特許第6440435号(P6440435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440435
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】保水性舗装構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/22 20060101AFI20181210BHJP
   E01C 11/24 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   E01C11/22 A
   E01C11/24
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-199321(P2014-199321)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69880(P2016-69880A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】松本 健一
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 昌平
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−161343(JP,A)
【文献】 特開2000−045206(JP,A)
【文献】 特開2011−063959(JP,A)
【文献】 特開2008−088714(JP,A)
【文献】 特開平11−181706(JP,A)
【文献】 特開2014−043699(JP,A)
【文献】 特開2005−048417(JP,A)
【文献】 特開2003−239207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00〜 17/00
E03F 1/00〜 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路床上に形成された防水性の路盤と、
前記路盤上に設けられ、保水性を有する敷砂層、および前記敷砂層上に敷設され、路面を形成する保水性のインターロッキングブロックで形成される保水体と、
前記保水体の側面に接して設けられ、前記路盤の表面から1mm以上で前記敷砂層の上端以下の所定の位置に開口部の下端が形成された排水孔を有する側溝と、を備えることを特徴とする保水性舗装構造。
【請求項2】
前記敷砂層は、粗粒率1.5以上3.5以下の敷砂からなることを特徴とする請求項1記載の保水性舗装構造。
【請求項3】
前記敷砂層は、20mm以上30mm以下の厚さで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の保水性舗装構造。
【請求項4】
前記インターロッキングブロックにより形成される路面は、歩道として用いられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の保水性舗装構造。
【請求項5】
前記路盤は、透水性の材料からなる路盤本体と、前記路盤本体の表面に設けられた防水シートと、を有することを特徴とする請求項4記載の保水性舗装構造。
【請求項6】
前記側溝は、溝部と、前記溝部に嵌め込まれたグレーチングと、を有し、前記排水孔は、前記グレーチングに形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の保水性舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性を有する敷砂層とインターロッキングブロックとを備える保水性舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて高温となるヒートアイランド現象が問題となっている。このような高温化は、ビルによる直射日光の照り返しや、アスファルト、コンクリート等の舗装の温度が上昇することが主な原因となっている。
【0003】
ヒートアイランド現象による高温化を防止するため、舗装には、保水性による冷却機能を有するものが知られており、例えば、特許文献1には、冷却性能を一層向上させるために、舗装体の下方に積層する貯水層を設け、導水部材により側溝内の水の一部を、貯水層内に吸い上げる舗装が提案されている。そして、このような構造により、表面の冷却を長期間にわたって持続しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−160906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構造は、複雑であり、広く応用するには不向きである。また、インターロッキングブロック舗装技術協会の規格により側溝への排水機構が義務付けられており、規格に沿って単に排水機構を設けただけでは、貯水層内の水は、そのまま側溝に流れてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造により、路盤上に溜めた水を、インターロッキングブロックが保持することで、路面が過熱する時期においても、路面の温度上昇を長時間にわたって抑制できる保水性舗装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の保水性舗装構造は、路床上に形成された防水性の路盤と、前記路盤上に設けられ、保水性を有する敷砂層、および前記敷砂層上に敷設され、路面を形成する保水性のインターロッキングブロックで形成される保水体と、前記保水体の側面に接して設けられ、前記路盤の表面から1mm以上の位置に開口部の下端が形成された排水孔を有する側溝と、を備えることを特徴としている。
【0008】
これにより、簡易な構造で路盤上に溜めた水を、インターロッキングブロックが保持することで、路面が過熱する時期においても、路面の温度上昇を長時間にわたって抑制できる。
【0009】
(2)また、本発明の保水性舗装構造は、前記敷砂層が、粗粒率1.5以上3.5以下の敷砂からなることを特徴としている。これにより、敷砂層が路盤上に溜まった水を吸い上げて保持することができ、インターロッキングブロックも水を十分な時間保有できる。
【0010】
(3)また、本発明の保水性舗装構造は、前記排水孔が、前記路盤の表面から10mm以上の位置に開口部の下端が形成されていることを特徴としている。これにより、敷砂層に水が溜まりやすくなり、敷砂層およびインターロッキングブロックの保水性を向上させることができる。
【0011】
(4)また、本発明の保水性舗装構造は、前記インターロッキングブロックにより形成される路面が、歩道として用いられることを特徴としている。これにより、路面にかかる荷重が小さくなるため、敷砂層が緩くなることでインターロッキングブロックが傾く等の不具合を回避することができる。
【0012】
(5)また、本発明の保水性舗装構造は、前記路盤が、透水性の材料からなる路盤本体と、前記路盤本体の表面に設けられた防水シートと、を有することを特徴としている。このように遮水性のない従来の歩道用の路盤上に防水シートを敷いて、新たな路盤とすることで路盤上に水を溜めやすくすることができる。
【0013】
(6)また、本発明の保水性舗装構造は、前記側溝が、溝部と、前記溝部に嵌め込まれたグレーチングとを有し、前記排水孔が、前記グレーチングに形成されていることを特徴としている。これにより、グレーチングに設けられた排水孔の位置により、グレーチングの設計時に保水性を調整できる。また、大きさの調整可能な排水孔を設け、現場で保水性を調整可能にすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構造により、路盤上に溜めた水を、インターロッキングブロックが保持することで、路面が過熱する時期においても、路面の温度上昇を長時間にわたって抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の保水性舗装構造を示す断面図である。
図2】第2の実施形態の保水性舗装構造を示す断面図である。
図3】第3の実施形態の保水性舗装構造を示す断面図である。
図4】第4の実施形態の保水性舗装構造を示す断面図である。
図5】試験の条件を示す表である。
図6】(a)、(b)それぞれ試験体の正断面図および側断面図である。
図7】試験結果のデータを示す表である。
図8】測定時間に対してブロックの表面温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[保水性舗装構造]
(第1の実施形態)
図1は、保水性舗装構造100を示す断面図である。保水性舗装構造100は、路床110上において、路盤120、敷砂層150、目地砂160、インターロッキングブロック170(図中、「ILブロック」。以下同様。)および側溝180で構成されている。路床110は、舗装の際に、現地の地面を削って地ならしをした地盤の部分をいい、舗装下面のほぼ均一な土で形成されている。
【0018】
路盤120は、路床110上において下層路盤121および上層路盤122により形成される。下層路盤121は、クラッシャラン(切込み砕石)、鉄鋼スラグ、砂で構成されている。上層路盤122は、アスファルト安定処理路盤であり、不透水である。
【0019】
敷砂層150は、路盤120上に設けられ、保水性を有する。敷砂層150は、粗粒率1.5以上3.5以下(JIS A 1102:2006)の敷砂からなることが好ましい。これにより、敷砂層が路盤上に溜まった水を吸い上げて保持することができ、インターロッキングブロックも水を十分な時間保有できる。なお、敷砂層150は、20mm〜30mm程度の厚さで形成されていることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0020】
目地砂160は、インターロッキングブロック170間に充填され、それらの噛み合いを強め、荷重を伝達させる。インターロッキングブロック170に設けられた目地キープの形状により、適度な目地砂160の充填量が維持される。
【0021】
インターロッキングブロック170は、コンクリートブロックであり、敷砂層150上に敷設され、路面を形成する。インターロッキングブロック170は、多孔質に形成され、保水性を有する。そして、側面に目地キープを有し、所定のパターンで敷設された際に隣り合うブロック間の目地が保持される。保持された目地は、インターロッキングブロック170の競り合いを防ぎ、角欠けを防止しつつ、目地砂を充填するスペースを確保している。上記のように構成された敷砂層150およびインターロッキングブロック170は、保水体を形成している。
【0022】
側溝180は、保水体の側面に接して設けられており、路盤120上や路面上に流れる水を溝内に集めて適切に排出する。側溝180は、溝部183と、溝部183に嵌め込まれたグレーチング185とを有する。グレーチング185は、金属製であり、上下方向に連通する格子孔により上から流入する水を溝部183の凹形状内へ案内する。グレーチング185は、路盤120の表面から鉛直上方に1mmの位置に開口部の下端が形成された排水孔185aを有する。
【0023】
排水孔185aの開口部の位置は、その下端が路盤120の表面から少なくとも1mm以上である。これにより、簡易な構造で路盤120上に溜めた水を、インターロッキングブロック170が保持することで、路面が過熱する時期においても、路面の温度上昇を長時間にわたって抑制できる。排水孔185aは、加工の容易性から断面が円の形状が好ましいが、必ずしもこれに限定されず、断面が矩形であってもよい。また、排水孔185aの開口部または孔内部には、不織布や網等のフィルタ部を設け、敷砂が流出しないようにしておくことが好ましい。
【0024】
また、グレーチング185に設けられた排水孔185aの位置により、グレーチング185の設計時に保水性を調整できる。また、例えば、スライド機構により大きさの調整可能な排水孔185aを設け、現場で保水性を調整可能にすることもできる。排水孔185aは、敷砂層150側から溝部183へ向かって下方に傾いて設けられており、敷砂層150に溜まった水を溝部183へ排水できるように形成されている。
【0025】
(第2の実施形態)
上記の実施形態では、下端が路盤120の表面から1mm以上の位置になるように排水孔185aが形成されているが、もっと表面から鉛直上方側の位置に排水孔を設けてもよい。図2は、排水孔の位置を鉛直上方側にした保水性舗装構造200を示す断面図である。保水性舗装構造200は、側溝280以外は、保水性舗装構造100と同じ構成である。側溝280は、溝部183と、溝部183に嵌め込まれたグレーチング285とを有し、グレーチング285は排水孔285aを有する。
【0026】
排水孔285aは、路盤120の表面から10mm以上の位置に開口部の下端が配置されていることが好ましい。これにより、敷砂層150に水が溜まりやすくなり、敷砂層150およびインターロッキングブロック170の保水性を向上させることができる。なお、排水孔285aの開口部の下端を路盤120の表面から20mm以上に設ければさらに保水性を高めることができる。排水孔285aの開口部の下端は、敷砂層150の上端に合わせるように設計してもよい。
【0027】
(第3の実施形態)
上記の実施形態では、グレーチングに排水孔を設けているが、溝部の壁に排水孔を設けてもよい。図3は、溝部に排水孔を設けた保水性舗装構造300を示す断面図である。保水性舗装構造300は、側溝380以外は、保水性舗装構造100と同じ構成である。側溝380は、溝部383と、溝部383に嵌め込まれたグレーチング385とを有し、溝部383は排水孔383aを有する。この場合、排水孔383aは、現場でドリル等を用いて溝部383の所定位置に開けられる。排水孔383aは、加工の容易性から断面が円の形状が好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0028】
(第4の実施形態)
上記の実施形態では、上層路盤が不透水の材料で形成されているが、透水性の上層路盤上に防水シートを設けてもよい。図4は、防水シートを設けた保水性舗装構造400を示す断面図である。保水性舗装構造400は、路盤420以外は、保水性舗装構造300と同じ構成である。
【0029】
保水性舗装構造400の路盤420は、下層路盤121、上層路盤422および防水シート423で形成されている。下層路盤121および上層路盤422は、路盤本体を構成している。インターロッキングブロック170により形成される路面が歩道の場合には、一般的に上層路盤422としてアスファルト安定処理路盤ではなく、粒度調整砕石、鉄鋼スラグ等からなる粒状路盤が用いられる。
【0030】
路盤本体は、透水性の材料からなり、路盤本体の表面に設けられた防水シート423を有する。このように遮水性のない従来の歩道用の路盤上に防水シート423を敷いて、新たな路盤420とすることで路盤420上に水を溜めやすくすることができる。なお、この場合に、路盤本体は、締まりやすいように連続粒度で形成されていることが好ましい。なお、アスファルト安定処理路盤に限らず路盤がほとんど透水しない材料であれば、防水シートは不要である。
【0031】
また、インターロッキングブロック170により形成される路面は、車道、歩道のいずれにも用いられるが、特に歩道として用いられることが好ましい。路盤上に水を溜めると、敷砂層が緩くなってインターロッキングブロック170が傾く等の不具合が生じるおそれが高まる。しかし、歩道の場合、路面にかかる荷重が小さく、このような不具合は生じにくい。
【0032】
[実施例]
(試験条件)
上記のような保水性舗装構造の機能を確認するために、試験体を作製し、試験を行った。まず、試験の条件を説明する。図5は、試験の条件を示す表である。図5に示すように、インターロッキングブロックとして縦200mm×横100mm×高さ80mmの寸法のストレートタイプ保水性インターロッキングブロックを用い、水には上水道水を用いた。
【0033】
インターロッキングブロックには、インターロッキングブロック舗装技術協会の「インターロッキングブロック舗装設計施工要領」に定める保水性能の品質規格を満たすものを用いた。具体的には、保水量0.15×10kg/m以上、吸上げ高さ70%以上である。敷砂には、静岡県掛川市産の山砂を用いた。その山砂の表乾密度は2.57×10kg/m、吸水率は2.33%、実積率は66%、粗粒率2.67であった。
【0034】
ビームランプ120Wを照射ランプとして用い、0.1℃の分解能を有し、10分間隔で最低4時間計測できる温度計測ロガーを用いた。また、試験体を覆う断熱材に市販品を加工したものを用いた。
【0035】
(試験方法)
次に、試験方法を説明する。図6(a)、(b)は、それぞれ試験体500の正断面図および側断面図である。図6(a)、(b)に示すように、敷砂を厚さ30mmで敷いて敷砂層150を形成し、その上に保水性のインターロッキングブロック170を設置した。周囲を断熱材501で覆い外部への熱の逸散を防いだ。
【0036】
降雨条件を再現させるために、インターロッキングブロック170は事前に24時間の吸水を行った。試験前に水から取り出し、試験に供する際には表乾状態に調整した。敷砂は表面水が1.5%程度となるように調整した。
【0037】
実験条件パラメータは敷砂からの排水条件とし、一方は設置後水の供給を行わない完全排水条件、他方は設置後に吸水し、敷砂層150が過飽和となる状態まで加水した非排水条件として、敷砂層150に水が残るような構造を再現した。すなわち、本発明の保水性舗装構造では、排水孔が路盤の表面より1mm以上上方に下端が位置するように設けられるため、敷砂層に水が残る。この状態を非排水条件により再現した。
【0038】
保水性のインターロッキングブロック170の中央に温度計測用センサ502を貼り付け、照射ランプによる温度計測用センサ502の温度上昇を防ぐために、アルミテープを貼り付けた。照射ランプとブロック表面の距離は200mmとした。試験は、20℃、60%R.H.の環境で実施した。照射ランプを点灯し、10分間隔でブロックの表面温度を計測した。計測時間は9時間とした。
【0039】
(試験結果)
以上のような試験を行なったところ、インターロッキングブロック170の表面温度を計測データが得られた。図7は、試験結果のデータを示す表、図8は、測定時間に対してブロックの表面温度を示すグラフである。試験開始から80分以降で排水条件と非排水条件との間で差が生じ始め、その後温度差は最大で5.7℃を示した。平均的には5℃程度の温度低減効果が得られ、敷砂層150からの水の吸上げによる水分供給の効果が長期にわたって得られていることがわかる。
【符号の説明】
【0040】
100、200、300、400 保水性舗装構造
110 路床
120、420 路盤
121 下層路盤
122、422 上層路盤
150 敷砂層
160 目地砂
170 インターロッキングブロック
180、280、380 側溝
183、383 溝部
185、285、385 グレーチング
185a、285a、383a 排水孔
423 防水シート
500 試験体
501 断熱材
502 温度計測用センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8