特許第6440939号(P6440939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6440939消耗品を無効化する手段を備えたエアロゾル生成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440939
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】消耗品を無効化する手段を備えたエアロゾル生成システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   A24F47/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-545408(P2013-545408)
(86)(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公表番号】特表2014-501106(P2014-501106A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】EP2011073793
(87)【国際公開番号】WO2012085205
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】10252236.4
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】フリック ジャン−マルク
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−165882(JP,A)
【文献】 特開平11−089551(JP,A)
【文献】 特開平03−232481(JP,A)
【文献】 国際公開第97/048293(WO,A1)
【文献】 特開2010−006344(JP,A)
【文献】 特開2004−097617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル生成システムであって、
エアロゾル形成基質を貯蔵するための貯蔵部と、
エアロゾルを生成するために前記エアロゾル形成基質を加熱するように構成された電気ヒータと、
前記貯蔵部又は前記電気ヒータと通信する制御回路と、
前記制御回路からの無効化信号に応答して、前記エアロゾル生成システム内で前記貯蔵部を動作不能にするための無効化手段と、
を備え、前記制御回路は、前記電気ヒータの温度又は抵抗が所定の閾値を上回っているという判定に基づいて前記貯蔵部内のエアロゾル形成基質の量がいつ閾値量を下回るかを判定又は推定し、前記貯蔵部内の前記エアロゾル形成基質の量が前記閾値量を下回っていると判定又は推定された時に、前記無効化信号を送出するように構成され、
前記エアロゾル生成システムは、電気作動式喫煙システムであり、
前記無効化手段は、前記貯蔵部を永久に動作不能にするために前記無効化信号によって損傷するように構成された構成部品である、
ことを特徴とするエアロゾル生成システム。
【請求項2】
本体をさらに備え、前記貯蔵部は、前記本体に結合するように構成された消耗カートリッジである、
ことを特徴とする請求項1に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記エアロゾル生成システムの前記本体内に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項4】
前記構成部品は電気ヒューズである、
ことを特徴とする請求項1に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記エアロゾル生成システム内の異常を検出した時に前記無効化信号を送出するように構成される、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエアロゾル生成システム。
【請求項6】
エアロゾル形成基質を貯蔵するための貯蔵部と、エアロゾルを生成するために前記エアロゾル形成基質を加熱するように構成された電気ヒータと、前記貯蔵部と通信する制御回路と、該制御回路からの無効化信号に応答してエアロゾル生成システム内で前記貯蔵部を動作不能にするように構成された、前記貯蔵部に付随する無効化手段とを備えた電気作動式喫煙システムにおける方法であって、前記無効化手段は、前記貯蔵部を永久に動作不能にするために前記無効化信号によって損傷するように構成された構成部品であり、前記方法は、
前記制御回路を使って、前記電気ヒータの温度又は抵抗が所定の閾値を上回っているという判定に基づいて前記貯蔵部内のエアロゾル形成基質の量が閾値レベルを下回るかを判定又は推定するステップと、
前記貯蔵部内の前記エアロゾル形成基質の量が前記閾値レベルを下回っているという判定を受けて、前記制御回路から前記無効化手段に無効化信号を送信するステップを含む、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル生成システムに関する。具体的には、本発明は、エアロゾル形成基質が液体であり液体貯蔵部に収容されているエアロゾル生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2007/078273号には、電気式喫煙具が開示されている。バッテリ電源で駆動するヒータ式気化器と一連の小開口部を通じて連通する容器内に液体が貯蔵される。ヒータは、電気絶縁支持体上に取り付けられた螺旋状に巻かれた電気ヒータの形をとる。使用時には、ユーザの口でバッテリ電源のスイッチが入ることによりヒータが作動する。ユーザがマウスピースを吸引すると、複数の孔を通じて容器内に空気が吸い込まれ、ヒータ式気化器を越えてマウスピースに入り込み、その後ユーザの口に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/078273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の喫煙システムを含む先行技術のエアロゾル生成システムには確かに多くの利点があるが、特に液体貯蔵部の取り扱いに関する設計には依然として改善の機会がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、
エアロゾル形成基質を収容する貯蔵部と、
エアロゾル形成基質からエアロゾルを生成するためのエアロゾル生成要素と、
貯蔵部又はエアロゾル生成要素と通信する制御回路と、
制御回路からの無効化信号に応答して、エアロゾル生成システム内で貯蔵部を動作不能にするための無効化手段と、
を備えたエアロゾル生成システムが提供される。
【0006】
無効化手段は、貯蔵部の一部であることが好ましい。エアロゾル生成システムは、電気作動システムであることが好ましい。エアロゾル生成要素は、電気作動型であることが好ましい。貯蔵部は、エアロゾル生成システムの本体から分離可能であり、制御回路は、エアロゾル生成システムの本体内に配置されることが好ましい。
【0007】
いくつかの理由により、貯蔵部を自動的に無効化できることが有利である。貯蔵部が空又はほぼ空の場合、或いはシステム異常が存在する場合、システムは、例えばエアロゾルの粒子サイズ又は化学組成などの所望の特性のエアロゾルを生成できないことがある。また、液体貯蔵部が空又はほぼ空の場合、貯蔵部が無効化されることが、エアロゾル形成基質を交換する必要があることをユーザに知らせる手段となる。また、貯蔵部の自動的な無効化を使用して、粗悪な、不適当な、さらには有害な基質材料が補充された貯蔵部の再使用を防ぎ又は少なくとも困難にすることもできる。
【0008】
このエアロゾル生成システムは、本体をさらに備え、貯蔵部は、本体に結合するように構成された消耗カートリッジを形成し、又はその一部であることが好ましい。消耗カートリッジを無効化する一方で、本体を再使用可能部品として維持できることが有利である。本体は、制御回路及びユーザインターフェイスなどのより高価な構成部品を含むことができる。
【0009】
無効化手段は、無効化信号によって切り替わり又は損傷するように構成された電気部品であることが好ましい。この部品は、十分に高い電流信号によって飛ぶことができる電気ヒューズであることが好ましい。無効化信号は、ヒューズを飛ばすのに十分な電流であることが好ましい。しかしながら、スイッチ又はトランジスタなどの他の電気部品を使用することもできる。一方、貯蔵部を無効化するための他の手段を使用することもできる。例えば、制御回路を、貯蔵部を光学的にチェックした後でエアロゾル生成要素を作動できるように構成することができ、また無効化手段を、エレクトロクロミック材料、又は無効化信号に応答してヒータにより加熱される貯蔵部上のサーモクロミックインクとすることもできる。
【0010】
或いは、(例えば、電気的、電磁的又は光学的)論理回路を用いて貯蔵部を一意の識別子によって認識又は識別する場合、同じ回路を用いてこの回路のメモリに「無効化ビット」(フラグビット)を書き込むことにより貯蔵部を「無効化」し、従ってその下にあるエアロゾル生成システムとともに使用できなくすることができる。一方、貯蔵部がこのような論理回路を含む場合、貯蔵部自体に無効化ビットを記憶し、従ってこの貯蔵部が別のエアロゾル生成システムとともにさらに使用されるのを防ぐことができる。
【0011】
制御回路は、貯蔵部内のエアロゾル形成基質の量がいつ閾値量を下回るかを判定又は推定し、貯蔵部内のエアロゾル形成基質の量が閾値量を下回っていると判定又は推定された時に無効化信号を送出するように構成されることが好ましい。制御回路は、貯蔵部内の基質の量を、直接測定、間接測定、又は計算によって判定することができる。例えば、システムは、バランスなどの、貯蔵部の質量を直接測定する手段を含むことができる。制御回路は、消費された基質の質量を、システムの使用をモニタすることによって計算するように構成することができる。例えば、制御回路は、エアロゾル生成要素が作動した回数に基づいて基質消費を計算することができる。或いは、制御回路は、貯蔵部が空になりつつあることを示すシステムの挙動変化を使用して、貯蔵部内に残っている基質の量を推定することができる。
【0012】
液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の閾値量は、絶対量であっても、又は百分率値などの相対量であってもよい。
【0013】
液体エアロゾル形成基質の量が減少している場合、例えば液体貯蔵部が空又はほぼ空である場合、エアロゾル生成要素に供給される液体エアロゾル形成基質が不十分となる場合がある。エアロゾル生成要素としてヒータを使用する場合、この結果、ヒータの温度が上昇することがある。従って、電気回路は、温度センサにより感知されたヒータの温度により、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量が所定の閾値に減少していると判定することができる。
【0014】
制御回路は、システム内の異常を検出した時に無効化信号を送出するように構成されることが好ましい。例えば、ヒータを使用してエアロゾルを生成する場合、温度センサを用いてヒータ又は基質のあらゆる過熱を検出することができる。この温度センサは制御回路に結合され、温度センサが感知した温度が第1の温度閾値を超えた場合、制御回路が無効化信号を送出する。これにより、システムは、望ましくない又は有害なエアロゾル成分の生成を防ぐことができるので有利である。
【0015】
エアロゾル形成基質は、エアロゾル生成システムでの使用に適した、例えば沸点などの物理特性を有することが好ましい。エアロゾル形成基質は、液体であることが好ましい。この液体は、揮発性タバコ香味化合物を含むタバコ含有材料を含み、加熱時にはこの材料が液体から放出されることが好ましい。これとは別に又はこれに加えて、液体は、非タバコ材料を含むこともできる。液体は、水、溶媒、エタノール、植物抽出物、及び天然又は合成香味料を含むことができる。液体は、エアロゾルフォーマをさらに含むことが好ましい。好適なエアロゾルフォーマの例に、グリセリン及びプロピレングリコールがある。
【0016】
貯蔵部は、基質が劣化するリスクが有意に低減されるように、貯蔵部内の基質が外気、及び実施形態によっては光から保護されるように構成されることが好ましい。さらに、高レベルの衛生状態を維持することもできる。
【0017】
エアロゾル生成要素は、基質を加熱するように構成されたヒータであることが好ましい。しかしながら、振動トランスデューサなどの他のエアロゾル生成要素を使用することもできる。
【0018】
ヒータは、電気ヒータであることが好ましい。電気ヒータは、単一の電気加熱要素を含むことができる。或いは、電気ヒータは、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上などの、複数の加熱要素を含むこともできる。これらの1又は複数の加熱要素を、液体エアロゾル形成基質を最も効果的に加熱するように適切に配置することができる。
【0019】
制御回路は、温度又は抵抗測定に応答して無効化信号を送出するように構成されることが好ましい。制御回路は、加熱要素の温度又は抵抗が所定の閾値を超えたという判定に応答して無効化信号を送出するように構成されることがより好ましい。
【0020】
(単複の)電気加熱要素は、電気抵抗材料を含むことが好ましい。好適な電気抵抗材料としては、以下に限定されるわけではないが、ドープセラミックスなどの半導体、(例えば、ケイ化モリブデンなどの)「導電性」セラミックス、炭素、黒鉛、金属、金属合金、及びセラミック材料と金属材料で作られた複合材料が挙げられる。このような複合材料は、ドープセラミックス又は非ドープセラミックスを含むことができる。好適なドープセラミックスの例には、ドープ炭化ケイ素がある。好適な金属の例には、チタン、ジルコニウム、タンタル、及び白金族から得た金属がある。好適な金属合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル含有合金、コバルト含有合金、クロム含有合金、アルミニウム−チタン−ジルコニウム含有合金、ハフニウム含有合金、ニオブ含有合金、モリブデン含有合金、タンタル含有合金、タングステン含有合金、スズ含有合金、ガリウム含有合金、マンガン含有合金、及び鉄含有合金、並びにニッケル基超合金、鉄基超合金、コバルト基超合金、ステンレス鋼基超合金、Timetal(登録商標)、鉄−アルミニウム基合金、及び鉄−マンガン−アルミニウム基合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals社の登録商標である。複合材料では、エネルギー移動の動態及び必要な外部物理化学的特性に応じて、任意に絶縁材料に電気抵抗材料を埋め込み、或いは電気抵抗材料を絶縁材料でカプセル化又はコーティングすることができ、逆もまた同様である。加熱要素は、2つの不活性材料層の間で絶縁された金属エッチング箔を含むことができる。この場合、不活性材料は、Kapton(登録商標)、全ポリイミド箔又は雲母箔を含むことができる。Kapton(登録商標)は、デュポン社(E.I. du Pont de Nemours and Company)の登録商標である。
【0021】
電気加熱要素は、あらゆる好適な形をとることができる。例えば、少なくとも1つの電気加熱要素は、加熱ブレードの形をとることができる。或いは、少なくとも1つの電気加熱要素は、異なる導電性部分を有するケーシング又は基板、或いは電気抵抗金属チューブの形をとることもできる。貯蔵部は、使い捨て加熱要素を組み込むことができる。或いは、エアロゾル形成基質を貫通する1又はそれ以上の加熱針又は加熱ロッドも適することができる。或いは、電気加熱要素は、可撓性シート材料を含むことができる。その他の選択肢としては、例えば、Ni−Crワイヤ、白金ワイヤ、タングステンワイヤ又は合金ワイヤなどの加熱ワイヤ又はフィラメント、又は加熱プレートが挙げられる。任意に、この加熱要素を、硬質担体材料内に又はその上に堆積させることができる。
【0022】
加熱要素は、熱を吸収して蓄えた後にこの熱を徐々に放出してエアロゾル形成基質を加熱できる材料を含むヒートシンク又はヒートリザーバを含むことができる。ヒートシンクは、好適な金属材料又はセラミック材料などのあらゆる好適な材料で形成することができる。この材料は、高熱容量(妥当な蓄熱材料)を有し、又は高温相変化などの可逆過程を通じて熱を吸収した後に放出できる材料であることが好ましい。好適で妥当な蓄熱材料としては、シリカゲル、アルミナ、炭素、グラスマット、ガラス繊維、鉱物、アルミニウム、銀又は鉛などの金属又は合金、及び紙などのセルロース材料が挙げられる。可逆的相変化を通じて熱を放出するその他の好適な材料としては、パラフィン、酢酸ナトリウム、ナフタリン、ワックス、ポリエチレンオキシド、金属、金属塩、共晶塩の混合物、又は合金が挙げられる。
【0023】
ヒートシンク又はヒートリザーバは、エアロゾル形成基質と直接接触して、蓄えられた熱を基質に直接伝達できるように配置することができる。或いは、ヒートシンク又はヒートリザーバ内に蓄えられた熱を、金属チューブなどの熱導体によってエアロゾル形成基質に伝達することもできる。
【0024】
ヒータは、伝導を通じて液体エアロゾル形成基質を加熱することができる。ヒータは、基質と少なくとも部分的に接触することができる。或いは、熱伝導要素によってヒータからの熱を基質に伝導することもできる。
【0025】
或いは、使用時に電気作動式エアロゾル生成システムを通じて吸い込まれる流入外気にヒータが熱を伝達し、この外気が対流によってエアロゾル形成基質を加熱するようにしてもよい。外気は、エアロゾル形成基質を通過する前に加熱することができる。或いは、最初に基質を通じて外気を吸い込み、その後に加熱してもよい。
【0026】
エアロゾル形成基質が室温で液体であり、エアロゾル生成システムが、液体エアロゾル形成基質を貯蔵部からエアロゾル生成要素に運ぶための毛細管芯をさらに含むようにすることが好ましい。
【0027】
毛細管芯は、貯蔵部内の液体と接触するように配置されることが好ましい。毛細管芯は、貯蔵部内に延びることが好ましい。この場合、使用時には、毛細管芯内の毛細管作用により、液体が貯蔵部から電気ヒータ(又はその他のエアロゾル生成要素)に移動する。1つの実施形態では、毛細管芯が第1の端部及び第2の端部を有し、第1の端部が貯蔵部内に延びて内部の液体に接触し、電気ヒータが、第2の端部内の液体を加熱するように配置される。ヒータが作動すると、ヒータの少なくとも1つの加熱要素により、毛細管芯の第2の端部の液体が気化して過飽和蒸気を形成する。この過飽和蒸気が空気流と混ざり、この空気流に含まれて運ばれる。流れている間に蒸気が凝縮してエアロゾルを形成し、このエアロゾルがユーザの口の方に運ばれる。液体エアロゾル形成基質は、液体が毛細管作用により毛細管芯を通じて運ばれるようにする物理特性(粘度を含む)を有する。
【0028】
毛細管芯は、繊維状又は海綿状の構造を有することができる。毛細管芯は、毛細管の束を含むことが好ましい。例えば、毛細管芯は、複数の繊維又は糸、或いはその他の微細チューブを含むことができる。これらの繊維又は糸を、エアロゾル生成システムの長手方向に大まかに整列させることができる。或いは、毛細管芯は、ロッド形状に形成された海綿様又は泡状材料を含むこともできる。このロッド形状は、エアロゾル生成システムの長手方向に沿って延びることができる。芯の構造は、複数の小さなボア又はチューブを形成し、これを通じて毛細管作用により液体を運ぶことができる。毛細管芯は、あらゆる好適な材料又は材料の組み合わせを含むことができる。好適な材料の例としては、例えば、海綿又は発泡材料、繊維又は焼結粉体の形のセラミック又は黒鉛系材料、発泡金属又は発泡プラスチック材料、例えば、酢酸セルロース、ポリエステル、又は結合ポリオレフィン、ポリエチレン、テリレン又はポリプロピレン繊維、ナイロン繊維又はセラミックなどの、紡績又は押し出し繊維で作られた繊維性材料などの毛細管材料が挙げられる。この毛細管芯は、異なる液体物理特性で使用されるように、あらゆる好適な毛細管現象及び多孔率を有することができる。液体は、以下に限定されるわけではないが、毛細管作用により毛細管装置を通じて運ばれるような粘度、表面張力、濃度、熱伝導率、沸点及び蒸気圧を含む物理特性を有する。
【0029】
エアロゾル生成要素は、毛細管芯を取り巻いて任意にこれを支持する加熱ワイヤ又はフィラメントの形であることが好ましい。芯の毛細管特性を液体基質の特性と組み合わせることで、十分なエアロゾル形成基質が存在する通常の使用時には、加熱領域において常に芯が湿っていることが確実になる。
【0030】
エアロゾル生成システムは、ユーザディスプレイを含むことができる。この場合、指示は、ユーザディスプレイ上の指示を含むことができる。或いは、この指示は、可聴指示、又はユーザにとって好適な他のあらゆる種類の指示を含むこともできる。
【0031】
エアロゾル生成システムは、電力供給装置をさらに備えることができる。エアロゾル生成システムは、ハウジングを含むことが好ましい。ハウジングは、細長いことが好ましい。エアロゾル生成が毛細管芯を含む場合、使用時には、毛細管芯の長手方向軸とハウジングの長手方向軸が実質的に平行になることができる。ハウジングは、シェル及びマウスピースを含むことができる。この場合、全ての構成部品をシェル又はマウスピース内に収容することができる。好ましい実施形態では、ハウジングが、貯蔵部、毛細管芯及びヒータを含む取り外し可能な消耗カートリッジを含む。この実施形態では、エアロゾル生成システムのこれらの部品を単一の構成部品としてハウジングから取り外すことができる。
【0032】
ハウジングは、あらゆる好適な材料又は材料の組み合わせを含むことができる。好適な材料の例としては、金属、合金、プラスチック、或いはこれらの材料の1つ又はそれ以上を含む複合材料、或いは、例えばポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエチレンなどの、食品又は製薬用途に適した熱可塑性物質が挙げられる。この材料は、軽量かつ非脆性であることが好ましい。
【0033】
エアロゾル生成システムは、持ち運び可能であることが好ましい。エアロゾル生成システムは、喫煙システムとすることができ、従来のシガー又はシガレットに相当するサイズを有することができる。この喫煙システムは、約30mm〜約100mmの全長を有することができる。この喫煙システムは、約5mm〜約13mmの外径を有することができる。
【0034】
電気作動式エアロゾル生成システムは、電気加熱式喫煙システムであることが好ましい。
【0035】
第2の態様では、本発明は、エアロゾル生成システムで使用するカートリッジを提供し、このカートリッジは、
エアロゾル形成基質と、
エアロゾル生成システムからの信号によって作動するように構成された、エアロゾル生成システム内でカートリッジを動作不能にするための無効化手段と、
を備える。
【0036】
エアロゾル形成基質及び無効化手段は、本発明の第1の態様に関連して説明したいずれの形をとることもできる。カートリッジは、エアロゾル形成基質を貯蔵するための貯蔵部を含むとともに、本発明の第1の態様に関連して説明したような毛細管芯を含むことができる。カートリッジは、本発明の第1の態様に関連して説明したようなエアロゾル生成要素をさらに含むことができる。カートリッジは、本発明の第1の態様に関連して説明したような制御回路、電源、及びユーザインターフェイスのうちの1つ又はそれ以上をさらに含むことができる。
【0037】
第3の態様では、本発明は、消耗カートリッジとともに使用するためのエアロゾル生成装置を提供し、消耗カートリッジは、エアロゾル形成基質と、無効化信号に応答してエアロゾル生成装置内でカートリッジを動作不能にするように構成された無効化手段とを収容し、エアロゾル生成システムは、貯蔵部内のエアロゾル形成基質の量が閾値量を下回っていると判定又は推定された時、或いは異常が検出された時に、無効化手段に無効化信号を送出するように構成された制御回路を含む。
【0038】
制御回路は、本発明の第1の態様に関連して説明したように構成することができる。エアロゾル生成装置は、本発明の第1の態様に関連して説明したようなエアロゾル生成要素をさらに含むことができる。カートリッジは、本発明の第1の態様に関連して説明したような電源及びユーザインターフェイスの一方又は両方をさらに含むことができる。
【0039】
本発明の第4の態様によれば、エアロゾル形成基質を貯蔵するための貯蔵部と、エアロゾル形成基質からエアロゾルを生成するためのエアロゾル生成要素と、貯蔵部と通信する制御回路と、制御回路からの無効化信号に応答してエアロゾル生成システム内で貯蔵部を動作不能にするための、貯蔵部に付随する無効化手段とを備えたエアロゾル生成システムにおける方法が提供され、この方法は、貯蔵部内のエアロゾル基質の量が閾値レベルを下回っているという判定を受けて、又はシステム内の異常の判定を受けて、制御回路から無効化手段に無効化信号を送信するステップを含む。
【0040】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第2の態様の方法を実行するように構成された、エアロゾル生成システムのための電気回路が提供される。
【0041】
本発明の第6の態様によれば、エアロゾル生成システムのためのプログラム可能な電気回路上で実行された時に、このプログラム可能な電気回路に本発明の第2の態様の方法を実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0042】
本発明のエアロゾル生成システムに関連して説明した特徴は、本発明の方法にも適用することができる。また、本発明の方法に関連して説明した特徴は、本発明のエアロゾル生成システムにも適用することができる。
【0043】
添付図面を参照しながら、本発明をほんの一例としてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】液体貯蔵部を有する電気作動式エアロゾル生成システムの一例を示す図である。
図2図1に示すシステム内で使用するのに適した無効化機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1に、液体貯蔵部を有する電気作動式エアロゾル生成システムの一例を示す。図1では、このシステムが喫煙システムである。図1の喫煙システム100は、マウスピース側端部103と本体側端部105とを有するハウジング101を含む。本体側端部には、バッテリ107の形の電力供給装置及び電気制御回路109が備わる。電気制御回路109と協働する吸煙検出システム111も備わる。マウスピース側端部には、液体115を収容するカートリッジ113の形の液体貯蔵部、毛細管芯117及びヒータ119が備わる。なお、図1では、ヒータを概略的にしか示していない。図1に示す例示的な実施形態では、毛細管芯117の一端がカートリッジ113内に延び、毛細管芯117の他端がヒータ119に取り巻かれる。ヒータは、カートリッジ113の外側に沿って通過できる(図1には図示せず)接続部121を介して電気制御回路に接続される。ハウジング101は、空気入口123、マウスピース側端部の空気出口125、及びエアロゾル形成チャンバ127も含む。
【0046】
使用時の動作は以下の通りである。液体115が、カートリッジ113からの毛細管作用により、カートリッジ内に延びる芯117の一端からヒータ119に取り巻かれた芯の他端に運ばれる。ユーザが、エアロゾル生成システムの空気出口125を吸引すると、空気入口123を通じて外気が吸い込まれる。図1に示す構成では、吸煙検出システム111が吸煙を感知してヒータ119を作動させる。バッテリ107がヒータ119に電気エネルギーを供給してヒータに取り巻かれた芯117の端部を加熱する。ヒータ119により、この芯117の端部内の液体が気化して過飽和蒸気が発生する。同時に、気化した液体が、毛細管作用により芯117に沿って移動してきた別の液体に置き換わる。(この作用は「ポンプ作用」と呼ばれることもある。)発生した過飽和蒸気が空気入口123からの空気流と混ざり、この空気流に含まれて運ばれる。エアロゾル形成チャンバ127内では、蒸気が凝縮して吸入可能なエアロゾルを形成し、これが出口125の方に運ばれてユーザの口に入る。
【0047】
図1に示す実施形態では、電気制御回路109及び吸煙検出システム111がプログラム可能であることが好ましい。電気制御回路109及び吸煙検出システム111を使用して、エアロゾル生成システムの動作を管理することができる。これにより、エアロゾル中の粒子サイズの制御が支援される。
【0048】
図1は、本発明による電気作動式エアロゾル生成システムの一例を示すものである。しかしながら、他の多くの例も可能である。また、図1は事実上概略的なものである。具体的には、図示の構成部品は、個別にも又は相対的にも縮尺通りではない。エアロゾル生成システムは、エアロゾル形成基質を含み又は受け入れる必要がある。エアロゾル生成システムは、エアロゾル形成基質からエアロゾルを生成するための、ヒータ又は振動トランスデューサなどの何らかの種類のエアロゾル生成要素を必要とする。最後に、エアロゾル生成システムは、システムを無効化するための制御回路を必要とする。以下、図2を参照しながらこれについて説明する。例えば、このシステムは、喫煙システムでなくてもよい。吸煙検出システムを設けなくてもよい。代わりに、このシステムは、例えばユーザが吸引の際にスイッチを操作することなどの手動作動によって動作することもできる。例えば、ハウジングの全体的な形状及びサイズを変更することもできる。さらに、このシステムは、毛細管芯を含まなくてもよい。
【0049】
しかしながら、好ましい実施形態では、システムが、貯蔵部から少なくとも1つの加熱要素に液体基質を運ぶための毛細管芯を含む。毛細管芯は、様々な多孔質材料又は毛管材料から作製することができ、既知の所定の毛細管現象を有することが好ましい。いくつかの例として、繊維又は焼結粉体の形のセラミック又は黒鉛系材料が挙げられる。多孔率の異なる芯を使用して、濃度、粘度、表面張力及び蒸気圧などの様々な液体物理特性に対応することができる。芯は、必要量の液体をヒータに送達できるように適していなければならない。ヒータは、毛細管芯の周りに延びる少なくとも1つの加熱ワイヤ又はフィラメントを含むことが好ましい。
【0050】
本発明のエアロゾル生成システムは、カートリッジ113を無効化する制御回路を含む。この無効化は、いくつかの理由によって行うことができる。好ましい実施形態では、制御回路が、貯蔵部内のエアロゾル形成基質の量を判定するように構成される。液体貯蔵部が空又はほぼ空であると判定されると、制御回路109がカートリッジ113を無効化する。この主な理由は、貯蔵部がほぼ空の場合、ヒータに供給される液体エアロゾル形成基質が不十分となる場合があるからである。つまり、生成されユーザにより吸入されるエアロゾルが、例えばエアロゾルの粒子サイズなどの所望の特性を有していないことがあり得る。この結果、ユーザの体験が不十分となる場合がある。また、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることをユーザに通知できる機構を提供することも有利である。ユーザは、これを受けて、貯蔵部の交換準備を進めることができる。空のカートリッジを無効化することにより、ユーザに安全性ももたらされる。カートリッジには、粗悪な、場合によっては危険な物質が補充される恐れがある。しかしながら、カートリッジは、永久に無効化されることにより、補充して再使用することができなくなる。
【0051】
図2に、図1を参照しながら説明したシステムで使用できる無効化システムの1つの実施形態を示す。図2の無効化システムは、2つの部分を有する。一方の部分は消耗カートリッジ113内に保持され、他方の部分は制御回路109内に保持される。消耗カートリッジ内には、電気ヒューズ201が配置される。消耗貯蔵部113と装置101の本体とを結合するために、3つの接点221の接続ポートが使用される。消耗部分には、ヒータ要素119が収容される。この加熱要素119に供給される変調信号の形の電力は、マイクロコントローラ203上のデジタル出力205によりトランジスタT1を介して制御される。加熱要素119の他方の脚部及び電気ヒューズ201には、正のバッテリ電極207が接続される。
【0052】
図2に示す実施形態では、カートリッジ113がほぼ空であるという判定が、加熱要素119の温度をモニタすることによって行われる。カートリッジがほぼ空の場合、芯を通じてヒータに供給される液体エアロゾル形成基質が不十分となる。この結果、基質を気化させるために使用するエネルギーが減るので、ヒータの温度が上昇する。従って、制御回路は、ヒータの温度により、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量が所定の閾値に減少していると判定できるようになる。臨界温度に達すると、消耗品が無効化されて、カートリッジの補充などの、消費者による消耗品への侵害が回避される。無効化により、消費者に消耗品を交換する必要がある旨が示される。消耗品を無効化することにより、過度の熱により形成される有害成分の発生も防がれる。
【0053】
加熱要素の温度の測定は、抵抗209を通る電流の計算に基づく。この電流は、入力213への信号から、及びマイクロコントローラ上の2つのアナログ入力を介してデジタル値に変換されたバッテリ電圧に基づいて求められる。加熱要素の温度が上昇するにつれ、その抵抗値も上昇する。この加熱要素の抵抗と温度の関係を、マイクロコントローラにプログラム又は記憶することができる。マイクロコントローラは、臨界温度に達したと判定すると、トランジスタT2に接続されたデジタル出力211を作動させることにより電気ヒューズ201を飛ばす。この動作後には、ユーザが装置を吸引するたびに、マイクロコントローラ203が消耗品有効化回線215を介してヒューズ201の妥当性をチェックし、接続が失われていれば装置は動作しない。消耗品が、損傷していないヒューズを含む新しいものに交換されると、システムは通常動作モードに戻る。
【0054】
ヒューズ、或いは他の切り替え可能な又は遮断可能な電子部品を使用する場合、カートリッジを無効化するための他の手段及び他の回路構成も可能なことが明らかなはずである。例えば、マイクロコントローラに専用温度センサを接続し、ヒータ要素の温度を検出するように位置付けることができる。
【0055】
制御回路は、液体貯蔵部内の液体の量が第1の閾値に減少したと判定した時にユーザに通知を行い、液体貯蔵部内の液体の量が第2の閾値に減少したと判定した時にカートリッジを無効化するように構成することができる。例えば、エアロゾル生成システムがユーザディスプレイを含む場合、このユーザディスプレイ上に、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることを示し、無効化が行われるまでの推定残り吸煙回数を提供することができる。これとは別に又はこれに加えて、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることを可聴音によってユーザに知らせることもできる。当然ながら、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることをユーザに示す別の方法も可能である。ユーザに通知を行う利点は、ユーザがこれを受けて液体貯蔵部の交換準備を進めることができる点である。
【0056】
本発明は、エアロゾル生成システム内で消耗カートリッジを動作不能にするためのシステム及び方法を提供するものである。本発明は、安全上の利点があるだけでなく、ユーザ体験及び利便性の面でも利点をもたらすものである。1つの特定の実施形態について説明したが、消耗カートリッジを無効化する方法及び無効化手段を作動できるようになる条件は数多く存在し、これらは本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
109 電気制御回路
113 カートリッジ
119 ヒータ
201 電気ヒューズ
203 マイクロコントローラ
205 デジタル出力
207 正のバッテリ電極
209 抵抗
211 デジタル出力
213 入力
215 消耗品有効化回線
221 デジタル出力
T1 トランジスタ
T2 トランジスタ
図1
図2