特許第6441071号(P6441071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6441071積層鉄心及びこの積層鉄心の製造方法並びに製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441071
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】積層鉄心及びこの積層鉄心の製造方法並びに製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20181210BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20181210BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20181210BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H02K15/12 A
   H02K15/03 Z
   H02K1/27 501D
   H01F41/02 B
   H01F41/02 H
   H01F41/02 J
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-265136(P2014-265136)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-127651(P2016-127651A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】福本 崇
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−303485(JP,A)
【文献】 特開2004−336831(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145399(WO,A1)
【文献】 特開2008−199698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0222289(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0083486(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
H01F 41/02
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、
前記ゲート孔内の前記鉄心本体側にあり、前記樹脂孔の外側にある前記鉄心本体の一部表面を覆う、前記樹脂孔に連通する樹脂Bと、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aとが、前記カルプレートの除去時に、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、
前記ゲート孔の断面径は、前記モールド金型側より前記鉄心本体側の方が大きくなって、前記ゲート孔の形状が錐台状となっており、前記カルプレートの除去時に、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aと、前記樹脂孔に連通する樹脂Bが、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、
前記ゲート孔の断面径は、高さ方向中間部で最小となって、前記ゲート孔の形状が鼓形状となっており、前記カルプレートの除去時に、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aと、前記樹脂孔に連通する樹脂Bが、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の積層鉄心の製造方法において、前記ゲート孔内の前記鉄心本体側にある樹脂Bは、前記樹脂孔の外側にある前記鉄心本体の一部表面を覆うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間に配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記モールド金型を前記鉄心本体から離して、不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、
前記モールド金型の樹脂排出側に括れ部を設けて、該括れ部を前記樹脂溜めポットに繋がる樹脂Aと、前記樹脂孔に繋がる樹脂Bの分断点としたことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の積層鉄心の製造方法において、前記樹脂孔の軸方向外側にある樹脂Bは前記分断点を頂部とする円錐台状又は角錐台状となって、その裾部は前記樹脂孔及びその周囲を覆っていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の積層鉄心の製造方法において、前記樹脂孔から永久磁石が突出し、突出した該永久磁石を前記鉄心本体の表面から突出した樹脂Bが覆っていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法に使用する積層鉄心の製造装置であって、
前記カルプレートのゲート孔は厚み方向中間部に括れ部が設けられ、該括れ部を中心にしてそれぞれ上下方向に開くテーパ部を有しており、前記カルプレートの除去時に、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aと、前記樹脂孔に連通する樹脂Bが、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断することを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法に使用する積層鉄心の製造装置であって、前記括れ部を含む非円柱部は、前記モールド金型の前記鉄心本体側に設けられて交換可能な補助モールド金型に形成されていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項10】
複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する積層鉄心において、前記樹脂孔に充填された樹脂の端部が前記積層鉄心の表面より錐台状に突出していることを特徴とする積層鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心(固定子積層鉄心及び回転子積層鉄心)の鉄心本体に、例えば永久磁石を、又は鉄心本体自体を、樹脂によって封止又は接合した積層鉄心及びこの積層鉄心の製造方法並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2には回転子積層鉄心の製造方法において、鉄心本体に磁石挿入孔を設け、それぞれの磁石挿入孔に永久磁石を配置して、鉄心本体を上型及び下型の間に配置し、樹脂を注入して永久磁石を磁石挿入孔に固定することが開示されている。
また、特許文献3には複数の鉄心片を重ね、重ねた鉄心片の上下に貫通する孔に樹脂を充填する固定子積層鉄心の製造方法が提案されている。
【0003】
特許文献1〜3等で行われている積層鉄心の製造方法を更に具体化した従来例1、2を図4(A)、(B)に示す。なお、図4(A)は回転子積層鉄心を、図4(B)は固定子積層鉄心を示す。従来例1、2に係る積層鉄心の製造方法においては、鉄心片60、61をそれぞれ重ねて形成した鉄心本体62、63を、樹脂溜めポット70、71を有するモールド金型65、66と受け金型67、68との間に配置し上下から金型65〜68で圧締した状態で、それぞれの樹脂溜めポット70、71から樹脂72、73をカルプレート(ダミー板)74、75に形成されたゲート孔80、81を介して、永久磁石84が挿入された磁石挿入孔76及び貫通孔77に注入している。図4(C)、(D)はそれぞれ図4(A)、(B)に示した製造方法における共通の部分拡大動作説明図であるが、図4(A)に対応する部分についてのみ記載する。絶縁皮膜78は実際の厚みより厚く記載している。なお、特許文献1、3においては、カルプレートは使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−42967号公報
【特許文献2】特開2010−158164号公報
【特許文献3】特表2003−529309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上に説明した樹脂封止技術においては、樹脂溜めポット70、71から押し出された樹脂72、73が最上部の鉄心片60、61の表面に形成されている絶縁皮膜78に接合し、カルプレート74、75と共に不要な樹脂72、73を剥がすときに、絶縁皮膜78も剥離する場合があった。絶縁皮膜78が剥離すると、金属性の端板に鉄心片60、61が接する等して、渦電流が発生し、モータ効率が下がるという問題があった。
【0006】
なお、図4(E)に示すように、カルプレート85の樹脂79を注入するゲート孔80、81の位置を磁石挿入孔76、又は貫通孔77の位置に合わせた場合は、樹脂79が鉄心片60、61の絶縁皮膜に接することはないが、カルプレート85を外すと、封止した樹脂79に抉れ(エグレ)83が発生するという問題があった。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鉄心片の絶縁皮膜を剥離することがなく、かつ注入した樹脂に抉れ等が発生しない積層鉄心及び積層鉄心の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、
前記ゲート孔内の前記鉄心本体側にあり、前記樹脂孔の外側にある前記鉄心本体の一部表面を覆う、前記樹脂孔に連通する樹脂Bと、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aとが、前記カルプレートの除去時に、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断する。
【0009】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、前記ゲート孔の断面径は、前記モールド金型側より前記鉄心本体側の方が大きくなって、前記ゲート孔の形状が錐台状となっており、前記カルプレートの除去時に、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aと、前記樹脂孔に連通する樹脂Bが、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断する。
【0010】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、前記ゲート孔の断面径は、高さ方向中間部で最小となって、前記ゲート孔の形状が鼓形状となっており、前記カルプレートの除去時に、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aと、前記樹脂孔に連通する樹脂Bが、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断する。
【0011】
第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第2又は第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記ゲート孔内の前記鉄心本体側にある樹脂Bは、前記樹脂孔の外側にある前記鉄心本体の一部表面を覆う。
【0012】
第5の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間に配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記モールド金型を前記鉄心本体から離して、不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法において、
前記モールド金型の樹脂排出側に括れ部を設けて、該括れ部を前記樹脂溜めポットに繋がる樹脂Aと、前記樹脂孔に繋がる樹脂Bの分断点とした。
【0013】
第6の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第5の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記樹脂孔の軸方向外側にある樹脂Bは前記分断点を頂部とする円錐台状又は角錐台状となって、その裾部は前記樹脂孔及びその周囲を覆っている。
【0014】
第7の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第5、第6の積層鉄心の製造方法において、前記樹脂孔から永久磁石が突出し、突出した該永久磁石を前記鉄心本体の表面から突出した樹脂Bが覆っている。
【0015】
第8の発明に係る積層鉄心の製造装置は、複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する鉄心本体を、樹脂溜めポットを有するモールド金型と受け金型の間にカルプレートを介して配置し、圧締めした状態で、前記モールド金型から前記カルプレートのゲート孔を介して樹脂を前記樹脂孔に注入し、前記樹脂の硬化後、前記カルプレートと共に不要樹脂を除去する積層鉄心の製造方法に使用する積層鉄心の製造装置であって、前記カルプレートのゲート孔は厚み方向中間部に括れ部が設けられ、該括れ部を中心にしてそれぞれ上下方向に開くテーパ部を有しており、前記カルプレートの除去時に、前記樹脂溜めポットに連通する樹脂Aと、前記樹脂孔に連通する樹脂Bが、前記鉄心本体の表面より離間した位置にある前記ゲート孔内、又は前記モールド金型側端部の前記ゲート孔内で分断する。
【0016】
そして、第9の発明に係る積層鉄心の製造装置は、第5、第6、第7の発明に係る積層鉄心の製造方法に使用する積層鉄心の製造装置であって、前記括れ部を含む非円柱部は、前記モールド金型の前記鉄心本体側に設けられて交換可能な補助モールド金型に形成されている。
【0017】
そして、第10の発明に係る積層鉄心は、複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔を有する積層鉄心において、前記樹脂孔に充填された樹脂の端部が前記積層鉄心の表面より錐台状に突出している。
【発明の効果】
【0018】
第1〜第7の発明に係る積層鉄心の製造方法、第8、第9の発明に係る積層鉄心の製造装置、第10の発明に係る積層鉄心において、モールド金型に連通する樹脂Aと樹脂孔に連通する樹脂Bとの分断点を鉄心本体の表面から離したので、樹脂Bと接触する鉄心本体の表面から絶縁皮膜が剥離するのを防止できる。
この樹脂の分断位置は鉄心本体の表面から離れた位置にあるので、鉄心本体に充填された樹脂の強度に影響を与えない。
特に、この発明は、巻き線に影響しない領域であれば、残留樹脂が突出しても問題とならないステータ鉄心に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第2、第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図3】(A)〜(D)はそれぞれ本発明の第4〜第7の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図4】(A)〜(E)は従来例に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1(A)、(B)に本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した積層鉄心の製造装置10の要部を示すが、受け金型11と樹脂溜めポット12を有するモールド金型13との間に製造しようとする積層鉄心の鉄心本体14を配置する。鉄心本体14は複数の鉄心片を積層して形成され、内側には上下に貫通する樹脂孔19を有している。鉄心本体14とモールド金型13との間にゲート孔(樹脂注入孔)15が形成されたカルプレート16を配置し、受け金型11及びモールド金型13により、鉄心本体14を上下から圧締めする。
【0021】
モールド金型13は樹脂注入しようとする鉄心本体14の樹脂孔19の位置に対応して、複数の樹脂溜めポット12を有し、それぞれには昇降するプランジャ17が設けられ、内部の樹脂18を押し出す構造となっている。
カルプレート16は比較的厚い(例えば、厚みが1〜10mm)ステンレス又はアルミニウム等の金属平板からなって、ゲート孔15は下部の鉄心本体14の樹脂孔19の数だけ設けられている。なお、カルプレートの材質は上記に限らず、一般的な鋼材を使用してもよい。
カルプレート16のゲート孔15は、この実施の形態ではゲート孔15の断面径がモールド金型13側より鉄心本体14側の方が大きくなって、円錐台(又は角錐台)状となっており、モールド金型13側(上部)は樹脂溜めポット12の底部に、鉄心本体14側(下部)は直径の半分が鉄心本体14の表面に接している。樹脂孔19には、予め永久磁石が挿入されている磁石挿入孔の場合と、単に鉄心片を連結するための貫通孔との場合がある。
【0022】
樹脂溜めポット12からゲート孔15を介して樹脂孔19に注入された樹脂18が硬化した後、モールド金型13をカルプレート16と共に、鉄心本体14から引き離すと、ゲート孔15の頂部(鉄心本体14の表面より離間した位置、即ち、モールド金型13側端部)に形成されている括れ部20で、樹脂溜めポット12側の樹脂18(A)と樹脂孔19側の樹脂18(B)が分断し、図1(B)に示すように、鉄心本体14の表面から突出する円錐台状の突出部21が形成される。この突出部21の高さはカルプレート16の厚みで決まり、不要な場合には部分的に削り取ってもよいが、例えば、鉄心本体14がステータ鉄心の場合はそのまま残しておいても支障はない。これによって、樹脂18(B)が樹脂孔19の外側にある鉄心本体14の一部表面を覆うので、鉄心本体14のモールド金型13に近い側の鉄心片の絶縁皮膜23の剥離が防止される。また、樹脂が充填された孔から連続して鉄心本体の端部表面に付着するため、鉄心本体の端部付近において、鉄心片のハガレやメクレが減少する。
【0023】
次に、図2(A)に示す本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。なお、以上の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法と同一の構成要素には同一の番号を付して詳しい説明を省略する。
図2(A)に示すように、この実施の形態では、カルプレート25のゲート孔26が高さ方向(厚み方向)中間位置に設けられた括れ部27を中心にしてそれぞれ上下方向に開くテーパ部を有する鼓形形状となっている。この場合、モールド金型13をカルプレート25と共に鉄心本体14から離反すると、括れ部27の所で、樹脂18が分断し、樹脂溜めポット12側の円錐台(又は角錐台)状の樹脂18(A)と樹脂孔19側の分断点を頂部とする円錐台(又は角錐台)状の樹脂18(B)とになる。なお、前記実施の形態と同様、円錐台状の樹脂18(B)は鉄心本体14の一部を覆っている。
【0024】
カルプレート25を鉄心本体14から取り外すと、鉄心本体14から上部に飛び出す突出部が形成されるが、ステータだけでなく突出部の高さを低くすれば、ロータ鉄心にも使用できる。この場合も絶縁皮膜23の剥離はない。なお、カルプレート25の上部に残った樹脂(不要樹脂)は、カルプレート25を鉄心本体14から取外した後、ゲート孔26に向けて下からピンを通すことによって取外すことかできる(第1の実施の形態においても同じ)。
【0025】
図2(B)に、本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を示す。この実施の形態では、カルプレートが使用されておらず、モールド金型29の樹脂溜めポット30の樹脂押し出し側に、円柱部31と円錐台部(又は角錐台部)32が設けられ、これらはモールド金型29の樹脂排出側にある括れ部33で連結されている。括れ部33を頂部とする円錐台部32の裾部は前記実施の形態と同様、鉄心本体14の最表面の鉄心片の一部(樹脂孔19とその周囲)を覆っている。
【0026】
樹脂孔19に樹脂注入後、モールド金型29を鉄心本体14から引き離すと、固まった樹脂が括れ部33で分断する。モールド金型29に残った樹脂18(A)は、プランジャ17を樹脂溜めポット30から引き抜いて、一方側からピン等を入れて除去する。この場合も、樹脂孔19に繋がる円錐台部32の樹脂18(B)が鉄心本体14の表面に残るので、絶縁皮膜23の破壊は生じない。これによって、樹脂18(B)が樹脂孔19の外側にある鉄心本体14の一部表面を覆うので、鉄心本体14の端部付近において、鉄心片のハガレやメクレも減少する。
【0027】
続いて、図3(A)〜(D)に示す本発明の第4〜第7の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。なお、第4〜第7の実施の形態においては、樹脂孔34を充填して、鉄心本体14側に残る樹脂35(B)〜38(B)と樹脂溜めポット側に残る樹脂(A)が存在する。ここで、樹脂35(B)〜38(B)の一部によって、樹脂孔34から一部突出する突出部39〜42が存在するが、この突出部39〜42は、カルプレート(図1図2参照)で形成される場合と、モールド金型の端部で形成される場合があり、それぞれに分断点となる括れ部39a〜42aを有している。
【0028】
図3(A)に示す第4の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法においては、突出部39の周囲に樹脂孔34の端部と同一レベル又は僅少低い平坦部44が形成されている。
図3(B)に示す第5の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法においては、樹脂孔34に突出する永久磁石45が配置され、樹脂36(B)は永久磁石45を覆っている。突出部40には平坦部46が設けられ、樹脂孔34から突出している。
この第4、第5の実施の形態においては、鉄心本体14の表面を樹脂が覆っていないので、絶縁皮膜23が剥がれることはない。
【0029】
図3(C)に示す第6の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法においては、突出部41の周囲が樹脂孔34の外側まで被さっているが、被さった部分の樹脂37(B)は剥離しないので、絶縁皮膜23は剥離しない。
図3(D)に示す第7の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法において、樹脂孔34の内部に永久磁石45が挿入され、突出部42の周囲には平坦部47が設けられ、樹脂孔34の周囲を覆っている。樹脂孔34から突出した永久磁石45は樹脂38(B)によって完全に被覆されている。
第7の実施の形態では樹脂孔34の周囲を覆っている樹脂38(B)は剥離しないので、絶縁皮膜23は剥離しない。また、第6、第7の実施の形態においては、鉄心本体14の端部付近において、鉄心片のハガレやメクレも減少する。
【0030】
なお、モールド金型が鉄心本体に接する部分をモールド金型から分離して交換可能な補助モールド金型とし、この補助モールド金型に、樹脂溜めポットに直接連通する例えば、括れ部を含む非円柱部を形成することもできる。これによって、鉄心本体の形状に応じて、補助モールド金型の交換が可能となる。
【0031】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、第1〜第7の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の2つ以上を組み合わせて、一つの積層鉄心の製造方法を形成する場合も本発明は適用される。
【符号の説明】
【0032】
10:積層鉄心の製造装置、11:受け金型、12:樹脂溜めポット、13:モールド金型、14:鉄心本体、15:ゲート孔、16:カルプレート、17:プランジャ、18:樹脂、19:樹脂孔、20:括れ部、21:突出部、23:絶縁皮膜、25:カルプレート、26:ゲート孔、27:括れ部、29:モールド金型、30:樹脂溜めポット、31:円柱部、32:円錐台部、33:括れ孔34:樹脂孔、35(B)〜38(B):樹脂、39〜42:突出部、39a〜42a:括れ部、44:平坦部、45:永久磁石、46、47:平坦部
図1
図2
図3
図4