【実施例1】
【0025】
図1、
図2を用いて本発明の塗布装置及び塗布方法における実施例1について説明する。
図1は、本発明の塗液吐出を説明する図であり、
図2は本発明の実施例1における各格子の階調データを示す図である。
【0026】
図1に示すように、塗布装置はヘッド1にインクジェット吐出方式からなる6つのノズル11〜16を有していて、基板等の塗布対象物に対して移動しながら、各ノズル11〜16から塗液を吐出して塗布対象物に回路を形成する。その際、塗布装置はヘッドの進行方向及びその直交する方向に仮想の2次元マトリックス2を塗布対象物に重ね、ヘッド進行方向と直交する方向に並ぶ所定の格子列に、各ノズル11〜16から塗液を吐出させるにあたり、図示しない吐出駆動信号生成部が各ノズル11〜16に共通の吐出駆動信号を生成するとともに、所定の格子列の任意の格子の位置に基づく塗布対象物上の吐出位置にノズル11〜16から塗液を吐出させることにより塗布対象物への塗布を行う。
【0027】
なお、実施例1においてはノズル数を6つとしているが、ノズル数は複数であれば7つ以上でも5つ以下でもよい。また、実施例1においては、ヘッド1が塗布対象物に対して移動する構成としているが、ヘッド1に対して塗布対象物が移動するように構成してもよいし、ヘッド1及び塗布対象物の双方が移動するように構成してもよい。
【0028】
ヘッド1は、
図1に示すように、2次元マトリックス2に対して(すなわち塗布対象物に対して)、傾けて相対移動することができるように構成されている。これは、相対移動方向と直交する方向の格子間隔とノズル間隔を合わせるためであり、異なる格子サイズで塗布することになった場合はこのヘッド1の傾きを変化させてノズル間隔と相対移動方向と直交する方向の格子間隔とを合わせることができる。
【0029】
このようにヘッド1が傾いた状態で塗布対象物に移動させる場合において、相対移動方向と直交する方向に直線を塗布する場合は、
図1に示すノズル11が所定の格子位置に到達してからノズル12〜16が所定の格子位置に到達するまでに時間差が生じる。そのため、各ノズル11〜16がそれぞれ所定の格子位置で塗液を吐出するように、上記時間差に対応する吐出タイミング調整情報をノズル毎に予め設定されている。
【0030】
この吐出タイミング調整情報に対応した時間だけノズル12〜16がノズル11に対して吐出タイミングをずらして塗液を吐出することによって、相対移動方向と直交する方向に滑らかな直線として塗液を塗布することができる。
【0031】
ヘッド1が傾いた状態で塗布対象物に移動させるか否か、また、傾きをどの程度にするかは、格子のサイズとノズル間隔との関係等により任意に選択でき、必ずしもヘッド1を傾けた状態で塗布対象物に移動させなければならないものではなく、ヘッド1を傾けずに塗布対象物に移動させるようにしてもよい。
【0032】
このヘッド1の傾きは、予めTVカメラ等で計測してノズル毎のずれ量を算出する。そして当該算出したずれ量に対応する情報を上述した吐出タイミング調整情報としてノズル毎に記憶しておく。
【0033】
なお、ヘッド1を傾けた結果、ヘッド1の相対移動方向におけるノズル間隔が格子サイズを超える場合、前記格子サイズを超える分だけ塗液を吐出する格子の位置をずらした2次元マトリックスを2次元マトリックス2とは別に作成してもよい。
【0034】
塗布装置は、2次元マトリックス2の格子毎に濃淡画像と同様の階調データを記憶する記憶部を有している。この記憶部には吐出位置を所定の格子位置から所定量ずらす遅延情報であるディレイ情報を階調データとして記憶している。
図1の●は塗液を吐出する位置を示している。ディレイ情報が「0」であれば、塗液を吐出しないが、「0」以外の値であれば所定量遅延させて塗液を吐出するように制御される。例えば、
図1に示すようにディレイ情報(すなわち、階調データ)が「1」から「6」の場合は、●で示す位置に塗液を吐出する。
図2には遅延が0μsec、10μsec、40μsecの場合について各格子のディレイ情報である階調データの例を示している。
【0035】
階調データは、2進数で標記している。例えば、ディレイ情報が「1」の場合は2進数標記では「0000 0001」で、これはディレイなしで所定の格子位置で塗液を吐出することを示している。ディレイ情報は、所定の格子位置にヘッドが到達してから塗液を吐出するまでの遅延時間を示す情報でもある。例えば、階調データが1増える毎に10μsecの遅延をさせるとすると、ディレイ情報が「2」の場合は2進数標記では「0000 0010」で、これは10μsecの遅延を意味し、「3」の場合は2進数標記では「0000 0011」で、これは20μsecの遅延を意味し、「4」の場合は2進数標記では「0000 0100」で、これは30μsecの遅延を意味し、「5」の場合は2進数標記では「0000 0101」で、これは40μsecの遅延を意味し、「6」の場合は2進数標記では「0000 0110」で、これは50μsecだけ遅延させて塗液を吐出することを意味している。すなわち上記の場合では、0〜50μsecの間にヘッド1が移動する距離分、塗液の吐出位置をずらすことができる。
【0036】
例えば、ヘッド1が100mm/secで移動する場合は、10μsecで1μmだけ吐出位置をずらすことになるため、ディレイ情報が「0000 0010」の場合は1μmずらすことができ、ディレイ情報が「0000 0110」の場合は5μmずらすことができる。
【0037】
実施例1においては、このように階調データを8ビットのデータで構成しているが何ビット構成でもよく、4ビットで構成しても3ビットで構成してもよい。
【0038】
塗布装置は、所定の格子位置と格子毎に記憶しているディレイ情報とを用いて実際の吐出位置を図示しない演算部で演算する。また、ヘッド1が傾いた状態で塗布対象物に移動させる場合は、ノズル毎に記憶している吐出タイミング調整情報を加味して実際の吐出位置を演算する。
【0039】
実施例1においては、ディレイ情報を遅延させる時間情報として記憶しているので、ノズル11〜16が所定の格子位置に到達してから、ディレイ情報として記憶されている遅延情報から遅らせる時間を演算し、当該演算した時間分だけ、ヘッドが移動するのを待って塗液を吐出させる。
【0040】
また、実施例1においては、塗布対象物の部分的な歪み量は、塗布装置の上流側にある位置認識装置の位置認識部で塗布対象物の部分的な歪みを公知の方法で認識し、認識したずれ量を下流側の塗布装置に有線又は無線通信により送信する。
【0041】
塗布装置は、受信した塗布対象物の部分的な歪みに対応したノズルの移動時間の情報に変換したディレイ情報を格子毎に記憶部に記憶させる。
【0042】
そして、塗布装置は塗布に際して、記憶部に格子毎に記憶されたディレイ情報に基づいて吐出位置を演算し、演算した吐出位置にノズル11〜16が到達したら、塗液を吐出して塗布対象物に塗布を行う。
【0043】
実施例1においては、下流側の塗布装置の塗布動作と並行して上流側における位置認識装置で塗布対象物の部分的なずれである歪みを認識することができ、塗布タクトを短縮することができる。
【0044】
以上の構成により、格子毎に格子サイズよりも細かい分解能で塗布位置を制御することができるため、塗布対象物が部分的に歪んでいる場合や斜め直線を描画するように塗布する場合であっても塗布位置がずれることなく滑らかで任意の回路を形成することができる。
【実施例2】
【0045】
図3、
図4を用いて本発明の塗布装置及び塗布方法における実施例2について説明する。実施例2の構成は実施例1の構成とほぼ同じであるが、記憶部に記憶する階調データの意味合いが異なり、塗液吐出の液滴数も制御する点で異なっている。
【0046】
塗布装置には、
図3に示すように記憶部に格子毎に塗液吐出数情報を階調データとして記憶し、各格子の吐出位置で記憶された液滴数の塗液を吐出するようにして塗布形状を制御するようにしているものがある。
例えば、階調データが「0000 0011」の場合は、塗液吐出数が3滴であり、階調データが「0000 0001」の場合は、塗液吐出数が1滴であり、階調データが「0000 0010」の場合は、塗液吐出数が2滴であることを示している。そして階調データに記憶された塗液吐出数だけノズルから塗液を吐出するように制御される。
【0047】
実施例2は、
図4に示すように、
図3で示した階調データの塗液吐出数情報の一部をディレイ情報に置き換えて記憶部に記憶するように塗布装置を構成したものである。
【0048】
塗液吐出数情報とディレイ情報とは、
図4に示すように、階調データの上位4ビットを塗液吐出数情報、下位4ビットをディレイ情報として記憶している。例えば、階調データが「0011 0010」の場合は、塗液吐出数が3滴であり遅延時間が10μsecで吐出することを示しており、階調データが「0001 0001」の場合は、塗液吐出数が1滴であり遅延時間が0μsecで吐出することを示しており、階調データが「0010 0101」の場合は、塗液吐出数が2滴であり遅延時間が40μsecで吐出することを示している。
【0049】
そして、上述のように階調データに記憶された情報に基づいて、実施例1と同様に格子毎に記憶しているディレイ情報に基づいて、塗液を吐出する吐出位置を図示しない演算部で演算し、記憶されている塗液吐出数情報に相当する液滴数の塗液を演算された吐出位置に吐出する。これにより、塗布対象物が部分的に歪んでいる場合や斜め直線を描画するように塗布する場合であっても塗布位置がずれることなく滑らかに、かつ任意の回路を形成することができる。また、従来から記憶部に記憶している塗液吐出数情報の一部をディレイ情報に置き換えて記憶させることができて、塗液吐出数情報とディレイ情報とを同時に読み込むことができるため、処理時間を延ばすことなくディレイ情報を記憶した塗布装置を構成することができる。
【0050】
なお、実施例2においても、ヘッド1が傾いた状態で塗布対象物に移動させる場合は、ノズル毎に記憶している吐出タイミング調整情報を格子毎に記憶しているディレイ情報に加味して実際の吐出位置を演算することは言うまでもない。
【0051】
実施例2においては、階調データの上位4ビットを塗液吐出数情報、下位4ビットをディレイ情報として記憶しているが、これに限らず上位4ビットにディレイ情報、下位ビットに塗液吐出数情報として記憶させてもよいし、各データを4ビット以外のビット数で表してもよい。
【0052】
以上の構成により、格子毎に格子サイズよりも細かい分解能で塗布位置を制御することができるため、塗布対象物が部分的に歪んでいる場合や斜め直線を描画するように塗布する場合であっても塗布位置がずれることなく滑らかで任意の回路を形成することができるとともに、従来から記憶部に記憶している塗液吐出数情報の一部をディレイ情報に置き換えて記憶させることができて、塗液吐出数情報とディレイ情報とを同時に読み込むことができるため、処理時間を延ばすことなくディレイ情報を記憶した塗布装置を構成することができる。
【実施例3】
【0053】
実施例1及び実施例2においては、ディレイ情報を遅延時間の情報として記憶部に記憶していたが、本発明の塗布装置及び塗布方法における実施例3においては、ディレイ情報を1μmや5μmといった遅延させる距離情報として記憶部に記憶している点で実施例1及び実施例2と異なっている。
【0054】
所定の格子位置と、格子毎に記憶している遅延させる距離情報であるディレイ情報とを演算部で演算して塗液を吐出させる吐出位置を得る。そして当該得られた吐出位置にヘッド1のノズル11〜16が到達したら、塗液を吐出するように制御する。ヘッド位置は、ヘッド1又は塗布対象物の移動を駆動する駆動部に設けたエンコーダ等から得ることができる。
【0055】
なお、実施例3においても、ヘッド1が傾いた状態で塗布対象物に移動させる場合は、ノズル毎に記憶している吐出タイミング調整情報を格子毎に記憶しているディレイ情報に加味して実際の吐出位置を演算することは言うまでもない。
【0056】
この構成により、格子毎に格子サイズよりも細かい分解能で塗布位置を制御することができるため、塗布対象物が部分的に歪んでいる場合や斜め直線を描画するように塗布する場合であっても塗布位置がずれることなく滑らかな回路を形成することができるとともに、より正確な塗布位置を得ることができ、より滑らかな回路を形成することができる。
【実施例4】
【0057】
本発明の塗布装置及び塗布方法における実施例4は、位置認識部を塗布装置が有している点で、実施例1〜3における構成と異なっている。
【0058】
すなわち実施例1〜3においては、塗布装置の上流側に位置認識部を有した位置認識装置を備え、塗布対象物の部分的な歪みを公知の方法で認識していたが、実施例4においては、塗布装置に位置認識部を備え、この位置認識部で塗布対象物の部分的な歪みを公知の方法で認識し、認識したずれ量を遅延時間又は遅延させる距離情報に変換し、ディレイ情報として格子毎に記憶部に記憶させる。
【0059】
位置認識部を塗布装置に備えることにより、装置全体を低コストでコンパクトに構成することができる。
【0060】
この構成によって、格子毎に格子サイズよりも細かい分解能で塗布位置を制御することができるため、塗布対象物が部分的に歪んでいる場合や斜め直線を描画するように塗布する場合であっても塗布位置がずれることなく滑らかな回路を形成することができるとともに、低コストに滑らかな回路を形成することができる。