(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリンジポンプの本体の上部分には、情報を表示する前記表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が載置され、前記シリンジポンプの本体の下部分には、前記シリンジ設定部と前記移動部材が載置されていることを特徴とする請求項5に記載のシリンジポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明のシリンジポンプの実施形態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すシリンジポンプをW方向から見た斜視図である。
図1と
図2に示すシリンジポンプ1は、例えば集中治療室等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる微量持続注入ポンプである。
【0016】
図1と
図2に示すように、シリンジポンプ1は、例えば薬液を充填したシリンジ200のシリンジ本体201を、クランプ5を用いて、動かないように装着して固定することができる。
図2に示すシリンジ押子駆動部7の駆動モータ133が、送りネジ135を回転することで、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ200のシリンジ押子202を、シリンジ本体201側へT方向に押圧することができる。駆動モータ133としては、例えば好ましくは2相4極型のステップモータ(ステッピングモータ)を用いることができる。
これにより、シリンジ本体201内の薬液は、
図2に示すようにチューブ203と留置針204を介して、患者Pに対して正確に送液することができる。このチューブ203は、薬剤171を送るためのラインであり、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製のチューブである。チューブ203は、シリンジ本体201の先端の出口部211と留置針204の間をつないでいる。
【0017】
このシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202の押子フランジ205を把持した状態で、シリンジ押子202をシリンジ本体201側に押して移動させるための移動部材の一例であり、スライダともいう。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2を有し、この筐体2は耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されている。
図1に示すように、筐体2は、フロントカバー2Fとリアカバー2Rを接合して組み立てることにより、防滴性能を有する箱体として構成されている。これにより、後で説明するように、仮に薬液や水分等がかかってもシリンジポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫および防滴処理構造を有している。
【0018】
まず、シリンジポンプ1の筐体2に載置された各要素について説明する。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2と取手2Tを有している。筐体2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が載置されている。筐体2の下部分2Bには、シリンジ設定部6とシリンジ押子駆動部7が載置されている。これにより、医療従事者は、筐体2の上部分2Aの表示部3にカラー表示される情報内容を目視で確認しながら、シリンジ200からの薬液の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、筐体2の表示部3にカラー表示される情報内容を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0019】
図1と
図2に示す表示部3は、カラーグラフィック表示することができるカラー液晶表示装置(LCD)である。この表示部3は、筐体2の上部分2Aの左上位置であって、シリンジ設定部6とシリンジ押子駆動部7の上側に載置されている。操作パネル部4は、筐体2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に載置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、動作インジケータとして作用するためLEDなどで構成されているランプ4A(正常動作の場合には緑色に点灯または点滅、異常時には赤色に点灯または点滅)、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E、電源スイッチ4F等が載置されている。
図2に示す筐体2の上部分2Aは、筐体2の上半分の部分である。筐体2の下部分2Bは、筐体2の下半分の部分である。
図1と
図2に示す例では、シリンジ設定部6とシリンジ押子駆動部7は、X方向に沿って並べて載置されている。シリンジ設定部6は、複数種類の収容量の異なるシリンジの中から、例えば必要とする収容量のシリンジ200を選択して着脱可能にはめ込んで装着することができる。
【0020】
図1と
図2に示すシリンジ設定部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、本体フランジ209を着脱可能にはめ込んで把持するための本体フランジ押さえ部500を有している。収容部8は、凹型のシリンジ本体保持部8Dを有している。収容部8の左側の端部の壁部分には、可撓性を有するチューブ203を着脱可能に挟み込むためのチューブ固定部9が形成されている。このチューブ固定部9は、
図2に示すようにチューブ203の一部を動かないように挟み込んで固定する溝部分である。
【0021】
図1と
図2において、医療従事者が、クランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ設定部6から取り外す際には、例えばクランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向(手前方向)に引っ張って、しかもR1方向に90度回すことで、クランプ5はシリンジ本体201の外周面から離れる。これにより、シリンジ本体201は、クランプ5による固定を解除して、収容部8のシリンジ本体保持部8Dから取り出すとともに、チューブ203はチューブ固定部9内から取り外すことができる。
また、このクランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ設定部6の収容部8に収容して取り付ける際には、クランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向に引っ張ってR2方向に90度回して、スプリングの力によりY2方向に戻すことで、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定することができる。
【0022】
図1と
図2に示すように、シリンジ本体201が収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して装着されると、シリンジ押子202がシリンジ押子駆動部7内に載置される。このシリンジ押子駆動部7は、シリンジ押子押圧部材10を有している。制御部からの指令により
図2の駆動モータ133が作動して送りネジ135が回転すると、このシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202の押子フランジ205を、シリンジ本体201側へT方向に沿って少しずつ押す。この送りネジ135は、シリンジ押子押圧部材10を収容部8側に少しずつ押して案内していくための案内部材である。
これにより、シリンジ本体201内の薬液は、チューブ203と留置針204を通じて、患者Pに対して高い精度で比較的長時間かけて送液することができる。なお、
図1と
図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。
【0023】
図3は、上述した複数種類の大きさのシリンジの例を示す斜視図である。
図1と
図2では、一例として、最も薬液の収容量が大きいシリンジ200が固定されている。
図3(A)に示す最も薬液の収容量が大きいシリンジ200は、シリンジ本体201と、シリンジ押子202を有しており、シリンジ本体201は本体フランジ209を有し、シリンジ押子202は押子フランジ205を有している。シリンジ本体201には、薬液の目盛210が形成されている。シリンジ本体201の出口部211には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
【0024】
図3(B)に示す薬液の収容量が中くらいのシリンジ300は、シリンジ本体301と、シリンジ押子302を有しており、シリンジ本体301は本体フランジ309を有し、シリンジ押子302は押子フランジ305を有している。シリンジ本体301には、薬液の目盛310が形成されている。シリンジ本体301の出口部311には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
図3(C)に示す最も薬液の収容量が小さいシリンジ400は、シリンジ本体401と、シリンジ押子402を有しており、シリンジ本体401は本体フランジ409を有し、シリンジ押子402は押子フランジ405を有している。シリンジ本体401には、薬液の目盛410が形成されている。シリンジ本体401の出口部411には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
図3(A)に示すシリンジ200は、例えば薬液の収容量が10mLであり、
図3(B)に示すシリンジ300は、例えば薬液の収容量が5mLであり、
図3(C)に示すシリンジ400は、例えば薬液の収容量が2.0mLである。
【0025】
図3に示すように、シリンジ200,300,400の各シリンジ本体201,301,401は、それぞれ大きさ(容量,外径等)が異なる。シリンジ300,400の各シリンジ本体301,401は、
図1と
図2に示すシリンジ200と同様にして、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して固定することができる。しかし、
図3では、3種類のシリンジを図示しているが、これに限らず、シリンジが収容できる薬液の収容量は、2.0mLから50mL、例えば20mL、30mL、50mL等であっても良い。シリンジポンプ1に対して載置(セット)できるシリンジの収容量は、任意に選択できる。
【0026】
次に、
図4を参照して、
図1と
図2に示すシリンジポンプ1における電気な構成例を説明する。
図4において、シリンジポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0027】
図4に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Fと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
図4において、例えば収容部8内には、一対の検出スイッチ120,121が載置されている。検出スイッチ120,121は、好ましくはシリンジ200のシリンジ本体201が、収容部8内に正しく載置されているかどうかを検知して、制御部100に通知する。すなわち、検出スイッチ120,121は、シリンジ本体が正確に収容部8内に載置されていない場合に、そのことを検出するシリンジ本体の脱落検出センサである。
【0028】
図4に示すクランプセンサとしてのポテンションメータ122は、クランプ5に連結されている。このポテンションメータ122は、
図3に示すシリンジ200,300,400のサイズ(即ち、容量の違いによる外筒外径の違い)を判別するシリンジ種類判別センサである。ポテンションメータ122は、シリンジ本体201をクランプ5によりクランプした状態で、クランプ5がY2方向に関して移動する際のクランプ5の移動量を検出する。これにより、どの収容量のシリンジ本体201(301,401)がクランプ5によりクランプされているかどうかを、制御部100に検出信号を送って通知する。制御部100は、このポテンションメータ122からの検出信号によりクランプ5のY方向に関する移動量を得て、例えば
図3に示す複数の容量のシリンジ本体201,301,401の内のどのシリンジが装着されているかを判別することができる。
なお、製造メーカによって、同じ容量のシリンジであっても、シリンジ本体201,301,401は、それぞれ大きさ(容量,外径,長さ等),シリンジ押子202,302,403が僅かに異なる。
さらに、薬剤を送り出すため、押子フランジ205,305,405を押圧する力も僅かに異なる。
このため、製造メーカ及びそれぞれのシリンジサイズに応じた(それぞれのシリンジ毎)の閉塞圧のデータを記憶部に記憶しておく。
【0029】
図4に示すシリンジ押子駆動部7の駆動モータ133は、制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、送りネジ135を回転させてシリンジ押子押圧部材10をT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、
図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液する。
駆動モータ133は、2相ステップモータあるいは3相ステップモータを使用しているが、モータドライブ134は、制御部100の指令CTにより、後で説明する正転用の入力電流波形SCWあるいは逆転用の入力電流波形SCCWを駆動モータ133に供給するようになっている。
【0030】
図4において、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、各種情報や報知内容等を表示する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の報知内容を音声により告知する。制御部100は、通信ポート140を通じて、例えばデスクトップコンピュータのような外部コンピュータ141に対して双方向に通信可能である。この外部コンピュータ141は、薬液データベース(DB)150に接続されており、薬液データベース150に格納されている薬液情報MFは、外部コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬液情報MFを基にして、表示部3には薬液情報MF等を表示することができる。
なお、薬剤情報MFとしては、例えば、薬剤メーカ名,薬剤名,薬剤投与の予定量(mL)の上限・下限値,流量(mL/h)の上限・下限値,禁忌情報等である。
【0031】
図4において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E、電源スイッチ4Fは、制御部100に電気的に接続されている。この他に、制御部100には、本体フランジ209が、本体フランジ押さえ部500(
図5を参照)により把持されたことを検出するための検出器としてのフォトカプラセンサ250が、電気的に接続されている。このフォトカプラセンサ250は、発光素子251と、この発光素子251からの光を受光する受光素子252を有している。
【0032】
図4に示すように、シリンジ押子押圧部材10には、圧力センサ900が設けられている。この圧力センサ900は、例えば歪センサ等を採用できる。シリンジ押子押圧部材10が、シリンジ200のシリンジ押子202の押子フランジ205を把持した状態で、このシリンジ押子202をT方向に押す際に、圧力センサ900は、押子フランジ205から受ける圧力の変化を検出することができる。これにより、
図2のシリンジポンプ1と患者Pの位置関係に問題があって、
図2に示すチューブ203の一部分が、折れ曲がったり捻じれたりして閉塞状態になっていることを検出するようになっている。
なお、圧力センサ900は、必ずしもシリンジ押子押圧部材10に設ける必要はない。
【0033】
図2のシリンジポンプ1と患者Pの位置関係に問題が無く、チューブ203の一部分が折れ曲がったり捻じれたりしていなければ、チューブ203内は閉塞を起こさない。このため、シリンジ押子押圧部材10が、シリンジ押子202をT方向に押す際に、シリンジ押子202がT方向にスムーズに移動するので、この結果圧力センサ900は押子フランジ205により軽く押される程度であるので、
図4に示す圧力センサ900が出力する圧力測定信号PSの値は、予め定めた閉塞圧判断基準値LC以下である。
これに対して、例えば、
図2のシリンジポンプ1と患者Pの位置関係によっては、チューブ203の一部分が折れ曲がったり捻じれたりして、チューブ203を閉塞してしまうことがある。チューブ203が閉塞状態になると、薬剤171が患者Pに送液することができなくなる。このため、シリンジ押子押圧部材10が、シリンジ押子202をT方向に押す際に、シリンジ押子202がT方向に移動しにくくなり、この結果圧力センサ900は押子フランジ205により強く押されてしまうので、
図4に示す圧力センサ900が出力する圧力測定信号PSが予め定めた閉塞圧判断基準値LCを超えることになる。
【0034】
次に、
図5と
図6を参照して、シリンジ設定部6の詳しい構造を説明する。
図5は、
図2に示すシリンジ設定部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を示す斜視図である。
図6は、
図5に示すシリンジ設定部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を、E方向から拡大して見た斜視図である。
図5に示すシリンジ設定部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、シリンジ200の本体フランジ209(
図3を参照)を押さえて把持する本体フランジ押さえ部500と、本体フランジ検出部600を有している。
【0035】
図1と
図2に示すように、一例として、シリンジ200のシリンジ本体201がシリンジ設定部6に設定され、シリンジ200のシリンジ本体201が、クランプ5を用いて固定されている。
図5と
図6に示すように、シリンジ設定部6の収容部8は、シリンジ本体201を収容することができる凹部であり、収容部8の軸方向はX方向に沿っている。シリンジ本体201の外周面の一部分が収容部8のシリンジ本体保持部8Dの内面に対して密接され、シリンジ本体201の外周面の残り部分は、外側に露出されている。本体フランジ検出部600は、
図4に示すフォトカプラセンサ250を有している。
【0036】
図5と
図6を参照して、本体フランジ押さえ部500の形状を説明する。この本体フランジ押さえ部500の形状はあくまでも一例であり、本体フランジ押さえ部500はこの形状に限定されない。この本体フランジ押さえ部500は、Y方向とZ方向で形成される面に沿って載置されている。
図5と
図6に示すように、本体フランジ押さえ部500は、先端部501と、2つの連結部588を有している。この先端部501は、好ましくは2つの導入部502,503と、これらの導入部502,503の間に形成されている凹部504を有している。
【0037】
これにより、医療従事者は、
図1と
図2に示すように、シリンジ200の本体フランジ209を、
図6に示す2つの導入部502,503を用いて、本体フランジ押さえ部500の内面とシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vとの間に、
図2のY2方向に沿って容易に挿入できる。従って、本体フランジ押さえ部500は、本体フランジ209を確実に固定することができる。
図5と
図6に示すように、両側の連結部588の間には、ほぼ円形の穴部599を有している。この穴部599は、
図6に示すように、後で説明する覆い部材としてのブーツ800を通すために形成されている。これにより、
図2に示すシリンジ押子202をシリンジ本体201側に向けて押してシリンジ本体201内の薬液を送液する時に、ブーツ800は、本体フランジ押さえ部500に接触することなく弾性変形して収縮できる。
【0038】
図6に戻ると、シリンジポンプ1が使用される状態では、この導入部502は、Z方向に関して上側に位置し、導入部503は下側に位置している。
図6に示すように、凹部504の中央位置には、好ましくはさらに小さい凹部505が形成されている。この小さい凹部505は、シリンジ200が装着された状態で、
図2に示すシリンジ押子202の羽根部分の一部分を入れ込むための溝部分である。これにより、シリンジ押子202の羽根部分が本体フランジ押さえ部500の凹部504の面に乗り上げてしまうことが無い。このため、シリンジ200を所定に位置に確実に固定できる。このことは、シリンジ200だけでなく、
図3に示すシリンジ300,400の場合も同様である。
【0039】
図7は、フロントカバー2Fと、シリンジ押子駆動部7と、本体フランジ押さえ部500と、シリンジ押子押圧部材10と、カバー部材2Vを示す後側から見た分解斜視図である。
図7では、フロントカバー2Fの内面側を示しており、フロントカバー2Fは、本体収容部2Mと、この本体収容部2Mから側方に延長して形成された延長部2Nを有している。本体収容部2Mと延長部2Nの内部には、シリンジ押子駆動部7と、本体フランジ押さえ部500と、ブーツ800が収容されている。延長部2Nには、カバー部材2Vがネジにより固定されている。
図7に示すシリンジ押子駆動部7は、駆動部本体700と、シリンジ押子押圧部材10と、このシリンジ押子押圧部材10に連結されている押圧操作部701を有する。駆動部本体700は、フロントカバー2Fの本体収容部2M内の下部に収容され、押圧操作部701とシリンジ押子押圧部材10は、延長部2N内に収容されている。
【0040】
次に、
図5と
図6に示す覆い部材としてのブーツ800の形状例について説明する。
このブーツ800は、
図2に示すシリンジ押子202をシリンジ本体201側に押してシリンジ本体201内の薬液を送る際に、弾性変形して収縮可能な部材である。
図5に示すように、ブーツ800は、収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと、シリンジ押子押圧部材10の本体部80の間に載置されている。ブーツ800は、弾性変形により伸縮可能な例えばゴムやプラスチックにより作られており、シリンジ押子押圧部材10がX1方向とX2方向に移動するのに伴って、伸張と収縮ができる。
ブーツ800は、
図4に示す送りネジ135等の機械要素を覆うために防沫構造になっている。これにより、例えばシリンジ本体201内の薬液がこぼれたり、上方に載置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液や水分等が飛散しても、送りネジ135等の機械要素に対して付着するのを防ぐ。
【0041】
図8は、ブーツ800の形状例を示す一部断面を有する正面図である。
図8に例示するように、ブーツ800は、例えば複数の同じ大きさの第1凸部分811,812,813,814,815,816と、複数の同じ大きさの第2凸部分821,822,823と、左右の連結部分830,831を有している。第2凸部分821,822,823の直径は、第1凸部分811,812,813,814,815,816の直径よりも小さい。
図6に示すように、左側の連結部分830は、本体フランジ把持部500の穴部599を通って、シリンジ本体保持部8Dの右側側面部8V側に固定されている。
【0042】
図8に示すように、左側の連結部分830には、2つの隣接する第1凸部分811,812が連続して形成され、さらに第1凸部分812には1つの第2凸部分821が連続して形成されている。この1つの第2凸部分821には、2つの隣接する第1凸部分813,814が連続して形成され、さらに第1凸部分814には1つの第2凸部分822が連続して形成されている。さらに、1つの第2凸部分822には、2つの隣接する第1凸部分815,816が連続して形成され、第1凸部分816には1つの第2凸部分823が連続して形成されている。1つの第2凸部分823は右側の連結部分831を介して本体部80の内側面89側に接続されている。
これにより、シリンジ押子押圧部材10が左側に移動してブーツ800が弾性変形して収縮されると、第2凸部分821,822,823が、より直径の大きい第1凸部分に対して入り込むようになっている。
【0043】
次に、
図8を参照して、
図2に示すシリンジ押子駆動部7の構造例を説明する。
図8(A)は、ブーツ800を最も伸長している状態を示し、
図8(B)は、押子フランジ205をシリンジ押子押圧部材10に固定しようとしている状態を示している。
図2と
図8に示すように、シリンジ押子駆動部7は、本体カバー2の延長部2N内に収容して保持されている。この延長部2Nは、本体カバー2の下部分からX1方向に延長することにより形成されている。
図2に示すように、延長部2Nは、上側面部701と、下側面部702と、右側面部703を有している。この延長部2Nは、上側面部701と下側面部702と右側面部703と、
図8に示すすでに説明した収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと、により囲まれた空間SPを有しており、この空間SP内にはシリンジ押子駆動部7が収容されている。
【0044】
図2に示すように、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10は、
図4の制御部100からの指令により、シリンジ押子202の押子フランジ205を、シリンジ本体201に対して相対的にT方向(X2方向)に沿って少しずつ押す。送りネジ135は、シリンジ押子押圧部材10をT(X2)方向に案内するための案内部材の例である。
図4に示すシリンジ押子駆動部7の駆動モータ133は、制御部100の指令により駆動されると、送りネジ135を回転させてシリンジ押子押圧部材10をT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、
図2に示すシリンジ本体201内の薬剤を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0045】
図8に示すように、このシリンジ押子押圧部材10は、プラスチック製の本体部80と、2つの把持部材81,82と、操作レバー83を有している。この本体部80は、延長部2Nのガイドレール84に沿ってX1方向とX2方向(T方向)に沿って移動可能である。2つの把持部材81,82は
図2に示すシリンジ押子202の押子フランジ205の付近を把持することで、押子フランジ205がシリンジ押子押圧部材10から外れないようにする。医療従事者は、指により、この操作レバー83を、
図8(A)に示す初期位置からP1方向にスプリングの付勢力に抗して押し下たり、
図8(B)に示すようにPR方向にスプリングの付勢力により持ち上げて初期位置に復帰させることができる。
圧力センサ900は、破線で示すように、この本体部80に載置されており、しかも2つの把持部材81,82の間に位置されている。これにより、2つの把持部材81,82が
図2に示す押子フランジ205の付近を把持した状態で、圧力センサ900は、
図2に示す押子フランジ205から直接圧力を受けて圧力を検出することができる。
【0046】
次に、
図9と
図10を参照して、
図4に示す駆動モータ133の例を説明する。
図9は、駆動モータ133の構造例を示し、
図10は、
図9に示す駆動モータ133に与えるパルス状の入力電流波形SCW、SCCWを示している。
図9に示す駆動モータ133は、例えば2相4極型のステップモータであり、マグネットロータ180と、電磁石のステータ181を有している。マグネットロータ180は、N極とS極を有する永久磁石であり、ステータ181の中で回転可能である。マグネットロータ180は、出力軸133Kに固定されている。ステータ181は、例えば時計方向に90度ごとに載置された4つの励磁コイル、すなわちコイル181A,181B,181C,181Dを有している。コイル181Aは、X端子であり、コイル181Bは、Y端子であり、コイル181Cは、Xバー端子であり、そしてコイル181Dは、Yバー端子である。
【0047】
図9に示す駆動モータ133のコイル181A,181B,181C,181Dに対して、
図4に示す制御部100の指令CTにより、モータドライバ134から
図10(A)に示す正転用の2相励磁のパルス状の入力電流波形SCWを付与すると、
図9(A)から
図9(D)に示すように、マグネットロータ180は、正転方向CWに回転するようになっている。すなわち、
図9(A)に示すように入力電流波形SCWがコイル181Aとコイル181Dに供給されている状態から、
図9(B)に示すように入力電流波形SCWがコイル181Aとコイル181Bに供給されている状態になると、マグネットロータ180は、90度正転方向CWに正転する。
【0048】
そして、
図9(B)に示すように入力電流波形がコイル181Aとコイル181Bに供給されている状態から、
図9(C)に示すように入力電流波形SCWがコイル181Bとコイル181Cに供給されている状態なると、マグネットロータ180は、さらに90度正転方向CWに正転する。さらに、
図9(C)に示すように入力電流波形SCWがコイル181Bとコイル181Cに供給されている状態から、
図9(D)に示すように入力電流波形SCWがコイル181Cとコイル181Dに供給されている状態なると、マグネットロータ180は、さらに90度正転方向CWに正転する。このようにして、マグネットロータ180がステータ181に対して正転方向CWに連続回転することができる。
また、
図9に示す駆動モータ133のコイル181A,181B,181C,181Dに対して、
図4に示す制御部100の指令CTにより、モータドライバ134から
図10(B)に示す逆転用の2相励磁のパルス状の入力電流波形SCCWを付与すると、
図9(D)から
図9(A)に示すように、マグネットロータ180は、逆転方向CCWに回転するようになっている。
【0049】
このように駆動モータ133は、
図4に示す制御部100の指令CTによりモータドライバ134からパルス状の入力電流波形SCW、SCCWを付与する場合だけ、マグネットロータ180は、90度ごとに正回転あるいは逆回転することができ、制御部100は、マグネットロータ180の回転速度と回転方向を制御することができる。
図9(A)から
図9(D)に示すように、マグネットロータ180は、ステータ181の2極の中間位置で安定しており、マグネットロータ180が回転する時には回転方向と、逆側のステータ極性が反転することで磁気が反発するので、マグネットロータ180が正転あるいは逆転することができる。しかも、駆動モータ133がステップモータであるので、マグネットロータ180の回転方向の角度を正確に制御できる。静止状態では、磁気によりマグネットロータ180が固定されるので、マグネットロータ180の静止している力が大きく、ある角度で停止することに適している。
【0050】
次に、
図11を参照して、本発明の実施形態のシリンジポンプ1の使用例を説明する。
図11は、シリンジポンプ1の駆動モータ113の動作例を示すフロー図である。
図11に示すステップST1では、医療従事者が、
図3に示す複数種類の薬剤が収容されているシリンジ200,300,400の中から、例えば薬剤が収容されているシリンジ200を選択して、
図1と
図2に示すように、シリンジ200をシリンジポンプ1に対して装着する。医療従事者は、
図2に示すように、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定する。シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に固定できる。しかも、本体フランジ209の一部分は、本体フランジ押さえ部500により把持する。
【0051】
図8(A)に示すように、医療従事者は、指で操作レバー83をP1方向へ押したままの状態で、
図8(B)に示すようにシリンジ押子押圧部材10をT(X2方向)方向に押す。これにより、
図2に示すようにシリンジ押子押圧部材10の本体部80を押子フランジ205に接近して、
図8に示すシリンジ押子押圧部材10の2つの把持部材81,82により、シリンジ押子202の押子フランジ205を把持させる。
シリンジ本体201が収容部8のシリンジ本体保持部8D内に固定されると、
図4に示すポテンションメータ122がシリンジ200のシリンジ本体201を検出したことを示すシリンジ識別信号CRを制御部100に送るので、制御部100は例えば
図3に示す複数種類のシリンジ本体201,301,401の内からシリンジ本体201が装着されたことを判別する。しかも、圧力センサ900は、シリンジ200の押子フランジ205により押されるので、圧力センサ900から圧力測定信号PSを制御部100に送る。
【0052】
図4に示すシリンジ押子駆動部7の駆動モータ133は、制御部100の指令CTにより、モータドライバ134から
図10(A)に示す正転用の2相励磁のパルス状の入力電流波形SCWを付与すると、
図9(A)から
図9(D)に示すように、
図9の出力軸113K駆動モータ133のマグネットロータ180と出力軸133Kは、正転方向CWに連続回転する。
図9(A)に示すマグネットロータ180の出力軸133Kと、
図4に示す送りネジ135とは、図示しないギヤ装置により連結されている。従って、出力軸133Kの回転に伴って
図4に示す送りネジ135が回転することにより、送りネジ135は、シリンジ押子押圧部材10を、T方向に少しずつ移動させることができる。これにより、シリンジ押子202は、
図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0053】
次に、
図11に示すステップST2では、上述したようにシリンジ本体201内の薬剤を患者Pに送液している際に、圧力センサ900は、シリンジ200の押子フランジ205により押されることで、制御部100は、予め定めた時間間隔、例えば50ミリ秒間ごとに、圧力センサ900から圧力測定信号PSを受ける。
ステップST3において、制御部100は、送られてくる圧力測定信号PSが、チューブ203の予め定めた閉塞判断基準値LC以下であるか、閉塞判断基準値LCを超えているかを判断する。閉塞判断基準値LCは、例えばシリンジポンプ1と患者Pの位置関係によっては、チューブ203の一部が折れ曲がったり捻じれたりして、チューブ203を閉塞してしまっている場合等を想定しており、このような状態を予め実測すること等により求めることができる。
このチューブ203についての予め定めた閉塞判断基準値LCの値としては、例えば閉塞圧が300mmHgである(但し、使用環境に応じて、「L」:200mmHg,「MH」:300mmHg,「H」の500mmHgの3段階から設定・選択したり、200〜300mmHgの間で任意に設定できるようにしてもよい。)。この場合に、制御部100は、複数の圧力測定信号PSの移動平均の圧力値をとって、チューブ203の閉塞値とする。制御部100は、得られた閉塞値と、閉塞圧判断基準値LCとを比較する。制御部100は、例えば20個の圧力測定信号PSの移動平均をとって、この圧力測定信号PSの移動平均値をチューブ203の閉塞値とすることができる。これにより、チューブ203の閉塞値は、ノイズを避けることができる。
【0054】
得られた閉塞圧が、予め定めた閉塞判断基準値LC、例えば閉塞圧が300mmHgを超える場合とは、例えばシリンジポンプ1と患者Pの位置関係によっては、チューブ203の一部が折れ曲がったり捻じれたりして、チューブ203を閉塞してしまっている場合である。なお、この閉塞圧判断基準値LCは、シリンジ押子押圧部材10をT方向に摺動する際の摺動抵抗分も含んだ値である。
また、駆動モータ133を逆回転することによる閉塞緩和処理によりチューブ203内の薬剤を吸引できる量の値は、シリンジポンプ1に設定されたシリンジの大きさに応じて、制御部100が選択することができる。
図4の制御部100は、
図3に例示する複数種類のシリンジ200,300,400及びその製造メーカに応じて、異なる値の吸引すべき薬剤の積算量のテーブルを有している。制御部100は、ポテンションメータ122からのシリンジ識別信号CRにより、例えば
図3に示す複数種類のシリンジ本体201,301,401の内のどの容量のシリンジが装着されているかを判別でき、メニュー選択ボタン4Eでその製造メーカを選択できるので、制御部100は、この例では判別した例えば最も容量の大きいシリンジ本体201に応じた吸引すべき薬剤の積算量を、薬剤の積算量のテーブルから選択することができる。
なお、押子フランジ205,305,405に設けたRFIDに製造メーカを記憶しておき、読取装置で自動で読み取るようにしてもよい。
【0055】
ステップST3において、圧力測定信号PSの閉塞値が、ステップST3において、チューブ203の予め定めた閉塞判断基準値LC以下であれば、ステップST2に戻るが、圧力測定信号PSが、ステップST3において、チューブ203の予め定めた閉塞判断基準値LCを超えていれば、制御部100は、シリンジポンプ1と患者Pの位置関係によっては、
図2のチューブ203の一部が折れ曲がったり捻じれたりしてチューブ203の一部分が閉塞状態にあるものと判断して、ステップST4に移る。
そこで、ステップST4では、制御部100の指令CTにより、モータドライバ134から
図10(A)に示す正転用の2相励磁のパルス状の入力電流波形SCWを付与するのを停止することで、駆動モータ133のマグネットロータ180の正転は停止する。
ステップST4で駆動モータ133のマグネットロータ180の正転が停止すると、ここの時点で必要に応じて、ステップST5では、
図4の制御部100は、表示部ドライバ130に指令を与えて、表示部3において、「駆動モータが停止」したことを警告表示するとともに、表示部3の表示画面は例えば「黄色の背景」から「白色の背景」に変更することにより、医療従事者に注意を喚起する。また、制御部100は、スピーカ131により、音声により「駆動モータが停止」したことを報知する。
【0056】
ステップST
6では、シリンジポンプ1と患者Pの位置関係によっては、チューブ203の一部が折れ曲がったり捻じれたりして、チューブ203を閉塞しているので、
図4の制御部100は、直ちに
図9の駆動モータ133のマグネットロータ180を逆転方向CCWに回転させる。このように駆動モータ133を逆回転させるのは、次の理由からである。すなわち、医療従事者が、表示部3による警告表示や、音声による報知により、チューブ203の一部が折れ曲がったり捻じれたりしてことに気が付いて、チューブ203の一部が折れ曲がったり捻じれている部分を直してチューブ203の閉塞状態を解消すると、チューブ203内の閉塞が一気に解放されて、チューブ203内では薬剤が急激に患者P側に送られてしまうおそれがあるからである。
【0057】
そこで、このように薬剤が患者P側への急激に送られてしまうことを避けるために、一旦
図4の制御部100は、
図9の駆動モータ133のマグネットロータ180を逆転方向CCWに回転させる。マグネットロータ180を逆回転させる場合には、マグネットロータ180は、例えば2000ppsの回転数で逆回転を行い、このようにチューブ203内の圧力を下げる。これにより、医療従事者が、チューブ203の一部が折れ曲がったり捻じれたりしている状態を元に戻してチューブ203の閉塞状態を解消しても、患者P側に一気に薬剤が送られてしまわないようにするのである。このため、チューブ203の閉塞状態を解除する時の急速ボーラス注入(短時間での薬剤の注入)の対策を行うことができる。
【0058】
図11のステップST7では、閉塞の緩和処理のための逆回転の停止の所定の条件に達したか否か判断部100で判断される。
逆回転を停止するための複数の所定の条件として、1)閉塞圧が所定(50mmHg)以下、2)シリンジ毎に定めた「逆回転量」が所定のステップ数に達する、3)積算量が送液開始時の積算量以下、4)積算量が0、等がある。
ここで、積算量とは、所定の薬剤が収容された全く新しいシリンジ200,300,400を、シリンジポンプ1のシリンジ載置部に載置した後、送液を開始して患者に送液される全部の送液量である。
装着されているシリンジのサイズにより、
図9の駆動モータ133のマグネットロータ180を逆転方向CCWに回転する逆回転量が変わる。これは、制御部100が既に説明したように、例えばシリンジ本体201の装着を把握しているので、例えば
図2に示すシリンジ本体201のサイズに応じて、
図4の制御部100は、モータドライバ134に対して駆動モータ133のマグネットロータ180を逆転方向CCWの逆回転量を指示することで、シリンジ本体201のサイズに応じたチューブ203内の減圧を行う。ただし、チューブ203を減圧する際に、チューブ203の閉塞により生じた加圧力を解消するだけであり、チューブ203内がマイナスの圧力にならないようにする。つまり、マグネットロータ180を逆回転する場合には、マグネットロータ180は、予め定めたシリンジ毎に定めた「逆回転量」分のステップ数だけ逆回転させる。
もし、チューブ203内がマイナスの圧力になると、チューブ203を通じて患者Pの例えば血液等がシリンジ本体201側に吸引されてしまうおそれがあるので、チューブ203内がマイナスの圧力にならないようにチューブ203内の圧力を調整するために、制御部100はマグネットロータ180を逆転方向CCWの逆回転量を設定する必要がある。
【0059】
図11のステップST8では、シリンジ200のシリンジ本体201のサイズに応じた逆回転の上記所定の停止条件のうちいずれかに達すれば、駆動モータ133のマグネットロータ180の逆回転を停止する
。制御部100は、モータドライバ134に指令CTを与えて、駆動モータ133の逆転作動を停止する際に、駆動モータ133に対して逆転作動の励磁を一定時間維持した後に、駆動モータ133の逆転作動を停止させる。
【0060】
例えば、
図9(B)の状態(2)が逆転作動の停止状態であるとすれば、制御部100はモータドライバ134に指令CTを与えて、この状態(2)における入力電流波形の付与状態(励磁状態)を、一定時間だけ維持した後に入力電流波形SCCWの付与を止める。この一定時間とは、例えばマグネットロータ180が、慣性により逆転方向CCWにさらに回ってしまわないようにする程度の期間、好ましくは10msないし100ms程度の期間である。これにより、マグネットロータ180が慣性により逆転方向CCWに回ってしまうことを防いで、チューブ203内の閉塞圧がさらに下がってしまうことを防いでいる。
このように、ステップST
8において駆動モータ133の逆転作動が停止したら、ステップST5に示すように、
図4の制御部100は、表示部ドライバ130に指令を与えて、表示部3において、「駆動モータが停止」したことを警告表示するとともに、表示部3の表示画面は例えば「黄色の背景」から「白色の背景」に変更することにより、医療従事者に注意を喚起する。また、制御部100は、スピーカ131、赤色に点灯または点滅するランプ4Aにより、音声により「駆動モータが停止」したことを報知する。
【0061】
何かの原因で、
図2に示すシリンジ200の本体フランジ209が、本体フランジ押さえ部500により把持された状態から外れたことを、
図4のフォトカプラセンサ250が検出した場合には、制御部100はフォトカプラセンサ250から本体フランジ外れ信号GKを受けるので、この場合には、制御部100は、駆動モータ133のマグネットロータ180の逆回転を停止するとともに、報知部であるスピーカ131、赤色に点灯または点滅するランプ4Aや表示部3を用いて警報を出す。これにより、シリンジ200がシリンジポンプに対して完全な状態で装着されていないにも関わらず、チューブ203内の圧力を下げてしまうことを中止することができる。
また、何かの原因で、
図8に示すシリンジ押子押圧部材10の2つの把持部材81,82から押子フランジ205が外れてしまった場合には、押子フランジ205はもはや圧力センサ900に当接していないので圧力センサ900の圧力測定信号PSが無くなる。この場合にも、制御部100は、駆動モータ133のマグネットロータ180の逆回転を停止するとともに、報知部であるスピーカ131、赤色に点灯または点滅するランプ4Aや表示部3を用いて警報を出す。
これらの場合にも、ステップST5で示すように、
図4の制御部100は、表示部ドライバ130に指令を与えて、表示部3において、「駆動モータが停止」したことを警告表示するとともに、表示部3の表示画面は例えば「黄色の背景」から「白色の背景」に変更することにより、医療従事者に注意を喚起する。また、制御部100は、スピーカ131や赤色に点灯または点滅するランプ4Aにより、音声により「駆動モータが停止」したことを報知する。
【0062】
本発明の実施形態のシリンジポンプ1は、薬剤が充填されているシリンジのシリンジ押子を押すことで、シリンジ内の薬剤を、チューブを介して患者に送液するシリンジポンプであって、シリンジのシリンジ本体を設定するシリンジ設定部と、駆動モータと、駆動モータの正転作動によりシリンジ押子を押してシリンジ内の薬剤を患者に送液する移動部材と、チューブが閉塞した状態であることを検出するためにシリンジ押子を押す際の圧力を検出する圧力センサと、圧力センサの検出する圧力が予め定めた閉塞判断基準値を超えた時に駆動モータを逆転作動させ、圧力センサが検出する圧力が予め定めた閉塞判断基準値以下になった時には駆動モータの逆転作動を停止させる制御部とを有する。
これにより、圧力センサが、チューブが閉塞した状態であることを検出するためにシリンジ押子を押す際の圧力を検出し、制御部は、圧力センサの検出する圧力が予め定めた閉塞判断基準値を超えた時に駆動モータを逆転作動させて、圧力センサが検出する圧力が予め定めた閉塞判断基準値以下になった時には駆動モータの逆転作動を停止させる。
すなわち、圧力センサの検出する圧力が予め定めた閉塞判断基準値を超えた時は、チューブの折れ曲がりや捻じれを原因とする閉塞が生じていると考えられるので、そのまま薬液を送り続けると多量の薬液が所定箇所で滞留する可能性がある。そこで、駆動モータを逆転させて、このような事態を回避する。圧力センサが検出する圧力が予め定めた閉塞判断基準値以下になった時には、チューブの折れ曲がりや捻じれが解消されたことが想定できるので、チューブの所定箇所に滞留された薬液があっても、その滞留状態を解消することができる。
これにより、チューブの折れ曲がりや捻じれを直してチューブの閉塞状態が解除された場合に、薬剤がチューブ中を急激に流れないようにしながら薬剤の送液を中止することができ、薬剤の送液動作の安全性を高めることができる。
【0063】
駆動モータはステップモータであり、圧力センサは移動部材に載置されているので、駆動モータとしてステップモータを用いることで、駆動モータを正転作動から逆転作動を容易に行うことができ、しかも圧力センサはシリンジ押子からの圧力を直接受けることができるので、チューブの閉塞状態を検出し易い。
制御部は、駆動モータの逆転作動を停止する際に、駆動モータの励磁を一定時間維持させるので、駆動モータのロータの逆転作動を停止させる時に、ロータの慣性によりさらにロータが逆回転してしまうのを防ぐことができ、チューブ内の薬剤を無用に吸引することが無い。
【0064】
駆動モータが停止されると、駆動モータが停止されたことを報知する報知部を有するので、報知部が駆動モータの停止を報知するので、医療従事者はこの駆動モータの停止による薬剤の送液動作の中止を、確認することができる。
報知部は、駆動モータが停止されたことを音声で知らせるスピーカであることを特徴とするので、スピーカが駆動モータの停止を音声で報知するので、医療従事者はこの駆動モータの停止による薬剤の送液動作の中止を、音声により確認することができる。
報知部は、駆動モータが停止されたことを表示する表示部であるので、表示部が駆動モータの停止を報知するので、医療従事者はこの駆動モータの停止による薬剤の送液動作の中止を、視覚により確認することができる。
【0065】
シリンジポンプの本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が載置され、シリンジポンプの本体の下部分には、シリンジ設定部と移動部材が載置されている。これにより、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、シリンジからの薬液の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、操作パネル部の操作ボタンを操作することができる。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
駆動モータ133は、2相ステップモータ以外に、例えば3相ステップモータでも良い。