【実施例】
【0022】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
本実施例においては、実験室での確認試験および実地による本試験について説明する。
【0023】
(実施例1)
[実験室での確認試験]
(1)土壌又は地下水試料
正確な評価を行うために、土壌、又は地下水の試料は、Aサイト(帯水層深度5〜11mの土壌および地下水)、Bサイト(帯水層深度15〜28mの土壌および地下水)、Cサイト(帯水層深度2〜9mの土壌および地下水)から採取したものを用いた。
【0024】
(2)浄化処理剤試料
25質量%ビフィズス菌培養物、5質量%乳糖、65質量%ホエイパウダー、及び5質量%ホエイ蛋白質濃縮物を含む浄化処理剤試料1〜4を準備した。なお、ビフィズス菌培養物は、森永乳業株式会社製CBW−30を用いた。CBW−30は、ヒト由来のビフィドバクテリウム属に属する微生物である、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium Longum ATCC BAA−999)を用いて、常法にて培養し、培養菌体を除去して製造されたものである。なお、Bifidobacterium Longum ATCC BAA−999は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所:12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, USA)から一般に入手することも可能である。
【0025】
また、試料1〜4と同様であるが、ホエイパウダーおよびホエイ蛋白濃縮物を含まない試料5(25質量%ビフィズス菌培養物、及び75質量%乳糖)、試料1〜4と同様であるが、ビフィズス菌培養物を含まない比較例試料(30質量%乳糖、65質量%ホエイパウダー、及び5質量%ホエイ蛋白濃縮物)を準備した。
ここで、試料3〜5及び比較例試料には、リン及びカリウムが含まれている。試料3については、14質量%リン酸水素二カリウム及び6質量%リン酸三カリウムをそれぞれ含んでおり、試料4については、5質量%リン酸水素二カリウムを含んでいる。さらに、試料5については、5質量%リン酸水素二カリウムを含んでおり、比較例試料については、5質量%リン酸水素二カリウムを含んでいる。
【0026】
当該試料1〜5、比較例試料の配合比率を表1に示す。
また、試料2に係るホエイパウダー、ホエイタンパク質濃縮物、ビフィズス菌培養物、乳糖には、金属塩含有量の少ないものを選択して配合した(表中に
*を付した。)。
なお、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウムについては、土壌、又は地下水の試料と浄化処理剤試料との混合物へ外添することを考慮し、当該混合物に対し外添する際の質量%で表記した。
【0027】
試料1〜5、比較例試料に係る脂肪、たんぱく質、炭水化物、灰分、及び水分の成分分析結果を表2に示す。
また、試料1〜5、比較例試料の無機成分(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、及び塩素)の含有量を表3に示す。
また、試料1〜5、比較例試料の各10gを1L水溶液としたときのpH値と、試料1〜5、比較例試料の各1g中における全炭素量(TOC)を表4に示す。
【0028】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0029】
(3)試験方法
VOCs(揮発性有機化合物)の影響が少ないテフロン(登録商標)製の蓋および採水コックと、ガスパージ用コックとが付いた1Lガラス瓶に、A〜Cサイト土壌(100cm
3)と地下水試料とを合せて1L採取した。
当該A〜Cサイトの試料を冷蔵して実験室へ移動し、以後の操作は窒素雰囲気下のグローブボックス内で行った。
Aサイト試料(6個)には、試料1〜5、及び比較例試料をそれぞれ投入した。なお、比較例試料
*として、0日目のAサイトの比較例試料に、cDCEを1mg/L添加した。また、Bサイト試料(4個)に、試料1〜4をそれぞれ投入した。さらに、Cサイト試料(4個)に、試料1〜4をそれぞれ投入した。
その際、浄化処理剤試料1L中における、ホエイパウダー、ホエイ蛋白濃縮物、ビフィズス菌培養物、乳糖の量の合計が0.5gとなるように添加し、リン、カリウムは外添として添加した。
試料投入後にガラス瓶を密栓し、試料を土壌地下水試料に溶解させた。
ガスパージ用コックより嫌気性ガスパージを行った後、A,Bサイトの試料には市販試薬のTCE,PCEを添加し、Cサイトの試料には市販試薬のTCEを添加した。
また、試料5、比較例試料を投入するAサイト試料には、市販試薬のTCE,PCEを添加した。
【0030】
ガラス瓶を23℃の恒温槽にて保管し、所定期間ごとに採水して、VOCs(TCE,cDCE,PCE)の定量分析を、1日から最長125日迄行った。このとき、採水は試験系内のヘッドスペースの変化を小さくするため、最小量で行った。また、採水時に空気が侵入しないよう、窒素ガスを入れて採取水をガラス瓶から押し出した。各サイトの試料のpH値は常時、中性域になるようにpH調整剤によって調整した。
当該VOCsの定量分析結果を表5〜表12に示す。
【0031】
表5は、Aサイト試料におけるTCE量を、試料1〜5、比較例試料において1日から15日迄、定量分析した測定結果である。
表6は、Aサイト試料におけるcDCE量を、試料1〜5、比較例試料において1日から43日迄、定量分析した測定結果である。但し、比較例試料において1日から43日迄、cDCEが検出されなかった。そこで、0日目のAサイト試料に市販試薬のcDCEを添加して43日迄、定量分析を行った。その分析結果を表6の比較例試料
*に示した。
表7は、Aサイト試料におけるPCE量を、試料1〜5、比較例試料において1日から15日迄、定量分析した測定結果である。
表8は、Bサイト試料におけるTCE量を、試料1〜4において1日から21日迄、定量分析した測定結果である。
【0032】
表9は、Bサイト試料におけるcDCE量を、試料1〜4において1日から125日迄、定量分析した測定結果である。
表10は、Bサイト試料におけるPCE量を、試料1〜4において1日から21日迄、定量分析した測定結果である。
表11は、Cサイト試料におけるTCE量を、試料1〜4において1日から21日迄、定量分析した測定結果である。
表12は、Cサイト試料におけるcDCE量を、試料1〜4において1日から60日迄、定量分析した測定結果である。
【0033】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0034】
(4)まとめ
表5、7、8、10、11から明らかなように、ビフィズス菌培養物を含む試料1〜4は、いずれもTCE、PCEを短期間で分解出来ることが判明した。このことから、試料1〜4は、いずれも嫌気性バイオレメディエーションに用いる浄化処理剤として優れていることが判明した。
また、乳糖は含まれるが、実質的にホエイ蛋白質を含まない試料5は、8日以降に、TCE、PCEの分解が始まるが、嫌気性バイオレメディエーションに用いる浄化処理剤として優れていることが判明した。
一方、ビフィズス菌培養物を含まない比較例試料は、15日程度ではTCE、PCEともほとんど分解出来ないことも判明した。
【0035】
表6、9、12から明らかなように、上述したTCEの分解(脱塩素)に伴い、cDCEが生成してくる。試料1〜5は、いずれもこれらcDCEを短期間で分解出来ることが判明した。このことから、試料1〜5は、cDCEに関しても、いずれも嫌気性バイオレメディエーションに用いる浄化処理剤として優れていることが判明した。
さらに、ビフィズス菌培養物を含む試料1〜5の中でも、カリウムやリンの含有量が高い試料3、4はcDCEの分解速度が、さらに早いことも判明した。
これに対し、ビフィズス菌培養物を含まない比較例試料は、43日を経過してもTCEの分解が進まず、cDCEが検出されなかった。この為、上述したように、0日目のAサイト試料に市販試薬のcDCEを添加して43日迄、定量分析を行ったが、分解速度は遅かった。
【0036】
(実施例2)
[実地による本試験]
(1)試験方法
「発明を実施するための形態」欄の「2.浄化処理剤を存在させた土壌又は地下水の嫌気性バイオレメディエーションによる浄化処理方法」において説明した、
図2に基づく注入井戸を2本掘削した。
当該2本の注入井戸の一方へ、前記実施例1に記載された試料1を、水にて150倍に希釈して注入した。他方の注入井戸の一方へ、実施例1の試料4を、水にて150倍に希釈して注入した。
浄化処理剤試料の注入前と、注入後は1ヶ月置きに地下水を採水し、VOCsであるTCE濃度、cDCE濃度の定量分析を、6カ月迄行った。
当該定量分析結果を、
図4、5に示す。ここで、
図4、5は、縦軸にTCE濃度またはcDCE濃度をとり、横軸に時間(経過日数)をとり、試料1の結果を−●−でプロットし、試料4の結果を−■−でプロットしたグラフである。
【0037】
(2)まとめ
図4から明らかなように、試料1及び試料4は、いずれもTCEを短期間で分解していることが判明した。
次に、
図5から明らかなように、上述したTCEの分解(脱塩素)に伴い、cDCEが生成してくることが明らかとなった。試料1及び試料4は、いずれもこれらcDCEを分解していることが判明した。そして、試料4は、試料1より速くcDCEを分解していることも判明した。
【0038】
以上の結果から、ビフィズス菌培養物を含む試料1及び試料4は、いずれも嫌気性バイオレメディエーションに用いる浄化処理剤として優れていることが、実地による本試験においても判明した。
試料1よりもカリウムやリンの含有量が高い試料4は、cDCEの分解速度が3〜4倍速く、当該観点からはさらに好ましいことも判明した。