水害・防獣害の予防にも適用できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である、積雪検知装置を提供することができる。また、既存の通信キャリアのサービスではカバーできない地域でも検知可能である積雪検知システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【実施例1】
【0024】
図1は実施例1に係る積雪検知装置1の構成例を示す模式図である。
図1(A)は積雪検知装置1全体を示す図、
図1(B)は積雪検知装置1の支柱4への取り付けについて説明するための図である。
【0025】
図2は積雪検知装置1の筐体2の外観を示す図である。筐体2は円筒形の胴部に椀状の頭部が付いた第一部2aと、円錐を輪切りにした円環(円環の上下で円の直径が異なる)を多段に積層した形状の第二部2bからなる。第一部2aをかかる形状としたのは、基本の円筒形は当該積雪検知装置1が強風を受けたときに空気抵抗を最小限にして倒壊等の事故を防ぐためであり、頭部を球形にしたのは雪が積もらないようにするためである。また、第二部2bには電源のコネクタ等を配置するため、通風が良く外部からの風等のダメージに強くするために、スカートをはかせたものである。筐体2は、表面が気密で防水処理がされ、各種センサ及びIT機器を内包する。
筐体の寸法は例えば15cmφ×20〜30cmの樹脂製で、小型・軽量(例えば内包機器を含めて20kg以下)なので、搬送及設置・撤去が容易である。さらに、−30〜+50℃の環境性能を実現できる。筐体2の材料は典型的にはABS樹脂(耐衝撃性、耐熱性が高く、加工性が良い)が使用される。電磁シールドが要求される場合には樹脂に代えて又は樹脂と共に軽量金属が用いられる。
【0026】
ここで
図1に戻る。筐体2は、地面3に固定された支柱4に、例えば取り付け治具4aを用いて取り付けられる(
図1(B)参照)。また、支柱4には、太陽光を利用して発電する太陽光発電パネル40や、太陽光発電パネル40で発電された電気を蓄積する蓄電器41が取り付けられる(
図1(A)参照)。
【0027】
本実施例では、第一部2aは、積雪高演算部51と、気象除雪データベース52と、除雪作業判断部53と、送受信器54と制御部50とを内包している。
第二部2bは、2個の光照射器10a、10bと撮像カメラ20が筐体2に内包されている。また、気象センサとして、温度を計測する温度センサ31と風速を計測する風速センサ32とが筐体2の外側に取り付けられている。また、当該積雪検知装置1が他の積雪検知装置及び機能サーバ50Sと通信するための送受信器54のアンテナ54aが筐体2の外側に取り付けられている。本実施例では、積雪検知装置1の位置が固定されるので、位置センサは不要であるが、積雪検知装置を移動体に積載して使用する場合には、全地球測位システム(GPS)を用いて位置を計測する位置センサ33を筐体2の外側に取り付け可能である。2個の光照射器10a、10bと撮像カメラ20は積雪高さを計測するために使用される。
これら、光照射器10a、10b、撮像カメラ20、温度センサ31、風速センサ32、位置センサ33等は公知の機器やセンサを使用できる。気象センサとして、湿度センサ、雨量センサを使用する場合にも公知のセンサを使用できる。
【0028】
図3は積雪高さの測定原理を説明するための図である。2個の光照射器10a,10bからの照射光11a,11bは、それぞれ地面3上に積もった雪の雪面5にスポット12a、12bを形成する。2つのスポット12a、12b間の距離をd、積雪高さをh、2つの照射光11a,11bの交点11cの地面3からの高さをH、照射光11a,11bが鉛直方向となす角度をθとすると、
tanθ=d/2(H−h)・・・(1)
となり、距離dを測定すれば、積雪高さhを一意的に求められる。積雪高演算部51は、撮像カメラ20による撮影画像を画像解析して距離dを求める。
距離dについては、撮像カメラ20による撮影画像内の2つのスポット間の距離dxを計測すれば良い。
tanθc=d/2(Hc−h)・・・(2)
tanθc=dx/2hx・・・・・・(3)
ここに、Hcは撮像カメラ20の地面からの高さ、θcは撮像カメラ20とスポット12a又は12bを結ぶ線が鉛直方向となす角度、hxは撮影画像空間の原点から撮影画像までの距離である。Hc、hxは既知の値である。なお、HC≠Hであれば良いが、HC<Hが好ましい。
(1)〜(3)式より、
h=(Htanθ−Hctanθc)/(tanθ−tanθc)
=(Htanθ−Hc(dx/2hx))/(tanθ−(dx/2hx))・・・(4)
となり、dxを測定すれば、積雪高さhを求められる。
また、例えば、地面から所定の高さh
0に置かれた所定長さd
0の指標を同時に撮影しておけば、これを利用して距離dを求めることもできる。
なお、積雪高さの測定範囲では、線路はおよそ平らであり、積雪量も均しいので、雪面も平らとみなせる。
【0029】
ここで、
図1に戻る。筐体第一部2aには、積雪高さhの時間変化から積雪速度を計算する積雪高演算部51と、過去の温度・風速・積雪高さ・積雪速度を含む気象データと、除雪作業データ(除雪地域・除雪時間・除雪機器・除雪方法・除雪人員・特記事項)との関係を収集・記録した気象除雪データベース52と、計測された温度・風速・積雪高さ・積雪速度を含む気象データと気象除雪データベース52の除雪作業データとを比較して、除雪作業の必要性及び作業時期を判断する除雪作業判断部53とを有している。また、当該積雪検知装置1の全体及び各部を制御して、積雪検知機能を発揮させるための制御部50を有している。各センサの検出データは制御部50に送られ、各部の制御に還元される。
【0030】
図4に実施例1に係る積雪検知方法の例を示す。まず、2個の光照射器10a,10bにより雪面5を照射して、雪面5にそれぞれスポット12a、12bを形成する(S101)。次に、撮像カメラ20で2個のスポット12a、12bを撮影する(S102)。次に、積雪高演算部51にて、撮像カメラ20で撮影された2個のスポット12a、12b間の距離dから、積雪高さhを計算する(S103)。次に、積雪高演算部51にて、積雪高さhの時間変化から積雪速度を計算する(S104)。また、S101〜S104の工程とは別に、気象センサ31,32にて、気象データを計測する(S106)。さらに、S101〜S104の工程、S106の工程とは別に、過去の温度・風速・積雪高さ・積雪速度を含む気象データと、除雪作業データ(除雪地域・除雪時間・除雪機器・除雪方法・除雪人員・特記事項)との関係を収集・記録した気象除雪データベース52を作成しておく(S107)。S104の工程、S106の工程、S107の工程の後に、例えば、除雪作業判断部53にて、計測された気象データと気象除雪データベース52の除雪作業データとを比較する(S108)。次に、除雪作業判断部53にて、除雪作業の必要性及び作業時期を判断する(S109)。次に、送受信部54にて、除雪作業判断部53による判断結果を通信(送信及び/又は受信)する(S110)。
【0031】
なお、S104の工程を省略しても良い。また、S106の気象データのうち、風速・積雪速度を省略しても良い。また、S110の工程で除雪作業の作業時期の判断を省略しても良い。また、気象除雪データベース52の例として、横の項目には、気象データ(温度・湿度・風向・風速・積雪高さ・積雪速度)、除雪作業データ(除雪地域・除雪時間・除雪機器・除雪方法・除雪人員・特記事項)が並び、縦には除雪作業ケースが並ぶものが挙げられる。また、積雪検知装置1が移動体に積載されている場合には、S101〜S104の工程とは別に、位置センサ33にて、地球測位システム(GPS)を用いて撮像カメラ20の位置を計測する(S105)。そして、S108の工程で、この計測位置は除雪作業データの除雪地域と比較される。
【0032】
以上により、本実施例によれば、積雪高さを計測するに際し、複数の撮像カメラの方向を調整する必要がないので、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である、積雪検知装置を提供できる。
【実施例2】
【0033】
図5は、実施例2に係る積雪検知装置の概念を説明するための図である。実施例2は実施例1の積雪検知装置1に広角カメラ21を追加する例について説明する。
広角カメラ21を使用すると、広い範囲を監視できる。例えば、視野120度の範囲をカバーする広角カメラ21を、
図5のように支柱4の回りに360度回転可能に設置して、方向を120度ずつ変えて3回撮影すると、東西南北に全方位を撮影できる。また、例えば、3台の広角カメラを方向を120度ずつ変えて設置し、撮影しても良い。計測対象物をビジュアルに観測でき、積雪状況の他に侵入者(動物を含む)等の異常があれば確認できる。
また、撮像カメラ20として、広角カメラを使用すると、線路やポイント等への積雪状況を明確に検知できる。
その他の装置構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様に、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である、積雪検知装置を提供できる。
【実施例3】
【0034】
実施例3では実施例1の積雪検知装置1に赤外線レーザを追加する例について説明する。赤外線レーザを計測対象に照射すると、線路の歪やコンクリート(トンネル、側壁、枕杭等)のひび割れ状況を観察可能になる。よって、積雪状況に加えてこれらの監視が可能になる。また、積雪検知には主として冬期に使用されるが、これらの監視には年間を通して使用される。
その他の装置構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様に、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である、積雪検知装置を提供できる。
【実施例4】
【0035】
実施例4は各積雪検知装置1A〜1Nが通信ネットワークNWで接続された積雪検知システム1Sについて説明する。
【0036】
図6は、積雪検知システム1Sの概念を説明するための図である。各積雪検知装置1A〜1Nは例えば鉄道線路6に沿って、約等間隔に設置され、主として線路沿いの積雪状況を監視する。線路上の積雪状況を含めて監視するので、列車交通及び運用を阻害しない線路の近傍に設置される。ただし、積雪量が多く、線路特にポイント切り替えが雪に埋もれるおそれが高い地点には重点的に設置される。すなわち、各積雪検知装置1A〜1Nはシステムの機能ノードとして機能する。機能ノード1A〜1Nは積雪高さ検知機能及び/又は中継機能を有して、ネットワークNWを構成する。
【0037】
積雪検知システム1Sは、積雪検知システム全体及びそれを構成する各積雪検知装置1A〜1Nを制御する機能サーバ50Sと、システムで計測可能な地域の積雪状況を表示する監視モニタ60Sとを備える。また、過去の温度・風速・積雪高さ・積雪速度を含む気象データと、除雪作業データ(除雪地域・除雪時間・除雪機器・除雪方法・除雪人員・特記事項)との関係を収集・記録したデータベースであって、各積雪検知装置1A〜1Nで共同使用できる共用気象除雪データベース52Sを有する。さらに、除雪作業判断部53にて判断された作業時期が到来した時に作業員に作業開始を報知する報知装置61Sを備える。
システムで計測可能な地域として、システムで計測可能な全地域をカバーするのが好ましいが、一部の地域が事故等で積雪状況を表示できない場合は、大部分を表示させ、全地域を表示させなくても良い。
【0038】
機能サーバ50Sは、通信ネットワークNWを介して各積雪検知装置1A〜1Nに通信接続され、各積雪検知装置1A〜1Nを制御する。この際、典型的には各積雪検知装置1A〜1Nの制御部50を介して制御する。例えば、いずれかの積雪検知装置1Kで除雪の判断が出された時に、その積雪検知装置1Kの広角カメラ21を操作して、現地の状況を詳しく調べる等である。
また、機能サーバ50Sは共用気象除雪データベース52Sに接続される。これにより、各積雪検知装置1A〜1Nは気象除雪データベース52として、共用気象除雪データベース52Sを使用可能である。ただし、共用気象除雪データベース52Sのうちの使用頻度の高いデータのみを気象除雪データベース52が有していれば、素早い判断が可能である。また、機能サーバ50Sの操作は当該サーバに直接接続された情報操作端末で行うことも可能であるが、インターネットINを介して機能サーバ50Sに接続された情報操作端末62から操作することも可能である。例えば、機能サーバ50Sは北斗市に配置され、情報操作端末62は函館市及び札幌市に配置されて、どちらの情報操作端末62からでも操作可能とする。監視モニタ60Sとして、機能サーバ50Sに接続されたモニタを使用しても良く、情報操作端末62に接続されたモニタを使用しても良い。
【0039】
通信ネットワークNW内の通信には特定小電力無線方式を使用する。特定小電力無線方式とは、データ伝送用等特定の用途において、電波の型式、周波数、空中線電力、占有周波数帯幅等が所定の範囲であれば、無線局の免許を受けずに利用できる無線方式である。例えば周波数帯は315MHz帯、400MHz帯、920MHz帯、1.2GHz帯、2.4GHz帯、空中線電力は0.01W以下、送信時間30秒以内/回等の制限が課せられる。しかしながら、例えば920MHz帯を使用すれば、電波到達距離を約30kmとれる、携帯電話エリア外でも通信できる、通信キャリアを介さないので、通信費が安価なシステムを構築できるというメリットがある。特に、携帯電話エリア外となる中山間地での通信に適している。電波到達距離が長距離なので、積雪検知装置1A〜1N間の間隔を長くでき、広域を少ない積雪検知装置1A〜1Nでカバーできる。これにより、積雪検知システム1Sを安価に構築可能である。また、線路沿いでない場所又は線路沿いで計測をしない場所でも、積雪検知装置1Mを中継用に使用できる。中継点を設けることにより、電波到達距離を超える長距離の通信を可能にできる。また、中継点を設けることにより、ネットワークNW内に迂回路を設けて経路を多重化することにより、いずれかの積雪検知装置1Kに故障が生じた場合でも、ネットワークNWが機能するようにして、ネットワークNWの信頼性を高めることができる。なお、特定小電力無線方式は大容量の通信には不向きであるが、積雪高検知のデータの通信には十分であり、防犯・防雪害・防水害・防獣害に対する監視カメラの使用では、画像を送るにしても静止画や短時間の動画なので、問題ない。
【0040】
また、スペクトラム拡散を使用できる。スペクトラム拡散には、送信データよりも広い周波数帯にエネルギーを拡散して通信する直接拡散、短時間で周波数を交互に切り替えながら通信する周波数ホッピングの2方式があるが、いずれの方式を使用しても、妨害・干渉・傍受に強くなり、通信内容が安定に保持される。また、920MHz帯の電磁波を使用すると、水に吸収され難いので、降雨・降雪による減衰が少ない。
また、通信ネットワークNWはインターネッINと接続されることが好ましい。そうすると、全国に判断の結果を配信可能となる。また、インターネットINに接続された資源を利用できる。そして、遠隔地の情報操作端末62からの積雪検知システム1Sの管理が可能になる。
【0041】
したがって、監視すべき線路が、都市部から遠く離れた遠距離であっても、その監視が可能であり、システムも安価に構成できる。また、かかる地域では、インターネットINと別の独自無線ネットワークNWを使用すること、無線電波の輻輳が少ないことから、低ノイズの通信が得られる。
【0042】
また、積雪検知システム1Sでの積雪検知方法については、S101〜S109は
図4と同じである。その後は、S110の代わりに、判断結果をネットワーク通信する(S210)。次に、判断結果が機能サーバ50Sを介して、共用気象除雪データベース62Sに集められる(S211)。次に、システム全体に係る積雪状況が監視モニタ60Sに表示される(S212)。次に、除雪作業判断部53で判断された作業時期が到来すると、報知装置61Sが作業員に作業開始を報知する(S213)。
【0043】
以上により、本実施例によれば、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である積雪検知装置1A〜1Nをネットワーク化して積雪検知システム1Sを構成するので、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である積雪検知システムを提供できる。また、特定小電力無線方式を使用するので、通信キャリアがカバーできない地域でも積雪高さを検知可能である積雪検知システムを提供できる。
【実施例5】
【0044】
実施例4では、積雪検知装置1A〜1Nを鉄道線路に沿って設置する例について説明したが、本実施例では道路に沿って設置する例について説明する。監視対象が線路への積雪状況に代えて、道路への積雪状況になる。道路が凍結するとスリップなど事故の原因になるので、除雪時期を判断する必要がある。広い道路では支柱直下だけでなく、広範囲を監視する必要があるので、例えば積雪検知装置を架橋の梁に設置しても良い。
その他のシステム構成は実施例4と同様であり、実施例4と同様に、装置構成が簡素・廉価で定量的な積雪高さを検知可能である積雪検知システムを提供できる。また、通信キャリアがカバーできない地域でも積雪高さを検知可能である積雪検知システムを提供できる。
【実施例6】
【0045】
実施例6では、除雪の必要性と除雪時期の判断に加えて、交通遅延の予測を行う例について説明する。
気象除雪データベース52及び共用気象除雪データベース52Sは、気象データ、除雪作業データに加えて、線路上を走行する列車の運行状況データ、又は道路上を走行する自動車・バスの運行状況データを、例えばレーザセンサによる検出又は監視カメラからの画像解析により、時間の関数として収集する。
過去に収集した気象データと運行状況データの相関性と、気象庁による気象予報とを組み合わせると、運行状況を予測可能になる。そこで、例えば、除雪作業判断部53又は機能サーバ50Sで遅延状況を予測する。予測結果を鉄道事業者・バス事業者又は道路管理者に提供することにより、列車や自動車・バス等のスムーズな運行管理に利用してもらうことができる。
【実施例7】
【0046】
実施例7では、積雪高検出に加えて、その他のセンサを組み込む例について説明する。例えば、防犯・防雪害・防水害・防獣害のいずれかのための監視カメラを組み込めば、積雪高検出に加えて、防犯・防雪害・防水害・防獣害の予防に役立てられる。雨量センサ、水位センサを組み込めば、防水害の予防に役立てられる。風向・風速センサを組み込めば、風害の予防に役立てられる。
積雪高検出は主として冬に行われるが、これら他のセンサを組み込めば年間を通して利用できる。
【0047】
また、本発明は、以上の実施例に記載の積雪検知方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとしても実現可能である。プログラムは積雪検知装置1の制御部50又は中央制御装置50Sに蓄積して使用してもよく、外付けの記憶装置に蓄積して使用してもよく、インターネットからダウンロードして使用しても良い。また、当該プログラムを記録した記録媒体としても実現可能である。
【0048】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は以上の実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施の形態に種々の変更を加えられることは明白である。
【0049】
例えば、以上の実施例では撮像カメラ20が1台の場合について説明したが、2台以上であっても良い。2台以上で計測すれば精度が向上するし、1台が故障の時も他のカメラで計測できる。また、以上の実施例では太陽光発電パネル40が支柱4上に設置される例を示したが、支柱4に横づけして設置されても良い。また、以上の実施例では積雪検知システム1Sが1つのネットワークで連結された例について説明したが、複数の積雪検知ネットワークNWがインターネットINで繋がれて1つの積雪検知システムを構成しても良い。この場合、積雪検知ネットワークNW毎に機能サーバ50Sが配置されるが、いずれか1つの機能サーバがシステム全体を制御する機能サーバを兼ねても良いし、各積雪検知ネットワークの機能サーバと別の機能サーバがシステム全体を制御しても良い。また、以上の実施例では筐体2の形状が円筒形を基本にした例について説明したが、計測対象及び周囲環境に応じて、筐体2の寸法・形状等を適宜変更可能である。
【0050】
また、例えば、積雪監視が必要な場所は、線路沿いや道路沿いに限られない。家屋・温室の屋根の積雪状況、スキー場・野外運動場の積雪状況等の監視にも適用可能である。また、太陽光発電システムへの積雪状況(除雪の判断をするため)、風力発電システムへの積雪状況(吹雪時に風車を止める)、洋上発電システムへの積雪状況(吹雪時に風車を止める) 等の監視にも適用可能である。太陽光発電システムや風力発電システムにおいては、積雪高さ以外のセンサを付与することによって、積雪状態のみならず、風力・風向・日照量等の多様な気象情報について監視及び検知が可能となる。また、気象予報により、機能ノード以外の地点で異常積雪が予想される場合には、移動体に積雪検知装置を積載して当該地点に移動し、新たな機能ノードを構成しても良い。この場合には、地球測位システム(GPS)を用いた位置センサの使用が有用である。また、積雪監視装置に組み込むセンサの組み合わせや精度等は状況に応じて適宜変更可能である。