特許第6441012号(P6441012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6441012反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441012
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20181210BHJP
【FI】
   G03F1/24
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-200628(P2014-200628)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72438(P2016-72438A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】池邊 洋平
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴弘
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−098611(JP,A)
【文献】 特開2010−080659(JP,A)
【文献】 特開2011−029334(JP,A)
【文献】 特開2013−141039(JP,A)
【文献】 特開2006−265681(JP,A)
【文献】 特開2004−302024(JP,A)
【文献】 特表2008−539573(JP,A)
【文献】 特開2004−207593(JP,A)
【文献】 特開2006−228766(JP,A)
【文献】 特開2009−206287(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0076035(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0084768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 −1/86
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に多層反射膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とがこの順に形成された反射型マスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、膜厚が60nm以下であって、一つ又は複数の第1の層と一つ又は複数の第2の層を含む多層膜からなり、EUV光に対する反射率が1〜30%、前記位相シフト膜からの反射光と前記多層反射膜からの反射光との位相差が170〜190度であり、
前記第1の層は、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料から選択された金属材料を含み、
前記第2の層は、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料のうち、前記第1の層とは異なる金属材料から選択された金属材料を含み、
前記第1の層と前記第2の層との界面及びその近傍には、前記第1の層と前記第2の層の合計膜厚に対して25%以上80%以下の割合で、金属拡散領域が形成されていることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記第1の層は、Ta及びCrの何れか一種の金属材料を含み、
前記第2の層は、Ta及びCrの何れかよりも、波長13.5nmにおける屈折率nが小さい一種の金属材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記第2の層は、Moを含むことを特徴とする請求項2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記多層反射膜と前記位相シフト膜との間に保護膜を有し、該保護膜がRuを主成分として含む材料で形成された場合には、前記位相シフト膜の最下層は前記第2の層であることを特徴とする請求項3に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記第2の層は、Ru、Pt、Pd、Ag及びAuのうちの何れか一種の金属材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記多層反射膜と前記位相シフト膜との間に保護膜を有し、該保護膜がRuを主成分として含む材料で形成された場合には、前記位相シフト膜の最下層は前記第1の層であることを特徴とする請求項5に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記第1の層は、前記位相シフト膜の最上層であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一に記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記位相シフト膜の膜厚は、50nm以下であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一に記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
前記位相シフト膜の膜厚は、40nm以上であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一に記載の反射型マスクブランク。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか一に記載の反射型マスクブランクにおける多層膜からなる前記位相シフト膜をパターニングして位相シフト膜パターンを形成する位相シフト膜パターン形成工程を含むことを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至の何れか一に記載の反射型マスクブランクにおける多層膜からなる前記位相シフト膜がパターニングされた位相シフト膜パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項12】
請求項11に記載の反射型マスクを用いて半導体基板上にパターンを形成するパターン形成工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきており、より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線 (EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィが提案されている。EUVリソグラフィでは、EUV光に対する材料間の吸収率の差が小さいことなどから、反射型のマスクが用いられる。反射型マスクとしては、例えば、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、当該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、露光光を吸収する位相シフト膜がパターン状に形成されたものが提案されている。露光機(パターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光は、位相シフト膜パターンのある部分では吸収され、位相シフト膜パターンのない部分では多層反射膜により反射されることにより、光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写されるものである。位相シフト膜パターンにおいて入射する露光光の一部が、多層反射膜により反射される光と約180度の位相差をもって反射され(位相シフト)、これによりコントラスト(解像度)を得ている。
【0003】
このようなEUVリソグラフィ用の反射型マスク及びこれを作製するためのマスクブランクに関連する技術が特許文献1〜3などによって開示されている。
【0004】
特許文献1には、ハーフトーンマスクの原理をEUV露光に適用して転写解像性を向上させるために、薄膜(位相シフト膜)を2層膜とすることが記載されている。具体的な2層膜の材料としては、Mo層とTa層の組み合わせが記載されている(同文献の段落0007、0008及び0010参照)。
【0005】
特許文献2には、ハーフトーンマスクの原理をEUV露光に適用して転写解像性を向上させるために、単層膜からなるハーフトーン膜(位相シフト膜)の材料を、屈折率及び消衰係数を座標軸とする平面座標で示す図2において、四角枠(□)で囲む領域から選択することが記載されている。具体的な単層膜の材料としては、TaMo(組成比1:1)が記載されている(同文献の段落0008、0022及び図2参照)。
【0006】
特許文献3には、ハーフトーン型EUVマスクにおいて、反射率の選択性の自由度及び洗浄耐性の高さを持ち、射影効果(シャドーイング効果)を低減させるために、ハーフトーン膜の材料をTaとRuとの化合物とし、その組成範囲を規定することが記載されている(同文献の特許請求の範囲、段落0013、0015及び0019参照)。
ここで、シャドーイング効果とは、例えば、反射型マスクを使用する露光装置において、入射光と反射光の光軸が重ならないように、光をマスクに対して垂直方向から少し傾けて入射させており、このような光の傾斜に起因して、マスクの位相シフト膜パターンに厚みがあると、これに基づく影が生じる。この影の分だけ転写パターンの寸法が変化してしまうことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-207593号公報
【特許文献2】特開2006-228766号公報
【特許文献3】特許第5233321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、露光光の短波長化に伴い、半導体上で回路を形成するパターンの線幅及びパターン間隔は、その集積度を上げるために微細化の一途をたどっており、従って、半導体基板上にパターンを転写するために使用される反射型マスクに対しても位相シフト膜パターンの微細化が求められている。また、パターンの微細化と同時に、位相シフト膜パターンの薄膜化も求められている。このような要求に対し、シャドーイング効果を小さくするために、更なる薄膜化が求められているものである。
【0009】
パターンの微細化に伴うアスペクト比(パターンの線幅に対するパターン膜厚の比)の増大によって、シャドーイング効果の問題が深刻化しており、特に、EUV露光の場合において、吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚を60nm以下とすることが要求されている。
【0010】
特許文献1乃至3に開示されているように、従来から反射型マスクブランクの吸収体膜(位相シフト膜)を形成する材料としてTaが用いられてきたが、EUV光(例えば、波長13.5nm)におけるTaの屈折率nが約0.943あり、その位相シフト効果を利用しても、Taのみで形成される吸収体膜(位相シフト膜)の薄膜化は60nmが限界である。より薄膜化を行うためには、屈折率nの小さい(位相シフト効果の大きい)金属材料を用いる必要がある。例えば、波長13.5nmにおける屈折率nが小さい金属材料としては、特許文献3の、例えば図5にも記載されているように、Mo(n=0.921)やRu(n=0.888)があるが、Moは非常に酸化されやすく洗浄耐性が懸念され、Ruはエッチングレートが低く、加工や修正が困難である。
【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、膜全体として洗浄耐性や加工性に優れ、且つ、EUV光の位相をシフトさせる薄膜の位相シフト膜を有する反射型マスクブランク、その位相シフト膜をパターニングした反射型マスク及びその製造方法、並びに、その反射型マスクを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0013】
(構成1)
基板上に多層反射膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とがこの順に形成された反射型マスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、一つ又は複数の第1の層と一つ又は複数の第2の層を含む多層膜からなり、
前記第1の層は、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料から選択された金属材料を含み、
前記第2の層は、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料のうち、前記第1の層とは異なる金属材料から選択された金属材料を含み、
前記第1の層と前記第2の層との界面及びその近傍には、前記第1の層と前記第2の層の合計膜厚に対して25%以上の割合で、金属拡散領域が形成されていることを特徴とする反射型マスクブランク。
【0014】
(構成2)
前記第1の層は、Ta及びCrの何れか一種の金属材料を含み、
前記第2の層は、Ta及びCrの何れかよりも、波長13.5nmにおける屈折率nが小さい一種の金属材料を含むことを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランク。
【0015】
(構成3)
前記第2の層は、Moを含むことを特徴とする構成2に記載の反射型マスクブランク。
【0016】
(構成4)
前記多層反射膜と前記位相シフト膜との間に保護膜を有し、該保護膜がRuを主成分として含む材料で形成された場合には、前記位相シフト膜の最下層は前記第2の層であることを特徴とする構成3に記載の反射型マスクブランク。
【0017】
(構成5)
前記第2の層は、Ru、Pt、Pd、Ag及びAuのうちの何れか一種の金属材料を含むことを特徴とする構成2に記載の反射型マスクブランク。
【0018】
(構成6)
前記多層反射膜と前記位相シフト膜との間に保護膜を有し、該保護膜がRuを主成分として含む材料で形成された場合には、前記位相シフト膜の最下層は前記第1の層であることを特徴とする構成5に記載の反射型マスクブランク。
【0019】
(構成7)
前記第1の層は、前記位相シフト膜の最上層であることを特徴とする構成1乃至6の何れか一に記載の反射型マスクブランク。
【0020】
(構成8)
前記位相シフト膜の膜厚は、50nm以下であることを特徴とする構成1乃至7の何れか一に記載の反射型マスクブランク。
【0021】
(構成9)
構成1乃至8の何れか一に記載の反射型マスクブランクにおける多層膜からなる前記位相シフト膜をパターニングして位相シフト膜パターンを形成する位相シフト膜パターン形成工程を含むことを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【0022】
(構成10)
構成1乃至8の何れか一に記載の反射型マスクブランクにおける多層膜からなる前記位相シフト膜がパターニングされた位相シフト膜パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【0023】
(構成11)
構成10に記載の反射型マスクを用いて半導体基板上にパターンを形成するパターン形成工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る反射型マスクブランクによれば、上述のように、位相シフト膜を、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料を用いて多層膜としたので、各層の膜厚を薄くして位相シフト膜を形成することが可能となる。このため、位相シフト膜の積層数を変更することにより、広い膜厚の範囲で、位相差等の光学特性を調整できるので、その範囲で、EUV露光時の位相シフト効果を得ることができる。これにより、この位相シフト膜を有する反射型マスクブランクを、シャドーイング効果が小さく、解像度を向上させた位相シフト膜パターンを有する反射型マスクの製造用原版とすることができる。
また、位相シフト膜を、一つ又は複数の第1の層と一つ又は複数の第2の層を含む多層膜としたので、各層の膜厚を薄くすることができる。この各層の薄膜化により、エッチングレートが低く、加工や修正が困難な金属材料で形成した層であっても、その膜厚が小さいことから、加工や修正を容易に行うことができ、位相シフト膜全体において、当該金属材料の加工困難性の影響を低減することができ、位相シフト膜を全体として、加工性に優れたものとすることができる。
また、位相シフト膜を、一つ又は複数の第1の層と一つ又は複数の第2の層を含む多層膜とし、各層の界面及びその近傍に、一層の第1の層と一層の第2の層の合計膜厚に対して25%以上の割合で、金属拡散領域を形成したので、異なる金属材料を含む薄膜の層を、金属拡散領域を介して隣接させて配置することができる。この構成により、酸化され易く、洗浄耐性が懸念される金属材料で形成した層であっても、この層に、酸化されにくく、洗浄耐性に優れた金属材料で形成した層を隣接させ、両者の間で金属拡散領域を形成し、当該部分において洗浄耐性を向上させることができるので、位相シフト膜全体において、当該金属材料の懸念される洗浄耐性の影響を低減することができ、位相シフト膜全体を洗浄耐性に優れたものとすることができる。
【0025】
本発明に係る反射型マスクの製造方法によれば、上述した反射型マスクブランクにおける多層膜からなる位相シフト膜をパターニングして位相シフト膜パターンを形成する位相シフト膜パターン形成工程を含む構成としたので、シャドーイング効果が小さく、解像度を向上させた薄膜の位相シフト膜パターンを有する反射型マスクを製造することができる。
反射型マスクブランクにおける位相シフト膜は、異なる金属材料で形成した薄膜の層を隣接配置した多層膜からなるものであるので、位相シフト膜パターン形成工程では、上述した加工困難性の金属材料で形成した層であっても、その膜厚が小さいことから、その加工困難性の影響を低減でき、位相シフト膜を容易に加工でき、位相シフト膜パターンを形成することができる。
位相シフト膜パターンの端面が洗浄液に曝される洗浄工程では、多層膜の一部に、洗浄耐性が懸念される金属材料で形成した薄膜の層があっても、この層に、洗浄耐性に優れた金属材料で形成した薄膜の層が隣接配置され、且つ、両層の界面及びその近傍に上述の金属拡散領域が形成されているので、多層膜の一部で懸念される洗浄耐性の影響を位相シフト膜パターンの端面に及ぼすことを抑制でき、位相シフト膜パターン全体の洗浄耐性を向上させることができる。
【0026】
本発明に係る反射型マスクによれば、上述した反射型マスクブランクにおける多層膜からなる前記位相シフト膜がパターニングされた位相シフト膜パターンを有する構成としたので、この反射型マスクを、シャドーイング効果が小さく、解像度を向上させた薄膜の位相シフト膜パターンを有する反射型マスクとすることができる。
また、位相シフト膜パターンが上述の多層膜からなるものであるので、この反射型マスクを、位相シフト膜パターン全体が洗浄耐性に優れた反射型マスクとすることができる。
【0027】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、上述した反射型マスクを用いて半導体基板上にパターンを形成するパターン形成工程を含む構成としたので、上述した反射型マスクの多層膜からなる薄膜の位相シフト膜パターンにより、シャドーイング効果が小さく、高解像度で、パターンの線幅や間隔を微細化した集積度の高い半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態1によるEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの概略構成を説明するための断面図である。
図2図1に示した反射型マスクブランクの要部(多層膜からなる位相シフト膜及び保護膜)を拡大して示す断面図である。
図3】EUV光(波長13.5nm)における、金属材料の消衰係数kと屈折率nの特性を示すグラフである。
図4】EUV光(波長13.5nm)における、位相シフト膜(Mo\Ta)の位相差の膜厚依存性を示すグラフである。
図5】EUV光(波長13.5nm)における、位相シフト膜(Mo\Ta)の反射率の膜厚依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0030】
<反射型マスクブランクの構成及びその製造方法>
図1は、本発明の実施の形態によるEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの構成を説明するための概略図であり、図2は、図1に示した反射型マスクブランクの要部(多層膜からなる位相シフト膜及び保護膜)を拡大して示す断面図である。
図1に示すように、反射型マスクブランク10は、裏面側の主表面上に形成された静電チャック用の裏面導電膜11を有する基板12と、この基板12の主表面(裏面導電膜11が形成された側とは反対側の主表面)上に形成され、且つ、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜13と、この多層反射膜13上に、多層反射膜13を保護するためのルテニウム(Ru)を主成分とした材料で形成された保護膜14と、この保護膜14上に形成され、且つ、EUV光を吸収するとともに一部のEUV光を反射し、その位相をシフトさせるための位相シフト膜15と、を備えている。
【0031】
以下、基板及び各層の構成を説明する。
【0032】
基板12は、EUV光による露光時の熱による吸収体膜パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO−TiO系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0033】
基板12の両主表面のうち、位相シフト膜15が形成される側の主表面は、その位相シフト膜15が後述の反射型マスクの転写パターンとなるため、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板12の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、基板12の両主表面のうち、位相シフト膜15が形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットするときに静電チャックされるための裏面導電膜11が形成される面であって、その142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。
尚、本明細書において平坦度は、TIR(Total Indecated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小二乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0034】
また、EUV露光の場合、基板12として要求される表面平滑度は、基板12の、転写パターンとなる位相シフト膜15が形成される側の主表面の表面粗さが、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。尚、表面平滑度は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定することができる。
【0035】
さらに、基板12は、その上に形成される膜(多層反射膜13など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0036】
多層反射膜13は、EUVリソグラフィ用反射型マスクにおいて、EUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜の構成となっている。
【0037】
一般的には、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が、多層反射膜13として用いられる。多層膜は、基板12側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。尚、多層反射膜13の最表面の層、すなわち多層反射膜13の基板12と反対側の表面層は、高屈折率層とすることが好ましい。上述の多層膜において、基板12から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が低屈折率層となるが、この場合、低屈折率層が多層反射膜13の最表面を構成すると容易に酸化されてしまい反射型マスクの反射率が減少するので、最上層の低屈折率層上にさらに高屈折率層を形成して多層反射膜13とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となるので、そのままでよい。
【0038】
実施の形態において、高屈折率層としては、Siを含む層を採用することができる。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、B、C、N、Oを含むSi化合物でもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィ用反射型マスクが得られる。また、実施の形態において基板12としてはガラス基板が好ましく用いられるので、Siはそれとの密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、Mo、Ru、Rh、及びPtから選ばれる金属単体や、これらの合金が用いられる。例えば波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜13としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に例えば40〜60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。尚、多層反射膜13の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成し、当該最上層(Si)と保護膜14との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成するようにしてもよい。これにより、マスク洗浄耐性(位相シフト膜パターンの膜剥がれ耐性)を向上させることができる。
【0039】
このような多層反射膜13の単独での反射率は、例えば、65%以上であり、上限は通常73%であることが好ましい。尚、多層反射膜13の各構成層の膜厚や周期の数は、露光波長により適宜選択すればよく、そしてブラッグの法則を満たすように選択される。多層反射膜13において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在するが、高屈折率層どうし、そして低屈折率層どうしの膜厚は、同じでなくてもよい。また、多層反射膜13の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、例えば、3〜10nmとすることができる。
【0040】
多層反射膜13の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えばイオンビームスパッタリング法により、各層を成膜することで形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、先ずSiターゲットを用いて膜厚4nm程度のSi膜を基板12上に成膜し、その後Moターゲットを用いて膜厚3nm程度のMo膜を成膜し、これを1周期として、全体で、40〜60周期積層して、多層反射膜13を形成する(最上層はSi層とする)。
【0041】
図1及び図2に示すように、保護膜14は、後述するEUVリソグラフィ用反射型マスクの製造工程におけるドライエッチングや洗浄液から多層反射膜13を保護するために、多層反射膜13の上に形成される。保護膜14は、例えば、Ru(ルテニウム)を主成分として含む材料(主成分:50原子%以上)により構成され、Ru金属単体でもよいし、RuにNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したRu合金であってよく、N(窒素)を含んでいても構わない。また、保護膜14を3層以上の積層構造とし、最下層と最上層を、上記Ruを含有する物質からなる層とし、最下層と最上層との間に、Ru以外の金属、若しくは合金を介在させたものとしても構わない。
【0042】
このようなRu又はその合金などにより構成される保護膜14の膜厚は、その保護膜としての機能を果たすことができる限り特に制限されないが、EUV光の反射率の観点から、好ましくは、1.5〜8.0nm、より好ましくは、1.8〜6.0nmである。
【0043】
保護膜14の形成方法としては、公知の膜形成方法と同様のものを特に制限なく採用することができる。具体例としては、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0044】
図2に示すように、保護膜14上に形成された位相シフト膜15は、第1の層15aと、第2の層15bを含む多層膜である。この多層膜からなる位相シフト膜15は、一つの第1の層15aと、一つの第2の層15bを交互に複数の積層数で、積層した構造を有する。図2に示した位相シフト膜15では、その最下層が第2の層15bであり、最上層が第1の層15aである。尚、以下において、一つの第1の層15aと一つの第2の層15bを1周期(P)として示す場合がある。このような積層構造における積層数としては、2層以上であれば、特に制限されることなく、偶数層であってもよく、奇数層であってもよい。偶数層の例としては、後述する図4及び図5において、10周期で示した20層を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
第1の層15aを形成する金属材料としては、図3に示す、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料から選択され、例えば、Ta(波長13.5nmにおける屈折率n=約0.943、消衰係数k=約0.041)、又は、Cr(当該屈折率n=約0.932、消衰係数k=約0.039)が挙げられる。
例えば、TaはEUV光の消衰係数が小さく、またフッ素系ガスや塩素系ガスで容易にドライエッチングすることが可能であるため、加工性に優れた位相シフト膜材料である。さらにTaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、位相シフト膜15の平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、位相シフト膜15の酸化に対する耐性が向上するため、洗浄耐性に優れ、経時的な安定性を向上させることができるという効果が得られる。
尚、第1の層15aの形成材料としては、一種の金属材料が選択されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、二種以上の金属材料が選択されてもよい。
【0046】
第2の層15bを形成する金属材料としては、図3に示す、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料のうち、第1の層15aとは異なる金属材料から選択され、例えば、Mo(当該屈折率n=約0.921、消衰係数k=約0.006)、Ru(当該屈折率n=約0.888、消衰係数k=約0.017)、Pt(当該屈折率n=約0.891、消衰係数k=約0.060)、Pd(当該屈折率n=約0.876、消衰係数k=約0.046)、Ag(当該屈折率n=約0.890、消衰係数k=約0.079)、又は、Au(当該屈折率n=約0.899、消衰係数k=約0.052)が挙げられる。
例えば、Moは、単体では洗浄耐性が懸念されるが、上述のTa又はCrを含む層と組み合わせて多層膜を構成し、金属拡散領域を形成することで、その洗浄耐性を向上させることができる。また、EUV光における屈折率nが0.95より小さいため、薄い膜厚で位相シフト効果を得ることが可能である。さらに、消衰係数kが小さいため、EUV光の反射率が高く、位相シフト効果によるコントラスト(解像度)を得やすい膜材料である。
また、Ruは、単体では各種のエッチングガスに対してエッチングレートが低く、加工困難性が高いが、上述のTa又はCrを含む層と組み合わせて多層膜を構成し、金属拡散領域を形成することで、位相シフト膜15全体の加工性を向上させることができる。また、EUV光における屈折率nが0.95より小さいため、薄い膜厚で位相シフト効果を得ることが可能であり、消衰係数kが小さいため、EUV光の反射率が高く、位相シフト効果によるコントラスト(解像度)を得やすい膜材料である。
PtやPdは、エッチングレートが低く、加工困難性を有する膜材料であるが、EUV光における屈折率nが0.95より小さいため、薄い膜厚で位相シフト効果を得ることが可能である。
尚、第2の層15bの形成材料としては、一種の金属材料が選択されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、二種以上の金属材料が選択されてもよい。
【0047】
第1の層15aや第2の層15bの形成材料として使用可能な金属材料は、その金属単体であることが好ましいが、位相シフト膜15の位相シフト効果等の特性に影響を与えないことを条件として、当該金属を含む材料を用いることができる。
第1の層15aの形成材料に使用されるTaを含む材料としては、例えば、Taを主成分としてBを含有するTaB合金、Taを主成分としてSiを含有するTaSi合金、Taを主成分としてその他遷移金属(例えば、Pt、Pd、Ag)を含有するTa合金や、Ta金属やそれらの合金にN、O、H、Cなどを添加したTa系化合物などであってよい。Crを含む材料としては、Crを主成分としてSiを含有するCrSi合金、Crを主成分としてその他遷移金属(例えば、Pt、Pd、Ag)を含有するCr合金や、Cr金属やそれらの合金にN、O、H、Cなどを添加したCr系化合物などであってもよい。
また、第2の層15bの形成材料に使用されるMoを含む材料としては、Moを主成分としてNb、Zr、Y、B、Ti、La、Ru、Co、Reなどの金属を含有したMo合金などであってもよい。Ruを含む材料としては、Ruを主成分としてNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したRu合金であってもよい。また、Ru金属やそれらの合金にN、H、Cなどを添加したRu系化合物であってもよい。Ptを含む材料としては、Ptを主成分としてNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したPt合金などであってもよい。Pdを含む材料としては、Pdを主成分としてNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したPd合金などであってもよい。Agを含む材料としては、Agを主成分としてNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したAg合金などであってもよい。Auを含む材料としては、Auを主成分としてNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したAu合金などであってもよい。
【0048】
位相シフト膜15の最下層及びその上の層は、その下に形成された保護膜14の形成材料と重複しない他の金属材料を含む第1の層15a又は第2の層15bとされる(Ru保護膜\Ru以外\・・・)。例えば、位相シフト膜15の最下層を、Ruを含む第2の層15bとし、保護膜14を、Ruを主成分として材料で形成した場合(Ru保護膜\Ru・・・)、両者は共通したRuで形成し重複するため、この組み合わせは回避されるべきである。この場合、位相シフト膜15の最下層を、例えば、保護膜14のRuに対してエッチング選択性の高いTaを含む第1の層15a又はMoを含む第2の層15bとすることにより(Ru保護膜\Ta又はMo\Mo又はTa・・・)、高精細なパターニングが可能となり、且つ、保護膜14にダメージを与えることを抑制できる。
位相シフト膜15の最上層は、その洗浄耐性やエッチングマスク膜が形成される場合にはその形成材料との関係で決まるエッチング選択性に応じて決められる金属材料を含む第1の層15a又は第2の層15bとされる。例えば、Ta又はCrを含む第1の層15aとMoを含む第2の層15bを含む位相シフト膜15の最上層を、Ta又はCrを含む第1の層15aとすることにより(Ru保護膜\Ta\Mo\Ta\Mo・・・\Ta、又は、Ru保護膜\Cr\Mo\Cr\Mo・・・\Cr)、位相シフト膜15全体の、パターン形成前の洗浄耐性を向上させることができる。
このように、Ruを主成分とした保護膜14上に、Taを含む第1の層15aとMoを含む第2の層15bを含む位相シフト膜15を形成する場合、位相シフト膜15の最下層を、例えば、保護膜14のRuに対してエッチング選択性の高いTaを含む第1の層15a又はMoを含む第2の層15bとし、位相シフト膜15の最上層を、Taを含む第1の層15aとすることにより(Ru保護膜\Ta又はMo\Mo又はTa・・・\Ta)、上述のように、高精細なパターニングが可能となり、且つ、保護膜14にダメージを与えることを抑制でき、且つ、パターン形成の前後の洗浄耐性を向上させることができる。
尚、位相シフト膜15の最下層を、Taを含む第1の層15aとした場合(Ru保護膜\Ta\Mo\Ta\Mo・・・\Ta)、位相シフト膜15の積層数が奇数となり、位相シフト膜15の最下層を、Moを含む第2の層15bとした場合(Ru保護膜\Mo\Ta\Mo\Ta・・・\Ta)、位相シフト膜15の積層数が偶数となる。
【0049】
位相シフト膜15を構成する第1の層15aは、複数層で形成されてもよい。位相シフト膜15中の各第1の層15aは、同一の金属材料で形成されることが望ましいが、異なる金属材料で形成されてもよい。また、位相シフト膜15を構成する第2の層15bも、第1の層15aと同様に、複数層で形成されてもよい。各第2の層15bは、同一の金属材料で形成されることが望ましいが、異なる金属材料で形成されてもよい。後者の場合、位相シフト膜15を、例えば、Taを含む第1の層15aと、Moを含む第2の層15bと、Ruを含む第2の層15bで構成することができる(Ru保護膜\Ta\Mo\Ru\Ta\Mo\Ru\・・・\Ta、又は、Ru保護膜\Ta\Mo\Ta\Ru\・・・\Ta)。この場合、前者では位相シフト膜15中の、Ta層の含有比率を少なくできるので、位相シフト効果を得やすくなり、後者ではRu層の含有比率を少なくできるので、加工性を向上させることができる。
【0050】
また、位相シフト膜15における、第1の層15aと、これに接する第2の層15bとの界面及びその近傍には、第1の層15a中に含まれる金属成分及び第2の層15b中に含まれる別の金属成分が拡散する金属拡散領域R1が形成されている。金属拡散領域R1のうち、第1の層15a側では、第1の層15aの一部に第2の層15bの金属成分が拡散し、第2の層15b側では、第2の層15bの一部に第1の層15aの金属成分が拡散している。このため、金属拡散領域R1は、その第1の層15a側及び第2の層15b側において金属成分の濃度勾配があるものの、第1の層15aの金属成分と第2の層15bの金属成分の双方を含むことから、双方の金属成分の特性を示す領域である。第1の層15aと第2の層15bとの間で、急激な特性変化を軽減することができるので、位相シフト膜15全体が、その急激な特性変化の影響を受けることがなく、位相シフト膜15全体の特性を一定にすることができる。
このような金属拡散領域R1の、一層の第1の層15aと一層の第2の層15bの合計膜厚に対する形成割合は、25%以上であり、その上限は100%未満であり、好ましくは80%以下である。金属拡散領域R1の形成割合が100%であれば、その金属拡散領域R1が第1の層15a及び第2の層15b全体を占めることになる。この場合、第1の層15a及び第2の層15bが一つの層となるため、第1の層15aの光学特性と第2の層15bの光学特性が均等又は近似し、第1の層15aと第2の層15bに分ける意義を失うことになる。例えば、第1の層15aをTaとし、第2の層15bをMoとし、最上層を第1の層15aとした位相シフト膜15の場合、その最上層の最表面に、洗浄耐性に優れたTaの他に、洗浄耐性が懸念されるMoが混ざることになるので、位相シフト膜15の洗浄耐性が悪化する。この点を考慮すると、最表面にTaが残り、その優れた洗浄耐性が位相シフト膜15の洗浄耐性に寄与するようにするためには、上記形成割合の上限は、上述のように、80%以下であることが好ましい。
【0051】
また、保護膜14と位相シフト膜15の最下層との界面及びその近傍には、保護膜14中に含まれる金属成分と位相シフト膜15の最下層中に含まれる金属成分が拡散する金属拡散領域R2が形成されている。この金属拡散領域R2は、保護膜14と位相シフト膜15の最下層との密着性を向上させる機能を有している。
【0052】
位相シフト膜15は、イオンビームスパッタリング法などの公知の成膜方法で形成することができる。例えば、イオンビームスパッタリング法による場合、第1の層15a及び第2の層15bの各金属材料で形成された二つのターゲットを準備し、Arガス等の不活性ガスの雰囲気で、二つのターゲットのうち、片方ずつ交互にビームを照射することによって第1の層15a及び第2の層15bを形成することができる。このとき、イオンビーム発生装置から発せられるイオンビームのパワーを制御することによって金属拡散領域R1を形成することができる。イオンビームのパワーを上げると、金属拡散領域R1の割合を大きくすることが可能である。
また、イオンビーム発生装置から発せられるイオンビームがターゲットに入射することにより発生するスパッタ粒子の入射角度(基板の法線に対する入射角度)を調整することにより、金属拡散領域R1形成してもよい。入射角度が0°に近づくほど金属拡散領域R1の割合を大きくすることができる。
また、金属拡散領域R2も、イオンビームスパッタリング法などの公知の成膜方法によって形成することができる。後述するように、イオンビームスパッタリング法を用いて位相シフト膜15を成膜するに際し、保護膜14及び第2の層15bを同一の金属材料(例えば、Ru)で形成する場合、例えば、RuターゲットとTaターゲットを準備し、保護膜14及び位相シフト膜15を連続して成膜し、イオンビーム発生装置から発せられるイオンビームのパワーを制御することによって金属拡散領域R2を形成することができる。
【0053】
このような多層膜からなる位相シフト膜15は、EUV光に対する反射率が1〜30%、位相シフト膜15からの反射光と多層反射膜13からの反射光との位相差が170〜190度となるように形成される。
位相シフト膜15の膜厚は、各層に用いる金属材料の種類と、EUV光の反射率の設計値に応じて、且つ、位相差が上記範囲内に入るように設定され、例えば、60nm以下であり、好ましくは、50nm以下である。このような薄い膜厚で形成される位相シフト膜15であれば、例えば、EUV露光の場合、シャドーイング効果を小さくすることが可能となる。また、多層膜からなる位相シフト膜15における第1の層15aと第2の層15bのそれぞれの膜厚は、EUV光の波長、多層膜の層数、各層の材料の種類、その洗浄耐性や加工性等の特性を勘案し、適切な膜厚の組み合わせにて定められる。
第1の層15aと第2の層15bの膜厚比は、各層の材料の種類の洗浄耐性や加工性等の特性を勘案して定められる。第1の層15aと第2の層15bの膜厚比は、使用される金属材料に応じて適宜決めることができ、特に限定されないが、例えば、Ta:Moの場合、20:1〜1:5であることが好ましい。Ta層が厚く、Mo層が薄過ぎる場合、位相シフト効果を得るための位相シフト膜15全体の膜厚が厚くなるという不都合がある。また、Ta層が薄くMo層が厚過ぎる場合、Moが酸化され易いため、位相シフト膜15全体の洗浄耐性が低くなるという不都合がある。
【0054】
多層膜からなる位相シフト膜15の形成は、成膜開始から成膜終了まで大気に曝さず連続して成膜することが好ましい。例えば、位相シフト膜15は、その各層(第1の層15a、第2の層15b)を非常に薄い膜厚で連続して成膜し、且つ、その各層の界面及びその近傍に金属拡散領域R1を形成するのに有用なイオンビームスパッタリング法で形成することが好ましいが、当該方法以外にも、DCスパッタリング法やRFスパッタリング法などのスパッタリング法といった公知の方法で形成することもできる。
スパッタリング法で用いられるターゲットの少なくともその表面は、位相シフト膜15の第1の層15a及び第2の層15bを形成する金属単体又はその金属酸化物で形成されることが好ましい。
尚、例えば、イオンビームスパッタリング法を用いると、MoSiの多層反射膜13の成膜から、Ruの保護膜14の成膜を経て、Ta\Mo等の位相シフト膜15の各層(第1の層15a、第2の層15b)の成膜までスパッタ装置から出さずに成膜でき、大気に触れることがないため、各膜の欠陥個数を抑制できる点で有利である。
【0055】
このように成膜された位相シフト膜15の表面等が平滑でないと、位相シフト膜パターンのエッジラフネスが大きくなり、パターンの寸法精度が悪くなることがある。このため、位相シフト膜15の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で、0.5nm以下であり、更に好ましくは0.4nm以下、0.3nm以下であれば更に好ましい。
【0056】
位相シフト膜15上に、さらにエッチングマスク膜(図示せず)が形成されてもよい。エッチングマスク膜は、多層反射膜13の最上層に対してエッチング選択性を有し、且つ、位相シフト膜15の最上層が第1の層15a又は第2の層15bに対するエッチングガスにてエッチング可能な(エッチング選択性がない)材料で形成される。具体的には、例えば、Cr又はTaを含む材料によって形成される。Crを含む材料としては、Cr金属単体や、CrにO、N、C、H、およびBなどの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したCr系化合物などが挙げられる。Taを含む材料としては、Ta金属単体や、TaとBを含有するTaB合金、Taとその他遷移金属(例えば、Hf、Zr、Pt、W)を含有するTa合金や、Ta金属やそれらの合金にN、O、H、Cなどを添加したTa系化合物などが挙げられる。ここで、位相シフト膜15の最上層が第1の層15aであり、その第1の層15aがTaを含む場合、エッチングマスク膜の形成材料としては、Crを含む材料が選択され、また、位相シフト膜15の最上層が第2の層15bであり、その第2の層15bがMo、Ru、Pt、Pd、Ag及びAuのうちの何れか一種の金属材料を含む場合、エッチングマスク膜の形成材料としては、Ta又はCrを含む材料のいずれの金属材料が選択される。
また、Crを含む材料で形成されたエッチングマスク膜に適用可能なエッチングガスとしては、Cl等の塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いることができる。Taを含む材料で形成されたエッチングマスク膜に適用可能なエッチングガスとしては、Cl等の塩素系ガスを用いることができる。特に、エッチングマスク膜として使用されるTaを含む材料は、反射型マスクブランク10の最表面に存在するため、自然酸化や洗浄により表面酸化されやすい。Taを含む材料が酸化されると、位相シフト膜15を構成する金属材料を、例えば、Cl等の塩素系ガスにてエッチングする際に、エッチングマスク膜が同時に除去されなくなる。このため、エッチングマスク膜として使用されるTaを含む材料は、表面酸化がされ難い酸化耐性が高い材料、組成とすることが好ましい。さらに、反射型マスクの工程簡略化を考慮すると、Cl等の塩素系ガスにおける、位相シフト膜15を構成する金属材料と比べてエッチングレートが高い材料、組成とすることが好ましい。好ましい材料としては、TaとNを含む材料とすることが好ましく、Nの含有量は10原子%以上が望ましい。反射型マスクブランク10の欠陥検査における疑似欠陥抑制の観点からは、エッチングマスク膜の膜表面は平滑であることが好ましく、この場合、Nの含有量は75原子%以下が望ましい。エッチングマスク膜における好ましいNの含有量は、10原子%以上75原子%以下、さらに好ましくは、10原子%以上60原子%以下、15原子%以上50原子%以下とすることが望ましい。
また、エッチングマスク膜のエッチングレートを考慮すると、非晶質(アモルファス)であることが好ましい。
【0057】
エッチングマスク膜は、DCスパッタリング法やRFスパッタリング法などのスパッタリング法といった公知の方法で形成することができる。
【0058】
エッチングマスク膜の膜厚は、ハードマスクとしての機能確保という観点から5nm以上であることが好ましい。反射型マスクの作製工程において、エッチングマスク膜は、位相シフト膜15のエッチング工程時におけるフッ素系ガスによって、位相シフト膜15と同時に除去されるものであるので、位相シフト膜15と概ね同等の膜厚で形成するものであってもよい。位相シフト膜15の膜厚を考慮すると、エッチングマスク膜の膜厚は、5nm以上20nm以下、好ましくは、5nm以上15nm以下が望ましい。
【0059】
基板12の裏面側(多層反射膜13の形成面の反対側)には、図1に示すように、静電チャック用の裏面導電膜11が形成される。静電チャック用の裏面導電膜11に求められる電気的特性は通常100Ω/sq以下である。裏面導電膜11の形成方法は、例えばマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、クロム、タンタル等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。裏面導電膜11を、例えば、CrNで形成する場合には、Crターゲットを用い、窒素ガス等のNを含むガス雰囲気で、上述のスパッタリング法により、成膜することができる。裏面導電膜11の膜厚は、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、通常10〜200nmである。
【0060】
以上、実施の形態による反射型マスクブランク10の構成について各層ごとに説明をした。
尚、上記反射型マスクブランクとして、位相シフト膜15上に、上述したエッチングマスク膜を備えたものを本発明に適用したが、反射型マスクブランクとして、位相シフト膜15上に、エッチングマスクとして用いられるレジスト膜を備えたものを本発明に適用してもよい。また、上記反射型マスクブランクとして、多層反射膜13上に保護膜14を備え、この保護膜14上に位相シフト膜15を備えたものを本発明に適用したが、保護膜14を備えずに、多層反射膜13上に位相シフト膜15を備えたものを本発明に適用してもよい。
【0061】
実施の形態による反射型マスクブランクによれば、上述のように、位相シフト膜15を、波長13.5nmにおける屈折率nが0.95以下の金属材料を用いて多層膜としたので、各層の膜厚を薄くして位相シフト膜15を形成することが可能となる。このため、位相シフト膜15の積層数を変更することにより、広い膜厚の範囲で、位相差等の光学特性を調整できるので、その範囲で、EUV露光時の位相シフト効果を得ることができる。これにより、この位相シフト膜15を有する反射型マスクブランク10を、シャドーイング効果が小さく、解像度を向上させた位相シフト膜パターンを有する反射型マスクの製造用原版とすることができる。
また、位相シフト膜15を、第1の層15aと第2の層15bを含む多層膜としたので、各層の膜厚を薄くすることができる。この各層の薄膜化により、エッチングレートが低く、加工や修正が困難な金属材料で形成した層であっても、その膜厚が小さいことから、加工や修正を容易に行うことができ、位相シフト膜15全体において、当該金属材料の加工困難性の影響を低減することができ、位相シフト膜15を全体として、加工性に優れたものとすることができる。
また、位相シフト膜15を、第1の層15aと第2の層15bを含む多層膜とし、各層の界面及びその近傍に、一層の第1の層と一層の第2の層の合計膜厚に対して25%以上の割合で、金属拡散領域R1を形成したので、異なる金属材料を含む薄膜の層を、金属拡散領域R1を介して隣接させて配置することができる。この構成により、酸化され易く、洗浄耐性が懸念される金属材料(Mo等)で形成した層であっても、この層に、酸化されにくく、洗浄耐性に優れた金属材料(Ta等)で形成した層を隣接させ、両者の間で金属拡散領域R1を形成し、当該部分において洗浄耐性を向上させることができるので、位相シフト膜15全体において、当該金属材料の懸念される洗浄耐性の影響を低減することができ、位相シフト膜15全体を洗浄耐性に優れたものとすることができる。
【0062】
<反射型マスク及びその製造方法>
実施の形態による反射型マスクブランク10を使用して、反射型マスクを作製することができる。EUVリソグラフィ用反射型マスクの製造には、高精細のパターニングを行うことができるフォトリソグラフィー法が最も好適である。
【0063】
実施の形態では、フォトリソグラフィー法を利用した反射型マスクの作製について説明する。
【0064】
先ず、図1に示した反射型マスクブランク10の最表面(位相シフト膜15の最上層)上に、レジスト膜(図示せず)を形成する。レジスト膜の膜厚は、例えば、100nmとすることができる。次に、このレジスト膜に所望のパターンを描画(露光)し、さらに現像・リンスすることによって所定のレジスト膜パターン(図示せず)を形成する。
次に、多層膜からなる位相シフト膜15に対し、レジスト膜パターン(図示せず)をマスクとして、SF等のフッ素系ガスを含むエッチングガスによるドライエッチングを実施することにより、位相シフト膜パターン(図示せず)を形成する。この工程において、レジスト膜パターン(図示せず)が除去される。
ここで、エッチングレートは、対象の位相シフト膜15の形成材料やエッチングガス等の条件で変わる。異なる金属材料の多層膜からなる位相シフト膜15では、異なる各金属材料の層ごとにエッチングレートが多少変化するものの、各層の膜厚が小さいため、位相シフト膜15全体におけるエッチングレートは、略一定となると考えられる。
【0065】
上記工程によって、位相シフト膜パターン形成工程が構成されるものであり、多層膜からなる位相シフト膜15の各層(15a、15b)を一種のエッチングガスによるドライエッチングにより、連続的に位相シフト膜パターン(図示せず)が形成されるものであるので、工程簡略化の効果を得られる。そして、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行い、高い反射率を達成したEUVリソグラフィ用反射型マスクが得られる。
尚、エッチングガスとしては、SFの他、CHF、CF、C、C、C、C、CH、CHF、C、F等のフッ素系ガス、これらのフッ素ガス及びOを所定の割合で含む混合ガスを用いることができるが、多層膜からなる位相シフト膜15の各層(15a、15b)を加工に有用なガスであれば、他のガスを用いてもよい。例えば、Cl、SiCl、CHCl、CCl、BCl等の塩素系のガス及びこれらの混合ガス、塩素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス、酸素ガス、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、沃素ガス、そしてこれらのうち少なくとも一つを含むハロゲンガス、並びにハロゲン化水素ガスからなる群から選択される少なくとも一種類またはそれ以上と、酸素ガスとを含む混合ガス等が挙げられる。
【0066】
実施の形態による反射型マスクの製造方法によれば、上述した反射型マスクブランク10における多層膜からなる位相シフト膜15をパターニングして位相シフト膜パターンを形成する位相シフト膜パターン形成工程を含む構成としたので、シャドーイング効果が小さく、解像度を向上させた薄膜の位相シフト膜パターンを有する反射型マスクを製造することができる。
反射型マスクブランク10における位相シフト膜15は、異なる金属材料で形成した薄膜の層を隣接配置した多層膜からなるものであるので、位相シフト膜パターン形成工程では、上述した加工困難性の金属材料で形成した層であっても、その膜厚が小さいことから、その加工困難性の影響を低減でき、位相シフト膜15を容易に加工でき、位相シフト膜パターンを形成することができる。
位相シフト膜パターンの端面が洗浄液に曝される洗浄工程では、多層膜からなる位相シフト膜15の一部に、洗浄耐性が懸念される金属材料で形成した薄膜の層があっても、この層に、洗浄耐性に優れた金属材料で形成した薄膜の層が隣接配置され、且つ、両層の界面及びその近傍に上述の金属拡散領域R1が形成されているので、多層膜からなる位相シフト膜15の一部で懸念される洗浄耐性の影響を位相シフト膜パターンの端面に及ぼすことを抑制でき、位相シフト膜パターン全体の洗浄耐性を向上させることができる。
【0067】
実施の形態による反射型マスクによれば、上述した反射型マスクブランク10における多層膜からなる位相シフト膜15がパターニングされた位相シフト膜パターン(図示せず)を有する構成としたので、この反射型マスク(図示せず)を、シャドーイング効果が小さく、解像度を向上させた薄膜の位相シフト膜パターン(図示せず)を有する反射型マスク(図示せず)とすることができる。
また、位相シフト膜パターン(図示せず)が上述の多層膜からなるものであるので、この反射型マスク(図示せず)を、位相シフト膜パターン(図示せず)全体が洗浄耐性に優れた反射型マスク(図示せず)とすることができる。
【0068】
<半導体装置の製造>
実施の形態による反射型マスクを使用して、リソグラフィ技術により半導体基板上に反射型マスクの位相シフト膜パターンに基づく転写パターンを形成し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板上に種々のパターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
【0069】
実施の形態による反射型マスクを用いて、パターン転写装置(図示せず)により、レジスト膜付き半導体基板(図示せず)にEUV光によってパターンを転写して半導体装置を製造する製造方法について説明する。
【0070】
実施の形態による反射型マスク(図示せず)を搭載したパターン転写装置(図示せず)は、レーザープラズマX線源等の露光光源、反射型マスク、縮小光学系等から構成される。縮小光学系としては、X線反射ミラーを用いる。尚、露光光源は、スループットの適正化の観点等に基づき、パワーが例えば、80Wのものが使用される。
【0071】
縮小光学系により、反射型マスクで反射されたパターンは、通常1/4程度に縮小される。例えば、露光波長として13〜14nmの波長帯を使用し、光路が真空中になるように予め設定する。このような状態で、露光光源から得られたEUV光を反射型マスクに入射させ、ここで反射された光を、縮小光学系を通してレジスト膜付き半導体基板上のレジスト膜に転写する。
【0072】
反射型マスクに入射したEUV光は、位相シフト膜15が残っている部分では、位相シフト膜15に吸収されて反射せず、一方、位相シフト膜15が残っていない部分では、多層反射膜13にEUV光が入射して反射される。このようにして、反射型マスクから反射される光によって形成される像が、縮小光学系に入射し、縮小光学系を経由した露光光は、レジスト膜付き半導体基板上のレジスト層に転写パターンを形成する。尚、位相シフト膜15ではEUV光の一部が反射され、この光が、多層反射膜13から反射される光に対して位相が180度シフトされていることで、像のコントラストを高める。そして、この露光済レジスト層を現像することによって、レジスト膜付き半導体基板上にレジストパターンを形成することができる。そして、このレジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。このようなパターン形成工程、その他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【0073】
実施の形態による半導体装置の製造方法によれば、上述した反射型マスクを用いて半導体基板上にパターンを形成するパターン形成工程を含む構成としたので、上述した反射型マスクの多層膜からなる薄膜の位相シフト膜パターンにより、シャドーイング効果が小さく、高解像度で、パターンの線幅や間隔を微細化した集積度の高い半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を、各実施例に基づいて説明する。
【0075】
実施例1.
<反射型マスクブランク(CrN裏面導電膜\基板\MoSi多層反射膜\Ru保護膜\位相シフト膜)の作製>
先ず、SiO−TiO系ガラス基板12を準備した。
この基板12の裏面にCrNからなる裏面導電膜11をマグネトロンスパッタリング法により下記の条件にて形成した。
裏面導電膜形成条件:Crターゲット、Ar+Nガス雰囲気(Ar:N=90%:N:10%)、膜厚20nm。
【0076】
次に、裏面導電膜11を形成した側と反対側の基板12の主表面上に、多層反射膜13を形成した。基板12上に形成される多層反射膜13として、13.5nmのEUV光に適した、Mo/Si周期多層反射膜を採用した。多層反射膜13は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリング(Arガス雰囲気)により、基板12上にMo層およびSi層を交互に積層して形成した。まず、Si膜を膜厚4.2nmで成膜し、続いて、Mo膜を膜厚2.8nmで成膜した。これを一周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を膜厚4.0nmで成膜し、多層反射膜13を形成した(合計膜厚:284nm)。
【0077】
引き続き、Ruターゲットを使用したイオンビームスパッタリング(Arガス雰囲気)により、多層反射膜13の最上層のSi膜上に、Ruを含む保護膜14を膜厚2.5nmで成膜した。
【0078】
次に、保護膜14上に、以下の方法で多層膜からなる位相シフト膜15を形成した。
MoターゲットとTaターゲットを用い、イオンビームスパッタリング(Arガス雰囲気)により、最初に、Mo層(第2の層15b)を膜厚2.4nmで成膜し、次に、Ta層(第1の層15a)を膜厚2.4nmで成膜した(膜厚比1:1)。これを1周期とし、10周期を連続して成膜して、最上層をTa層(第1の層15a)とした、合計膜厚48nmの位相シフト膜15(膜構成:Mo\Ta\Mo\Ta\・・・\Ta)を形成した。イオンビーム発生装置から発せられるイオンビームのパワーを制御することによって金属拡散領域R1を形成した。
【0079】
このようにして得られた位相シフト膜15中に形成された金属拡散領域R1を、一層のMo層(第2の層15b)と一層のTa層(第1の層15a)の合計膜厚に対して約40%の割合で形成した。
この多層膜からなる位相シフト膜15の、波長13.5nmにおける反射率は、7.5%であった。この反射率の測定値は、位相シフト膜15における10周期の、Ta層(第1の層15a)とMo層(第2の層15b)の各層の反射率が重なり、位相を変えながら作用するため、位相シフト膜15の最上層での反射率を小さくした結果であると考えられる。
また、波長13.5nmにおける位相シフト膜15の位相差は180度であった。
【0080】
作製された反射型マスクブランク10を、UVを照射しながらオゾン水を供給して洗浄を行った後に、上記反射率及び位相差に変化がないことを確認した。
【0081】
<反射型マスクの作製>
次に、反射型マスクブランク10の位相シフト膜15上に、レジスト膜を膜厚100nmで形成し、描画・現像によりレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクとし、フッ素系のSFガスを用いて、位相シフト膜15をドライエッチングし、位相シフト膜パターンを形成した。その後、レジストパターンを除去して、反射型マスクを作製した。
作製された反射型マスクを、UVを照射しながらオゾン水を供給して洗浄を行った後に、上記反射率及び位相差に変化がないこと、及び、洗浄の前後において、位相シフト膜パターンの側壁に変化がないことを確認した。
また、反射型マスクの表面の欠陥検査を、そのマスクの周辺領域を除外した132nm×132nmの領域に対して、マスク欠陥検査装置(Teron610:KLA−Tencor社製)を用いて行ったところ、欠陥個数は3個であった。欠陥検査は、SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)換算で70nmサイズの欠陥が検出可能な検査感度条件で行った。SEVDは、欠陥を半球状のものと仮定したときの直径の長さである。
【0082】
参考例1.
位相シフト膜中に金属拡散領域を形成しない以外は、実施例1と同様の方法によって、反射型マスクブランクを作製した。
Mo層(第2の層15b)の成膜時に、ビームをMoターゲットのみに照射し、Ta層(第1の層15a)の成膜時に、ビームをTaターゲットのみに照射し、合計膜厚48nmで位相シフト膜を形成した。また、位相シフト膜の、波長13.5nmにおける反射率は、7.5%であり、その波長13.5nmにおける位相シフト膜15の位相差は180度であった。
【0083】
次に、得られた反射型マスクブランクを用いて、実施例1と同様の方法によって、反射型マスクを作製した。
作製された反射型マスクを、UVを照射しながらオゾン水を供給して洗浄を行った後に、実施例1と同様のマスク欠陥検査装置を用い、同様の検査条件で、欠陥検査を行ったところ、欠陥個数は8個であった。この参考例1において、実施例1と比べて、欠陥個数が増えた理由は、位相シフト膜中のMo層とTa層との界面付近にほとんど金属拡散領域が形成されていないため、金属拡散領域を介して、酸化され易いMoの懸念される洗浄耐性が洗浄耐性に優れたTaによって改善される効果が得られないことから、Moが洗浄液によって溶解し、その溶解物が位相シフト膜上で微小異物となったと考えられる。
【0084】
実施例2.
位相シフト膜中に形成される金属拡散領域の形成割合を25%とした以外は、実施例1と同様の方法によって、反射型マスクブランクを作製し、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製した。
反射型マスクの作製時の加工性は良好であった。
また、反射型マスクの表面の欠陥検査を、実施例1と同様の方法で行ったところ、欠陥個数は5個であった。
【0085】
実施例3.
位相シフト膜中に形成される金属拡散領域の形成割合を80%とした以外は、実施例1と同様の方法によって、反射型マスクブランクを作製し、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製した。
反射型マスクの作製時の加工性は良好であった。
また、反射型マスクの表面の欠陥検査を、実施例1と同様の方法で行ったところ、欠陥個数は1個であった。
【0086】
実施例4.
位相シフト膜を構成するMo層をRu層に代え、最初に、Ta層(第1の層15a)を膜厚1.9nmで成膜し、次に、Mo層(第2の層15b)を膜厚1.9nmで成膜した(膜厚比1:1)。これを1周期とし、10周期連続して成膜後、最上層にTa層(第1の層15a)を形成した、合計膜厚39.9nmの位相シフト膜15の膜構成を、Ta\Ru\Ta\Ru\・・・\Taとした以外は、実施例1と同様の方法によって、反射型マスクブランクを作製した。
【0087】
このようにして得られた位相シフト膜15中に形成された金属拡散領域R1を、一層のTa層(第1の層15a)と一層のRu層(第2の層15b)との合計膜厚に対して約40%の割合で形成した。
この多層膜からなる位相シフト膜15の、波長13.5nmにおける反射率は、7.5%であった。
また、波長13.5nmにおける位相シフト膜15の位相差は180度であった。
【0088】
次に、得られた反射型マスクブランクを用いて、実施例1と同様の方法によって、反射型マスクを作製した。
反射型マスクの作製時のドライエッチングによるエッチングレートは、10nm/分で、加工性が良好であった。
【0089】
参考例2.
位相シフト膜中に金属拡散領域を形成しない以外は、実施例2と同様の方法によって、反射型マスクブランクを作製した。
Ru層(第2の層15b)の成膜時に、ビームをRuターゲットのみに照射し、Ta層(第1の層15a)の成膜時に、ビームをTaターゲットのみに照射し、合計膜厚39.9nmで位相シフト膜を形成した。また、位相シフト膜の、波長13.5nmにおける反射率は、7.5%であり、その波長13.5nmにおける位相シフト膜15の位相差は180度であった。
【0090】
次に、得られた反射型マスクブランクを用いて、実施例1と同様の方法によって、反射型マスクを作製した。
反射型マスクの作製時のドライエッチングによるエッチングレートは、0.5nm/分で、加工性が悪かった。
【0091】
実施例5.
位相シフト膜中に形成される金属拡散領域の形成割合を25%とした以外は、実施例4と同様の方法によって、反射型マスクブランクを作製し、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製した。
反射型マスクの作製時のドライエッチングによるエッチングレートは、5nm/分で、加工性は良好であった。
【0092】
<位相シフト膜(Mo\Ta)の位相差及び反射率の膜厚依存性>
上記実施例1と同様の位相シフト膜(Mo\Ta\Mo\Ta・・・\Ta:10周期)を有する反射型マスクブランクについて、EUV光(波長13.5nm)における、位相シフト膜(膜厚:40nm〜60nm)の位相差及び反射率の膜厚依存性を調べた。その結果を図4及び図5中の「10P」で示す。
これに対し、位相シフト膜の膜構成を1周期(Mo\Ta、膜厚比1:1)とした以外は、上記参考例1と同様の方法による反射型マスクブランクについても、EUV光(波長13.5nm)における、位相シフト膜(膜厚:40nm〜60nm)の位相差及び反射率の膜厚依存性を調べた。その結果を図4及び図5中の「1P」で示す。尚、「1P」は、特許文献1(特開2004-207593号公報)に開示された「Mo層とTa層からなる2層膜」を想定したものである。
【0093】
先ず、図4を参照して、「10P」及び「1P」について、位相差の膜依存性の有無を確認する。
「10P」の位相差のグラフは、膜厚40nm〜60nmの範囲で、うねりが少なく、緩やかな波形を示し、特に、位相差180度では、膜厚約47nmと膜厚約50nmとの間の約3nmの範囲に直線形状のフラット領域Aを確認した。このフラット領域Aは、位相差が膜厚に依存していないことを示しており、特に、フラット領域Aの膜厚範囲に設定した位相シフト膜は、位相差180の優れた位相シフト効果を得ることができることも示している。
これに対し、「1P」の位相差のグラフは、膜厚40nm〜60nmの範囲で、「10P」の位相差のグラフよりもうねりが大きな波形を示しており、上記フラット領域Aのような直線形状の変化領域を確認することができなかった。
このような両者の効果上の差は、両者の構成上の相異に基づくものであると考えられる。
【0094】
次に、図5を参照して、「10P」及び「1P」について、反射率の膜依存性の有無を確認する。
「10P」の反射率のグラフは、膜厚40nm〜60nmの範囲で、うねりが少なく、緩やかな波形を示し、特に、反射率8%以下の狭い範囲では、上記フラット領域Aに関わる膜厚約47nmと膜厚約50nmとの約3nmの範囲に、直線形状ではないが、直線形状に近い緩やかな曲線形状の略フラット領域Bを確認した。この略フラット領域Bは、反射率が膜厚に依存していないことを示しており、特に、略フラット領域Bの膜厚範囲に設定した位相シフト膜は、反射率8%以下の極めて狭い範囲で微小変化するものの、略一定の反射率を示している。
これに対し、「1P」の位相差のグラフは、膜厚40nm〜60nmの範囲で、「10P」の位相差のグラフよりもうねりが大きな波形を示しており、上記略フラット領域Bのような直線的な変化領域を確認することができなかった。また、略フラット領域Bの膜厚範囲では、7%〜10%の間で大きく変化する反射率を示している。
このような両者の効果上の差は、両者の構成上の相異に基づくものであると考えられる。
【0095】
以上のように、上記「10P」は、位相差180度に膜厚に依存しないフラット領域Aを有し、且つ、反射率8%以下の極めて狭い範囲に膜厚に依存しない略フラット領域Bを有している。この結果から、上記実施例1と同様の膜構成を有する「10P」は、本発明に係る反射型マスクブランクが、EUV光(波長13.5nm)における優れた光学特性を具備することを示している。
【符号の説明】
【0096】
10…反射型マスクブランク、12…基板、13…多層反射膜、14…保護膜、15…位相シフト膜、15a…第1の層、15b…第2の層、R1、R2…金属拡散領域、A…フラット領域、B…略フラット領域。
図1
図2
図3
図4
図5