特許第6441013号(P6441013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441013
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】加熱調理器具用アルミニウム合金部材
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20181210BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20181210BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   C22C21/00 L
   A47J36/02 A
   A47J27/00 107
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-201212(P2014-201212)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-69697(P2016-69697A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新宮 享
(72)【発明者】
【氏名】大八木 光成
(72)【発明者】
【氏名】久永 良明
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−253600(JP,A)
【文献】 特表2007−525596(JP,A)
【文献】 特開2000−023837(JP,A)
【文献】 特開2006−274351(JP,A)
【文献】 特開平11−217648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00−21/18
A47J 27/00−27/13
A47J 27/20−29/06
A47J 33/00−36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1元素と第2元素との金属間化合物からなる第1相と、
前記金属間化合物と異なり、かつ前記第1元素と前記第2元素とからなる第2相と、からなる加熱調理器具用アルミニウム合金部材であって、
前記第1元素はアルミニウムであり、
前記第2元素はマンガンであり、
前記加熱調理器具用アルミニウム合金部材における前記第2元素の含有量は、18質量%以上25質量%以下である、加熱調理器具用アルミニウム合金部材。
【請求項2】
174μm×134μmの大きさの1つの面に占める前記第1相の面積と、前記1つの面に垂直であり、かつ174μm×134μmの大きさの他の1つの面に占める前記第1相の面積とは、それぞれ60%以上90%以下である、請求項1に記載の加熱調理器具用アルミニウム合金部材。
【請求項3】
174μm×134μmの大きさの1つの面に含まれる前記第2相の数と、前記1つの面に垂直であり、かつ174μm×134μmの大きさの他の1つの面に含まれる前記第2相の数とは、それぞれ200個以上1000個以下である、請求項1または請求項2に記載の加熱調理器具用アルミニウム合金部材。
【請求項4】
500μm以上5000μm以下の厚さを有する板状物である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の加熱調理器具用アルミニウム合金部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器具用アルミニウム合金部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘電加熱調理器に用いられる加熱調理器具用部材には、アルミニウム(Al)と他の材料とを用いた部材が知られている。
【0003】
たとえば特開2004−249367号公報(特許文献1)には、オーステナイト系ステンレス鋼板材、アルミニウム(Al)を表面にコーティングした鉄または鉄合金部材、アルミニウムまたはアルミニウム合金部材、およびオーステナイト系ステンレス鋼板材をこの順に積層させた板材が記載されている。特開2007−144132号公報(特許文献2)には、Alからなる非磁性基材、磁性材料層、および金属材料層がこの順に積層された複合材が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の板材および特許文献2に記載の複合材は、材料の異なる層が複数積層された構造を有するために、層の剥離による劣化が生じやすい。これに対し、たとえば特開2007−270351号公報(特許文献3)には、Alを主成分とし、Mg、Cr、Mn、Ti、Cu、SiおよびFeを含むアルミニウム合金からなるアルミニウム箔が記載されている。このアルミニウム箔によれば、上記の剥離の問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−249367号公報
【特許文献2】特開2007−144132号公報
【特許文献3】特開2007−270351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3に記載のアルミニウム箔の比抵抗値は5〜10μΩcmであり、電磁誘導加熱による消費電力量は100Wに満たず、発熱量が低いという問題がある。このため、電磁誘導加熱による高い発熱量を発揮可能な加熱調理器具用部材の開発が求められている。
【0007】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、電磁誘導加熱による高い発熱量を発揮可能な加熱調理器具用アルミニウム合金部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱調理器具用アルミニウム合金部材は、第1元素と第2元素との金属間化合物からなる第1相と、金属間化合物と異なり、かつ第1元素と第2元素とからなる第2相と、を含む加熱調理器具用アルミニウム合金部材であって、第1元素はアルミニウムであり、第2元素はマンガン、鉄、シリコン、マグネシウム、クロムおよび銅からなる群より選択された1つ以上であり、加熱調理器具用アルミニウム合金部材における第2元素の含有量は、18質量%以上25質量%以下である。
【0009】
上記加熱調理器具用アルミニウム合金部材において、174μm×134μmの大きさの1つの面に占める第1相の面積と、1つの面に垂直であり、かつ174μm×134μmの大きさの他の1つの面に占める第1相の面積とは、それぞれ60%以上90%以下であることが好ましい。
【0010】
上記加熱調理器具用アルミニウム合金部材において、174μm×134μmの大きさの1つの面に含まれる第2相の数と、1つの面に垂直であり、かつ174μm×134μmの大きさの他の1つの面に含まれる第2相の数とは、それぞれ200個以上1000個以下であるであることが好ましい。
【0011】
上記加熱調理器具用アルミニウム合金部材は、500μm以上5000μm以下の厚さを有する板状物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱調理器具用アルミニウム合金部材によれば、電磁誘導加熱による高い発熱量を発揮するという効果を奏する。
【0013】
なお、本発明でいう加熱調理器具用アルミニウム合金部材における面とは、光学顕微鏡によって確認され得る領域をいう。厳密には加熱調理器具用アルミニウム合金部材の表面には酸化皮膜が形成されているが、本発明でいう加熱調理器具用アルミニウム合金部材における面とは、この酸化皮膜を除いた面をいう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の加熱調理器具用アルミニウム合金部材を光学顕微鏡で撮影し、得られた画像を二値化処理した画像であり、かつ実施例2の加熱調理器具用アルミニウム合金部材より得られた試料における174μm×134μmの領域の二値化処理後の画像である。
図2】比較例5の加熱調理器具用アルミニウム合金部材より得られた試料における174μm×134μmの領域の二値化処理後の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の加熱調理器具用アルミニウム合金部材(以下、「Al合金部材」ともいう)は、第1元素と第2元素との金属間化合物からなる第1相と、金属間化合物と異なり、かつ第1元素と第2元素とからなる第2相と、を含み、第1元素はアルミニウム(Al)であり、第2元素はマンガン(Mn)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)および銅(Cu)からなる群より選択された1つ以上であり、Al合金部材における第2元素の含有量は、18質量%以上25質量%以下である。なお、複数の第2元素を含む場合には、複数の第2元素の総量が18質量%以上25質量%以下となる。
【0016】
第1相を構成する金属間化合物としては、Al−Mn系、Al−Fe系などの2元系金属間化合物、Al−Mn−Fe系、Al−Fe−Si系などの3元系金属間化合物を挙げることができる。各金属間化合物の組成は1つとは限られず、たとえば、Al−Mn系金属間化合物には、MnAl6、MnAl4またはMnAl3などが含まれる。
【0017】
第2相は、上述の金属間化合物とは異なり、かつ第1元素と第2元素とからなる相である。第2相において、第2元素は第1元素(Al)中に固溶している。
【0018】
なお、本実施形態のAl合金部材が意図しない不可避不純物を含んでもよいことはいうまでもない。不可避不純物としては、Fe、Si、Cu、Mn、Mg、Zn、Ti、Zr、Ga、Cr、Vなどを挙げることができる。不可避不純物としての各元素の含有量は、それぞれ0.05質量%以下である。不可避不純物は、第1相および第2相のいずれにも含まれ得る。
【0019】
本実施形態のAl合金部材は、公知のDC(Direct Casting)鋳造法を用いて作製することができる。
【0020】
本実施形態のAl合金部材は、40μΩcm以上という高い比抵抗値を有することができ、これによって、電磁誘導加熱によって100W以上という高い消費電力量を発揮することができるため、もって高い発熱量を発揮することができる。
【0021】
図1は、本実施形態のAl合金部材を光学顕微鏡で撮影し、得られた画像を二値化処理した画像である。具体的には、後述する実施例2のAl合金部材の表面を500倍の倍率で撮影し、得られた画像を濃淡のコントラストに基づいて二値化処理した画像である。
【0022】
図1において、白色の領域がAl−Mn系金属間化合物からなる第1相であり、第1相に囲まれるように島状に点在する黒色の領域が第2相である。なお、第1相および第2相中には、不可避不純物が含まれ得る。第2相はAlにMnが固溶した相であるため、図1において、第1相と第2相とは明確に区別されて観察される。
【0023】
図1に示されるように、第2相の周囲は第1相によって囲まれており、第1相はそれぞれ連続する(連なっている)ように存在している。このような組織構造により、第1相によって第2相間での電子の移動が抑制されるために、従来考えられていたよりも顕著に高い比抵抗を有することができ、これにより、高い発熱量の発揮が可能となるものと推察される。
【0024】
一方、本実施形態のAl合金部材において、第2元素の含有量が18質量%未満の場合には、上記のような高い発熱量を発揮できない。これは、第2元素の含有量が18質量%未満の場合には、Al合金部材中に占める第1相の割合が低いために、第2相間の連なりを第1相によって十分に排除できず、結果的に第2相間での電子の移動を十分に抑制できないためと推察される。なお、第2元素の含有量を25質量%超とした場合には、DC鋳造法によってAl合金部材を作製することはできなかった。
【0025】
本実施形態のAl合金部材において、第2元素の含有量は、好ましくは22質量%以上25質量%以下であり、この場合、電磁誘導加熱によって140W以上という高い消費電力量を発揮することができる。
【0026】
また、本実施形態のAl合金部材は、174μm×134μmの大きさの任意の1つの面に占める第1相の面積と、この1つの面に垂直であり、かつ174μm×134μmの大きさの他の1つの面に占める第1相の面積とが、それぞれ60%以上90%以下であることが好ましい。この場合にも、電磁誘導加熱によって100W以上という高い消費電力量を発揮することができる。互いに垂直な上記2つの面に含まれる第1相の面積は、それぞれ70%以上90%以下であることがより好ましい。
【0027】
Al合金部材の互いに垂直な2つの面の各々における第1相の面積は、次のようにして求められる。まず、Al合金部材の表面を500倍の倍率で撮像して画像を得る。得られた画像中、Al合金部材の174μm×134μmの表面領域に一致する画像を、濃淡のコントラストに基づいて二値化処理する。そして、二値化処理後の画像中の第1相の占める面積の割合を算出し、これをAl合金部材の1つの面に占める第1相の面積とする。また、この1つの面に対し垂直な他の1つの面についても同様の処理を行い、算出された値を、Al合金部材の1つの面に垂直な他の面に占める第1相の面積とする。なお、1μm2以下の面積の第1相は計測数から除かれる。
【0028】
また、本実施形態のAl合金部材は、174μm×134μmの大きさの任意の1つの面に含まれる第2相の数と、1つの面に垂直であり、かつ174μm×134μmの大きさの他の1つの面に含まれる第2相の数とが、それぞれ200個以上1000個以下であることが好ましい。この場合にも、電磁誘導加熱によって100W以上という高い発熱量を発揮することができる。互いに垂直な上記2つの面に含まれる第2相の数は、それぞれ200個以上800個以下であることがより好ましい。
【0029】
Al合金部材の互いに垂直な上記2つの面の各々における第2相の数は、第1相の面積の求め方と同様の方法により得られた二値化処理後の画像中に点在する第2相の数を計測することにより求められる。つまり、その周囲を第1相によって囲まれる第2相が、1つの第2相となる。なお、1μm2以下の面積の第2相は計測数から除かれる。
【0030】
また、本実施形態のAl合金部材は、500μm以上5000μm以下の厚みを有する板状物であることが好ましい。板状物であるAl合金部材の厚みが500μm未満の場合、強度が弱くなる傾向があり、たとえばフライパン、鍋といった加熱調理器具として使用する際に、変形する恐れがある。板状物であるAl合金部材の厚みが5000μmを超える場合、発熱量が低下する傾向がある。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
アルミニウム溶湯を準備し、Mnが溶解可能となるようにアルミニウム溶湯を加熱しながら、Al合金部材におけるMnの含有量が18質量%となるようにMnを投入した。Mn投入後のアルミニウム溶湯を銅製の鋳型に流し込み、これを固めることにより、縦100mm×横120mm×厚み3.5mmのAl合金部材を作製した。なお、得られたAl合金部材における不可避不純物の総量は0.01質量%以下であった。
【0033】
(実施例2〜4)
Al合金部材におけるMnの含有量が、それぞれ20質量%、22質量%、25質量%となるようにMnを投入した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4のAl合金部材を作製した。実施例2〜4においても、得られたAl合金部材における不可避不純物の総量は0.01質量%以下であった。
【0034】
(比較例1〜5)
比較例1として、Mn含有量が0.01%以下、不可避不純物の総量が0.01%以下であるAl合金部材を用意した。また、Al合金部材におけるMnの含有量が、それぞれ0.8質量%、10質量%、15質量%、16質量%となるようにMnを投入した以外は、実施例1と同様にして、比較例2〜5のAl合金部材を作製した。比較例2〜5においても、得られたAl合金部材における不可避不純物の総量は0.01質量%以下であった。
【0035】
(組織観察)
実施例1〜4および比較例1〜5の各Al合金部材について、以下の方法により、互いに垂直な2つの面における第1相(Al−Mn金属間化合物)の各面積の割合と、第2相(Al物質)の各数とを測定した。
【0036】
具体的には、まず、Al合金部材の一部を切り出して直方体の試料を作製した。次に、光学顕微鏡(ニコン株式会社製、製品名:「ECLIPSE L200」)を用いて、500倍の倍率で試料の1つの面Aを撮像して画像Aを得た。また、試料の1つの面Aに垂直な他の1つの面Bについても同様にして画像Bを得た。光学顕微鏡で明るく見える領域(図1および図2中での黒色の領域)が第2相で、暗く見える領域(図1および図2中で白色の領域)が第1相である。
【0037】
次に、得られた各画像A,B(Al合金部材中の面における174μm×134μmの矩形領域に相当)を、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX200に読み込み、デジタルマイクロスコープの計測ツールを用いて二値化処理した。
【0038】
そして、二値化処理後の画像A,B中に占める第1相の面積の割合をそれぞれデジタルマイクロスコープの計測ツールを用いて算出した。なお、1μm2以下の面積を有する第1相は除いた。さらに、二値化処理後の画像A,B中に含まれる第2相の数をそれぞれデジタルマイクロスコープの計測ツールを用いて測定した。なお、1μm2以下の面積を有する第2相は計測数から除いた。これらの結果を表1に示す。
【0039】
(電気特性の測定)
実施例1〜4および比較例1〜5の各Al合金部材について、以下の方法により、比抵抗値と、消費電力量とを測定した。
【0040】
まず、Al合金部材の一部を切り出して、縦10mm×横75mm×厚み3mmの試料を作製した。そして、抵抗計(日置電機社製、型番3541)を用いて、直流四端子法により試料の比抵抗値(μΩcm)を測定した。また、Al合金部材の一部を切り出して、縦75mm×横75mmの試料を作製した。そして、IH湯沸かし器(タイガー魔法瓶社製、型番CIK−B030)に電力計(SANWA社製)を取り付け、試料を加熱した際の消費電力量(W)を測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示されるように、実施例1〜4のAl合金部材の比抵抗値は40以上であった。これに対し、比較例1〜5のAl合金部材の比抵抗値は31.8以下であった。
【0043】
また、実施例1〜4のAl合金部材は、電磁誘導加熱により100W以上の消費電力量を発揮できることが確認された。これに対し、比較例3〜5のAl合金部材は98以下の消費電力量であった。なお、比較例1および比較例2のAl合金部材は、電磁誘導加熱に供しても加熱電力が得られず、消費電力量は測定できなかった。
【0044】
また、実施例1〜4のAl合金部材は、互いに垂直な2つの面(174μm×134μm)に占める第1相の面積が、それぞれ60%以上90%以下であるのに対し、比較例1〜5のAl合金部材は、それぞれ51%以下であることが確認された。
【0045】
また、実施例1〜4のAl合金部材は、互いに垂直な2つの面(174μm×134μm)に含まれる第2相の数が、それぞれ200個以上1000個以下であるのに対し、比較例1〜3のAl合金部材においては23個以下であった。また、比較例4および比較例5のAl合金部材においては、1つの面での第2相の数が200個以上であったものの、この1つの面に垂直な他の面での第2相の数は100個に満たなかった。
【0046】
ここで、図1は、実施例2のAl合金部材より得られた試料における二値化処理後の画像であり、図2は、比較例5のAl合金部材より得られた試料における二値化処理後の画像である。
【0047】
図1に示されるように、実施例2のAl合金部材においては、第2相(図中黒色の領域)が第1相(図中白色の領域)によって島状に分散されており、このために、表面中に点在する第2相の数も多いことがわかった。これに対し、図2に示されるように、比較例5のAl合金部材においては、第2相の多くが連なっており、第1相による第2相の連なりの分断ができていないことがわかった。
【0048】
また、各実施例において、1つの面と、この1つの面に垂直な他の1つの面とにおいて、同様の組織状態が観察されたことから、Al合金部材中において、第1相は縦方向にも横方向にも十分に分散されていることがわかった。なお、各実施例より切り出した試料について、1つの面中の50箇所の174μm×134μmの領域と、上記1つの表面に垂直な他の1つのの面中の50箇所の174μm×134μmの領域とのそれぞれについて組織状態を観察したところ、いずれの箇所においても、同様の組織状態を示すことが確認された。
【0049】
以上のことから、Al合金部材中のMnの含有量が18質量%以上25質量%以下の場合には、第2相の周囲が第1相に囲まれることによって第2相が好適に分散されるために、高い比抵抗値を示すことができ、これにより高い消費電力量を発揮でき、もって高い発熱量を発揮できることが推察された。また、第2相が縦方向にも横方向にも十分に分散されているため、熱伝導性にも優れるものと推察される。
【0050】
これに対し、Al合金部材中のMnの含有量が18質量%に満たない場合、Al−Mn金属間化合物の含有量が少ないために、Al合金部材中に占める第1相の面積の割合が低下し、このために第2相が好適に分散されず、結果的に、比抵抗値が低下するものと推察された。
【0051】
以上のように本発明の実施形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0052】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1
図2