特許第6440998号(P6440998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440998
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20181210BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20181210BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   B60N2/879
   A47C7/38
   B60R11/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-170112(P2014-170112)
(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-43828(P2016-43828A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康行
(72)【発明者】
【氏名】長澤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 文彬
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴夫
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−247388(JP,A)
【文献】 実開昭62−169593(JP,U)
【文献】 特開2005−323798(JP,A)
【文献】 特開2009−291454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/80−2/897
A47C 7/38
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスピーカと、
それぞれのスピーカの前面に設けられた繊維パッドと、
それらの繊維パッドの間に設けられた中間遮音パッドと、
前記繊維パッドの外側に設けられた外側遮音パッドと、
前記スピーカ、前記繊維パッド及び前記遮音パッドを覆う表皮と、
を有しており、
前記繊維パッドは立体網構造を内部に有している弾性材料によって形成されており、
前記遮音パッドは前記繊維パッドよりも音の伝達を抑制する弾性材料によって形成されており、
前記繊維パッドは前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された空間内に設けられており、
前記繊維パッド、前記中間遮音パッド及び前記外側遮音パッドは前記スピーカから出た音を所望の方向へ導くためのダクト構造を構成しており、
前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された前記空間及び当該空間内に設けられた前記繊維パッドは、前記複数のスピーカに近い側から遠い側へ向けて左右方向の外側へ広がる形状を有すると共に上下方向にも延在している
ことを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記複数のスピーカの後部に設けられた弾性体と、
当該弾性体を覆う表皮と、を有しており、
前記弾性体は前記繊維パッドよりも音の伝達を抑制する弾性材料によって形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記複数のスピーカは、ヘッドレストの中心線であって鉛直方向に延びる中心線に関して左右に分けて設けられており、
前記遮音パッドは左右に分けられた前記複数のスピーカの間のヘッドレストの中央領域に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記遮音パッドは前記複数のスピーカに近い側から遠い側へ向けて左右方向の外側へ広がる形状を有することを特徴とする請求項記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記繊維パッドを覆う前記表皮は前記遮音パッドよりも音を通過させ易い材料によって形成されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1つに記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記表皮はパンチングレザーを含んだ材料又は3次元ネット部材によって形成されていることを特徴とする請求項記載のヘッドレスト。
【請求項7】
搭乗者が座る部分であるシートクッションと、
搭乗者が背を当てる部分であるシートバックと、
前記シートバックに装着されており搭乗者の頭部が当たる部分であるヘッドレストと、
を有する車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストは請求項1から請求項のいずれか1つに記載のヘッドレストであることを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
搭乗者が座る部分であるシートクッションと、
搭乗者が背を当てる部分であるシートバックと、
前記シートバックに装着されており搭乗者の頭部が当たる部分であるヘッドレストと、
を有する車両用シートにおいて、
前記シートバック及び/又は前記シートクッションは、
複数のスピーカと、
それぞれのスピーカの前面に設けられた繊維パッドと、
それらの繊維パッドの間に設けられた中間遮音パッドと、
前記繊維パッドの外側に設けられた外側遮音パッドと、
前記スピーカ、前記繊維パッド及び前記遮音パッドを覆う表皮と、
を有しており、
前記繊維パッドは立体網構造を内部に有している弾性材料によって形成されており、
前記遮音パッドは前記繊維パッドよりも音の伝達を抑制する弾性材料によって形成されており、
前記繊維パッドは前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された空間内に設けられており、
前記繊維パッド、前記中間遮音パッド及び前記外側遮音パッドは前記スピーカから出た音を所望の方向へ導くためのダクト構造を構成しており、
前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された前記空間及び当該空間内に設けられた前記繊維パッドは、前記複数のスピーカに近い側から遠い側へ向けて左右方向の外側へ広がる形状を有すると共に上下方向にも延在している
ことを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに着座した者が後頭部を当てるヘッドレストに関する。また、本発明は、車両に搭乗した者が座る車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シート用のヘッドレストにおいて、搭乗者の頭が当たる部分の左右の横位置にスピーカを設置するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、従来、車両用シートのシートバックの上部であって搭乗者の首の左右の横位置にスピーカを設置することが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1のヘッドレストにおいては、スピーカの全体が大きくなってしまうので、ヘッドレストによって後方からの視界が妨げられるという問題があった。また、特許文献2の車両用シートにおいては、搭乗者が所定の位置に着座している間は支障が無いものの、搭乗者が着座するときや、席から離れるときや、身体が大きく揺れたとき等において、身体がスピーカの周囲に存在する硬質の枠体に触れて違和感を覚えるという問題があった。
【0004】
上記の問題を解消するため、枠体に代えて、ウレタンパッドをスピーカの前に配置するというヘッドレストが考えられる。この構造によれば、ウレタンパッドが置かれた部分に搭乗者が触れても硬さに関して違和感を覚えることが無くなるので、スピーカを人の身体の近くに配置でき、このためにヘッドレスト等といった製品を小型に形成できるという利点がある。
【0005】
しかしながら、ウレタンパッドは音を通し難い性質を有しているので、スピーカの前にウレタンパッドを置いた場合には、搭乗者がスピーカからの音を聞き難くなるという問題が生じる。ウレタンパッドの厚さを薄くすればウレタンパッドの裏側にスピーカが置かれた場合でも、ある程度の音圧で音を聞くことができるようになるが、この場合には頭や身体を保持する機能が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−104948号公報
【特許文献2】実開平6−086612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、車両用シートへの搭乗者がスピーカを内蔵したヘッドレストやシートに触れたときに違和感を覚えないようにすること、搭乗者の身近にスピーカを配置することによりヘッドレストやシートを小型に形成できるようにすること、及びスピーカからの音の音圧や音質が低下するのを防止すること、の全てを達成できるヘッドレスト及び車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るヘッドレストは、複数のスピーカと、それぞれのスピーカの前面に設けられた繊維パッドと、それらの繊維パッドの間に設けられた中間遮音パッドと、前記繊維パッドの外側に設けられた外側遮音パッドと、前記スピーカ、前記繊維パッド及び前記遮音パッドを覆う表皮とを有しており、前記繊維パッドは立体網構造を内部に有している弾性材料によって形成されており、前記遮音パッドは前記繊維パッドよりも音の伝達を抑制する弾性材料によって形成されており、前記繊維パッドは前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された空間内に設けられており、前記繊維パッド、前記中間遮音パッド及び前記外側遮音パッドは前記スピーカから出た音を所望の方向へ導くためのダクト構造を構成しており、前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された前記空間及び当該空間内に設けられた前記繊維パッドは、前記複数のスピーカに近い側から遠い側へ向けて左右方向の外側へ広がる形状を有すると共に上下方向にも延在していることを特徴とする。
【0009】
上記の「立体網構造を内部に有している弾性部材である繊維パッド(以下、立体網状繊維パッドと言うことがある)」は、例えば次の性質を有する材料である。
(1)弾性材料である。すなわち、押すとへこみ、押すことを解除すると元の形状に復元する。
(2)繊維状の樹脂を3次元的に絡み合わせることにより、多数の内部空間を保有しており、これらの内部空間の合計の容量はかなり大きくなっている。このため、立体網状繊維パッドは音圧及び音質を低下させることなく音を通過させることができる。
(3)パッド状、すなわち当て物状、敷物状、板状である。
(4)柔らかいが、全体的な形状を維持できる程度の硬さを有している。
(5)自然状態で10〜40mmの厚さ、好ましくは20〜40mmの厚さを有している。
(6)大人の人が両手で挟んで押し付つけたときに厚さが2/3〜1/2程度に縮まり、さらにその押し付け力を解除すると比較的短時間の後に厚さが元の状態に自然に復帰する。
【0010】
上記の「音の伝達を抑制する弾性材料」は、音の伝達量を抑制できる材料であって弾性部材でありさえすれば、どのような材料であっても良い。このような材料として、例えば、発泡材料であるウレタンが考えられる。
【0011】
本発明に係るヘッドレストにおいて、前記複数のスピーカは、ヘッドレストの中心線であって鉛直方向に延びる中心線に関して左右に分けて設けることができる。前記遮音パッドは左右に分けられた前記複数のスピーカの間のヘッドレストの中央領域に設けることができる。
【0012】
この構成によれば、左側のスピーカから搭乗者の左耳へ音を伝えることができ、右側のスピーカから搭乗者の右耳へ音を伝えることができる。遮音パッドの働きにより、右チャンネルの音と左チャンネルの音とを明確に分離できる。
【0013】
本発明に係るヘッドレストにおいて、前記遮音パッドは前記複数のスピーカに近い側から遠い側へ向けて左右方向の外側へ広がる形状を有することができる。こうすれば、スピーカから出た音をヘッドレストの外側へ向けて伝達できる。
【0014】
本発明に係るヘッドレストにおいて、前記繊維パッドを覆う前記表皮は前記遮音パッドよりも音を通過させ易い材料によって形成されることが望ましい。これにより、ヘッドレストの内部に設置したスピーカからの音の音量が表皮によって減衰することを防止できる。
【0015】
本発明に係るヘッドレストにおいて、前記表皮はパンチングレザーを含んだ材料又は3次元ネット部材によって形成することができる。この構成によれば、ヘッドレストの内部のスピーカから出た音が表皮によって減衰することを防止できる。
【0016】
次に、本発明に係る第1の車両用シートは、搭乗者が座る部分であるシートクッションと、搭乗者が背を当てる部分であるシートバックと、前記シートバックに装着されており搭乗者の頭部が当たる部分であるヘッドレストとを有する車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは以上に挙げた構成のヘッドレストであることを特徴とする。
【0017】
この第1の車両用シートはヘッドレストに本発明を適用した車両用シートである。この車両用シートによれば、本発明に係るヘッドレストによって得られる効果を同様に得ることができる。
【0018】
次に、本発明に係る第2の車両用シートは、搭乗者が座る部分であるシートクッションと、搭乗者が背を当てる部分であるシートバックと、前記シートバックに装着されており搭乗者の頭部が当たる部分であるヘッドレストとを有する車両用シートにおいて、前記シートバック及び/又は前記シートクッションは、複数のスピーカと、それぞれのスピーカの前面に設けられた繊維パッドと、それらの繊維パッドの間に設けられた中間遮音パッドと、前記繊維パッドの外側に設けられた外側遮音パッドと、前記スピーカ、前記繊維パッド及び前記遮音パッドを覆う表皮とを有しており、前記繊維パッドは立体網構造を内部に有している弾性材料によって形成されており、前記遮音パッドは前記繊維パッドよりも音の伝達を抑制する弾性材料によって形成されており、前記繊維パッドは前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された空間内に設けられており、前記繊維パッド、前記中間遮音パッド及び前記外側遮音パッドは前記スピーカから出た音を所望の方向へ導くためのダクト構造を構成しており、前記中間遮音パッドと前記外側遮音パッドとによって形成された前記空間及び当該空間内に設けられた前記繊維パッドは、前記複数のスピーカに近い側から遠い側へ向けて左右方向の外側へ広がる形状を有すると共に上下方向にも延在していることを特徴とする。
【0019】
この第2の車両用シートはシートバック及びシートクッションの少なくともいずれか一方に本発明を適用した車両用シートである。この車両用シートによれば、本発明に係るヘッドレストによって得られる効果を同様に得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るヘッドレストによれば、次の効果を得ることができる。
(1)スピーカの前面に繊維パッドを配置しており、この繊維パッドは3次元的に存在している多数の内部空間を内部に有しているので、スピーカからの音の音圧や音質が低下することを防止でき、スピーカから出た音を搭乗者へ良好に伝達できる。
(2)繊維パッドの形状及び配置位置並びに遮音パッドの形状及び配置位置を適宜に調整することにより、複数のスピーカから出た音を所望の方向へ向けることができる。つまり、繊維パッドと遮音パッドの組み合わせによってスピーカのダクト構造を構成でき、このダクト構造によりスピーカから出た音に指向性を付与できる。
(3)複数の繊維パッドの間に遮音パッドを設けたので、複数のスピーカから出た音が互いに干渉し合うことを防止できる。このため、複数のスピーカから出た音の分離度を高く維持できる。このため、搭乗者へ濁りのない澄んだ高品質の音を提供できる。
(4)繊維パッド及び遮音パッドは、それぞれ、弾性を有するパッドであるので、人に対してクッション性を付与でき、人の頭部や身体を保持することができ、さらにスピーカを衝撃から保護できる。
(5)繊維パッド及び遮音パッドは、それぞれ、弾性を有するパッドであるので、繊維パッド及び遮音パッドの直近の裏側にスピーカを配置した場合でも、搭乗者の頭部にスピーカの硬質部分が直接に当たることがない。そして、このように繊維パッド及び遮音パッドの直近の裏側にスピーカを配置すれば、スピーカを内蔵したヘッドレストを非常に小型に形成できる。
【0021】
本発明に係る車両用シートによれば、本発明に係るヘッドレストと同様の効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の車両用シートの構成要素であるヘッドレストを示す斜視図である。
図3図2のヘッドレストの構成要素であるヘッドレストフレームを示す斜視図である。
図4図2の切断面Aに沿ったヘッドレストの平面断面図である。
図5図4のB−B線に従ったヘッドレストの縦断面図である。
図6図4のC−C線に従ったヘッドレストの縦断面図である。
図7】本発明に係るヘッドレストの他の実施形態を示す平面断面図である。
図8】本発明に係るヘッドレストのさらに他の実施形態を示す平面断面図である。
図9】本発明に係るヘッドレストのさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
図10】本発明に係る車両用シートの他の実施形態を示す斜視図である。
図11】本発明に係る車両用シートのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートを実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0024】
(ヘッドレスト及び車両用シートの第1の実施形態)
図1は本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートのそれぞれの一実施形態を示している。ここに示す車両用シート1Aは、例えば、車両の一種類である自動車の内部に設置される複数のシートのうちの1つである。車両用シート1Aは、搭乗者が座る部分であるシートクッション2と、搭乗者が背中を当てる部分であるシートバック3と、シートバック3に装着されたヘッドレスト4Aとを有している。
【0025】
ヘッドレスト4Aは、図2に示すように、ヘッドレストフレーム8と表皮9とを有している。ヘッドレストフレーム8は、図3に示すように、芯材6とピラーフレーム7a,7bとを有している。芯材6は、1つの単体の箱型部材であっても良いし、前側芯材と後側芯材とを結合することによって形成された2分割構造であっても良い。芯材6の内部は密閉された空間となっている。芯材6は硬質樹脂、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂によって形成されている。
【0026】
図2において、表皮9は、前側表皮10と後側表皮11とを縫い合わせることによって形成されている。表皮9の底部には開口が形成されている。ヘッドレストフレーム8の芯材6を表皮9の底部の開口から表皮9の内部へ挿入することにより、芯材6が表皮9で覆われている。ピラーフレーム7a,7bは表皮9の外部へ延出している。図1において、ピラーフレーム7a,7bをシートバック3の頂部に設けた穴に差し込むことにより、ヘッドレスト4Aがシートバック3に装着されている。
【0027】
図4は、図2の切断面Aに沿ったヘッドレスト4Aの平面断面図である。図5図4のB−B線に従ったヘッドレスト4Aの縦断面図である。図6図4のC−C線に従ったヘッドレスト4Aの縦断面図である。これらの図において、芯材6の内部は内部空間K1となっている。芯材6の背面にピラーフレーム7a,7bが固定されている。芯材6の前面にスピーカ25a及び25bが固定されている。本実施形態では、スピーカ25a,25bはフルレンジの音域のスピーカである。必要に応じてこれらのスピーカ以外にウーハー等の他のスピーカを設けることもできる。スピーカは3個以上の場合もある。
【0028】
芯材6と内部空間K1は互いに協働してスピーカ25a,25bのためのエンクロージャとして使用される。エンクロージャは、スピーカ25a,25bの後部から出る音がそれらのスピーカ25a,25bの前部から出る音に干渉することを防止するための音響要素である。
【0029】
スピーカ25a及びスピーカ25bは、図4においてヘッドレスト4Aの幅方向(すなわち左右方向)の中心線であって鉛直方向(すなわち図4の紙面を貫通する方向)に延びる中心線X0に関して左右に分けて配置されている。そして、そのように分けて配置されたスピーカ25a,25bの間のヘッドレスト4Aの中央領域に遮音パッド16が設けられている。図1の車両用シート1Aに着座した搭乗者の頭部は、自然状態において図4の遮音パッド16に対応した領域に存在する。スピーカ25a,25bは搭乗者の頭部の両耳のそれぞれの後方領域に位置している。
【0030】
繊維パッド15、15は図5及び図6から理解されるように、ヘッドレスト4Aの前面において矢印Eで示すように前方から見て上下に長い略長方形状に形成されている。そして、その左右の繊維パッド15、15によって挟まれた領域に遮音パッド16が設けられている。遮音パッド16は後部の弾性体17と別体の部材として設けられている。図4において、左右の繊維パッド15、15は、それぞれ、スピーカ25a及び25bの前面に位置している。そして、左右の繊維パッド15、15のそれぞれの外側に遮音パッド16a及び16bが設けられている。
【0031】
繊維パッド15及び遮音パッド16、16a,16bはスピーカ25a,25bから出た音を所望の方向へ導くためのダクト構造18を構成している。このダクト構造18は、搭乗者の頭部を支持するための弾性支持体としての機能、及びスピーカ25a,25bを保護するための構造であるスピーカグリル構造としての機能も果たす。
【0032】
図4及び図6に示すように、遮音パッド16は概ね矩形状のパッドである。また、遮音パッド16は、図4に示すように、スピーカ25a,25bに近い側から遠い側へ向けて水平面内の左右へ広がる平面断面形状、すなわち台形の平面断面形状を有している。そして、この遮音パッド16の平面断面形状に応じて、個々のスピーカ25a及び25bの前面の繊維パッド15は互いに外側へ向くように傾斜して設けられている。
【0033】
芯材6の背面に弾性体17が設けられている。この弾性体17は人が触れたときに金属的な硬い感触を与えることがなく、柔軟性を有しており、しかし適度の形状保持機能を有している材料によって形成される。この弾性体31はヘッドレスト4Aの背面部分に配置されるので、音を通過させ易い機能を有していない方が好ましい。本実施形態では、弾性体17は遮音パッド16と同じ材料であるウレタン製のパッド材料によって形成されている。
【0034】
前側表皮10と後側表皮11とを縫い合わせて成る表皮9は、芯材6の背面及び側面にある弾性体17並びに芯材6の前面にあるダクト構造18を覆っている。特に、前側表皮10がダクト構造を覆っており、後側表皮11が弾性体17を覆っている。前側表皮10は、音を通過し易い加工が施された材料によって形成されている。後側表皮11は、革、皮、合成皮革、縫い合わせが可能な軟質の合成樹脂、等によって形成されている。
【0035】
上記の「音を通過し易い加工が施された材料」は、例えばパンチングレザーを含んだ材料や3次元ネット材である。「パンチングレザーを含んだ材料」は、例えばパンチングレザーにウレタンを貼付け、音を通過し易くするためにウレタンも含めて穴加工(パンチング加工)を施したものである。「3次元ネット材」は、3Dネット材とも呼ばれるネット材である。3次元ネット材は、立体微細網状の弾性材料のようなパッド状の部材ではなく、大きな網目ができるように繊維を絡み合わせて布状に形成された材料である。3次元ネット材は大きな網目部分によって音を通すことができる。
【0036】
繊維パッド15は立体網状繊維パッドによって形成されている。この立体網状繊維パッドは次の性質を有している。
(1)弾性材料である。すなわち、押すとへこみ、押すことを解除すると元の形状に復元する。
(2)繊維状の樹脂を3次元的に絡み合わせることにより、多数の内部空間を保有しており、これらの内部空間の合計の容量はかなり大きくなっている。このため、立体網状繊維パッドは音圧及び音質を低下させることなく音を通過させることができる。
(3)パッド状、すなわち当て物状、敷物状、板状である。
(4)柔らかいが、全体的な形状を維持できる程度の硬さを有している。
(5)自然状態で10〜40mmの厚さ、好ましくは20〜40mmの厚さを有している。
(6)大人の人が両手で挟んで押し付つけたときに厚さが2/3〜1/2程度に縮まり、さらにその押し付け力を解除すると比較的短時間の後に厚さが元の状態に自然に復帰する。
【0037】
繊維パッド15として立体網状繊維パッドを用いれば、立体網状繊維パッドの内部に3次元的に存在している多数の小さな内部空間の作用により、スピーカ25a,25bから出た音の音圧や音質を低下させることなくその音を矢印Dで示す前方へ伝えることができる。
【0038】
遮音パッド16,16a,16bは、音の伝達を抑制できる弾性材料によって形成されている。なお、ここで言う「抑制」は音の伝達量を低減することの意味であり、音の伝達をほぼ100%完全に遮断することも含む意味である。このような弾性材料としては、例えば、発泡材料であるウレタンが適用できる。
【0039】
ダクト構造18は、音を通過させることができる繊維パッド15と音を抑制する遮音パッド16,16a,16bとをスピーカ25a,25bの前面に配置したことにより、それらの繊維パッド15と遮音パッド16,16a,16bとによって形成されている。スピーカ25a,25bから出た音は、このダクト構造18によって所定の方向へ向けられる。本実施形態の場合は、遮音パッド16及び繊維パッド15の両方が矢印Dで示す前方へ向かうに従って水平面内の左右へ広がる形状で設けられているので、スピーカ25a,25bから出た音は、矢印Dで示す前方方向へ単に真っ直ぐに進むのではなく、左右の外側へ向かう方向へ進行する。すなわち、スピーカ25a,25bから出た音に繊維パッド15及び遮音パッド16によって外側へ広がる指向性が付与される。
【0040】
さらに、スピーカ25aとスピーカ25bとの間には、音を抑制する遮音パッド16が設けられているので、それらのスピーカから出た音は互いに干渉することがなくなる。このため、スピーカ25a,25bから出た音の分離度が向上し、搭乗者に対して濁りのない澄んだ音を提供できる。
【0041】
本実施形態に係るヘッドレスト4Aは以上のように構成されているので、図1において搭乗者が表皮9の前側表皮10に後頭部を当てたとき、搭乗者は好ましいクッション性を体感できる。また、スピーカ25a,25bから音声や音楽が発生されたとき、搭乗者は表皮9に後頭部を当てた状態でスピーカ25a,25bからの音を認識できる。
【0042】
このとき、図4の芯材6及び内部空間K1は協働してエンクロージャとして機能し、スピーカ25a,25bの前方へ望ましい音を供給する。また、スピーカ25a,25bの前面に設けた繊維パッド15及び前側表皮10は、いずれも音を通過し易い材料によって形成されているので、搭乗者による音の聞こえ方に支障が生じることはない。
【0043】
本実施形態によれば、芯材6及び内部空間K1によってスピーカのためのエンクロージャを形成したので、ヘッドレスト4A以外に専用のエンクロージャを設ける必要がなくなった。そのため、スピーカの付いていないヘッドレストと同等の大きさのヘッドレストにスピーカを組み付けることが可能になった。また、ヘッドレストにスピーカを付けているにもかかわらずヘッドレストの外観が損なわれることが無くなった。
【0044】
本実施形態では従来のスピーカグリル構造で用いられていたような硬質の枠体を用いておらず、それに代えて、硬くない繊維パッド15及び硬くない遮音パッド16,16a,16bによってスピーカグリル構造を構成したので、図1の車両用シート1Aへの搭乗者がヘッドレスト4Aの前面に触れたときに硬いという違和感を覚えないようにすることができる。
【0045】
また、硬くなく且つ音を通過させることができる立体網状繊維パッドによって繊維パッド15を形成したので、搭乗者の頭部の直近にスピーカを配置することができ、それによりヘッドレストを小型に形成できる。
【0046】
また、本実施形態で用いている立体網状繊維パッドは、繊維状の樹脂を3次元的に絡み合わせることにより、多数の小さな内部空間を分散状態で保有しており、音の透過性が非常に高い。これにより音の伝達が良好となり、その結果、スピーカから出た音を音圧や音質を低下させることなく搭乗者へ供給できる。
【0047】
さらに、従来であれば、スピーカ25a,25bから出る音の向きを調整する際には、芯材6に対するスピーカ25a,25bの取付角度を変化させることが必要であった。これに対し、本実施形態では、スピーカ25a,25bから出た音の方向性を繊維パッド15及び遮音パッド16の形状及び配置位置によって調整することにしたので、スピーカ25a,25bの芯材6に対する取付角度を一定に保持した上で、音の方向性を調整することができるようになった。
【0048】
(変形例1)
上記の実施形態では、図4に示したヘッドレスト4Aのように、遮音パッド16の形状を、スピーカ25a,25bから遠ざかるに従って水平面内で左右方向へ広がる形状とした。しかしながら、これに代えて、図7に示すヘッドレスト4Bのように遮音パッド16を、左右方向の幅W0が一定である形状、すなわちほぼ直方体形状に形成しても良い。この場合においても、繊維パッド15及び遮音パッド16,16a,16bから成るダクト構造18によって、スピーカ25a,25bから出た音に指向性を持たせることができる。また、スピーカ25aから出た音とスピーカ25bから出た音とが干渉し合うことを遮音パッド16によって防止でき、その結果、左右の音を分離する能力を高く保持できる。
【0049】
(変形例2)
上記の実施形態では、図4に示したヘッドレスト4Aのように遮音パッド16の形状を、スピーカ25a,25bから遠ざかるに従って水平面内で左右方向へ広がる形状としたり、図7に示したヘッドレスト4Bのように遮音パッド16の形状を、左右方向の幅W0が一定である形状にしたりした。しかしながら、これらに代えて、図8に示すヘッドレスト4Cのように遮音パッド16を、矢印Dで示す前方へ向かうに従って水平面内の中央部分へすぼまる形状とすることもできる。この場合においても、繊維パッド15及び遮音パッド16,16a,16bから成るダクト構造18によって、スピーカ25a,25bから出た音に指向性を持たせることができる。また、スピーカ25aから出た音とスピーカ25bから出た音とが干渉し合うことを遮音パッド16によって防止でき、その結果、左右の音を分離する能力を高く保持できる。
【0050】
(変形例3)
上記の実施形態では、図4図5及び図6に示したように、略長方形状の繊維パッド15と遮音パッド16,16a,16bとによってダクト構造18を構成した。これに代えて、図4図5及び図9に示す構成の本変形例のダクト構造を採用することもできる。図9図4のC−C線に従った縦断面構造である。
【0051】
本変形例のヘッドレスト4Dで用いられるダクト構造が繊維パッド15及び遮音パッド16,16a,16bを有することは図4図5及び図6に示したダクト構造と同じである。本変形例が図4図5及び図6に示したダクト構造と異なる点は、左右の繊維パッド15、15に挟まれた遮音パッド16が図9に示すように背面の弾性体17と一体になっていることである。この変形例のダクト構造によれば、遮音パッド16による音の抑制効果を高めることができ、その結果、スピーカ25a及びスピーカ25bからの音の分離の能力をより一層高めることができる。
【0052】
(車両用シートの第2の実施形態)
図10は本発明に係る車両用シートの他の実施形態を示している。この車両用シート1Bはシートバック3の上部の内部にスピーカ25a,25b及びダクト構造18を内蔵している。ダクト構造18は、例えば図4図5及び図6に示したダクト構造18と同じである。
【0053】
本実施形態において、ヘッドレスト14は図1に示したヘッドレスト4A〜4D(すなわち、スピーカ及びダクト構造を有するもの)であっても良いし、スピーカを内蔵していないヘッドレストであっても良い。
【0054】
本実施形態では従来のスピーカグリル構造で用いられていたような硬質の枠体を用いておらず、それに代えて、硬くない立体網状繊維パッドによって形成された繊維パッド15及び硬くない遮音パッド16を採用したので、車両用シート1Bへの搭乗者がシートバック3の前面に触れたときに硬いという違和感を覚えないようにすることができる。
【0055】
また、硬くなく且つ音を通過させることができる繊維パッド15及び硬くない弾性体である遮音パッド16をスピーカ25a,25bの前面に設けたので、搭乗者の身体(特に肩)の直近又は身体の裏側にスピーカを配置することができ、それにより製品としての車両用シート1Bを小型に形成できる。
【0056】
また、本実施形態で用いている立体網状繊維パッドは、繊維状の樹脂を3次元的に絡み合わせることにより、多数の小さな内部空間を分散状態で保有しており、音の透過性が非常に高い。これにより音の伝達が良好となり、その結果、スピーカから出た音を音圧や音質を低下させることなく搭乗者へ供給できる。
【0057】
また、本実施形態の車両用シート1Bによれば、繊維パッド15及び遮音パッド16,16a,16bから成るダクト構造18(図4参照)によって、スピーカ25a,25bから出た音に指向性を持たせることができる。さらに、スピーカ25aから出た音とスピーカ25bから出た音とが干渉し合うことを遮音パッド16によって防止でき、その結果、左右の音を分離する能力を高く保持できる。
【0058】
(車両用シートの第3の実施形態)
図11は本発明に係る車両用シートのさらに他の実施形態を示している。この車両用シート1Cはシートクッション2の先端部の内部にスピーカ25a,25b及びダクト構造18を内蔵している。ダクト構造18は、例えば図4図5及び図6に示したダクト構造18と同じである。
【0059】
本実施形態において、ヘッドレスト14は図1に示したヘッドレスト4A〜4D(すなわち、スピーカ及びダクト構造を有するもの)であっても良いし、スピーカを内蔵していないヘッドレストであっても良い。
【0060】
本実施形態では従来のスピーカグリル構造で用いられていたような硬質の枠体を用いておらず、それに代えて、硬くない立体網状繊維パッドによって形成された繊維パッド15及び硬くない遮音パッド16を採用したので、車両用シート1Bへの搭乗者がシートバック3の前面に触れたときに硬いという違和感を覚えないようにすることができる。
【0061】
また、硬くなく且つ音を通過させることができる繊維パッド15及び硬くない弾性体である遮音パッド16をスピーカ25a,25bの前面に設けたので、搭乗者の身体(特にでん部又は太もも部)の直近又は身体の接触面にスピーカを配置することができ、それにより製品としての車両用シート1Cを小型に形成できる。
【0062】
また、本実施形態で用いている立体網状繊維パッドは、繊維状の樹脂を3次元的に絡み合わせることにより、多数の小さな内部空間を分散状態で保有しており、音の透過性が非常に高い。これにより音の伝達が良好となり、その結果、スピーカから出た音を音圧や音質を低下させることなく搭乗者へ供給できる。
【0063】
また、本実施形態の車両用シート1Cによれば、繊維パッド15及び遮音パッド16,16a,16bから成るダクト構造18(図4参照)によって、スピーカ25a,25bから出た音に指向性を持たせることができる。さらに、スピーカ25aから出た音とスピーカ25bから出た音とが干渉し合うことを遮音パッド16によって防止でき、その結果、左右の音を分離する能力を高く保持できる。
【0064】
(他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、図1図10及び図11に示すように、シートバックとヘッドレストとがピラーフレームによって接続されているが、これに代えて、シートバックとヘッドレストが一体になっているハイバックシートタイプの車両用シートにおいて本発明のスピーカに関する構成をヘッドレスト部分やその他の部分に備えるようにしても良い。
【0066】
また、上記の実施形態では運転者及び同乗者の1名用単独シートで説明を行ったが、車両の全てのシート、例えば後部座席シートにも適用できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0067】
1A,1B,1C.車両用シート、2.シートクッション、3.シートバック、4A,4B,4C,4D.ヘッドレスト、6.芯材、7a,7b.ピラーフレーム、8.ヘッドレストフレーム、9.表皮、10.前側表皮、11.後側表皮、14.ヘッドレスト、15.繊維パッド、16.遮音パッド、16a,16b.遮音パッド、17.弾性体、18.ダクト構造、25a,25b.スピーカ、K1.内部空間、X0.中心線、W0.遮音パッドの幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11