(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
[1.構成の説明]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態であるサービス効果評価装置及びプログラムを詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0017】
[1−1.サービス効果評価装置の構成の説明]
本発明の実施形態のサービス効果評価装置の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、サービス効果評価装置1(以下、単に装置1と呼ぶ。)の機能をブロック図として表した概略構成図である。
図1に示すように、装置1は、制御部11、操作部12、表示部13、記憶部14を有する。また、装置1において、制御部11、操作部12、表示部13、記憶部14は内部バス等により互いに接続される。
【0018】
制御部11は、装置1の動作を中央制御する。具体的には、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有しており、RAMの作業領域に展開されたROMや記憶部14に記憶されたプログラムとCPUとの協働により各部を統括制御する。
【0019】
また、プログラムを実行することにより、制御部11は、入力される特定のサービス項目を取得する取得手段111と、取得された特定のサービス項目の複数のサービスレベルにそれぞれ対応するモデル式を読み出してサービス項目に対する評価を算出する算出手段112と、算出された評価を出力させる出力実行手段113と、してそれぞれ機能する。
【0020】
操作部12は、ユーザからの操作入力を受け付け、当該操作に応じた操作信号を制御部11へ出力する。例えば、操作部12は、文字入力キー、数字入力キー、その他各種機能に対応付けられたキーを備えたキーボード、マウス等のポインティングデバイスなどであってよい。
【0021】
表示部13は、制御部11から出力された表示制御信号に基づいた画像を表示画面に表示する。例えば、表示部13は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いたFPD(Flat Panel Display)などであってよい。また、スマートフォン等のように表示部13は、操作部12と一体的に形成されたタッチパネルなどであってもよい。
【0022】
記憶部14は、プログラムや各種設定データ等のデータを制御部11から読み書き可能に記憶する。例えば、記憶部14は、HDD(Hard disk drive)、半導体メモリなどであってよい。
また、記憶部14には、仮想評価法(Contingent Valuation Method)を参考にして、旅客に対して予め実施されたアンケート結果に基づき作成された複数のモデル式141が記憶されている。
【0023】
[2.動作の説明]
本発明の実施形態における装置1の具体的な動作の説明を
図2〜
図4を用いて詳細に行う。以下、説明の便宜上、装置1の制御部11が主体となる処理は、「装置1」をその処理の主体として説明する。
【0024】
[2−1.装置1の動作の説明]
ここで、装置1の動作について
図2のフローチャートを用いて説明する。
装置1は、操作部12の入力操作によりサービス項目が入力されたか否かを判断する(ステップS21)。
【0025】
例えば、サービス項目は、
図3に示すように、「混雑率」、「列車内のフリースペースの数」、「上り時の階段若しくはエスカレータの利用等」、「下り時の階段若しくはエスカレータの利用等」、「上りエスカレータの数」、「5人掛けベンチの数」、「移動経路が分かるまでの所要時間」、「駅員に連絡が取れるまでの所要時間」、「乗車駅に対するクレームの数」、「運転見合わせの第一報が分かるまでの時間」、「運転再開までの所要時間」、「1年間当たりの運転見合わせ回数」、「指定席の予約完了までの所要時間」の13項目がある。
【0026】
もし、装置1は、サービス項目が入力されていないと判断した場合(ステップS21:No)、ステップS21に戻り、一方、サービス項目が入力されたと判断した場合(ステップS21:Yes)、入力されたサービス項目に対応する複数のサービスレベルのモデル式141を記憶部14から読み出し(ステップS22)、読み出したモデル式141を用いてサービスの金銭的価値(サービス項目に対応する複数のサービスレベル毎の金銭的価値)を算出し(ステップS23)、算出した金銭的価値を表示部13に出力して表示させる(ステップS24)。
【0027】
[2−2.モデル式の説明]
ここで、旅客に対して予め実施されたアンケート結果に基づき作成された複数のモデル式について詳細に説明する。
【0028】
図3に示すように、13項目のサービス項目に対して、「低」、「中」、「高」の3つのサービスレベルが設定されている。
【0029】
より具体的には、例えば、
図3に示すように、「混雑率」に関しては通常「200%」のサービスに対して、順次改善された混雑率「180%」、「150%」、「100%」のサービスレベルが設定されており、また、「運転再開までの所要時間」に関しては通常「90分」のサービスに対して、順次改善された運転再開まので所要時間「60分」、「45分」、「30分」のサービスレベルが設定されている。
【0030】
そして、アンケートに応じた旅客に、「通常」のサービスレベルの運賃「500円」に対して、上乗せ料金が「1円」、「10円」、「20円」、「50円」、「100円」、「200円」、或いは、「500円」であった場合、それぞれのサービス項目の「低」、「中」、「高」の3つのサービスレベルを利用するか否かを回答してもらう。
【0031】
ちなみに、アンケートに応じた旅客の性別、年代別等のサンプル数は、20代以下の男性(309サンプル)、20代以下の女性(309サンプル)、30代男性(309サンプル)、30代女性(309サンプル)、40代男性(309サンプル)、40代女性(309サンプル)、50代男性(309サンプル)、50代女性(309サンプル)、60代以上の男性(309サンプル)、60代以上の女性(309サンプル)の合計3090サンプルである。
【0032】
そして、このようなアンケート結果に基づき求められた提示された運賃(500円〜1000円)を許容する割合yを示すモデル式は、
【数1】
x:あるサービス項目のあるサービスレベルに対して提示された運賃
a:切片変数
b:傾き変数
base:通常の運賃
となる。
【0033】
ここで、「数1」に示すモデル式は、13項目のサービス項目に対する3つのサービスレベル毎に作成されるので、39個(13×3)のモデル式が存在する。
【0034】
例えば、あるサービス項目に対しては3つのサービスレベルが設定されているので、
図4(a)のグラフに示すように3つのモデル式による3つの特性曲線CH41,CH42及びCH43が存在する。
具体的には、特性曲線CH41,CH42及びCH43は、それぞれ、サービスレベル「高」、「中」及び「低」に対するモデル式により描画されている。
【0035】
また、あるサービス項目のあるサービスレベル(例えば、「混雑率」の「180%(低)」)に対する提示された運賃を許容する割合yは、「数1」の構成から分かるように、
図4(b)の特性曲線CH43に示すように、順次減少する(グラフの裾が長い)特性曲線であって一定の値ではない。
【0036】
このため、あるサービス項目のあるサービスレベルに対する金銭的価値の代表値として一定の値を定める。例えば、
図4(b)に示すように、提示された運賃を許容する割合yの中央に位置する値(中央値)である「c」を金銭的価値の代表値とする。
【0037】
ちなみに、
図4(b)の特性曲線CH43に示すようにグラフの裾が長い場合、そのまま金銭的価値の平均を求めると金銭的価値が高額になってしまう。このため、高額の上乗せ料金を許容する一部の旅客の回答結果に依存しないように、金銭的価値の平均値を求めるためには裾切りが必要である。
【0038】
一方、金銭的価値の代表値を中央値した場合、裾切りの必要はないが、50%の値のみ参照されるため平均値に比べると分布の形状が十分考慮されないことになる。
【0039】
そして、ある程度の上乗せ料金(1円〜500円)を許容する旅客数を、アンケートに回答した全旅客数で割った値(上乗せ料金を許容する割合)をpとした場合、(1−p)は、一切の上乗せ料金を許容しない旅客の割合になるので、旅客1人、1回当たりのサービス(あるサービス項目のあるサービスレベル)に対する金銭的価値V(x)を示すモデル式は、
【数2】
c:あるサービス項目のあるサービスレベルに対する金銭的価値の代表値
p:ある程度の上乗せ料金を許容する割合
となる。
【0040】
このように、装置1は、旅客に予め実施されたアンケート結果に基づき作成された「数2」のモデル式を用いてあるサービス項目のあるサービスレベルに対する金銭的価値V(x)を算出することができる。
【0041】
以上のように、特定のサービス項目が入力される操作部12と、表示部13と、予め実施されたアンケート結果に基づき複数のサービス項目に対するそれぞれ複数のサービスレベル毎に作成された複数のモデル式が記憶された記憶部14と、操作部12から入力された特定のサービス項目の複数のサービスレベルにそれぞれ対応するモデル式を用いてサービス項目に対する評価(金銭的価値V(x))を算出して表示部13に表示させる制御部11とを備えることにより、実施前にサービスの効果を知ることができるので、事業者は、サービスの実施前に当該サービスの実施の是非を容易に判断することができる。
【0042】
(変形例1)
[3−1.旅客属性による偏りの補正]
図5に示すような3つのカテゴリ(性別、年代、乗車目的)を旅客属性として設定して、サービス(あるサービス項目のあるサービスレベル)に対する金銭的価値V(x)を算出した場合、性別に関しては男性より女性の方がサービスに対する金銭的価値を高く評価する傾向があり、また、年代に関しては60代以上が、サービスに対する金銭的価値を高く評価する傾向がある。
【0043】
このため、旅客に予め実施されたアンケート結果に基づき作成された「数2」のモデル式では、旅客属性による評価の偏りが生じるおそれがある。
【0044】
このような旅客属性による評価の偏りを補正する補正値を「数2」に適用した金銭的価値V(x,p)を示すモデル式は、
【数3】
V(x):旅客1人、1回当たりのサービスに対する金銭的価値
ΔV:旅客属性毎の補正値
p:各旅客属性種類の構成ベクトル
となる。
【0045】
但し、条件として、
【数4】
を満足する必要がある。
【0046】
すなわち、「数4」に示す条件を満足するように、旅客属性を割り当てて、「数3」のモデル式を用いてサービス項目に対する評価(金銭的価値V(x,p))を算出して表示させることにより、旅客属性による評価の偏りが補正された評価(金銭的価値V(x,p))を得ることができる。
【0047】
以上のように、旅客属性による評価の偏りを補正する補正値を適用することにより、より正確なサービス項目に対する評価(金銭的価値V(x,p))を算出できるので、実施前にサービスの効果を知ることができ、事業者は、サービスの実施前に当該サービスの実施の是非を容易に判断することができる。
【0048】
(変形例2)
[3−2.サービスレベルの補間]
実施形態の説明に際しては、それぞれのサービス項目に対して「低」、「中」、「高」の3つのサービスレベルが設定されているため、当然、それ以外のサービスレベルに対する金銭的価値の算出はできない。例えば、
図6(a)に示すように、「低」、「中」及び「高」の3つのサービスレベルに対する金銭的価値PT61、PT62及びPT63が離散的に存在する。
【0049】
しかしながら、事業者がサービスの実施前に当該サービスの実施の是非を容易に判断するに際して、3つのサービスレベル以外のサービスレベルに対する金銭的価値を把握したい場合が十分想定される。
【0050】
このため、
図6(b)に示すように3つのサービスレベル以外のサービスレベルに対する金銭的価値を補間することができるモデル式、言い換えれば、
図6(b)のように、離散的に存在する金銭的価値PT61、PT62及びPT63を通る特性曲線CH61を描画するモデル式を求めると、
【数5】
S:サービス項目
i:サービスレベル
x:数値
λ
S:連続関数モデルの金銭的価値増加の低減効果
A
S:金銭的価値の上限値
B
S:金銭的価値が0になるサービスレベルの下限値
となる。
【0051】
すなわち、
図6(b)の特性曲線CH61を描画する「数5」のモデル式を用いることにより、3つのサービスレベル以外のサービスレベルに対する金銭的価値y
S(i)を連続的に算出することができる。
【0052】
以上のように、3つのサービスレベル以外のサービスレベルを補間することができるモデル式を用いることにより、3つのサービスレベル以外のサービスレベルに対する評価(金銭的価値y
S(i))を把握することができるので、実施前にサービスの効果を知ることができ、事業者は、サービスの実施前に当該サービスの実施の是非を容易に判断することができる。
【0053】
(変形例3)
[3−3.サービス投資費用の最適配分]
実施形態の説明に際しては、個々のサービス(あるサービス項目のあるサービスレベル)に対する金銭的価値を算出しているが、実施を検討しているサービスが複数件ある場合、一般的に、投資できる費用の総額は決まっているため、投資費用をいかに最適配分するかが重要になる。
【0054】
図7はあるサービス項目における費用対効果とサービスレベルの関係の一例を示す説明図であり、縦軸は費用対効果の関数(CBR(Cost Benefit Ratio Method)=金銭的価値/費用)の微分値であり、横軸はサービスレベルである。
【0055】
図7においてあるサービス項目の特性曲線CH71に対して、現状のサービスレベルからサービスレベルSL71に変更した場合の費用対効果の増分IN71となり、一方、別のサービス項目の特性曲線CH72に対して、現状のサービスレベルから同一のサービスレベルSL71に変更した場合の費用対効果の増分IN72となる。
【0056】
すなわち、現状のサービスレベルから同じサービスレベルSL71に変更する場合であっても、サービス項目が異なると費用対効果の増分も異なる。例えば、特性曲線CH72に対応するサービス項目に対して費用を投資する方が費用対効果の増分が高くなることが分かる。
【0057】
以上のように、サービス項目における費用対効果とサービスレベルの関数の微分値を用いて、サービスの追加によって費用対効果の増分が高くなるサービス項目を抽出して、当該サービス項目に優先して費用を配分することにより、投資費用を最適配分することができる。
【0058】
なお、実施形態の説明に際しては、あるサービス項目のあるサービスレベルに対する金銭的価値の代表値として中央値を用いているが、あるサービス項目のあるサービスレベルに対する金銭的価値の代表値として平均値を用いてもよい。
例えば、平均値は、
図4(b)の特性曲線CH43に示すようなグラフにおいて、両端5%未満の裾切りを行って求める等が可能である。
【0059】
また、実施形態の説明に際しては、装置1を例示して動作を説明しているが、表計算ソフトウェアに各モデル式を組み込んでおき、特定のサービス項目を入力することにより、サービス項目に対する評価(金銭的価値)を算出して表示させるようにしてもよい。
【0060】
また、実施形態の説明に際しては、旅客に予め実施されたアンケート結果に基づき作成されたモデル式を用いてあるサービス項目のあるサービスレベルに対する金銭的価値を算出して表示させているが、縦軸に算出された金銭的価値、横軸にサービスレベルを取ってサービス項目毎のグラフとして表示させてもよい。
この場合、あるサービス項目の複数のサービスレベルに対する金銭的価値を直感的に把握することができるので、各サービスレベル間の比較ができ、事業者は、サービスの実施前に当該サービスの実施の是非を容易に判断することができる。
【0061】
また、サービス項目毎のグラフと共にその他統計等から得られた金銭的価値に関するグラフを併せて表示させてもよい。
この場合、その他統計等から得られた金銭的価値に関するグラフ値との比較ができるので、事業者は、より客観的に、サービスの実施前に当該サービスの実施の是非を容易に判断することができる。
【0062】
また、別途実施している旅客の「満足度調査」における全体満足度を用いて、
図3に示すサービス項目以外の他のサービス項目の金銭的価値を算出することもできる。
【0063】
具体的には、構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling)を用いて、全体満足度に対する、「安心・安全」、「快適性」、「平常時の情報」、「異常時の情報」、「バリアフリー」、「接遇」、「商品」、「安定性」及び「インターネット」といった9個のカテゴリの影響力(重み付け)を算出し、さらに、
図3に示すサービス項目と当該9個のカテゴリとの相関を掛け合わせることで、他のサービス項目の金銭的価値を算出することもできる。
この場合、アンケートを実施していないサービス項目の複数のサービスレベルに対する金銭的価値を把握することができるので、事業者は、サービスの実施前に当該サービスの実施の是非を容易に判断することができる。
【0064】
また、上記「満足度調査」で実施した調査項目以外のサービス項目に関しても、当該調査項目に類似するサービス項目に当てはめることにより、調査項目以外のサービス項目の金銭的価値を算出することができる。