【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
なお、実施例においては、以下の処理工程の手順に従っている。
【0061】
また、ヨウ素価は基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の2.3.4.1−2013(ウィイス−シクロヘキサン法)に従い測定した。
【0062】
<硬化処理前工程(前処理)>
魚油(ヨウ素価161)450gに表1に示した白土、表2に示した活性炭を添加し、各時間・各温度、真空下で加熱撹拌した後、白土、活性炭を吸引濾過し、前処理油脂を得た。その後、1リットルのオートクレーブに前処理した魚油(ヨウ素価=161)350g、ニッケル触媒(堺化学工業株式会社製SO−750R)を対油0.3質量%(1.05g)添加し、真空下で180℃まで加熱後、表の水素圧(ゲージ圧)、攪拌数750rpmで攪拌しながら水素添加反応を行い、油脂のヨウ素価が70に低下するまで硬化を行なった。その後ニッケル触媒を吸引濾過し硬化油を得た。
【0063】
上記で得た硬化油をドイツ公定法(DGF Standard Methods C−III 18(09))に準じて3−MCPDに換算した値としてクロロプロパノール類の総量を求めた。
【0064】
<硬化処理時工程(硬化中)>
1リットルのオートクレーブに魚油(ヨウ素価161)350g、ニッケル触媒(堺化学工業株式会社製SO−750R)を対油0.3質量%(1.05g)、表1に示した白土、表2〜4に示した活性炭、および表4、5に示したアルカリを添加し、真空下で表に示した硬化温度まで加熱後、表の水素圧(ゲージ圧)、攪拌数750rpmで攪拌しながら水素添加反応を行い、油脂のヨウ素価が70まで低下するまで硬化を行なった。その後ニッケル触媒および白土、活性炭、アルカリを吸引濾過し硬化油を得た。上記で得た硬化油をドイツ公定法(DGF Standard Methods C−III 18(09))に準じて3−MCPDに換算した値としてクロロプロパノール類の総量を求めた。
【0065】
<硬化処理後(後処理)>
1リットルのオートクレーブに魚油(ヨウ素価161)350g、ニッケル触媒(堺化学工業株式会社製SO−750R)を対油0.3質量%(1.05g)添加し、真空下で表に示した硬化温度まで加熱後、表の水素圧(ゲージ圧)、攪拌数750rpmで攪拌しながら水素添加反応を行い、油脂のヨウ素価が70に低下するまで硬化を行なった。その後ニッケル触媒を吸引濾過した。上記で得た硬化油(処理前)に表2に示した活性炭、表5に示した水酸化カルシウムを添加し、真空下で、各温度で加熱を行なった後、活性炭、水酸化カルシウムを吸引濾過し硬化油(処理後)を得た。
【0066】
上記で得た硬化油をドイツ公定法(DGF Standard Methods C−III 18(09))に準じて3−MCPDに換算した値としてクロロプロパノール類の総量を求めた。
【0067】
(参考例1)
1リットルのオートクレーブに魚油(ヨウ素価161)350g、ニッケル触媒(堺化学工業株式会社製SO−750R)を対油0.3質量%(1.05g)添加し、水素圧0.5MPa(ゲージ圧)を維持するように水素を吹き込んで、攪拌数750rpmで攪拌しながら水素添加反応を行い、油脂のヨウ素価が70に低下するまで硬化を行なった。その後ニッケル触媒を吸引濾過し硬化油を得た。上記で得た硬化油をドイツ公定法(DGF Standard Methods C−III 18(09))に準じて3−MCPDに換算した値としてクロロプロパノール類の総量を求めた。(以下、3−MCPD生成量と表記する)
(参考例2)
水素圧0.12MPa(ゲージ圧)に変えた以外は参考例1と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0068】
[白土による試験]
(実施例1)
前記の前処理の手順に従って、魚油に白土として対油3質量%の酸性白土(MIZUKA−ACE #300、以下MA300と表記、pH8.5、SiO
2含量70.5%、水澤化学工業株式会社製)を添加し、真空下100℃で20分処理した後、濾過により白土を取り除き、前処理油脂を得た。前処理油脂を参考例1と同様の条件で硬化し、3−MCPD生成量を求めた。
【0069】
(実施例2)
あらかじめ活性白土(GALLEON EARTH V2、以下V2と表記、pH3.3、SiO
2含量79.8%、水澤化学工業株式会社製)に対して5倍量の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、常温・常圧で30分間攪拌後、濾過により白土を回収し、その後真空下300℃で4時間乾燥させてアルカリ処理を行った。前記の硬化中の手順に従って、魚油に白土として対油0.46質量%のアルカリ処理したV2(pH11.1)を添加し、アルカリ処理白土を入れたまま参考例2と同様の条件で硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0070】
(実施例3)
あらかじめ酸性白土(MIZUKA−ACE #300、以下MA300と表記、pH8.5、SiO
2含量70.5%、水澤化学工業株式会社製)に対して5倍量の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、常温・常圧で30分間攪拌後、濾過により白土を回収し、その後真空下300℃で4時間乾燥させてアルカリ処理を行った。前記の硬化中の手順に従って、白土としてアルカリ処理した酸性白土MA300(pH11.2)を、対油1.5質量%添加したこと以外は、実施例2と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中のクロロプロパノール類の総量を3−MCPDに換算した値として求めた。
【0071】
実施例1における3−MCPDの低減率(%)は、参考例1における3−MCPD生成量(ppm)を基準として、実施例2、3における3−MCPDの低減率(%)は、参考例2における3−MCPD生成量(ppm)を基準として以下の計算式で算出された。
【0072】
3−MCPD低減率(%)=100−
{(各実施例での3−MCPD生成量(ppm))/
(参考例1または2での3−MCPD生成量(ppm))}×100
結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示したように、実施例1では、硬化工程の前処理としてpH7以上の白土を原料油に添加することにより、添加なしの参考例1と比較して約20%程度クロロプロパノール類を低減可能であることが確認された。また、実施例2、3では、硬化工程時にアルカリ処理した白土を添加することで、実施例1よりもさらにクロロプロパノール類の低減率の向上が可能であることが示された。
【0075】
[活性炭添加による試験]
(実施例4)
前記の前処理の手順に従って、魚油に木質系活性炭として対油3質量%のアルカリ性活性炭(PW−D(pH8.8)、クラレケミカル株式会社製)を添加し、真空下180℃で1時間加熱撹拌した後、濾過により活性炭を取り除き、前処理油脂を得た。前処理油脂を参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0076】
(実施例5)
前記の硬化中の手順に従って、魚油に木質系活性炭として対油0.5質量%のPW−D(pH8.8)を添加し、参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0077】
(実施例6)
PW−Dの添加量を対油1質量%に増量したこと以外は、実施例5と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0078】
(実施例7)
PW−Dの添加量を対油3質量%に増量したこと以外は、実施例5と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0079】
(実施例8)
参考例2と同様に硬化し硬化油脂を得た。前記の後処理の手順に従って、対油3質量%のPW−D(pH8.8)を添加して、100℃を維持したまま15分間攪拌混合した。続いて、15分かけて180℃まで昇温し、180℃を維持したまま15分間攪拌混合した後、濾過により活性炭を取り除き、後処理油脂を得た。その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0080】
(実施例9)
参考例2と同様に硬化し硬化油脂を得た。前記の後処理の手順に従って、硬化油脂と活性炭を180℃からさらに15分かけて220℃まで昇温し、220℃を維持したまま15分間攪拌混合したこと以外は、実施例8と同様にして硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0081】
(実施例10)
前記の硬化中の手順に従って、魚油に木質系活性炭として対油0.3質量%の梅蜂IE印活性炭(以下梅蜂IE印と表記する、pH9.7、大平化学産業株式会社製)を添加し、参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0082】
(実施例11)
梅蜂IE印の添加量を対油0.5質量%に増量したこと以外は、実施例10と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0083】
(実施例12)
梅蜂IE印の添加量を対油1質量%に増量したこと以外は、実施例10と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0084】
(実施例13)
梅蜂IE印の添加量を対油3質量%に増量したこと以外は、実施例10と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0085】
(実施例14)
前記の硬化中の手順に従って、魚油に木質系活性炭として対油0.1質量%のNORIT HB−PLUS(以下HB−PLUSと表記する、pH10.1、キャボットノリットジャパン株式会社製)を添加し、参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0086】
(実施例15)
HB−PLUSの添加量を対油0.5質量%に増量したこと以外は、実施例14と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0087】
(比較例1)
木質系活性炭であるPW−Dの代わりに石炭系活性炭であるKW−P(pH9.2、クラレケミカル株式会社製)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0088】
(比較例2)
木質系活性炭であるPW−Dの代わりにヤシ殻由来活性炭であるGW−HP(pH7.5、クラレケミカル株式会社製)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0089】
(比較例3)
木質系活性炭であるPW−Dの代わりにヤシ殻由来活性炭であるGW−P(pH8.5、クラレケミカル株式会社製)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0090】
(比較例4)
PW−Dの代わりに木質系活性炭であるA−W50(pH5.8、フタムラ化学株式会社製)を対油1%使用したこと以外は、実施例5と同様にして魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0091】
結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示したように、pH7以上の木質系由来の活性炭を原料油に添加することにより、クロロプロパノール類の低減が可能であることが確認された。この効果は、硬化処理時に活性炭を添加した場合に特に顕著であることが示唆された。また、活性炭の添加量に量依存的にクロロプロパノール類の低減率が増大することも示唆された。さらに、活性炭の灰分が3%以上であることも、クロロプロパノール類の低減率に効果的であることが示唆された。
【0094】
一方、比較例1〜4の結果から、活性炭が木質系由来以外のものである場合、また、活性炭のpHが7未満の場合、クロロプロパノール類の低減が認められなかった。
【0095】
[アルカリ処理した活性炭による試験]
(実施例16)
あらかじめ木質系活性炭であるHB−PLUSに、5倍量の1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、常温・常圧で60分間攪拌混合し、濾過により活性炭を回収後、80℃で210分間乾燥させてアルカリ処理を行った。前記の硬化中の手順に従って、魚油に活性炭として対油0.1質量%のアルカリ処理したHB−PLUS(pH10.8)を添加し、活性炭を入れたまま参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0096】
(実施例17)
あらかじめ木質系活性炭であるHB−PLUSに、5倍量の1mol/Lの水酸化ナトリウム/エタノール溶液を加え、常温・常圧で3時間攪拌混合し、濾過により活性炭を回収後、70℃で60分間乾燥させてアルカリ処理を行った。前記の硬化中の手順に従って、魚油に活性炭として対油0.1質量%のアルカリ処理したHB−PLUS(pH11.9)を添加し、活性炭を入れたまま参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0097】
【表3】
【0098】
表3に示すように、実施例17では、あらかじめpH7以上の木質系活性炭にアルカリ溶液処理することにより、クロロプロパノール類の低減率を増強可能であることが示唆された。実施例16では、アルカリ溶液の溶媒として水を用いているため、エタノールを用いた実施例17よりクロロプロパノール類の低減効果が減少したものと考えられる。
【0099】
[活性炭とアルカリ物質の併用による試験]
(実施例18)
前記の硬化中の手順に従って、魚油に木質系活性炭として対油0.1質量%のHB−PLUSと対油0.1質量%の粉状の炭酸ナトリウム(関東化学株式会社製)を添加し、参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0100】
(実施例19)
炭酸ナトリウムの代わりに対油0.01質量%の粉状の水酸化カルシウムを添加したこと以外は、実施例18と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0101】
(実施例20)
水酸化カルシウムの添加量を0.05質量%に増量したこと以外は、実施例19と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0102】
(実施例21)
水酸化カルシウムの添加量を0.1質量%に増量したこと以外は、実施例19と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0103】
(実施例22)
炭酸ナトリウムの代わりに対油0.01質量%の粉状のナトリウムメトキシドを添加したこと以外は、実施例18と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0104】
(実施例23)
前記の硬化中の手順に従って、魚油に木質系活性炭として対油0.09質量%のHB−PLUSと粉状の水酸化ナトリウム(粒状の水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)を乳鉢ですり潰して得た)を対油0.01質量%添加し、参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中3−MCPD生成量を求めた。
【0105】
実施例18〜23における3−MCPDの低減率(%)は、参考例2における3−MCPD生成量(ppm)を基準として、白土による試験と同様の計算式で求められた。
【0106】
結果を表4に示す。
【0107】
【表4】
【0108】
表4に示すように、実施例14のpH7以上の木質系活性炭とアルカリとを併用することによって、実施例14に対して、クロロプロパノール類の低減率が約2〜5倍に増強されることが確認された。また、実施例19〜21の結果から、アルカリの添加量が増大するにつれてクロロプロパノール類の低減率も増強されることが示唆された。
【0109】
[アルカリ物質の添加による試験]
(実施例24)
前記の硬化中の手順に従って、魚油にアルカリ物質として対油0.1質量%の粉状の炭酸ナトリウム(関東化学株式会社製)を添加し、参考例2と同様に硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0110】
(実施例25)
炭酸ナトリウムを対油0.01質量%の粉状の水酸化カルシウムに変更したこと以外は、実施例24と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0111】
(実施例26)
水酸化カルシウムの添加量を0.025質量%に増量したこと以外は、実施例25と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0112】
(実施例27)
水酸化カルシウムの添加量を0.05質量%に増量したこと以外は、実施例25と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0113】
(実施例28)
水酸化カルシウムの添加量を0.1質量%に増量したこと以外は、実施例25と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0114】
(実施例29)
参考例2と同様に硬化し硬化油脂を得た。その後、前記の後処理の手順に従って、対油0.3質量%の粉状の水酸化カルシウムを添加して、180℃を維持したまま60分間攪拌混合した後、濾過により水酸化カルシウムを取り除き、後処理油脂を得た。その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0115】
(比較例5)
炭酸ナトリウムを対油0.1質量%の粉状の炭酸カルシウムに変更したこと以外は、実施例24と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0116】
(比較例6)
炭酸ナトリウムを対油0.1質量%の粉状のリン酸二水素カリウムに変更したこと以外は、実施例24と同様に魚油を硬化させ、その後硬化油脂中の3−MCPD生成量を求めた。
【0117】
(比較例7)
実施例24と同様の処理において、炭酸ナトリウムを粉状の水酸化ナトリウム(粒状の水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)を乳鉢ですり潰して得た)を対油0.1質量%に変更し、硬化したが、ヨウ素価は低下せず、硬化反応は進まなかった。
【0118】
(比較例8)
実施例24と同様の処理において、炭酸ナトリウムを対油0.01質量%の粉状のナトリウムメトキシドに変更し、硬化したがヨウ素価は低下せず、硬化反応は進まなかった。
【0119】
(比較例9)
比較例8と同様の処理において、ナトリウムメトキシドの添加量を対油0.1質量%に増量し、硬化したがヨウ素価は低下せず、硬化反応は進まなかった。
【0120】
実施例24〜29および比較例5〜6における3−MCPDの低減率(%)は、参考例2における3−MCPD生成量(ppm)を基準として、白土による試験と同様の計算式で求められた。
【0121】
結果を表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
表5に示すように、アルカリ物質として、原料油に炭酸ナトリウムと水酸化カルシウムを添加した場合、クロロプロパノール類を低減可能であることが示された。水酸化カルシウムに関しては、硬化工程時に添加量が増大するにつれて、クロロプロパノール類の低減作用も増大することが確認された。また、実施例25〜28と実施例29との対比から、硬化工程時にアルカリ物質を添加することで、クロロプロパノール類の低減効果が高まることが示唆された。すなわち、本発明は、硬化処理前や硬化処理後にアルカリ物質を添加する工程や、この工程のための新たな設備導入を追加しなくても、良好なクロロプロパノール類の低減効果を得ることができると考えられる。
【0124】
一方、比較例5、6の結果から、アルカリ物質であっても、炭酸カルシウムを添加した場合や酸性物質であるリン酸二水素カリウムを添加した場合には、クロロプロパノール類の低減効果が認められなかった。また、比較例7〜9の結果から、水酸化ナトリウム粉末、ナトリウムメトキシドを添加した場合には、油脂の硬化反応自体が起こらなくなることが確認された。このことから、本発明は、単にアルカリ性の物質を添加するのではなく、特定のアルカリ性の物質を添加することが、クロロプロパノール類の低減には有効であることを示唆しているものと考えられる。