(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、算出された前記各立体物の位置および回転角に関するデータと、予め取得した前記立体物の姿勢に関するデータとに基づくパターンマッチングによって、前記各立体物の姿勢を判定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の立体物印刷システム。
前記印刷テーブルは、前記立体物を載置して上流側から下流側に移動可能なベルトを備えるベルトコンベアで構成されることを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載の立体物印刷システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一例としての実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1および
図2を参照して、第1の実施形態に係る立体物印刷システムS1の構成例について説明する。
【0014】
ここで、
図1は、第1の実施形態に係る立体物印刷システムS1の全体構成を示す機能ブロック図、
図2は、第1の実施形態に係る立体物印刷システムS1の構成例を示す説明図である。
【0015】
図1に示すように、立体物印刷システムS1は、印刷対象としての複数の立体物10を載置する印刷テーブルTと、この印刷テーブルT上に載置した各立体物10、10…の位置および向きを検出する検出手段101と、この検出手段101による検出結果に基づいて各立体物10に対応させた印刷データを生成する印刷データ生成手段102と、この印刷データ生成手段102で生成された印刷データにより、各立体物10への印刷を実行する印刷手段103と、検出手段101、印刷データ生成手段102および印刷手段(例えば、フラットベッド型のUVインクジェットプリンタ等)103の動作を制御する制御手段104とを備えている。
【0016】
検出手段101は、所定の光学センサや印刷テーブルTに載置された各立体物10の3次元の姿勢情報を取得する3次元センサ200で構成することができる。
【0017】
印刷テーブルTには、光学センサ(3次元センサ)200で検出可能な検出基準15が四隅に印刷して形成されている。
【0018】
検出手段101は、立体物10の表面について予め複数の検出ポイントを指示するXYスライダ301等で構成される指示手段105を備える。なお、
図2おいて符号Bは、光線を示し、符号300はプリンタの筐体を示す。
【0019】
また、検出手段101は、各立体物10について指示手段で指示された検出ポイントの位置および検出基準の位置を検出し、ワークステーション104A、104B等で構成される制御手段104は、検出された検出ポイントの位置および検出基準の位置に基づいて、印刷テーブルT上における各立体物10の位置および回転角を算出する。
【0020】
また、制御手段101は、算出された各立体物10の位置および回転角に関するデータと、予め取得した立体物10の姿勢に関するデータとに基づくパターンマッチングによって、各立体物10の姿勢を判定するようにできる。
【0021】
印刷データ生成手段102は、ハードウェアとしてのワークステーション104Bおよび所定のデータ処理ソフトウェア等で構成することができる。
【0022】
印刷データ生成手段102は、制御手段104で判定された各立体物10の姿勢と、各立体物10の表面に印刷する描画情報とに基づいて、第1の印刷データ(描画データ)を生成する第1生成手段102Aと、検出手段101で検出された各立体物10の位置と回転角に応じて第1の印刷データに回転処理を施して適正化した第2の印刷データを生成する第2生成手段102Bとを有する。
【0023】
なお、印刷テーブルTに載置された各立体物10について高さを検出する高さ検出手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0024】
この場合には、印刷データ生成手段は、高さ検出手段で検出された各立体物10の高さ情報に基づいて、第2の印刷データを補正するようにできる。
【0025】
また、光学センサが、印刷テーブルTに載置された各立体物10の3次元の姿勢情報を取得する3次元センサで構成される場合には、第1生成手段102Aは、3次元センサによる検出結果に基づいて第1の印刷データを生成し、第2生成手段102Bは、3次元センサ或いは他の検出手段で取得される各立体物10の位置と回転角に応じて第1の印刷データに回転処理を施して適正化した第2の印刷データを生成するようにしてもよい。
【0026】
また、光学センサ200は、各立体物10の表面への印刷状態を検出し、制御手段104は、印刷状態の検出結果に基づいて印刷の良否を判定するようにしてもよい。
【0027】
(第1生成手段の処理について)
ここで、第1生成手段102Aの処理の詳細について説明する。
【0028】
まず、立体物10についての3次元形状情報を有する3DCADデータと、立体物10の表面に施す彩色および描画に関する情報を有するデザインデータとを第1生成手段102Aに入力する。
【0029】
第1生成手段102Aには、3DCADデータに印刷テーブルT上の姿勢情報を含めて入力する。
【0030】
なお、第1生成手段102Aを構成するワークステーション104Bの操作画面上で、3DCADデータから印刷テーブルT上で最も安定する姿勢を指示決定するようにできる。
【0031】
次いで、印刷テーブルT上の立体物姿勢情報に対応した3DCADデータと描画情報を合成し、平行光透視像の条件で2次元レンダリングデータを抽出する。
【0032】
次に、抽出した2次元レンダリングデータと、レンダリングデータに対応する奥行情報から第1の印刷データ(描画データ)を生成する。
【0033】
より具体的には、一般的に印刷装置は平面に2次元データを印刷するので、平面から離れた奥行に対する印刷特性は平面上への印刷特性とは異なっている。この平面とは異なる奥行印刷特性を予め保存しておき、保存した特性を参照して、レンダリングデータに対応する奥行情報からの最適な描画データを生成する。
【0034】
例えば、インクジェット印刷装置の場合には、インクドロップレットの飛翔特性に応じて奥行に対する印刷特性に依存する。そこで、比較的遠くの位置へのインクドロップレットの着弾精度は悪くなることによる印刷特性の乱れを補うために、奥行のある輪郭部はレンダリングデータを拡張して最適な描画データとする。
【0035】
(印刷レンダリングデータの生成手順)
図3から
図5を参照して、第1の実施形態に係る立体物印刷システムS1における印刷レンダリングデータの生成手順について説明する。
【0036】
なお、本実施形態では、印刷対象としての立体物10として、マスコット人形D1を例示する。
【0037】
図3に示す生成手順では、第1生成手段102Aを構成するワークステーション104Bの操作画面400上で、マウス等のポインティングデバイスなどを用いて、マスコット人形D1a〜D1dの向き等を操作して、マスコット人形D1の姿勢を決定する。
【0038】
次いで、
図4に示す生成手順では、決定した姿勢におけるマスコット人形D1の3DCADデータとデザインデータ(
図4等に示す例では、服のデザインデータ)W1を操作画面400上で合成する。
【0039】
図5に示す生成手順では、平行光透視像の条件で2次元レンダリングデータを抽出し、この2次元レンダリングデータと、このレンダリングデータに対応する奥行情報から描画データW1aを生成する。
【0040】
(検出手段の具体例について)
次に、
図2等を参照して、検出手段101としての読取り装置の実施例について説明する。
【0041】
図2に示す実施例では、読取り装置(検出手段)101は、フラットベッド型のUVインクジェットプリンタ103等を収容する筐体300の上面側に配置されるXYスライダ301と、このXYスライダ301によってXY方向に移動可能なデジタルカメラから成る3次元センサ200とから構成されている。
【0042】
ここで、UVインクジェットプリンタ103の印刷データは、立体物10の印刷テーブルT上の位置に合致した位置に生成される必要がある。
【0043】
描画位置精度は、事前の調査結果に基づく目標値として200μとし、UVインクジェットプリンタ103の印刷テーブルT上の立体物10の位置を100μの精度、回転角度を1度で検出可能としている。
【0044】
また、3次元センサ200は、画素数2478万のデジタルカメラで構成され、XYスライダ301は印刷テーブルT上を8分割した検出エリアA1〜A8(
図7等参照)で撮影するように前記デジタルカメラを移動させる。
【0045】
そして、ワークステーション104Bにインストールされている読取用ソフトウェアの処理により、デジタルカメラによる立体物10の基準点(具体例は後述する)の指定と、読み取り結果から印刷テーブル上の位置と回転角度を演算する。
【0046】
なお、撮影時の振動等の影響で読み取り画像に誤差が発生しないようにXYスライダ301の加速減速制御を行い、検出時間短縮と、読取り精度とを両立するために各検出エリア間の移動時間は1〜4秒とすることが望ましい。
【0047】
また、上述のように画素数2478万のデジタルカメラを用いた場合において、印刷テーブルTの大きさは、30cm×42cmとした。
【0048】
このような条件において、読み取り領域に相当する印刷テーブルTの大きさと読み取り解像度の関係から、1回の撮影における検出エリアA1〜A8の大きさは、15cm×10.5cmとした。
【0049】
そして、デジタルカメラを印刷テーブルTの平面と平行な平面を移動させるXYスライダ301を印刷テーブルTから約80cmの高さに配置した。
【0050】
なお、印刷テーブルT上に配置される立体物10の高さ寸法が撮影視野角により印刷テーブルT上の位置と一致しないことによる誤差を小さくすることが印刷精度上、重要である。
【0051】
予め把握できる高さについては補正演算が可能であるが、立体物10の寸法誤差や立体姿勢誤差等の影響を排除するには原理的に視野角を小さくする必要がある。
【0052】
即ち、高さ誤差0.5mmの影響が読み取り誤差0.05mmの範囲となるよう視野角5.7度以下を満たすように設計することが好ましい。
【0053】
(印刷基準に基づく読み取り基準マークおよびパターンマッチングについて)
デジタルカメラで読み取る立体物10の印刷テーブルT上の位置情報の基準点は印刷基準と高精度に一致させる必要がある。
【0054】
そのため、印刷テーブルT上に印刷用シートを固定し、その印刷用シート上に
図8に例示するような基準マーク(検出基準)15を印刷した。
【0055】
この基準マーク15との位置関係を撮影情報から決定し、印刷データを生成し、印刷を行うようにしている。
【0056】
より具体的には、例えばA3(297mm×420mm)サイズの印刷テーブルT上にテーブルと同等サイズのPETフイルムを固定し、検出マークをエリアA1〜A8毎に印刷した(
図7〜
図10参照)。
【0057】
図8、
図10等に示す例では、各エリアA1〜A8の基準点を交点とする十字線上に等距離で4つの円を印刷した。
【0058】
そして、検出手段101で、この4つの円をパターンマッチングで検出し、4つの円の中心点を求め、対向する中心点を直線で結びその交点を基準点として決定する。
【0059】
これにより、高精度に印刷手段103の印刷基準と検出基準を一致させることができる。
【0060】
また、デジタルカメラによる撮影情報から各立体物10の位置と回転角(印刷テーブルT平面内での回転角)を高精度で、且つ短時間で決定するために、立体物10の輪郭情報の2か所以上の特徴点を
検出ポイントとして指示し、パターンマッチング処理を行う。
【0061】
即ち、例えば
図6(a)に示すように、予め立体物10の輪郭情報を取得し、2か所の輪郭の特徴点P1、P2を
検出ポイントとして指示する。
【0062】
次いで、デジタルカメラの読み取り画像情報からパターンマッチングによって読み取り基準点Q1、Q2を抽出する(
図6(b)参照)。
【0063】
そして、2点の読み取り基準点Q1、Q2を抽出した後に、その立体物の重心位置Cと回転角θ1を決定する。
【0064】
この輪郭データを用いて、
図6(b)、
図7で示すように、立体物10の印刷テーブルT上の位置と姿勢(印刷テーブルTの平面内での回転角θ1)を検出するように、読み取り基準点を2点以上指示する。
【0065】
図7(a)に示す例では、印刷テーブルTのエリアA1〜A8に、2〜3個の立体物10がランダムな方向で載置されている。
【0066】
ここで、エリアA4を例にすると、各立体物10a〜10cについて、
図7(a)の脇に示す手法で、読み取り基準点に基づいて、位置(x1,y1)および回転角(θ1)を決定する(
図7(b)参照)。
【0067】
そして、上述のようにして取得した印刷テーブルT上に配置した全ての立体物10の各々の位置と回転角θ1の情報を、第1の印刷データ(描画データ)を生成する第1生成手段102Aに転送する。
【0068】
次いで、第2生成手段102Bにより、各立体物10の位置(x1,y1)および回転角(θ1)に応じて第1の印刷データに回転処理を施して適正化した第2の印刷データを生成する。
【0069】
なお、第2の印刷データを生成は、前記読み取り基準点を印刷した際のデータ基準点との位置関係を一致あるいは規定の値とするようにできる。これにより、読み取り判定位置と印刷位置との高精度な一致を行うことができる。
【0070】
また、
図7(a)に示す例では各立体物は印刷テーブルTのエリアA1〜A8の各エリア内に載置されているが、エリアA1〜A8を跨った位置であっても各処理をエリア結合させることで可能となる。
【0071】
さらに、立体物もしくは描画データが複数有る場合であっても、本発明の適用により同様に高精度の印刷を行うことが可能である。
【0072】
(印刷の実行例)
まず、
図9(a)および
図10(b)に示すように、複数の立体物10を印刷テーブルT上に配置する。
【0073】
この際に、各立体物10の配置は事前に決めた印刷テーブルT上での姿勢を維持していれば印刷テーブルTの平面内での回転角や位置は自由である。また、立体物10の数量も印刷テーブルT上に配置できる範囲内であれば制限はない。
【0074】
そして、各立体物10について、上述の手法により、位置と回転角を検出し、その検出結果に基づいて生成した印刷データにより印刷手段103を駆動して、各立体物10への印刷を実行する。これにより、
図9(b)、
図10(a)に示すような印刷物10Aを得ることができる。
【0075】
また、第1の実施形態に係る立体物印刷システムS1において、
図11に示すように、印刷テーブルTを、立体物10を載置して上流側から下流側に移動可能なベルト(例えば、無限軌道状のベルト)Bを備えるベルトコンベア700で構成することができる。
【0076】
ベルトBは、図示しない駆動装置によって、D10方向(図上は、右方向)に移動される。
【0077】
ベルトBの表面には、検出手段200で検出可能な検出基準(読取り基準マーク)15が複数にわたって印刷されている。
【0078】
ここで、検出手段200は、印刷手段としてのインクジェット式の印刷装置130よりも上流側に配置されている。なお、
図11において、符号10Aは、印刷手段130によって所定の印刷が施された立体物を示す。
【0079】
(第2の実施の形態)
図12〜
図25を参照して、第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2の構成例について説明する。
【0080】
なお、第1の実施形態に係る立体物印刷システムS1と同様の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0081】
ここで、
図12は、第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2の全体構成を示す機能ブロック図、
図13は、立体物印刷システムS2の要部の構成を示すブロック図である。
【0082】
図12に示すように、第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2は、印刷データ生成手段102が、第1生成手段102A、第2生成手段102Bに加えて第3生成手段102Cを備え。印刷手段103が走査印刷ヘッド130を備える点が、第1の実施形態に係る立体物印刷システムS1と異なっている。
【0083】
この走査印刷ヘッド130は、印刷テーブル上を順次高速に走査して移動を行うことによって印刷テーブル上の全面を高速に印刷することを可能としている。
【0084】
ここで、
図24に示すように、走査印刷ヘッド130が高速に走査(例えば、走査方向D20)する印刷手段である場合には、吐出されたインクドロップレット300Aは斜めに飛翔する。
【0085】
なお、インク粒子の飛翔角の概算(想定値)は、例えば突出速度:5m/sec、ヘッド走査速度:0.5m/sec、atan0.1=5.7degなどである。
【0086】
また、インクドロップレット200Aは、走査印刷ヘッド130の走査に伴う気流の影響により、インクドロップレット300Bのように、飛翔軌道が曲線状となる場合もある。
【0087】
このように、インク飛翔角の影響により立体表面が曲面である場合に、インクドロップレット300Bの着弾位置が平面上とは異なることとなり、直線性や寸法精度に影響を及ぼしてしまう。
【0088】
図25に示す例では、走査印刷ヘッド130の走査方向がD20の場合に、90度ごとに向きを変えた立体物10a〜10dに対して、線状の印刷P20a〜P20dを施した。
【0089】
その結果、走査方向がD20と略平行な線状の印刷P20a、P20cでは直線性が維持されている。
【0090】
一方、走査方向がD20と略直交する線状の印刷P20b、P20dでは直線性が失われていることが分かる。
【0091】
そこで、第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2では、印刷手段103は、インクジェット式の走査印刷ヘッド130を備えた印刷装置で構成され、印刷データ生成手段102は、走査印刷ヘッド130から射出されるインク粒子(インクドロップレット)の飛翔角と、各立体物の描画面の形状とに基いて、最適化した印刷データを生成する第3生成手段102Cを設けた。
【0092】
そして、ワークステーション等で構成される制御手段104は、第3生成手段102Cで最適化した印刷データに基いて印刷装置(印刷手段103)を制御するようになっている。
【0093】
これにより、走査印刷ヘッド130から吐出されるインクドロップレットを所望の位置に着弾させて、印刷精度を向上させることができる。
【0094】
なお、第3生成手段102Cは、
図13のブロック図に示すように、描画面の立体形状データの記憶手段(例えば、フラッシュメモリ等)501と、印刷データ最適化手段502とを備えている。第3生成手段102Cは、例えばCPU、RAM等のハードウェアと、後述の補正処理等を実行するソフトウェアとの協働によって実現される。また、補正処理の詳細については、後述する。
【0095】
また、第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2において、前出の
図11に示すように、印刷テーブルTを、立体物10を載置して上流側から下流側に移動可能なベルト(例えば、無限軌道状のベルト)Bを備えるベルトコンベア700で構成するようにしてもよい。
【0096】
第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2において、検出手段としての3次元センサ200は、デジタルカメラ等で構成される2次元センサ200Aと、立体物10を照らすLEDライト等で構成される照明手段250とから構成されている。
【0097】
図14および
図15(a)に示す構成例では、照明手段250としてのLEDライトは、2次元センサ200Aの周囲に、アーム部材251によって90度毎に4つ設けられている。
【0098】
なお、照明手段250としてのLEDライトは、立体物の姿勢を把握するために所定の陰影をつける観点から複数個であることが好ましく、例えば5個以上設けるようにしてもよい。
【0099】
また、
図15(b)に示すように、複数のLED等をリング状に配置した照明手段260をアーム部材251によって2次元センサ200Aの周囲に取り付けるようにしてもよい。
【0100】
そして、2次元センサ200Aは、照明手段250(260)によって形成される立体物10の描画面の陰影を検出して立体物10の3次元姿勢を取得する。
【0101】
ここで、
図16は、立体姿勢の検出原理を示す説明図、
図17は、立体姿勢の検出における照明角と姿勢角の例を示す説明図、
図18は、立体姿勢の検出における照明角と姿勢角の他の例を示す説明図である。
【0102】
図16に示すように、照明手段250のライトの位置が図上右側(LZ+方向)に有る場合の立体物10への照射角を−θ、照明手段250のライトの位置が図上左側(LZ−方向)に有る場合の立体物(例えば、人形の顔部)10への照射角を+θとする。
【0103】
そして、所定の照明角度(例えば、−45度、0度、+45度)による立体物10の凹凸陰影パターン(照明角と姿勢角の組み合わせによる)を
図17のように取得してデータベース化してフラッシュメモリ等に格納する。
【0104】
これにより、例えば
図11に示すベルトコンベア700のベルトB上に載置された立体物10の凹凸陰影を検出手段200で取得し、データベース化されたパターンと照合することにより、各立体物10の立体角(立体姿勢)を検出することができる。
【0105】
なお、図示は省略するが、立体物10の上下方向および横方向(いわゆるXYZ方向)の陰影変化のパターンを取得してデータベース化して格納するようにしてもよい。これにより、各立体物の立体角(立体姿勢)をより高精度に検出することができる。
【0106】
また、
図18(a)、(b)に示すように、所定の明暗パターン801を立体物10に照射し、その立体物10の明暗パターンの変化によって各立体物10の立体角(立体姿勢)を検出するようにしてよい。
【0107】
(印刷データの最適化について)
ここで、補正処理の詳細について説明する前に、第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2における印刷データの補正(最適化)の仕組みについて説明する。
【0108】
第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2では、印刷手段103としてインクジェット式の印刷ヘッド130を備えた印刷装置を用いている。
【0109】
そのため、印刷ヘッド130の走査方向への移動および気流の影響により、印刷ヘッド130から射出されるインク粒子が飛翔する軌道は垂直直下への軌道とは異なる。
【0110】
なお、インク粒子の飛翔角の概算(想定値)は、例えば突出速度:5m/sec、ヘッド走査速度:0.5m/sec、atan0.1=5.7degなどである。
【0111】
また、立体物10への印刷では、高さの異なる位置(即ち、凹凸を有する立体物の表面)にインク粒子を正確に着弾させる必要がある。
【0112】
即ち、2次元の印刷対象(例えば、印刷用紙等)用に生成された印刷データを立体物にそのまま投影して印刷を実行してしまうと、インク粒子の着弾位置が当初の目標位置とズレてしまい、所望の印刷結果を得られないという問題を生じる。
【0113】
したがって、立体物10に対して所望の印刷結果を得るためには、インク粒子の軌道および高さの異なる位置への着弾位置のズレ等を考慮した補正を行って最適化した印刷データを生成する必要がある。
【0114】
そこで、第3生成手段102C等において、印刷ヘッド130から射出されるインク粒子の飛翔角と、各立体物10の描画面の形状とに基いて、最適化した印刷データを生成する補正処理を行う。
【0115】
(補正処理について)
次に、
図19のフローチャートおよび
図20〜
図23の説明図を参照して、第2の実施形態に係る立体物印刷システムS2で実行される補正処理の処理手順について説明する。
【0116】
補正処理が開始されると、まず、検出手段101によって立体物10の平面回転角を取得してステップS11に移行する。
【0117】
ステップS11では、画素単位の3次元データと対になった元デザインデータを制御手段104の記憶装置等から読み出す。
【0118】
ここで、元デザインデータは、立体物10の標準姿勢における平面投影法で得た基本印刷データに相当する。
図20に例示する座標では、ハッチを付した画素(領域)PD1が基本印刷データに該当する。
【0119】
基本印刷データは、1画素毎(
図20に示す例では、画素(x7,y9))に、高さ情報Hと、隣接画素を含む曲面情報(
図20に示す例では、画素(x7,y9)のy9切片における曲面情報)とを紐付けしたデータであり、制御手段104の記憶装置等に格納されている。
【0120】
ステップS12では、立体物10の立体姿勢を標準姿勢の変位角から検出してステップS13に移行する。
【0121】
ステップS13では、画素毎に、インク飛翔角によるインク着弾位置を予測する。
【0122】
図21(a)、(b)に示す例は、立体物10の平面回転角180度、立体姿勢の変位角(x軸上で5度)の変位を検出した場合のインク着弾位置の予測例である。
【0123】
この予測例に示すように、平面回転角が180°で立体姿勢が5°である場合には、インクの飛翔距離が長くなり着弾位置が基準位置よりも遠くまで及んでいることが分かる。
【0124】
図21(a)、(b)に示す例では、立体物10の印刷面の形状が、図示するように凸面の形状になっていることと、高さ(インク吐出面400からの距離)が異なることによって、インクの飛翔軌道300C、300Dおよび着弾位置に違いが生じる。
【0125】
このようなインク着弾位置の予測を各画素について実行して、インク着弾位置の予測データを生成する。
【0126】
次いで、ステップS14では、各画素毎にインク着弾位置のインク着弾位置の予測データと目標着弾位置とのズレを算出する。
【0127】
図22に示す例では、
図22(a)に示す元デザインデータPD1について、
図22(b)に示すようにインク着弾位置はD11方向にズレる予測となっている。
【0128】
次に、ステップS15では、目標着弾位置となるようにインク着弾位置を補正した補正印刷データ(例えば、
図22(c)に示す補正印刷データPD2)を生成して処理を終了する。
【0129】
なお、インク着弾位置のズレの予測や、インク着弾位置を補正の演算に関し処理時間を高速に行うために、予め演算結果をフラッシュメモリ等に格納するようにしてもよい。
【0130】
即ち、例えば
図23に示すように、立体姿勢角ごとに平面回転角と印刷データを関連付けした演算結果を印刷データ群(補正印刷データ)としてテーブル形式等でフラッシュメモリ等の不揮発性メモリやハードディスク装置等に格納できる。
【0131】
また、格納した演算結果の量を実用的な規模で十分な演算精度を得るために、複数の格納された演算結果に補完処理を加えるようにしてもよい。
【0132】
このようにして生成した補正印刷データを用いて、各立体物10への印刷を実行することにより、ベルトコンベア700で順次搬送されて来るランダムな方向や傾きで載置された複数の立体物10に対して、所望の印刷を正確に施すことが可能となる。
【0133】
ここで、インク飛翔角と立体物10の描画面形状との関係に応じた最適な印刷データは、予め準備された各姿勢に対応する最適印刷データ群を生成して記憶装置等に格納するようにしてもよい。
【0134】
また、準備された各姿勢に対応する最適印刷データ群に、検出された立体姿勢と平面回転角に対応するデータが欠落している場合は、その立体物に限って白紙印刷データ(例えば、立体物に何も印刷しない状態)とするようにしてもよい。
【0135】
また、欠落データが生じたジョブの履歴に応じて、欠落データの演算と格納を並行して行うようにしてもよい。この場合には、最適印刷データ群の成長を自己学習によって進めて、生産性の向上を図ることができる。
【0136】
以上述べたように、本実施の形態に係る立体物印刷システムおよび立体物印刷方法によれば、従来のように印刷物を得るまでの試行錯誤を不要とすることができ、生産効率を高めることができる。
【0137】
また、印刷用治具を用いることなく、複数の立体物に高精度で高精細な印刷を施すことができ、印刷コストを低廉化することができる。
【0138】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0139】
例えば、印刷手段103は、UVインクジェットプリンタに限定されず、種々の印刷方式のプリンタを適用することができる。
【0140】
また、制御手段104もワークステーションに限定されず、パーソナルコンピュータ等を用いるようにしてもよい。
【0141】
また、3次元センサを、照明手段と2次元カメラで構成する場合に、立体物10の3次元姿勢の決定は、描画面の陰影データと予め記憶してある立体物の3次元姿勢に対応した陰影データとの比較演算によって行うようにしてもよい。
【0142】
また、立体物に対する照射角が異なる複数の照明手段(LEDライト250、260等)を設け、順次、照明工程と2次元カメラによる撮影工程を繰り返して行い、得られた複数の撮影結果から立体物の立体姿勢を検出するようにしてもよい。