特許第6441047号(P6441047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441047
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20181210BHJP
   G02B 27/48 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02B27/48
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-239061(P2014-239061)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-99607(P2016-99607A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】藤村 康浩
(72)【発明者】
【氏名】小川 深雪
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/162621(WO,A1)
【文献】 特開2011−180581(JP,A)
【文献】 特開2012−78807(JP,A)
【文献】 特開2004−341453(JP,A)
【文献】 特開2014−6372(JP,A)
【文献】 特開2006−3479(JP,A)
【文献】 米国特許第6275291(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B27/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造性複屈折をもつ複数のサブ波長構造領域が基板の表層部に配置された光学素子であって、
前記サブ波長構造領域は、複数の第1サブ波長構造領域と複数の第2サブ波長構造領域を含み、
前記第1サブ波長構造領域及び前記第2サブ波長構造領域は、それぞれ、使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝をもち、前記溝の配列方向である光学軸方向を備え、
前記第1サブ波長構造領域は互いに間隔をもって配置されており、
前記第2サブ波長構造領域は、前記第1サブ波長構造領域の間に配置され、ある前記第1サブ波長構造領域から隣の前記第1サブ波長構造領域にわたって前記光学軸方向がゆるやかに変化するように前記光学軸方向が設定されている光学素子。
【請求項2】
複数の前記第1サブ波長構造領域は、不規則な間隔をもって配置されている請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1サブ波長構造領域として、領域の大きさが互いに異なっているものが含まれている請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1サブ波長構造領域として、領域の形状が互いに異なっているものが含まれている請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第2サブ波長構造領域として、前記第1サブ波長構造領域とは領域の大きさもしくは領域の形状又はそれらの両方が異なっているものが含まれている請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1サブ波長構造領域同士が互いに隣り合って配置されている箇所が含まれており、
隣り合う前記第1サブ波長構造領域同士の前記光学軸方向がなす角度は90度未満である請求項1から5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
隣り合う前記第1サブ波長構造領域同士の前記光学軸方向がなす前記角度は67.5度以下である請求項6に記載の光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学素子は、レーザプリンタなどで問題となる偏光を解消させるための光学部品として用いられたり、光学露光装置や光学測定機などの光学機器の光学系のスペックルの発生を低減させるスペックル低減素子として用いられたりしている。
【0003】
レーザからの光をマイクロレンズアレイやフライアイレンズを通すことによってひとつの光束が複数の光束に分割された光は偏光方向が同一方向に揃っている。そして、光学系の中で特定の条件が整うと、分割された光がそれぞれ迷光の原因となって光学系の途中で光が強めあう点(スペックル)が生じる場合がある。
【0004】
スペックルは、いろいろな光学系で発生することが知られている。スペックルの発生を解消する方法は種々提案されている。しかし、有効な解決策は確立されていない。
【0005】
スペックルを解消する方法のひとつとしては、偏光状態が様々になったいわゆるランダム偏光状態になっていることが好ましい。偏光が不揃いであると、光の干渉が起こりにくいからである。
【0006】
光学素子として、サブ波長構造(Sub-Wavelength Structures;SWS)を備えたものが知られている(例えば特許文献1を参照。)。サブ波長構造は、使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝の周期構造である。
【0007】
光の波長より短いピッチをもつ溝の周期構造は、周期をもつ方向ともたない方向で互いに異なる有効屈折率nTE,nTMをもち、あたかも複屈折材料であるかのように振舞う。この有効屈折率の差によって各偏波方向の光の伝播速度に差ができるため、サブ波長構造を通過する光の偏光状態が変化する。
【0008】
サブ波長構造は、構造の設計によって複屈折やそれらの分散を自由に制御できる。サブ波長構造のこの特性を利用して、偏光板、波長板、波長分離素子など、様々な製品が展開されている。
【0009】
サブ波長構造を備えた光学素子において、サブ波長構造の溝の配列方向である光学軸方向を任意に変化させるために、光学機能を発生する部分は複数のサブ波長構造領域に細かく分割されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−341453号公報
【特許文献2】特開2008−298869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光学素子において光が透過する部分が複数のサブ波長構造領域に分割されていると、サブ波長構造領域の大きさに起因する回折光が発生し、光の透過率(0次光)が低下する。
【0012】
例えば、複数のサブ波長領域における光学軸方向の配置について、ランダム配置などの規則性のない配置を取ることにより、回折光(1次光、−1次光など)を強調されにくくすることは可能である。
【0013】
しかし、ランダム配置の場合は回折光の発生自体を抑えているわけではなく、発生する回折光における回折角度の種類を増やしているだけであり、0次光透過率の低減を抑制しているわけではない。よって光の利用効率向上という観点においては問題があった。
【0014】
本発明は、構造性複屈折をもつ複数のサブ波長構造領域が基板の表層部に配置された光学素子において、透過する光の回折光の発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる光学素子は、構造性複屈折をもつ複数のサブ波長構造領域が基板の表層部に配置された光学素子であって、上記サブ波長構造領域は、複数の第1サブ波長構造領域と複数の第2サブ波長構造領域を含み、上記第1サブ波長構造領域及び上記第2サブ波長構造領域は、それぞれ、使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝をもち、上記溝の配列方向である光学軸方向を備え、上記第1サブ波長構造領域は互いに間隔をもって配置されており、上記第2サブ波長構造領域は、上記第1サブ波長構造領域の間に配置され、ある上記第1サブ波長構造領域から隣の上記第1サブ波長構造領域にわたって上記光学軸方向がゆるやかに変化するように上記光学軸方向が設定されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学素子は、透過する光の回折光の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】光学素子の一実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図2】光学素子におけるサブ波長構造体を説明するための概略的な断面図である。
図3】光学素子の他の実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図4】光学素子のさらに他の実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図5】光学素子のさらに他の実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図6】光学素子のさらに他の実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図7図6に示されたサブ波長構造領域の配列における第1サブ波長構造領域と第2サブ波長構造領域の位置を示した平面図である。
図8】第1サブ波長構造領域を特定する方法を説明するための図である。
図9】光学素子のさらに他の実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図10図9に示されたサブ波長構造領域の配列における第1サブ波長構造領域と第2サブ波長構造領域の位置を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光学素子において、例えば、複数の上記第1サブ波長構造領域は、不規則な間隔をもって配置されているようにしてもよい。ただし、本発明の光学素子において、複数の上記第1サブ波長構造領域は均等な間隔をもって配置されていてもよい。
【0019】
また、本発明の光学素子において、例えば、上記第1サブ波長構造領域として、領域の大きさが互いに異なっているものが含まれているようにしてもよい。なお、上記第1サブ波長構造領域として、領域の大きさが同じであるものが含まれていてもよい。また、本発明の光学素子において、複数の上記第1サブ波長構造領域は、領域の大きさがすべて同じであってもよい。
【0020】
また、本発明の光学素子において、例えば、上記第1サブ波長構造領域として、領域の形状が互いに異なっているものが含まれているようにしてもよい。なお、上記第1サブ波長構造領域として、領域の形状が同じであるものが含まれていてもよい。また、本発明の光学素子において、複数の上記第1サブ波長構造領域は、領域の形状がすべて同じであってもよい。
【0021】
また、本発明の光学素子において、例えば、上記第2サブ波長構造領域として、上記第1サブ波長構造領域とは領域の大きさもしくは領域の形状又はそれらの両方が異なっているものが含まれているようにしてもよい。なお、上記第2サブ波長構造領域として、上記第1サブ波長構造領域と領域の大きさ及び領域の形状が同じであるものが含まれていてもよい。また、本発明の光学素子において、複数の上記第2サブ波長構造領域は、領域の大きさもしくは領域の形状又はそれらの両方がすべて同じであってもよし、互いに異なっているものが含まれていてもよい。
【0022】
本発明の光学素子において、例えば、上記第1サブ波長構造領域同士が互いに隣り合って配置されている箇所が含まれており、隣り合う上記第1サブ波長構造領域同士の上記光学軸方向がなす角度は90度未満であるようにしてもよい。
【0023】
また、本発明の光学素子において、例えば、隣り合う上記サブ波長構造領域同士の上記光学軸方向がなす上記角度は、好ましくは67.5度以下、さらに好ましくは45度以下、さらに好ましくは22.5度以下である。
【0024】
図1は、光学素子の一実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。図2は、光学素子におけるサブ波長構造体を説明するための概略的な断面図である。まず、図2を参照してサブ波長構造体について説明する。
【0025】
図2に示されるように、光学素子1は、基板3の表層部に、使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝5を備えている。繰り返して配列された溝5によって、凹凸周期(ピッチ)Pを有するサブ波長構造が形成されている。基板3は例えば高透過率の二酸化ケイ素で形成されている。
【0026】
サブ波長構造体の複屈折作用について、図2を参照して説明する。サブ波長凹凸構造の媒質として空気と屈折率nの媒質を想定する。屈折率nの凸条のランドの幅がL、空気層からなる凹条の溝5の幅がSであり、P=L+Sである。また、L/Pはフィリングファクタ(F)と呼ばれる。dは溝5の深さである。
【0027】
周期Pの目安としては、使用する最も短い入射光の波長より短い周期で、より望ましくは使用波長の半分以下の周期とする。周期Pが入射光の波長よりも短い周期構造は入射光を回折することはないため入射光はそのまま透過し、入射光に対して複屈折特性を示す。すなわち、入射光の偏光方向に応じて異なる屈折率を示す。その結果、構造に関するパラメータを調整することにより位相差を任意に設定することができるため各種波長板を実現できる。
【0028】
構造性複屈折とは、屈折率の異なる2種類の媒質を光の波長よりも短い周期でストライプ状に配置したとき、ストライプに平行な偏光成分(TE波)とストライプに垂直な偏光成分(TM波)とで屈折率(有効屈折率と呼ぶ)が異なり、複屈折作用が生じることをいう。
【0029】
サブ波長構造体の周期よりも2倍以上の波長をもつ光が垂直入射したと仮定する。このときの入射光の偏光方向がサブ波長構造体の溝に平行(TE方向)であるか垂直(TM方向)であるかによって、サブ波長構造体の有効屈折率は次の式で与えられる。
n(TE)=(F×n2+(1−F))1/2
n(TM)=(F/n2+(1−F))1/2
【0030】
入射光の偏光方向がサブ波長構造体の溝に平行である場合の有効屈折率をn(TE)、垂直である場合の有効屈折率をn(TM)と表す。式中の符号Fは前述のフィリングファクタである。
【0031】
このようなサブ波長構造体を透過した光のTE波とTM波の間の位相差(リタデーション)Δは、
Δ=Δn・d
である。ここで、Δnはn(TE)とn(TM)の差、dは前述の溝の深さである。
【0032】
サブ波長構造領域に直線偏光の光が入射すると、この位相差によってその透過光は楕円偏光に変わる。光学軸方向が互いに異なるサブ波長構造領域が隣り合って配置されている本発明の光学素子を直線偏光の光が透過すると、隣り合うサブ波長構造領域間で楕円率が異なる。
【0033】
この光学素子で発生する位相差Δは使用する波長λに対して、λ/4≦Δ≦λとなるようにサブ波長構造体が設計されていることが好ましい。これにより、この光学素子の異なる場所を通過した光束同士であってもその干渉を低減することができる。
【0034】
図1を参照して光学素子1におけるサブ波長構造領域の配置について説明する。
光学素子1は、サブ波長構造領域として第1サブ波長構造領域7(太枠を参照。)と第2サブ波長構造領域9を備えている。これらのサブ波長構造領域7,9は、例えば互いに隙間のない状態で配置されている。ただし、これらのサブ波長構造領域7,9は互いに間隔をもって配置されていてもよい。
【0035】
サブ波長構造領域7,9は使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝5(図2を参照。)により構成されるストライプ状の凹凸構造をそれぞれもっている。サブ波長構造領域7,9そのストライプ状の凹凸の配列方向が光学軸方向である。図1において、この光学軸方向は双方向矢印で図示されている。
【0036】
光学素子1に配置されたサブ波長構造領域7,9において、凹条の溝5の幅S、凸条のランドの幅L、ピッチP及び溝5の深さdは同じである。
【0037】
図1では5×5=25個相当のサブ波長構造領域7,9が配置されたものが示されている。ただし、これは概略図であり、サブ波長構造領域7,9の個数は限定されるものではない。サブ波長構造領域7,9の数は多いほどよい。例えば、光学素子1が3mm×3mm(ミリメートル)の正方形で、1つのサブ波長構造領域が10μm×10μm(マイクロメートル)であるとすると、300×300=90000個のサブ波長構造領域7,9が配置された光学素子1となる。
【0038】
各サブ波長構造領域7,9は1つずつの光学軸方向をもっている。サブ波長構造領域7,9の光学軸方向は、例えば90度を5分割した方向のいずれかの方向をもつように形成されている。例えば、サブ波長構造領域7,9の光学軸方向は、X軸に対して反時計回りに0度、22.5度、45度、67.5度、90度のいずれかである。
【0039】
第1サブ波長構造領域7は、互いに間隔をもって配置されている。例えば、この実施例では7個の第1サブ波長構造領域7(サブ波長構造領域13個相当)が配置されている。
【0040】
第1サブ波長構造領域7の配置における光学軸方向の配置はランダム(不規則)に配置されている。また、第1サブ波長構造領域7として、領域の大きさが互いに異なっているものが含まれている。また、第1サブ波長構造領域7として、領域の形状が互いに異なっているものが含まれている。
【0041】
第2サブ波長構造領域9は第1サブ波長構造領域7の間に配置されている。例えば、この実施例では12個の第2サブ波長構造領域9が配置されている。
【0042】
各第2サブ波長構造領域9の光学軸方向は、ある第1サブ波長構造領域7から隣の第1サブ波長構造領域7にわたって光学軸方向がゆるやかに変化するように設定されている。
【0043】
このように、光学素子1において、サブ波長構造領域7,9の光学軸方向が徐々に変化されることによって、屈折率が徐々に変化されている。つまり、サブ波長構造領域の光学軸方向がランダムに配置される場合に比べて、隣り合うサブ波長構造領域間の位相差が小さくされている。
【0044】
サブ波長構造領域間の位相差が小さくなると、光学素子1を透過する光は、サブ波長構造領域7,9が拡大したかのように振る舞うために、サブ波長構造領域7,9の実際のサイズよりも回折角が小さくなる。
したがって、光学素子1は、透過する光の回折光の発生を低減でき、光の透過率を向上させることができる。
【0045】
また、図1に示された光学素子1において、X方向又はY方向で隣り合う第2サブ波長構造領域9の光学軸方向が同じである箇所は、図3に示されるように、1つの第2サブ波長構造領域9とみなすこともできる。
【0046】
図3に示されるように、光学素子1において、領域の大きさもしくは領域の形状又はそれらの両方が互いに異なっている第2サブ波長構造領域9が含まれているようにしてもよい。また、光学素子1において、第1サブ波長構造領域7とは領域の大きさもしくは領域の形状又はそれらの両方が互いに異なっている第2サブ波長構造領域9が含まれているようにしてもよい。
【0047】
また、図4に示されるように、第1サブ波長構造領域7同士が互いに隣り合って配置されている箇所が含まれていてもよい。ここで、隣り合う第1サブ波長構造領域7同士の光学軸方向がなす角度は90度未満である。この実施例は、図1に示された実施例と同様の効果が得られる。
【0048】
また、図4に示された光学素子1において、X方向又はY方向で隣り合う第2サブ波長構造領域9の光学軸方向が同じである箇所は、図3に示された実施例と同様に、図5に示されるように、1つの第2サブ波長構造領域9とみなすこともできる。
【0049】
図6は、光学素子のさらに他の実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。図7は、図6に示されたサブ波長構造領域の配列における第1サブ波長構造領域と第2サブ波長構造領域の位置を示した平面図である。
【0050】
図6,7に示された光学素子1において、サブ波長構造領域7,9の光学軸方向は、例えば90度を8分割した方向のいずれかの方向をもつように形成されている。例えば、サブ波長構造領域7,9の光学軸方向は、X軸に対して反時計回りに0度、約12.9度、約25.7、約38.6度、約51.4度、約64.3度、約77.1度、90度のいずれかである。
【0051】
図6,7に示された光学素子1では、第1サブ波長構造領域7は、より不規則な大きさ及び形状をもって配置されている。図8を参照して第1サブ波長構造領域7の特定の仕方について説明する。
【0052】
図8は第1サブ波長構造領域を特定する方法を説明するための図である。
第1サブ波長構造領域7は、X軸方向又はY軸方向におけるサブ波長構造領域の配列での光学軸方向の変化が時計回り又は反時計回りから逆方向(反時計回り又は時計回り)に変化する起点になる箇所に位置している。
【0053】
例えば、図8(A)に示されるように、X軸方向において光学軸方向が左から順に67.5度、22.5度、0度、22.5度、45度、67.5度、90度、67.5度、45度と変化しているとする。光学軸方向の変化が逆方向に変化する起点になる箇所は0度と90度である。つまり、光学軸方向が0度のサブ波長構造領域と90度のサブ波長構造領域が第1サブ波長構造領域7となる。
【0054】
光学軸方向の変化が逆方向に変化する起点になる箇所は、例えば、あるサブ波長構造領域の両隣のサブ波長楮領域の光学軸方向がともに、上記あるサブ波長構造領域の光学軸方向に対してプラス側又はマイナス側になっている箇所である。
【0055】
例えば、同一角度の光学軸方向をもつ2個のサブ波長構造領域で挟まれた、上記同一角度とは異なる角度の光学軸方向をもつサブ波長構造領域は、光学軸方向の変化が逆方向に変化する起点になる箇所に位置し、第1サブ波長構造領域7になる。
【0056】
光学軸方向の変化が逆方向に変化する起点になる箇所は1個のサブ波長構造領域で構成されるとは限らない。例えば、図8(B)に示されるように、X軸方向において光学軸方向が左から順に67.5度、0度、22.5度、67.5度、67.5度、67.5度、45度、0度、45度と変化しているとする。この場合、中央の第1サブ波長構造領域7は3個の67.5度のサブ波長構造領域で構成される。例えば、同一角度の光学軸方向をもつ2個のサブ波長構造領域で挟まれ、かつ、上記同一角度とは異なる角度で同じ角度の光学軸方向をもつ連続する複数のサブ波長構造領域は、第1サブ波長構造領域7になる。
【0057】
また、第1サブ波長構造領域7の間に配置された複数の第2サブ波長構造領域の光学軸方向の変化は、ある第1サブ波長構造領域7から隣の第1サブ波長構造領域7にわたって光学軸方向がゆるやかに変化していれば、等間隔又は均等に変化していなくてもよい。
【0058】
例えば、図8(C)に示されるように、X軸方向において光学軸方向が左から順に67.5度、0度、22.5度、22.5度、45度、45度、45度、90度、67.5度と変化していてもよい。この配列において、光学軸方向が45度の第2サブ波長構造領域9と90度の第1サブ波長構造領域7の間に67.5度のサブ波長構造領域が配置されていない。
【0059】
第1サブ波長構造領域7間に配置される第2サブ波長構造領域9の光学軸方向は、一方の第1サブ波長構造領域7の光学軸方向と他方の第1サブ波長構造領域7の光学軸方向の間の範囲内であり、光学軸方向の変化を逆方向に変化させない光学軸方向であればよい。例えば、図8(C)に示された光学軸方向の配列に対して、光学軸方向が0度の第1サブ波長構造領域7と90度の第1サブ波長構造領域7の間の5個の第2サブ波長構造領域9の光学軸方向をすべて22.5度、45度又は67.5度にしてもよい。
【0060】
図8を参照してX軸方向での第1サブ波長構造領域7を特定する方法について説明したが、Y軸方向についても同様にして第1サブ波長構造領域7を特定することができる。
また、図8では90度を5分割した光学軸方向が示されているが、例えば90度を8分割した方向のいずれかの光学軸方向をもつサブ波長構造領域が配列されている構成においても、同様にして第1サブ波長構造領域7を特定することができる。
【0061】
なお、サブ波長構造領域の光学軸方向は、90度を5分割又は8分割した方向のいずれかに限定されるものではない。各サブ波長構造領域の光学軸方向は0度から180度の間の範囲内であればよい。例えば、各サブ波長構造領域の光学軸方向は、180度を均等に又は不均等に複数に分割した方向のいずれかであってもよい。ここで、分割数は3分割以上であれば特に限定されない。また、各サブ波長構造領域の光学軸方向は、予め決定された分割した方向に沿ったものに限定されず、任意の方向に設定されてもよい。なお、溝の配列方向である光学軸方向は双方向に向かうものであるので、光学軸方向は0度から180度の範囲内とすることができる。
【0062】
図6,7を参照して実施例の説明を続ける。
光学素子1において、隣り合っており、間に第2サブ波長構造領域9が配置されていない第1サブ波長構造領域7同士は、それらの第1サブ波長構造領域7の光学軸方向がなす角度が90度未満になるように光学軸方向が設定されている。ここで、隣り合う第1サブ波長構造領域7同士の光学軸方向がなす角度は、好ましくは67.5度以下、さらに好ましくは45度以下、さらに好ましくは22.5度以下である。
【0063】
ところで、隣り合うサブ波長構造領域間の位相差が最も大きくなるのは隣り合うサブ波長構造領域の光学軸方向がなす角度が90度の場合である。隣り合うサブ波長構造領域同士の光学軸方向がなす角度がなるべく小さい方が、隣り合うサブ波長構造領域間の位相差は小さくなる。
【0064】
光学素子1において、第2サブ波長構造領域9の光学軸方向は、ある第1サブ波長構造領域7から隣の第1サブ波長構造領域7にわたって光学軸方向がゆるやかに変化するように又は光学軸方向が変化しないように設定されている。つまり、光学素子1において、第2サブ波長構造領域9の周囲には、隣り合うサブ波長構造領域の光学軸方向がなす角度が90度になっている箇所は存在しない。また、第1サブ波長構造領域7同士が隣り合っている箇所においても、隣り合う第1サブ波長構造領域7の光学軸方向がなす角度が90度になっている箇所は存在しない。したがって、光学素子1は、透過する光の回折光の発生を低減でき、光の透過率を向上させることができる。
【0065】
なお、図6,7の光学素子1では、隣り合う第1サブ波長構造領域7同士、隣り合う第1サブ波長構造領域7と第2サブ波長構造領域9、又は隣り合う第2サブ波長構造領域9同士において、光学軸方向がなす角度は、最大で約38.6度(=90度÷7×3)である。
【0066】
また、図7では、ある第1サブ波長構造領域7と、その第1サブ波長構造領域7と同じ光学軸方向をもち、その第1サブ波長構造領域7と隣り合っているサブ波長構造領域は、1つの第1サブ波長構造領域7とされている。
【0067】
図9は、光学素子のさらに他の実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。図10は、図9に示されたサブ波長構造領域の配列における第1サブ波長構造領域と第2サブ波長構造領域の位置を示した平面図である。
【0068】
図9,8に示された各サブ波長構造領域7,9の光学軸方向は、例えば180度を8分割した方向のいずれかの方向をもつように設定されている。例えば、サブ波長構造領域7,9の光学軸方向は、X軸に対して反時計回りに0度(180度)、22.5度、45度、67.5度、90度、112.5度、135度、157.5度のいずれかである。
【0069】
図9に示されたサブ波長構造の配置について、第1サブ波長構造領域7は、図8を参照して説明した第1サブ波長構造領域を特定する方法と同様にして特定され得る(図10を参照。)。
【0070】
隣り合う第1サブ波長構造領域7同士、隣り合う第2サブ波長構造領域9同士、及び隣り合う第1サブ波長構造領域7と第2サブ波長構造領域9において、光学軸方向がなす角度が90度になっている箇所は存在しない。したがって、光学素子1は、透過する光の回折光の発生を低減でき、光の透過率を向上させることができる。
【0071】
なお、図9,10の光学素子1では、隣り合う第1サブ波長構造領域7同士、隣り合う第1サブ波長構造領域7と第2サブ波長構造領域9、又は隣り合う第2サブ波長構造領域9同士において、光学軸方向がなす角度は、最大で67.5度である。
【0072】
以上、本発明の実施例が説明されたが、材料、形状、配置、寸法等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 光学素子
3 基板
5 溝
7 第1サブ波長構造領域
9 第2サブ波長構造領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10