【実施例】
【0192】
実施例1.IgG編成抗体の発現に向けたベクターの構築
結合体(例えば、抗体、タンパク質、またはペプチド)の遺伝子的な選択をもたらすために、その結合体をコードする遺伝子を導入し、外来性プロモーターからのその遺伝子発現を推進するか、または例えば、内在性プロモーターといった、細胞DNAに既に存在するプロモーターの下流への導入遺伝子の組込みを指示することによってその遺伝子発現を推進する必要がある。抗体は、最も一般に使用されるクラスの結合体に相当するものであり、異なる形態における発現に向けて編成することができる。下記の実施例では、我々は、scFvが、Fcドメインに融合されている(scFv−Fc)単一遺伝子形式の発現について説明している。我々は、ヒトIgG2分子として編成された抗体の発現についても例示している。高等真核生物などの産生細胞において、IgG編成抗体またはFAb編成抗体を発現するためには、別々の重鎖及び軽鎖を発現することが必要である。これは、それぞれの鎖をコードする別々のプラスミドを導入するか、または単一プラスミドにそれらを導入することによって実施できる。単一プラスミド内の2つの鎖は、マルチシストロン性の単一mRNAから発現させることができる。単一メッセージから異なるタンパク質を発現させるには、二次性の下流位置での翻訳開始を可能にする内部リボソーム進入(IRE)配列などの要素が必要となる。あるいは、ウイルス2A配列などの翻訳の停止/開始を促進する配列要素を使用することができる[119]。
【0193】
あるいは、複数のプロモーターを使用して、単一プラスミドから複数の異なるタンパク質を発現させることができる。
図1a及び
図1bは、異なるベクター骨格(pDUAL及びplNT3)内の2つの類似発現カセットの構成を示し、当該発現カセットは、分泌IgG編成抗体の発現に向けて開発したものである。こうした発現カセットは、プロモーター配列及びポリA配列などの標準要素の遺伝子合成及びポリメラーゼ連鎖反応での増幅の組み合わせを使用して創出した。抗体重鎖(pBIOCAM1−NewNot)及び抗体軽鎖(pBIOCAM2−pEF)の発現に向けて、pCMV/myc/ER(
図1c、Life Technologies)内で、第1の別々のプラスミドを創出した。pBIOCAM2−pEFに由来する要素(pEFプロモーター、軽鎖遺伝子、ポリA部位を含む)をpBIOCAM1−NewNot)へとクローン化して、pDUALを創出した。示されている例は、D1.3[120]と呼ばれるヒト化抗リゾチーム抗体に由来するVHドメイン及びVLドメインを含み、pDUAL−D1.3及びplNT3−D1.3と称す。
図1aに示されるpDUAL D1.3の要素は、pCMV/myc/ER(Life Technologies カタログ番号V82320
図1c)に由来するプラスミド骨格のEcoR1及びBGHポリA部位の間に存在する。
【0194】
同様に、別々の軽鎖カセット及び重鎖カセットをpSF−pEF(Oxford Genetics OG43)及びpSF−CMV−F1−Pac1(Oxford Genetics OG111)へとそれぞれ導入して、plNT1及びplNT2を創出した。これらを、plNT2のCMVプロモーターの上流に位置する軽鎖カセット(pEFプロモーター、軽鎖遺伝子、及びポリA部位を含む)をクローン化することによって、組み合わせて、plNT3を創出した。
図1bにおいて示されるplNT3−D1.3の要素は、プラスミドpSF−CMV−F1−Pac1(
図1d、Oxford Genetics OG111)内に示される第1のBgl2及びSbf1の間にクローン化されている。
【0195】
サイトメガロウイルスの最初期プロモーター(CMVプロモーター)は、強力なプロモーターであり、重鎖の発現を推進するために使用した。pDUAL D1.3にも、CMVプロモーターのすぐ下流に、アデノウイルス2の3分節系リーダー(tripartite leader)(TPL)及び増進主要後期プロモーター(enhanced major late promoter)(enh MLP)が組込まれている[121]。伸長因子1アルファタンパク質は、ほとんどの真核細胞において一様かつ豊富に発現しており、そのプロモーター(pEFプロモーター)は、導入遺伝子の発現推進に向けて、一般に使用される[122]。pDUAL−D1.3及びplNT3−D1.3において、pEFプロモーターは、抗体軽鎖の発現推進に使用されている。ウシ成長ホルモン(BGHポリA)を起源とするポリアデニル化部位は、それぞれの発現カセットの末端に位置している。
【0196】
小胞体、(及び最終的には培養上清)における別々の重鎖及び軽鎖の分泌は、2つの異なるリーダー配列によって指示される。軽鎖の発現は、BM40リーダー配列によって指示される[123]。この配列には、Nhe1クローン化部位及びNot1クローン化部位が続き、当該クローン化部位は、VL遺伝子のインフレームクローン化を可能にし、続いて当該VL遺伝子は、ヒトCカッパ遺伝子に融合される。重鎖の分泌は、マウスVH遺伝子を起源とするイントロンによって分断されたリーダーによって指示されている(pCMV/myc/ERにおいてみられるように)。リーダーには、抗体VH遺伝子のインフレームクローン化を可能にするNco1部位及びXho1部位が続き、その後にコドン最適化IgG2遺伝子が続いている。ヒト化D1.3抗体[120]のVL遺伝子及びVH遺伝子を、pDUAL−D1.3内及びplNT3−D1.3内のNhe1/Not1部位及びNco1/Xho1部位にそれぞれクローン化した。
【0197】
哺乳類ディスプレイに向けて、こうしたプラスミドの膜繋留型を創出した。pDUAL−D1.3を、Bsu36I(IgG2の重鎖遺伝子のCH3ドメインを切断する)及びBstZ171で消化することによってプラスミドpD1を創出した。当該BstZ171は、SV40ポリA領域の後のネオマイシン耐性カセット骨格を切断するものである(
図1c)。したがって、これによって、CH3ドメイン及びネオマイシン発現カセット全体のほとんどが除去される。CH3ドメインは、互換性Bsu36I末端及びBstZ171末端を有する合成挿入断片によって置き換えられている(
図1eに示される)。合成挿入断片を設計し、抗体CH3ドメイン末端の終始コドンを、スプライスドナー及びイントロンで置き換えた。当該スプライスドナーは、エクソンまで生じる、CH3終端のスプライシングを引き起こすものであり、当該エクソンは、ヒトPDGF受容体膜貫通ドメイン[84]の最初の5個の細胞内残基、終始コドン、及び追加のスプライスドナーをコードするものである。これには、追加のイントロン及びスプライスアクセプターが続き、その後に、単一アミノ酸向けのコドン、そして終始コドンが続く(
図1e)。膜貫通ドメインをコードするエクソンと隣接する2つの合成イントロンは、それらの内部にROX認識部位が位置するように設計した。ROX部位は、Dreリコンビナーゼによって認識され、こうした部位を含むDNA間の組換えを引き起こす[88]。膜貫通ドメインをコードするエクソンと隣接する2つのROX部位を含めることで、Roxリコンビナーゼをコードする遺伝子の遺伝子導入によってこのエクソンが除去される可能性が創出される。こうすることで、分泌抗体産物の創出が期待されるであろう。
【0198】
図2は、得られた二重プロモーター抗体発現プラスミドの配列を示し、当該発現プラスミド(これ以後、pD1−D1.3(配列識別番号:1と称す)は、ヒト化D1.3抗リゾチーム抗体を発現するものである。抗リゾチーム結合特異性は、D1.3[120]に由来するVH配列及びVL配列を、それぞれNco/Xho1及びNhe1/Not1の制限酵素部位の間に含めることによって組込んだ。配列は、EcoR1部位からBstZ171までが示されている。ECoR1部位及びBstZ171部位を超える、ベクター骨格由来の配列は、
図1cに示されているとおりである。
【0199】
実施例2.抗体カセットのAAVS遺伝子座に対する標的化に向けたベクター(pD2)の構築
部位特異的ヌクレアーゼを使用したゲノム内の切断は、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)を介した、異種性DNAの挿入を促進するものである。タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット12C(PPP1R12C)遺伝子の第1イントロンを標的とするヌクレアーゼで、ヒトHEK293細胞を切断した。この遺伝子座は、アデノ随伴ウイルスの共通組込み部位として同定され、AAVS部位と称される(
図3a)。AAVS部位は、ヒト細胞における異種性遺伝子の挿入及び発現に向けた「セーフハーバー(safe harbour)」遺伝子座であると考えられている[124]。
【0200】
ゲノム内の部位特異的切断に続いて、相同組換えを使用して、タンパク質発現カセットの組込みを促進することが可能である。これを実施するためには、ゲノム切断部位のいずれかの部位にみられる配列に相同である領域に、発現カセットを隣接させる必要がある。AAVS遺伝子座への組込みを指示するために、AAVS遺伝子座の5’から意図する切断部位までの804bpの区間をPCRで増幅し、5’末端及び3’末端にそれぞれEcoR1部位及びMfe1部位を創出した。抗体カセットの標的化に向けた左ホモロジーアームに相当するこの増幅産物をpD1のEcoR1部位へとクローン化し、5’末端にEcoR1部位を再構築した。右ホモロジーアームに向けて、切断部位の3’側にあたる、AAVS遺伝子座の836bpの区間をPCRで増幅し、Bstz171部位を両終端に創出し、これをpD1のBstz171へとクローン化した。構築物は、
図3bに示されており、得られた構築物(pD2)の配列は、
図3cに示されている。
【0201】
AAVS左ホモロジーアームのクローン化の間に、3’末端にNsi1及びPac1の制限酵素部位も挿入した。続いて、これらの部位を使用して、ポリA部位が付随するブラストサイジン遺伝子が続く合成イントロンをクローン化した。ブラストサイジン遺伝子は、プロモーターを欠いているものの、スプライスアクセプター部位が先行しており、当該スプライスアクセプター部位は、AAVS遺伝子座に由来する上流エクソンとのインフレーム融合を創出するものである(
図3a及び
図3b)。AAVS遺伝子座への組込みが生じれば、プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の発現を引き起こす。pD2と呼ばれるこの最終構築物の配列は、
図3cに示されている。
【0202】
pEFプロモーター、D1.3軽鎖、ポリA領域、CMVプロモーター、D1.3重鎖、代替スプライス部位、及びポリA部位を包含する抗体カセットの配列が、
図2に示されている。繰り返しを避けるために、この配列は、
図3cでは、区間標識して「D1.3抗体発現カセット」と示されている。
【0203】
実施例3.細胞表面での抗体発現及び抗体結合に向けた、IgG構築物のAAVS TALEN指向型組込み
Freestyle培地で増殖したHEK293F細胞(Life Technologies)に、AAVS指向型TALENベクターペアの存在下または非存在下で、pD2−D1.3DNAを遺伝子導入した。AAVS TALENペア(「AAVS オリジナル(original)」)は、以前に説明されており[125]、下記の配列を認識する。
左TALEN:5’(T)CCCCTCCACCCCACAGT(配列識別番号:70)
スペーサー5’GGGGCCACTAGGGAC(配列識別番号:71)
右TALEN:5’AGGATTGGTGACAGAAAAの相補鎖(配列識別番号:72)(すなわち、5’TTTTCTGTCACCAATCCT(配列識別番号:73)
【0204】
代替として、より効率的なAAVS標的化TALENペアが同定され、後の実験に使用した(pZT−AAVS1 L1 TALE−N及びpZT−AAVS1 R1 TALE、カタログ番号GE601A−1 System Biosciences)。このペアは、同一部位を認識し(しかし、上に括弧付きで示される最初の「T」残基は認識しない)、「AAVS−SBI」TALENペアと称される。
【0205】
0.5x10
6個細胞/mlで細胞を播種し、次の日に、1:2(w/w)の比で添加されたDNA:ポリエチレンイミン(PolyPlus)を使用して、10
6個細胞/mlで遺伝子導入した。0.6μg/mlのpD2を細胞に遺伝子導入し、対象としてpcDNA3.0(0.6μg/ml)または左右の「オリジナルAAVS」TALENプラスミドの組み合わせ(それぞれ0.3μg/ml)のいずれかを同時導入した。実験における遺伝子導入対照として、CMVプロモーターからEGFPを発現するpD3(以下参照)を含め、遺伝子導入効率は35%であった。5μg/mlのブラストサイジンを添加したFreestyle培地(Life Technology)を使用した懸濁培養において、細胞を選択した。
【0206】
抗体発現が、細胞表面で起きたかを決定するために、下記のプロトコールに従って抗ヒトFc抗体で細胞を染色した。
1.遺伝子導入の16日後に、ブラストサイジンで選択した集団に由来する0.5〜1x10
6個の細胞を4℃で2分間遠心(200〜300xg)。
2.洗浄用緩衝液(PBS中0.1%のBSA Gibco番号10010)1mlで細胞を洗浄し、細胞を4℃で2分間遠心(200〜300xg)。
3.染色緩衝液(PBS中1%のBSA)100μlに細胞を再懸濁し、蛍光色素複合化抗体を5〜10ul添加。抗体は、フィコエリトリンで標識された抗ヒトIgG Fc(クローンHP6017、カタログ番号409304、Biolegend)またはフィコエリトリンで標識されたマウスIgG2a、κアイソタイプ対照(カタログ番号400214、Biolegend)を使用。4℃で30分を超える時間、暗所でインキュベート。
4.洗浄緩衝液1mlで2回洗浄し、洗浄緩衝液500ulに再懸濁。
5.7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD)を50ug/mlで含む細胞生存率測定用染色溶液(番号00−6993−50 eBioscience)を5ul添加して、死細胞を同定。
6.(Beckton Dickinson FACS II)フローサイトメトリーで細胞を分析。
【0207】
図4は、AAVS標的化TALENの存在下でpD2−D1.3を遺伝子導入すると、陽性率が86%であり、陽性率が1.5%であったpD2−D1.3単独と比較して、抗体を発現する細胞の集団が顕著に多く存在したことを示す。
【0208】
標識抗原に対する結合性を評価することによって、表面に発現した抗リゾチーム抗体の機能性を決定した。ニワトリ卵白リゾチーム(Sigma:L6876)は、Lightning−Link Rapid conjugation system(Dylight 488、Innova Biosciences:322−0010)を使用して、下記のとおり標識した。
1.リゾチーム100ul(PBS100ulに200ugを溶解)にLL−Rapid Modifier試薬を10ul添加し、穏やかに混合。
2.Lightning−Link(商標)Rapid混合液に、混合液を添加し、ピペッティングして穏やかに再懸濁。
3.室温で15〜30分間暗所で混合液をインキュベート。
4.反応液にLL−Rapid Quencher試薬を10ul添加し、穏やかに混合。
5.4℃で保存。リゾチーム−Dy488の最終濃度は、1.6μg/μlである。
6.染色当たり、リゾチーム−Dy488を6μl(約10ug)使用。
7.上記のとおり染色、洗浄、及びフローサイトメトリーを実施。
【0209】
分析によって、pD2−huD1.3を遺伝子導入した細胞の86%が、標識HELに結合した(M1ゲートによって判断)のに対し、遺伝子導入無しの細胞では、0.29%であったことが示されている(
図5)。
【0210】
実施例4.部位特異的ヌクレアーゼ(AAVS指向型TALEN)は、ドナーDNAの組込みを増進する
遺伝子導入細胞もプレートに播種し、ブラストサイジンで選択して、プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の発現が活性化した細胞の数を決定した。遺伝子導入の24時間後に、0.25x10
6個細胞/10cmペトリ皿(組織培養処理済)で細胞を播種し、10%のウシ胎仔血清(10270−10
6、Gibco)及び1%のMinimal Essential medium non−essential amino acid(MEM_NEAA 番号11140−035 Life Technologies)において増殖させた。24時間後に5ug/mlのブラストサイジンを添加し、2日おきに培地を交換した。9日後、pD2プラスミドを受け入れなかった細胞はすべて死滅した。12時間後に、2%のメチレンブルー(50%メタノール中)でプレートを染色した。正確に定量化するにはコロニー密度が高すぎたが、AAVS TALENの存在下では、ブラストサイジン耐性コロニーの数は増加しており、これは、AAVS遺伝子座への標的組込みが起きたことを示唆している。より正確な定量化に向けて、DNA量を減らして導入した。
【0211】
10
6個の細胞当たり、50ng、200ng、または400ngのいずれかの量のpD2−D1.3を使用して、前述のとおり、AAVS TALEN(存在する場合は、TALENはそれぞれ0.3ug/ml、表1A)の存在下または非存在下で、遺伝子導入を実施した。対照プラスミドであるpcDNA3.0で総DNAインプットを調整して、10
6個の細胞当たり1.2ugのDNAとした。遺伝子導入の24時間後、10cmのディッシュに0.25x10
6個の細胞を播種し、播種の24時間後に、7.5ug/mlのブラストサイジンを添加した。ブラストサイジンでの選択の10日後に、2%のメチレンブルー(50%メタノール中)でコロニーを染色した。結果は、
図6に示され、表1Aにまとめられている。これによって、AAVS指向型TALENをコードするDNAを同時導入すると、ブラストサイジン耐性コロニーの数が約10倍に増加することが示された。
【0212】
AAVS遺伝子座を標的とする「AAVS オリジナル」TALENペアと、「AAVS SBI」TALENペアとの比較を実施した。表1Bは、「AAVS SBI」TALENペアを使用することで、ブラストサイジン耐性コロニーの数が増加することを示す。
【表1】
【0213】
本明細書で、我々は、細胞表面での抗体発現(実施例3)またはプロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の活性化(実施例4)のいずれかを使用して、TALENヌクレアーゼ添加の効果を比較した。ヌクレアーゼ指向型組込みの利点は、ブラストサイジン耐性コロニーに対する効果と比較して、抗体発現を測定すると、より明らかである。可能性のある1つの説明は、ブラストサイジン存在下における生存をもたらすために必要な発現レベルは、表面上でのIgG2発現を検出するために必要な発現レベルと比較して、顕著に低くあり得るというものである。したがって、プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の誤った組込み/スプライシングが生じると、ブラストサイジン抵抗遺伝子の低レベル発現をもたらし得、これによって、顕著な抗体発現を伴わず、ブラストサイジン耐性を有するコロニーの数が増加した基礎環境が作りだされている。
【0214】
実施例5.AAVS TALENを使用した組込みの正確性の決定
組込みの正確性を調べるために、実施例4/表1Aの実験からコロニーを選定し(二連かつ非染色のプレート由来)、増殖させ、こうした細胞に由来するゲノムDNAをPCRの鋳型として使用した。ゲノムDNAの調製に向けて、細胞を回収し、溶解緩衝液(10mMのトリスCl、pH=8.0、50mMのEDTA、200mMのNaCl、0.5%のSDS、0.5mg/mLでプロテイナーゼK添加(溶解直前に添加)700μLに再懸濁した。その後、溶解緩衝液に再懸濁した細胞を微量遠心管に移し、60℃で約18時間保った。翌日、ゲノムDNAを沈殿させるために、可溶化液にイソプロパノールを700μL添加した。13,000rpmで微量遠心管を20分間遠心した。その後、ゲノムDNAのペレットを70%のエタノールで洗浄し、13,000rpmでさらに10分間遠心した。遠心後、ゲノムDNAのペレットに触れないようにしながら、上清を注意深く分離した。その後、10mMのトリス(pH8.0)及び1mMのEDTAを含む緩衝液100μLにゲノムDNAのペレットを再懸濁してから、微量のエタノールを除去するために、蓋を開けたままにして60℃で30分間保った。この溶液100μLに、RNAseAを添加し(最終濃度20μg/mL)、60℃で約1時間インキュベートした。nanodrop分光光度計(Nanodrop)を使用して、ゲノムDNAの濃度を測定した。
【0215】
正しい組込みを同定するために、左右のホモロジーアームの域を超えて、AAVSゲノム遺伝子座にハイブリッド形成するPCRプライマーを設計した。これらのプライマーは、挿入断片特異的プライマーとペアにした。5’末端側のプライマーは下記のとおりである。
AAVS−左−アーム−接合部−PCR−フォワード(9625) 5’CCGGAACTCTGCCCTCTAAC(配列識別番号:74)
BSD_接合部 PCR−リバース(9626):5’TAGCCACAGAATAGTCTTCGGAG(配列識別番号:75)
【0216】
正しい組込みが起きた場合、これらのプライマーによって、1.1kbの増幅産物が得られる。AAVS指向型組込みから生じたクローンの8/9から、正しいサイズのバンドが得られた(
図7a、
図7b)。TALEN無しで得られた2つのブラストサイジン耐性コロニーからは、増幅産物は得られず(
図11a)、これは、組込みが無作為であることを意味している。3’末端側のプライマーは下記のとおりである。
ドナー_プラスミド_配列_PDGFRTM−2 フォワード 5’ACACGCAGGAGGCCATCGTGG(配列識別番号:76)
AAVS1_右アーム_接合部_PCR_リバース 5’TCCTGGGATACCCCGAAGAG(配列識別番号:77)
【0217】
これらのプライマーによって、組込みが正しければ、1.5kbの増幅産物が得られる。AAVS指向型組込みから生じたクローンの7/9から、正しいサイズのバンドが得られた。TALEN無しで得られた2つのブラストサイジン耐性コロニーからは、増幅産物は得られなかった(
図11b)。したがって、ブラストサイジン耐性細胞の大部分が、AAVS遺伝子座への正しい組込みから生じている一方で、TALEN非存在下で生じたブラストサイジン耐性コロニーは、正しく組込まれていないものである。
【0218】
実施例6.ファージディスプレイ及び哺乳類ディスプレイを介した選択からの選択集団に由来するscFvディスプレイライブラリーの構築
scFv編成可溶性抗体は、これまでに、ベクターpBIOCAM5−3Fから発現されており、この場合、CMVプロモーターが発現を推進し、ベクターによって、抗体遺伝子に対するC末端融合パートナーが与えられ、当該C末端融合パートナーは、ヒトFc、His6、及び3xFLAGからなるものである[105、126]。これを改変し、ベクターpBIOCAM5newNotを創出し、抗体のFc領域内にNot1部位を埋め込んだ(
図8に示されるとおり)。これを開始点として使用し、細胞表面に繋留されたscFv−Fc融合体の発現に向けて、ベクターpD6(
図8)を創出した。プライマー(2598及び2619)を設計し、pBIOCAM5newNotからのCMVプロモーター−scFv−Fc発現カセットの増幅を可能にした。プライマー2598は、CMVプロモーターの上流でハイブリッド形成すると共に、末端にPac1部位(下線が引かれている)が配置されている。
2598:TTTTTT[TTAATTAA]GATTATTGACTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTC(配列識別番号:78)
【0219】
プライマー2619は、Fcドメインの末端近くでハイブリッド形成し、イントロンの開始部位に、スプライスドナー部位及びPme1部位(下線が引かれている)を導入する。
2619:TTTTTTG[TTTAAA]CTTACCTTGGATCCCTTGCCGGGGCTCAGGCTCAGGGAC(配列識別番号:79)
【0220】
得られたPCR産物は、pD2(
図3)のPac1部位及びPme1部位と互換性である。
pD2をPac1及びPme1で消化することによって、pEFプロモーター−リーダー−−左鎖−CMVプロモーター−リーダー−重鎖が除去される。
Pac1/Pme1で切断したPCR産物のクローン化によって、CMVプロモーター−リーダー−Nco1/Not1部位−ヒトFcが差し込まれる。
【0221】
この様式でのクローン化は、下流の膜貫通ドメインまでのスプライシングに向けて、適切にscFv−Fcカセットを配置するものであり、当該膜貫通ドメインは、pD2において、細胞表面でのIgG提示に向けて既に説明したとおりである。最終的なベクターであるpD6は、
図8に示され、Nco1部位からPme1部位までのD6の配列が示されている。
【0222】
ベータ−ガラクトシダーゼ(Rockland、カタログ番号B000−17)及びCD229(R and D Systems、カタログ番号898−CD−050)を抗原として使用して、McCaffertyファージディスプレイライブラリー[7]を使用したファージディスプレイでの選択を実施した。以前に説明したように、使用した選択及びサブクローン化の方法は、基本的なものである[6、7、118、127]。ベータ−ガラクトシダーゼでの1回または2回のラウンドの選択、及びCD229での2回のラウンドの選択から生じた集団に由来するscFv遺伝子をPCRによって回収した。プライマーM13Leadseqは、scFv遺伝子に先行する細菌リーダー配列内でハイブリッド形成し、Notmycseqは、ファージディスプレイベクターにおいてscFv遺伝子に続くmycタグでハイブリッド形成するものである[127]。
M13Leadseq(配列識別番号:80)
AAA TTA TTA TTC GCA ATT CCT TTG GTT GTT CCT
Notmycseq(配列識別番号:81)
GGC CCC ATT CAG ATC CTC TTC TGA GAT GAG
【0223】
Nco1及びNot1でPCR産物を消化し、消化挿入断片をゲルで精製した。細菌発現プラスミドであるpSANG10−3FのNoco1部位及びNot1部位へと消化産物を連結し、説明したとおりに、抗体を発現させ、選別した[127]。ベータ−ガラクトシダーゼ及びCD229での2ラウンドの選択後に、ELISAによって、40/190(21%)及び35/190(18%)のクローンが陽性であることが明らかとなった。
【0224】
Nco/Notで切断した挿入断片550ngについてもpD6(2.4μg)のNco1及びNot1部位へと連結し、scFvと、ヒトIgG2のFc領域との融合体を発現する構築物を創出した。エレクトロコンピテントなNEB5alpha細胞(New England Biolabs、カタログ番号C2989)へと連結DNAを形質転換し、それぞれの集団で、サイズが2〜3x10
7個クローンであるライブラリーを生成させた。DNAを調製し、10
6個の細胞当たりドナーDNA(pD6ライブラリー)を0.3μg使用して、上記のように、Freestyle培地において増殖した100mlのHEK293細胞へと同時導入した。「AAVS−SBI」TALEN(pZT−AAVS1 L1 TALE−N及びpZT−AAVS1 R1 TALE、カタログ番号GE601A−1 System Biosciences)をそれぞれ0.5μg使用して、細胞に同時導入した。
【0225】
遺伝子導入の24時間後に、バルク培養容積を2倍にし、24時間後に、ブラストサイジン(10μ/ml)を添加した。3〜4日ごとに培地を新しくし、6日後にブラストサイジン濃度を20μg/mlまで増加させた。
【0226】
ライブラリーサイズを決定するために、遺伝子導入の24時間後に、10cmのペトリ皿(組織培養処理済)に20,000個の細胞を播種し、10%のウシ胎仔血清(10270−106、Gibco)及び1%のMinimal Essential medium non−essential amino acid(MEM_NEAA 番号11140−035 Life Technologies)において増殖させた。さらに24時間後に、10μg/mlのブラストサイジンを添加し、培地を2日おきに交換した。8日後に、2%のメチレンブルー(50%のメタノール中)でプレートを染色した。表2に結果を示す。これは、3つ集団で、約3x10
6個のクローン(遺伝子導入細胞の3%に相当する)のライブラリーが得られたことを示すものである。
【表2】
【0227】
10〜20x10
6個の細胞の標識及び流動選別のプロトコールを以下に示す。遺伝子導入後の13日目に、インキュベーション容積を減らし(示されているものの1/10の試薬容積)、試料当たり10
6個の細胞のみを使用して、最初の分析を実施した。
【0228】
図9は、遺伝子導入後13日目に、少なくとも43〜46%の細胞が、細胞表面にscFv−Fc融合体を発現しており、これは、FITCまたはフィコエリトリンのいずれかで標識された抗Fc抗体を使用して検出できることを示している。FITCまたはフィコエリトリンのいずれかで標識されたストレプトアビジンを使用して、ビオチン化ベータガラクトシダーゼの結合もこの集団内で検出される。1ラウンドまたは2ラウンドのファージディスプレイよる選択から生じたアウトプット集団から得られたライブラリーを使用し、ストレプトアビジン−FITCを使用したところ、それぞれ11.8%及び39%の細胞が、抗体発現及び抗原結合の両方で陽性であった。2ラウンドのファージディスプレイから得られたCD229に向けたものでは、66%の細胞が、scFv−Fcに陽性であり、こうした細胞の24%が、CD229結合に対して陽性であった(総集団の15%)。
【0229】
遺伝子導入後20日目に、下記のプロトコールに従って(ビオチン化抗原/フィコエリトリンで標識されたストレプトアビジン及びFITCで標識された抗ヒトFcを使用して)、細胞を標識した。
1.細胞を回収、洗浄し、試料当たり15〜20x10
6個に調整。室温、250gで4分間細胞を遠心沈降し、1mlのPBS+0.1%のBSA(4℃)で細胞を洗浄し、室温、250gで4分間細胞を遠心沈降してから、1mlのPBS+0.1%BSAに再懸濁。
2.ビオチン化抗原を添加し、最終濃度を100nMとして、4℃で30分間インキュベート。
3.5分間、1500rpmの遠心によって、1mlの0.1%のBSAで細胞を2回洗浄。
4.以下のいずれかを添加し、暗所で15分間保持。
10μlのFITC標識ストレプトアビジン(1μg/ml、Sigma カタログ番号S3762)及び20μlのフィコエリトリン標識抗ヒトFc(200μg/ml、BioLegend カタログ番号409304)、
または
20μlのフィコエリトリン標識ストレプトアビジン(200μg/ml、Biolegend カタログ番号405203)及び20μlのFITC標識抗ヒトFc(200μg/ml、Biolegend カタログ番号409310)PBS+1%のBSA
5.5分間、1500rpmの遠心によって、1mlの0.1%のBSAで細胞を2回洗浄。
6.500μlの氷冷したPBS+1%BSAに再懸濁。
7.生存率測定用染色に向けて、バイアル当たり20μlの7AADを添加。
【0230】
選別に向けて、細胞サイズ、粒度、パルス幅及び生存率(7−AAD染色による、前方散乱ならびに側方散乱に基づき、細胞をゲートした。結果を
図9c及び
図9fに示す。2ラウンドのCD229(CD229 R2)での選択、及び1ラウンドのβ−ガラクトシダーゼでの選択(β−galR1)から生じたアウトプット集団から得られたライブラリーで、合計1千万個の細胞を選別し、それぞれ3.1%及び7%の二重陽性である細胞を回収した。
【0231】
β−galR1から得られた細胞から選択した細胞をさらに20日間増殖させ、再度分析した(
図9h)。これは、今や大部分の細胞が、scFv−Fcを発現し、β−ガラクトシダーゼに結合することを示すものである。この図は、遺伝子導入の42日後に、非選択集団内の二重陽性である細胞の割合が減少していないことも示す(
図9k)。
【0232】
150,000〜10
6個の選別された細胞からゲノムDNAを調製した。ゲノムDNAは、前述の方法またはGenElute mammalian genomic DNA miniprep kit(Sigma G1N10)を使用して調製した。
scFv遺伝子は、下記のプライマーを使用して、ゲノムDNAからPCRで増幅した。
2623(配列識別番号:82)
TAAAGTAGGCGGTCTTGAGACG
2624(配列識別番号:83)
GAAGGTGCTGTTGAACTGTTCC
【0233】
0.3uMのそれぞれのプライマー及び3%のDMSOを含む製造者の緩衝液中で、Phusionポリメラーゼ(NEB カタログ番号M0532S)を使用して、PCR反応を実施した。50ulの反応において、100〜1000ngのゲノムDNAを鋳型として使用した。98℃で10秒、55℃で25秒、72℃で45秒のサイクルを30回実施した。これによって、1.4kBの増幅産物が得られ、これをNco1及びNot1で消化した。約750〜800bpのバンドが生成し、これをゲルで精製してからpSANG10へとクローン化した。連結したDNAをBL21細胞(Edge Bio Ultra BL21(DE3)コンピテント細胞、カタログ番号45363)へと形質転換した。このようにして、選別した集団から得られたscFv断片を細菌において発現させることができ、以前に説明したとおりである[7、127]。
【0234】
抗体遺伝子を単離して、代替のベクター/宿主の組み合わせにおいて発現するというものの代わりとして、単一細胞クローン化後の選択細胞、またはポリクローナル抗体混合物を生成させるための選別集団を使用して選択した細胞のいずれかから直接的に分泌抗体を得ることが可能である。これを例示するために、培養7日後に、選別細胞(βgalR1細胞由来)から培養上清を取得した。これは、βガラクトシダーゼで被覆したプレートを使用したELISAにおいて陽性であることが示された(実施例13及び
図19b参照のこと)。
【0235】
実施例7.ファージディスプレイから選択した集団に由来するIgGディスプレイライブラリーからの構築及び選択
実施例6に記載したように、scFvをコードするDNA断片を生成させた。当該DNA断片は、β−ガラクトシダーゼ及びCD229に対する、抗体ファージディスプレイでの選択の1ラウンド目及び2ラウンド目のアウトプットに相当するものである。scFv集団は、実施例14及び下記に詳細に示される方法に従って、IgG形式へと変換した。
【0236】
ヒトカッパ軽鎖定常ドメイン(C
L)、ポリアデニル化配列(pA)、CMVプロモーター、及びマウスV
H鎖に由来するシグナルペプチドをコードするDNA挿入断片(
図21bにおいて示されるpD2のNot1部位と、Nco1部位との間に相当する)を、プライマー2595(GAGGGCTCTGGCAGCTAGC)(配列識別番号:84)及びプライマー2597(TCGAGACTGTGACGAGGCTG)(配列識別番号:85)を使用して、プラスミドpD2からPCRで増幅した。PCR反応は、それぞれのプライマーを0.25μMで含む製造者の緩衝液中で、KODホットスタートポリメラーゼ(Novagen カタログ番号71086−4)を使用して実施した。50ulの反応において、10ngのpD2プラスミドDNAを鋳型として使用した。98℃で10秒、55℃で25秒、72℃で40秒のサイクルを25回実施した。これによって、1.8kBの増幅産物が得られ、これをNco1及びNot1で消化し、ゲルで精製した(
図20a、
図21bではC
L−pA−CMV−SigP挿入断片として示される)。
【0237】
実施例6に記載したように、scFvをコードするDNA断片を生成させた。当該DNA断片は、β−ガラクトシダーゼ及びCD229に対する、抗体ファージディスプレイでの選択の1ラウンド目及び2ラウンド目のアウトプットに相当するものである。
図20bは、β−ガラクトシダーゼ及びCD229に対して選択したscFv集団を1%のアガロースゲルでの電気泳動によって分離したものを示す。
【0238】
NcoI/NotIで消化したscFv挿入断片(1μg)と、NcoI/NotIで消化したC
L−pA−CMV−SigP挿入断片(1μg)と、を総容積が40μlの製造者の緩衝液中で、T4 DNAリガーゼ(1.5μl、Roche、10−481−220−001)と共にインキュベートすることによって、scFv挿入断片と、C
L−pA−CMV−SigP挿入断片とのライゲーションを実施し、
図21cに示される「小環」を形成させた。16℃で16時間、ライゲーション物をインキュベートし、スピンカラムによって精製してから、NheI及びXhoIで消化して得られた2.6kbの産物(
図21dに示される)を、1%のアガロースゲルでの電気泳動によって分離精製した(
図20c)。
【0239】
V
L−C
L−pA−CMV−SigP−V
H(0.5μg)をコードする、
図21dに示されるDNA挿入断片と、NheI/XhoIで消化し、ゲルで精製したベクターpD2(0.7μg)(
図21e)と、を総容積が40μlである製造者の緩衝液中で、T4 DNAリガーゼ(1.5μl、Roche、10−481−220−001)を使用して連結し、
図21fに示される標的化ベクターを生成させた。これは、IgGとして編成された抗体集団をコードしており、β−ガラクトシダーゼまたはCD229に対する抗体ファージディスプレイでの選択の1ラウンド目または2ラウンド目を起源とするものである。16℃で16時間、ライゲーション物をインキュベートし、スピンカラムで精製してからHPLCグレードの水で溶出した。
【0240】
エレクトロコンピテントなNEB5alpha細胞(New England Biolabs、カタログ番号C2989)へと連結DNAを形質転換し、それぞれの集団で、サイズが1〜4x10
5個クローンであるライブラリーを生成させた。DNAを調製し、10
6個の細胞当たりドナーDNA(pD6ライブラリー)を0.3μg使用して、上記のようにFreestyle培地において増殖した100mlのHEK293細胞へと同時導入した。それぞれ0.5μgの「AAVS−SBI」TALEN(pZT−AAVS1 L1 TALE−N及びpZT−AAVS1 R1 TALE、カタログ番号GE601A−1 System Biosciences)を細胞に同時導入した。
【0241】
遺伝子導入の24時間後に、バルク培養容積を2倍にし、24時間後に、ブラストサイジン(10μ/ml)を添加した。3〜4日ごとに培地を新しくし、6日後にブラストサイジン濃度を20μg/mlまで増加させた。
【0242】
ライブラリーサイズを決定するために、遺伝子導入の24時間後に、10cmのペトリ皿(組織培養処理済)に250,000個の細胞を播種し、10%のウシ胎仔血清(10270−106、Gibco)及び1%のMinimal Essential medium non−essential amino acid(MEM_NEAA 番号11140−035 Life Technologies)において増殖させた。さらに24時間後に、10μg/mlのブラストサイジンを添加し、培地を2日おきに交換した。8日後に、2%のメチレンブルー(50%のメタノール中)でプレートを染色した。表3に結果を示す。これは、3つ集団で、5x10
5〜9x10
5個のクローン(遺伝子導入細胞の0.5%〜0.9%に相当する)のライブラリーが得られたことを示すものである。
【表3】
【0243】
β−ガラクトシダーゼでの1ラウンドまたは2ラウンドの選択に由来するアウトプットを遺伝子導入した細胞のバルク集団を、前述のように、ブラストサイジン含有培地中で選択した。19日後に、実施例6に記載されるように、10〜20x10
6個の細胞を標識し、流動選別を実施した。選別細胞を17日間増殖させ、フローサイトメトリーで再分析した(
図10)。これによって、今や大部分の細胞が、IgG発現及びβ−ガラクトシダーゼに対する結合に対して、二重陽性であることを示された。
【0244】
選別細胞からゲノムDNAを調製し、PCRによって、IgG挿入断片をコードするDNAを単離した。KODポリメラーゼ(Merck、カタログ番号71086−3)を使用して、アニーリング温度を60℃にし、30サイクル実施して、IgGをコードする挿入断片を増幅した。5%のDMSOを含む、製造者提供の緩衝液を、0.3μMのプライマー2597(配列識別番号:54)及びプライマー2598(配列識別番号:47)と共に使用した。所望のサイズの増幅産物をゲルで精製した。その後、ネステッドPCRに、ゲルで精製した増幅産物を使用した。当該ネステッドPCRは、KODポリメラーゼ(Merck、カタログ番号71086−3)を使用し、5%のDMSOを含む、製造者の緩衝液中で、0.3μMのプライマー2625(配列識別番号:55)と、プライマー1999(配列識別番号:56)(R1試料向け)またはプライマー2595(配列識別番号:53)(4R1及び5R1向け)のいずれかと、を組み合わせて使用し、アニーリング温度を60℃、サイクル数を30として実施した。こうしたネステッドPCRによる増幅産物をゲルで精製し、NheI−HF(NEB、カタログ番号R3131S)及びXhoI(NEB、カタログ番号R0146S)での二重消化に供した。この処理は、可溶性IgGとして編成された結合体の発現に向けて、当該増幅産物と、同様に二重消化されたplNT3(
図1)と、を連結するためのものである。プライマー配列は下記のとおりである。
2597:AGGGGTTTTATGCGATGGAGTT(配列識別番号:85)
2598:GTTACAGGTGTAGGTCTGGGTG(配列識別番号:78)
2625:CCTTGGTGCTGGCACTCGA(配列識別番号:86)
1999:AAAAAGCAGGCTACCATGAGGGCCTGGATCTTCTTTCTCC(配列識別番号:87)
2595:GAGGGCTCTGGCAGCTAGC(配列識別番号:84)
【0245】
実施例8.ナイーブscFvライブラリーからの構築及び選択
Schofieldら[7]は、ファージディスプレイライブラリー(McCaffertyライブラリー」)の構築について説明しており、その中で、数多くのヒトドナーのBリンパ球由来の抗体遺伝子を「中間ライブラリー(intermediate library)」へと最初にクローン化してから、最終的な機能性ファージディスプレイライブラリーへと再クローン化した。これと同一の中間ライブラリー及び同一の方法論を使用して、4x10
10個のクローンの新しいライブラリー(IONTASライブラリー)を生成された。細菌播種内ライブラリーを確実に十分再現するように注意しながら、このライブラリーからプラスミドDNAを調製した。総量が2ugのDNA鋳型を使用し、数多くのPCR反応を組成した。Nco1及びNot1で、PCR産物を消化し、ゲルで精製してから実施例6に記載されているように連結した。9.3ugのpD6及び0.93ugのPCR挿入断片を一晩連結させ、フェノールクロロホルム抽出を使用してライゲーション反応液を精製し、以前に説明したようにDH5アルファ細胞へとDNAを電気穿孔で導入した[7]。結果的に、scFv−Fcディスプレイベクター内における、2.4x10
8個のクローンのライブラリーが創出された。この「ナイーブライブラリー」からDNAを調製し、pD6へとクローン化してから、(上記のとおり)Freestyle培地において増殖した1リットルのHEK293F細胞(Life Technologies)へと遺伝子導入した。0.3ugのpD6ライブラリーDNA、それぞれ0.5ugの「AAVS−SBI」TALENペアを使用した。遺伝子導入の24時間後に、培養容積を2倍にし、遺伝子導入の48時間後に、上記のようにブラストサイジンでの選択を開始した。形質転換から24時間後の培養液を一定分量播種し、上記のようにブラストサイジンで選択することによって、ライブラリーサイズを決定した。0.9x10
7個のクローンのライブラリーが創出された。
【0246】
製造者の説明書に従って、EZ−Link Sulfo−NHS−LC−Biotinキット(Pierce カタログ番号21327)を使用し、数多くの抗原をビオチン化した。使用した抗原は、ウシサイログロブリン(Calbiochem カタログ番号609310)、ヒトCD28−Fcキメラ(R and D Systems、カタログ番号342−CD−200)、及びマウスEphB4−Fcキメラ(R and D Systems、カタログ番号446−B4−200)。ビオチン化β−ガラクトシダーゼ(Rockland カタログ番号B000−17)も使用した。
【0247】
液体培養において、17時間、上記のとおりブラストサイジン中で遺伝子導入細胞を選択した。細胞を回収、洗浄してから、試料当たりの細胞が15〜20x10
6個となるように調整した。記載のように細胞を調製し、濃度が500nMとなるようにビオチン化抗原を添加した。標識化及び流動選別は、上記のとおり実施した。フィコエリトリンで標識された抗Fc抗体のみとインキュベートした対照細胞を使用して、「ゲート(gate)」を創出したところ、こうした細胞の0.05%が含まれた。標識細胞に同一ゲートを使用したところ、0.28〜0.51%の細胞が含まれた(
図11)。こうした細胞を回収し、増殖させることで、ナイーブライブラリーに由来するscFv遺伝子の選別及び増幅のラウンドをさらに実施することが可能となった。
【0248】
実施例9.ゲノム組込みのための、ヌクレアーゼ指向型手法と、リコンビナーゼ指向型手法と、を比較するための、マルチプル「ランディング部位」を有する細胞株の創出
ゲノム切断またはリコンビナーゼ媒介性組込みのいずれかに基づく組込み方法の比較を可能にするために、マルチプル「ランディング部位」(実施例3)を有するイントロン導入するAAVS指向型標的化ベクター(pD4)を構築した。こうした部位は、Flpリコンビナーゼによって認識されるFRT部位と、Creリコンビナーゼによって認識されるlox2272/loxP部位のペアと、を含む。さらに、標的切断を可能にするために、pD4は、TALENペアが設計された、GFPに由来する配列[128]と、エンドヌクレアーゼ指向型組込みを可能にするI−Sce1メガヌクレアーゼ部位と、を含んでいる。ヌクレアーゼ指向型組込みまたはリコンビナーゼ指向型組込みが、プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の活性化と、抗体発現カセットの組込みと、を引き起こすように、適切な認識部位を有する互換性の新規ドナープラスミドを構築した(pD5)。
【0249】
pD4のプラスミド構成及び配列構成を
図12bに示す。中間体プラスミドpD3を最初に創出し、当該プラスミドは、CMVプロモーター制御下のGFP遺伝子と、これに続くPGKプロモーター制御下のピューロマイシン/チミジンキナーゼ遺伝子融合体と、を包含するものである(
図12a)。これは、Sac1(CMVプロモーターの末端が対象)と、BstB1(Neo遺伝子とポリA部位との間が対象、
図1a)と、でpBIOCAM1−newNotを消化することによって創出した。これによって、ネオマイシン発現カセットを除去して、CMVプロモーターの制御下に増進緑色蛍光タンパク質(enhanced Green Fluorescent Protein)(EGFP)遺伝子を包含する合成挿入断片で置き換えることが可能となる。変異したマウスオルニチン脱炭酸酵素PEST配列の残基422〜461へと、このGFP構築物をC末端で融合させた。このPEST配列は、プラスミドpZsGreen1−DR(Clontech)に組込まれ、融合GFPの半減期を1時間にまで減少させることが示されている。PGKプロモーター、ピューロマイシン/チミジンキナーゼ遺伝子融合体(Puro deltaTK)、及びポリAカセットをコードするカセットを、Xmn1及びFse1を使用して、プラスミドpFLEXIBLE[129]から切り出し、元の合成挿入断片に存在するSma1部位及びFse1部位へとクローン化した。得られたプラスミド(pD3と呼ばれる)は、CMVが推進するGFP遺伝子と、PGKプロモーターが推進するピューロマイシン耐性遺伝子と、をコードする。
【0250】
最終的な標的化ベクターpD4を創出するために、CMVプロモーターを除去し、AAVSホモロジーアームを挿入した。AAVS遺伝子座の850bpの区間をPCRで増幅し、5’末端にEcoR1と、3’末端にMre1と、が隣接するAAVS左ホモロジーアームを創出した。これをpD3のEcoR1/Mre1部位へとクローン化し、それによってCMVプロモーターを除去した。このAAVS左ホモロジーアームの3’末端に、Nsi1部位も組込んだ。隣接するMre1部位及びNsi1部位を使用して、合成断片を導入して、
図13に示すように、イントロンをEGFP遺伝子に融合させた。EGFP遺伝子に先行する合成イントロンには下記が組込まれている。
Flpリコンビナーゼに向けたFRT認識部位
lox2272組換え部位
I−Sce1メガヌクレアーゼ部位
GFP TALEN認識部位
T2Aリボソーム停止(stalling)配列[130]
【0251】
PCRによって、AAVS左ホモロジーアームを生成させ、5’末端及び3’末端にHpa1部位及びBstZ171部位を創出した。pD3のHpa1部位及びBstZ171部位へと、この断片をクローン化した。得られたプラスミドpD4は、ピューロマイシン耐性カセット(「Puro deltaTK」)をコードしていると共に、AAVS遺伝子座への、「ランディング部位」の導入に使用することができ、これによって、比較に向けて、様々なヌクレーゼ部位及びリコンビナーゼ部位が組込まれる。pD4の配列を
図13に示す(配列識別番号:5、配列識別番号:6、及び配列識別番号:7)。AAVSの左及び右を標的とするアームは、
図3に詳細に示されており、したがって、
図13では、省略されている。
【0252】
pD4へと導入されたイントロンは、GFPを起源とするTALEN認識部位を含むものである[128]。eGFP指向型TALENペア(eGFP−TALEN−18−左、及びeGFP−TALEN−18−右)は、下記の配列(配列及びプライマーはすべて、5’から3’の方向で示されている)を認識し、ここで、大文字は、TALENによる左右の認識部位を示し、小文字は、スペーサー配列を示す。右側TALENは、示される配列の相補鎖を認識する。GFPの開始ATG配列(スペーサー中に下線で示されている)に対して、最初の塩基対は、マイナス16の配列位置に相当する。
TCCACCGGTCGCCAcc[atg]gtgagcaagggCGAGGAGCTGTTCA(配列識別番号:88)
【0253】
プラスミドpD4には、I−Sce1メガヌクレアーゼ部位及びFlpリコンビナーゼによって認識されるFRT部位も組込まれている。最終的に、pD4には、GFP及びピューロマイシンの発現カセットと隣接するlox2272及びloxP(これらは相互に互換性)が組込まれている。これら2つの同一loxP部位を隣接させて組込むことで、ドナープラスミド(下記のpD5)の組込みカセット(PGK ピューロマイシンデルタTKカセットを含む)を置き換える機会が得られ、これによって、当該カセットが、リコンビナーゼ媒介性のカセット交換を介して、ブラストサイジン及び抗体の発現を推進する新規のカセットに交換される。
【0254】
pD4の遺伝子導入による細胞株の創出
10
6個細胞/mlでHEK293F細胞を再懸濁し、DNA:ポリエチレンイミン(PolyPlus)を1:2(w/w)の比率で添加した。0.6μg/mlのpD4を細胞に遺伝子導入し、「オリジナルAAVS」TALENペアまたは対照としてのpcDNA3.0(0.6μg/ml)のいずれかを同時導入した。CMVプロモーターからEGFPを発現するpD3を、遺伝子導入対照として実験に含め、遺伝子導入効率は、35%であった。24時間に、0.5x10
6個細胞/10cmペトリ皿(組織培養処理済)で、遺伝子導入細胞を播種し、10%のウシ胎仔血清(10270−106、Gibco)及び1%のMinimal Essential medium non−essential amino acid(MEM_NEAA 番号11140−035 Life Technologies)において増殖させた。さらに24時間後に、5μg/mlのピューロマイシンを添加し、培地を2日おきに交換した。非遺伝子導入細胞またはpD3のみが遺伝子導入した細胞は、5日後に死滅した。12日後に、pD4のみを遺伝子導入した細胞で形成されたコロニー数は、約200であり、pD4及びAAVS TALENペアを遺伝子導入した細胞は形成されたコロニー数は、約400であった。
【0255】
pD4及びAAVS TALENペアの遺伝子導入から生じたピューロマイシン耐性集団に正しい組込みが起きたかを分析した。さらに、この集団(クローン6F)から単一コロニーを選定し、AAVS TALENペアの非存在下で実施したpD4の遺伝子導入から生じたピューロマイシン耐性集団に由来するコロニーと比較した。正しい組込みを同定するために、左右のホモロジーアームを超えてAAVSゲノム遺伝子座においてハイブリッド形成するPCRプライマーを設計した。こうしたプライマーは、挿入断片に特異的なプライマーとペアにした。プライマーは、5’末端表記で、下記のとおりである。
AAVS1_HA−L_Nested_Forw1 GTGCCCTTGCTGTGCCGCCGGAACTCTGCCCTC(配列識別番号:89)
EGFP_Synthetic_gene_Rev_Assembly TTCACGTCGCCGTCCAGCTCGAC(配列識別番号:90)
Purotk_seq_fow2 TCCATACCGACGATCTGCGAC(配列識別番号:91)
AAVS1_Right_arm_Junction_PCR_Rev TCCTGGGATACCCCGAAGAG(配列識別番号:77)
【0256】
図14は、クローン6F及び当該集団は、左右の末端の両方で正しいが、非AAVS指向型の集団から選定したクローンでは、正しくないことを示している。したがって、PCR分析は、ゲノムDNAの切断が、AAVS TALENによって指示されると、ドナーカセット組込みの正確性が向上することを示している。
【0257】
pD4は、プロモーター無しのインフレームGFP遺伝子を導入するものであり、当該インフレームGFP遺伝子は、AAVSプロモーターに由来して推進される。ピューロマイシン耐性集団のフローサイトメトリーによって、GFPの発現が存在しないことが示された。半減期の短さ(マウスのオルニチン脱炭酸酵素PEST配列要素由来)と、T2Aプロモーターを使用することで生じた発現の減少と、が組み合わされたことに起因して、この発現欠如が起きた可能性がある。実際、プロモーターが存在しないブラストサイジン要素(pD2向けに記載したとおり)の前にT2A要素を追加することで、ブラストサイジン耐性コロニーの数は4倍減少することが明らかとなった。GFP発現は存在しないものの、マルチプルランディング部位の組込みは、リコンビナーゼ指向型のゲノム組込みと、DNA切断指向型のゲノム組込みと、の比較に向けた機会を依然として与えるものである。
【0258】
実施例10.「マルチプルランディング」部位への抗体カセットの挿入に向けたベクター(pD5)の構築
AAVS遺伝子座への「マルチプルランディング部位」イントロンの導入に続いて、ヌクレアーゼ指向型の手段またはリコンビナーゼ指向型の手段を介した、抗体カセットの導入が可能である。これを実施するために、ドナープラスミドpD5を創出し、ここで、発現カセットは、左右のホモロジーアームと隣接しており、当該左右のホモロジーアームは、pD4へと導入されたGFP TALEN切断部位と隣接する配列と等しいものである。pD5自体には、無処理のGFP TALEN認識部位は組込まれておらず、組込みは、相同組換えによって推進される。ドナープラスミドの相同性指向型組込みは、ブラストサイジン遺伝子の導入を引き起こすことになり、当該ブラストサイジン遺伝子は、プロモーターを欠いているが、前述にように、AAVS遺伝子座に由来する上流エクソンとのインフレーム融合を創出するスプライスアクセプター部位が先行するものである。AAVS遺伝子座への組込みが生じれば、プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の発現を引き起こすことになる。挿入カセットは、上記のように、pEFプロモーター及びCMVプロモーターの制御下に、それぞれIgG編成抗体重鎖及びIgG編成抗体軽鎖もコードするものである。pD5には、新規ドナーの切断を引き起こすことができるI−Sce1メガヌクレアーゼ部位が組込まれており、これによって、NHEJ向けの機会を提供するものである(実施例12参照)。ドナープラスミドpD5には、FRT部位も組込まれており、これによって、プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子と、抗体発現カセットと、の同一遺伝子座でのリコンビナーゼ指向型組込みが可能である。上で考察したように、Creリコンビナーゼが、ドナー及びゲノムDNAにおけるloxP部位に作用し、リコンビナーゼ媒介性のカセット交換を指示することになる。
【0259】
pD5の配列を
図15に示す。GFP TALEN部位の5’末端の配列は、AAVS遺伝子座に由来するものである。TALEN切断部位の上流にある、AAVS遺伝子座の267bpの区間は、PCRによって生成した。プライマーを使用して、EcoR1部位及びMfe1部位を5’末端及び3’末端に創出し、増幅産物をpD1−D1.3のECoR1部位へとクローン化した。EcoR1部位は、5’末端に再創出されている。左ホモロジーアームのクローン化の間に、Nsi1及びPac1も3’末端に挿入した。右ホモロジーアームには、GFP TALENの3’側配列と等しい約700bpが組込まれており、当該右ホモロジーアームは、PCR構築によって創出した。PCRプライマーによって、構築断片の5’末端及び3’末端にBstZ171部位を導入し、これをpD1−D1.3のBstZ171部位へとクローン化した。PCRプライマーによって、5’末端にHpa1部位も導入した。
【0260】
イントロン(GFP TALEN、I−Sce1エンドヌクレアーゼ、Flpリコンビナーゼ、及びCreリコンビナーゼに向けた認識部位が組込まれている)、スプライスアクセプター領域、ブラストサイジン遺伝子、ならびにポリA部位(上記のとおり)を包含するPCR断片を、5’末端にNsi1部位、及び3’末端にPac1部位を有する形で創出した。これを、上記のプラスミドのNsi1部位及びPac1部位へとクローン化し、pD5−D1.3を創出した(
図15に示される配列及び
図18aに示されるプラスミド構造)。
【0261】
実施例11 抗体発現カセットの、ヌクレアーゼ指向型組込みと、Flp指向型組込みとの比較
抗体発現カセットのリコンビナーゼ媒介性組込みに向けて、これまで使用されてきたFlp−Inシステム[18]は、天然Flpリコンビナーゼの37℃での活性の僅か10%しか有さない変異体Flpリコンビナーゼ(プラスミドpOG44中)を使用するものである[19]。野生型と比較して、熱安定性及び37℃での活性が上昇したFlpリコンビナーゼの変異体(Flpe)が同定された[19、20]。これは、コドン最適化によってさらに改善され、プラスミドcCAGGS−Flpo(Genebridges カタログ番号A203)内コードされたFlpo[131]が創出された。Flpリコンビナーゼ(pOG44及びcCAGGS−Flpo内にコードされる)の両変異体の作用が比較された。Creリコンビナーゼによって指示される組換えについても、Creリコンビナーゼをコードするプラスミド(pCAGGS−Cre、Genebridges カタログ番号A204)を細胞に同時導入することによって調べられた[132]。それぞれのベクターにおいて、リコンビナーゼは、ニワトリ−β−アクチンプロモーター及びCMV最初期エンハンサーの制御下で発現される。SV40ラージT核局在配列(Large T nuclear localization sequence)が、核の局在に向けて使用されている[20]。元のベクター(cCAGGS−Flpo及びpCAGGS−Cre)においては、リコンビナーゼの発現は、内部リボソーム進入部位(IRES)によって、ピューロマイシン耐性遺伝子に結び付けられているが、当該耐性遺伝子は、標準的な分子生物学的手法を使用して除去した。
【0262】
抗体カセットの、ゲノム切断指向型組込みと、リコンビナーゼ指向型組込みと、の効率を比較するために実験を実施した。結果は、下記の2つの方法で評価した。
1.プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の組込みから生じたブラストサイジン耐性コロニー数の測定。
2.異なる手法によって達成される抗体発現の程度の評価。
【0263】
実施例9に記載したように、Creリコンビナーゼの認識部位(lox2272及びloxP)及びFlpリコンビナーゼの認識部位(FRT)をクローン6F内のAAVS遺伝子座へと予め組込んだ。さらに、GFP TALENペアの認識部位及びメガヌクレアーゼ I−Sce1の認識部位も同一イントロン内に存在する。ドナープラスミドpD5−D1.3は、プロモーターが存在しないブラストサイジン遺伝子の上流に存在するイントロン内に同一認識部位(GFP TALEN以外)を保有する。正しい組込みが生じれば、ブラストサイジン遺伝子の活性化を引き起こすことになる。pD5−D1.3は、IgG編成されたD1.3抗体遺伝子もコードしており、当該遺伝子は、細胞表面に発現することになるものである。
【0264】
pD5−D1.3と、pOG44またはpCAGGS−Flpo(Flpリコンビナーゼの2つの変異体をコードする)と、を同時導入すれば、pD5プラスミド全体が、クローン6FのFRT部位へと組込まれるはずである。さらに、ドナープラスミドpD5−D1.3は、ブラストサイジン遺伝子の上流に位置する合成イントロン内のlox2272部位と、抗体発現カセットの末端のloxP部位と、を有する。pCAGGS−Creから発現されるCreリコンビナーゼの作用下では、リコンビナーゼ媒介性カセット交換は、クローン6F内のlox2722部位及びloxP部位への、ブラストサイジン及び抗体発現カセットの組込みをもたらすはずである。
【0265】
リコンビナーゼ指向型の手法と、ゲノム切断指向型の手法と、を使用したベクター組込みの効率を、GFPに由来する配列(Reyon et al.,2012)を対象としたTALENペア(eGFP−TALEN−18−左、及びeGFP−TALEN−18−右)を使用して比較した。GFP TALENの場合は、TALENによるゲノム切断に続いて、左右のホモロジーアームの間に存在する要素が組込まれることになる。
【0266】
I−Sce1メガヌクレアーゼとの比較を可能にするために、I−Sce1をコードするコドン最適化遺伝子を構築した(
図16)。この遺伝子は、N末端に、N末端HAエピトープタグ/SV核局在シグナル(NLS)を有しており、5’末端及び3’末端でNco1部位及びXba1部位と隣接している。ベクターpSF−CMV−F1−Pac1(Oxford Genetics OG111)に当該遺伝子をクローン化し、ここでは、CMVプロモーターが発現を推進する。
【0267】
「マルチプルランディング部位」が正しく組込まれたクローン6Fを使用して遺伝子導入を実施した。細胞を10
6個/mlで懸濁してから、酵素をコードするプラスミドと併せて、10
6個の細胞当たり50ngのpD5−D1.3ドナープラスミドを遺伝子導入した(表4A)。
【0268】
24時間後に、遺伝子導入細胞を0.5x10
6個細胞/10cmペトリ皿(組織培養処理済)で播種し、10%のウシ胎仔血清(10270−106、Gibco)及び1%のMinimal Essential medium non−essential amino acid(MEM_NEAA 番号11140−035 Life Technologies)において増殖させた。さらに24時間後に、5ug/mlのブラストサイジンを添加し、培地を2日おきに交換した。12日後に、2%のメチレンブルー(50%メタノール中)でプレートを染色し、コロニー数を数えた(表2)。Flpリコンビナーゼ、Creリコンビナーゼ、及びTALENの直接比較において、GFP TALENを使用することで最も多くの数のコロニーが得られ、「ドナーのみ」と比較して9倍上昇した(表4A)。最適化されたFlpo遺伝子を使用すると、「ドナーのみ」の対照と比較して、ブラストサイジン耐性コロニーの数がかえって減少するという結果であったことも明らかとなり、これは、おそらくFlpリコンビナーゼの活性が増進したことからくる毒性によるものであると想定される。pCAGGS−Creを使用しても、ドナーのみの対照と比較してコロニー数は増加した。
【0269】
第2の実験を実施することで、増進Flp(cCAGGS−Flpo由来)、ならびにFlp−Inシステム(Zhouらによって使用されたもの[17、18、US7,884,054]に由来するpOG44内にコードされる低活性Flp酵素、の両方と、GFP TALENを比較した。これらをGPF TALEN及びCreリコンビナーゼと比較した(表4B)。細胞百万個当たりで示されるDNA量で、細胞に遺伝子導入した。0.25x10
6個の細胞をプレートに播種し、上記のように、ブラストサイジン耐性コロニーの数を決定した。細胞は、液体培養においてもブラストサイジン耐性で30日間選択してから、(上記のように)表面IgGを発現する細胞の割合を決定した。表4Bは、耐性コロニーの数に関して、TALENが他の手法に対して優位であったことを示す。cCAGGS−Flpo内の最適化Flpを使用することで、「ドナーのみ」の対照と比較して、ブラストサイジン耐性コロニーの数がかえって減少するということが再び引き起こされた。Creリコンビナーゼは、対照と比較して、ブラストサイジンコロニー数の増加を再度もたらした一方で、pOG44内のFlp遺伝子は、対照と比較して僅かな増加を示しただけであった。
【表4】
【0270】
ドナーDNAをさらに追加することで(表4C)、中間レベル(2μg/百万個細胞)では、コロニー数が増加し、高レベル(6μg/百万個細胞)では、全体的に減少した。GFP TALEN指向型組込みで見られた抗体ディスプレイのレベルを達成したものは、他の試料には無かった。
【0271】
細胞は、液体培養においてもブラストサイジンで選択して、上記のように、抗体発現で細胞を染色した。TALEN指向型組込みでは、他の手法と比較して、抗体陽性の割合が顕著に上昇した。cCAGGS−Flpo及び高濃度のpCAGGS−Creを遺伝子導入した細胞は、健全ではなく、フローサイトメトリーを実施するには、数が不十分であった。
【0272】
I−Sceエンドヌクレアーゼを含めて、比較を広げた。I−Sce1をコードする合成遺伝子を合成し(
図16)、pSF−CMV−f1−Pac1(Oxford Genetics)のNco1/Xba1部位へとクローン化した。10
6個/mlで細胞を懸濁し、酵素をコードするプラスミド(1μg/10
6個細胞)と併せて、300ngのpD5−D1.3ドナープラスミドを細胞各ml(10
6個細胞/ml)に遺伝子導入した。翌日、0.05mlの細胞を播種し、ブラストサイジン中で選択して、記載したように、14日後に染色した。表5は、I−Sce1メガヌクレーゼから、最大数のブラストサイジン耐性コロニーが得られ、その次にeGFP TALENペアであったことを示す。Creリコンビナーゼ及びFlpリコンビナーゼ(pOG44内にコードされる)の両方で、「ドナーのみ」の対照と比較して、僅かに高い数が得られた。前述同様に、Flpeをコードするプラスミドの遺伝子導入は、「ドナーのみ」と比較して、かえってコロニー数が減少した。
【表5】
【0273】
遺伝子導入後、液体培養においてブラストサイジン耐性で細胞の大部分を選択し、7日後及び13日後に、上記のように、抗Fcフィコエリトリン標識抗体で染色した。
図17(表5にまとめられている)は、「ドナーのみ」(4.9%)と比較して、I−Sce1エンドヌクレアーゼ及びeGFP TALENを遺伝子導入した細胞で、抗体発現の顕著な上昇(それぞれ47%及び55%)が達成されたことを示す。対照的に、Flpリコンビナーゼ(pOG44)またはCreリコンビナーゼをコードするプラスミドを細胞に同時導入すると、抗体陽性細胞の割合は、それぞれ6.6%及び6.5%であった。抗体陽性細胞の割合は、ブラストサイジン中での選択継続に伴って増加し続け、I−Sce1及びEGFP TALENを遺伝子導入した試料を19日目にアッセイした場合、85〜90%の割合で抗体陽性が達成される。したがって、メガヌクレアーゼは、抗体をコードする導入遺伝子のヌクレアーゼ指向型組込みを引き起こすための代替手法を提供するものである。
【0274】
実施例12.相同組換え及びNHEJの両方によって、抗体カセットのヌクレアーゼ指向型組込みを生じさせることができる
細胞DNAへの導入遺伝子の組込み効率は、二本鎖切断(DSB)の導入によって増進することができる。真核細胞における内在性のDNA修復機構には、相同組換え、非相同末端結合(NHEJ)、及びこうしたものの変種が含まれる。すべてが、ライブラリー内で結合体をコードする遺伝子を導入する手段を提供するものである。相同組換えは、相同領域と、挿入される導入遺伝子との正確な結合を提供するが、ドナープラスミドにおいて相同領域を用意する必要がある。相同組換えに向けたDNAは、直鎖状または環状のDNAとして提供することができる。NHEJでは、DNAの末端が、相同性の鋳型を必要とせずに直接的に再連結される。DNA修復に対するこの手法は、正確性が低く、挿入または欠失を引き起こし得る。それにもかかわらず、NHEJは、インフレームエクソンをイントロンへと組込むための簡便な手段を提供し、プロモーター:遺伝子カセットをゲノムへと組込むことを可能にするものである。非相同性の方法を使用することで、ホモロジーアームを欠いたドナーベクターを使用することが可能になり、それによって、ドナーDNAの構築が単純化される。
【0275】
クローン6Fは、ゲノムに組込まれたGFP TALEN認識部位及びI−Sce1ヌクレーゼ認識部位を有しており、こうしたヌクレアーゼが提供されると、こうした部位が、切断されることになる。ドナーベクターpD5は、GFP TALEヌクレアーゼ認識部位を有さないが、切断部位と隣接するホモロジーアームは有しているため、相同組換えのみによる組込みが予想される。隣接するI−Sce1メガヌクレアーゼでのゲノムDNAの切断もpD5要素の相同組換えによる組込みを引き起こすことになる。しかしながら、pD5は、I−Sce1が提供されると、試験管内で切断され得るI−Sce1メガヌクレアーゼ部位も有している。これによって、NHEJによって組込まれる可能性のある直鎖状DNA産物が創出されることになる。前述のとおり、NHEJを使用するドナーDNAの生体内での切断を使用することで、効率優位性さえ存在し得る。
【0276】
図18aは、新規pD5−D1.3ドナーDNAを示し、
図18bは、「マルチプルランディング」部位が組込まれたクローン6F細胞のゲノム遺伝子座を示す。
図18cは、pD5−D1.3(
図18a)と、クローン6Fのマルチプルランディング部位(
図18b)と、の相同組換えの結果を示す。対照的に、
図18dは、NHEJの結果を示す。この場合、新規プラスミドの骨格に由来する余分なDNAが組込まれている(両矢印で示される)。「マルチプルランディング」部位でのFlp媒介性組換えは、類似産物をもたらすことになる。実施例11に記載の試料(
図17に示される)で使用されている経路がどちらであるかを決定するために、前述のように、ブラストサイジンで選択した集団からゲノムDNAを調製した。組込みPGKプロモーターとハイブリッド形成するリバースPCRプライマー(J44)を設計した。このプライマーを、IgGタンパク質の末端でハイブリッド形成する、もう一方のJ48と併せて使用した。プライマーJ44及びプライマーJ48は、I−Sce1が組込みを担っていると、1928bpのバンドを与えることで、相同組換えが生じたことが明らかになるように設計した(
図18eに矢印で示される)。(NHEJが生じると、このプライマーペアは、5131bpのバンドを与える可能性があるが、この実験のゲノムPCRにおいて、この長鎖増幅産物を目視することは不可能である。)
【0277】
プライマーJ46は、ベクター骨格内のβ−ラクタマーゼ遺伝子内でハイブリッド形成するように設計した。プライマーJ44及びプライマーJ46は、NHEJが生じると、1800bpのバンドを与えると見込まれる。FlPリコンビナーゼが、相同組換え媒介性の組込みを引き起こした場合、類似サイズのバンドが見込まれる。
J44:AAAAGCGCCTCCCCTACCCGGTAGAAT(配列識別番号:92)
J46:GGCGACACGGAAATGTTGAATACTCAT(配列識別番号:93)
J48:CACTACACCCAGAAGTCCCTGAGCCTG(配列識別番号:94)
【0278】
図18eは、GFP TALEN及びI−Sce1メガヌクレアーゼで処理した試料のみで相同組換えが生じていることを明確に明らかにするものである((i及びiiをiii及びivと比較して)。対照的に、I−Sce1メガヌクレアーゼが切断を引き起こしたときのみ、NHEJが生じる(
図18eのv.)が、GFP TALENでは生じない(
図18eのvi)。予想どおり、類似サイズのバンドが、Flpリコンビナーゼで処理した試料において見られる(18eのvii)。したがって、この実験は、抗体カセットのヌクレアーゼ指向型組込みが、相同組換え及びNHEJの両方によって生じ得ることを明らかにするものである。
【0279】
実施例13.同一細胞に由来する分泌抗体断片及び膜結合抗体断片の生成
上記のとおり、哺乳類ディスプレイベクターであるpD2及びpD5は、Dreリコンビナーゼ[88]によって認識される2つのROX認識部位が隣接する膜貫通ドメインをコードするエクソンと共に構築した。膜結合形態から分泌形態への変換が可能であるかを決定するために、pD2−D1.3/AAVS TALENペアの遺伝子導入から生じたブラストサイジン耐性集団に、Dreリコンビナーゼ(pCAGGs−Dre)をコードするプラスミドを再導入した。これは、CAGGsプロモーター(GeneBridges A205)に由来してDreリコンビナーゼ遺伝子を推進するプラスミドpCAGGs−Dre−IRES puro[88]に基づくものである。標準的な分子生物学的手法を使用してピューロマイシン耐性遺伝子を除去した。ブラストサイジンでの選択の22日後に、細胞を0.5x10
6個細胞/mlに調整し、10
6個の細胞当たり0.5μgのpCAGGs−Dreを前述のように遺伝子導入した。6日後に、上清を回収し、プロテインAを使用して抗体を精製してから、試料をSDS−PAGEゲルで電気泳動し、クマシーブルーで染色した。
図19aは、Dreリコンビナーゼ遺伝子の遺伝子導入を実施しなかった場合でさえ上清中に分泌抗体が見られることを示している。これは、膜貫通ドメインをコードするエクソンをスキップする代替のスプライシングから生じ得たものである。あるいは、培養上清中の抗体は、膜結合抗体が切断されたことに由来して生じた可能性がある。Dreリコンビナーゼを遺伝子導入することで、分泌抗体のレベルが増加した(
図19a)。
【0280】
分泌scFv−Fc融合体の産生は、実施例7に記載の実験においても示された(
図9h)。1ラウンドのファージディスプレイによって、β−ガラクトシダーゼでの選択を実施した抗体scFv集団をpD6ベクターへと導入し、AAVS TALENを使用して、HEK293細胞のAAVS遺伝子座へと組込んだ。流動選別によって抗原結合細胞を選別し、抗体の蓄積を可能にするために、選別後7日間培地を交換せずに、選択細胞を増殖させた。ELISAプレートをβ−ガラクトシダーゼ(10ug/ml)またはBSA(10ug/ml)のいずれかで一晩被覆した。7日間培養して得た培養上清を50%容積の6%のMarvel−PBSと混合し、試料を三連で試験した。1/10希釈も同様に試験した。結合したscFv−Fc融合体の検出は、抗ヒトIgG−Eu(Perkin Elmer カタログ番号1244−330)を使用して実施した。
図19bは、ニートまたは1/10希釈のいずれにおいて、培養上清から抗体結合を直接的に検出できることを示している。これは、表面ディスプレイ及び抗体分泌の両方が、追加の段階無しに同一細胞内で達成できることを示している。単一細胞のクローン化に続いて、選択細胞から分泌抗体を直接的に得るか、またはここで示されるように選別集団を使用して、ポリクローナル抗体混合物を生成させることが可能となるであろう。
【0281】
実施例14.scFvからの、IgG形式またはFab形式への変換に向けた簡便な方法
実施例7に記載したように、scFvとして編成された抗体の、IgG形式への変換をもたらすための新規の方法を発明した。この変換は、IgG編成抗体またはFab編成抗体が最終形式として必要である、scFv抗体のファージディスプレイライブラリーを用いた抗体創薬プロジェクトの間に必須となるプロセスである。現在の方法は、面倒であると共に、可変重(V
H)鎖及び可変軽(V
L)鎖の、適切な発現ベクターへの個々のクローン化を伴うものである。さらに、scFv集団を「一斉」変換することは不可能であり、これは、V
H鎖と、V
L鎖との間の結び付きが失われるためである。V
H鎖及びV
L鎖は、両方が抗原結合特異性に寄与するため、このことは問題である。scFvの集団を、Ig形式またはFab形式へと容易に変換できないという現状によって、外来診療所で使用されることになる最終形式において、数多く抗体を選別するという能力が制限されている。標的結合、細胞レポーター選別、ならびに凝集状態を含めた、生物物理学的な特性及び機能に向けて、Ig形式またはFab形式の組換え抗体を選別する能力は、臨床的な候補としての候補抗体薬物を選択するための必須段階である。この段階で、IgG形式またはFab形式において試験される抗体の数が増えれば増えるほど、最良の抗体薬物候補を選択する確率が増加する。本明細書には、単鎖抗体(scFv)集団の、免疫グロブリン(Ig)形式またはFab形式への変換方法であって、その結果、可変重(V
H)鎖及び可変軽(V
L)鎖の元のペアが維持される変換方法が記載されている。方法は、モノクローナルscFv、オリゴクローナルscFv、またはポリクローナルscFvを、Ig形式またはFab形式へと同時に変換するものである。好ましくは、方法は、非複製「小環」DNAの生成を介して進行するものである。好ましくは、完全変換プロセスは、E.coliなどの細菌の単回の形質転換を伴うことで、細菌コロニーの集団が生成され、当該細菌コロニーは、それぞれが、特有のIg編成組換え抗体またはFab編成組換え抗体をコードするプラスミドを保有する。これは、2つの別々であるクローン化段階及び形質転換段階を必要とする代替方法[117]とは異なるものである。
【0282】
より広くは、本発明のこの態様は、3つの連結された遺伝子要素であるA、B、及びC(scFvの場合は、それぞれがV
H、リンカー、及びV
Lに相当する)を有する遺伝子構築物を、隣接要素(A及びC)の順序が逆転した形式へと、単一のクローン化段階で変換する方法に関する。中間要素が、保持される可能性はあるが、非常に有用なことに、方法によって、新しい要素であるDによる、この中間要素の置き換えが可能となり、(C−D−Aが得られる)。scFvからIgGまたはFabへの変換の実施例なら、Cは、抗体V
Lドメインであり、Aは、V
Hドメインである。この実施例では、要素Dは、VH(要素A)に融合した軽鎖定常ドメイン、ポリA部位、プロモーター、及びリーダー配列を包含する。プロセスにおいて、産物(C−D−A)は、再クローン化され、これによって、隣接配列を変えることも可能になる。scFvからIgGへの変換の実施例では、プロモーター及びリーダー配列が、V
L要素に先行し、V
Hの後には、IgG編成抗体の場合はC
H1−C
H2−C
H3ドメインが続き、Fab編成抗体の場合はC
H1ドメインが続く。要素A及び要素C(上記の命名法を使用)が、他の遺伝子要素に相当し得る場合、方法は、より広く適用することができ、例えば、元のN末端及びC末端が融合して、新規の内部終端が操作形成された環状順列を有するタンパク質の構築における遺伝子要素である。
【0283】
図21は、scFvからIgGへの変換を例として使用して、変換プロセスを模式的に示したものである。抗体のVHドメイン及びVLドメインをコードするDNA挿入断片(a)と、定常軽(CL)鎖、ポリアデニル化配列(pA)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、及びシグナルペプチド(SigP)をコードするDNA断片(b)と、が連結されている。DNA断片(b)は、CMVプロモーターの代わりに任意のプロモーターをコードすることもできる。同様に、pA−CMVカセットを、内部リボソーム進入部位(IRES)[119]または2A型「自己切断(self−cleaving)」小ペプチド[130、133]によって置き換えることができる。非複製DNA「小環」(c)を創出するためのDNA分子(a)と、DNA分子(b)との結合は、「粘着末端」ライゲーションによって促進される。
図21では、NcoI部位及びNotI部位を用いており、これは、こうした部位を、McCaffertyファージディスプレイライブラリー[7]の創出に使用したためであるが、任意の適した制限酵素部位を使用して、非複製「小環」cを創出することができる。ライゲーションの後、「小環」cは、その認識部位がV
Hドメインと、V
Lドメインとの間のリンカーと隣接している、制限酵素であるNheI及びXhoIで直鎖化される。本発明を示すためにNheI及びXhoIを選択しており、これは、これらの制限酵素を、McCaffertyファージディスプレイライブラリー[7]の創出に使用したためであるが、任意の適した制限酵素部位を使用することができる。
【0284】
その後、直鎖化産物dを精製し、消化したベクター(e)と連結する。ベクター(e)は、NheI部位の上流にCMVプロモーターまたはpEFプロモーター及びシグナル配列を含み、XhoI部位の下流に抗体定常重(C
H)ドメイン1〜3をコードする。得られるプラスミドDNAの細菌における選択及び複製を可能にするために、ベクターは、細菌複製起点または細菌複製及び抗生物質耐性マーカー(示されていない)もコードすることになるであろう。挿入断片(d)と、ベクター(e)とのライゲーションによる産物は、プラスミドfをもたらすことになり、当該プラスミドfを使用して細菌を形質転換し、適した選択可能マーカーで増殖させれば、標準方法によるプラスミドDNAの産生及び精製が可能となるであろう。精製したプラスミドfは、異種性Ig抗体発現に向けて哺乳類細胞へと導入することができる[134]。あるいは、ベクター(e)においてCH
1−3をコードするDNAと、単一C
H1ドメインをコードするDNAと、をFab発現に向けて置き換えることができる。
【0285】
本発明を示すために使用する、以下の詳細な方法説明では、挿入断片bは、CMVプロモーターまたはP2Aペプチドのいずれかを含み、P2Aペプチドは、単一メッセンジャーRNA(mRNA)から別々の抗体軽鎖及び抗体重鎖を発現することを可能にするものである。方法は、自明なものではなく、数度の実験試行の末に洗練されたものである。例えば、初期には、PCRによるDNA「小環」(c)の直鎖化を試みた。しかしながら、この試行は、ホモ2量体である副産物の増幅に終わり、もたらされた所望の増幅産物(d)の収率は低いものであった。対照的に、DNA「小環」(c)を直接消化することで、十分な材料(d)が得られたことにより、方法を実行可能なものとすることに成功した。第2に、不必要なホモ2量体産物を防ごうと試みた際に、初期には挿入断片(a)が脱リン酸化した。しかしながら、これには、「末端(end)」消化を防ぐための慎重な制御が必要であった。当該「末端(end)」消化は、ライゲーションに向けた所望の「粘着末端」を欠いた産物をもたらすものである。最適化された方法では、脱リン酸化が生じないことで、ライゲーションに適格である産物の割合が最大化されている。最後に、DNA「小環」(c)の収率を最大化するためには、DNA挿入断片である(a)及び(b)のライゲーションにおいて使用する比率を慎重に制御する必要があった。
1.PCRによるscFv挿入断片の調製
scFvをコードするプラスミドDNAを保有する細菌グリセロールストックを、50ulの水へと削り入れた。これを10倍希釈した。ここから5μを使用し、フォワードプライマーpSANG10pelB(CGCTGCCCAGCCGGCCATGG 配列識別番号95)(2.5μl、5μM)、リバースプライマー2097(GATGGTGATGATGATGTGCGGATGCG 配列識別番号:96)、(2.5μl、5μM)、10xKOD緩衝液(Merckから入手したKODホットスタートキット、71086−4)、dNTP(5μl、2mM)、MgSO4(2μl、25mM)、KODホットスタートポリメラーゼ(2.5ユニット)を含めて総容積を50μlとしてPCR反応を実施した。サイクル条件は、94℃を2分保った後、94℃で30秒、54℃で30秒、次いで72℃で1分のサイクルを25回実施する条件を使用した。スピンカラム(QiagenまたはFermentas)によってPCR反応物の精製を実施し、90μlのPCR反応物溶出液を調製した。
図22aは、1μlのPCR反応物を負荷した1%のアガロースTBEゲルを示す。精製したscFvのDNA(80μl、8μg)に、緩衝液4(New England Biolabs)、BSA(0.1mg/ml)、ならびに40ユニットのNcoI−HF及びNotI−HFを含む総容積100μlの溶液を添加することによって消化し、37℃で2時間インキュベートした。挿入断片をQiagenPCR精製キットで精製し、30μlの溶出液を調製して、nanodrop分光光度計(Thermo)を使用して260nMの吸光度を測定することによって、DNA濃度を測定した。
2.DNA挿入断片のライゲーション(
図21a及び
図21b)
ライゲーション反応は、DNA「小環」を産生するために実施する(
図21c)。ライゲーション反応液は、挿入断片b(125ng)、scFv挿入断片a(
図21)(125ng)、10xライゲーション緩衝液(Roche T4 DNAリガーゼキット、1.5ul)、T4 DNAリガーゼ(1ユニット)を含み、総容積が15μlである。21℃で1〜2時間インキュベートした。ライゲーション混合物に水(35μl)を添加し、Qiagen PCR精製キットで精製し、30μlの溶出液を調製した。
3.Xho1/Nhe1でのDNA「小環」(
図21c)の消化
精製したライゲーション反応液(28μl)は、緩衝液4(New England Biolabs、3.5μl)、BSA(0.1mg/ml)、ならびに10ユニットのNcoI−HF及びNotI−HFを含む総容積35μlの溶液を添加することによって消化し、37℃で2時間インキュベートする。その後、これを1%のアガロースTBEで分離することによって精製する(
図22b)。代替方法として、
図22cは、CMVプロモーターの代わりにP2A配列を含む直鎖化「小環」を示すものである。2.6kbに位置するDNAバンド(
図22b)を切り出し、Qiagenゲル抽出キットで精製し、30μlの溶出液を調製する。
4.直鎖化DNA「小環」dと、plNT3(XhoI/NheI切断)ベクターと、のライゲーション、及びE.coli DH5αの形質転換
標準ライゲーションは、plNT3切断ベクター(50ng)、直鎖化「小環」d(20ng)、10xリガーゼ緩衝液(Roche、1.5μl)、及び1ユニットのT4 DNAリガーゼ(NEB)を使用し、最終容積を15μlとして実施した。21℃で2時間インキュベートした。E.coli DH5アルファ化学的コンピテント細胞(chemically competent cell)、subcloning efficiency(Invitrogen、カタログ番号18265017)の形質転換は、製造者の説明書に従って実施した。6μlのライゲーション混合液に、化学的にコンピテントなDH5a細胞を80μl添加し、氷上静置1時間、42℃の熱ショック1分、氷上静置2分の後に、900μlのSOC培地を含む14mlのポリプロピレンチューブに移し、37℃で1時間インキュベートしてからLBアンピシリンプレートに播種した。
【0286】
実施例15:流動電気穿孔を使用した、ヌクレアーゼ指向型組込みによる、哺乳類細胞における大きなディスプレイライブラリーの構築
電気穿孔は、DNA、RNA、及びタンパク質を細胞へと導入する効率的な方法であり、電気穿孔流動システムによって、数多くの哺乳類細胞へと効率的にDNAを導入することが可能になる。例えば、「MaxCyte STX Scalable Transfection System」(Maxcyte)によって、30分以内に10
10個の細胞の電気穿孔が可能であり、1日に最大で10
11個の細胞に遺伝子導入を実施する可能性を創出するものである。細胞及びDNAは、混合され、リザーバーから電気穿孔チャンバーへと通って電気穿孔され、ポンプで押し出される。このプロセスは、新たな一定分量の細胞及びDNAで繰り返し実施される。培養細胞(例えば、ヒト293細胞もしくはJurkat細胞)または例えば、ヒトリンパ球[135]といった初代細胞への、DNA、RNA、タンパク質、またはその混合物の導入に向けて、同一の方法を適用することができる。流動電気穿孔は、数多くの初代細胞及び培養細胞への、DNR、RNA、及びタンパク質の、効率的な導入に使用されてきた。
【0287】
本明細書で、我々は、そのようなシステムを使用することで、ヒトHEK293細胞及びJurkat細胞のヒトAAVS遺伝子座を標的としたTALEヌクレアーゼのペアをコードするDNAの同時導入による、抗体遺伝子をコードするドナーDNAの導入を例示する。
【0288】
蛍光標識された抗原を使用して、フローサイトメトリーによって2つの異なる抗体の特異性の分布を決定した。EGF受容体であるEGFR1またはEGFR2を認識する抗体の生成は以前に説明した[105]。クローンα−EGFR1_A及びクローンα−EGFR2_A(そこに記載されている)を、実施例6に記載したようにpD6へとクローン化した。さらに、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)での1ラウンドのファージディスプレイを使用して「McCafferty」ファージディスプレイライブラリー[7]から選択したscFv抗体集団もこのベクターへとクローン化した(実施例6に記載のとおり)。
【0289】
HEK293細胞を遠心し、製造者の電気穿孔緩衝液(Maxcyte Electroporation緩衝液、Thermo Fisher Scientific カタログ番号NC0856428))に再懸濁し、最終容積を10
8個細胞/mlとした。一定分量の4x10
7個細胞(0.4ml)を、100μgのDNA(すなわち、2.5μg/10
6個細胞)と共に電気穿孔キュベットに添加した。使用した種々の成分量を以下に示す。抗体α−FGFR1_A及び抗体α−FGFR2_AをコードするドナーDNAは、等モル混合物として使用し、以下の表6に10
6個の細胞当たりの総量で示されている。AAVS−SBI TALEN(pZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVS R1 Systems Bioscience カタログ番号GE601A−1)をコードするDNAは、等モル混合物として使用し、以下の表6に10
6個の細胞当たりの総量で示されている。TALEN添加無しの試料では、対照プラスミドpcDNA3.0を使用して、インプットDNAを2.5μg/10
6個細胞とした。
【0290】
遺伝子導入効率の割合は、総細胞の所与のインプットで達成されたブラストサイジンコロニーの数を数えることによって計算した。負対照(すなわち、TALEN DNAの添加無し)と比較した倍数差異が括弧内に示されている。最終的に、Maxcyteシステムの全サイクルを実行することによって達成可能な形質転換コロニーの数を計算し、最終列に示している。Maxcyteシステムの全サイクルの実行は、10
10個の細胞の電気穿孔を実施するものである。これは、約30分の単一サイクルに相当し、1日に複数サイクルを実行する可能性を与えるものである。したがって、毎日のアウトプットは、5〜10倍大きい可能性がある。Wavebagシステム(GE Healthcare)またはCelltainerシステム(Celltainer Biotech)などの大スケールの発酵及び培養システムを使用することで、遺伝子導入に向けた細胞を生成させることができると共に、得られるライブラリーの培養に使用することができる。
【表6】
【0291】
この実施例は、抗体カセットが組込まれた細胞の非常に大きなライブラリーを作成することが可能であることを示すものである。遺伝子導入効率の範囲は、2.7〜6.1%であった。β−ガラクトシダーゼで選択した集団(試料13)の場合は、単一の流動電気穿孔セッションで、5.5x10
8個クローンのライブラリーを創出することができる。1日に2回以上のセッションで、2〜5x10
9個のクローンのライブラリーを生成させることができる。
【0292】
ブラストサイジンでの選択(10μg/ml)の13日後に、前述のように、細胞をフィコエリトリンで標識された抗Fc抗体(Biolegend、カタログ番号409304)で標識した。β−ガラクトシダーゼで選択した抗体集団の34〜36%の細胞が、Fc発現に陽性であり、11〜13%が10nM濃度のDyelight―633−標識抗原の結合に陽性であった。
【0293】
FGFR結合クローンを使用した場合、98〜99%の細胞がFc発現に陽性であった。α−FGFR1_A抗体及びα−FGFR2_A抗体の混合物は、複数の組込み事象を有する細胞の集団を調べるための機会を与えるものである。正しく組込まれたカセット(例えば、α−FGFR1_A)を有する個々の細胞では、第2の組込みが、別の特異性(すなわち、α−FGFR2_A)をもたらすことになる確率はおよそ五分五分である。複数組込みの頻度が高いのであれば、二重陽性クローンの割合は高いことになろうが、二重陽性クローンの割合は高くないことが明らかとなり、これは、細胞当たり1つの抗体遺伝子を生成することにおける、ヌクレアーゼ指向型ライブラリー組込みシステムの忠実性を示すものである。表面ディスプレイされた抗FGFR抗体が、その適切な抗原に特異的に結合する能力を確認した。抗原の発現は、マウスFgfr1外部ドメイン(ENSMUSP00000063808)をコードするプラスミドpTT3DestrCD4(d3+4)−His10[134]に由来するものである。これをHEK293懸濁細胞への遺伝子導入に使用し、以前に説明したように[134]、固定化金属親和性クロマトグラフィーによって、分泌Fgfr1−rCd4−His10を精製した。マウスFgfr2外部ドメインは、
プライマー2423(TTTTTTCCATGGGCCGGCCCTCCTTCAGTTTAGTTGAG)(配列識別番号:97)及び
プライマー2437(TTTTTTGCGGCCGCGGAAGCCGTGATCTCCTTCTCTCTC)(配列識別番号:98)
を使用して、IMAGEクローン9088089からPCRで増幅し、NcoI/NotIで消化し、発現プラスミドpBIOCAM5[126]にクローン化した。Fgfr2−Fcは、以前に説明したように[134]、HEK293細胞の一過性遺伝子導入によって発現させ、親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0294】
両方の標識抗原を使用して、二重の結合性で遺伝子導入集団を探索したところ、二重陽性の割合は低かった。この実験では、10
6個の細胞当たり197ngのドナーDNAを使用して、二重陽性割合が低い(3.5%)最適バランスのライブラリーサイズ(Maxcyteセッション当たり2.7x10
8個のクローン)を明らかにした(
図23)。
【0295】
この二重陽性割合は、第2抗体カセットが誤って組込まれていることを示している可能性があるが、ライブラリーのヌクレアーゼ指向型組込み効率を考慮すると、細胞の一部において、両対立遺伝子(この実施例ではAAVS遺伝子座)が、新規結合体の標的となった可能性もあり得る。1つの細胞内に2つの異なる抗体遺伝子が存在すること自体は、結合体またはそれをコードする遺伝子の単離を妨げるものではないが、標的細胞の単一遺伝子座を最初に修飾し、単一のヌクレアーゼ標的部位を導入することによって、これを回避することができ、当該単一のヌクレアーゼ標的部位は、例えば、実施例9で示した事前組込みのSce1メガヌクレアーゼ部位である。
【0296】
実施例16.選別ライブラリー集団からの結合体コード遺伝子の回収
ファージディスプレイでの選択をβ−ガラクトシダーゼ(実施例6に記載のように)で実施し、1〜2ラウンドの選択に由来する抗体集団をベクターpD6へとクローン化し、実施例6に記載のように、HEK293細胞のAAVS遺伝子座へと導入した。β−ガラクトシダーゼは、製造者の説明書に従って、Lightning Link Dyelight−633(Innova Bioscience カタログ番号325−0010)を使用して標識した。ブラストサイジン(10μg/ml)中で遺伝子導入細胞集団を25日間選択し、10nMのDyelight−633標識β−ガラクトシダーゼ及びフィコエリトリン標識抗Fc(Biolegend カタログ番号409304)で標識した。細胞を抗体と共に4℃で30分間インキュベートし、PBS/0.1%BSAで2回洗浄し、PBS/0.1%BSAに再懸濁してから、流動選別機を使用して二重陽性細胞を選別した。
【0297】
選別細胞を増殖させ、10nMの抗原を使用して、第2ラウンドの選別を実施した。細胞を増殖させ、選別した選択集団からゲノムDNAまたはmRNAのいずれかを単離した。
【0298】
異なる鎖(例えば、IgG編成抗体)を包含する結合体が、(例えば、同一プラスミド上への導入によって)同一ゲノム配列上に存在するが、異なるmRNAへと転写される場合、多量体である結合体をコードする別々の遺伝子を、ゲノムDNAからの増幅によって回収することが最適であり得る。代替として、「内部リボソーム進入配列」(IRES)要素、または翻訳停止/タンパク質切断を促進するウイルスのP2A配列もしくはT2A配列などの配列の使用を介して、複数タンパク質鎖を包含する結合体を同一mRNA上にコードさせることができる[133、136]。この場合、及び単一のタンパク質鎖としてコードされる結合体の場合、コード遺伝子をmRNAから単離することも可能であろう。
【0299】
ゲノムDNAは、「DNeasy blood and tissue kit」(QIAGEN カタログ番号69504)を使用して調製した。mRNAは、「Isolate II RNA mini kit」(Bioline Bio−52072)を使用して調製した。ゲノムDNAからの増幅では、製造者の説明書に従って「2xPhusion GC」混合液と共にPhusionポリメラーゼを使用して、PCR反応を実施した。Nco1及びNot1のクローン化部位と隣接するプライマーを使用して、抗体カセットを増幅した(98℃で10秒、58℃で20秒、72℃で90秒を35サイクル。当該プライマーは、例えば、プライマー2622(GAACAGGAACACGGAAGGTC)(配列識別番号:99)及びプライマー2623(TAAAGTAGGCGGTCTTGAGACG)(配列識別番号:82)である。
【0300】
選択scFv遺伝子をコードする遺伝子は、mRNAから増幅した。全RNAは、「Isolate II RNA mini kit」(Bioline カタログ番号Bio−52072)を使用して、選別細胞から単離した。cDNAは、SuperscriptII逆転写酵素(Life Technologies、カタログ番号180064−022)を使用して、2μgのRNAから合成した。その後、選択scFv遺伝子を、KOD Hot Start DNAポリメラーゼ(Merck Millipore カタログ番号71086−3)と、Nco1及びNot1のクローン化部位と隣接するプライマーと、を使用したPCRによって、cDNAから増幅した。この場合、プライマー41679 ATGAGTTGGAGCTGTATCATCC(配列識別番号:100)及び
プライマー2621 GCATTCCACGGCGGCCGC(配列識別番号:101)
を使用して、抗体カセットを増幅した(95℃で20秒、60℃で10秒、70℃で15秒を25サイクル)。PCR増幅産物は、Nco1及びNot1で消化してから、細菌抗体発現ベクターpSANG10のNco/Not1部位へとクローン化した。pSANG10の構築、細菌発現の方法、及びELISAによる選別は、Martin et al 2006[127]において説明されている。
【0301】
ファージディスプレイによる1ラウンドの選択に由来する集団のELISA選別によって、0/90個のクローンが陽性であることが明らかとなった。対照的に、この同一集団をさらに哺乳類ディスプレイに供してから、scFv遺伝子集団を回収して選別したところ、ELISAにおいて、27/90個のクローン(30%)が陽性であった。これは、ライブラリーで哺乳類ディスプレイを実施して、結合体が濃縮された集団を回収することが可能であることを示している。
【0302】
実施例15は、β−ガラクトシダーゼでの1ラウンドのファージディスプレイによって選択した集団の、流動電気穿孔を使用した、HEK細胞への導入について説明するものである。前述のように、ブラストサイジン中で哺乳類ディスプレイ細胞集団を選択し、10nMの標識β−ガラクトシダーゼを使用した流動選別に供した。増殖9日後に、10nMのβ−ガラクトシダーゼを使用して、フロ−サイトメトリーによって、75%の細胞が、β−ガラクトシダーゼへの結合に陽性であることが明らかとなった。こうした細胞を選別し、さらに増殖させた。厳密性を推進する能力を示すために、1nMまたは10nMのいずれかの抗体濃度を使用して、標識化を実施した。それぞれの集団から、それぞれ20.3%及び55.9%の細胞を選別した。選別の後、追加の細胞培養はせずに、選別集団から迅速にmRNAを調製した。クローン化、細菌における発現、及びELISA選別(前述同様)に続いて、流動選別時の厳密性が増加するにしたがって、ELISAでの成功率が増加することが明らかとなった。この群から得られたクローン
は、最高シグナルレベルを示し、陽性クローン数も同様に改善した(
図24)。これは、ディスプレイ集団内の選別の厳密性を推進する能力が、得られる抗体の性能良化に反映されることを示している。
【0303】
実施例17.ヌクレアーゼ指向型組込みによる哺乳類ライブラリー産生に向けたT細胞受容体(TCR)遺伝子の組込み
本明細書に記載の方法は、抗体ディスプレイを超える用途を有する。ヌクレアーゼ指向型組込みを使用した、T細胞受容体ライブラリーの選別に向けた可能性を示すために、T細胞受容体の発現を可能にするベクター構築物(plNT20)を構築した。
【0304】
plNT20(
図25a)は、ヒトAAVS遺伝子座を標的とするための二重プロモーターベクターである。当該ベクターは、
図3に示すように左右のホモロジーアームを有する。左AAVSホモロジーアームは、特有なAsiSI部位及びNsi1部位と隣接しており、その後にスプライスアクセプター及びピューロマイシン遺伝子が続いている。左ホモロジーアームの末端と、スプライスアクセプターとの間の配列は、既に説明したものと同一であり、ピューロマイシン遺伝子は、上流エクソンを含むフレーム内でATGから始まる(
図25B及び同様に
図3でブラストサイジン遺伝子向けに示される)。ヌクレアーゼ指向型組込みが正しければ、内在性の上流エクソンまでスプライシングされるピューロマイシン遺伝子のインフレームスプライシングを引き起こすことになり、当該上流エクソンは、それ自体が内在性AAVSプロモーターによって推進されるものであり、これによって、正しい組込みが生じたクローンを選択することが可能になる。ピューロマイシン耐性遺伝子の後には、SV40ポリアデニル化部位が続く。右AAVSホモロジーアームは、特有なBstZ171部位及びSbf1部位と隣接している。
【0305】
plNT20は、pEFプロモーター(pSF−pEF由来、Oxford Genetics カタログ番号OG43)で構成されており、関心遺伝子の、Nhe1/Kpn1部位へのクローン化を可能にするものである。分泌リーダー配列が、Nhe1部位に先行しており、Kpn1部位の後に、
図2に既に示したウシ成長ホルモン(bGHポリA)のポリアデニル化シグナルが続く。下流は、CMVプロモーター(pSF−CMV−f1−Pac1由来、Oxford Genetics カタログ番号OG111)であり、Nco及びNot(
図2に示されるとおり)またはHind3を介したクローン化が可能である。分泌リーダー配列が、Nco1部位に先行しており、カセットの後にbGHポリA部位が続く。
【0306】
T細胞受容体(TCR)のディスプレイ及び濃縮を例示するために、Liら(2005)によって説明され、後にZhaoら(2007)[137、138]によって説明された、癌マーカーを認識するTCRを使用した。c12c2と呼ばれるこのTCRは、HLA−A2上に提示されるペプチドSLLMWITQV(配列識別番号:102)を450nMの親和性をもって認識する。このペプチドは、NY−ESO−1に由来する残基157−165(NY−ESO−1 157−165)に相当する。これは、32μMの親和性を有する1G4と呼ばれる親抗体の親和性が成熟した変異体である。
【0307】
別の癌マーカーを認識する第2のTCRを使用した。親であるMEL5 TCRは、HLA−A2上に提示されるペプチドMART−1 26−35(「T細胞−1によって認識されるメラノーマ抗原」)を認識し、MART−1 26−35は、ペプチド配列ELAGIGILTV(配列識別番号:103)を有する。このTCRは、ファージディスプレイによって親和性が成熟し、クローンα24/β17が得られ、Mudura et al(2013)[139]において、親和性は、0.5nMであったと説明された。TCRと、MHC:ペプチド複合体との複合体の構造は解析されており(pdbコード4JFH)、これ以後、本明細書では、当該クローンを「4JFH」と呼ぶ。同一の親TCRについても、Pierceら(2014)[140]による設計に基づいて操作されており、複合体の構造が解析された。
【0308】
Debetsらによれば、示されたCD3ζドメインを結合すると、天然のヒトTCRが存在するときでさえ、異種性遺伝子の会合を引き起こす傾向がある[141、142]。使用されたCD3ζ要素は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び完全な細胞質ドメインからなるものである。さらに、異種性遺伝子において、ヒト定常ドメインをマウス定常ドメインによって置換しても、内在性のヒト定常ドメインとの会合を上回ってその会合が推進される傾向がある[143]。最終的に、マウス定常ドメインの使用は、ヒトTCRの骨格に対して異種性であるTCR鎖を検出する選択肢を与えるものである。こうした要素をTCR発現カセットの設計に組込んだ。
【0309】
2つ合成遺伝子を設計、合成し、下記の構造を有する遺伝子構築物を生じさせた。
ヒトTCR Vα−マウスα定常−ヒトCD3ζ
ヒトTCR Vβ−マウスβ定常−ヒトCD3ζ
【0310】
c12/c2の可変ドメインが組込まれたα鎖構築物及びβ鎖構築物を含む合成遺伝子配列を
図25c及び
図25dに示す。これらの構築物は、plNT20のNhe1/Kpn1部位及びNco1/Hind3部位にそれぞれクローン化されている。TCRをコードする構築物をplNT20−c12/c2と呼ぶ。最初の実例では、合成遺伝子は、Vα Cαドメイン(Nhe1部位及びNot1部位と隣接)ならびにVβドメイン(TCR c12/c2をコードするNco1/Xho1部位と隣接)が組込まれるように設計した。こうした要素は、こうした制限酵素部位を使用して、代替のTCRによって置き換えることができる。
【0311】
4JFH[139]のVαドメイン及びVβドメインをコードする2つの追加合成遺伝子を作成した(
図25e及び
図25f)。このTCRをコードする構築物をplNT20−4JFHと呼ぶ。
【0312】
ドナーDNA(10
6個の細胞当たり300ngのドナーDNA)として、表7に示す比で、3μgのplNT20−c12/c2及びplNT20−4JHFを使用して、10
7個のHEK293細胞に遺伝子導入した。plNT20−c12/c2は、TCR1と称し、plNT20−4JHFは、TCR2と称す。それぞれ5μgのpZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVS R1 TALENを10
7個の細胞(10
6個の細胞当たりそれぞれ500ng)に添加したが、例外として、試料6の場合は、これを10μgの対照DNA(pcDNA3.0)で置き換えた。DNAは、上記のように、ポリエチレンイミンでの遺伝子導入によって導入した。
【表7】
【0313】
12日間の選択(0.25μg/mlのピューロマイシン)の後、細胞を標的抗原で標識した。上記のTCRによって認識されるペプチド:MHC複合体は、フィコエリトリンで標識された5量体(ProImmune)として提示される。c12/c2は、HLA−A2上に提示されるペプチドSLLMWITQVを認識し、ペプチドSLLMWITQVは、NY−ESO−1 157−165(Proimmune 製品コード390)に相当するものである。4JHF(α24/β17としても知られる)は、HLA−A2上に提示されるペプチドELAGIGILTVを認識し、ペプチドELAGIGILTVは、MelanA/MART26−35(Proimmune 製品コード082)に相当するものである。それぞれの場合において、MHC:ペプチド複合体をフィコエリトリンで標識し、製造者の説明書に従って使用した。
図26(a〜d)は、それぞれのTCRが、予想されるMHC:ペプチド複合体(a,d)に特異的であり、複合体中の非同種ペプチドには結合しない(
図26b、
図26c)ことを示す。それぞれのTCRをコードするDNAに、もう一方をコードする遺伝子を100倍過剰で混合した(試料1〜2、表7)。HEK293細胞に遺伝子導入し、ピューロマイシン中で選択した。ピューロマイシンでの選択の14日後に、抗体陽性細胞の選別を実施した(
図26g、
図26h)。
【0314】
流動選別したアウトプット集団内の濃縮レベルを定量化するために、PCR増幅によってTCR遺伝子を回収し、クローン化後に、それぞれのTCR種の相対的な量を決定した。選別集団から総RNAを単離した。cDNA合成は、実施例16に記載したように実施した。TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を増幅するためのプライマーは、それぞれ1999/2782及び41679/2789を使用した(表8)。PCR増幅は、製造者の推奨プロトコール(EMD Millipore、71086、EMD Millipore)を使用して、KODホットスタートポリメラーゼを用いて実施した。PCR反応条件は、95℃(2分)、次いで95℃(20秒)、60℃(10秒)、70℃(15秒)を25サイクル、その後に70℃(5分)の条件を使用した。増幅したTCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖をNheI/NotIまたはNcoI/XhoIで消化し、互換性部位を用いてベクターへとサブクローン化した(この場合、それぞれpBIOCAM1−Tr−N NheI/NotI切断ベクターまたはpBIOCAM2−Tr−N(NcoI/XhoI)切断ベクターを使用した)。個々のクローンのPCR増幅は、c2c12(TCR1)特異的TCRアルファプライマー(2781)または4JFH(TCR2)特異的TCRアルファプライマー(4JFH−Vα−F)、及びTCRクローンの独自性をアッセイするためのベクター特異的プライマーを用いて実施した。1:100のTCR1/TCR2ドナープラスミド比(表7)を用いた試料1(表7)のTCR1特異的クローンを、HLA−A2上に提示されたペプチドSLLMWITQV(Proimmune、製品コード390)を使用して選別濃縮した後に、コロニーPCRによってTCR1クローンの割合を決定したところ、11/15(73%)まで増加した。HLA−A2上に提示されたペプチドELAGIGILTV(Proimmune 製品コード082)を使用して、100:1のTCR1/TCR2ドナープラスミド比を用いた試料2(表7)を選別によって濃縮し、コロニーPCRによってTCR2クローンの割合を決定したところ、4/15(27%)まで増加した。
【0315】
ヌクレアーゼ指向型組込みを使用したライブラリーの選択を示すために、変異体TCRベータ鎖をコードする遺伝子レパートリーと共に、変異体TCRアルファ鎖をコードする遺伝子レパートリーをクローン化することによって、c12/c2に基づく変異体ライブラリーを創出した。そのようなライブラリーは、オリゴヌクレオチド指向型の変異誘発手法を使用して創出することができ、例えば、Kunkel変異誘発法[144]に基づく方法である。代替として、及び例として、PCR構築手法を使用して、変異体TCRアルファ鎖(Nhe1/Kpn1断片として)及び変異体TCRベータ鎖(CMVプロモーターを含むKpn/Hind3断片として)を創出し、plNT20のNhe1/Hind3部位へとクローン化した。これは、表8に示すプライマーを使用して実施した。
【表8】
【0316】
変異体オリゴヌクレオチドを設計した(プライマー2771)。当該変異体オリゴヌクレオチドは、c12/c2アルファ鎖のCDR3内の2つのアミノ酸位置が無作為化されており、別の位置でセリンまたはスレオニンのいずれかの選択肢を与えるものである(プライマー2771は、
図25gの下側の鎖としても示されている)。プライマー2771をプライマー2780と併せて使用して、末端に不変配列を有するCDR3変異誘発領域が組込まれた、Nhe1クローン化部位から始まる変異体TCRアルファのレパートリーを創出した。プライマー2781は、プライマー2771の不変5’末端に対して相補性である。プライマー2781及びプライマー2783でのPCRによって、Kpn1部位までであるTCRアルファ−CD3ゼータカセットの残りが得られた。2つのPCR断片のPCR構築を使用して、TCRアルファ−CDゼータ断片を創出した。当該断片は、Nhe1及びKpn1での消化後に、plNT20へとクローン化することができる。
【0317】
第2の変異体オリゴヌクレオチド(プライマー2770)を設計した。当該変異体オリゴヌクレオチドは、c12/c2ベータ鎖のCDR3内の2つのアミノ酸位置が無作為化されており、別の位置でバリンまたはロイシンのいずれかの選択肢を与えるものである(プライマー2770は、
図25hの下側の鎖としても示されている)。プライマー2770をプライマー2785と併せて使用し、末端に不変配列を有するCDR3変異誘発領域が組込まれた、Kpn1クローン化部位から始まる変異体TCRベータのレパートリーを創出した。プライマー2787は、プライマー2700の不変5’末端に相補性である。プライマー2787及びプライマー2788でのPCRによって、Hind3部位までであるTCRベータ−CD3ゼータカセットの残りが得られた。これら2つのPCR断片のPCR構築を使用して、TCRベータ−CD3ゼータ断片を創出した。当該断片は、plNT20へとクローン化することができる。Nhe1/Kpn断片、及びKpn1/Hind3断片を、Nhe1/Hind3で消化したplNT20へとクローン化することによって、アルファ鎖のCDR3及びベータ鎖のCDR3の両方に変異が組込まれた完全なレパートリーを創出した。ライゲーションの後に、ライブラリーをエレクトロコンピテントなDH10B細胞へとクローン化した。プラスミドDNAを調製し、前述のように、TALEヌクレアーゼ(pZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVS R1の等モル混合物 Systems Bioscience カタログ番号GE601A−1)をコードするベクターと併せて、当該DNAをHEK293細胞へと遺伝子導入した。
【0318】
c12/c2変異体ライブラリーの変異体アルファ鎖及び変異体ベータ鎖をplNT20へとライゲーションとした後、DNAをDH10B細胞へと電気穿孔した。プラスミドDNAを調製して、ライブラリーをAAVS遺伝子座を標的とするTALEヌクレアーと共に同時導入した。遺伝子導入は、Maxcyte電気穿孔を使用して実施した。増殖及び選択は、上記の通り実施した。遺伝子導入細胞の滴定及びプレートに基づくピューロマイシン中での選択によって、ライブラリーサイズを定量化し、これにより、サイズが5x10
5であるライブラリーが創出されたことが示された。11日間のピューロマイシンでの選択の後、マウスTCRのβ鎖に対して特異的なAPC標識抗体(Life Technologies カタログ番号H57−957)を使用して細胞を標識した。
図26i〜jは、集団におけるクローンの38%が、T細胞受容体を発現していることを示す。このTCR陽性集団の13%が、ペプチド1にも結合した(総集団の5%)。この手法によって、発現またはペプチド:MHC結合活性が改善したクローンを単離することができる。
【0319】
図26から、それぞれのT細胞受容体が、その同種抗原のみを認識したことが見て取れる。さらに、2つの異なる特異性を混合して使用すると、標識抗原を介して、それらのそれぞれを区別することが可能である。この手法によって、親クローンと比較して、標識度合が上昇したライブラリーのサブセットを同定することによって、変異体TCRライブラリー内で、親和性(または発現)が改善したTCRクローンを区別することも可能になる。
【0320】
電気穿孔によって、T細胞受容体遺伝子をJurkat細胞にも導入した。Jurkat細胞を遠心し、製造者の電気穿孔緩衝液(Maxcyte電気穿孔緩衝液、Thermo Fisher Scientific カタログ番号NC0856428))に再懸濁し、最終容積を10
8個細胞/mlとした。OC400電気穿孔キュベットに、一定分量の4x10
7個細胞(0.4ml)を、40μgのDNA(すなわち、1μg/10
6個細胞)と共に添加した。DNAは、ドナープラスミドDNA(plNT20−c12/c2またはplNT20−4JHFまたはplNT20−c12/c2のTCRライブラリー、9.2μg)と、AAVS−SBI TALENをコードするDNA(pZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVS R1 Systems Bioscience カタログ番号GE601A−1)の等モルDNA混合物(全部で30.8μg)と、の混合物からなるものを使用した。TALEN添加無しの試料では、対照プラスミドpcDNA3.0を使用して、インプットDNAを1μg/10
6個細胞とした。代替として、4D−Nucleofector(Lonza)を使用して、Jurkat細胞へとT細胞受容体遺伝子を導入する方法を用いた。当該方法では、SE細胞株キット(Lonza、カタログ番号PBC1−02250)による製造者の説明書に従って、遺伝子導入プロトコールを実施した。簡潔に記載すると、ドナープラスミドDNA(plNT20−c12/c2またはplNT20−4JHFまたはplNT20−c12/c2のTCRライブラリー、0.46μg)と、AAVS−SBI TALENをコードするDNA(pZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVS R1 Systems Bioscience カタログ番号GE601A−1)の等モルDNA混合物(全部で1.54μg)と、の混合物からなる2μgのDNAを、10
6個のJurkat細胞当たりとなるように遺伝子導入した。パルスコード設定は、CL120とし、細胞型プログラムは、Jurkat E6.1(ATCC)細胞に特有なものを使用した。
【0321】
図26は、TCR発現が達成されたと共に、適切なペプチド:MHC分子の認識が達成されたことを示す。これは、TALEヌクレアーゼの使用に依存するものであった(
図26mと
図26nとの比較)。関連ペプチド:MHC分子を使用して、導入TCRを介したシグナル伝達も達成された。
【0322】
plNT20−c12/c2を遺伝子導入したJurkat細胞または非遺伝子導入Jurkat細胞を、96ウェルプレートに、1x10
6/mlの密度で、ウェル当たり200μl播種した。2μg/mlの抗ヒトCD28(BD Pharmingen カタログ番号555725)の存在下または非存在下で、ウェル当たり2μlもしくは6μlのいずれか量のPE標識ペプチド1−MHC5量体(ProImmune)、または2μg/mlの抗ヒトCD3(BD Pharmingen カタログ番号555329)を使用して、細胞を刺激した。37℃、5%のCO
2雰囲気下で、24時間インキュベートした後、CD69の発現を調べることによって、Jurkat細胞の活性化を検出した。細胞は、4℃で45分間、ウェル当たり50μlのPBS+1%のBSA+0.5μlの抗ヒトCD69−APC(Invitrogen、カタログ番号MHCD6905)で染色した。
【0323】
図26(試料o及び試料p)は、CD3での刺激に際したCD69の発現上昇を示す。図は、2μl(q)または6μl(r)のペプチド1:MHCの添加効果も示す。ペプチド:MHCに結合し、CD69を発現している二重陽性細胞の集団が明らかに見て取れる。この実施例は、CD28の存在下でインキュベートされた細胞を示すものであるが、CD28の非存在下でも同一の効果が観測された(未掲載)。
【0324】
この実施例は、代替型の結合体、すなわち、T細胞受容体のライブラリーのヌクレアーゼ指向型組込みの可能性を示すものである。我々は、TCRを発現させ、特異的抗体を使用して、細胞表面のTCR発現を検出することが可能であることを示している。我々は、こうしたT細胞受容体が、そのそれぞれの標的を特異的に認識することも示している。我々は、変異体ライブラリーも構築し、これによって、改善結合体の選択を可能にした。最終的に、我々は、T細胞におけるTCRシグナル伝達の活性化に基づく、ライブラリーの選別が可能であることを示した。本明細書で、我々は、培養したヒトT細胞株を使用した。Maxcyte電気穿孔によって、初代T細胞へDNAを導入することも可能である。初代Tリンパ球の単離方法及び調製方法は、当業者に知られている(例えば、Cribbs et al.,2013、Oelke et al.2003)[145、146]。TCRが遺伝子導入されたリンパ球を、多量体であるペプチド:MHCに対して曝露することで、ペプチド:MHC多量体に対する曝露[146]または適切なペプチドが負荷された抗原提示細胞に対する曝露[146、147]のいずれかを介した活性化を達成することができる。活性化は、レポーター遺伝子の発現、またはCD69などの内在性遺伝子の発現上昇、のいずれかを介して検出することができる[104、148]。
【0325】
実施例18.哺乳類細胞上でのキメラ抗原受容体ライブラリーのディスプレイ
T細胞の活性化は、通常、T細胞受容体(TCR)と、特異的なペプチド:MHC複合体と、の相互作用を介して生じる。次いで、これは、CD3及び他のT細胞シグナル伝達分子を介して指示されるシグナル伝達を引き起こす。TCRが指示する標的認識の代替として、scFv(または代替の結合体)が認識する分子に対するT細胞活性化を再指示する様式において、単鎖Fvなどの代替結合性分子を、下流シグナル伝達分子との融合体として、T細胞上に提示することができることが示された。このように、T細胞活性化は、もはや、ペプチド:MHC複合体を対象としたTCRによる分子認識に限定されるものではなく、他の細胞表面分子を対象にすることができる。非TCR結合実体が、シグナル伝達成分に融合しているこの代替形式は、「キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)」(CAR)と称される。T細胞の場合は、これは、T細胞活性化を再指示する、重要かつ有用な手段であることが示されてきた。
【0326】
CARへと取り込まれるためには、任意の所与の標的にどのような最適エピトープまたは親和性特徴が備わっているべきであるかは未だ明らかではない[103]。リンカーの長さなどのCAR設計の特徴、または膜貫通ドメインの選択は、最適エピトープを構成するものに影響を与え得るものである。標的細胞上及び非標的細胞上の抗原密度と、シグナルドメインの選択と、を組み合わせることで、最適親和性の必要事項に影響を与えることができる。T細胞上にキメラ抗原受容体のライブラリーを提示する能力は、最適な結合特異性、結合形式、リンカーの長さ/配列、シグナル伝達分子と融合した変異体等の1つまたは複数を同定する機会を与えるものである。本明細書で、我々は、哺乳類細胞におけるキメラ抗原受容体ライブラリーの構築に向けた、ヌクレアーゼ指向型組込みの有用性を示している。ベクターplNT21(
図27a)は、Nco1/Not1制限酵素部位と隣接するscFvなどの結合体の簡便な発現及び分泌に向けた、単一のCMVプロモーターを有するベクターであり、上流のリーダー配列及び下流の融合パートナーのインフレーム発現を可能にするものである(先に
図8に示したとおり)。plNT21におけるCAR発現カセットは、先に
図3に記載したようにAAVSホモロジーアームと隣接している。
【0327】
ベクターplNT21−CAR1(
図27a及び
図27c)は、単鎖Fvなどの結合体を、CD3ζの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインに融合させるものである(
図27c及び
図25でTCR発現に向けて記載したとおり)。この形式は、「第1世代」のキメラ抗原受容体と称されることが多い。他の同時刺激分子に由来するシグナル伝達ドメインも追加シグナルを与えるために使用されており、こうしたものは、シグナル伝達を改善することが示された。こうしたものは、第2世代及び第3世代のキメラ抗原受容体と称される。例えば、plNT21−CAR2(
図27b、
図27d)は、結合体(この場合、Nco1/Not1断片として簡便にクローン化される)を、以前に説明した第2世代のドメイン(WO2012/079000A1)に融合するものであり、当該ドメインは、
CD8に由来するヒンジドメイン及び膜貫通ドメインと、
4−1BBシグナル伝達ドメインと、
CD3ζシグナル伝達ドメインと、
からなる。
【0328】
例として、数多くの異なる結合体群をplNT20−CAR1及びplNT20−CAR2のNco/Not1部位にクローン化した。CD19は、これまでに、B細胞悪性腫瘍を標的とする数多くの異なる研究に使用されており、Sadelain et al.(2013)[103]においてそうした研究が引用されている。以前に説明した抗CD19抗体(WO2012/079000A1)(FMC63と呼ばれる)は、VH−リンカー−VLの配置またはVL−リンカー−VHの配置のいずれかにおいて、合成scFv遺伝子として調製し(それぞれFMC63 H−LまたはFMC L−H)、
図27Eは、FMC63 H−Lの配列を示す。FMC63 L−Hは、5’末端及び3’末端で、それぞれNco1及びNot1と隣接する、VL−リンカー−VHの配置の可変ドメインで形成した。
【0329】
対象として、代替の結合特異性を有するscFvもplNT20へとクローン化した。こうしたものには、抗−FGFR1_A[105]及び抗デスミン対照抗体[7]が含まれる。さらに、CAR融合体として形成された代替結合体形式の例として、lox1を認識するAdhiron[152](
図29a及び29b)を導入した(説明は実施例19を参照のこと)。
【0330】
CAR形式で提示される結合体ライブラリーの創出を示すために、メソセリン及びCD229で選択されたscFv編成抗体の集団をクローン化した。メソセリンは、中皮腫を含む数多くの癌において高度に発現する細胞表面糖タンパク質である。メソセリンを対象とするCARを含む、抗体に基づく形式の多くが開発中、及び臨床試験中である[149]。CD229は、別の潜在的な腫瘍関連抗原に相当するものであり、これは、慢性リンパ性白血病及び多発性骨髄腫などの癌における免疫療法によって標的とされる可能性があるものである[150、151]。
【0331】
実施例6及び参考文献7において説明されるように、「McCafferty」ファージディスプレイライブラリーを使用した選択によって、メソセリンまたはCD229のいずれかを認識する抗体集団を創出した。2ラウンドの選択を実施し、プライマーM13leadseq及びプライマーNotmycseq(実施例6)を使用して、scFvをコードする遺伝子を回収した。増幅産物は、Nco1/Not1で切断してからゲルで精製し、plNT21−CAR2へとクローン化した。TALEヌクレアーゼ切断によって、こうしたものをHEK293細胞のAAVS遺伝子座に向けて導入し、CD229向けには、4.8x10
5のライブラリー、メソセリン向けには、6.4x10
5のライブラリーを生成させた(これは、TALEヌクレアーゼの非存在下で遺伝子導入した試料と比較して、ライブラリーサイズが30倍及び53倍に増加したことを示すものである)。
【0332】
PEIでの遺伝子導入によって、plNT20−CAR1及びplNT20−CAR2をHEK293細胞に導入した。ここでは、Freestyle293培地(Lifetech、カタログ番号12338−026)中のドナープラスミドDNA(6μlのplNT20−CAR1またはplNT20−CAR2と、AAVS−SBI TALEN(pZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVS R1 Systems Bioscience カタログ番号GE601A−1)をコードするDNAの等モルDNA混合物(全体で20μg)と、の混合物)に、直鎖状PEI(52μl、1mg/ml、Polysciences Inc.)を添加し、室温で10分間インキュベートした。その後、当該混合物を、20mlのHEK293懸濁細胞(1x10
6個細胞/ml)を含む125mlの通気(vented)三角フラスコに添加した。plNT20−CAR1及びplNT20−CAR1は、電気穿孔によってJurkat細胞にも導入した。Jurkat細胞を遠心し、製造者の電気穿孔緩衝液(Maxcyte電気穿孔緩衝液、Thermo Fisher Scientific カタログ番号 NC0856428))に再懸濁し、最終濃度を10
8個細胞/mlとした。一定分量の4x10
7個の細胞(0.4ml)を40μgのDNA(すなわち、1μg/10
6個細胞)と共にOC400電気穿孔キュベットに添加した。DNAは、ドナープラスミドDNA(plNT20−CAR1及びplNT20−CAR2、9.2μg)と、AAVS−SBI TALEN(pZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVS R1 Systems Bioscience カタログ番号GE601A−1)をコードするDNAの等モルDNA混合物(全部で30.8μg)と、の混合物からなるものを使用した。TALEN添加無しの試料では、対照プラスミドpcDNA3.0を使用して、インプットDNAを1μg/10
6個細胞とした。
【0333】
Lightning−Link Rapid Dye−Light 633結合キット(Innova Biosciences、カタログ番号325−0010)を使用して、様々な抗原の蛍光標識を実施した。FGFR1及びFGFR2の調製は、実施例15で説明されている。Lox1及びCD229は、R and D Systems(それぞれ、カタログ番号
1798−LX−050、及びカタログ番号898−CD050)から入手し、CD19−Fc及びメソセリンは、(それぞれ、AcroBiosystems カタログ番号CD9−H5259、及びカタログ番号MSN−H526x)から入手した。
【0334】
図28bは、第2世代のCAR構築物(plNT21−CAR2−FGFR1_A)内のヌクレアーゼ指向型抗FGFR1抗体[105]のディスプレイを示す。
図28dでは、第2世代のキメラ抗原受容体(plNT21−CAR2−lox1)との融合体としての、代替骨格分子(Adhiron、参考文献[152])のディスプレイについても示している。
図28f及び
図28gでは、メソセリンまたはCD229で選択されたscFvライブラリー内の陽性クローンについても示している。
【0335】
この実施例では、HEK細胞及びJurkat細胞へとCARを導入したが、これは、例えば、電気穿孔を使用して[135]、(例えば、Sadelaineら(2013)[103]によって説明されるように)ヒトTリンパ球などの初代細胞へ構築物を導入することによって、同様に実施することができる。リンパ球におけるCAR発現に向けた発現構築物は、以前に説明されたように、例えば、5’側及び3’側の非翻訳領域、ポリAの長さ等の多様性を介して、mRNAの安定性及び翻訳を最適化することによって最適化され得る[135]。初代Tリンパ球またはTリンパ球細胞株へと導入されたTCAR構築物のシグナル伝達は、標的抗原を発現する細胞への曝露によって誘導するか、または例えば、表面に固定化された抗原もしくはビーズ上に提示された抗原といった多量体抗原を使用して誘導することができる[104、148]。
【0336】
実施例19.ヌクレアーゼ指向型組込みを介して哺乳類細胞で構築された代替骨格ライブラリーのディスプレイ
結合体ライブラリーの構築に向けて説明される方法は、抗体及びT細胞受容体のディスプレイにとどまることなく、それを超えて用いることができる。数多くの代替骨格について説明されたことで、変異体ライブラリーの構築が可能になり、そこから新規の結合特異性が単離された。これは、例えば、Tiede et al.(2014)[152]及び当該文献中の参考文献において説明されている。Tiedeら(2014)によって説明された例では、植物から得られたフィトシスタチン(phytocystatin)に由来するコンセンサス配列に基づく安定な多用途骨格が使用された。この骨格は、Adhironと称され、
図29aは、lox1に結合するように選択されたAdhironをコードする合成遺伝子を示す(WO2014125290A1)。
図29Bは、代替のlox1結合体(lox1B)を示す。両方を合成し、plNT20_CAR2のNco1/Not1部位へとクローン化し、下流に存在するパートナーとの融合体を創出した。
【0337】
ライブラリーは、(例えば、Kunkel変異誘発法または実施例17において上に記載したPCR構築によって)ループ残基を無作為化することによって構築することができる。例として、
図29cは、実施例17において記載したものと同一手法を実施した後のライブラリー構築に有用でである変異体オリゴヌクレオチドの設計を示す。この場合、無作為化は、可変数のNNS残基を導入することによって達成されるが、当業者に知られる代替方法を使用することができる。
【0338】
別の実施例として、
図29d及び29eは、ヌクレアーゼ指向型組込みによって、ノッチン骨格[156]に基づく結合体のライブラリーを創出する手段を示す。ノッチンは、約30個のアミノ酸のペプチドであり、当該ペプチドは3つのジスルフィド結合によって安定化されており、1つが残りの2つを通り抜けて「結び目(knotted)」構造を創出しているものである。
図29dは、トリプシン結合ノッチンMCoTI−IIを示し、5’末端にNco1部位、及び3’末端にNot部位を有することで、本明細書に記載のベクターでのインフレーム発現を可能にするものである。ライブラリー構築に向けた実施例として、第1ループ(
図29dの下線部)の6個のアミノ酸を変異させ、可変数のアミノ酸を有する形とすることができる。
図29eは、コドンVNS(V=A、CまたはG、S=CまたはG)を使用して、ループ1の6個のアミノ酸を10個の無作為化アミノ酸で置き換える変異誘発方針を示す。VNSコドンは、システインを除く17個のアミノ酸をコードする24個のコドンを包含するものである。この方針は、例示目的のみのものであり、当業者であれば、代替の変異誘発方針を知っているであろう。
【0339】
実施例20.CRISPR/Cas9を使用した抗体ライブラリーのヌクレアーゼ指向型導入
CRISPR/Cas9を介したヌクレアーゼ指向型組込みは、「Geneart CRISPRヌクレアーゼベクターキット」(Lifetech A21175)を使用して実施した。このシステムでは、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、標的に対して相補性であるCRISPR RNA(crRNA)の発現を推進し、当該相補性CRISPR RNAは、トランス活性化crRNA(tracrRNA)に連結される。crRNA及びtracrRNAは、同一「GeneArt CRISPRヌクレアーゼベクター」(製造者の説明書を参照のこと)上にコードされるCasタンパク質の切断特異性を指示するガイドRNAを共に作り出すものである。ベクターは、適切な3’突出部を有する短い二本鎖オリゴヌクレオチドがクローン化された直鎖化プラスミドとして提供される。切断特異性は、クローン化された区間の配列によって決定される。上記のヒトAAVS遺伝子座の切断を指示するために、2つの異なる標的化配列を設計した。
当該配列は、下記のとおりである。
CRISPR1二本鎖DNA挿入断片
5’ GGGGCCACTAGGGACAGGATGTTTT(配列識別番号:115)
3’ GTGGCCCCCGGTGATCCCTGTCCTAC(配列識別番号:116)
CRISPR2二本鎖DNA挿入断片
5’ GTCACCAATCCTGTCCCTAGGTTTT(配列識別番号:117)
3’ GTGGCCAGTGGTTAGGACAGGGATC(配列識別番号:118)
【0340】
得られたガイドRNAは、上記のTALEヌクレアーゼと同一のAAVS領域内での切断を標的とするものである(CRISPR2は、CRISPR1とは逆配向である)。したがって、発現カセットの組込みを指示するために、先に使用したAAVSホモロジーアームを、こうしたCRISPRガイドRNAが指示する組込みに使用することができる。直鎖化ベクター及び二本鎖オリゴヌクレオチドを連結し、エレクトロコンピテントなDH10B細胞へと形質転換した。挿入断片が正しくクローン化されたかを配列決定によって確認し、プラスミドDNAを調製した。Cas9/CRISPR2構築物(CRISPR2オリゴヌクレオチドを包含する)をドナーDNAと共に遺伝子導入した。当該ドナーDNAは、1段階のファージディスプレイでの選択によって選択したβ−ガラクトシダーゼライブラリー(実施例15)をコードするものである。こうしたものを、OC−400組立品(assembly)と共にMaxcyte電気穿孔システムを使用して、HEK293細胞へと遺伝子導入した。4x10
7個の細胞に、23.2μgのドナーDNAを遺伝子導入した。当該ドナーDNAは、β−ガラクトシダーゼでの1ラウンドのファージディスプレイによって選択され、pD6にクローン化されたscFv遺伝子の集団に相当するものである。細胞に、77μgのCas9−CRISPR2プラスミド、または77μgのTALENプラスミド(pZT−AAVS1 L1及びpZT−AAVSをそれぞれ38.5μg)または77μgの対照プラスミドのいずれかを同時導入した。
【表9】
【0341】
Cas9/CRISPR2の遺伝子導入によって形成された形質転換体数の滴定(ブラストサイジン耐性コロニーの測定による)によって、播種した10,000個の細胞から1053個のブラストサイジン耐性コロニーが生成したことが明らかとなり、これは、10.5%の遺伝子導入効率に相当するものであった(表9)。TALEヌクレアーゼ指向型遺伝子導入の場合では、5.1%の遺伝子導入効率を達成した。対照的に、Cas9/CRISPR2構築物が存在しない場合、達成遺伝子導入効率は、僅か0.36%であった。
【0342】
Cas9タンパク質及びガイドRNAを細胞へと導入するための、プラスミドDNAを使用した遺伝子導入に代わるものとして、Cas9タンパク質(Toolgen,Inc.)及びガイドRNAからなる核タンパク質複合体を直接的に導入することも可能である。ガイドRNAは、単一転写物として、T7プロモーターに由来する試験管内転写を使用して、Toolgen,Inc.によって調製された。当該単一転写物には、以下に示すとおり、標的DNA(太字)に対する相補性配列が先行する形で、TRACR配列(下線有り)が導入されている[訳者注:四角で囲まれている下記配列箇所は、PCT/GB2015/051287では太字である]。
CRISPR1 RNA(配列識別番号:119:
5’
GGGGGGCCACUAGGGACAGGAU[GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU]
CRISPR2 RNA(配列識別番号:120)
5’GGGUCACCAAUCCUGUCCCUAG[GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU]
上記のように、Maxcyte電気穿孔によって、6.6μgのCs9タンパク質、4.6μgのRNA、及び10μgのドナーDNA(pD6中で抗FGFR1_A抗体をコードする)を10
7個のHEK293細胞へと導入した。CRISPR1 RNA及びCRISPR2 RNAで達成した遺伝子導入効率は、それぞれ2.2%及び2.9%であり、Cas9:RNAタンパク質複合体を添加しなかった場合では、それぞれ0.7%及び0.8%であった。
【0343】
こうしたガイドRNAは、CRISPR1及びCRISPR2によってコードされるものと同一の配列を標的とする。代替として、crRNA及びtracrRNAを化学合成によって作成することができる(例えば、GE Dharmacon)。
【0344】
実施例21:ライゲーションまたはマイクロホモロジー媒介性末端結合(MMEJ)によるヌクレアーゼ媒介性の抗体遺伝子挿入
相同組換え(HR)は、大きなDNA断片の正確な挿入に有用であるが、これには、長いホモロジーアームが組込まれた大きな標的化ベクターの構築が必要である。このことは、大きなライブラリーの構築を難化し得るものであり、これは、DNA構築物が大きくなると形質転換効率が減少するためである。あるいは、ヌクレアーゼ認識配列が、標的化ベクターへと組込まれているのであれば、染色体DNAと、標的化ベクターとの間で単純なライゲーション反応を生じさせることができる。ライゲーション反応は、例えば、5’突出部を残す二本鎖切断(DSB)を作ることができるジンクフィンガーヌクレアーゼ(Orland et al.,2010)[45]もしくはTALEN(Cristea et al.,2013)[22]を用いた「粘着末端」、またはCRISP/Cas9リボ核タンパク質を用いた「平滑末端」のいずれかで生じ得る。ベクターpD7−Sce1の構築によって、I−SceIメガヌクレアーゼを使用したライゲーションによる、ヌクレアーゼでの遺伝子組込みの実施例を示した。pD7は、pD6(
図8)から得られたものであるが、左右のAAVSホモロジーアームを短い二本鎖オリゴヌクレオチドによって置き換えたものである。pDベクターシリーズの左AAVSホモロジーアームは、EcorR1及びNsi1の制限酵素と隣接している(
図3参照)。pD6からpD7−Sce1へと変換するために、プライマー2778及びプライマー2779によって形成した二本鎖オリゴヌクレオチドの挿入断片によって、左AAVSホモロジーアームを置き換えた。当該挿入断片は、EcoRI/NsiIによって形成される「粘着末端」と互換性である「粘着末端」を有するI−SceIメガヌクレアーゼ認識配列をコードするものである。右側AAVSホモロジーアームは、Asc1及びMlu1の制限酵素部位と隣接している(
図3)。右ホモロジーアームは、AscI/MluI消化によって形成される「粘着末端」と互換性である「粘着末端」を有する二本鎖オリゴヌクレオチドの挿入断片によって置き換えた。当該挿入断片は、プライマー2723及びプライマー2724によって形成したものである。
【表10】
【0345】
Fgfr1及びFgfr2を認識する抗体(実施例15)をpD7へとクローン化し、pD7−SceI抗Fgfr1及びpD7−SceI抗Fgfr2をそれぞれ創出した。これらを、I−Sce1発現プラスミド(実施例11、
図16)と共に、組込みI−Sce1認識部位を含むHEK293クローン6F細胞株(実施例11参照)へと同時導入した。
【0346】
染色体及び標的化ベクターにおいて、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALEヌクレアーゼによって生成したDSBのライゲーションも達成することができる。標的化ベクター上のジンクフィンガーヌクレアーゼ認識部位またはTALEN認識部位を反転させることによって、「偏性ライゲーションでゲートされた相同組換え(Obligate ligation−gated recombination)」またはObLiGaRe(Maresca et al.,2013)[153]と命名された方法において、挿入による産物がもはや切断の標的とならないことを確実にすることができる。pD7−ObLiGaReベクターは、pD7−Sce1の創出に向けて上で記載したものと同一の方法で生成させることができる。この場合、左側ホモロジーアームは、反転したTALEN認識部位(太字で示される)及びスペーサー領域をコードする、プライマー2808及びプライマー2809からなるオリゴヌクレオチドによって置き換える。[訳者注:四角で囲まれている配列箇所は、PCT/GB2015/051287では太字である]。右側ホモロジーアームは、プライマー2723及びプライマー2809によって、上記のように置き換える。
【0347】
染色体のDSBと、標的化ベクターのDSBとの間の単純なライゲーション反応は、非相同末端結合(NHEJ)によって媒介されるものがあるが、これに代わるものとしては、相同媒介性末端結合(MMEJ)がある。MMEJは、エラープローン末端結合に向けて、5〜25bpのマイクロホモロジー配列を使用するDSBの修復機構である(McVey and Lee,2008)[154]。正確な遺伝子組込みに向けた方針が考案され、これは、ゲノム配列及び標的化ベクターは同一のTALEヌクレアーゼペア認識配列を含むが、前方半分と、後方半分とが交換された異なるベクタースペーサー配列を含むというものである。ゲノム配列及びベクターは、同一のTALENペアで切断することができ、マイクロホモロジーを有するDNA末端を介してMMEJが起こる。得られる組込み標的化ベクターは、もはやTALEヌクレアーゼの標的とはならず、これは、短化したスペーサー領域は、TALEヌクレアーゼによる切断に最適ではないためである(Nakade et al.,2014)[155]。
【0348】
MMEJ AAVS標的化ベクターであるpD7−MMEJは、pD7−Sce1の創出に向けて上で説明したものと同一の方法で創出することができる。この場合、左側ホモロジーアームを、TALEN認識部位(太字で示される)及び交換したスペーサー領域(下線で示される)をコードする、プライマー2768及びプライマー2769からなるオリゴヌクレオチドによって置き換える[訳者注:四角で囲まれている配列箇所は、PCT/GB2015/051287では太字である]。右側ホモロジーアームは、プライマー2723及びプライマー2809を使用して、上記のように置き換える。
【0349】
実施例22:ROSA26アームと隣接する単一(CMV)プロモーターカセットの創出に向けたプライマーの設計(plNT19−ROSA)
この実施例は、ヌクレアーゼ指向型の方法によって、哺乳類細胞のゲノムへと抗体または代替結合性分子の遺伝子を組み込むことができ、レポーターまたは表現型のいずれかによる選別によって、所望の機能で選別されたクローンが得られることを示すことを意図する。この実施例は、以前に示されており、これは、抗体遺伝子がマウス胚性幹(ES)細胞の染色体へと組込まれており、個々のESコロニーを異なる条件に供した際の多能性を維持する能力で選別するというものであった[105]。多能性の表現型を維持したESコロニーから回収された抗体遺伝子は、FGFR1/FGF4シグナル伝達経路を遮断することが示された。以前に報告されたこの方法に関する問題は、相同組換えによってもたらされるライブラリーのサイズが小さくあり得るということであり、したがって、大きな結合性分子ライブラリーに存在する稀なクローンを直接的に選別するというその能力を限定するものである。抗体及び結合性分子の遺伝子組込みに向けた、ヌクレアーゼ媒介性の遺伝子組込み方法は、より効率的であることで、生成するライブラリーサイズが大きくなり、それによって、表現型またはレポーター細胞での選別による機能性抗体の同定が可能である哺乳類細胞ライブラリーを生成する可能性が上昇する。
【0350】
ドナー標的化ベクターであるplNT19は、直接的な機能選別に向けて、ヌクレアーゼ指向型の方法によって、抗体遺伝子をマウスROSA26遺伝子座へと導入するために設計されている。plNT19は、scFv−Fv融合体の発現に向けた単一CMVプロモーターのベクターである。発現カセットは、マウスROSA26アームと隣接している。上流エクソンが翻訳されないため、スプライスアクセプターがピューロマイシン遺伝子に先行しており、さらに下流に、ピューロマイシン遺伝子へと繋がるコザック(KOZAK)配列を有する。
【0351】
plNT18のAAVS左ホモロジーアーム及びピューロマイシン耐性遺伝子を、ROSA26左ホモロジー、スプライスアクセプター、最適化されたコザックコンセンサス配列、及びピューロマイシン耐性遺伝子をコードするカセットによって置き換えた。ROSA26左ホモロジーアームは、内部のNotI部位をノックアウトした2つの断片として、pGATOR(Melidoni et al.,2013(105))から最初に増幅した。2つの断片は、プライマーJ60/2716及びプライマー2715/2706によって生成させたものであり、プライマーJ60及びプライマー2706を使用した構築PCRで結合させ、AsiSI及びNsiIで消化した。スプライスアクセプターは、プライマー2709及びプライマー2710を使用してpGATORから増幅し、ピューロマイシン耐性カセットは、プライマー2745(スプライスアクセプター及び最適化コザックコンセンサスに対して相同性である領域を含む)ならびにプライマーJ59を使用して増幅した。スプライスアクセプター領域及びピューロマイシン耐性カセットは、プライマー2709及びプライマーJ59を使用した構築PCRで結合し、Nsi1及びBgl2で消化した。ROSA26左アームホモロジー及びスプライスアクセプター−ピューロマイシンカセットは、plNT18(AsiS1/Bgl2)ベクターと連結した。
【0352】
ROSA標的化ベクターを完成させるため、CMV−scFv−Fcカセットの下流に、導入し、plNT18 AAVS右ホモロジーアームと置き換えた。これは、プライマーJ61及びプライマーJ62を使用した、pGATOR(Melidoni et al.,2013)に存在するROSA右ホモロジーアームのPCRによって実施し、一方にBstZ171及びもう一方にSbf1を有する断片を増幅した。プライマー61は、ROSA ZFN切断部位から上流65bpに位置する内在性Sbf1部位を除外するように位置させた。
図31は、ROSA26左ホモロジーアーム及びROSA26右ホモロジーアームの配列を示す。
【表11】
【0353】
抗体または代替結合性分子をコードするplNT19の、マウスROSA26遺伝子座への組込みは、実施例20に記載したように、CRISPR/Cas9を使用した、抗体ライブラリーのヌクレアーゼ指向型導入によって達成することができる。本明細書では、「Geneart CRISPRヌクレアーゼベクターキット」(Lifetech A21175)を使用して、CRISPR/Cas9を介したヌクレアーゼ指向型組込みを示すことができる。このシステムでは、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、トランス活性化crRNA(tracrRNA)に連結された標的相補性CRIPSR RNA(crRNA)の発現を推進する。crRNA及びtracrRNAが共にガイドRNAを作り出し、当該ガイドRNAは、同一の「GenArt CRISPRヌクレアーゼベクター」(製造者の説明書を参照のこと)上にコードされるCas9タンパク質の特異的切断を指示する。ベクターは、適切な3’末端部を有する短い二本鎖オリゴヌクレオチドがクローン化された直鎖化プラスミドとして提供される。そして、切断特異性は、クローン化された区間の配列によって決定される。プライマー2701/2702及びプライマー2703/2704(表10参照)によってコードされる2つの異なる標的化配列を設計し、マウスROSA26の切断を指示した。
【0354】
代替として、ROSA26遺伝子座内を切断するジンクフィンガーヌクレアーゼについて説明されている[34]。こうしたものは、Sce−Iメガヌクレアーゼ向けに記載したように(
図16、実施例11)、適切な発現ベクターにおいて構築することができる。
【0355】
ドナープラスミドplNT19のヌクレアーゼ媒介性組込みは、内在性の受容体またはリガンドに結合することができる分泌抗体を発現するクローンを生じさせることになり、受容体シグナル伝達経路のアンタゴニズム[105、107]またはアゴニズム[47、106、108]のいずれかをもたらす。細胞表現型と、分泌抗体の機能活性とのつながりを可能にするために、細胞を半固体培地に低密度で播種することができ、その結果、個々のクローンが増殖し、誘導可能なプロモーターを介して抗体発現を開始することができる[105]。あるいは、恒常的なプロモーターを抗体遺伝子の発現に用いることができる。半固形培地であれば、内在的に発現した抗体の局所的な濃度上昇を維持することになり、その結果、個々の細胞から生じるコロニーに対して特異的な任意の表現型変化が、その特定クローンから発現した特有の抗体によって引き起こされることになる。レポーター遺伝子に融合したRexプロモーターまたはNanogプロモーターなどの迅速に応答するレポーターを用いるのであれば、半固体培地において低密度で細胞を播種し、回収した後、フローサイトメトリーで選別することが可能であろう。あるいは、plNT19における抗体遺伝子の下流に存在する終始コドンを、細胞表面に抗体を繋留することが可能な膜貫通ドメインによって置き換えることができる。plNT19において抗体遺伝子の下流に存在する終始コドンは、小胞体(ER)保留シグナル配列によっても置き換えることができ、当該小胞体(ER)保留シグナル配列は、抗体をER内に留めて、内因性に発現する標的受容体または任意の分泌タンパク質もしくは分泌ペプチドを潜在的に減少させることが可能なものである。plNT19は、マウスROSA26遺伝子座を標的とするために、特別に設計されており、マウスES細胞における、抗体または代替結合性分子の表現型の選別に用いることができる。しかしながら、ヌクレアーゼ指向型である抗体遺伝子組込み方法または結合体分子遺伝子組込み方法は、レンチウイルスの手法を使用して説明されたものなど[47、106、107、108]の他の機能選別に対しても適用することができる。
【0356】
参考文献
以下に記載の参考文献及び本開示における任意の箇所で引用した他の参考文献はすべて、参照によって、それらの全体が本明細書に組込まれる。
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