特許第6440501号(P6440501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6440501油入電気機器の診断方法、油入電気機器の診断装置、および、それを備えた油入電気機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440501
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】油入電気機器の診断方法、油入電気機器の診断装置、および、それを備えた油入電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20181210BHJP
   H01F 27/14 20060101ALI20181210BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H01F27/00 B
   H01F27/00 H
   H01F27/14 A
   H01F41/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-6784(P2015-6784)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-165553(P2015-165553A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-21511(P2014-21511)
(32)【優先日】2014年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 正貴
(72)【発明者】
【氏名】大野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 正俊
(72)【発明者】
【氏名】谷内 慎太郎
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−043026(JP,A)
【文献】 特開2001−297920(JP,A)
【文献】 特開平08−181020(JP,A)
【文献】 特開2012−169381(JP,A)
【文献】 特開2008−42130(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/128265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00−33/46
G01R 31/12−31/20
H01F 27/00−27/22
41/00−41/04
41/08
41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性袋体を有するコンサベータを備える密閉式の油入電気機器の診断方法であって、
前記弾性袋体内のガスを吸着材に吸着させることにより採取して分析することにより、前記油入電気機器の内部異常の有無を診断することを特徴とする油入電気機器の診断方法。
【請求項2】
弾性袋体を有するコンサベータを備えた密閉式の油入電気機器の診断装置であって、
前記弾性袋体内のガスを採取するための採取機構を備え
前記採取機構はガス吸着用の吸着材を含む、油入電気機器の診断装置。
【請求項3】
油入電気機器本体と、弾性袋体を有するコンサベータと、請求項に記載の診断装置とを備え、
前記油入電気機器本体は、絶縁油が貯留される第1の絶縁油貯留部を有し、
前記コンサベータは、前記弾性袋体の周囲に絶縁油が貯留される第2の絶縁油貯留部を有し、
前記第1の絶縁油貯留部と前記第2の絶縁油貯留部とが連通している、油入電気機器。
【請求項4】
さらに、前記第1の絶縁油貯留部内と前記第2の絶縁油貯留部内とにおいて絶縁油を循環させるための循環装置を備える、請求項に記載の油入電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入電気機器の診断方法、油入電気機器の診断装置、および、それを備えた油入電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器等の油入電気機器の状態(異常の度合い)を監視する手法の1つとして、油中ガス分析を行う方法が知られている。
【0003】
油入電気機器の内部で過熱や放電が発生すると、異常部の温度によって特有の分解ガスが発生し、その大部分は絶縁油中に溶解する。特に密封式変圧器の場合(例えば、特許文献1:特開2008−227268号公報参照)、分解ガスが大気に逸散せず絶縁油中に溶解した状態であり、この溶解ガスを分析することによって内部異常の有無やその状況を推定することができる。
【0004】
具体的には、例えば、油入電気機器から絶縁油を採取し、試料油から抽出した溶解ガス(例えば、油入電気機器の内部異常発生時に発生するC2、CH4、、H、C,Cなどの可燃性ガス)をガスクロマトグラフ等を用いて分析し、これらのガス濃度やガス様相から油入電気機器の異常を判定する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−227268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の判定には、油入電気機器の絶縁油を採取する必要があるが、油中に溶存するガスの分析(油中ガス分析)のためには、専用容器を使用し、不要な空気等が混入しないように採油する必要がある。また、採取した絶縁油中の溶存ガスを抽出する操作も必要である。また、採油時に絶縁油をこぼすと環境的に問題となるといった理由から、採油には熟練した技能が必要である。さらに、分析回数が多くなり、油入電気機器内の絶縁油が減少量が多くなると、運転上問題となるため、現状の油入電気機器内の絶縁油量を把握して運転上支障のない採油量であることを確認する必要があり、採油量が運転上支障のある量に達する場合には、絶縁油の補充が必要となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、油入電気機器から絶縁油を採取することなく、絶縁油中の溶存ガスを分析することにより、油入電気機器の内部異常の有無を診断することのできる、油入電気機器の診断方法、油入電気機器の診断装置、および、それを備えた油入電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、内部異常発生時に発生する絶縁油中の可燃性ガスが弾性袋体を透過しやすい性質を利用して、油入電気機器から絶縁油を採取せずに、コンサベータの弾性袋体内のガスを分析することで、容易に絶縁油中の溶存ガスを分析できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、弾性袋体を有するコンサベータを備えた密閉式の油入電気機器の診断方法であって、前記弾性袋体内のガスを分析することにより、前記油入電気機器の内部異常の有無を診断することを特徴とする診断方法である。
【0010】
また、本発明は、弾性袋体を有するコンサベータを備えた密閉式の油入電気機器の診断装置であって、前記弾性袋体内のガスを採取するための採取機構を備える、診断装置に関する。さらに、本発明は、弾性袋体を有するコンサベータを備えた密閉式の油入電気機器の診断装置であって、前記弾性袋体内のガスを分析するための分析装置を備える、診断装置にも関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、油入電気機器から絶縁油を採油することなく、絶縁油中の溶存ガスを分析することができるため、容易に油入電気機器の異常の有無を診断することができる。また、採油による絶縁油量の減少を伴わないため、経済的に油入電気機器の診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の油入電気機器の診断装置を説明するための模式図である。
図2】実施形態2の油入電気機器の診断装置を説明するための模式図である。
図3】実施形態3の油入電気機器の診断装置を説明するための模式図である。
図4】実施形態4の油入電気機器を説明するための断面模式図である。
図5】本発明の診断対象となる油入電気機器の構成の一例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0014】
(実施形態1)
図5を参照して、本実施形態の診断方法および診断装置は、密閉式の油入電気機器に適用される。診断対象となる油入電気機器には、酸化や吸湿による絶縁油の劣化を防止する目的でコンサベータ(油劣化防止装置)9が設けられている。
【0015】
コンサベータ9は、絶縁油と空気(外気)が直接接触しないように絶縁油を密閉室内に封入しつつ、弾性袋体15によって絶縁油16の体積変化を緩衝する機構を備えている。すなわち、弾性袋体15の内部は、吸湿呼吸器18および吸湿呼吸器接続管14を介して、外気に連通しており、絶縁油16の体積変化に応じて外気を吸入または排出することで、絶縁油と空気とを接触させずに絶縁油16の体積変化を緩衝することができる。
【0016】
弾性袋体15の材質としては、ゴムなどが挙げられ、好ましくは耐油性のゴムである。耐油性のゴムとしては、例えば、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルゴムとの共重合体)、シリコーンゴムが挙げられるが、コンサベータに用いる弾性袋体の材質としては、ニトリルゴムが多く使用される。このように、弾性袋体15の材質の主たる構成元素はC(炭素)およびH(水素)である。
【0017】
そして、油入電気機器の異常時に発生する可燃性ガス(C2、CH4、、H、C,Cなど)も、CおよびHから構成される成分である。このため、これらのガスはニトリルゴムを透過する性質(透過性)が大きい。したがって、油入電気機器本体5の内部で発生し絶縁油16中に溶存している可燃性ガスは、コンサベータ9の弾性袋体15を透過して、弾性袋体15内の空気中に拡散されやすい。
【0018】
油入電気機器本体5は、接続管10を介してコンサベータ9に接続されており、油入電気機器本体5内の絶縁油16は接続管10を介してコンサベータ9へと流動する。なお、コンサベータ9は、接続管6を介して空気抜栓2および放圧板3を有する放圧管4の上部側に接続されている。また、コンサベータ9は、上部に、空気抜きフランジ7、真空脱気弁11、真空均圧弁12および真空均圧管13を有し、底部に排油弁17を有しており、油面計8も有している。
【0019】
図1は、実施形態1の診断装置(コンサベータの弾性袋体から可燃性ガスを採取する構造)を説明するための模式図である。本実施形態の診断装置では、ガス採取用の細管20を弾性袋体15内に挿入して、ガスを採取する。
【0020】
図1を参照して、コンサベータ9の弾性袋体15には、弾性袋体15と吸湿呼吸器18とをつなぐ接続管14の取付部に孔を有しており、この孔に細管20を挿入できる構造となっている。細管20の上部に設けられたコック19を開通させることで、弾性袋体15内のガスを吸引し、採取することができる。このように、本実施形態の診断装置は、弾性袋体15内のガスを採取するための採取機構を備えている。
【0021】
分析対象となるガスは、好ましくは可燃性ガスである。可燃性ガスとしては、例えば、CH、C、C等の飽和型炭化水素や、C、C、C等の不飽和型炭化水素、H(水素)が挙げられる。これらのガス成分は、変圧器等の油入電気機器の状態(異常の度合い)を監視するための指標となる。これらのガスのうち1種を分析してもよく、複数種のガスを同時または別々に分析してもよい。
【0022】
なお、弾性袋体15の下方に滞留した空気より重いガス(C8、など)を採取するためには、細管20の下端(先端)を弾性袋体15内の下端付近に配置することが望ましい。また、細管20の下端を上下に可動できる機構を設ければ、空気より軽いガスの採取と、弾性袋体15の下方に滞留した空気より重いガス(C8、など)の採取とを1つの機構により行うことも可能である。
【0023】
(実施形態2)
図2は、実施形態2の診断装置を説明するための模式図である。本実施形態の診断装置では、細管20の片方(上端)に接続管21を介してガス分析装置22が接続されている点で実施形態1とは異なるが、それ以外の点は実施形態1と同様である。
【0024】
本実施形態では、このような分析装置(ガス分析装置22)を有しているため、採取現場でのガス分析および異常判定が可能となる利点を有している。
【0025】
また、かかる分析装置によって得られた分析結果に基づいて、油入電気機器の内部異常の有無を判定するための判定機能をさらに備えている場合、採取現場でのガス分析および異常判定を容易かつ正確に行うことが可能となる。
【0026】
(実施形態3)
図3は、実施形態3の診断装置を説明するための模式図である。本実施形態は、弾性袋体15内に、ガス採取用の吸着材24aを収容した袋24b付きの細棒23を挿入し、弾性袋体15内のガスを該吸着材24aに吸着させて採取する点で、実施形態1と異なるが、それ以外の点は実施形態1と同様である。
【0027】
図3を参照して、コンサベータ9の弾性袋体15内に、吸着材付き細棒23(吸着材24aを布または金網製の袋24bに収納した細棒)を挿入し、吸着材24aに所望のガスを吸着させる。吸着材を取り出せる構造にしておき、吸着したガスを分析する。
【0028】
上述の実施形態1〜3のような構成を有する診断装置、および、該診断装置を備えた油入電気機器によれば、油入電気機器から絶縁油を採取することなく、弾性袋体内のガスを採取して分析するか、あるいは、弾性袋体内のガスを直接分析することにより、油入電気機器の内部異常の有無を判定することができる。
【0029】
(実施形態4)
本実施形態では、本発明の油入電気機器の一例について説明する。本実施形態の油入電気機器は、コンサベータ内と油入電気機器本体内とで絶縁油を循環させるための循環装置(循環構造)を有することを特徴とする。図4は、本実施形態の油入電気機器を説明するための模式図である。
【0030】
図4を参照して、本実施形態の油入電気機器は、油入電気機器本体5と、弾性袋体15を有するコンサベータ9と、上記実施形態1〜3に開示されるような診断装置とを備える。なお、診断装置の構成は上記実施形態1〜3と同様であるため、図4では、簡略化のために診断装置は省略している。
【0031】
油入電気機器本体5は、絶縁油が貯留される第1の絶縁油貯留部161を有している。また、コンサベータ9は、弾性袋体15の周囲に絶縁油が貯留される第2の絶縁油貯留部162を有している。第1の絶縁油貯留部161と第2の絶縁油貯留部162とは、接続管10a,10bを介して2箇所で連通している。
【0032】
そして、接続管10aの途中に設けられた送油ポンプ31(循環装置)によって、絶縁油を第1の絶縁油貯留部161内から第2の絶縁油貯留部162内へ送りこむ。これにより、絶縁油は、第1の絶縁油貯留部161内と第2の絶縁油貯留部162内とにおいて、図中の矢印方向に循環する。
【0033】
第1の絶縁油貯留部161内と第2の絶縁油貯留部162内とにおいて、絶縁油を循環させることで、第1の絶縁油貯留部161内で発生し絶縁油に溶存したガスが弾性袋体15内に透過しやすくなる。これにより、分析対象となるガスの分析感度が向上する。また、コンサベータ9内の絶縁油と油入電気機器本体5内の絶縁油を均質化させることができる。これにより、油入電気機器本体5内の絶縁油の状態をより精度良く診断することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態の油入電気機器は、冷却器51を備えている。冷却器51の内部配管51aは、接続管52,53を介して第1の絶縁油貯留部161と連通している。接続管53の途中に設けられた送油ポンプ32(循環装置)によって、内部配管51a内の絶縁油は第1の絶縁油貯留部161内に送り込まれる。これにより、絶縁油は、内部配管51a内と第1の絶縁油貯留部161内とにおいて、図中の矢印の方向に循環する。
【0035】
ここで、コンサベータ9の第2の絶縁油貯留部162に接続された接続管10bは、冷却器51内に接続管52を介して流入する絶縁油の陰圧によって、第2の絶縁油貯留部162内の絶縁油が吸引されるような位置において、第1の絶縁油貯留部161に接続されている。これにより、冷却器51の送油ポンプ32の駆動力を利用して、第1の絶縁油貯留部161内と第2の絶縁油貯留部162内とにおける絶縁油の循環が促進される。
【0036】
油入電気機器において、絶縁油は、通常、絶縁機能だけでなく機器の冷却の役割も有しているため、絶縁油を冷却器内に循環させるための循環装置が設けられている。したがって、このような接続管10bの配置により、冷却器51の送油ポンプ32の駆動力を利用すれば、送油ポンプ31のようなポンプを別途設けずに、診断精度を向上させることができる。なお、送油ポンプ31を冷却器51の送油ポンプ32の駆動力と併用することで、さらに診断精度を向上させることができる。
【0037】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
1 気体検出装置、2 空気抜栓、3 放圧板、4 放圧管、5 油入電気機器本体、6 接続管、7 空気抜きフランジ、8 油面計、9 コンサベータ、10,10a,10b 接続管、11 真空脱気弁、12 真空均圧弁、13 真空均圧管、14 接続管、15 弾性袋体(ゴム袋)、16 絶縁油、161 第1の絶縁油貯留部、162 第2の絶縁油貯留部、17 排油弁、18 吸湿呼吸器、19 コック、20 細管、21 接続管、22 ガス分析装置、23 細棒、24a 吸着材、24b 収容体、31,32 送油ポンプ、51 冷却器、51a 内部配管、52,53 接続管。
図1
図2
図3
図4
図5