(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441049
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】外壁パネルの固定構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/90 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
E04B2/90
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-241321(P2014-241321)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-102338(P2016-102338A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 潔
(72)【発明者】
【氏名】市岡 大幸
【審査官】
小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−106214(JP,U)
【文献】
特開平10−008602(JP,A)
【文献】
特開2000−008481(JP,A)
【文献】
実開昭51−002005(JP,U)
【文献】
特開2014−125776(JP,A)
【文献】
特開平06−101296(JP,A)
【文献】
米国特許第05067292(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/88− 2/96
E04B 2/56
E04B 2/58
E04B 2/61
E04F 13/00−13/30
F16B 21/00−21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有した留め部材が固定されており、上記切欠き部の周囲には、突縁部が設けられており、上記首部が上記切欠き部に係合されるとともに上記突縁部が上記頭部の裏側に当接されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁パネルの固定構造において、上記突縁部の上部は上側ほど突出高さが低い傾斜部とされていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の外壁パネルの固定構造において、上記留め部材が上記構造躯体としての建物基礎上に固定されており、上記留め部材の上辺に上記切欠き部の開口が形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の外壁パネルの固定構造において、上記留め部材が上記構造躯体としての横架材の上面に固定されており、上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成されており、上記貫通孔部の下側に上記突縁部を有する上記切欠き部が形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の外壁パネルの固定構造において、上記留め部材が上記構造躯体としての柱構成部材の縦面に固定されており、上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成されており、上記貫通孔部の下側に上記突縁部を有する上記切欠き部が形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項6】
請求項3に記載の外壁パネルの固定構造において、上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下側となる箇所に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たる凸部が形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項7】
請求項4に記載の外壁パネルの固定構造において、上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下側となる箇所と上側となる箇所の両方に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たる凸部が形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項8】
請求項4または請求項7に記載の外壁パネルの固定構造において、上記留め部材の上辺部には、上記首部の嵌りを防止する嵌り防止片部が設けられていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項9】
外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有する留め部材が固定されており、
上記留め部材が上記構造躯体としての建物基礎上に固定されており、
上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下側となる箇所に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たるリブ部による凸部が形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項10】
外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有する留め部材が固定されており、
上記留め部材が上記構造躯体としての横架材の上面に固定されており、
上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成され、当該貫通孔部の下部側に上記切欠き部が形成されており、
上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下側となる箇所と上側となる箇所の両方に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たるリブ部による凸部が形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項11】
外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有する留め部材が固定されており、
上記留め部材が上記構造躯体としての横架材の上面に固定されており、
上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成され、当該貫通孔部の下部側に上記切欠き部が形成されており、
上記留め部材の上辺部には、上記首部の長さよりも広くされた幅を有し上記頭部が当たることで上記首部の嵌りを防止する嵌り防止片部が設けられていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造として、上記外壁パネルの上部と下部の各々にボルト部を設け、上記構造躯体側の固定金物に形成した貫通孔に上記ボルト部を通し、ナットによって上記ボルト部を締め付ける構造が考えられる。
【0003】
また、特許文献1には、建築物の構造躯体に固定される断面略L字形の下地鋼材に対し、壁パネル裏面を下地鋼材との間に一定の間隔を有するように平行に配し、壁パネル裏面の幅方向略中心部に取り付けられた取付金具の鉛直方向に配した当接部を、下地鋼材の鉛直片の壁パネル側の面に当接させて固定する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-293833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、上記外壁パネルの上部と下部の各々に設けられたボルト部によって当該外壁パネルを躯体に固定するのでは、ボルトとナットによる固定の箇所が多くなって作業時間が増加し、さらに、ナットを装着する箇所が狭いと、作業が難しくなるといった欠点がある。また、上記特許文献1の技術は、いわゆる引っ掛けの構造によって外壁パネルを固定できるものの、外壁パネルの上側でボルトとナットによる固定を行う一方、外壁パネルの下部側で引っ掛け固定が行われるものではない。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、外壁パネルの上部側でボルトとナットによる固定が行え、外壁パネルの下部側で引っ掛け固定とすることができるようにする。また、上記外壁パネルの設置作業の容易化や外壁パネルが受ける風荷重の対策を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の外壁パネルの固定構造は、上記の課題を解決するために、外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有した留め部材が固定されており、上記切欠き部の周囲には、突縁部が設けられており、上記首部が上記切欠き部に係合されるとともに上記突縁部が上記頭部の裏側に当接されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記係合凸部の上記首部を上記切欠き部に係合させることで上記外壁パネルの下部側が上記留め部材に引っ掛けられ、上記突縁部が上記頭部の裏側に当接されて上記留め部材による上記外壁パネルの下部側の固定が行われる。上記外壁パネルの上部側については、ボルトとナットとによる固定とすることが可能である。
【0009】
上記突縁部の上部は上側ほど突出高さが低い傾斜部とされていてもよい。これによれば、建築現場で吊り上げた外壁パネルを少しずつ降下させながら上記係合凸部の首部を上記切欠き部に係合させる際に、当該外壁パネルがその下部側ほど建物躯体に近い傾斜状態にされたとしても、上記突縁部の上部には、上記傾斜部が形成されているので、上記頭部の下縁の当たりを防ぎながら上記首部を上記切欠き部に導入する作業が容易に行えるようになる。そして、上記吊り上げた外壁パネルをさらに降下させることで、上記突縁部の非傾斜部分を上記頭部の裏側に接触させてパネル下部側の固定状態を形成することができる。
【0010】
上記留め部材が上記構造躯体としての建物基礎上に固定されており、上記留め部材の上辺に上記切欠き部の開口が形成されていてもよい。これによれば、上記係合凸部の首部を上記切欠き部に係合させる作業が容易に行える。
【0011】
上記建物基礎上に固定される上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下側となる箇所に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たる凸部が形成されていてもよい。これによれば、上記留め部材が上記建物基礎上に固定される構造において、上記外壁パネルが風荷重を受けたときの対策が図れる。
【0012】
上記留め部材が上記構造躯体としての横架材の上面に固定されており、上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成されており、上記貫通孔部の下側に上記突縁部を有する上記切欠き部が形成されていてもよい。
【0013】
上記横架材の上面に固定される上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下側となる箇所と上側となる箇所の両方に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たる凸部が形成されていてもよい。これによれば、上記留め部材が上記横架材の上面に固定される構造において、上記外壁パネルが風荷重を受けたときの対策が図れる。
【0014】
上記横架材の上面に固定される留め部材の上辺部には、上記首部の嵌りを防止する嵌り防止片部が設けられていてもよい。これによれば、現場で吊り上げた外壁パネルを少しずつ降下させながら上記係合凸部の首部を上記切欠き部に嵌めようとする際に、上記首部が誤って上記留め部材の上辺部に引っ掛かってしまうという事態を防止できる。
【0015】
上記留め部材が上記構造躯体としての柱構成部材の縦面に固定されており、上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成されており、上記貫通孔部の下部側に上記突縁部を有する上記切欠き部が形成されていてもよい。
【0016】
また、この発明の外壁パネルの固定構造は、外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有する留め部材が固定されており、上記留め部材が上記構造躯体としての建物基礎上に固定されており、上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下部側となる箇所に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たる凸部が形成されていることを特徴とする。これによれば、上記留め部材が上記建物基礎上に固定される構造において、上記外壁パネルが風荷重を受けたときの対策が図れる。
【0017】
また、この発明の外壁パネルの固定構造は、外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有する留め部材が固定されており、上記留め部材が上記構造躯体としての横架材の上面に固定されており、上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成され、当該貫通孔部の下部側に上記切欠き部が形成されており、上記留め部材には、上記切欠き部に係合される上記首部よりも下側となる箇所と上側となる箇所の両方に、上記外壁パネルの下部の屋内面に当たる凸部が形成されていることを特徴とする。これによれば、上記留め部材が上記横架材の上面に固定される構造において、上記外壁パネルが風荷重を受けたときの対策が図れる。
【0018】
また、この発明の外壁パネルの固定構造は、外壁パネルを建物の構造躯体に固定する固定構造において、上記外壁パネルの下部側には、首部の先端側に当該首部より大きな頭部を有する係合凸部が設けられており、上記構造躯体には、上記係合凸部が係合される切欠き部を有する留め部材が固定されており、上記留め部材が上記構造躯体としての横架材の上面に固定されており、上記留め部材には、上記係合凸部の上記頭部が挿通できる大きさの貫通孔部が形成され、当該貫通孔部の下部側に上記切欠き部が形成されており、上記留め部材の上辺部には、上記首部の嵌りを防止する嵌り防止片部が設けられていることを特徴とする。これによれば、現場で吊り上げた外壁パネルを少しずつ降下させながら上記係合凸部の首部を上記切欠き部に嵌めようとする際に、上記首部が誤って上記留め部材の上辺部に引っ掛かってしまうという事態を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明であれば、外壁パネルの上部側ではボルトとナットによる固定を可能とし、外壁パネルの下部側では引っ掛け固定とすることができる。また、上記外壁パネルの設置作業の容易化や外壁パネルが受ける風荷重の対策が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施形態の外壁パネルの固定構造を示した概略図であり、同図(A)は平面図であり、同図(B)は側面図であり、同図(C)は正面図である。
【
図2】
図1の外壁パネルの固定構造における外壁パネルの設置作業例の説明図である。
【
図3】この発明の実施形態にかかる外壁パネルの固定構造の柱部での設置例を示した図であり、同図(A)は平面図であり、同図(B)は正面図であり、同図(C)は側面図である。
【
図4】この発明の実施形態にかかる外壁パネルの固定構造の柱部基礎上での設置例を示した図であり、同図(A)は平面図であり、同図(B)は正面図であり、同図(C)は側面図である。
【
図5】この発明の実施形態にかかる外壁パネルの固定構造の梁部での設置例を示した図であり、同図(A)は平面図であり、同図(B)は正面図であり、同図(C)は側面図である。
【
図6】この発明の実施形態にかかる外壁パネルの固定構造の基礎上での設置例を示した図であり、同図(A)は平面図であり、同図(B)は正面図であり、同図(C)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)に示すように、外壁パネル1は、例えば、断面略コ字形状の2本の縦フレーム部1aと、同じく断面略コ字形状の2本の横フレーム部1bとが接合された四角枠形の外壁パネルフレームを備えている。そして、上記外壁パネル1における上記縦フレーム部1aと上記横フレーム部1bとが重なる上側の両角部分には、例えば、両切りボルトが屋内方向に突出して設けられている。
【0022】
また、上記外壁パネル1における上記縦フレーム部1aと上記横フレーム部1bとが重なる下側の両角部分には、係合凸部2が固定されている。この係合凸部2は、上記外壁パネルフレームから屋内方向に最も離れて位置する頭部21と、当該頭部21を支持する首部22と、上記頭部から離間し、外壁パネルフレームに接する鍔部23とを有しており、上記外壁パネルフレームの内側に設けられたナット24によって上記外壁パネル1に固定されている。上記頭部21、上記首部22および上記鍔部23はそれぞれ断面円形状を有しており、上記頭部21および上記鍔部23の直径は上記首部22の直径よりも大きくされている。
【0023】
また、建物の構造躯体4には、上記係合凸部2が係合される留め部材3が固定されている。上記留め部材3は、例えば、断面略L字形に形成されており、その鉛直板部の上辺側には、開口が上に向けられた切欠き部31が形成されている。上記切欠き部31の開口の幅は、上記首部22の直径よりも大きくされており、上記頭部21および上記鍔部23の直径よりも小さくされている。また、上記切欠き部31の下部側(閉鎖側)は半円形を有しており、その下端には例えば幅2mm程度の水平部31aが形成されている。上記水平部31aが形成されていると、外壁パネル1の取り付けで、当該外壁パネル1と上記留め部材3との間に水平方向に2mm以内のずれが生じたとしても、当該外壁パネル1の高さ方向にはずれが生じないという利点が得られる。上記水平部31aの幅は2mmに限定されず、柱立てで要求される鉛直度の許容範囲により変更できる。
【0024】
上記留め部材3は、金属板に対してプレスや打ち抜きの加工を行うことで作製される。上記切欠き部31の周囲には、バーリング加工によってバーリング部(突縁部)32が設けられている。そして、上記首部22が上記切欠き部31に係合された状態で上記バーリング部32が上記頭部21の裏面に当接される。上記留め部材3における板厚を含めた上記バーリング部32の箇所の厚さは、上記頭部21の裏面から上記鍔部23の表面までの距離と同じか僅かに小さくされる。
【0025】
このような固定構造であれば、上記係合凸部2の上記首部22を上記切欠き部31に係合させることで上記外壁パネル1の下部側が上記留め部材3に引っ掛けられ、上記バーリング部32が上記頭部21の裏側に当接されて上記留め部材3による上記外壁パネル1の下部側の固定が行われる。上記外壁パネル1の上部側の固定については、上記留め部材3に上記外壁パネル1の下部側を係止させた後、上記両切りボルトの突出部を図示しない固定金物の貫通孔に通してナットを螺合させることにより行える。
【0026】
上記バーリング部32の上部(上記切欠き部31の開口側)には、上側ほど突出高さが低い傾斜部32aが形成されている。換言すれば、上記切欠き部31の開口側から閉鎖側へ向かって徐々にバーリング高さが増すように上記傾斜部32aが形成されている。上記傾斜部32aの下端(終端)位置は、例えば、上記切欠き部31に係合された上記首部22の上面の位置と同程度とされる。
【0027】
上記傾斜部32aが形成されていると、
図2に示すように、建築現場で吊り上げた外壁パネル1を少しずつ降下させながら上記係合凸部2の首部22を上記切欠き部31に嵌める際に、当該外壁パネル1がその下部側ほど建物躯体に近い傾斜状態にされたとしても、上記バーリング部32の上部には、上記傾斜部32aが形成されているので、上記頭部21の下縁の当たりを防ぎながら上記首部22を上記切欠き部31に導入する作業が容易に行える。そして、上記吊り上げた外壁パネル1をさらに降下させることで、上記バーリング部32の非傾斜部分を上記頭部21の裏側に接触させてパネル下部側の固定状態を形成することができる。
【0028】
図3(A)は、2階側の柱接合材(柱構成部材)41への外壁パネルの固定構造を示した概略の平面図であり、
図3(B)は同正面図であり、
図3(C)は側面図である。留め部材3Aは、上記柱接合材41の縦面に固定されている。上記留め部材3Aは、鉛直板部の上辺部、下辺部および左右辺部の各々が屋内側に曲げられた形状を有しており、上記上辺部および下辺部が上記柱接合材41に溶接により固定されている。そして、上記留め部材3Aの上記鉛直板部には、上記係合凸部2の上記頭部21が挿通できる大きさの貫通孔部34が形成されており、上記貫通孔部34の下部側に上記傾斜部32a付きの上記バーリング部32を有する上記切欠き部31が形成されている。
【0029】
上記留め部材3Aには、上記切欠き部31が左右に2箇所設けられている。これにより、隣り合う2枚の外壁パネル1の各々の係合凸部2を1個の留め部材3Aで支持することができる。後述する留め部材3B、3Cについても同様である。
【0030】
図4(A)は、建物基礎6上の柱脚部(柱構成部材)42への外壁パネルの固定構造を示した概略の平面図であり、
図4(B)は同正面図であり、
図4(C)は側面図である。この固定構造においても、上記留め部材3Aが上記柱脚部42の縦面に固定されている。
【0031】
図5(A)は、H型鋼からなる梁(横架材)43側での外壁パネルの固定構造を示した概略の平面図であり、
図5(B)は同正面図であり、
図5(C)は側面図である。留め部材3Bは、鉛直板部の上辺部、下辺部および左右辺部の各々が屋内側に曲げられた形状を有しており、上記下辺部が上記梁43のフランジ部にボルト・ナット5によって固定されている。そして、上記留め部材3Bの鉛直板部には、上記頭部21が挿通できる大きさの貫通孔部34が形成されており、上記貫通孔部34の下部側に上記傾斜部32a付きの上記バーリング部32を有する上記切欠き部31が形成されている。
【0032】
上記留め部材3Bの上記鉛直板部には、上記切欠き部31に係合される上記首部22よりも下側となる箇所に、水平方向に長いリブ部(凸部)35が形成されている。さらに、上記切欠き部31に係合される上記首部22よりも上側となる箇所にも、水平方向に長いリブ部(凸部)36が形成されている。上記リブ部35およびリブ部36は、上記留め部材3Bの鉛直板部をプレス加工することにより形成することができる。上記リブ部35およびリブ部36により、上記鍔部23によって生じる外壁パネルフレームと上記留め部材3Aにおける鉛直板部との間の隙間が埋められる。
【0033】
ここで、上記外壁パネル1に、当該外壁パネル1を屋内側に押す風荷重が加わると、上記留め部材3Bを上記梁43のフランジ部から浮かす方向の力が生じ、上記フランジ部が上方向に曲げられようとする。仮に、上記リブ部35が無いとすると、上記隙間分に相当する上記留め部材3Bの浮きが生じ、上記フランジ部に上方向の曲がりが発生するおそれがある。これに対し、上記リブ部35によって上記隙間が埋められていると、上記留め部材3Bを上記梁43のフランジ部から引き剥がす方向の力は発生し難くなり、上記フランジ部の曲がりを防止できる。
【0034】
同様に、上記外壁パネル1に、当該外壁パネル1を屋外側に引く風荷重が加わると、上記留め部材3Bが上記梁43のフランジ部を下に押す方向の力が生じ、上記フランジ部が下方向に曲げられようとする。仮に、上記リブ部36が無いとすると、上記隙間分に相当する上記留め部材3Bによる下方への押さえが生じ、上記フランジ部の下方向の曲がりが発生するおそれがある。これに対し、上記リブ部36によって上記隙間が埋められていると、上記留め部材3Bが上記梁43のフランジ部を下に押す方向の力が発生し難くなり、上記フランジ部の曲がりを防止できる。
【0035】
このように、上記ボルト・ナット5に対しては、極力剪断力だけが作用するようになり、上記フランジ部を厚くしたり、補強プレートを溶接するなどの高コスト化の要因を排除できるようになる。
【0036】
また、上記留め部材3Bの鉛直板部の上辺部には、上記首部22の嵌りを防止する嵌り防止片部37が設けられている。この嵌まり防止片部37は、上記留め部材3Bの鉛直板部の上辺部を略水平方向に曲げ加工することにより形成されている。上記嵌まり防止片部37の幅(屋内側への曲げ量)は、上記首部22の長さよりも広くされている。上記嵌まり防止片部37が設けられていると、現場で吊り上げた外壁パネルを少しずつ降下させながら上記係合凸部2の首部22を上記切欠き部31に嵌めようとする際に、上記首部22が上記留め部材3Bの上辺部(嵌まり防止片部37)に引っ掛かってしまうという事態を防止できる。上記係合凸部2が上記嵌まり防止片部37の上に載ったときには外壁パネル1を屋外側にずらすだけで上記係合凸部2の上記載った状態を解消することができる。
【0037】
図6(A)は、建物基礎6上への外壁パネルの固定構造を示した概略の平面図であり、
図6(B)は同正面図であり、
図6(C)は側面図である。留め部材3Cは、鉛直板部の下辺部および左右辺部の各々が屋内側に曲げられた形状を有しており、下辺部に形成された貫通孔に上記建物基礎6のアンカーボルト61が挿通され、当該アンカーボルト61に螺合されたナット62によって固定されている。上記アンカーボルト61の挿通位置は、上記留め部材3Cの水平方向中央位置よりも屋内側に寄っている。そして、上記留め部材3Cの上記鉛直板部の上辺部に上記傾斜部32a付きの上記バーリング部32を有する上記切欠き部31が形成されている。
【0038】
上記留め部材3Cの上記鉛直板部には、上記切欠き部31に係合される上記首部22よりも下側となる箇所に、水平方向に長いリブ部(凸部)38が形成されている。上記リブ部38は、上記留め部材3Cの上記鉛直板部をプレス加工することにより形成されている。上記リブ部38により、上記鍔部23によって生じる外壁パネルフレームと上記留め部材3Cの上記鉛直板部との間の隙間のうちの下側の隙間が埋められる。
【0039】
ここで、上記外壁パネル1に、当該外壁パネル1を屋内側に押す風荷重が加わると、上記留め部材3Cを建物基礎6から浮かす方向の力が生じ、上記アンカーボルト61に剪断以外の力が加わる。仮に、上記リブ部38が無いとすると、上記隙間分に相当する上記留め部材3Cの浮きが生じるおそれがある。これに対し、上記リブ部38によって上記隙間が埋められていると、上記留め部材3Cを上記梁43の上記建物基礎6から浮かす方向の力の発生を防止できる。
【0040】
なお、上記外壁パネル1に、当該外壁パネル1を屋外側に引く風荷重が加わると、上記留め部材3Cが上記建物基礎6を押す方向に力が生じるが、上記建物基礎6が変形することはない。したがって、上記切欠き部31に係合される係合凸部2の上記首部22よりも上側となる箇所に凸部を設ける必要は特にない。
【0041】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 外壁パネル
2 係合凸部
21 頭部
22 首部
23 鍔部
3、3A、3B、3C 留め部材
31 切欠き部
32 バーリング部(突縁部)
32a 傾斜部
35 リブ部(凸部)
36 リブ部(凸部)
37 嵌り防止片部
38 リブ部(凸部)
4 構造躯体
41 柱接合材(柱構成部材)
42 柱脚材(柱構成部材)
43 梁(横架材)
6 建物基礎