特許第6440590号(P6440590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440590
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   A63B37/00 626
   A63B37/00 534
   A63B37/00 536
   A63B37/00 538
   A63B37/00 542
   A63B37/00 340
   A63B37/00 328
【請求項の数】10
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-152346(P2015-152346)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-29381(P2017-29381A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】永倉 光
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】阪峯 良太
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−121522(JP,A)
【文献】 特開2003−79765(JP,A)
【文献】 特開2012−139417(JP,A)
【文献】 特開2011−19892(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0017201(US,A1)
【文献】 特開2004−351034(JP,A)
【文献】 特開2009−254750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00−37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状コアと、前記球状コアと被覆するカバーとを有し、
ゴルフボールの径方向に荷重を加える圧縮試験(測定温度;−70℃、圧縮速度;30mm/分)において、
変形量を7%とした時の反発相当エネルギー率(R40)が65.50%〜99.0%であり、
変形量を19%とした時の反発相当エネルギー率(R50)が20.0%〜70.0%であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記反発相当エネルギー率(R40)と前記反発相当エネルギー率(R50)との差(R40−R50)が、1.0%以上である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記ゴルフボールは、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)が、2.0mm〜4.0mmである請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記球状コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs−Ho)が、ショアC硬度で、15〜40である請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記球状コアは、コア半径を12.5%間隔で等分した9点で測定した硬度と、コア中心からの距離とをプロットしたときに、最小二乗法によって求めた線形近似曲線の決定係数Rが0.90以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記球状コアは、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)が、2.0mm〜6.0mmである請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記球状コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含むゴム組成物から形成されたものであり、
形成後の球状コアが、内部に、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の粒子、または、架橋ゴム粉末を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記カバーが、曲げ剛性が49.0MPa〜588MPaであるカバー用樹脂組成物から形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項9】
前記カバーが、スラブ硬度が、ショアD硬度で35〜65であり、スラブ硬度と曲げ剛性との比(スラブ硬度(ショアD)/曲げ剛性(kgf/cm))が0.01〜0.05であるカバー用樹脂組成物から形成されている請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項10】
前記カバーが、アイオノマー樹脂と、有機化層状珪酸塩、カーボンナノチューブ、および、表面に極性官能基を有する炭素質フィラーよりなる群から選択される少なくとも1種のフィラーとを含有する樹脂組成物から形成されている請求項1〜9のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバーショットのゴルフボールの飛距離を伸ばす方法として、例えば、コアの中心から表面に向かって、硬度が高くなる硬度分布を有するコアを採用する方法が知られている。前記硬度分布を有するコアは、打出角を高くして、スピン量を低下させる。高打出角および低スピンのゴルフボールは、飛距離が大きくなる。このような硬度分布を有するコアを採用したゴルフボールとして、例えば、球状コアが、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、炭素数1〜13のカルボン酸塩を含有するゴム組成物から形成されているゴルフボールが提案されている(特許文献1(請求項1)参照)。
【0003】
ゴルフボールのコアに使用されるゴム組成物には、共架橋剤としてアクリル酸亜鉛が多用される。このようなアクリル酸亜鉛の改良技術が提案されている。例えば、特許文献2には、乾式法による粒子径が300μm以上である粒子比率が20質量%以下であり、乾式法による粒子径の中央値が10〜300μmであり、かつ湿式法による粒子径の中央値(B)に対する乾式法による粒子径の中央値(A)の比が2を超えるアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤を含有するアクリル酸亜鉛組成物が記載されている(特許文献2(請求項1)参照)。特許文献3には、脂肪族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒との混合溶媒、または芳香族炭化水素系溶媒とアルコールとの混合溶媒のいずれかに酸化亜鉛を分散させ、該溶媒中でアクリル酸と該酸化亜鉛とを反応させるアクリル酸亜鉛の製造方法が記載されている(特許文献3(請求項1)参照)。特許文献4には、アクリル酸と亜鉛化合物を反応させた後、その反応液にステアリン酸を添加するアクリル酸亜鉛の製造方法が記載されている(特許文献4(特許請求の範囲)参照)。
【0004】
また、ゴルフボールの構成部材に、樹脂成分に加えて、有機短繊維、金属、粘土鉱物などの充填材を配合してゴルフボールの性能を改善することも提案されている。例えば、特許文献5には、無機材料の粒子が反応し、実質的に均一に分散した構造をもつ重合体からなり、前記粒子の各々が、約1μ以下の最大粒径で、そのような粒子の最小粒径よりも少なくとも1桁大きい最大粒径を有する、ナノ複合体材料を含有するゴルフボールが記載されている(特許文献5(請求項1)参照)。特許文献6〜8には、カバーにカチオン処理された層状珪酸塩、(メタ)アクリルポリマー変性珪酸塩、または有機化層状珪酸塩を含有するゴルフボールが記載されている(特許文献6(請求項5)、特許文献7(請求項1)、特許文献8(請求項1)参照)。
【0005】
ゴルフボールの反発特性を評価する方法として、例えば、ボールに径方向荷重を加える圧縮試験を行い、該圧縮試験と実際の打撃現象との間のボールの変形状態の相違に基づいて、前記圧縮試験で得られた負荷時並びに除荷時の荷重・たわみ曲線より求められる吸収エネルギー並びに放出エネルギーをそれぞれ衝突前後の運動エネルギーに換算して前記ボールの反発係数を得る弾性体の反発特性評価方法が提案されている(特許文献9(請求項1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−027691号公報
【特許文献2】特開2003−12600号公報
【特許文献3】特開2004−161640号公報
【特許文献4】特開昭59−21640号公報
【特許文献5】特表2004−504900号公報
【特許文献6】特開2006−346014号公報
【特許文献7】特開2009−178447号公報
【特許文献8】特開2009−254750号公報
【特許文献9】特開2000−121522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゴルフボールの飛行性能を向上させる方法としては、コアやカバーを高反発化する方法がある。ここで、ゴルフボールは、打撃時のヘッドスピードによって、最適な反発性が異なる。そのため、ゴルフボールの反発性能は、打撃時のヘッドスピードに応じて、調整する必要がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ヘッドスピード50m/sでの打撃時のボール初速が優れており、かつ、ヘッドスピード40m/sでの打撃時のボール初速も向上させたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアと被覆するカバーとを有し、ゴルフボールの径方向に荷重を加える圧縮試験(測定温度;−70℃、圧縮速度;30mm/分)において、変形量を7%とした時の反発相当エネルギー率(R40)が65.5%〜99.0%であり、変形量を19%とした時の反発相当エネルギー率(R50)が20.0%〜70.0%であることを特徴とする。前記反発相当エネルギー率(R40)および反発相当エネルギー率(R50)が、上記範囲内であれば、ヘッドスピード50m/s、および、ヘッドスピード40m/sのいずれの打撃においてもヒステリシスロスが小さく、高反発となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールは、ヘッドスピード50m/s、および、ヘッドスピード40m/sのいずれの打撃においても優れた反発性能を示し、特に、ヘッドスピード40m/sの打撃において優れた反発性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施態様に係るゴルフボールを示す一部切り欠き断面図。
図2】コアの硬度分布を示したグラフ。
図3】コアの硬度分布を示したグラフ。
図4】コアの硬度分布を示したグラフ。
図5】コアの硬度分布を示したグラフ。
図6】コアの硬度分布を示したグラフ。
図7】コアの硬度分布を示したグラフ。
図8】コアの硬度分布を示したグラフ。
図9】コアの硬度分布を示したグラフ。
図10】コアの硬度分布を示したグラフ。
図11】コアの硬度分布を示したグラフ。
図12】反発相当エネルギー測定における力−たわみ曲線の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアと被覆するカバーとを有し、ゴルフボールの径方向に荷重を加える圧縮試験(測定温度;−70℃、圧縮速度;30mm/分)において、変形量を7%とした時の反発相当エネルギー率(R40)が65.50%〜99.0%であり、変形量を19%とした時の反発相当エネルギー率(R50)が20.0%〜70.0%であることを特徴とする。
【0013】
圧縮試験において、測定温度が−70℃、圧縮速度が30mm/分、変形量が7%の条件は、ゴルフボールをドライバー(ヘッドスピード40m/s)で打撃したときの圧縮条件に相当する。また、圧縮試験において、測定温度が−70℃、圧縮速度が30mm/分、変形量が19%の条件は、ゴルフボールをドライバー(ヘッドスピード50m/s)で打撃したときの圧縮条件に相当する。よって、前記反発相当エネルギー率(R40)および反発相当エネルギー率(R50)が、上記範囲内であれば、ヘッドスピード50m/s、および、ヘッドスピード40m/sのいずれの打撃においてもヒステリシスロスが小さく、高反発となる。
【0014】
前記反発相当エネルギー率(R40)は、65.50%以上が好ましく、より好ましくは65.7%以上、さらに好ましくは65.8%以上である。前記反発相当エネルギー率(R40)が、65.50%以上であればヘッドスピード40m/sの打撃における反発性が向上する。前記反発相当エネルギー率(R40)の上限は特に限定されないが、99.0%が好ましく、より好ましくは85.0%、さらに好ましくは70.0%である。前記反発相当エネルギー率(R40)が、99.0%以下であればゴルフボールの耐久性が良好となる。
【0015】
変形量を7%とした時の反発相当エネルギー(E40)は、3.60N・m以上が好ましく、より好ましくは3.70N・m以上、さらに好ましくは3.82N・m以上である。前記反発相当エネルギー(E40)が、3.60N・m以上であればヘッドスピード40m/sの打撃における反発性が向上する。前記反発相当エネルギー(E40)の上限は特に限定されないが、10.0N・mが好ましく、より好ましくは9.0N・m、さらに好ましくは8.0N・mである。前記反発相当エネルギー(E40)が、10.0N・m以下であればゴルフボールの耐久性が良好となる。
【0016】
変形量を7%とした時の全印加エネルギー(E40tatal)は、5.0N・m以上が好ましく、より好ましくは5.3N・m以上、さらに好ましくは5.6N・m以上である。前記全印加エネルギー(E40total)が、5.0N・m以上であればヘッドスピード40m/sの打撃における反発性が向上する。前記全印加エネルギー(E40total)の上限は特に限定されないが、15.0N・mが好ましく、より好ましくは13.0N・m、さらに好ましくは11.0N・mである。前記全印加エネルギー(E40total)が、15.0N・m以下であればゴルフボールの耐久性が良好となる。全印加エネルギー(E40tatal)とは、ゴルフボールを圧縮率7%まで変形させるために必要な全エネルギーである。
【0017】
前記反発相当エネルギー率(R50)は、20.0%以上が好ましく、より好ましくは30.0%以上、さらに好ましくは40.0%以上である。前記反発相当エネルギー率(R50)が、20.0%以上であればヘッドスピード50m/sの打撃における反発性が向上する。前記反発相当エネルギー率(R50)の上限は特に限定されないが、70.0%が好ましく、より好ましくは65.0%、さらに好ましくは61.0%である。前記反発相当エネルギー率(R50)が、70.0%以下であればゴルフボールの耐久性が良好となる。
【0018】
変形量を19%とした時の反発相当エネルギー(E50)は、5N・m以上が好ましく、より好ましくは10N・m以上、さらに好ましくは18N・m以上である。前記反発相当エネルギー(E50)が、5N・m以上であれば、ヘッドスピード50m/sの打撃における反発性が向上する。前記反発相当エネルギー(E50)の上限は特に限定されないが、50N・m以下が好ましく、より好ましくは40N・m以下、さらに好ましくは25N・m以下である。前記反発相当エネルギー(E50)が、50N・m以下であればゴルフボールの耐久性が良好となる。
【0019】
変形量を19%とした時の全印加エネルギー(E50total)は、25N・m以上が好ましく、より好ましくは35N・m以上、さらに好ましくは55N・m以上である。前記全印加エネルギー(E50total)が、25N・m以上であればヘッドスピード50m/sの打撃における反発性が向上する。前記全印加エネルギー(E50total)の上限は特に限定されないが、80N・m以下が好ましく、より好ましくは70N・m以下、さらに好ましくは65N・m以下である。前記全印加エネルギー(E50total)が、80N・m以下であればゴルフボールの耐久性が良好となる。全印加エネルギー(E50tatal)とは、ゴルフボールを圧縮率19%まで変形させるために必要な全エネルギーである。
【0020】
前記反発相当エネルギー率(R40)と前記反発相当エネルギー率(R50)との差(R40−R50)は、1%以上が好ましく、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上である。前記差(R40−R50)が1%以上であれば、ヘッドスピード40m/sでの打撃時の反発性能がより高くなる。よって、ヘッドスピード50m/s、および、ヘッドスピード40m/sのいずれの打撃においても反発性能が高く、特にヘッドスピード40m/sの打撃における反発性能がより向上する。
【0021】
前記ゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、前記ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0022】
前記ゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0023】
[球状コア]
前記球状コアは、単層構造でも、2層以上の多層構造でもよい。前記球状コアは、単層構造であることが好ましい。単層構造の球状コアは、多層構造の界面における打撃時のエネルギーロスがなく、反発性が向上する。前記球状コアはゴム組成物から形成されていることが好ましい。
【0024】
前記球状コアの中心硬度Hoは、ショアC硬度で、35以上が好ましく、より好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上である。球状コアの中心硬度HoがショアC硬度で35以上であれば、軟らかくなりすぎず、反発性が良好となる。また、球状コアの中心硬度Hoは、ショアC硬度で65以下が好ましく、より好ましくは62以下であり、さらに好ましくは61以下である。前記中心硬度HoがショアC硬度で65以下であれば、硬くなり過ぎず、打球感が良好となる。
【0025】
前記球状コアの表面硬度Hsは、ショアC硬度で、75以上が好ましく、より好ましくは77以上、さらに好ましくは80以上であり、95以下が好ましく、より好ましくは93以下、さらに好ましくは91以下である。前記球状コアの表面硬度を、ショアC硬度で75以上とすることにより、球状コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記球状コアの表面硬度をショアC硬度で95以下とすることにより、球状コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0026】
前記球状コアの表面硬度Hsと中心硬度Hoとの硬度差(Hs−Ho)は、ショアC硬度で、15以上が好ましく、17以上がより好ましく、20以上がさらに好ましく、40以下が好ましく、38以下がより好ましく、35以下がさらに好ましい。前記硬度差が大きいと、高打出角および低スピンの飛距離が大きいゴルフボールが得られる。
【0027】
本発明のゴルフボールの球状コアは、コア半径を12.5%間隔で等分した9点で測定した硬度と、コア中心からの距離とをプロットしたときに、最小二乗法によって求めた線形近似曲線の決定係数Rが0.90以上であることが好ましい。Rが0.90以上であれば、コア硬度分布の直線性が高まり、ドライバースピン量が低下し、飛距離性能が向上する。
【0028】
球状コアの硬度は、球状コアの任意の半径を12.5%間隔で等分した9点でショアC硬度を測定する。すなわち、コア中心からの距離が0%(コア中心)、12.5%、25%、37.5%、50%、62.5%、75%、87.5%、100%(コア表面)の9点において、ショアC硬度を測定する。次に、上記のように測定されたショアC硬度を縦軸とし、コア中心からの距離(%)を横軸として、測定結果をプロットしてグラフを作成する。本発明では、このプロットから最小二乗法により求めた線形近似曲線のRが、0.90以上であることが好ましい。最小二乗法によって求めた線形近似曲線のRは、得られたプロットの直線性を指標するものである。本発明において、Rが0.90以上であれば、球状コアの硬度分布が略直線であることを意味する。硬度分布が略直線状である球状コアを用いたゴルフボールは、ドライバーショットのスピン量が低下する。その結果、ドライバーショットの飛距離が大きくなる。前記線形近似曲線のRは、0.92以上がより好ましい。直線性が高まることによって、ドライバーショットの飛距離がより大きくなる。
【0029】
前記線形近似曲線のRは、近似曲線から算出される硬度の値と実測値とのずれを示すものである。Rの値が1に近い程、ずれが小さいことを示す。前記線形近似曲線を式(1)で表した場合、Rは式(2)〜(4)で求められる。
【0030】
【数1】
【0031】
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは36.8mm以上、さらに好ましくは38.8mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.2mm以下であり、最も好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0032】
前記球状コアは、直径34.8mm〜42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、2.8mm以上がより好ましく、6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、6.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0033】
[カバー]
前記カバーは、1層でもよいし、2層以上であってもよい。前記カバーは、少なくとも一層が、第一樹脂組成物から形成されていることが好ましい。
【0034】
前記第一樹脂組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、35以上が好ましく、より好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上であり、65以下が好ましく、より好ましくは60以下、さらに好ましくは56以下である。スラブ硬度が、35以上であれば打撃時のボールの変形量が小さくなり、打撃のエネルギーを効率よくボールの加速に変換できるため、反発性がより向上し、65以下であれば打撃時の衝撃を抑制でき、打球感が良好となる。
【0035】
前記第一樹脂組成物は、曲げ剛性(M3−12)が、500kgf/cm(49.0MPa)以上が好ましく、より好ましくは600kgf/cm(58.8MPa)以上、さらに好ましくは700kgf/cm(68.6MPa)以上、特に好ましくは1000kgf/cm(98.1MPa)であり、6000kgf/cm(588MPa)以下が好ましく、より好ましくは5500kgf/cm(539MPa)以下、さらに好ましくは5000kgf/cm(490MPa)以下である。前記曲げ剛性が、500kgf/cm以上であれば、打撃時のボール変形が小さく、打撃のエネルギーを効率よくボールの加速に変換できるため、ゴルフボールが高反発となる。また、前記曲げ剛性が、6000kgf/cm以下であれば、柔軟性が良好となり、打撃時の衝撃を抑制でき、打球感が良好なゴルフボールが得られる。
【0036】
前記第一樹脂組成物は、スラブ硬度と曲げ剛性との比(スラブ硬度(ショアD)/曲げ剛性(kgf/cm))が、0.003以上が好ましく、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上であり、0.05以下が好ましく、より好ましくは0.045以下、さらに好ましくは0.043以下である。前記比が、0.003以上であれば柔軟性が高く、打撃時の衝撃を抑制できるため、打球感が良好となり、0.05以下であれば打撃時のボール変形が小さく、打撃のエネルギーを効率よくボールの加速に変換できるため、ゴルフボールが高反発となる。
【0037】
前記カバーの厚さは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.8mm以上であり、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚さが0.3mm以上であればカバーの性能がより発揮されるようになり、4.0mm以下であれば相対的にコアの直径が大きくなり、ゴルフボールの反発性がより良好となる。
【0038】
前記ゴルフボールは、2層以上のカバーを有することも好ましい。カバーを2層以上とすることで、ゴルフボールの物性をより容易に制御できるようになる。カバーを2層以上とする場合、最外層カバーを第二樹脂組成物から形成し、最外層カバー以外のカバーの少なくとも一層を前記第一樹脂組成物から形成することが好ましい。
【0039】
カバーを2層以上とする場合、前記第一樹脂組成物から形成されたカバーの厚さは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.8mm以上であり、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下である。カバーの厚さが0.3mm以上であれば、カバーの性能がより発揮されるようになり、2.0mm以下であれば相対的にコアの直径が大きくなり、ゴルフボールの反発性がより良好となる。
【0040】
前記第二樹脂組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、10以上が好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、45以下が好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下である。最外層カバーのスラブ硬度が、10以上であれば打撃時のボールの変形量が小さくなり、打撃のエネルギーを効率よくボールの加速に変換できるため、反発性がより向上し、45以下であれば打撃時の衝撃を抑制でき、打球感が良好となる。
【0041】
前記最外層カバーの厚さは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上であり、1.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.6mm以下である。最外層カバーの厚さが0.1mm以上であればカバーの性能がより発揮されるようになり、1.0mm以下であれば相対的にコアの直径が大きくなり、ゴルフボールの反発性がより良好となる。
【0042】
本発明のゴルフボールの構造は、球状コアと、球状コアを被覆するカバーとを有するものであれば特に限定されない。前記ゴルフボールとしては、例えば、単層構造の球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設されたカバーとを有する2ピースゴルフボール;2層構造の球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された単層のカバーとを有する3ピースゴルフボール;単層構造の球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された内層カバーと、前記内層カバーを被覆するように配設された外層カバーとを有する3ピースゴルフボール;2層構造の球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された内層カバーと、前記内層カバーを被覆するように配設された外層カバーとを有する4ピースゴルフボール;単層構造の球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された3層以上のカバーとを有する4ピース以上のゴルフボール;2層構造の球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された3層以上のカバーとを有する5ピース以上のゴルフボール;などが挙げられる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
【0043】
本発明のゴルフボールの構造としては、単層のコアと、内層カバーと、最外層カバーとを有し、前記内層カバーの少なくとも一層が前記第一樹脂組成物から形成されていることが好ましい。
【0044】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆する内層カバー3と、この内層カバー3を被覆する最外層カバー4を有する。この最外層カバー4の表面には、多数のディンプル41が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル41以外の部分は、ランド42である。このゴルフボール1は、最外層カバー4の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0045】
[コア材料]
前記球状コアには、公知のゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」という場合がある。)を用いることができ、例えば、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含むゴム組成物を用いることができる。
【0046】
((a)基材ゴム)
前記(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、反発に有利なシス−1,4−結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。
【0047】
((b)共架橋剤)
前記(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤として、ゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0048】
炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、亜鉛塩が好ましく、アクリル酸亜鉛が、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、より好ましい。なお、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0049】
ゴム組成物中における(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が15質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとするために、後述する(c)架橋開始剤の量を増加しなければならず、ゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。一方、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が50質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎて、ゴルフボールの打球感が低下するおそれがある。
【0050】
((b1)共架橋剤粉末)
前記(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩としては、(b1)粉末状の炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩(以下、「(b1)共架橋剤粉末」と称する場合がある。)が好ましい。
【0051】
前記(b1)共架橋剤粉末は、モード径が、10μmよりも大きく、50μm以下が好ましい。前記モード径は、体積基準の頻度分布グラフにおいて、極大値(最頻値)を有する粒子径である。前記モード径は、10μm超が好ましく、13μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。また、前記モード径は、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。モード径が前記範囲内であれば、混練性が良く、また、ゴルフボールの構成部材(特に、球状コアとする場合)の外剛内柔構造の度合がより高くなる。その結果、ドライバーショットのスピン量が低下し、飛距離がより大きいゴルフボールが得られる。前記(b1)共架橋剤粉末は、粒子径が大きいため、成形後のコア中でも粒子として残存する。つまり、球状コアが、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の粒子を含有する。
【0052】
前記(b1)共架橋剤粉末は、粒子径が6μm〜300μmの粒子の体積比率(V6-300)が、60%以上であることが好ましい。体積比率(V6-300)は、体積基準の累積分布グラフ(小粒子径側を0%とし、大粒子径側を100%とする)において、粒子径が300μmにおける累積%V(300μm)から粒子径が6μmにおける累積%V(6μm)を差し引いた値である。前記体積比率(V6-300)は、65%以上がより好ましい。体積比率(V6-300)が60%未満であると、粒子径が6μm未満の微粒子や、300μm超の粗粒子の割合が多くなる。その結果、ゴム組成物を均一に混練できないおそれがある。また、ゴム組成物から球状コアを形成したときに、外剛内柔度合が低下する。
【0053】
前記(b1)共架橋剤粉末は、d10が、6μm以上であることが好ましい。d10とは、体積基準の累積分布グラフにおいて、累積%が10%であるときの粒子径(μm)である。d10は、6.5μm以上がより好ましい。d10が6μm未満であると、粒子径が6μm未満の微粒子が多くなるので、外剛内柔度合が低下するからである。d10の上限は、特に限定されないが、15μmが好ましく、12μmがより好ましい。
【0054】
前記(b1)共架橋剤粉末は、粒子径が200μm以下の粒子の体積比率(V0-200)が75%以上であることが好ましい。体積比率(V0-200)は、75%以上が好ましく、76%以上がより好ましい。体積比率(V0-200)が、75%以上であれば、200μm超の粗粒子の体積比率が低くなるので、ゴム組成物を均一に混練しやすくなる。体積比率(V0-200)は、特に限定されないが、98%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
【0055】
前記(b1)共架橋剤粉末は、比表面積が0.1m/g以上が好ましく、より好ましくは0.2m/g以上、さらに好ましくは0.25m/g以上であり、1.5m/g以下が好ましく、より好ましくは1.0m/g以下さらに好ましくは0.8m/g以下である。比表面積が前記範囲内であれば、混練性が良く、また、ゴルフボールの構成部材(特に、球状コアとする場合)の外剛内柔構造の度合がより高くなる。
【0056】
前記モード径、d10、体積比率、比表面積は、下記の方法により測定または計算したものである。すなわち、ドライ粉末の試料をレーザー回折粒子径測定装置(株式会社セイシン企業製、LMS−2000e型)の乾式ユニット中にセットし、試料屈折率を1.52として測定する。得られた体積基準頻度分布グラフおよび累積分布グラフから、モード径および粒子の体積比率を求める。
【0057】
前記(b1)架橋剤粉末は、ゴム組成物中での加工性を改善するために、脂肪酸および/またはその塩で処理されていることがある。このような場合、本発明では、脂肪酸および/またはその塩で処理される前の(b1)架橋剤粉末が、上記の各条件を満足することが好ましい。
【0058】
前記(b1)架橋剤粉末は、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩を粉砕、分級することで得られる。粉砕方法は、特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、スタンプミルなどが挙げられる。また、分級方法としては、例えば、気流による分級、篩による分級などが挙げられる。
【0059】
前記(b1)架橋剤粉末は脂肪酸および/またはその塩で被覆されていることが好ましい。前記脂肪酸としては、特に限定されないが、炭素数が10〜30の脂肪酸が好ましく、炭素数が10〜20の脂肪酸がより好ましい。前記脂肪酸は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。前記脂肪酸および/またはその塩としては、ステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛が好適である。
【0060】
脂肪酸および/またはその塩で処理した(b1)架橋剤粉末中、脂肪酸および/またはその塩の含有率は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0061】
((c)架橋開始剤)
(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0062】
(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下である。0.2質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材が柔らかくなりすぎて、ゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材を適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減少する必要があり、ゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
【0063】
((d)金属化合物)
前記ゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、(d)金属化合物をさらに含有することが好ましい。(d)前記金属化合物としては、ゴム組成物中において(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。(d)前記金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。(d)前記金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。これらの(d)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
((e)カルボン酸および/またはその塩)
前記ゴム組成物は(e)カルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。前記(e)カルボン酸および/またはその塩を含有することで、得られる球状コアの外剛内柔度合を大きくできる。前記(e)カルボン酸および/またはその塩としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸および芳香族カルボン酸塩が挙げられる。前記(e)カルボン酸および/またはその塩は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。前記(e)カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1〜30のカルボン酸および/またはその塩が好ましく、より好ましくは炭素数が4〜30のカルボン酸および/またはその塩、さらに好ましくは炭素数が5〜25のカルボン酸および/またはその塩である。なお、(e)カルボン酸および/またはその塩には、共架橋剤として使用する(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は含まれないものとする。
【0065】
前記(e)脂肪族カルボン酸および/またはその塩としては、飽和脂肪酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩が挙げられる。前記飽和脂肪酸および/またはその塩としては、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸もしくはオレイン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。前記不飽和脂肪酸および/またはその塩としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸もしくはアラキドン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0066】
前記(e)芳香族カルボン酸および/またはその塩としては、特に、安息香酸、ブチル安息香酸、アニス酸(メトキシ安息香酸)、ジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリクロロ安息香酸、アセトキシ安息香酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、フランカルボン酸もしくはテノイル酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0067】
前記(e)カルボン酸および/またはその塩の含有量は、例えば、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であって、40質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。(e)カルボン酸および/またはその塩の含有量が0.5質量部以上であれば、球状コアの外剛内柔度合が大きくなり、40質量部以下であれば、コア硬度の低下が抑制され、反発性が良好となる。
【0068】
(e)カルボン酸および/またはその塩として、炭素数が1〜14のカルボン酸および/またはその塩を使用する場合は、(a)基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.2質量部以上、さらに好ましくは1.4質量部以上であって、20質量部以下が好ましく、より好ましくは18質量部以下であり、さらに好ましくは16質量部以下である。(e)カルボン酸および/またはその塩として、炭素数が15〜30のカルボン酸および/またはその塩を使用する場合は、(a)基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは6質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であって、40質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0069】
なお、共架橋剤として使用される化合物の表面は、ゴムへの分散性を向上するためにステアリン酸亜鉛等で処理されている場合がある。このようなステアリン酸亜鉛等で表面処理された共架橋剤を使用する場合、表面処理剤であるステアリン酸亜鉛等の量が(e)カルボン酸および/またはその塩の含有量に含まれるものとする。例えば、ステアリン酸亜鉛の表面処理量が10質量%であるアクリル酸亜鉛を25質量部用いた場合には、ステアリン酸亜鉛の量が2.5質量部であり、アクリル酸亜鉛の量が22.5質量部とし、(e)カルボン酸および/またはその塩の含有量として、2.5質量部を計上する。
【0070】
(f)有機硫黄化合物
前記ゴム組成物は、さらに(f)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。前記(f)有機硫黄化合物を含有することで、得られる球状コアの反発性をより高めることができる。前記(f)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン類、ジチオカルボン類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類などを挙げることができる。球状コアの硬度分布が大きくなるという観点から、(f)有機硫黄化合物としては、チオール基(−SH)を有する有機硫黄化合物、または、その金属塩が好ましく、チオフェノール類、チオナフトール類、または、これらの金属塩が好ましい。前記(f)有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0071】
前記(f)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4−ジクロロチオフェノール、2,6−ジフルオロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、2,6−ジブロモチオフェノール、2,6−ジヨードチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、1−チオナフトール、2−チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0072】
前記(f)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.0質量部以下である。前記(f)有機硫黄化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、得られるゴルフボールの反発性がより向上し、5.0質量部以下であれば、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなりすぎず、反発性の低下が抑制される。
【0073】
前記ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。
【0074】
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0075】
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
【0076】
前記青色顔料の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であって、0.2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以下である。0.001質量部未満では、青みが不十分で、黄色味がかった色に見え、0.2質量部を超えると、青くなりすぎて、鮮やかな白色外観ではなくなる。
【0077】
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、構成部材全体の硬度を高めるものと考えられる。前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0078】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0079】
前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および、必要に応じてその他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0080】
前記ゴム組成物は、架橋ゴム粉末を含有してもよい。架橋ゴムとは、鎖状ゴム分子どうしを架橋し、塑性変形が起こらないように三次元網目構造を形成したゴムをいう。鎖状ゴム分子の架橋は、共架橋剤、有機過酸化物、硫黄などを用いて行うことができる。架橋ゴム粉末は、前記ゴム組成物を用いて作製してもよいし、ゴルフボールのコアや、コア作製時に発生した端材を粉砕したゴム粉末を使用してもよい。
【0081】
前記架橋ゴム粉末の硬度は、ショアC硬度で、15以上が好ましく、より好ましくは18以上、さらに好ましくは20以上であり、65以下が好ましく、より好ましくは60以下、さらに好ましくは58以下である。前記架橋ゴム粉末の体積平均粒子径は、200μm以上が好ましく、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは400μm以上であり、800μm以下が好ましく、より好ましくは750μm以下、さらに好ましくは700μm以下である。
【0082】
前記架橋ゴム粉末の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、40質量部以下が好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0083】
前記球状コアは、混練後のゴム組成物を金型内で成形することにより得ることができる。混練後のゴム組成物を成形する温度は特に限定されないが、例えば、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましく、170℃以下が好ましい。成形温度が170℃を超えると、コアの表面硬度が低下する傾向がある。また、成形時の圧力は、2.9MPa〜11.8MPaが好ましい。成形時間は、10分間〜60分間が好ましい。
【0084】
[カバー材料]
前記カバーは、樹脂成分を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。前記カバー用樹脂組成物が含有する樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0085】
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0086】
前記アイオノマー樹脂の具体例としては、三井・デュポン・ポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)」、デュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)」、エクソンモービル化学(株)から市販されている「アイオテック(Iotek)(登録商標)」などが挙げられる。
【0087】
前記カバー用樹脂組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。アイオノマー樹脂を使用する場合には、熱可塑性スチレンエラストマーを併用することも好ましい。カバー用樹脂組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0088】
前記カバー用樹脂組成物は、さらに、白色顔料(酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0089】
[第一樹脂組成物]
前記第一樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)両性界面活性剤、(C)脂肪酸を含有することが好ましい。
【0090】
((A)熱可塑性樹脂)
前記(A)熱可塑性樹脂は、(A1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物(以下、「(A1)二元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。)、および/または、(A2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物(以下、「(A2)三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。)を含有することが好ましい。(A1)二元系アイオノマー樹脂および(A2)三元系アイオノマー樹脂は、共重合体が有するカルボキシ基を金属イオンにより中和したアイオノマー樹脂である。
【0091】
前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどが挙げられ、エチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
【0092】
α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、炭素数が3〜8個α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸またはマレイン酸のアルキルエステルがより好ましく、特にアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。エステルを構成するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが挙げられる。
【0093】
前記(A1)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(A2)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0094】
前記(A1)二元系アイオノマー樹脂を構成する二元共重合体、および、(A2)三元系アイオノマー樹脂を構成する三元共重合体は、共重合体中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、4質量%以上が好ましく、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、4質量%以上であればアイオノマー樹脂がより高反発となり、30質量%以下であればアイオノマー樹脂の柔軟性が向上する。
【0095】
前記(A1)二元系アイオノマー樹脂、および/または、(A2)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記(A1)二元系アイオノマー樹脂、および、(A2)三元系アイオノマー樹脂は、Na、Mg2+、Ca2+、および、Zn2+よりなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンにより中和されていることが好ましい。
【0096】
前記(A1)二元系アイオノマー樹脂、および、(A2)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上であり、100モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。一方、中和度が100モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、前記アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×共重合体中の中和されているカルボキシル基のモル数/共重合体中のカルボキシル基の総モル数
【0097】
前記(A1)二元系アイオノマー樹脂、および、(A2)三元系アイオノマー樹脂は、予め中和されたアイオノマー樹脂を用いてもよいし、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、および/または、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体と、後述する(E)金属化合物とを混合して用いてもよい。また、(A1)二元系アイオノマー樹脂および(A2)三元系アイオノマー樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記(A1)二元系アイオノマー樹脂としては、ハイミラン(登録商標)1555(Na)、1557(Zn)、1605(Na)、1706(Zn)、1707(Na)、AM7311(Mg)、AM7329(Zn)(三井・デュポン・ポリケミカル社製);サーリン(登録商標)8945(Na)、9945(Zn)、8140(Na)、8150(Na)、9120(Zn)、9150(Zn)、6910(Mg)、6120(Mg)、7930(Li)、7940(Li)、AD8546(Li)(デュポン社製);アイオテック(登録商標)8000(Na)、8030(Na)、7010(Zn)、7030(Zn)(エクソンモービル化学社製)などが挙げられる。
【0099】
前記(A2)三元系アイオノマー樹脂としては、ハイミランAM7327(Zn)、1855(Zn)、1856(Na)、AM7331(Na)(三井・デュポン・ポリケミカル社製);サーリン6320(Mg)、8120(Na)、8320(Na)、9320(Zn)、9320W(Zn)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)(デュポン社製);アイオテック7510(Zn)、7520(Zn)(エクソンモービル化学社製)などが挙げられる。
【0100】
前記二元共重合体としては、ニュクレル(登録商標)N1050H、N2050H、N1110H、N0200H(三井・デュポン・ポリケミカル社製);プリマコール(登録商標)5980I(ダウ・ケミカル社製)などが挙げられる。前記三元共重合体としては、ニュクレルAN4318、AN4319(三井・デュポン・ポリケミカル社製)、プリマコールAT310、AT320(ダウ・ケミカル社製)などが挙げられる。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0101】
前記(A)熱可塑性樹脂は、前記(A1)二元系アイオノマー樹脂、(A2)三元系アイオノマー樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。この場合、前記(A)熱可塑性樹脂中の(A1)二元系アイオノマー樹脂、および/または、(A2)三元系アイオノマー樹脂の合計含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。前記(A)熱可塑性樹脂として、前記(A1)二元系アイオノマー樹脂、および/または、(A2)三元系アイオノマー樹脂のみを含有することも好ましい。
【0102】
前記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性オレフィン共重合体、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリジエン、熱可塑性ポリエーテルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0103】
((B)両性界面活性剤)
(B)両性界面活性剤は、(A1)二元系アイオノマー樹脂および/または(A2)三元系アイオノマー樹脂のイオン会合体に取り込まれ、イオン会合体を微分散化してエチレン鎖の結晶化を阻害したり、イオン会合体による主鎖の拘束を弱めたりすると考えられる。これらの作用により、樹脂組成物は、分子鎖の運動性が高くなり、柔軟性を維持したまま反発性が高くなる。
【0104】
前記(B)両性界面活性剤は、分子内にカチオン性部位とアニオン性部位とを含有し、水にとけて表面張力を低下させる作用を有するものであれば特に限定されない。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、イミダゾリウムベタイン型、アルキルスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型などのベタイン型両性界面活性剤;アミドアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩;アルキルアミンオキシド;β−アラニン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤;スルホベタイン型両性界面活性剤;ホスホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。(B)両性界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
両性界面活性剤の具体例としては、ジメチルラウリルベタイン、オレイルジメチルアミノ酢酸ベタイン(オレイルベタイン)、ジメチルオレイルベタイン、ジメチルステアリルベタイン、ステアリルジヒドロキシメチルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジヒドロキシメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ミリスチルジヒドロキシメチルベタイン、ベヘニルジヒドロキシメチルベタイン、パルミチルジヒドロキシエチルベタイン、オレイルジヒドロキシメチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドアルキルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシアルキルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドアルキルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドジアルキルヒドロキシアルキルスルホベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、アルキルジアミノアルキルグリシン、アルキルポリアミノアルキルグリシン、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、N,N−ジメチルオクチルアミンオキサイド、N,N-ジメチルラウリルアミンオキサイド、N,N-ジメチルステアリルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
【0106】
(B)前記両性界面活性剤の配合量は、(A1)二元系アイオノマー樹脂および(A2)三元系アイオノマー樹脂の合計100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、90質量部以下が好ましく、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下である。(B)両性界面活性剤の配合量が前記範囲内であれば、界面活性剤分子がアイオノマー樹脂のイオン会合体に取り込まれやすくなり、分子鎖の運動性が高くなり、柔軟性を維持したまま反発性が高くなるからである。
【0107】
((C)脂肪酸)
(C)脂肪酸を含有することにより、樹脂組成物の流動性が向上し、薄い層の形成が容易となる。前記(C)脂肪酸としては、特に限定されず、飽和脂肪酸、あるいは、不飽和脂肪酸のいずれも使用できる。また、前記(C)脂肪酸は、直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸のいずれであってもよい。前記(C)脂肪酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
前記(C)脂肪酸の炭素数は、4以上が好ましく、より好ましくは12以上、さらに好ましくは16以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは28以下、さらに好ましくは26以下である。
【0109】
前記飽和脂肪酸としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸などが挙げられる。
【0110】
不飽和脂肪酸としては、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸、ペンタコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘプタコセン酸、オクタコセン酸、ノナコセン酸、トリアコンテン酸などが挙げられる。
【0111】
前記(C)脂肪酸の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上であり、150質量部以下が好ましく、より好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下である。(C)脂肪酸の配合量が60質量部以上であれば、樹脂組成物の流動性がより向上し、120質量以下であれば脂肪酸のブリードアウトを抑制できる。
【0112】
前記(C)脂肪酸は、脂肪酸の塩を使用してもよい。脂肪酸塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの二価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
【0113】
((D)金属化合物)
前記第一樹脂組成物は、さらに(D)金属化合物を含有してもよい。(D)金属化合物を含有することにより、(A1)二元系アイオノマー樹脂、(A2)三元系アイオノマー樹脂の中和度を一層高めることができ、樹脂組成物の反発性がより向上する。
【0114】
前記(D)金属化合物としては、カルボキシル基を中和することができるものであれば、特に限定されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。
【0115】
(E)金属化合物の配合量は、(A1)二元系アイオノマー樹脂、(A2)三元系アイオノマー樹脂の中和度や後述する樹脂組成物の総中和度に応じて適宜調整すればよい。
【0116】
前記第一樹脂組成物は、総中和度が80モル%超であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、160モル%以下が好ましく、より好ましくは150モル%以下、さらに好ましくは140モル%以下である。前記中和度が80モル%超であれば、イオン会合体の量が多くなり、樹脂組成物の反発性がより向上し、160モル%以下であれば、樹脂組成物の流動性がより良好となる。なお、前記樹脂組成物の中和度は、下記式で定義される。
【0117】
【数2】
[式中、Σ(陽イオン成分のモル数×陽イオン成分の価数)は、(A)成分の陽イオン成分のモル数とその陽イオン成分の価数との積、(B)成分の陽イオン成分のモル数とその陽イオン成分の価数との積、および、(C)成分の陽イオン成分のモル数とその陽イオン成分の価数との積の合計である。なお、樹脂組成物が(D)成分を含有する場合、この成分が有する陽イオン形成基又は陽イオン成分のモル数とその陽イオン形成基又は陽イオン成分の価数との積が加算される。
式中、Σ(樹脂組成物が有する陰イオン成分のモル数×陰イオン成分の価数)は、(A)成分のカルボキシル基のモル数、(B)成分のカルボキシル基のモル数および、(C)成分のカルボキシル基のモル数の合計である。]
【0118】
なお、前記式において、陽イオン成分、陽イオン形成基、カルボキシル基及び陰イオン形成基には、イオン化していない前駆体を含めるものとする。陽イオン成分量、陽イオン形成基量、陰イオン形成基は、例えば、中和滴定により求めることができる。
【0119】
例えば、樹脂組成物が、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有する場合、Σ(陽イオン成分のモル数×陽イオン成分の価数)は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が有する金属イオンのモル数とその金属イオンの価数との積、および、(B)成分が有する陽イオン形成基のモル数とその陽イオン形成基の価数との積の合計であり、Σ(樹脂組成物が有する陰イオン成分のモル数×陰イオン成分の価数)は、(A)成分、(B)成分および(C)成分が有するカルボキシル基の総モル数である。
【0120】
((F)フィラー)
前記第一樹脂組成物は、さらに(F)フィラーを含有してもよい。前記(F)フィラーとしては、従来公知のフィラーを使用できる。前記(F)フィラーとしては、(F1)有機化層状珪酸塩、(F2)カーボンナノチューブ、(F3)表面に極性官能基を有する炭素質フィラーが好ましい。
【0121】
((F1)有機化層状珪酸塩)
層状珪酸塩とは、層状の構造を有する珪酸塩である。有機化層状珪酸塩とは、層状珪酸塩がその結晶層間に本来有している金属陽イオンの一部または全部を、有機オニウムイオンに交換したものをいう。
【0122】
前記層状珪酸塩としては、層状の構造を有する珪酸塩であれば特に限定されず、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、クリソタイル、リザーダイト、アメサイトなどのカオリナイト族の層状珪酸塩;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト族の層状珪酸塩;二八面体型バーミキュライト、三八面体型バーミキュライトなどのバーミキュライト族、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライトなどの雲母族の層状珪酸塩;マーガライト、クリントナイト、アナンダイトなどの脆雲母族の層状珪酸塩;クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイトなどの緑泥石族の層状珪酸塩などが挙げられる。これらの層状珪酸塩は、天然のものでも、合成のものでもいずれであっても良く、単独または2種以上の混合物として使用することができる。これらの中でも、層状珪酸塩としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト族の層状珪酸塩;二八面体型バーミキュライト、三八面体型バーミキュライトなどのバーミキュライト族、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライトなどの雲母族の層状珪酸塩が好ましく、特にモンモリロナイト、雲母族の層状珪酸塩が好適である。
【0123】
前記層状珪酸塩を構成する各層(一次粒子)は、厚さが10nm以下のナノサイズの微粒子であることが好ましく、その長さと幅はそれぞれ、1μm以下の平板な形状を有することが好ましい。
【0124】
前記有機化層状珪酸塩中の有機物量は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、70質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。前記有機物量が10質量%以上であれば樹脂組成物中の有機化層状珪酸塩の分散性がより良好となり、70質量%以下であれば有機化層状珪酸塩による耐久性向上効果および反発性向上効果がより大きくなる。前記有機物量は、1000℃における強熱減量である。
【0125】
層状珪酸塩の有機化処理に用いられる有機オニウムイオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機オニウムイオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオン、有機フォスフォニウムイオン、有機スルフォニウムイオンなどが挙げられる。
【0126】
有機アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのいずれでも良い。1級アンモニウムイオンとしては、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられる。2級アンモニウムイオンとしては、メチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。3級アンモニウムイオンとしては、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0127】
4級アンモニウムイオンとしては、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン;トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン;ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0128】
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸などから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。
【0129】
これらのアンモニウムイオンの中でも、アンモニウムイオンの分子内の炭素数の合計が11〜30の4級アンモニウムイオンが層状珪酸塩の分散性、イオン結合の形成性の点から特に好適である。具体的には、オクタデシルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムなどである。
【0130】
有機化層状珪酸塩は、交換性の金属イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させたアンモニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
【0131】
((F2)カーボンナノチューブ)
前記(F2)カーボンナノチューブの短手方向の平均径は、0.02μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.3μm以下が好ましく、0.25μm以下がより好ましい。カーボンナノチューブの短手方向の平均径が前記範囲内であれば、ソフトな打球感を確保しながら、反発性に優れるゴルフボールが得られやすくなる。
【0132】
前記(F2)カーボンナノチューブの長手方向の平均長さは、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。カーボンナノチューブの長手方向の平均長さが前記範囲内であれば、ソフトな打球感を確保しながら、反発性に優れるゴルフボールが得られやすくなる。
【0133】
なお、カーボンナノチューブの平均長さおよび平均径は、画像イメージング法で測定することができる。具体的には、粒子の顕微鏡写真を画像解析ソフト(例えば、日機装(株)のViewtrac(登録商標))で解析し、粒子のある特定方向の個数基準のメジアン平均(d50)サイズである。
【0134】
前記(F2)カーボンナノチューブの平均アスペクト比は、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、125以下が好ましく、50以下がより好ましい。前記(F2)カーボンナノチューブの平均アスペクト比が、前記範囲内であれば、ソフトな打球感を確保しながら、反発性に優れるゴルフボールが得られやすくなる。なお、本発明において、平均アスペクト比とは、フィラーの長手方向の平均長さと短手方向の平均径との比(長手方向の平均長さ/短手方向の平均径)を意味するものとする。
【0135】
((F3)表面に極性官能基を有する炭素質フィラー)
前記(F3)表面に極性官能基を有する炭素質フィラーとしては、極性官能基が炭素質フィラーに直接結合しているものや、炭素質フィラーの表面が極性官能基を有する重合体で被覆されたもののいずれも使用できる。前記(F3)炭素質フィラーの材料としては、天然グラファイト、人工グラファイト、炭素繊維、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、グラファイトが好ましく、特にグラフェン、グラファイト薄片が好ましい。なお、グラフェンとは、グラファイトの一原子層からなるシートである。
【0136】
前記極性官能基としては、カルボキシ基(−COOH)、ヒドロキシ基(−OH)、アミノ基(−NH)、チオール基(−SH)、スルホン基(−SOH)、ホスホン基(−PO(OH))などが挙げられる。
【0137】
前記(F3)炭素質フィラーの短手方向の平均径は、0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、100μm以下である。前記(F3)炭素質フィラーの短手方向の平均径が0.1μm以上であればゴルフボール用樹脂組成物の曲げ剛性がより向上し、100μm以下であればゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、かつ、柔軟性が良好となる。
【0138】
前記(F3)炭素質フィラーの長手方向の平均径は、0.2μm以上、より好ましくは3.0μm以上であり、300μm以下である。前記(F3)炭素質フィラーの長手方向の平均径が0.2μm以上であればゴルフボール用樹脂組成物の曲げ剛性がより向上し、300μm以下であればゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、かつ、柔軟性が良好となる。
【0139】
前記(F3)炭素質フィラーの平均アスペクト比は、2.0以上、より好ましくは5.0以上であり、好ましくは600以下である。前記(F3)炭素質フィラーの平均アスペクト比が2.0以上であればゴルフボール用樹脂組成物の曲げ剛性がより向上し、600以下であればゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、かつ、柔軟性が良好となる。
【0140】
前記(F3)炭素質フィラーの平均厚さは、好ましくは1.0nm以上であり、好ましくは30nm以下である。前記(F3)炭素質フィラーの平均厚さが1.0nm以上であればゴルフボール用樹脂組成物の曲げ剛性がより向上し、30nm以下であればゴルフボール用樹脂組成物の柔軟性が良好となる。
【0141】
前記短手方向の平均径、長手方向の平均径、厚さは、粒子に外接する直方体の辺長で与えられるものである。すなわち、粒子に外接する直方体を考えたとき、最も長い軸を有する長軸を長径(長さ)、最も短い軸を有する短軸を厚さ(高さ)とし、この直方体の幅を短径(幅)とする。(F3)炭素質フィラーの個数基準の短手方向の平均径、長手方向の平均径、厚さは、走査型電子顕微鏡(フィリップス社製、XL30ESEM)を用いて、50個以上の粒子について短径、長径、厚さを測定し、これらの平均値を求めた。
【0142】
樹脂組成物中における(F)フィラーの含有量は、(A)成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。(F)フィラーの含有量が、前記範囲内であれば、添加による物性改良効果が良好であり、かつ靭性低下が抑えられるからである。樹脂組成物中が(F)フィラーを含有することにより、曲げ弾性率が向上しドライバーショットのスピン量が低減するため、ドライバーショットの飛距離を大きくすることができる。
【0143】
カバー用樹脂組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
【0144】
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0145】
カバーが成形されたゴルフボールは、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【実施例】
【0146】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0147】
[評価方法]
(1)粒子径測定
ドライ粉末の試料をレーザー回折粒子径測定装置(株式会社セイシン企業製、LMS−2000e型)の乾式ユニット中にセットし、試料屈折率を1.52として粒子径を測定した。得られた体積基準頻度分布グラフ(対数プロットの粒子径0.02μm〜2000μmを100分割して得られる頻度分布)からモード径を求めた。また、同様にして得られた体積基準累積分布グラフから、d10、粒子径が6μm〜300μmの粒子の体積比率(V6-300)、粒子径が200μm以下の粒子の体積比率(V0-200)、および、比表面積をそれぞれ求めた。なお、累積%V(300μm)としては、粒子径が300μm以上の最も近い測定値を採用し、累積%V(6μm)としては、粒子径が6μm以下の最も近い測定値を採用した。粒子径が200μm以下の粒子径の体積比率%は、粒子径が200μm以下の最も近い測定値を採用した。比表面積は、粒子形状を球状と仮定し、各粒子の粒子径から算出した。
【0148】
(2)架橋ゴム粉末の硬度(ショアC)
ゴム粉末の作製に使用したゴムシート(厚さ2mm)を、3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore C」を用いた。
【0149】
(3)コア硬度(ショアC)
コアの表面部において測定した硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心、および、中心から所定の距離において硬度を測定した。なお、コア硬度は、コア断面の中心から所定の距離の4点で硬度を測定して、これらを平均することにより算出した。硬度は、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて測定した。検出器は、「Shore C」を用いた。
【0150】
(4)圧縮変形量(mm)
コアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアが縮む量)を測定した。
【0151】
(5)スラブ硬度(ショアD)
カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0152】
(6)曲げ剛性(kgf/cm
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形(190℃、10分間)により、厚み約2mm、幅20mm、長さ100mmのテストピースを作製した。このテストピースを、温度23±2℃、相対湿度50±5%で、14日間保存した。作製したテストピースについて、オルゼン剛性度試験機(東洋精機製作所製)を用いて所定の曲げ角度における荷重目盛を測定し、横軸に曲げ角度(°)、縦軸に荷重目盛の読みをプロットし、その一次近似曲線の傾きを求めた。測定条件は、温度23±2℃、相対湿度50±5%、曲げ速度60°/min、支点間距離50mmとした。曲げ剛性は、前記傾きの値に8.7078を乗じ、試験片の厚み(cm)の三乗で除することで算出した。なお、曲げ剛性は曲げ角度3°、6°、9°および12°における荷重目盛を測定した。
【0153】
(7)圧縮試験
ゴルフボールの圧縮試験は、恒温槽を備えた精密万能試験機(島津製作所製、AGX−100KN)を用いて行った。なお、支持板は、材質がダイス鋼(SKD11、焼き入れ品)、寸法が直径100mm、厚さ45.5mmである。加圧板は、材質がダイス鋼(SKD11、焼き入れ品)、寸法が直径100mm、厚さ30mmである。また、測定温度は、恒温槽内の温度を−70℃に設定した。
試験は、まず加圧板で5〜10Nの力を加えたときの加圧板の位置を初期位置とし、そのときのゴルフボールの高さを測定した。次に、加圧板を速度30mm/分で圧縮率7%(ゴルフボールの高さが初期の93%となる位置)または圧縮率19%(ゴルフボールの高さが初期の81%となる位置)まで加圧し、同じ速度で加圧板を初期位置に戻した。この一連の操作から、図12に示すような力−たわみ曲線を作図した。
反発相当エネルギー率は、下記式により算出した。
反発相当エネルギー率(%)=(反発相当エネルギー/全印加エネルギー)×100
反発相当エネルギー=面積(dcbed)
全印加エネルギー=面積(oabeo)
ここで、面積(dcbed)は、力−たわみ曲線のdcbedで囲まれた面積であり、面積(oabeo)は、力−たわみ曲線のoabeoで囲まれた面積である。
【0154】
(8)反発係数
ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/sまたは50m/sの速度で衝突させ、衝突前後の前記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および質量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの反発係数とした。反発係数は、表5〜7において、ゴルフボールNo.7との差で示した。
【0155】
(9)ドライバースピン量(rpm)
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード40m/sでゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン速度を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。ドライバー飛距離およびスピン量は、表5〜7において、ゴルフボールNo.7との差で示した。
【0156】
[アクリル酸亜鉛の合成]
ZDA−1
ジャケット付ニーダーに溶媒1140gと、酸化亜鉛5モルを加えて撹拌し、懸濁液を作製した。ニーダー内部の温度を5〜40℃に保ちながら、この懸濁液にアクリル酸10モルを約3時間かけて徐々に添加し、反応させて、ニーダー内部の温度を40℃にした。添加終了後、さらに40℃で4時間反応を続けた。その後、減圧下20Torrに達するように50℃まで徐々に昇温させながら、反応生成水および溶媒の留去乾燥を5時間かけて行い、アクリル酸亜鉛5モルを得た。これを気流分級して、モード径22.9μm、6μm〜300μmの粒子の体積比率が約70%のアクリル酸亜鉛(ZDA−1)を得た。
気流分級には、以下の装置を用いた。
供給機;テーブルフィーダーZGJ−200
分級機;クラッシールN−5(株式会社セイシン企業製)
捕集機;バグフィルターTD−270(株式会社セイシン企業製)
【0157】
ZDA−2
前記で得られた分級前のアクリル酸亜鉛を、気流分級して、モード径20.0μm、6μm〜300μmの体積比率が約93%のアクリル酸亜鉛(ZDA−2)を得た。
気流分級には、以下の装置を用いた。
供給機;テーブルフィーダーZGJ−200
分級機;クラッシールN−5(株式会社セイシン企業製)
捕集機;バグフィルターTD−270(株式会社セイシン企業製)
【0158】
ZDA−3
ZDA−1で得られた分級前のアクリル酸亜鉛を気流分級して、モード径が18.7μm、6μm〜300μmの粒子の体積比率が約85%のアクリル酸亜鉛(ZDA−3)を得た。
気流分級には、以下の装置を用いた。
供給機;テーブルフィーダーZGJ−200
分級機;クラッシールN−01(株式会社セイシン企業製)
捕集機;バグフィルターTD−270(株式会社セイシン企業製)
【0159】
ZDA−1〜ZDA−3の性状を表1にまとめた。なお、参考として、サンセラーSRおよびZD−DA90Sの性状も合わせて示した。サンセラーSRは、ステアリン酸でコーティングされたアクリル酸亜鉛である。ZD−DA90Sは、アクリル酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との混合物である。
【0160】
【表1】
【0161】
得られたZDA−1〜ZDA−3のそれぞれに対して、ステアリン酸亜鉛を添加してかき混ぜて、アクリル酸亜鉛粒子の表面をステアリン酸亜鉛(ステアリン酸亜鉛処理量:10質量%)で処理した。
【0162】
[架橋ゴム粉末の調製]
表2に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、170℃、20分間熱処理することにより、ゴムシート(厚さ2mm)を得た。得られたゴムシートを、凍結粉砕機を用いて粉砕して体積平均粒子径が400μm〜700μmの架橋ゴム粉末を得た。なお、得られたゴムシートは均一な硬度を有していた。
【0163】
【表2】
BR730:JSR社製、ハイシスポリブタジエン(シス−1,4−結合含有量=96質量%、1,2−ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
アクリル酸亜鉛:日本触媒社製、ZN−DA90S(10質量%ステアリン酸亜鉛混合品)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D(ジクミルパーオキサイド)」
2−チオナフトール:東京化成工業社製、2−チオナフトール
ゴム粉末:ゴム組成物から形成されたゴルフボールのコアを粉砕したもの
【0164】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表3に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径39.8mmの球状コアを得た。なお、コアNo.a〜cは、成形後の球状コア内部にZDA−1〜ZDA−3に由来するアクリル酸亜鉛の粒子が残存していた。
【0165】
【表3】
BR730:JSR社製、ハイシスポリブタジエン(シス−1,4−結合含有量=96質量%、1,2−ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
サンセラーSR:三新化学工業社製、アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸コーティング品)
ZN−DA90S:日本触媒社製、アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸亜鉛混合品)
2−チオナフトール:東京化成工業社製
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
オクタン酸亜鉛:三津和化学薬品社製
ステアリン酸亜鉛:和光純薬社製
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D(ジクミルパーオキサイド)」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」、最終的に得られるゴルフボールの質量が40.0gとなるように調整した。
【0166】
(2)カバーの作製
次に、表4に示した配合のカバー用材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150〜230℃に加熱された。得られたカバー用組成物を上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して内層カバーを形成した。次に、カバー用組成物を内層カバー上に射出成形して最外層カバーを形成した。
【0167】
【表4】
【0168】
ニュクレル(登録商標)N1560:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体(酸成分含有率:15質量%、メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):60g/10min、ショアD硬度:53)
オレイン酸:東京化成工業社製
オレイルベタイン:ルーブリゾール社製「Chembetaine OL」から水分と塩分を除去したもの
水酸化マグネシウム:和光純薬工業社製
エスベンNO12:ホージュン社製、4級アンモニウム化処理モンモリロナイト(4級アンモニウムカチオン:ジメチルジステアリルアンモニウムとオレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムとの混合(質量比1:1)、有機物量:38.8質量%)
エスベンNX:ホージュン社製、4級アンモニウム化処理モンモリロナイト(4級アンモニウムカチオン:ジメチルジステアリルアンモニウム、有機物量:41.8質量%)
エスベンNO12S:ホージュン社製、4級アンモニウム化処理モンモリロナイト(4級アンモニウムカチオン:オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、有機物量:31.5質量%)
エスベンE:ホージュン社製、4級アンモニウム化処理モンモリロナイト(4級アンモニウムカチオン:トリメチルステアリルアンモニウム、有機物量:25.6質量%)
TPP処理クニピア:クニミネ工業社製、有機化モンモリロナイト(有機カチオン:テトラフェニルホスホニウム)
ベンゲルA:ホージュン社製、モンモリロナイト
VGCF−H:昭和電工社製、カーボンナノチューブ(短手方向の平均径:0.15μm、長手方向の平均長さ:7μm、平均アスペクト比:46.7)
Rap dGO:ニシナマテリアル社製、酸化グラフェン(平均短径:2μm、平均長径:20μm、平均アスペクト比:10、平均厚さ:5nm、官能基種類:カルボキシ基、ヒドロキシ基、官能基量:1.2mmol/g)
ハイミラン(登録商標)1601:三井・デュポン・ポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和アイオノマー樹脂
ハイミラン1557:三井・デュポン・ポリケミカル社製、亜鉛中和アイオノマー樹脂
エラストラン(登録商標)NY82A10:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
【0169】
各ゴルフボールの評価結果を表5〜7に示した。
【0170】
【表5】
【0171】
【表6】
【0172】
【表7】
【0173】
ゴルフボールNo.1〜5,11〜21,24〜25は、反発相当エネルギー率(R40)が65.50%〜99.0%であり、反発相当エネルギー率(R50)が20.0%〜70.0%である。これらのゴルフボールはいずれも、ゴルフボールNo.7に比べて、反発係数(50m/s)が同等以上であり、反発係数(40m/s)が優れていた。ゴルフボールNo.6,8〜10,22,23は、反発相当エネルギー率(R40)が65.50%未満である。これらのゴルフボールは、ゴルフボールNo.7に比べて、反発係数(40m/s)が向上していない。
【符号の説明】
【0174】
1:ゴルフボール、2:球状コア、3:内層カバー、4:最外層カバー、41:ディンプル、42:ランド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12