(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
定義および一般的技術
本明細書において別段定義しない限り、本発明に関して使用した科学技術用語は、当業者に通常理解されている意味を含むものとする。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関して使用した命名法およびその技術は、当技術分野で周知のものであり、通常使用されている。
本発明の方法および技術は一般に、別段示さない限り、当技術分野で周知である従来の方法に従って、本明細書全体にわたって引用し論じた種々の一般的参照文献およびより具体的な参照文献に記載されているように実施する。
【0021】
IgSF4/CADM1/TSLC1
本発明の抗体の検出対象であるIgSF4は免疫グロブリン・スーパーファミリーに属し、その発見経緯や構造的特徴に基づき他にもCADM1、TSLC1、SynCAM、Necl2などいくつもの名前をもつ。本明細書においては、本発明の抗体の検出対象であるIgSF4を、IgSF4/CADM1/TSLC1、IgSF4(TSLC1/CADM1)などと記す場合がある。本分子の役割は、精巣、神経、肥胖細胞、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞等でも発現し、精子形成、シナプス形成、腹膜感染や気管支喘息、がん免疫に各々重要な役割を果たすことが、その後の独立した研究により報告されている。ヒトの11q23.2の遺伝子座に位置する。
【0022】
IgSF4は、構造上特別に限定せず、単量体、多量体、細胞膜に発現しているintact form、細胞外領域に構成された可溶化form、truncted form、また、遺伝子の変異や、欠損などによりmutation form、リン酸化などにより翻訳後修飾を受けたformなども含め、すべてヒトIgSF4を意味する。
【0023】
反応する及び反応性
本明細書において、「反応する」と「反応性」は特別に示さない限り、同じのことを意味する。すなわち、抗体が抗原を認識すること。この抗原は、細胞膜に発現するintact IgSF4でもよいし、truncted formや、可溶化formでも良い。また、立体構造を保ったIgSF4でもよいし、変性したIgSF4でもよい。反応性を検討する手段として、フローサイトメーター(FACS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、western−blot、蛍光微量測定技術(FMAT)表面プラズモン共鳴(BIAcore)、免疫染色、免疫沈降などが挙げられる。
【0024】
フローサイトメーターに用いる抗体としては、FITCなどの蛍光物質、ビオチンなどにより標識された抗体であっても、標識をされていない抗体であってもよい。用いた抗体の標識の有無、その種類により、蛍光標識アビジン、蛍光標識抗ヒト免疫グロブリン抗体などを使用する。反応性は、十分量の抗IgSF4抗体(通常最終濃度が0.01〜10μg/mL)を検体に加えて行い、陰性対照抗体、陽性対照抗体の反応性との比較を行うことにより評価することができる。
【0025】
抗体
本明細書では必要に応じて、慣習に従い以下の略号(括弧内)を使用する。
重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、相補性決定領域(CDR)
【0026】
本明細書において、「抗体」という用語は、イムノグロブリンと同義であり、当技術分野で通常知られている通りに理解されるべきである。具体的には、抗体という用語は、抗体を作製する任意の特定の方法により限定されるものではない。例えば、抗体という用語には、それだけに限らないが、組換え抗体、モノクローナル抗体、およびポリクローナル抗体がある。
【0027】
本明細書において、「ヒト抗体」という用語は、可変領域および定常領域の配列がヒト配列である任意の抗体を意味する。その用語は、ヒト遺伝子に由来する配列を有するが、例えば、考えられる免疫原性の低下、親和性の増大、望ましくない折りたたみを引き起こす可能性があるシステインの除去などを行うように変化させている抗体を包含する。その用語はまた、ヒト細胞に特有でないグリコシル化を施すことができる、非ヒト細胞中で組換えにより作製されたそのような抗体をも包含する。これらの抗体は、様々な形で調製することができる。
【0028】
本明細書において、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト由来の抗体を指し、非ヒト種の抗体配列に特徴的なアミノ酸残基が、ヒト抗体の対応する位置で認められる残基と置換されている。この「ヒト化」の工程が、その結果得られる抗体のヒトでの免疫原性を低下させると考えられる。当技術分野で周知の技術を使用して、非ヒト由来の抗体をヒト化できることが理解されるであろう。例えば、Winterら、Immunol.Today14:43〜46(1993)を参照されたい。対象とする抗体は、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、および/またはフレームワークドメインを対応するヒト配列と置換する組換えDNA技術によって工学的に作製することができる。例えば、WO92/02190、ならびに米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,792号、第5,714,350号、および第5,777,085号を参照できる。本明細書において、「ヒト化抗体」という用語は、その意味の範囲内で、キメラヒト抗体およびCDR移植抗体を含む。
【0029】
本発明の抗体の可変領域においてフレームワーク領域(FR)の配列は、対応する抗原に対する特異的結合性に実質的な影響のない限り、特に限定されない。ヒト抗体のFR領域を用いることが好ましいが、ヒト以外の動物種(例えばマウスやラット)のFR領域を用いることもできる。
【0030】
本明細書において、「ファージ抗体」という用語は、ファージにより産生されたscFv抗体を意味する。つまり、VH及びVLアミノ酸配列を含む抗体断片である。この断片は、Linkerとしてのアミノ酸以外、タグとしてのアミノ酸配列を含むことでもよい。
【0031】
本発明の抗体の一態様において、可変領域に加えて定常領域を含む(例えばIgG型抗体)。定常領域の配列は特に限定されない。例えば、公知のヒト抗体の定常領域を用いることができる。ヒト抗体の重鎖定常領域(CH)としては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、更にhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、軽鎖定常領域(CL)としては、hIgに属すればいかなるものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。また、ヒト以外の動物種(例えばマウスやラット)の定常領域を用いることもできる。
【0032】
本発明の抗体に用いられるFRまたは定常領域のアミノ酸配列は、由来となる元のFRまたは定常領域のアミノ酸配列をそのまま用いてもよいし、1または数個(例えば、1から8個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から3個、特に好ましくは1または2個)のアミノ酸を欠失、付加、置換及び/または挿入して異なるアミノ酸配列にして用いてもよい。
【0033】
即ち、本発明の抗体は、受託番号NITE P−01621、NITE P−01622、NITE P−01623、NITE P−01624、NITE P−01625、又はNITE P−01626の何れかを有する抗体産生細胞が産生する抗IgSF4抗体のみならず、受託番号NITE P−01621、NITE P−01622、NITE P−01623、NITE P−01624、NITE P−01625、又はNITE P−01626の何れかを有する抗体産生細胞が産生する抗IgSF4抗体のアミノ酸配列を改変することにより得られるアミノ酸配列を有し、ヒトIgSF4を特異的に認識できる抗体でもよい。
【0034】
上記において、「ヒトIgSF4を特異的に認識できる」とは、改変前の抗体と同様にヒトIgSF4への結合活性を有するということである。結合活性としては、抗原を認識することを意味する。この抗原は、細胞膜に発現するintact IgSF4でもよいし、truncted formや、可溶化formでも良い。また、立体構造を保ったIgSF4でもよいし、変性したIgSF4でもよい。たとえば、結合活性を検討する手段として、フローサイトメーター(FACS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、western−blot、蛍光微量測定技術(FMAT)表面プラズモン共鳴(BIAcore)などが挙げられる。
【0035】
本発明において、「改変前の抗体と同様に」とは、必ずしも同程度の活性である必要はなく、活性が増強されていてもよいし、又、活性を有する限り活性が減少していてもよい。活性が減少している抗体としては、例えば、元の抗体と比較して30%以上の活性、好ましくは50%以上の活性、より好ましくは80%以上の活性、さらに好ましくは90%以上の活性、特に好ましくは95%以上の活性を有する抗体を挙げることができる。
【0036】
上記の通り、本発明の抗体は、IgSF4に対する結合活性を有する限り、可変領域(CDR配列および/またはFR配列)のアミノ酸配列に1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されていてもよい。アミノ酸配列において、1または数個(例えば、1から8個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から3個、特に好ましくは1または2個)のアミノ酸が欠失、付加、置換及び/または挿入されており、IgSF4に対する結合活性を有する抗体のアミノ酸配列を調製するための、当業者によく知られた方法としては、タンパク質に変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide-directed dual amber method for site-directed mutagenesis. Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer,W, Drutsa,V,Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12,9941-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488-492)などを用いて、IgSF4に対する結合活性を有する抗体のアミノ酸配列に適宜変異を導入することにより、IgSF4に対する結合活性および/または抗腫瘍活性を有する抗体と機能的に同等な変異体を調製することができる。
【0037】
このように、可変領域において、1または数個のアミノ酸が変異しており、IgSF4に対する結合活性を有する抗体もまた本発明の抗体に含まれる。
【0038】
本発明の抗体は、その由来で限定されず、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体など、如何なる動物由来の抗体でもよい。又、キメラ化抗体、ヒト化抗体などでもよい。
【0039】
本発明の抗体は、後述する抗体を産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態などが異なり得る。得られた抗体が、本発明の抗体と同等の活性を有している限り、本発明に含まれる。例えば、本発明で記載されているアミノ酸配列に翻訳後に修飾を受ける場合も本発明に含まれる。更に、既知の翻訳後修飾以外の部位に対する翻訳後修飾も、本発明の抗体と同等の活性を有している限り、本発明に含まれる。また、本発明の抗体を原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来の抗体のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明の抗体はこのような抗体も包含する。既知の翻訳後修飾以外の部位に対する翻訳後修飾も、本発明の抗体と同等の活性を有している限り、本発明に含まれる。
【0040】
抗体の作製
(1)ファージディスプレイライブラリーにより抗原と反応するscFv
本発明の抗体の取得は、当技術分野で知られているいくつかの方法に従って調製することができる。例えば、ファージディスプレイ技術を使用して、IgSF4に対する親和性が様々である抗体のレパートリーを含むライブラリーを提供することができる。次いで、これらのライブラリーをスクリーニングして、IgSF4に対する抗体を同定し単離することができる。好ましくは、ファージライブラリーは、ヒトB細胞から単離されたmRNAから調製されたヒトVLおよびVHcDNAを使用して生成されるscFvファージディスプレイライブラリーである。そのようなライブラリーを調製しスクリーニングする方法は当技術分野で知られている。ヒトIgSF4を抗原としてスクリーニングした反応性を示すファージクローンから遺伝物質を回収する。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするVH及びVLのDNA配列を決定することができる。このscFvの配列を用いて、scFvをIgG化すれば、ヒト抗体を取得することができる。
【0041】
(2)scFvのIgG化(ヒト抗体の作製)
H鎖またL鎖の発現ベクターを作製し、宿主細胞に発現させ、分泌した上清の回収・精製によりヒト抗体を取得する。また、VH及びVLを同一ベクターに発現すること(タンデム型)によりヒト抗体の取得もできる。これらの方法は周知であり、WO92/01047、WO92/20791、WO93/06213、WO93/11236、W093/19172、WO95/01438、WO95/15388、WO97/10354などを参考にすることができる。
【0042】
具体的には、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする他のDNA分子と連結することによって、完全長重鎖遺伝子を取得することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat,E.A.ら、(1991)Sequencesof Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242)、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域でよいが、最も好ましくはIgG1またはIgG2の定常領域である。IgG1定常領域配列は、Gm(1)、Gm(2)、Gm(3)やGm(17)など、異なる個人間で生じることが知られている任意の様々な対立遺伝子またはアロタイプでよい。これらのアロタイプは、IgG1定常領域中の天然に存在するアミノ酸置換に相当する。
【0043】
VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子と連結することによって、完全長L鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)を取得することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242)、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、κまたはλの定常領域でよい。κ定常領域は、Inv(1)、Inv(2)やInv(3)など、異なる個人間で生じることが知られている任意の様々な対立遺伝子でよい。λ定常領域は、3つのλ遺伝子のいずれかに由来するものでよい。
【0044】
上記のように得られたH鎖またL鎖コードするDNAを発現ベクター中に挿入することにより、発現ベクターを作製し、宿主細胞に発現させ、分泌した上清の回収・精製によりヒト抗体を取得する。発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルスやタバコモザイクウイルスなどの植物ウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。発現ベクターおよび発現調節配列は、使用する発現用宿主細胞と適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクター中に挿入することができるし、また両方の遺伝子を同じ発現ベクター中に挿入することもできる。抗体遺伝子を、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片上の相補的な制限部位とベクターの連結、または制限部位が存在しない場合には平滑末端連結)によって発現ベクター中に挿入する。
【0045】
好適なベクターは、上記に記載のように任意のVHまたはVL配列を容易に挿入し発現させることができるように工学的に作製された適当な制限部位を有する機能的に完全なヒトCHまたはCLイムノグロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターでは、通常、挿入されたJ領域中のスプライス供与部位とヒトCドメインに先行するスプライス受容部位の間で、またヒトCHエキソン内に存在するスプライス領域でもスプライシングが起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流にある天然の染色体部位で起こる。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞由来の抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることもできる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームでイムノグロブリン鎖のアミノ末端と連結するようにベクター中にクローン化することができる。シグナルペプチドは、イムノグロブリンシグナルペプチドでもよく、あるいは異種性シグナルペプチド(すなわち非イムノグロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)でもよい。
【0046】
本発明の抗体の発現ベクターは、抗体遺伝子および制御配列に加えて、宿主細胞中でのベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)や選択マーカー遺伝子などのさらなる配列を有してよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進する。例えば、通常、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞上に、G418、ハイグロマイシンやメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子には、デヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞でメトトレキセート選択/増幅とともに使用する)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(G418選択用)、およびグルタミン酸合成酵素遺伝子がある。
【0047】
以上の方法で作製された抗体遺伝子発現ベクターにより宿主細胞を形質転換する。宿主細胞としては細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など、本発明の抗体を産生させる可能であればいかなる細胞でもよいが、動物細胞が好ましい。動物細胞として、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO/dhfr (−)細胞CHO/DG44細胞、サル由来細胞COS細胞(A.Wright& S.L.Morrison, J.Immunol.160, 3393-3402 (1998))、SP2/O細胞(マウスミエローマ)(K.Motmans et al., Eur.J.Cancer Prev.5,512-5199(1996),R.P.Junghans et al.,Cancer Res.50,1495-1502 (1990)) など挙げられる。また、形質転換にはリポフェクチン法(R.W.Malone et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6007 (1989), P.L.Felgner et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413 (1987)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(F.L.Graham & A.J.van der Eb,Virology 52,456-467(1973))、DEAE-Dextran法等が好適に用いられる。
【0048】
形質転換体を培養した後、形質転換体の細胞内又は培養液よりヒト抗体を分離する。抗体の分離・精製には、遠心分離、硫安分画、塩析、限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて利用することができる。
【0049】
抗原結合フラグメント
本発明の抗体を基にして又は本発明の抗体をコードする遺伝子の配列情報を基にして、抗体結合フラグメントを作製することができる。抗体結合フラグメントとしては、Fab、Fab'、F(ab')
2、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)、又は抗体由来の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドを挙げることができる。
【0050】
Fabは、IgGをシステイン存在下パパイン消化することにより得られる、L鎖とH鎖可変領域、並びにCH1ドメイン及びヒンジ部の一部からなるH鎖フラグメントとから構成される分子量約5万の断片である。本発明では、上記抗体をパパイン消化することにより得ることができる。また、上記抗体のH鎖の一部及びL鎖をコードするDNAを適当なベクターに組み込み、当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりFabを調製することもできる。
【0051】
Fab'は、後述のF(ab')
2のH鎖間のジスルフィド結合を切断することにより得られる分子量が約5万の断片である。本発明では、上記抗体をペプシン消化し、還元剤を用いてジスルフィド結合を切断することにより得られる。また、Fab同様に、Fab'をコードするDNAを用いて遺伝子工学的に調製することもできる。
【0052】
F(ab')
2は、IgGをペプシン消化することにより得られる、L鎖とH鎖可変領域、並びにCH1ドメイン及びヒンジ部の一部からなるH鎖フラグメントとから構成される断片(Fab')がジスルフィド結合で結合した分子量約10万の断片である。本発明では、上記抗体をペプシン消化することにより得られる。また、Fab同様に、F(ab')
2をコードするDNAを用いて遺伝子工学的に調製することもできる。
【0053】
scFvは、H鎖可変領域とL鎖可変領域とからなるFvを、片方の鎖のC末端と他方のN末端とを適当なペプチドリンカーで連結し一本鎖化した抗体断片である。ペプチドリンカーとしては例えば柔軟性の高い(GGGGS)
3などを用いることができる。例えば、上記抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域をコードするDNAとペプチドリンカーをコードするDNAを用いてscFv抗体をコードするDNAを構築し、これを適当なベクターに組み込み、当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりscFvを調製することができる。
【0054】
二量体化V領域(Diabody)は、可変領域と可変領域をリンカー等で結合したフラグメント(例えば、scFv等)を2つ結合させて二量体化させたものであり、通常、2つのVLと2つのVHを含む。Diabodyを構成するフラグメント間の結合は非共有結合でも、共有結合でもよいが、好ましくは非共有結合である。
【0055】
dsFvは、H鎖可変領域及びL鎖可変領域の適切な位置にCys残基を導入し、H鎖可変領域とL鎖可変領域とをジスルフィド結合により安定化させたFv断片である。各鎖におけるCys残基の導入位置は分子モデリングにより予測される立体構造に基づき決定することができる。本発明では例えば上記抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域のアミノ酸配列から立体構造を予測し、かかる予測に基づき変異を導入したH鎖可変領域及びL鎖可変領域をそれぞれコードするDNAを構築し、これを適当なベクターに組み込み、そして当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりdsFvを調製することができる。
【0056】
尚、適当なリンカーを用いてscFv抗体、dcFv抗体などを連結させたり、ストレプトアビジンを融合させたりして抗体断片を多量体化することもできる。
【0057】
医薬及び診断薬
本発明によれば、本発明の抗体を含有する医薬又は診断薬が提供される。本発明一つの実施形態としてはATLの診断であるが、これに限らない。IgSF4の高発現によるATL以外の疾患についても、本発明の抗体を用いて診断することができる。好ましくは成人T細胞白血病(ATL)であるが、固形癌(例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、肝がん、子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、乳がん、頭頸部がん、皮膚がんなど)、または血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫など)なども診断対象に含まれる。
本発明の抗体が認識するIgSF4は、成人T細胞白血病(ATL)の細胞表面に特異的に発現していることから、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、成人性T細胞性白血病分子標的治療のためのコンパニオン診断に使用することができる。即ち、本発明によれば、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、成人性T細胞性白血病分子標的治療薬のコンパニオン診断薬が提供される。
【0058】
例えば、本発明の抗体を用いて検体中に存在するATL細胞の検出又は定量を行うことができる。この場合、検体とは主にATL患者またはATLの疑いのある患者の血液であることが望ましい。また、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを生体組織由来の試料に接触させることによってATL細胞の検出を行い、これにより成人性T細胞性白血病分子標的治療薬のためのコンパニオン診断を行うことができる。
【0059】
診断薬を作製する際、抗体に直接もしくは間接的に標識を付加することによって、簡便な診断薬を設計することも可能である。リンカーには、抗体または薬剤または両方と反応する官能基を1または2種類以上有することが望ましい。官能基の例としてはアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、マレイミド基、ピリジニル基等をあげることができる。
【0060】
リンカーの例としては、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート) (LC−SMCC)、κ−マレイミドウンデカン酸N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、およびN−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(PAB)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP) 及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(SIAB)等があげられるが、これらに限定されるものではない。また、このリンカーは例えば、バリン-シトルリン(Val-Cit)、アラニン−フェニルアラニン(ala−phe)のようなペプチドリンカーであってもよいし、上記にあげたリンカーをそれぞれ適時組み合わせて使用しても良い。
【0061】
上記の通り本発明の抗体は検出可能な物質により標識されていてもよい。この場合、検出可能な物質とは、光学的、電気化学的、放射化学的に検出可能なシグナルを放出または作製する物質である。例えば、蛍光色素、発光色素、放射性同位体(RI)、酵素等をあげることができる。また、このような、標識物質は、本発明の抗体に直接結合していてもいいし、また、本発明の抗体に特異的に結合する2次抗体を経由する方法であってもよい。
【0062】
また、本発明の抗体を含むATL診断薬キットを提供することもできる。ATL診断薬キットには、検体の前処理試薬、検体の後処理試薬、陰性コントロール抗体などを含めることができる。
【0063】
本発明の抗体及び診断薬は、潜在的なATL患者の診断をするだけではなく、治療前または治療中に、治療の有効性を判断する診断(いわゆるコンパニオン診断)としても利用できる。また、本発明においては、治療前または治療中のATL患者の治療の有効性を判断する材料としても利用が可能である。
【0064】
細胞の検出
細胞に結合した本発明の抗体の検出は、フローサイトメトリー法や、ELISA法等 およびその組み合わせによって行うことが可能である。本発明の抗体が結合した細胞を検出又は定量する装置としては、フローサイトメーター(FACS:Fluorescence Activagted Cell Sorter)が好ましい。血中循環癌細胞(CTC:CirculatingTumorCells)の測定の可能な他の測定器を用いる方法も考えられる。最も好ましくは、本発明の抗体が結合した細胞をフローサイトメーターにより測定することができる。この場合、本発明の抗体は、蛍光色素により標識されていることが好ましい。血液検体より得られた、血球細胞に本発明の抗体の蛍光標識物を接触させた後、フローサイトメーターにより解析することができる。
【0065】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
実施例1:癌細胞株を使用したファージ抗体スクリーニング
(1)癌細胞に結合するファージ抗体のスクリーニング(ATL細胞株S1T)
S1T細胞を任意の方法で培養した。細胞を回収し、冷却したPBSで洗浄した後、1×10
13cfuのヒト抗体ファージライブラリー(特開2005−185281号公報、WO2008/007648号公報、WO2006/090750号公報を参照)を混ぜ、最終容積1.6mLになるように反応液(1%BSA、0.1%NaN3、MEM)を添加し、4℃にて4時間ゆっくり回転させて反応させた。反応終了後、反応液を二つに分け、それぞれ事前に用意した0.6mLの有機溶液(dibutyl phtalate cycloheximide9:1)に重層し、マイクロ遠心機により2分間遠心(3000rpm)した。上清を捨て、チューブの底に沈降した細胞を0.7mLの1%BSA/MEMで懸濁し、更に0.7mLの有機溶媒に重層した。同じように遠心により上清を捨て、細胞を0.3mLのPBSで懸濁し、液体窒素で凍結した。
【0067】
凍結した細胞を37℃で解凍し、20mLの大腸菌DH12S(OD0.5)に1時間で感染させた。ファージに感染した大腸菌を600mLの2×YTGA培地(2×YT、200μg/mL ampicisulfate、1% Glucose)に入れ、30℃で一晩培養した。その後10mLを取り、200mL 2×YTA培地(2×YT、200μg/mL ampicisulfate)に入れ、37℃で1.5時間培養した。1×10
11ヘルパーファージKO7を入れ、更に37℃で1時間培養した。800mLの2×YTGAK培地(2×YT、200μg/mL ampicisulfate、0.05% Glucose、50μg/mLkanamycin)を添加し、30℃で一晩培養した。10分間の遠心(8000rpm)により上清を回収した。回収した上清に200mLのPEG液(20% polyetyleneglycol6000、2.5M NaCl)を入れよく攪拌した後、10分間の遠心(8000rpm)によりファージを沈殿させた。これを10mLのPBSに懸濁し、これが1stスクリーニングのファージとした。
【0068】
次は、2ndスクリーニングを行った。2×10
7培養細胞と1×10
101stスクリーニングのファージを混合し、最終容積0.8mLになるように反応液を(1%BSA、0.1%NaN3、MEM)入れた。その後は上記1stスクリーニングと同様の手法を行い、2ndスクリーニングのファージを取得した。
【0069】
3rdスクリーニングは1×10
9の2ndスクリーニングのファージを使用し、上記と同じように行った。
【0070】
(2)ファージ抗体の解析
3rdスクリーニングしたファージを回収し、既存法によりDNA配列を解析し、欠損領域を保持する不完全な抗体や配列が重複する抗体を排除し、独立した抗体配列を持つファージ抗体を取得した(特許第4870348を参照)。
【0071】
同様の手法により、他のATL細胞株であるKK1、MT2細胞を用いて、細胞膜上に反応するファージ抗体のスクリーニングを行った。その結果、後述のELISA試験においてIgSF4に反応できる独立配列を有するファージ抗体29種類の抗体を取得した。
【0072】
実施例2:可溶性IgSF4と反応するファージのスクリーニング
(1)可溶性IgSF4抗原産生細胞の作製
ATL細胞株S1Tを用いて、IgSF4のcDNAをPCR法により作製した。常法によりIgSF4 細胞外ドメインのcDNAを調整し、pCMV-Script(クロンテク社製)に挿入することにより、可溶性IgSF4抗原発現ベクターを作製した。この発現ベクターを細胞株293Tへ導入し、可溶性IgSF4抗原を産生する発現細胞を作製した。
【0073】
(2)ELISAによる陽性ファージのスクリーニング
上記可溶性IgSF4産生細胞の上清を回収し、精製により可溶性IgSF4抗原を取得した。この可溶性IgSF4抗原を用いてELISAによる抗原抗体の反応性を検討した。すなわち、可溶性IgSF4抗原をPBSで10μg/mLになるように調整し、Immuno Module/Strip Plates(NUNK)に50μL/wellに添加し、37℃で2時間静置した。その後、可溶性IgSF4抗原を捨て、Blocking液(5% スキムミルク / 0.05% NaN3/ PBS)200μL/wellで添加し、37℃で2時間ブロッキングを行った。ブロッキング溶液を除き、PBSにより洗浄し、上記2ndスクリーニングのファージの培養上清を100μL/well添加し、37℃で1時間反応させた。PBSで5回洗浄後、PBS/0.05%Tween20で希釈した1μg/mLRabbit anti−cp3を100μL/well添加し、37℃で1時間反応させた。PBSで5回洗浄後、更にPBS/0.05%Tween20で2000倍希釈したanti−Rabbit IgG(H+L)−HRPを100μL/well添加し、37℃で1時間反応させた。PBSで5回洗浄後、OPD in 0.1Mクエン酸リン酸バーファー(pH5.1)+0.01%H
2O
2 を100μL/well添加し室温で5分間反応させた。2NH
2SO
2を100μL/well加え、発色反応を停止した。その後、SPECTRAmax340PC(Molecular Devices)にて492nmの吸光度を測定した。その結果、可溶性IgSF4抗原と顕著な陽性反応を示すものは20株であった。この20株ファージのDNA配列を解析し、それぞれのCDR配列が新規であることが確認された。
【0074】
実施例3:ファージ抗体(scFv)のIgG化
(1)IgSF4IgG抗体を発現するplasmidの作製
ファージ抗体のIgG化はIgSF4のIgG化を例として下記のように説明する。
IgSF4のファージ抗体(scFv)の遺伝子はVH-VLの順で並んでおり、VHとVLはリンカー以下の配列で接続したscFvの構造をしている。
<リンカー配列>
Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser(配列番号1)
【0075】
IgSF4のVH,VLで使用していると推定されるヒト生殖系列の遺伝子をIMGT (*)で検索した結果を表1で示す。
(*) IMGT : http://www.imgt.org
【0076】
【表1】
【0077】
IMGTの検索結果を参考にして、ファージ抗体のIgG化をおこなった。IgSF4のVHをヒトIgG1の定常領域と連結した。IgSF4のVLはIGLJ3*01遺伝子と並列に並んでいるIGLC3*04と接続した遺伝子を作製した。5'側にNheI、3'側にEcoRIを付加したH鎖、L鎖遺伝子をGenScript社で全合成した。合成した重鎖、軽鎖の遺伝子はそれぞれ別々の発現ベクターに組み込んだ。すなわちH鎖、L鎖それぞれの人工合成遺伝子をNheIとEcoRIで切断し、発現ベクターpCAGGSのNheIとEcoRI部位に組み込み、抗IgSF4020抗体H鎖発現ベクター、およびL鎖発現ベクターを得た。
同様な方法で、他の抗体の発現ベクターを作製した。
【0078】
(2)IgG抗体の一過性発現
IgG抗体の一過性発現にはFreeStyle (ライフテクノロジーズ)を用いた。遺伝子導入用浮遊細胞である293-F (ライフテクノロジーズ) は前日に継代した。トランスフェクション当日、一種類の抗体発現には、1x10
6細胞/mLの細胞濃度に調整した400mLの細胞懸濁液を準備した。これに抗体重鎖発現ベクターを100 μg、軽鎖発現ベクターを100μg合計200μgのプラスミドをOptiPro SFMに懸濁した溶液(I)を調整した。次に200μLのMAX reagentを8mLのOptiPRO SFMに加えた(溶液II)。 溶液(I)と(II)を混合して室温で10分から20分静置した。この合計16mLの反応液を293-F細胞を懸濁した400mLの293発現培地に加え、6日から7日間37℃、8%CO
2で細胞培養震盪機のTAITEC BioShaker BR-43FLで培養した。6日から7日間後、それぞれの組換え抗体を含む培養上清を回収し、これを材料に精製をおこなった。
【0079】
上述したIgG抗体の重鎖の発現ベクターと軽鎖の発現ベクターをCHO由来DXB11にエレクトロポレーションによってコトランスフェクションした。抗体遺伝子を遺伝子導入したDXB11細胞は、0.5 mg/mL G418で8日間選択して抗体を安定して発現する生産細胞を作製した。抗体生産細胞について、ELISAで組み換え抗体が分泌されていることを確認した。
【0080】
作製された抗体生産細胞にはPPAT−077−401、PPAT−077−402、PPAT−077−403、PPAT−077−404、PPAT−077−405、PPAT−077−406、PPAT−077−407の番号を付した。このうちPPAT−077−401、PPAT−077−403、PPAT−077−404、PPAT−077−405、PPAT−077−406、PPAT−077−407はそれぞれ以下の受領番号及び受託番号の下で2013年5月16日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
PPAT−077−401:NITE AP−01621、NITE P−01621
PPAT−077−403:NITE AP−01622、NITE P−01622
PPAT−077−404:NITE AP−01623、NITE P−01623
PPAT−077−405:NITE AP−01624、NITE P−01624
PPAT−077−406:NITE AP−01625、NITE P−01625
PPAT−077−407:NITE AP−01626、NITE P−01626
【0081】
(3)IgG抗体の精製
上記で発現した培養上清に含まれるIgG抗体タンパク質は、AKTAprimeを用いたAb-Capcher ExTra(プロテノバ)アフィニティーカラムで精製した。得られたピークフラクションは、溶媒としてダルベッコのPBSで平衡化したセファクリルS-300カラムによるゲルろ過をして、さらに精製した。精製したIgG抗体タンパク質の定量は、吸光係数を用いて算出した。各IgG抗体の吸光係数はEXPASYのProtParam(http://web.expasy.org/protparam/)に各抗体の全アミノ酸配列を用いて計算して求めた。
【0082】
(4)酵素免疫測定法(ELISA)による各抗体の定量
それぞれのIgG抗体生産細胞の培地上清に含まれる抗体や、精製した抗体の濃度は、吸光度による定量とともに、酵素免疫測定法(ELISA)による定量もおこなった。固相抗体としてプレートにヤギ抗ヒトIgG(H+L)(マウス、ウサギ、ウシ、マウスIgGに対して吸収済み)(コスモバイオ:American Qualex International,Inc.;AQI,Cat.No.A-110UD)を100μl/well(5μg/mLの濃度)で加えて4℃で一昼夜静置した。次にブロックエースを200μL/wellで加えて室温で1時間ブロックした後、試料の抗体を段階希釈し、各wellに加えて1時間インキュベーションして反応させた。PBST(0.05%Tween20、PBS)で5回洗浄後、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(マウス、ウサギ、ウシ、マウスIgGに対して吸収済み)-HRP(コスモバイオ:AQI,Cat.A-110PD)をPBSTで10000倍希釈した検出抗体溶液を100μL/wellの割合で加えた。1時間インキュベーション後、PBSTで5回洗浄してから基質緩衝液TMBを100μL/wellの割合で加えた。室温暗所で15分間インキュベーションした後、反応停止液を100μL/wellの割合で加えて反応を停止してから、450nmにおける吸光度を測定した。標準品として精製ヒトIgGを用いて検量線を作成し、これを用いてそれぞれの抗体の濃度を算出した。
【0083】
実施例4:IgSF4抗体の反応性
(1)酵素免疫測定法(ELISA)による各抗体の反応性の解析(
図1)
それぞれの候補抗体親和性評価は、吸光度による定量とともに、酵素免疫測定法(ELISA)によってもおこなった。固相抗原としてプレートに分泌型IgSF4組み換え体抗原を100μl/well(1μg/mLの濃度)で加えて4℃で一昼夜静置した。次に3%スキムミルク/PBSを200μL/wellで加えて室温で1時間ブロックした後、PBSTで5回洗浄してから試料の抗体を各wellに加えて1時間インキュベーションして反応させた。PBST(0.05%Tween20、PBS)で5回洗浄後、anti-cp3 Rabbit ポリクローナル抗体(マウス、ウサギ、ウシ、マウスIgGに対して吸収済み)各wellに加えて1時間インキュベーションして反応させた。PBSTで5回洗浄してからanti Rabbit IgG(H+L)--HRP(コスモバイオ:AQI,Cat.A-110PD)をPBSTで10000倍希釈した検出抗体溶液を100μL/wellの割合で加えた。1時間インキュベーション後、PBSTで5回洗浄してから基質緩衝液TMBを100μL/wellの割合で加えた。室温暗所で15分間インキュベーションした後、反応停止液を100μL/wellの割合で加えて反応を停止してから、450nmにおける吸光度を測定した。結果を
図1に示す。
図1において、NITE P−01621、NITE P−01622、NITE P−01623、NITE P−01624、NITE P−01625、及びNITE P−01626はそれぞれ、それぞれの受託番号を有する抗体産生細胞が産生する抗体を使用した結果を示す。
【0084】
(2)フローサイトメーターによる各抗体の反応性の解析(
図2及び
図3)
ATL細胞株S1T、または患者検体より分離したIgSF4陽性細胞を用いて、抗IgSF4抗体の反応性を検討した。本発明の抗IgSF4抗体としては、受託番号NITE P−01622を有する抗体産生細胞が産生する抗体を使用した。それぞれの細胞を遠心により回収し、2mMEDTA/PBSで洗浄した。その後、FCM Buffer(0.5%BSA、2mM EDTA、0.1%NaN3/PBS)で細胞を5×10^6/mLになるように懸濁し、この細胞懸濁液100μLを96-well V底プレート(Costar3897)に分注した。IgSF4IgG抗体(candidate2)をFCM Bufferで10倍希釈し、調製した抗体溶液100μLを細胞に添加した。4℃で1時間インキュベートした後、細胞をFCM Bufferにより2回洗浄した。
FCM Bufferで2μg/mLに調整したAlexa488標識抗ヒトIgGマウス抗体(invitrogen)100μLを細胞に添加した。4℃で1時間インキュベートした後、FCM bufferを用いて遠心により2回洗浄した後、FACS Calibur(ベクトンディッキンソン)を用いてFL1蛍光強度を測定した。結果を
図2(ATL細胞株S1Tを用いた場合)及び
図3(患者検体より分離したIgSF4陽性細胞を用いた場合)に示す。
【0085】
なおコントロール抗体として、anti-SynCAM/TSLC1ニワトリモノクローナル抗体(MBL社)<
図2、3においては市販抗体Aと表記>、ポテリジオテストFCM(協和メデックス社)<
図2、3においては検査用上市抗体と表記>を用いて蛍光強度の比較目安にした。また、それぞれの使用条件は添付の指示書に従った。