(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出力部の回転中心軸と前記回転中心軸周りに前記出力部を回転させるクランク組立体の伝達回転軸との間の距離関係において、他のもう1つの減速機とは相違する減速機の設計方法であって、
前記クランク組立体として、第1クランク組立体を設計する第1設計工程と、
前記回転中心軸として規定される第1主軸周りに回転する第1出力部を設計する第2設計工程と、を備え、
前記他のもう1つの減速機は、前記回転中心軸として規定される第2主軸から第2距離だけ離間した前記伝達回転軸として規定される第2伝達軸周りに回転運動を行うことによって、前記第2主軸周りに第2出力部を回転させる第2クランク組立体を有し、
前記第2クランク組立体は、前記第2伝達軸周りに回転する第2伝達歯車と、前記第2伝達歯車が取り付けられる第2クランク軸と、を含み、
前記第1設計工程は、モジュール及び転位係数において、前記第2伝達歯車と一致する第1伝達歯車を設計する段階を含み、
前記第2設計工程は、前記モジュールと前記転位係数とから前記第1主軸と前記伝達回転軸として規定される第1伝達軸との間の第1距離を決定する段階を含み、
前記第1距離は、前記第2距離とは相違する
減速機の設計方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して、減速機の設計の労力の軽減に貢献する技術に関する様々な実施形態が説明される。
【0023】
<第1実施形態>
従来の設計技術では、設計者が、所定の減速比で回転する出力部の回転中心軸と、出力部へ駆動力を伝達するクランク組立体と、の間の距離関係において互いに相違する複数の減速機を設計するとき、設計者は、複数の減速機それぞれに専用の伝達歯車を設計している。この結果、膨大な種類の伝達歯車が作成されることとなっている。本発明者等は、様々な減速機の設計を研究し、出力部の回転中心軸とクランク組立体との間の距離において相違する複数の減速機に対して、モジュール及び転位係数において一致する伝達歯車が適用可能であることを見出した。第1実施形態において、モジュール及び転位係数において一致する伝達歯車が組み込まれた2つの減速機が説明される。
【0024】
(減速機の構造)
図1A及び
図1Bは、例示的な減速機100を示す。
図1Aは、減速機100の概略的な断面図である。
図1Bは、減速機100の側面図である。
図1A及び
図1Bを参照して、減速機100が説明される。
【0025】
減速機100は、筐体筒200と、歯車部300と、3つのクランク組立体400(
図1Bを参照:
図1Aは、3つのクランク組立体400のうち1つを示す)と、を備える。筐体筒200は、歯車部300と、3つのクランク組立体400と、を収容する。本実施形態において、第1減速機は、減速機100によって例示される。
【0026】
筐体筒200は、外筒部210と、キャリア部220と、2つの主軸受230と、を含む。キャリア部220は、外筒部210内に配置される。2つの主軸受230は、外筒部210とキャリア部220との間に配置される。2つの主軸受230は、外筒部210と、キャリア部220と、の間の相対的な回転運動を可能にする。本実施形態において、第1出力部は、外筒部210及びキャリア部220のうち一方によって例示される。
【0027】
図1Aは、2つの主軸受230の回転中心軸として規定される主軸FMXを示す。外筒部210及びキャリア部220は、主軸FMXを取り囲む。外筒部210が固定されているならば、キャリア部220は、主軸FMX周りに回転する。キャリア部220が固定されているならば、外筒部210は、主軸FMX周りに回転する。すなわち、外筒部210及びキャリア部220のうち一方は、外筒部210及びキャリア部220のうち他方に対して、主軸FMX周りに相対的に回転することができる。本実施形態において、第1主軸は、主軸FMXによって例示される。
【0028】
設計者は、外筒部210に様々な形状を与えることができる。したがって、本実施形態の原理は、外筒部210の特定の形状に限定されない。
【0029】
設計者は、キャリア部220に様々な形状を与えることができる。したがって、本実施形態の原理は、キャリア部220の特定の形状に限定されない。
【0030】
外筒部210は、外筒211と、複数の内歯ピン212と、を含む。外筒211は、キャリア部220、歯車部300及びクランク組立体400が収容される円筒状の内部空間を規定する。各内歯ピン212は、主軸FMXに略平行に延びる円柱状の部材である。各内歯ピン212は、外筒211の内壁に形成された溝部に嵌入される。したがって、各内歯ピン212は、外筒211によって適切に保持される。
【0031】
複数の内歯ピン212は、主軸FMX周りに略一定間隔で配置される。各内歯ピン212の半周面は、外筒211の内壁から主軸FMXに向けて突出する。したがって、複数の内歯ピン212は、歯車部300と噛み合う内歯として機能する。
【0032】
キャリア部220は、基部221と、端板部222と、位置決めピン223と、固定ボルト224と、を含む。キャリア部220は、全体的に、円筒形状をなす。基部221は、基板部225と、3つのシャフト部226(
図1Aには、3つのシャフト部226のうち1つが示されている)と、を含む。3つのシャフト部226それぞれは、基板部225から端板部222に向けて延びる。3つのシャフト部226それぞれの先端面には、ネジ孔及びリーマ孔が形成される。位置決めピン223は、リーマ孔へ挿入される。この結果、端板部222は、基部221に対して精度よく位置決めされる。固定ボルト224は、ネジ孔に螺合する。この結果、端板部222は、基部221に適切に固定される。
【0033】
歯車部300は、基板部225と端板部222との間に配置される。3つのシャフト部226は、歯車部300を貫通し、端板部222に接続される。
【0034】
歯車部300は、2つの歯車310,320を含む。歯車310は、基板部225と歯車320との間に配置される。歯車320は、端板部222と歯車310との間に配置される。
【0035】
歯車310は、形状及び大きさにおいて、歯車320と略等しい。歯車310,320は、内歯ピン212に噛み合いながら、外筒211内を周回移動する。したがって、歯車310,320の中心は、主軸FMX周りを周回する揺動運動を行う。
【0036】
歯車310の周回位相は、歯車320の周回位相から略180°ずれている。歯車310は、外筒部210の複数の内歯ピン212のうち半数に噛み合う間、歯車320は、複数の内歯ピン212のうち残りの半数に噛み合う。したがって、歯車部300は、外筒部210又はキャリア部220を回転させることができる。
【0037】
本実施形態において、歯車部300は、2つの歯車310,320を含む。代替的に、設計者は、歯車部として、2を超える数の歯車を用いてもよい。更に代替的に、設計者は、歯車部として、1つの歯車を用いてもよい。
【0038】
3つのクランク組立体400それぞれは、クランク軸410と、4つの軸受421,422,423,424と、伝達歯車430と、を含む。伝達歯車430は、一般的なスパーギアであってもよい。代替的に、伝達歯車430は、他の種類の歯車であってもよい。本実施形態の原理は、伝達歯車430の特定の種類に限定されない。
【0039】
図1Aは、伝達軸FTXを示す。伝達軸FTXは、主軸FMXに対して略平行である。クランク軸410は、伝達軸FTX周りに回転する。
図1Aは、伝達軸FTXと主軸FMXとの間の距離を記号「L1」で示す。本実施形態において、第1クランク組立体は、3つのクランク組立体400のうち1つによって例示される。第1伝達軸は、伝達軸FTXによって例示される。第1距離は、距離L1によって例示される。
【0040】
図1Bは、主軸FMXを中心にして描かれた仮想円PC1を示す。仮想円PC1の半径は、
図1Aを参照して説明された距離L1に等しい。3つのクランク軸410それぞれに対応する3つの伝達軸FTXは、仮想円PC1上に位置する。
【0041】
クランク軸410は、2つのジャーナル411,412と、2つの偏心部413,414と、を含む。ジャーナル411,412は、伝達軸FTXに沿って延びる。ジャーナル411,412の中心軸は、伝達軸FTXに一致する。ジャーナル411,412は、伝達軸FTX周りに回転する。偏心部413,414は、ジャーナル411,412間に形成される。偏心部413,414それぞれは、伝達軸FTXから偏心している。本実施形態において、第1クランク軸は、クランク軸410によって例示される。
【0042】
ジャーナル411は、軸受421に挿入される。軸受421は、ジャーナル411と端板部222との間に配置される。したがって、ジャーナル411は、端板部222と軸受421とによって支持される。伝達歯車430は、ジャーナル411に取り付けられる。したがって、伝達歯車430は、ジャーナル411とともに、伝達軸FTX周りに回転することができる。本実施形態において、第1伝達歯車は、伝達歯車430によって例示される。
【0043】
ジャーナル412は、軸受422に挿入される。軸受422は、ジャーナル412と基部221との間に配置される。したがって、ジャーナル412は、基部221と軸受422とによって支持される。
【0044】
偏心部413は、軸受423に挿入される。軸受423は、偏心部413と歯車310との間に配置される。偏心部414は、軸受424に挿入される。軸受424は、偏心部414と歯車320との間に配置される。
【0045】
図1Aは、中央ギアシャフトGS1を示す。中央ギアシャフトGS1は、主軸FMX周りに回転する。中央ギアシャフトGS1は、駆動源(モータ)の一部であってもよい。代替的に、駆動源とは別異に形成された部材であってもよい。本実施形態の原理は、中央ギアシャフトGS1の特定の構造に限定されない。
【0046】
中央ギアシャフトGS1は、3つの伝達歯車430それぞれに噛み合う。この結果、駆動源が生成した駆動力は、中央ギアシャフトGS1から3つの伝達歯車430それぞれに伝達される。伝達歯車430に駆動力が入力されると、クランク軸410は、伝達軸FTX周りに回転する。この結果、偏心部413,414は、伝達軸FTX周りに偏心回転する。クランク軸410は、軸受423,424を介して、歯車310,320へ駆動力を伝達する。軸受423,424を介して偏心部413,414に接続された歯車310,320は、外筒部210によって規定された円形空間内で揺動する。歯車310,320は、内歯ピン212に噛み合うので、外筒部210とキャリア部220との間で相対的な回転運動が引き起こされる。
【0047】
(他のもう1つの減速機)
設計者は、
図1A及び
図1Bを参照して説明された減速機100の設計原理に基づいて、主軸と伝達軸との間の距離において相違する他のもう1つの減速機を設計することができる。
【0048】
図2A及び
図2Bは、
図1A及び
図1Bを参照して説明された設計原理に基づいて構築された他のもう1つの減速機100Aを示す。
図2Aは、減速機100Aの概略的な断面図である。
図2Bは、減速機100Aの側面図である。
図1A乃至
図2Bを参照して、減速機100Aが説明される。
【0049】
減速機100Aは、筐体筒200Aと、歯車部300Aと、3つのクランク組立体400A(
図2Bを参照:
図2Aは、3つのクランク組立体400Aのうち1つを示す)と、を備える。筐体筒200Aは、歯車部300Aと、クランク組立体400Aと、を収容する。本実施形態において、第2減速機は、減速機100Aによって例示される。
【0050】
筐体筒200Aは、外筒部210Aと、キャリア部220Aと、2つの主軸受230Aと、を含む。キャリア部220Aは、外筒部210A内に配置される。2つの主軸受230Aは、外筒部210Aとキャリア部220Aとの間に配置される。2つの主軸受230Aは、外筒部210Aと、キャリア部220Aと、の間の相対的な回転運動を可能にする。本実施形態において、第2出力部は、外筒部210A及びキャリア部220Aのうち一方によって例示される。
【0051】
図2Aは、2つの主軸受230Aの回転中心軸として規定される主軸SMXを示す。外筒部210Aが固定されているならば、キャリア部220Aは、主軸SMX周りに回転する。キャリア部220Aが固定されているならば、外筒部210Aは、主軸SMX周りに回転する。すなわち、外筒部210A及びキャリア部220Aのうち一方は、外筒部210A及びキャリア部220Aのうち他方に対して、主軸SMX周りに相対的に回転することができる。本実施形態において、第2主軸は、主軸SMXによって例示される。
【0052】
設計者は、外筒部210Aに様々な形状を与えることができる。したがって、本実施形態の原理は、外筒部210Aの特定の形状に限定されない。
【0053】
設計者は、キャリア部220Aに様々な形状を与えることができる。したがって、本実施形態の原理は、キャリア部220Aの特定の形状に限定されない。
【0054】
外筒部210Aは、外筒211Aと、複数の内歯ピン212Aと、を含む。減速機100A内の内歯ピン212Aは、減速機100内の内歯ピン212よりも多くてもよい。外筒211Aは、キャリア部220A、歯車部300A及びクランク組立体400Aが収容される円筒状の内部空間を規定する。各内歯ピン212Aは、主軸SMXに略平行に延びる円柱状の部材である。各内歯ピン212Aは、外筒211Aの内壁に形成された溝部に嵌入される。したがって、各内歯ピン212Aは、外筒211Aによって適切に保持される。
【0055】
複数の内歯ピン212Aは、主軸SMX周りに略一定間隔で配置される。各内歯ピン212Aの半周面は、外筒211Aの内壁から主軸SMXに向けて突出する。したがって、複数の内歯ピン212Aは、歯車部300Aと噛み合う内歯として機能する。
【0056】
キャリア部220Aは、基部221Aと、端板部222Aと、を含む。キャリア部220Aは、全体的に、円筒形状をなす。基部221Aは、基板部225Aと、3つのシャフト部226A(
図2Aには、3つのシャフト部226Aのうち1つが示されている)と、を含む。シャフト部226Aは、基板部225Aから端板部222Aに向けて延びる。減速機100Aと同様に、端板部222Aは、ネジ及びピンによって、シャフト部226Aの先端面に固定されてもよい。
【0057】
歯車部300Aは、基板部225Aと端板部222Aとの間に配置される。シャフト部226Aは、歯車部300Aを貫通し、端板部222Aに接続される。
【0058】
歯車部300Aは、2つの歯車310A,320Aを含む。歯車310Aは、基板部225Aと歯車320Aとの間に配置される。歯車320Aは、端板部222Aと歯車310Aとの間に配置される。
【0059】
歯車310Aは、形状及び大きさにおいて、歯車320Aと同様である。歯車310A,320Aは、内歯ピン212Aに噛み合いながら、外筒211A内を周回移動する。したがって、歯車310A,320Aの中心は、主軸SMX周りを周回することとなる。
【0060】
歯車310Aの周回位相は、歯車320Aの周回位相から略180°ずれている。歯車310Aは、外筒部210Aの複数の内歯ピン212Aのうち半数に噛み合う間、歯車320Aは、複数の内歯ピン212Aのうち残りの半数に噛み合う。したがって、歯車部300Aは、外筒部210A又はキャリア部220Aを回転させることができる。
【0061】
本実施形態において、歯車部300Aは、2つの歯車310A,320Aを含む。代替的に、設計者は、歯車部として、2を超える数の歯車を用いてもよい。更に代替的に、設計者は、歯車部として、1つの歯車を用いてもよい。
【0062】
クランク組立体400Aは、クランク軸410Aと、4つの軸受421A,422A,423A,424Aと、伝達歯車430Aと、を含む。伝達歯車430Aは、一般的なスパーギアであってもよい。代替的に、伝達歯車430Aは、他の種類の歯車であってもよい。本実施形態の原理は、伝達歯車430Aの特定の種類に限定されない。
【0063】
図2Aは、伝達軸STXを示す。伝達軸STXは、主軸SMXに対して略平行である。クランク軸410Aは、伝達軸STX周りに回転する。
図2Aは、伝達軸STXと主軸SMXとの間の距離を記号「L2」で示す。距離L2は、距離L1よりも大きい。本実施形態において、第2クランク組立体は、クランク組立体400Aによって例示される。第2伝達軸は、伝達軸STXによって例示される。第2距離は、距離L2によって例示される。
【0064】
図2Bは、主軸SMXを中心にして描かれた仮想円PC2を示す。仮想円PC2の半径は、
図2Aを参照して説明された距離L2に等しい。3つのクランク軸410Aそれぞれに対応する3つの伝達軸STXは、仮想円PC2上に位置する。
【0065】
クランク軸410Aは、2つのジャーナル411A,412Aと、2つの偏心部413A,414Aと、を含む。ジャーナル411A,412Aは、伝達軸STXに沿って延びる。ジャーナル411A,412Aの中心軸は、伝達軸STXに一致する。ジャーナル411A,412Aは、伝達軸STX周りに回転する。偏心部413A,414Aは、ジャーナル411A,412A間に形成される。偏心部413A,414Aそれぞれは、伝達軸STXから偏心している。
【0066】
ジャーナル411Aは、軸受421Aに挿入される。軸受421Aは、ジャーナル411Aと端板部222Aとの間に配置される。したがって、ジャーナル411Aは、端板部222Aと軸受421Aとによって支持される。伝達歯車430Aは、ジャーナル411Aに取り付けられる。したがって、伝達歯車430Aは、ジャーナル411Aとともに、伝達軸STX周りに回転することができる。本実施形態において、第2伝達歯車は、伝達歯車430Aによって例示される。
【0067】
ジャーナル412Aは、軸受422Aに挿入される。軸受422Aは、ジャーナル412Aと基部221Aとの間に配置される。したがって、ジャーナル412Aは、基部221Aと軸受422Aとによって支持される。
【0068】
偏心部413Aは、軸受423Aに挿入される。軸受423Aは、偏心部413Aと歯車310Aとの間に配置される。偏心部414Aは、軸受424Aに挿入される。軸受424Aは、偏心部414Aと歯車320Aとの間に配置される。
【0069】
図2Aは、中央ギアシャフトGS2を示す。中央ギアシャフトGS2は、主軸SMX周りに回転する。中央ギアシャフトGS2は、駆動源(モータ)の一部であってもよい。代替的に、駆動源とは別異に形成された部材であってもよい。本実施形態の原理は、中央ギアシャフトGS2の特定の構造に限定されない。
【0070】
中央ギアシャフトGS2は、3つの伝達歯車430Aそれぞれに噛み合う。この結果、駆動源が生成した駆動力は、中央ギアシャフトGS2から3つの伝達歯車430Aそれぞれに伝達される。伝達歯車430Aに駆動力が入力されると、クランク軸410Aは、伝達軸STX周りに回転する。この結果、偏心部413A,414Aは、伝達軸STX周りに偏心回転する。軸受423A,424Aを介して偏心部413A,414Aに接続された歯車310A,320Aは、外筒部210Aによって規定された円形空間内で揺動する。歯車310A,320Aは、内歯ピン212Aに噛み合うので、外筒部210Aとキャリア部220Aとの間で相対的な回転運動が引き起こされる。
【0071】
設計者は、減速機100Aを設計した後、減速機100を設計してもよい。このとき、設計者は、伝達歯車430のモジュール及び転位係数を、伝達歯車430Aのモジュール及び転位係数に一致させてもよい。その後、設計者は、用いられたモジュール及び転位係数から、距離L1を算出してもよい。
【0072】
<第2実施形態>
設計者は、様々な手法を用いて、モジュール及び転位係数から、主軸と伝達軸との間の距離を決定することができる。第2実施形態において、主軸と伝達軸との間の距離を決定するための例示的な技術が説明される。
【0073】
異なる減速比が、
図1Aを参照して説明された減速機100と
図2Aを参照して説明された減速機100Aとに要求されるならば、一般的に、中央ギアシャフトGS1の歯数及び伝達歯車430の歯数の和は、中央ギアシャフトGS2の歯数及び伝達歯車430Aの歯数の和とは相違する。設計者が、転位係数を減速機100,100Aそれぞれに対して、ゼロに設定するならば、主軸から伝達軸までの距離と歯数の和との関係は、以下の数式によって表現される。
【0075】
設計者が、転位係数をゼロとは異なる正の値又は負の値に設定するならば、上述の数式は、転位係数を考慮して変形されてもよい。
【0076】
以下の表は、設計者が、モジュールを「1.5」に設定し、且つ、転位係数をゼロに設定したときにおける歯数の和と主軸から伝達軸までの距離との関係を表す。
【0078】
設計者が、減速機100に関して、中央ギアシャフトGS1の歯数及び伝達歯車430の歯数の和を「54」に設定するならば、主軸FMXから伝達軸FTXまでの距離L1は、「40.50mm」に設定される。設計者が、減速機100Aに関して、中央ギアシャフトGS2の歯数及び伝達歯車430Aの歯数の和を「60」に設定するならば、主軸SMXから伝達軸STXまでの距離L2は、「45.00mm」に設定される。
【0079】
<第3実施形態>
設計者は、第2実施形態に関連して説明された設計技術を用いて、様々な手順で減速機を設計することができる。第3実施形態において、減速機の例示的な設計手順が説明される。
【0080】
図3は、減速機の例示的な設計手順を表すフローチャートである。
図3を参照して、減速機の設計手順が説明される。
【0081】
(ステップS110)
第2実施形態に関連して説明された如く、設計者は、モジュールと転位係数とを決定する。その後、ステップS120が実行される。
【0082】
(ステップS120)
設計者は、設計データベースを検索し、モジュール及び転位係数において一致する伝達歯車の設計データが存在するか否かを検証してもよい。モジュール及び転位係数において一致する伝達歯車の設計データが存在するならば、ステップS130が実行される。他の場合には、ステップS180が実行される。
【0083】
(ステップS130)
設計者は、モジュール及び転位係数において一致する伝達歯車の設計データを設計データベースから抽出する。その後、ステップS140が実行される。
【0084】
(ステップS140)
設計者は、減速機に要求される減速比が得られるように、中央ギアシャフトの歯数を決定する。その後、ステップS150が実行される。
【0085】
(ステップS150)
設計者は、ステップS120において得られた伝達歯車に対して強度計算を実行してもよい。減速機の使用条件下において、伝達歯車が十分な機械的強度を有しているならば、ステップS160が実行される。他の場合には、ステップS190が実行される。
【0086】
(ステップS160)
設計者は、第2実施形態に関連して説明された技術に基づいて、主軸と伝達軸との間の距離を決定する。その後、ステップS170が実行される。
【0087】
(ステップS170)
設計者は、ステップS160において得られた距離を基準に、外筒部、キャリア部及び歯車部の設計を行う。
【0088】
(ステップS180)
設計者は、伝達歯車を再設計する。その後、ステップS140が実行される。
【0089】
(ステップS190)
設計者は、伝達歯車の厚さを増大させる。この結果、既存の伝達歯車よりも高い機械的強度を有する伝達歯車が設計される。その後、ステップS150が実行される。
【0090】
本実施形態において、第1設計工程は、ステップS110乃至ステップS160の設計手順によって例示される。第2設計工程は、ステップS160及びステップS170の工程によって例示される。
【0091】
<第4実施形態>
第3実施形態に関連して説明された設計手順が用いられるならば、設計者は、既存の伝達歯車の歯数を変更することなく、減速機を設計することができる。加えて、上述の様々な実施形態に関連して説明された如く、新たな減速機の伝達歯車のモジュール及び転位係数は、既存の伝達歯車と同一に設定されるので、伝達歯車の外形輪郭は、既存の伝達歯車の外形輪郭に一致することとなる。第4実施形態において、第3実施形態に関連して説明された設計手順に基づいて得られた伝達歯車が説明される。
【0092】
図4は、伝達歯車430B,430Cの概略的な正面図である。
図3及び
図4を参照して、伝達歯車430B,430Cの形状的な共通性が説明される。
【0093】
設計者は、ステップS130(
図3を参照)において、伝達歯車430Bの設計データを取得する。設計者は、その後のステップS140において、中央ギアシャフトの歯数を調整することによって、新たな減速機に対して要求される減速比を達成するので、新たな伝達歯車430Cは、既存の伝達歯車430Bと同数の歯を有することができる。
【0094】
図4は、伝達歯車430Bの外形輪郭線ECTと、伝達歯車430Cの外形輪郭線NCTと、を示す。上述の如く、伝達歯車430Cは、歯数、モジュール及び転位係数において、伝達歯車430Bと一致するので、外形輪郭線NCTが描く閉領域は、形状及び大きさにおいて、外形輪郭線ECTが描く閉領域に一致する。
【0095】
<第5実施形態>
第3実施形態に関連して説明された設計手順が用いられるならば、設計者は、既存の伝達歯車を、他の減速機にそのまま利用することも可能である。第5実施形態において、第3実施形態に関連して説明された設計手順に基づいて得られた伝達歯車が説明される。
【0096】
図5は、伝達歯車430B,430Cの概略的な断面図である。
図3乃至
図5を参照して、伝達歯車430B,430Cの形状的な共通性が説明される。
【0097】
設計者は、ステップS150(
図3を参照)において、既存の伝達歯車430Bの機械的強度が新たな減速機の使用条件下で十分な機械的強度を有するか否かを検証する。伝達歯車430Bの機械的強度が新たな減速機の使用条件下で十分な機械的強度を有するならば、設計者は、新たな減速機に用いられる伝達歯車430Cの厚さT2を、伝達歯車430Bの厚さT1に一致させることができる。この場合、伝達歯車430Cは、伝達歯車430Bに形状的に一致することとなる。
【0098】
<第6実施形態>
第1実施形態に関連して説明された如く、クランク軸は、伝達歯車に挿入される。したがって、伝達歯車に挿入穴が穿設される。挿入穴は、クランク軸が含むスプライン軸部の断面形状に適合されてもよい。代替的に、挿入穴は、クランク軸及びクランク軸に取り付けられたキーの組立体の断面形状に適合されてもよい。挿入穴が、既存の減速機及び新たな減速機に用いられる伝達歯車間で一致されるならば、減速機を設計する設計部門の労力だけでなく、減速機の製造を管理するロジスティクス部門の労力は大幅に低減される。第6実施形態において、挿入穴の形状において一致する2つの伝達歯車が説明される。
【0099】
図6は、伝達歯車430D,430Eの概略的な正面図である。第4実施形態及び第6実施形態の間で共通して用いられる符号は、当該共通の符号が付された要素が、第4実施形態と同一の機能を有することを意味する。
図6を参照して、伝達歯車430D,430Eの形状的な共通性が説明される。
【0100】
第4実施形態と同様に、
図6は、伝達歯車430D,430Eの外形を表す外形輪郭線ECT,NCTを示す。外形輪郭線NCTが描く閉領域は、形状及び大きさにおいて、外形輪郭線ECTが描く閉領域に一致する。
【0101】
伝達歯車430Dには、スプライン穴431Dが形成される。伝達歯車430Eには、スプライン穴431Eが形成される。スプライン穴431Eは、スプライン穴431Dに、形状及び大きさにおいて一致する。本実施形態において、第1挿入穴は、スプライン穴431D,431Eのうち一方によって例示される。第2挿入穴は、スプライン穴431D,431Eのうち他方によって例示される。
【0102】
<第7実施形態>
様々な経路が、駆動源(たとえば、モータ)から減速機への駆動力の伝達に設定されてもよい。第6実施形態において、様々な駆動力伝達経路が説明される。
【0104】
図7A乃至
図7Cそれぞれは、3つの伝達歯車430Fを示す。伝達歯車430Fは、第3実施形態に関連して説明された設計手順に基づいて設計されてもよい。
【0105】
図7A乃至
図7Cそれぞれは、駆動ギアDGを示す。駆動ギアDGは、
図7A乃至
図7Cそれぞれに示される複数の歯車の中で最も駆動源に近い。すなわち、駆動ギアDGは、駆動力伝達経路において、最も上流に位置する。
図7A乃至
図7Cそれぞれにおいて、駆動ギアDGには、網掛けがなされている。
【0106】
図7Aに示される伝達経路に関して、
図1Aを参照して説明された中央ギアシャフトGS1と同様に、駆動ギアDGは、3つの伝達歯車430Fそれぞれに噛み合うことができる。
【0107】
図7Bは、3つの伝達歯車430Fそれぞれに噛み合う中央ギアCGを示す。駆動ギアDGは、3つの伝達歯車430Fのうち1つと噛み合ってもよい。この場合、他の伝達歯車430Fは、中央ギアCGを通じて、駆動力を受け取ることができる。
【0108】
図7Cは、
図7Bと同様に、中央ギアCGを示す。駆動ギアDGは、中央ギアCGに噛み合ってもよい。この場合、3つの伝達歯車430Fそれぞれは、中央ギアCGを通じて、駆動力を受け取ることができる。
【0109】
上述の様々な実施形態の原理は、減速機に対する要求に適合するように、組み合わされてもよい。