(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1の構成部材のうち主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。
【0022】
図1に示すように、偏心揺動型歯車装置X1は、外筒2と、キャリア4と、揺動歯車5と、クランク軸6と、を備えている。偏心揺動型歯車装置X1では、クランク軸6の回転に伴って揺動歯車5が揺動回転することにより、外筒2とキャリア4とが相対的に回転する。
【0023】
外筒2は、軸C1を中心軸とする略円筒形状をなす本体部2aと、当該本体部2aの径方向の中間部分から軸C1方向の一方側に延びる円環状の第1延部2bと、当該本体部2aの径方向の中間部分から軸C1方向の他方側に延びる円環状の第2延部2cと、を有している。
【0024】
外筒2における本体部2aの内周面21には、多数のピン溝が形成されている。各ピン溝は、軸C1方向に延びるように配置され、当該軸C1方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。各ピン溝は、外筒2の周方向に等間隔で並んでいる。
【0025】
外筒2における本体部2aのうち第1延部2bおよび第2延部2cよりも径方向の外側に位置する部位には、当該部位を軸C1方向に貫く取付孔22が複数形成されている。各取付孔22は外筒2の周方向に等間隔で並んでいる。各取付孔22は、外筒2に対してロボットの関節部分を構成するベース等の図略の相手側部材を取り付ける際に利用される。外筒2に対してロボットの関節部分を構成するベースを取り付ける場合、外筒2は、偏心揺動型歯車装置X1における固定側の部材となる。
【0026】
偏心揺動型歯車装置X1は、外筒2の本体部2aの内周面21に取り付けられる複数の内歯ピン3をさらに備えている。各内歯ピン3は、軸C1方向に延びる円柱形状をなしている。各内歯ピン3は、内周面21に形成された各ピン溝に取り付けられている。また、各内歯ピン3の全体は、軸C1方向において第1延部2bと第2延部2cとの間の領域に収まっている。
【0027】
キャリア4は、外筒2の第1延部2bの径方向の内側に位置する第1部材41と、外筒2の本体部2aおよび第2延部2cの径方向の内側に位置する第2部材42と、を有している。第1部材41と第2部材42とは、締結部材T1によって互いに締結されている。
【0028】
第1部材41は、略円板状をなしている。第1部材41には、中央孔41aと、クランク軸孔41bと、が形成されている。
【0029】
中央孔41aは、第1部材41の中央部分を軸C1方向に貫くように形成されている。
【0030】
クランク軸孔41bは、中央孔41aの外側においてキャリア4の周方向に並んで複数形成されている。各クランク軸孔41bは、第1部材41を軸C1方向に貫くように形成されている。本実施形態では、第1部材41には3つのクランク軸孔41bが形成されている。
【0031】
第2部材42は、基板部42aと、当該基板部42aから第1部材41側に延びるシャフト部42bと、を有している。基板部42aは、略円板状をなしている。また、シャフト部42bは、基板部42aのうち軸C1方向における第1部材41側の端面から当該軸C1方向に延びており、キャリア4の周方向に並んで複数設けられている。本実施形態では、第2部材42は、3つのシャフト部42bを有している。
【0032】
第2部材42には、中央孔42cと、クランク軸孔42dと、取付孔42eと、が形成されている。
【0033】
中央孔42cは、基板部42aの中央部分を軸C1方向に貫くように形成されている。中央孔42cは、第1部材41に形成された中央孔41aの位置に対応して設けられている。
【0034】
クランク軸孔42dは、中央孔42cの外側においてキャリア4の周方向に並んで複数形成されている。各クランク軸孔42dは、基板部42aを軸C1方向に貫くように形成されている。各クランク軸孔42dは、第1部材41に形成された各クランク軸孔41bの位置に対応して設けられている。
【0035】
取付孔42eは、基板部42aのうち軸C1方向における第1部材41とは反対側の端面が当該軸C1方向に凹むように形成されている。取付孔42eは、ロボットの関節部分を構成する旋回胴等の相手側部材をキャリア4に取り付けるのに利用される。キャリア4に対してロボットの関節部分を構成する旋回胴を取り付ける場合、当該キャリア4は、偏心揺動型歯車装置X1における回転側の部材となる。なお、例えばキャリア4に対してロボットの関節部分を構成するベースが取り付けられる場合であれば、外筒2にはロボットの関節部分を構成する旋回胴が取り付けられ、これによりキャリア4が偏心揺動型歯車装置X1の固定側の部材となるとともに外筒2が偏心揺動型歯車装置X1の回転側の部材となる。
【0036】
クランク軸6は、クランク軸受B1,B2を介してキャリア4に回転自在に支持されている。
【0037】
クランク軸6は、軸C1方向に延びる軸本体61と、軸本体61に対して偏心する偏心部62,63と、を有している。クランク軸6は、第1部材41のクランク軸孔41b、第2部材42のクランク軸孔42d、および後述する揺動歯車5のクランク軸孔51c,52cに挿入されている。本実施形態では、クランク軸6は、キャリア4の周方向に並んで3つ設けられている。なお、クランク軸6の数は任意であって、偏心揺動型歯車装置X1の使用態様に応じて適宜変更することができる。
【0038】
軸本体61は、クランク軸孔41b内においてクランク軸受B1を介して第1部材41に支持されているとともに、クランク軸孔42d内においてクランク軸受B2を介して第2部材42の基板部42aに支持されている。
【0039】
偏心部62,63は、軸C1方向において軸本体61に繋がっており、外筒2の本体部2aの径方向の内側に位置している。偏心部62,63には、ころを介して揺動歯車5が取り付けられている。
【0040】
揺動歯車5は、軸C1方向に延びる軸心を有しており、外筒2の本体部2aの径方向の内側に位置している。揺動歯車5は、外筒2の内径よりも少し小さい外径を有している。本実施形態では、揺動歯車5は、軸C1方向において第1部材41側に位置する第1揺動歯車51と、軸C1方向において第2部材42の基板部42a側に位置する第2揺動歯車52と、を有している。揺動歯車51,52は、それぞれの外周面に複数の外歯51a,52aを有しており、当該外歯51a,52aが内歯ピンに噛み合う。なお、揺動歯車5は、1つの揺動歯車によって構成されていてもよいし、3つ以上の揺動歯車によって構成されていてもよい。
【0041】
第1揺動歯車51には、当該第1揺動歯車51を軸C1方向に貫く中央孔51bと、クランク軸孔51cと、挿入孔51dと、が形成されている。中央孔51bは、第1部材41の中央孔41aの位置に対応して形成されている。クランク軸孔51cは、第1部材41のクランク軸孔41bの位置に対応して形成されている。第1揺動歯車51は、クランク軸孔51c内に位置する第1偏心部62にころを介して取り付けられている。挿入孔51dは、第2部材42のシャフト部42bが挿入される孔である。
【0042】
第2揺動歯車52には、当該第2揺動歯車52を軸C1方向に貫く中央孔52bと、クランク軸孔52cと、挿入孔52dと、が形成されている。中央孔52bは、第2部材42の中央孔42cの位置に対応して形成されている。クランク軸孔52cは、第2部材42のクランク軸孔42dの位置に対応して形成されている。第2揺動歯車52は、クランク軸孔52c内に位置する第2偏心部63にころを介して取り付けられている。挿入孔52dは、第2部材42のシャフト部42bが挿入される孔であって、第1揺動歯車51に形成された挿入孔51dの位置に対応して形成されている。
【0043】
偏心揺動型歯車装置X1は、クランク軸6に駆動力を伝達して当該クランク軸6を回転させる伝達歯車7をさらに備えている。伝達歯車7は、軸C1方向において第1部材41を挟んで第2部材42とは反対側に位置している。伝達歯車7は、クランク軸6の軸本体61の一端に取り付けられている。本実施形態では、伝達歯車7は、3つのクランク軸6の位置に対応して3つ設けられている。
【0044】
偏心揺動型歯車装置X1は、外筒2とキャリア4との間の相対回転を許容する主軸受8をさらに備えている。偏心揺動型歯車装置X1は、伝達歯車7から図略のモータの駆動力(トルク)を受けたクランク軸6が回転することによって、揺動歯車51,52が互いに異なる位相で揺動回転し、これにより主軸受8を介して外筒2とキャリア4との間の相対的な回転が生ずる。
【0045】
主軸受8は、軸C1方向において互いに離間した円環状の第1主軸受81および第2主軸受82を有している。第1主軸受81は、外筒2の第1延部2bと第1部材41との間に位置している。第2主軸受82は、外筒2の第2延部2cと第2部材42の基板部42aとの間に位置している。第1主軸受81と第2主軸受82とは、軸C1方向に対称な同一の構成を有している。以下では、
図2を参照しつつ、第1主軸受81について説明する。
【0046】
図2に示すように、第1主軸受81は、キャリア4の径方向において、外筒2の第1延部2b側に位置する第1受け部81aと、キャリア4の第1部材41側に位置する第2受け部81bと、第1受け部81aと第2受け部81bとの間に挟み込まれる転動体81cと、を有している。
【0047】
第1受け部81aは、外筒2の第1延部2b側において転動体81cを回転自在に受ける部材である。第1受け部81aには、転動体81cの滑り性を高める表面加工が施されている。第1受け部81aは、第1延部2bの内周面に接している。また、第1受け部81aは、本体部2aのうち軸C1方向における第1部材41側の端面に接している。
【0048】
なお、第2主軸受82の第1受け部82aは、第2延部2cの内周面に接するとともに、本体部2aのうち軸C1方向における基板部42a側の端面に接している。
【0049】
第2受け部81bは、キャリア4の第1部材41側において転動体81cを回転自在に受ける部材である。第2受け部81bには、転動体81cの滑り性を高める表面加工が施されている。
【0050】
転動体81cは、第1受け部81aと第2受け部81bとの間において回転可能に保持されている。第1受け部81aには、軸C1方向から傾斜した第1傾斜面が形成されており、第2受け部81bには、軸C1方向から傾斜するとともに第1受け部81aの第1傾斜面に対向する第2傾斜面が形成されている。転動体81cは、第1受け部81aの第1傾斜面と第2受け部81bの第2傾斜面との間に挟み込まれており、軸C1方向に対して傾斜する方向に延びている。転動体81cの回転軸C2は、当該転動体81cの長手方向に沿っている。転動体81cは、第1受け部81aの第1傾斜面および第2受け部81bの第2傾斜面に接した状態で、回転軸C2を中心に回転する。
【0051】
なお、第2主軸受82の転動体82cの回転軸は、軸C1方向において転動体81cの回転軸C2と対称になるように当該軸C1から傾斜している。
【0052】
本実施形態では、転動体81c,82cは、軸C1に対して傾斜する方向に延びる円柱形状をなしている。このため、主軸受8は、外筒2とキャリア4との間の相対回転に対するスラスト軸受として機能するとともに、ラジアル軸受としても機能する。なお、転動体81c,82cは、球形状をなしていてもよい。
【0053】
第1部材41の外周部分には、第1保持部41d、第1突出部41e、および第1凹部41fが設けられている。
【0054】
第1保持部41dは、第1部材41の外周部分の軸C1方向における中間部分である。第1保持部41dの外周面は、キャリア4の径方向において本体部2aの内周面21よりも内側に位置している。そして、キャリア4の径方向において、第1保持部41dの外周面と本体部2aの内周面21との間に内歯ピン3が位置している。第2受け部81bは、第1保持部41dの外周面に接する一方で、軸C1方向において内歯ピン3から離れている。
【0055】
第1突出部41eは、軸C1方向において第1保持部41dを挟んで第1揺動歯車51の反対側に位置している。第1突出部41eは、第1保持部41dの外周面よりもキャリア4の径方向の外側に突出している。軸C1方向における第1突出部41eと第2受け部材81bとの間には、位置決め部材A1が位置している。第1主軸受81は、位置決め部材A1によって軸C1方向における第1部材41に対する相対位置が決められた状態で、第1突出部41eと本体部2aとの間に挟み込まれている。なお、軸C1方向における第1部材41に対する第1主軸受81の相対位置は、当該軸C1方向における位置決め部材A1の厚みによって適宜変更することができる。
【0056】
第1凹部41fは、軸C1方向において第1保持部41dよりも第1揺動歯車51側に位置している。第1凹部41fは、第1保持部41dの外周面からキャリア4の径方向の内側に凹んでいる。
【0057】
偏心揺動型歯車装置X1は、主軸受8とは別体に構成されるとともに内歯ピン3および揺動歯車5の軸C1方向の動きを規制する規制部材9をさらに備えている。規制部材9は、軸C1方向における一方側から内歯ピン3および第1揺動歯車51の動きを規制する第1規制部材91と、軸C1方向における他方側から内歯ピン3および第2揺動歯車52の動きを規制する第2規制部材92と、を有している。第1規制部材91と第2規制部材92とは、軸C1方向において内歯ピン3、第1揺動歯車51、および第2揺動歯車52を挟み込み、これにより内歯ピン3、第1揺動歯車51、および第2揺動歯車52の軸C1方向の動きが規制される。第1規制部材91と第2規制部材92とは、軸C1方向において対称な同一の構成を有している。以下では、
図2を参照しつつ、第1規制部材91について説明する。
【0058】
第1規制部材91は、軸C1方向における内歯ピン3の動きを規制するピン規制部91aと、軸C1方向における第1揺動歯車51の動きを規制する歯車規制部91bと、を有している。
【0059】
ピン規制部91aは、軸C1方向に所定の長さを有する筒状(円環状)に形成されている。ピン規制部91aは、断面形状が矩形状に形成されている。
【0060】
歯車規制部91bは、ピン規制部91aの軸C1方向における端部の内周面に繋がっている。すなわち、歯車規制部91は、軸C1に直交する方向においてピン規制部91aに連続している。歯車規制部91bは、キャリア4の径方向に所定の長さを有する円板状に形成されている。なお、第1規制部材91は、歯車規制部91bを有していなくともよく、ピン規制部91aのみを有していてもよい。
【0061】
ピン規制部91aは、軸C1方向において第1主軸受81の第2受け部81bと内歯ピン3との間に位置している。ピン規制部91aのうち軸C1方向における内歯ピン3側の端面は、当該内歯ピン3に接している。これにより、軸C1方向の第1部材41側への内歯ピン3の動きが規制される。なお、ピン規制部91aと内歯ピン3とは、接していなくともよく、当該ピン規制部91aと内歯ピン3との間に僅かな隙間が生じていてもよい。
【0062】
歯車規制部91bは、軸C1方向において第1部材41と第1揺動歯車51との間に位置している。歯車規制部91bは、キャリア4の径方向において、第1保持部41dの外周面よりも内側に位置しており、凹部41fに対向している。軸C1方向において、歯車規制部91bと第1部材41との間には、空隙S1が形成されている。また、歯車規制部91bの一部は、軸C1方向において第1部材41のうち第1揺動歯車51側の端面よりも当該第1揺動歯車51側に位置している。
【0063】
歯車規制部91bのうち軸C1方向における第1揺動歯車51側の端面は、当該第1揺動歯車51に接している。本実施形態では、歯車規制部91bは、当該歯車規制部91bの周方向における全体に亘って第1揺動歯車51に接している。これにより、軸C1方向の第1部材41側への第1揺動歯車51の動きが規制される。なお、歯車規制部91bと第1揺動歯車51とは、接していなくともよく、歯車規制部91bと第1揺動歯車51との間に僅かな隙間が生じていてもよい。
【0064】
ピン規制部91aは、軸C1方向において、歯車規制部91bの厚みよりも大きい厚みを有している。ピン規制部91aにおいて、歯車規制部91bの第1部材41側の端面から軸C1方向における第2受け部81b側に突出した部位(以下、凸部91cと称する)は、円環状をなしており、第1保持部41dの外周面に接している。また、ピン規制部91aは、軸C1方向において、第1主軸受81の第2受け部81bの軸C1方向端面に接している。
【0065】
第1規制部材91は、凸部91cと第1保持部41dの外周面とが接するように、軸C1方向における第2部材42側から第1部材41に嵌め合わされる。そして、軸C1方向において凸部91cと第2受け部81bとが接する位置にて位置決めされ、この状態で軸C1方向における第1部材41側への内歯ピン3および第1揺動歯車51の動きを規制する。
【0066】
なお、第2規制部材92は、軸C1方向において第2主軸受82の第2受け部82bと内歯ピン3との間に位置し内歯ピン3に接するピン規制部92aと、ピン規制部92aに連続しており軸C1方向において第2揺動歯車52に接する歯車規制部92bと、を有している。そして、第2規制部材92は、ピン規制部92aの凸部92cと第2保持部42gとが接するように、軸C1方向における第1部材41側から第2部材42の基板部42aに嵌め合わされ、軸C1方向において凸部92cと第2受け部82bとが接する位置にて位置決めされる。この状態で、軸C1方向における基板部42a側への内歯ピン3および第2揺動歯車52の動きを規制する。
【0067】
このように、偏心揺動型歯車装置X1は、主軸受8とは別体の規制部材9を有している。このため、例えば軸C1方向における大きさの小さい主軸受8を採用することにより、当該主軸受8と内歯ピン3との間に空隙が生じる場合であっても、当該空隙に配置された規制部材9のピン規制部91a,92aによって内歯ピン3の軸C1方向の動きを規制できる。そのため、軸C1方向における大きさが互いに異なる主軸受8を複数の偏心揺動型歯車装置X1のそれぞれに採用する場合に、各主軸受8の軸C1方向の大きさに応じて各偏心揺動型歯車装置X1の外筒2およびキャリア4を設計する必要がない。これにより、前記複数の偏心揺動型歯車装置X1において、共通の外筒2およびキャリア4を採用することができ、部品の共通化を図ることができる。
【0068】
特に、本実施形態では、
図2に示すように、第1主軸受81の転動体81cの回転軸C2が軸C1に対して傾斜しているため、当該転動体81cを受ける第2受け部81bが軸C1方向において転動体81cよりも内歯ピン3から遠い側に位置することになる。このため、第2受け部81bと内歯ピン3との間に空隙が生じることになるものの、当該空隙に配置した第1規制部材91のピン規制部91aによって軸C1方向における第1部材41側への内歯ピン3の動きを規制することができる。そのため、例えば第2受け部81bに特別な形状加工を施すことにより当該第2受け部81bによって内歯ピン3の動きを規制する必要がない。なお、第2主軸受82についても同様である。
【0069】
また、例えば第1主軸受81の負荷容量を増やすことを目的として軸C1に対する回転軸C2の傾斜角度を大きくした場合、軸C1方向における第1主軸受81の大きさが小さくなる可能性がある。このような場合であっても、偏心揺動型歯車装置X1では、第1主軸受81とは別体に構成された第1規制部材91によって軸C1方向の第1部材41側への内歯ピン3の動きを規制できるため、軸C1に対する回転軸C2の傾斜角度を十分に大きくすることができる。これにより、第1主軸受81の負荷容量を十分に増やすことができる。なお、第2主軸受82についても同様である。
【0070】
さらに、偏心揺動型歯車装置X1では、歯車規制部91b,92bによって軸C1方向の揺動歯車5の動きを規制することができる。しかも、軸C1方向において歯車規制部91bが第1部材41の第1揺動歯車51側の端面よりも当該第1揺動歯車51側に位置することにより、当該端面と第1揺動歯車51との間に隙間が生じることになる。また、軸C1方向において歯車規制部92bが基板部42aの第2揺動歯車52側の端面よりも当該第2揺動歯車52側に位置することにより、当該端面と第2揺動歯車52との間に隙間が生じることになる。このため、揺動歯車5が第1部材41および第2部材42の基板部42aに接触しつつ揺動回転してしまうことを抑止できる。
【0071】
さらに、偏心揺動型歯車装置X1では、歯車規制部91bが周方向に全体に亘って第1揺動歯車51に接しているとともに、歯車規制部92bが周方向の全体に亘って第2揺動歯車52に接している。このため、揺動回転中の揺動歯車5がどの位置にあっても、当該揺動歯車5と歯車規制部91b,92bとが接することになる。したがって、揺動歯車5が軸C1方向に変位したり傾いたりすることにより第1部材41および第2部材42の基板部42aに接触しつつ揺動回転してしまうことを抑止することができる。
【0072】
さらに、偏心揺動型歯車装置X1では、ピン規制部91a,92aが歯車規制部91b,92bよりも厚みが大きく設定されているため、規制部材9のうちピン規制部91a,92aの剛性を高めることができる。このため、軸C1方向においてピン規制部91a,92aに内歯ピン3が押し当てられた場合に、当該ピン規制部91a,92aが撓むことを抑止でき、これにより内歯ピン3の軸C1方向の動きをより精度良く規制することができる。
【0073】
さらに、偏心揺動型歯車装置X1では、軸C1方向において規制部材9が主軸受8の第2受け部81b,82bに接するとともに、当該第2受け部81b,82bに滑り性を高める表面加工が施されている。このため、第2受け部81b,82bによって規制部材9の位置決めを行うことができるとともに、当該第2受け部81b,82bによって規制部材9の滑り性を高めることができる。また、軸C1方向における第1主軸受81の歯車規制部91bと第1部材41との間に空隙S1が形成されているため、第1部材41に第1規制部材91の滑り性を高める加工を施す必要がなく、加工工数の増加を抑止できる。
【0074】
次に、
図3を参照しつつ、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1の変形例1について説明する。
【0075】
図3に示すように、変形例1に係る偏心揺動型歯車装置X1では、軸C1方向において、ピン規制部91aの凸部91cと第1主軸受81の第2受け部81bとの間に空隙S2が形成されている。また、歯車規制部91bのうち軸C1方向における第1部材41側の端面は、当該軸C1方向において第1部材41に接している。変形例1では、ピン規制部91aの軸C1方向における長さは、軸C1方向において歯車規制部91bと第1部材とが接する位置にて、当該ピン規制部91aの凸部91cと第2受け部材81bの軸C1方向端面とが離れる長さに設定されている。第1規制部材91は、凸部91cと第1保持部41dの外周面とが接するように軸C1方向における第2部材42側から第1部材41に嵌め合わされ、軸C1方向において歯車規制部91bと第1部材41とが接する位置にて位置決めされる。
【0076】
変形例1に係る偏心揺動型歯車装置X1では、軸C1方向において歯車規制部91bと第1部材41とが接することにより第1規制部材91を位置決めすることができ、当該位置決めがなされた状態でピン規制部91aの凸部91cと第1主軸受81とが軸C1方向において離間している。このため、軸C1方向における第1主軸受81の位置又は大きさを自由に調整することができる。
【0077】
次に、
図4を参照しつつ、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1の変形例2について説明する。
【0078】
図4に示すように、変形例2に係る偏心揺動型歯車装置X1では、第1保持部41dには、窪み部41gが形成されている。具体的には、窪み部41gは、第1保持部41dの外周面のうち第1規制部材91の凸部91cに接する面の一部が、キャリア4の径方向の内側に窪むことにより形成されている。また、凸部91cには、窪み部41gの位置に対応して突起部91dが形成されている。突起部91dは、窪み部41g内に収容されている。
【0079】
変形例2に係る偏心揺動型歯車装置X1では、ピン規制部91aに形成された突起部91dが第1保持部41dに形成された窪み部41g内に収容されており、これにより軸C1方向の両側への第1規制部材91の動きが規制される。このため、軸C1方向における内歯ピン3に対する第1規制部材91の相対位置を精度良く位置決めすることができる。
【0080】
なお、変形例2では、ピン規制部91aは、軸C1方向において第1受け部81bの軸C1方向端面に接触しているが、これに限らない。ピン規制部91aは、軸C1方向において突起部91dが第1部材41に接触することにより、当該軸C1方向の両側への動きが規制されるため、第1受け部81bの軸C1方向端面から離れていてもよい。
【0081】
次に、
図5を参照しつつ、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1の変形例3について説明する。
【0082】
図5に示すように、変形例3に係る偏心揺動型歯車装置X1では、第1部材41の外周部分が第1縁部41h、第1受け部41i、第1保持部41j、および第1凹部41fによって構成されている。第1受け部41iは、第1主軸受81の第2受け部81bとして機能する。つまり、第2受け部81bは、第1部材41に一体に形成されている。
【0083】
第1縁部41hは、第1部材41の外周部分のうち軸C1方向において最も第1揺動歯車51から遠い側に位置する部位である。
【0084】
第1受け部41iは、第1縁部41hに連続しており、当該第1縁部41の外周面からキャリア4の径方向の外側に突出している。また、第1受け部41iの外周面は、軸C1方向の第1揺動歯車51側に近づくにつれてキャリア4の径方向の内側に傾斜する傾斜面を有しており、当該傾斜面に転動体81cが接している。これにより、第1受け部41iが第1主軸受81の転動体81cを受ける第2受け部81bとして機能する。
【0085】
第1保持部41jは、第1受け部41iよりも軸C1方向における第1揺動歯車51側に位置している。第1保持部41jの外周面は、第1受け部41iよりもキャリア4の径方向の内側に位置しており、第1規制部材91の凸部91cに接している。
【0086】
第1凹部41fは、第1保持部41jよりも軸C1方向おける第1揺動歯車51側に位置している。第1凹部41fの外周面は、第1保持部41jよりもキャリア4の径方向の内側に位置しており、当該径方向において歯車規制部91bに対向している。
【0087】
このように、変形例3に係る偏心揺動型歯車装置X1では、第1主軸受81の第2受け部81bが第1部材41と一体に形成されている。このため、第1部材41とは別体に構成された第2受け部81bが不要となり、部品点数を削減することができる。
【0088】
なお、変形例3では、第1主軸受81の第1受け部81aが外筒2とは別体に構成されているが、これに限らず、当該第1受け部81aが外筒2と一体に形成されていてもよい。
【0089】
以上説明した本実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態および変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。