【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1の接続導体部の斜視図、
図2は接続導体部に平滑コンデンサと上下アームそれぞれにスイッチング素子を備えたフルブリッジ回路構成のインバータを配設した状態を示す構成図である。各図において、10は正極および負極の積層導体からなる接続導体部で、正極導体11と負極導体12を平行平板としてその間に絶縁層(絶縁フィルムや絶縁板)を介して積み重ねた構造となっている。なお、
図1で示す接続導体部10の上下の向きは何れでもよいが、ここでは、平滑コンデンサが配置される側(
図2(a))を上面とする。
【0022】
接続導体部10は、図示省略されているが、平行平板の水平方向の中央に平滑コンデンサの正極端子および負極端子に電気的に接続するコンデンサ端子接続部が形成されている。また、接続導体部10のコンデンサ端子接続部の両側には、コンデンサ端子接続部からU字状(又はL字状)に下面へ屈曲した底部を形成し、その底部に正極導体11の接続端子用孔11aと負極導体の接続端子用孔12aを複数個(
図2では左右各3組)穿設している。さらに、U字状(又はL字状)に屈曲した底部より水平方向端部には、サージ抑制用バスバー部13が形成される。U字状に屈曲した底部の接続端子用孔11a,12aは、スイッチング素子3の接続端子11b,12bと接続する。
【0023】
接続導体部10の水平方向端部のサージ抑制用バスバー部13は、底部の各孔11a,12aに対して垂直方向に位置し、さらに接続導体部10のコンデンサ端子接続部と略等しい高さまで延在されている。
このように、サージ抑制用バスバー部13を接続導体部10の水平方向端部において垂直方向に屈曲させ、接続導体部10のコンデンサ端子接続部と略等しい高さまで延在したことで、接続導体部10の平行平板の水平方向の面積を小型化している。14,15は図示しない直流電源への接続端子で、接続端子14は直流電源の正極に、接続端子15は直流電源の負極にそれぞれ接続される。
【0024】
図2のように形成された接続導体部10の上部には、コンデンサケース1が配設され、コンデンサケース1内には複数個の平滑コンデンサが収納されており、それら各平滑コンデンサは接続導体部10の所定位置に並列配列され、平滑コンデンサの正極端子は接続導体部10の正極導体11に、また、平滑コンデンサの負極端子は負極導体12にそれぞれ接続される。
【0025】
2は駆動回路基板、3はインバータのスイッチング素子で、駆動回路基板2はスイッチング素子3の主端子間を導通または遮断するための駆動信号を生成し、この駆動信号をスイッチング素子3の制御端子に送出する回路基板であり、スイッチング素子3は三相フルブリッジ回路構成のインバータを例にして上アームと下アーム毎に区分され、接続導体部10の水平方向に各3個のスイッチング素子3が配設されている。各スイッチング素子3の主端子は、U字状の底部に位置する正極導体11の接続端子用孔11aと負極導体12の接続端子用孔12aにそれぞれ接続される。したがって、接続導体部10の正極および負極導体11,12に接続される平滑コンデンサとスイッチング素子3間の導体距離は短く、接続導体部10のコンデンサ端子接続部と底部の接続端子用孔11a,12aとなっている。
【0026】
なお、図示省略されているが、各平滑コンデンサの正極端子は正極導体11のコンデンサ端子接続部に、負極端子は負極導体12のコンデンサ端子接続部に接続されている。また、スイッチング素子3の主端子は、正極および負極導体11,12の接続端子用孔11a,12aに接続されている。このため、接続導体部10の水平方向を断面視したとき、コンデンサ端子接続部と接続端子用孔11a,12aとの高さは異なり、接続導体部10の水平方向に見て中央部(各平滑コンデンサの直下)に空間が形成され、この中央部の空間に駆動回路基板2を配置している。
【0027】
図3はU字状の底部側からみた接続導体部10の部分図である。接続導体部10を形成する正極および負極導体11,12のU次状の底部からコンデンサ端子接続部に向かって所定の長さまでは、導体幅W1を有する3本の連子状になっており、且つその連子状の所定の長さを超えた部分からコンデンサ端子接続部までは、W1よりも導体幅の広いW1とW2を足した導体幅の立ち下がり(
図3では立ち上がり)部分が形成されている。そして、
負極導体12に形成された導体幅
W2の中間となる位置(正極導体11の導体幅
W1の位置)に、
正極導体11の導体幅W1の連子(接続端子)を位置(又はこの逆に位置)させて屈曲し、接続端子用孔11a,12a
が穿設された正極および負極導体11,12を交互に配置している。
【0028】
図4は、接続導体部10のU字状の底部を奥行方向に断面視したもので、正極導体11と負極導体12とはU字状の底部からコンデンサ端子接続部に向かって立ち上がる導体の屈曲角度が異なった構造(
図4で示すΘ1とΘ2)となっている。これは、接続導体部10のコンデンサ端子接続部の下部に駆動回路基板2を配設したとき、駆動回路基板2と正極および負極導体11,12との絶縁距離Lを得るため、屈曲角度の異なる正極および負極導体11,12を交互配置することによって絶縁距離Lを確保しているものである。
【0029】
なお、
図4に示すA部分は、正極および負極導体11,12ともに導体幅W1とW2を足した導体幅となっており、正極および負極導体11,12の屈曲角度が異なることで、それぞれの導体間に絶縁紙を挟み込んだ積層導体構造にでき、正極および負極導体11,12の間の絶縁と、それぞれの導体と駆動回路基板2との絶縁を確保しつつ、接続端子用孔11a,12aにできる限り近い位置まで導体幅を広くできる積層導体構造にでき、配線インダクタンスを低減してサージ電圧の上昇を抑制している。
この実施例では、上記の他に正極および負極導体11,12と駆動回路基板2との絶縁距離を確保するため、正極および負極導体11,12の屈曲角度を変えて接続導体部10の奥行き方向に交互に配置した構成となっている。この交互配置して形成された続端子用孔11a,12aの位置と、接続導体部10に配設される平滑コンデンサのコンデンサ端子接続部の位置との距離が最短となることによっても配線インダクタンスが低減され、サージ電圧の上昇を抑制できる。
【0030】
また、駆動回路基板2の下面と正極および負極導体への接続端子用孔11a,12aの底部に面する高さが略等しい構造で、接続端子用孔11a,12aおよび駆動回路基板2の下方に各スイッチング素子3を配置している。各スイッチング素子3は、フルブリッジ回路構成で上アームと下アーム毎に接続導体部10の水平方向に分かれて配置され、上アームと下アーム毎それぞれにインバータの出力電圧の相数に合わせたスイッチング素子数が接続導体部10の奥行方向に並んで配置されている。
【0031】
したがって、この実施例によれば、接続導体部10のコンデンサ端子接続部は、正極および負極導体11,12を積み重ねた平行平板構造となっており、導体を流れる正極と負極の電流により発生した磁束が互いに打ち消しあうことや、平滑コンデンサとスイッチング素子間は、接続導体部10を挟んで上下で接続されて導体距離が最短となり、配線インダクタンスが低減されるものである。
また、正極および負極導体11,12を各別に屈曲角度を変えて交互配置とし、導体の積層部を接続端子用孔11a,12aにまで近づけることで、正極および負極導体11,12と駆動回路基板2との絶縁を確保しつつ、配線インダクタンスが低減され、サージ電圧の上昇を抑制するものである。
【0032】
さらに、この実施例では、配線インダクタンスの低減に加えて、接続導体部10の水平方向端部を端子接続用孔11a,12aに対して屈曲させて垂直方向にサージ抑制用バスバー部13を形成している。これにより、平滑コンデンサの正極端子(または負極端子)から各スイッチング素子3の正極端子(または負極端子)への電流経路がサージ抑制用バスバー部13を介して複数の並列回路が形成されて導体断面積を増加させることで、配線インダクタンスが大幅に低減でき、サージ電圧の上昇を抑制するものである。
【0033】
なお、配線インダクタンスの低減は、平行平板の積層による磁束の打ち消しによる配線インダクタンスの低減に比べて、導体距離の短縮や導体断面積の増加が配線インダクタンスの低減効果が大きいことがシミュレーションによって知られている。したがって、この実施例のようにサージ抑制用バスバー部13の追加と
積層導体を接続端子用孔11a,12aまで近づけることで、省スペースで小型化した導体接続構造でありながら、駆動回路基板2の配線インダクタンスの低減が可能となるものである。
【実施例2】
【0034】
図5は、第2の実施例を示す接続導体部10の部分図で、実施例1のサージ抑制用バスバー部13を接続導体部10の正極および負極導体11,12と分離形成したものである。すなわち、本発明の実施例2は、スイッチング素子3の接続端子11b,12bが位置づけられる部分で導体を分離されていることが
図3の構造(実施例1)と異なる。また、
図3の構造(実施例1)と同様に
、正極および負極導体11,12の接続端子用孔11a,12aから接続導体部10のコンデンサ端子接続部に向かって立ち上がる屈曲角度が、正極および負極導体11,12で異なって交互に配設されている。
【0035】
なお、
図5の分離されたサージ抑制用バスバー部13に示す13
-11は正極導体
、13
-12は負極導体、16は絶縁層である。
【0036】
分離されたサージ抑制用バスバー部13にも接続端子用孔13
-11a,13
-12aが穿設され、この接続端子用孔13
-11a,13
-12aに対して屈曲して垂直方向にサージ抑制用バスバーが形成されている。
【0037】
スイッチング素子3の取付け時には、正極および負極導体11,12に設けられた接続端子用孔11a,12aとサージ抑制用バスバー部13側に設けられた接続端子用孔13
-11a,13
-12aを重ね合わせ、スイッチング素子3の正極および負極端子に電気的に接続し固定することで、サージ抑制用バスバー部13は正極および負極導体11,12と一体になる。他は実施例1と同様である。したがって、実施例2の構造においても、実施例1と同様の効果が得られる。
【0038】
また、実施例2では、接続導体部10の正極および負極導体11,12とサージ抑制用バスバー部13を分離形成したことで、製作時の加工を別々にできるので、打ち抜き加工時の材料寸法を小さくできるので、材料の廃棄部分が減少して環境負荷の低減ができる効果を奏する。
【0039】
なお、各実施例では、接続導体部10のコンデンサ端子接続部の両側をU字状に屈曲した場合を示しているが、L字状に屈曲形成し、接続導体部10の接続端子用孔11a,12aの水平方向最端部に、正極側導体11同士および負極側導体12同士を各別で短絡してサージ抑制用バスバー部13を形成してもよい。この場合においても、サージ抑制用バスバー部13を介して複数の並列回路が形成されて導体断面積を増加できることで、スイッチング素子3で発生するサージ電圧の抑制が可能となる。
【0040】
さらに、各実施例では、コンデンサ端子接続部の両側それぞれに底部を備えた場合を示しているが、これに限定されることなく、例えばコンデンサ端子接続部の片側のみに底部を備える接続導体部の形状に変形してもよく、この場合には上アームのスイッチング素子3および下アームのスイッチング素子3の接続端子11b,12bとの接続も片側のみとなるが、各実施例の説明と同様の効果を奏する。