特許第6440367号(P6440367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440367
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】風車翼の損傷検知方法及び風車
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20181210BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20181210BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   F03D7/04 Z
   F03D80/00
   F03D1/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-37608(P2014-37608)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-161247(P2015-161247A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年1月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加山 広之
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−349775(JP,A)
【文献】 特開2013−238929(JP,A)
【文献】 特開平08−261135(JP,A)
【文献】 特開2013−148022(JP,A)
【文献】 特開2013−231409(JP,A)
【文献】 特開2012−117446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
F03D 1/06
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータにおける前記風車翼の損傷検知方法であって、
前記風車翼の振動を示す振動データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得した前記振動データの経時変化に基づいて、前記風車翼の損傷を検出する検出ステップと、を備え、
前記検出ステップにおいて、
前記データ取得ステップで取得した前記振動データのうち、風速が所定の範囲内であるときに取得した振動データのみを用いて前記風車翼の損傷を検出するとともに、
前記振動データにおけるピーク振動数の経時変化により前記風車翼の故障モードを判別する
ことを特徴とする風車翼の損傷検知方法。
【請求項2】
前記風車ロータは複数の風車翼を備え、
前記データ取得ステップでは、前記複数の風車翼の各々について振動データを取得し、
前記複数の風車翼のうち1枚の検出対象風車翼の振動データと、他の風車翼のうち1枚以上の比較対象風車翼の振動データを反映した基準値との差分を算出する差分算出ステップをさらに備え、
前記検出ステップでは、前記差分算出ステップで算出される前記差分の経時変化に基づいて、前記検出対象風車翼の損傷を検出する請求項1に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項3】
前記データ取得ステップでは、前記風車翼の内壁面に取り付けられた振動センサを用いて前記振動データを取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項4】
前記データ取得ステップでは、前記風車翼の前縁部又は後縁部に取り付けられた振動センサを用いて前記振動データを取得することを特徴とする請求項3に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項5】
前記データ取得ステップでは、前記風車翼の背側又は腹側に取り付けられた振動センサを用いて前記振動データを取得することを特徴とする請求項3に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項6】
前記データ取得ステップでは、前記風車翼の内部において前記風車翼の翼長方向に沿って設けられるシアウェブに取り付けられた振動センサを用いて前記振動データを取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項7】
前記データ取得ステップでは、前記風車翼の翼根部に取り付けられた振動センサを用いて前記振動データを取得することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項8】
前記データ取得ステップでは、前記風車翼の翼先端部に取り付けられた振動センサを用いて前記振動データを取得することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項9】
前記検出ステップでは、前記風車翼の故障モードごとの固有振動数を基準として前記故障モードごとに設定された規定範囲内に前記ピーク振動数が含まれるとき、該規定範囲に対応する前記故障モードでの損傷が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の風車翼の損傷検知方法。
【請求項10】
少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータと、
前記風車翼の振動又は前記風車翼の内部の音を検出するための振動センサと、
前記風車翼の損傷を検知するための損傷検知部と、を備え、
前記損傷検知部は、
前記振動センサの検出結果から取得される振動データのうち、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データの経時変化に基づいて、前記風車翼の損傷を検出するとともに、
前記振動データにおけるピーク振動数の経時変化により前記風車翼の故障モードを判別するように構成された風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風車翼の損傷検知方法及び風車に関する。
【背景技術】
【0002】
風車翼の損傷を初期段階に検知する方法として、風車翼に取り付けた振動センサを用いて取得した情報を用いて損傷検知を行う方法が知られている。
例えば、特許文献1には、風車の各風車翼に振動を検出する振動センサを取付け、これら振動センサから得られる振動パターンを比較判定する判定手段とを備える風車翼破損検知装置が記載されている。この風車翼破損検知装置では、振動センサで検出された振動信号(強度信号)はスペクトラムアナライザにより周波数成分に変換され、さらに、周波数領域(例えば0〜10MHz)を分割した区間ごとのピーク値を用いてパターン化される。判定手段は、このようにパターン化された振動波形と、予めデータベースに取り込んでおいた正常時の波形パターンとを比較する。そして、例えば、取得した振動波形から正常時波形を差分した値が所定の割合だけ(例えば20%以上)変動があれば異常と判定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−349775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の風車翼破損検知装置では、風車翼から直接振動を検知するので、高感度で風車翼の振動を検出できるため、風車翼に異常が生じた際に初期段階で検知することができる。
一方、風車翼に加わる荷重は風速に依存するから、該荷重に影響を受ける風車翼の振動も風速の影響を受ける。このため、上記風車翼破損検知装置で風車翼の振動を検出できたとしても、検出した振動に基づく風車翼の異常検知において、風速の影響を考慮せずに風車翼の異常を精度良く検知することは難しい。
【0005】
本発明の少なくとも一実施形態の目的は、風車翼の異常を精度良く検知し得る風車翼の損傷検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風車翼の損傷検知方法は、
少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータにおける前記風車翼の損傷検知方法であって、
前記風車翼の振動を示す振動データ又は前記風車翼の内部の音響データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得した前記振動データ又は前記音響データの経時変化に基づいて、前記風車翼の損傷を検出する検出ステップと、を備え、
前記検出ステップにおいて、前記データ取得ステップで取得した前記振動データ又は前記音響データのうち、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データのみ又は音響データのみを用いて前記風車翼の損傷を検出する。
【0007】
風車翼に加わる荷重は風速に依存するから、データ取得ステップで取得する振動データ又は音響データは、データ取得時の風速に応じて値がばらつく。上記風車翼の損傷検知方法によれば、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データのみ又は音響データのみを用いて風車翼の損傷を検出するので、風速に対する振動データ又は音響データのばらつきの影響を低減することができ、風車翼の損傷検知を的確に行うことができる。
また、上記風車翼の損傷検出方法に必要な振動データ又は音響データは風車の運転中においても取得可能であるため、風車翼の損傷検知を目的として風車の運転を停止する必要がない。よって、風車の稼働率の低下を招くことなく、風車翼の損傷検知を行うことができる。
【0008】
幾つかの実施形態では、
前記風車ロータは複数の風車翼を備え、
前記データ取得ステップでは、前記複数の風車翼の各々について振動データ又は音響データを取得し、
前記複数の風車翼のうち1枚の検出対象風車翼の振動データ又は音響データと、他の風車翼のうち1枚以上の比較対象風車翼の振動データ又は音響データを反映した基準値との差分を算出する差分算出ステップをさらに備え、
前記検出ステップでは、前記差分算出ステップで算出される前記差分の経時変化に基づいて、前記検出対象風車翼の損傷を検出する。
この場合、複数の風車翼のうち1枚の検出対象風車翼の振動データ又は音響データと、他の風車翼のうち1枚以上の比較対象風車翼の振動データ又は音響データを反映した基準値との差分を風車翼の損傷の検知に用いるので、風速の変化等の運転状態による損傷検知に対する影響を排除することができる。このため、風車翼の損傷をより的確に検知することが可能となる。
【0009】
幾つかの実施形態では、前記データ取得ステップでは、前記風車翼の内壁面に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて前記振動データ又は前記音響データを取得する。
この場合、風車翼の損傷検知において、風車翼の内壁面に取り付けられた振動センサ又は音響センサを用いるので、翼外皮に発生するクラックや、翼外皮等における接着剤剥離等、風車翼に発生する損傷を検出することができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、前記データ取得ステップでは、前記風車翼の前縁部又は後縁部に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて前記振動データ又は前記音響データを取得する。
背側の翼外皮と腹側の翼外皮とを接着剤で貼り合わせることによって作製された風車翼では、経年劣化等により接着剤剥離が発生し、口開きの状態となってしまうことがある。上記実施形態では、風車翼の損傷検知において、風車翼の前縁部又は後縁部に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて取得した振動データ又は音響データを用いるので、風車翼の前縁又は後縁における口開きを検知しやすい。
【0011】
幾つかの実施形態では、前記データ取得ステップでは、前記風車翼の背側又は腹側に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて前記振動データ又は前記音響データを取得する。
風車翼の翼長方向に沿って設けられるシアウェブと風車翼の内壁とが接着剤で張り合わされている場合、経年劣化等により接着剤剥離が生じる場合がある。上記実施形態では、風車翼の損傷検知において、風車翼の背側又は腹側に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて取得した振動データ又は音響データを用いるので、風車翼の背側又は腹側において発生する、シアウェブと風車翼の内壁との接着剤剥離や、風車翼の背側又は腹側におけるクラックの発生および進展を検知しやすい。
【0012】
幾つかの実施形態では、前記データ取得ステップでは、前記風車翼のシアウェブに取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて前記振動データ又は前記音響データを取得する。
この場合、風車翼の損傷検知において、風車翼のシアウェブに取り付けられた振動センサ又は音響センサを用いるので、シアウェブと風車翼の内壁との接着材剥離を検知しやすい。
【0013】
幾つかの実施形態では、前記データ取得ステップでは、前記風車翼の翼根部に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて前記振動データ又は前記音響データを取得する。
翼根部において発生したクラック等が進展してしまうと、風車翼の折損等重大事故につながる可能性がある。上記実施形態では、風車翼の損傷検知において、風車翼の翼根部に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて取得した振動データ又は音響データを用いるので、風車翼の折損等につながる可能性のある翼根部の損傷を効果的に検知することができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、前記データ取得ステップでは、前記風車翼の翼先端部に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて前記振動データ又は前記音響データを取得する。
風車において、風車翼の翼先端部とは反対の翼根部の側(ロータヘッド側)には、風車翼が取り付けられるハブや、ハブに接続される機器が存在し、風車の運転中、これらの動作による振動や音が発生している。このため、風車翼のロータヘッド側に振動センサや音響センサを設けると、損傷に起因する振動又は音響以外の振動や音によるノイズがセンサに拾われやすくなる。上記実施形態では、風車翼の損傷検知において、風車翼の翼先端部に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて取得した振動データ又は音響データを用いるので、損傷に起因する振動又は音以外の振動や音によるノイズの影響が低減された状態で風車翼の損傷を検知することができる。
また、上記実施形態では、風車翼の損傷検知において、風車翼の翼先端部に取り付けられた振動センサまたは音響センサを用いて取得した振動データ又は音響データを用いるので、翼先端部において発生する風車翼外皮の接着剤剥離による口開きを検知しやすい。
【0015】
幾つかの実施形態では、前記検出ステップにおいて、さらに、風車翼のピーク振動数の経時変化により故障モードを判別する。
このように、振動データに基づいて、風車翼の損傷を検知するとともに、故障モードを判別することで、より詳細な損傷検知が可能となる。
【0016】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風車は、
少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータと、
前記風車翼の振動又は前記風車翼の内部の音を検出するための振動センサ又は音響センサと、
前記風車翼の損傷を検知するための損傷検知部と、を備え、
前記損傷検知部は、前記振動センサ又は前記音響センサの検出結果から取得される振動データ又は音響データのうち、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データ又は音響データの経時変化に基づいて、前記風車翼の損傷を検出するように構成される。
【0017】
上記風車によれば、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データ又は音響データのみを用いて風車翼の損傷を検出するので、風速に対する振動データ又は音響データのばらつきの影響を低減することができ、風車翼の損傷検知を的確に行うことができる。
また、上記風車によれば、上記風車翼の損傷検出方法に必要な振動データ又は音響データは風車の運転中においても取得可能であるため、風車翼の損傷検知を目的として風車の運転を停止する必要がない。よって、風車の稼働率の低下を招くことなく、風車翼の損傷検知を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、風車翼の損傷を精度良く検知し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る風車の全体構成を示す概略図であり、図1(A)は風車を側面から見た図であり、図1(B)は風車を正面から見た図である。
図2図1に示す風車の風車翼の全体構造の概要を示す図である。
図3図2に示す風車翼のA−A断面図の一例である。
図4図2に示す風車翼のB−B断面図の一例である。
図5】一実施形態に係るデータ取得ステップで取得される振動データを示すグラフの一例である。
図6】一実施形態に係るデータ取得ステップで取得される振動データを示すグラフの一例である。
図7】一実施形態に係るデータ取得ステップで取得される振動データを示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
まず、本発明において損傷検知の対象とする風車翼を備える風車の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る風車1の全体構成を示す概略図であり、図1(A)は風車1を側面から見た図であり、図1(B)は風車1を正面から見た図である。図1(A)及び(B)に示すように、風車1は、少なくとも1枚の風車翼2と、風車翼2が取り付けられるハブ4とを備える風車ロータ6と、ナセル8と、ナセル8を支持するタワー10とを含む。なお、図1に示す風車1では、3枚の風車翼2がハブ4に取り付けられている。この風車1では、風が風車翼2に当たると、風車翼2及びハブ4を含む風車ロータ6が、風車ロータ6の回転軸の周りを回転する。
また、図1に示す風車1は、風車翼2の損傷を検知するための損傷検知部30を備える。
【0022】
風車1は風力発電装置であってもよい。この場合、ナセル8には、発電機及び風車ロータ6の回転を発電機に伝達するための動力伝達機構が収容され、風車1は、風車ロータ6から動力伝達機構により発電機に伝達された回転エネルギーが、発電機によって電気エネルギーに変換されるように構成されていてもよい。
【0023】
風車翼2には、風車翼2の振動を検出するための振動センサ20(20A,20B)又は風車翼2の内部の音を検出するための音響センサ21を備える。図1には、一例として、風車翼2の各々の翼根部12に振動センサ20(20A,20B)が取り付けられた風車1を示す。風車翼2には、振動センサ20又は音響センサ21の何れか一方を取り付けてもよいし、振動センサ20(20A,20B)と音響センサ21の両方を取り付けてもよい。
なお、図1に示す風車1において、翼根部12とは、風車翼2のハブ4側の端部を構成している構造部分のことである。翼根部12は、円筒形の形状に形成されており、風車翼2からハブ4へ伝達される曲げモーメントを負担する。
【0024】
振動センサ20(20A,20B)は、計測対象物の振動を検出することができるものであり、その検出結果からは、振動センサ20(20A,20B)を取り付けた計測対象物の振動の振動数や振動レベル(振幅)等の振動データを取得することができる。振動センサ20としては、例えば加速度計を用いることができる。
音響センサ21は、計測地点における音を検出することができるものであり、その検出結果からは、計測地点における音の周波数や音量等の音響データを取得することができる。音響センサ21としては、例えばマイクロフォンを用いることができる。
【0025】
風車翼2に取り付けられた振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21により検出された振動や音響の信号は、信号ケーブル16を経由してナセル8の中に収容されたデータ記録部18に入力される。なお、データ記録部18は、ハブ4の中に収容されていてもよい。
データ記録部18に入力された振動又は音響の信号は、タワー10内部に配線された信号ケーブル17を経由して損傷検知部30に入力され、損傷検知部30において風車翼2の損傷を検出する。ここで、「損傷」とは、風車翼の折損に至る事象のことであり、例えば風車翼の外皮におけるクラックの発生及び進展や、接着材剥離の発生及び進展等、風車翼の折損の要因となる事象が発生していることをいう。
なお、損傷検知部30は、図1に示すように、ナセル8やタワー10の外部に配置されていてもよいし、ナセル8やタワー10の内部に配置されていてもよい。また、損傷検知部30は、風車に関する情報(例えば、風速や、風車ロータの回転数等の諸々の情報)を風車から離れた遠隔地で一括して収集、監視及び管理する遠隔監視システム(例えばSCADA)の一部であってもよい。
なお、損傷検知部30による風車翼の損傷の検出については、後述する。
【0026】
次に、図2〜4を用いて、風車翼2の構成及び風車翼2における振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21の取付位置について説明する。図2は、図1に示す風車1の風車翼2の全体構造の概要を示す図である。図3及び図4は、それぞれ、図2に示す風車翼の断面図の一例であって、図3図2のA−A断面図の一例であり、図4図2のB−B断面図の一例である。
【0027】
図2及び図3に示すように、風車翼2は、中空状に形成された翼本体3と、翼本体3の内部において、風車翼2の翼長方向に延在する2本のシアウェブ36とを備える。風車翼2は、風車翼2の一方の端部である翼根62においてボルト等を用いてハブ4に取り付けられる(図1参照)。なお、風車翼2の翼根62と反対側の端部は翼先端64である。
図3に示すように、翼本体3は、背側22の外表面を構成する背側外皮32と、腹側24の外表面を構成する腹側外皮34とを含み、背側外皮32と腹側外皮34とは、風車翼2の前縁26及び後縁28において、接着材38を介して貼り合わされている。また、図3及び図4に示すように、シアウェブ36と風車翼2の内壁面5とは、風車翼2の背側22及び腹側24において、接着剤39を介して貼り合わされている。なお、本明細書において、腹側外皮及び背側外皮をまとめて「外皮」又は「翼外皮」と称することもある。
【0028】
風車翼2には、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21が取り付けられる。風圧など外部の影響を受けずに風車翼2の振動又は風車翼2の内部の音を検出するため、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21は風車翼2の内部に取り付けられる。
図3及び図4に示すように、振動センサ20(20A,20B)は、接着剤42を用いて風車翼2の内部に固定され、例えば風車翼2の内壁面5(すなわち翼本体3の内壁面)や、シアウェブ36の表面に固定される。
また、図4に示すように、音響センサ21は、風車翼2からの固体音等が音響センサ21に伝わらないように、クッション材44を介して風車翼2の内壁面5にテープ等を用いて固定される。例えば、風車翼2の内壁面5に、風車翼2からの固体音等を吸収するための十分な厚さを有するクッション材44を敷き、その上に音響センサ21を載せて、音響センサ21をクッション材44とともに風車翼2の内壁面5にテープで数か所貼り付けて固定する。クッション材44は、風車翼2から伝播する固体振動や固体音を吸収するものであり、例えばスポンジ等で形成される。
【0029】
図4に示すように、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21は、信号ケーブル16により、データ記録部18に含まれるデータロガー54に接続される。そして、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21で検出した振動又は音の信号は、信号ケーブル16を介してデータロガー54に入力され、記録される。データロガー54に記録された振動又は音の信号から、振動数や振動レベル等の振動データ又は周波数や音量等の音響データを取得することができ、これらの振動データや音響データは、風車翼2の損傷の検出に用いられる。データロガー54は、信号ケーブル17により損傷検知部30に接続されていてもよい(図1参照)。
なお、図4に示すように、風車翼2の翼根部12には隔壁板46が設けられており、この隔壁板46には開閉可能なマンホール48が設けられている。信号ケーブル17は、マンホール48に設けられた開口部49を通って振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21とデータロガー54とを接続してもよい。
【0030】
振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21は、増幅器52を経由してデータロガー54に接続されてもよい。この場合、増幅器52により、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21で検出した振動又は音の信号が増幅され、増幅された信号がデータロガー54に入力される。なお、図4には、振動センサ20(20A,20B)が増幅器52を経由してデータロガー54に接続される例が示される。
【0031】
一実施形態では、図3及び図4に示すように、風車翼2の内壁面5に取り付けられた振動センサ20Aを用いて、振動データを取得する。
この場合、風車翼2の内壁面5に取り付けられた振動センサ20Aを用いることで、背側外皮32又は腹側外皮34に発生するクラックや、背側外皮32と腹側外皮34との間における接着剤38の剥離、背側外皮32又は腹側外皮34とシアウェブ36との間における接着剤39の剥離等、風車翼2に発生する損傷を検出することができる。
【0032】
図3に示す例では、振動センサ20Aは、風車翼2の前縁部27及び後縁部29に取り付けられる。なお、風車翼2の前縁部27又は後縁部29とは、それぞれ、風車翼2のうち、前縁26と後縁28を結ぶコード方向において、前縁26又は後縁28から25%程度の範囲の部分のことである。
この場合、風車翼2の前縁26又は後縁28における口開き(すなわち背側外皮32と腹側外皮34との間における接着剤38の剥離)を検知しやすい。
【0033】
図4に示す例では、振動センサ20Aは、風車翼2の背側22及び腹側24に取り付けられる。
この場合、風車翼2の背側22又は腹側24において発生する、シアウェブ36と風車翼の内壁面5との接着剤39の剥離や、風車翼2の背側22又は腹側24におけるクラックの発生および進展を検知しやすい。
なお、風車1の運転中、風車翼2は、腹側24が正面(風上側)を向いて風を受けるようになっており、風車翼2の腹側24に常時風による静圧が加わるため、風車翼2には背側22と腹側24を結ぶ方向(フラップ方向)の曲げ荷重が加わりやすい。このため、風車翼2においては、背側22又は腹側24においてクラックが入りやすい。図4に示す例では、このような背側22又は腹側24におけるクラックを検知しやすいため、風車翼2の損傷検知を効果的に行うことができる。
【0034】
また、図3に示す例では、振動センサ20Bが風車翼2のシアウェブ36に取り付けられる。
この場合、シアウェブ36に関わる風車翼2の損傷を検知しやすく、例えば、シアウェブ36と風車翼2の内壁面5における接着材39の剥離を検知しやすい。
【0035】
音響センサ21についても、振動センサ20(20A,20B)と同様に、風車翼2の内壁面5やシアウェブ36に取り付けることができる。また、音響センサ21を風車翼2の内壁面5に取り付ける場合には、風車翼2の前縁部27若しくは後縁部29、又は背側22若しくは腹側24に取り付けてもよい。
図4に示す例では、音響センサ21は、風車翼2の内壁面5のうち、背側22に取り付けられる。
【0036】
幾つかの実施形態においては、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21は、風車翼2の翼根部12(図2参照)に取り付けてもよい。この際、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21は、風車翼2の翼根部12において、前縁部27若しくは後縁部、又は背側22若しくは腹側24に取り付けてもよい。
翼根部12において発生したクラック等が進展してしまうと、風車翼2の折損等重大事故につながる可能性がある。振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21を翼根部12に取り付ける上記実施形態では、風車翼2の折損等につながる翼根部12の損傷を効果的に検知することができる。
【0037】
幾つかの実施形態においては、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21は、風車翼2の翼先端部14(図2参照)に取り付けてもよい。この際、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21は、風車翼2の翼先端部14において、前縁部27若しくは後縁部29、又は背側22若しくは腹側24に取り付けてもよい。なお、風車翼2の翼先端部14とは、風車翼2のうち、翼根62と翼先端64を結ぶ翼長方向において、翼先端64から25%程度の範囲の部分のことである。
風車1において、風車翼2の翼先端部14とは反対の翼根部12の側(ロータヘッド側)には、風車翼2が取り付けられるハブ4や、ハブ4に接続される機器が存在し、風車1の運転中、これらのハブ4や機器の動作による振動や音が発生している。このため、風車翼2のロータヘッド側に振動センサ20(20A,20B)や音響センサ21を設けると、損傷に起因しない振動や音によるノイズがセンサに拾われやすくなる。上記実施形態では、風車翼2の損傷検知において、風車翼2の翼先端部14に取り付けられた振動センサ20(20A,20B)または音響センサ21を用いて取得した振動データ又は音響データを用いるので、損傷に起因する振動又は音以外の振動や音によるノイズの影響が低減された状態で風車翼2の損傷を検知することができる。
また、上記実施形態では、風車翼2の損傷検知において、風車翼2の前縁部27又は後縁部29に取り付けられた振動センサ20(20A,20B)または音響センサ21を用いて取得した振動データ又は音響データを用いるので、翼先端部14において発生する背側外皮32と腹側外皮34の接着剤剥離による口開きを検知しやすい。
【0038】
振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21の取付位置は、以上に説明した位置に限定されず、風車翼2において、振動又は音によって検出する対象の損傷(クラック、接着剤剥離等)が発生しやすい位置に取り付けてもよい。例えば、シアウェブ36の端部の接着部に剥離が発生しやすい。また、翼先端部14付近の前縁には落雷やエロ―ジョンによる口開きが発生しやすく、翼先端部14付近の後縁には、落雷による口開きが発生しやすい。また、翼外皮全般に落雷や、過大荷重によるクラックが発生する可能性がある。このような検出対象の損傷が発生しやすい位置に振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21を取り付けてもよい。
【0039】
なお、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21については、図3図4に示すセンサの全てを取り付けなくてもよく、風車翼2の振動や音を検出する必要がある位置にのみ振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21を取り付けてもよい。
また、風車翼2には、振動センサ20(20A,20B)又は音響センサ21の何れか一方を取り付けてもよいし、振動センサ20(20A,20B)と音響センサ21の両方を取り付けてもよい。
【0040】
次に、一実施形態に係る風車翼の損傷検知方法について説明する。
図5図7は、それぞれ、一実施形態に係るデータ取得ステップで取得される振動データを示すグラフの一例である。
【0041】
一実施形態に係る風車翼の損傷検知方法は、上述した風車1の風車翼2を損傷検知の対象とし、風車翼2の振動を示す振動データを取得するデータ取得ステップと、データ取得ステップで取得した振動データの経時変化に基づいて、風車翼2の損傷を検出する検出ステップと、を備える。検出ステップでは、データ取得ステップで取得した振動データのうち、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データのみを用いて風車翼2の損傷を検出する。
【0042】
まず、データ取得ステップについて説明する。
データ取得ステップでは、例えば翼根部12に上述の振動センサ20を取り付けた風車翼2において、振動センサ20により得られる風車翼2の振動信号から振動データを取得する。
振動センサ20により取得できる風車翼2の振動データの例として、例えば、振動レベル(振動強度)や、ピーク振動数(固有振動数)が挙げられる。ピーク振動数は、図5に示すような、一定時間計測された振動レベルに対して振動数解析を行って、振動レベルを振動数成分に変換することで得られる。なお、図5において、ピークの振動数fは風車翼2の固有振動数である。
また、振動を計測する時刻における風速も同時に計測して、図6及び図7に示すような、風速と、風車翼2の振動レベル又はピーク振動数との関係を振動データとして取得することもできる。
なお、図6のグラフは、一定時間計測した振動レベルの平均値又は、一定時間計測した振動のピーク振動数の振動レベルを示すものである。
また、図7のグラフは、一定時間計測した振動のピーク振動数を示すものである。
【0043】
次に、検出ステップについて説明する。
【0044】
幾つかの実施形態において、検出ステップでは、風車翼2の振動レベルの大きさが予め定めた閾値を超えた場合に、風車翼2の損傷があると判定する。なお、閾値は、風車翼2が健全な状態で測定された振動レベルから、安全を考慮して決定される。
この際、風車翼に加わる荷重は風速に依存するから、データ取得ステップで取得する振動レベルの大きさ(振動データ)は、振動センサでの振動信号取得時の風速に応じて値がばらつく。
例えば、損傷の要因となるクラックや接着剤剥離が発生した場合、振動レベルは、時間が経過するにつれて増大する傾向となる。このとき、風速が大きい場合には、振動センサ20で検出される振動信号のばらつきが大きくなり、図6に示されるように、振動信号から取得される振動レベルの大きさ(振動データ)もばらつきが大きくなる。
そこで、取得した振動データのうち、風速が風速規定範囲内(例えば風速10〜13m/s)であるときの振動データのみを用いて、該風速規定範囲内で計測された振動レベルの大きさが、所定の範囲(図6中に示すTh〜Th)外である計測値が検出されたときに、風車翼2において損傷が生じていると判定する。
ここで、閾値範囲外の振動データが、1回だけでなく時間の経過に従って複数回検出されたときに風車翼2において損傷が生じていると判断してもよい。この場合、より精度良く風車翼2の損傷検知を行うことが可能となる。
【0045】
幾つかの実施形態において、検出ステップでは、風車翼2の振動レベルの大きさの時間に関する変化率が予め定めた閾値を超えた場合に、風車翼2において損傷あると判定する。振動レベルの大きさは、風車翼2の損傷の進行とともに増大すると考えられる。このため、風車翼の振動レベルの大きさの変化率によって風車翼2の損傷の検知が可能であると考えられる。なお、閾値は、風車翼2が健全な状態で測定された振動レベルから、安全を考慮して決定される。
この際、風車翼に加わる荷重は風速に依存するから、データ取得ステップで取得する振動レベルの大きさの変化率(振動データ)は、振動センサでの振動信号取得時の風速に応じて値がばらつく。
そこで、取得した振動データのうち、風速が風速規定範囲内(例えば風速10〜13m/s)であるときの振動データのみを用いて、該風速規定範囲内で計測された振動レベルの大きさの変化率が、閾値を超える計測点が発生したときに、風車翼2において損傷が生じていると判定する。
ここで、閾値範囲外の振動データが、1回だけでなく時間の経過に従って複数回検出されたときに風車翼2において損傷が生じていると判断してもよい。このようにすることで、より精度良く風車翼2の損傷検知を行うことが可能となる。
【0046】
幾つかの実施形態において、検出ステップでは、風車翼2のピーク振動数が、予め定めた閾値範囲を超えた場合に、風車翼2の損傷があると判定する。風車翼2に折損等の要因となるクラックや接着剤剥離等の損傷が発生すると風車翼2のピーク振動数(固有振動数)が変化する。したがって、風車翼2のピーク振動数の変化に基づいて損傷を検知することができる。なお、閾値は、風車翼2が健全な状態で測定されたピーク振動数から、安全を考慮して決定される。
この際、風車翼に加わる荷重は風速に依存するから、データ取得ステップで取得するピーク振動数(振動データ)は、振動センサでの振動信号取得時の風速に応じて値がばらつく場合がある。
そこで、取得した振動データのうち、風速が風速規定範囲内(例えば風速10〜13m/s)であるときの振動データのみを用いて、該風速規定範囲内で計測された振動数が、閾値範囲(図7中に示すTh〜Th)外である計測値が出現したときに、風車翼2において損傷が生じていると判定する。
ここで、閾値範囲外の振動データが、1回だけでなく時間の経過に従って複数回検出されたときに風車翼2において損傷が生じていると判断してもよい。この場合、より精度良く風車翼2の損傷検知を行うことが可能となる。
なお、風車翼2のピーク振動数(固有振動数)は、上述したように、振動センサ20により得られる風車翼2の振動信号から得ることができ、図5に示すような、一定時間計測された振動レベルに対して振動数解析を行って、振動レベルを振動数成分に変換することで得られる。そして、検出ステップでは、このようにして得られたピーク振動数の経時変化を監視する。
【0047】
以上、検出ステップにおいて、風車翼2の振動レベルの大きさ、振動レベルの大きさの変化率、又はピーク振動数のうちいずれかの経時変化に基づいて風車翼2の損傷を検出する手順の例について述べたが、一実施形態においては、検出ステップにおいて、風車翼2の振動レベルの大きさ、振動レベルの大きさの変化率、及びピーク振動数のうち、2つ以上の経時変化に基づいて風車翼2の損傷を検出してもよい。例えば、風車翼2の振動レベルの大きさの経時変化及び風車翼2のピーク振動数の経時変化に基づいて、風車翼2の損傷を検出してもよい。このように、損傷検知のための複数の指標を組み合わせて用いることによって、より精度よく検知することができる。
【0048】
一実施形態では、検出ステップにおいて、さらに、風車翼2のピーク振動数の経時変化により故障モードを判別する。
まず、風車翼2の折損の要因となる故障(損傷)が発生したときのピーク振動数(固有振動数)の変化の傾向と、故障モードとの関係を予め把握しておく。ここで、故障モードとは、故障の種類(クラックや接着剤剥離等)や、故障の大きさや位置のことをいい、故障モード毎に対応する固有振動数が存在する。
そして、振動センサ20により取得されたピーク振動数(振動データ)が、予め把握された故障モードにおける固有振動数と同程度となったときに、風車翼2において、その故障モードが発生していると判別する。例えば、取得されたピーク振動数(振動データ)と予め把握された故障モードにおける固有振動数とのずれが1割程度以下となったとき(すなわち、取得されたピーク振動数(振動データ)をf1、予め把握された故障モードにおける固有振動数をf0としたとき、|f1−f0|/f0≦0.1程度となったとき)、風車翼2において、その故障モードが発生していると判別してもよい。
このように、振動データに基づいて、風車翼の損傷を検知するとともに、故障モードを判別することで、より詳細な損傷検知が可能となる。
また、上述の故障モードの判別においても、データ取得ステップで取得した振動データのうち、風速が風速規定範囲内(例えば風速10〜13m/s)であるときに取得した振動データのみを用いることで、より精度の良い風車翼2の損傷検知が可能となる。
【0049】
以上、データ取得ステップで振動センサ20を用いて振動データ(振動レベルや振動数)を取得し、検出ステップで振動データの経時変化に基づいて風車翼2の損傷の可能性を検出する手順を説明した。このように振動データを用いて風車翼2の損傷の可能性を検出する場合と同様に、データ取得ステップでは音響センサ21を用いて音響データ(音量や周波数)を取得し、検出ステップでは音響データの経時変化に基づいて風車翼2の損傷を検出することが可能である。
【0050】
一実施形態に係る風車翼の損傷検知方法は、上述した複数の風車翼2を備える風車1の風車翼2を損傷検知の対象とし、風車翼2の各々についての振動を示す振動データを取得するデータ取得ステップと、差分算出ステップと、検出ステップと、を備える。
なお、以下には振動データを用いて風車翼の損傷を検知する場合について説明するが、同様に、音響データを用いて損傷を検知することも可能である。
【0051】
データ取得ステップでは、上述したデータ取得ステップと同様に、例えば翼根部12に振動センサ20を取り付けた風車翼2において、振動センサ20により得られる風車翼2の振動信号から、振動数及び振動レベルを含む振動データを取得する。
【0052】
差分算出ステップでは、複数の風車翼2のうち1枚の検出対象風車翼の振動データと、他の風車翼2のうち1枚以上の比較対象風車翼の振動データを反映した基準値との差分を算出する。
上記風車翼2の振動データとしては、例えば、風車翼2の振動レベルの大きさを用いることができる。この場合、上記基準値としては、例えば、他の風車翼2のうち1枚の比較対象風車翼の振動レベルの大きさを用いることができる。また、上記基準値として、他の風車翼2のうち2枚以上の比較対象風車翼の振動レベルの大きさの平均値や、他の風車翼2のうち2枚以上の比較対象風車翼と、前記一枚の検出対象風車翼の振動レベルの大きさの平均値を用いることもできる。
【0053】
検出ステップでは、差分算出ステップで算出される差分の経時変化に基づいて、検出対象風車翼の損傷を検出する。
このように、複数の風車翼2のうち1枚の検出対象風車翼の振動データと、他の風車翼のうち1枚以上の比較対象風車翼の振動データを反映した基準値との差分を風車翼2の損傷の検知に用いることで、風速の変化等の運転状態による損傷検知に対する影響を排除することができる。このため、風車翼2の損傷による異常をより的確に検知することが可能となる。
【0054】
一実施形態に係る風車1においては、損傷検知部30によって風車翼の損傷を検知してもよい。
前記損傷検知部30は、振動センサ20又は音響センサ21の検出結果から取得される風車翼2の振動データ又は音響データのうち、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データ又は音響データの経時変化に基づいて、風車翼2の損傷を検出するように構成される。
【0055】
&shy; 上記振動データは、風車翼2の振動レベル又は振動数であってもよい。また、上記音響データは、風車翼2の内部で計測された音の音量又は周波数であってもよい。
【0056】
損傷検知部30には、予め定められた風速規定範囲及び予め定められた振動データ又は音響データの閾値が記憶される。損傷検知部30は、風速の実測値が、記憶された風速規定範囲にあるときに、振動センサ20又は音響センサ21の検出結果から取得される風車翼2の振動データ又は音響データと、記憶された閾値とを比較して、振動データ又は音響データが前記閾値を超えた場合に、該当の検出対象風車翼の損傷を検出するように構成されていてもよい。
なお、風速は、風車1に風速計を設け、風速計により測定したデータを損傷検知部30に入力するようにしてもよい。
【0057】
上記のように構成された損傷検知部を備える風車1によれば、風速が風速規定範囲内であるときに取得した振動データのみを用いて風車翼2の損傷を検出するので、風速に対する振動データのばらつきの影響を低減することができ、風車翼2の損傷検知を的確に行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 風車
2 風車翼
3 翼本体
4 ハブ
5 内壁面
6 風車ロータ
8 ナセル
10 タワー
12 翼根部
14 翼先端部
16 信号ケーブル
18 データ記録部
20 振動センサ
21 音響センサ
22 背側
24 腹側
26 前縁
27 前縁部
28 後縁
29 後縁部
30 損傷検知部
32 背側外皮
34 腹側外皮
36 シアウェブ
38 接着剤
39 接着剤
42 接着剤
44 クッション材
46 隔壁板
48 マンホール
49 開口部
52 増幅器
54 データロガー
62 翼根
64 翼先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7