(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441087
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ピリジルアミノ酢酸化合物含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20181210BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20181210BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20181210BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20181210BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20181210BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20181210BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20181210BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20181210BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20181210BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
A61K31/444
A61P27/06
A61P27/02
A61K9/08
A61K47/44
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/08
A61K47/10
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-2272(P2015-2272)
(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-147763(P2015-147763A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-2810(P2014-2810)
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋子
【審査官】
石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−151548(JP,A)
【文献】
特表2002−509101(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/141334(WO,A1)
【文献】
特開2002−356420(JP,A)
【文献】
特開2012−180346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩と、非イオン性界面活性剤を含有する医薬組成物であって、さらに、エデト酸又はその塩を含有する医薬組成物。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はビタミンE TPGSを含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレンヒマシ油が、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油及びポリオキシル40ヒマシ油からなる群より選択されるポリオキシエチレンヒマシ油を含む請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群より選択されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート及びポリソルベート65からなる群より選択されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.001〜5%(w/v)である請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤の含有量が、0.5〜3%(w/v)である請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、前記非イオン性界面活性剤の含有量が1〜20000質量部である請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の含有量が、0.0001〜0.1%(w/v)である請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の含有量が、0.001〜0.003%(w/v)である請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
エデト酸又はその塩の含有量が、0.001〜1%(w/v)である請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
エデト酸又はその塩の含有量が、0.01〜0.1%(w/v)である請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、エデト酸又はその塩の含有量が0.1〜1000質量部である請求項1〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
ホウ酸若しくはその塩、クエン酸若しくはその塩、又は酢酸若しくはその塩をさらに含有する請求項1〜13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
ソルビン酸を含有しない請求項1〜14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
ポリエチレン製の容器に入れられた請求項1〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
緑内障若しくは高眼圧症を予防若しくは治療し、又は眼圧を下降させるための請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩と非イオン性界面活性剤を含有する医薬組成物において、エデト酸又はその塩を含有させることにより、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を安定化する方法。
【請求項19】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩と非イオン性界面活性剤を含有する医薬組成物において、エデト酸又はその塩を含有させることにより、該医薬組成物の保存効力を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する医薬組成物、並びに当該化合物又はその塩を安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルは、下記式(1):
【化1】
で示される化合物である。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルなどのピリジルアミノ酢酸化合物が記載されており、特許文献1には、ピリジルアミノ酢酸化合物の点眼剤として、濃グリセリン及びポリソルベート80を含有する製剤例が記載されている。
【0004】
しかしながら、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する医薬組成物であって、さらに、エデト酸又はその塩を含有する医薬組成物は記載されておらず、また、医薬組成物中の(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の安定性及び医薬組成物の保存効力を向上することは一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0190852号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0054172号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩(以下、「本化合物」ともいう)を含有する医薬組成物の開発段階で、本化合物を溶解した水性組成物は、本化合物の安定性が悪いことを見出した。
【0007】
本発明の課題は、本化合物を含有する医薬組成物であって、医薬組成物中の本化合物が安定であり、優れた保存効力を有する医薬組成物を提供することである。また、本発明の別の課題は、医薬組成物中の本化合物の安定性及び医薬組成物の保存効力を向上する方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために、本化合物を含有する組成物中の添加剤について鋭意研究を行った結果、本化合物を含有する組成物において、さらに、エデト酸又はその塩を添加したときに、医薬組成物中において本化合物が長期保存下でも高い残存率を有すること、及び、医薬組成物が優れた保存効力を有することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に関する。
【0009】
(1) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する医薬組成物であって、さらに、エデト酸又はその塩を含有する医薬組成物。
(2) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩と、非イオン性界面活性剤を含有する医薬組成物であって、さらに、エデト酸又はその塩を含有する医薬組成物。
【0010】
(3) 前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はビタミンE TPGSを含む(2)記載の医薬組成物。
【0011】
(4) 前記ポリオキシエチレンヒマシ油が、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油及びポリオキシル40ヒマシ油からなる群より選択されるポリオキシエチレンヒマシ油を含む(3)記載の医薬組成物。
【0012】
(5) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群より選択されるポリオキシエチレンヒマシ油を含む(3)記載の医薬組成物。
【0013】
(6) 前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート及びポリソルベート65からなる群より選択されるポリオキシエチレンヒマシ油を含む(3)に記載の医薬組成物。
【0014】
(7) 前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.001〜5%(w/v)である(2)〜(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0015】
(8) 非イオン性界面活性剤の含有量が、0.8〜2%(w/v)である(7)に記載の医薬組成物。
【0016】
(9) 6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、前記非イオン性界面活性剤の含有量が1〜20000質量部である(2)〜(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0017】
(10) 6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の含有量が、0.0001〜0.10%(w/v)である(1)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0018】
(11) 6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の含有量が、0.001〜0.003%(w/v)である(10)に記載の医薬組成物。
【0019】
(12) エデト酸又はその塩の含有量が、0.001〜1%(w/v)である(1)〜(11)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0020】
(13) エデト酸又はその塩の含有量が、0.01〜0.1%(w/v)である(12)に記載の医薬組成物。
【0021】
(14) 6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、エデト酸又はその塩の含有量が0.1〜1000質量部である(1)〜(13)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0022】
(15)ホウ酸若しくはその塩、クエン酸若しくはその塩、又は酢酸若しくはその塩をさらに含有する(1)〜(14)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0023】
(16) ソルビン酸を含有しない(1)〜(15)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0024】
(17) ポリエチレン製の容器に入れられた(1)〜(16)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0025】
(18) 緑内障若しくは高眼圧症の予防若しくは治療し、又は眼圧を下降させるための(1)〜(17)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0026】
(19) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する医薬組成物において、エデト酸又はその塩を含有させることにより、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を安定化する方法。
【0027】
(20) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する医薬組成物において、エデト酸又はその塩を含有させることにより、該医薬組成物の保存効力を向上させる方法。
【0028】
なお、前記(1)から(20)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、医薬組成物中の本化合物が長期間にわたり安定化され、優れた保存効力を有する医薬組成物を提供することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬品として十分な安全性を有するものである。また、本発明によれば、医薬組成物中の本化合物が長期間にわたり安定化され、医薬組成物の保存効力を向上させる方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、医薬組成物中の本化合物が長期間にわたり安定化され、優れた保存効力を有する医薬組成物を製造するためにエデト酸又はその塩を使用するための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明の医薬組成物に含有される、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩は、米国特許出願公開第2012/0190852号明細書に記載の方法等、当該技術分野における通常の方法に従って製造することができる。
【0032】
本発明の医薬組成物において、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの塩は、薬理上許容される塩であれば特に制限されない。具体的に、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩等の無機酸塩;又は酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩若しくはアスパラギン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、好ましくは、塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0033】
本発明の医薬組成物において、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の含有量は、特に制限されない。具体的に、下限は0.0001%(w/v)が好ましく、0.0003%(w/v)がより好ましく、0.0005%(w/v)がさらに好ましく、0.001%(w/v)がさらにより好ましい。上限は0.1%(w/v)が好ましく、0.03%(w/v)がより好ましく、0.01%(w/v)がさらに好ましく、0.008%(w/v)がさらにより好ましく、0.005%(w/v)がさらにもっと好ましく、0.003%(w/v)が特に好ましい。より詳細に、含有量は、0.0001〜0.1%(w/v)が好ましく、0.0003〜0.03%(w/v)がより好ましく、0.0005〜0.01%(w/v)がさらに好ましく、0.001〜0.008%(w/v)がさらにより好ましく、0.001〜0.005%(w/v)がさらにもっと好ましく、0.001〜0.003%(w/v)が最も好ましい。本化合物の含有量が比較的に少なければ、本化合物の溶解に必要な界面活性剤(典型的にはポリオキシエチレンヒマシ油)の量が少なくて足りるため、本化合物の含有量は、0.01%(w/v)未満であることが好ましい。尚、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの塩を含有する場合、塩が遊離した時の(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの含有量が前記の範囲となることを意味する。
【0034】
本発明の医薬組成物において、本化合物を溶解させるために界面活性剤を配合することが望ましい。界面活性剤としては、医薬品の添加物として使用可能なカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を配合することができる。中でも、非イオン性界面活性剤が好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキルアミンポリオキシエチレン付加物、脂肪酸トリエタノールアミンモノエステル塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、脂肪酸ポリアミン縮合物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アシルアミノアルキル型アンモニウム塩、アシルアミノアルキルピリジニウム塩、ジアシロキシエチルアンモニウム塩、アルキルイミダゾリン、1−アシルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリン、1−ヒドロキシルエチル‐2−アルキルイミダゾリン等が挙げられる。アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩としては、ベンザルコニウム塩化物、セタルコニウム塩化物等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、リン脂質等が挙げられ、リン脂質としてはレシチン等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。中でも、安定性を更に向上できる観点で、ポリオキシエチレンヒマシ油が好ましい。
【0035】
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレンヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は5〜100が好ましく、20〜50がより好ましく、30〜40が特に好ましく、35が最も好ましい。ポリオキシエチレンヒマシ油の具体例としては、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油等が挙げられ、ポリオキシル35ヒマシ油が最も好ましい。
【0036】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は10〜100が好ましく、20〜80がより好ましく、40〜70が特に好ましく、60が最も好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が最も好ましい。
【0037】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65等が挙げられ、ポリソルベート80が最も好ましい。
【0038】
ビタミンE TPGSは、トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルともいう。
【0039】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
【0040】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール等が挙げられる。ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0041】
本発明の医薬組成物において、界面活性剤の含有量は、特に制限されない。具体的に、下限は0.001%(w/v)が好ましく、0.01%(w/v)がより好ましく、0.1%(w/v)がさらに好ましく、0.5%(w/v)が特に好ましく、0.8%(w/v)が最も好ましい。上限は10%(w/v)が好ましく、5%(w/v)がより好ましく、4%(w/v)がさらに好ましく、3%(w/v)が特に好ましく、2%(w/v)が最も好ましい。より詳細に、含有量は、0.001〜10%(w/v)が好ましく、0.01〜5%(w/v)がより好ましく、0.1〜4%(w/v)がさらに好ましく、0.5〜3%(w/v)が特に好ましく、0.8〜2%(w/v)が最も好ましい。上記含有量は、いずれの界面活性剤にもあてはまるが、特に非イオン性界面活性剤について好ましい。
【0042】
本発明の医薬組成物において、6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩に対する、非イオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されない。具体的に、6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、非イオン性界面活性剤の含有量の下限は1質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましく、100質量部がさらにより好ましく、200質量部が特に好ましい。上限は20000質量部が好ましく、10000質量部がより好ましく、5000質量部がさらに好ましく、3000質量部がさらにもっと好ましく、2000質量部が特に好ましい。より詳細に非イオン性界面活性剤の含有量は、6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、1〜20000質量部が好ましく、10〜10000質量部がより好ましく、50〜5000質量部がさらに好ましく、100〜3000質量部が特に好ましく、200〜2000質量部が最も好ましい。
【0043】
本発明の医薬組成物において、エデト酸の塩としては、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム等挙げられる。
【0044】
本発明の医薬組成物において、エデト酸又はその塩の含有量は、特に制限されない。具体的に、含有量の下限は0.001%(w/v)が好ましく、0.005%(w/v)がより好ましく、0.01%(w/v)がさらに好ましく、0.02%(w/v)が最も好ましい。含有量の上限は1.0%(w/v)が好ましく、0.5%(w/v)がより好ましく、0.1%(w/v)がさらに好ましく、0.05%(w/v)が最も好ましい。より詳細に、エデト酸又はその塩の含有量は、0.001〜1%(w/v)が好ましく、0.005〜0.5%(w/v)がより好ましく、0.01〜0.1%(w/v)が最も好ましい。
【0045】
本発明の医薬組成物において、6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対する、エデト酸又はその塩の含有量は、特に制限されない。具体的に、6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、エデト酸又はその塩の含有量の下限は、0.1質量部が好ましく、0.2質量部がより好ましく、0.5質量部がさらに好ましく、1質量部が特に好ましく、3質量部が最も好ましい。上限は、1000質量部が好ましく、500質量部がより好ましく、200質量部がさらに好ましく、100質量部が特に好ましく、50質量部が最も好ましい。より詳細に、エデト酸又はその塩の含有量は、6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩1質量部に対して、0.1〜1000質量部が好ましく、0.2〜500質量部がより好ましく、0.5〜200質量部がさらに好ましく、1〜100質量部が特に好ましく、3〜50質量部が最も好ましい。
【0046】
本発明の医薬組成物には、必要に応じて添加剤を用いることができ、添加剤としては、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体等を加えることができる。
【0047】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を配合することができる。緩衝剤の例としては、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε−アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。弱酸性領域での緩衝能の観点から、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩が好ましく、クエン酸又はその塩が特に好ましい。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。本発明の医薬組成物に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001〜10%(w/v)が好ましく、0.01〜5%(w/v)がより好ましく、0.1〜3%(w/v)がさらに好ましく、0.2〜2%(w/v)が最も好ましい。
【0048】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。等張化剤の例としては、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。本発明の医薬組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.01〜10%(w/v)が好ましく、0.02〜7%(w/v)がより好ましく、0.1〜5%(w/v)がさらに好ましく、0.5〜4%(w/v)が特に好ましく、0.8〜3%(w/v)が最も好ましい。
【0049】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。安定化剤の例としては、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の医薬組成物に安定化剤を配合する場合の安定化剤の含有量は、安定化剤の種類などにより適宜調整することができる。
【0050】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な防腐剤を適宜配合することができる。防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。なお、6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の安定性の観点から、ソルビン酸を含まないことが望ましい。本発明の医薬組成物に防腐剤を配合する場合の防腐剤の含有量は、防腐剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001〜1%(w/v)が好ましく、0.0005〜0.1%(w/v)がより好ましく、0.001〜0.05%(w/v)がさらに好ましく、0.002〜0.01%(w/v)が最も好ましい。
【0051】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な抗酸化剤を適宜配合することができる。抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の医薬組成物に抗酸化剤を配合する場合の抗酸化剤の含有量は、抗酸化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001〜1%(w/v)が好ましく、0.0005〜0.1%(w/v)がより好ましく、0.001〜0.02%(w/v)がさらに好ましく、0.005〜0.010%(w/v)が最も好ましい。
【0052】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な高分子量重合体を適宜配合することができる。高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。本発明の医薬組成物に高分子量重合体を配合する場合の高分子量重合体の含有量は、高分子量重合体の種類などにより適宜調整することができるが、0.001〜5%(w/v)が好ましく、0.01〜1%(w/v)がより好ましく、0.1〜0.5%(w/v)がさらに好ましい。
【0053】
本発明の医薬組成物のpHは、4.0〜8.0が好ましく、4.5〜7.5がより好ましく、5.0〜7.0がより好ましく、5.5〜6.5が最も好ましい。
【0054】
本発明の医薬組成物は、種々の素材で製造された容器に入れて保存することができる。例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等の容器を用いることができ、点眼のし易さ(容器の硬さ)や本化合物の安定性等の観点で、ポリエチレン製の容器に入れて保存するのが好ましい。
【0055】
本発明の医薬組成物の剤形は、医薬品として使用可能なものであれば特に制限されなく、点眼剤、眼科用注射剤等が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。これらは当該技術分野における通常の方法に従って製造することができる。また、本発明の医薬組成物は、基本的に液剤であり、その溶媒又は分散媒は水であることが好ましい。
【0056】
本発明の医薬組成物は、緑内障若しくは高眼圧症の予防若しくは治療し、又は眼圧を下降させるのに有用である。本発明における緑内障としては、原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障、プラトー虹彩緑内障、混合型緑内障、発達緑内障、ステロイド緑内障、落屑緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障、水晶体の嚢性緑内障、plateau iris syndrome等が挙げられる。
【0057】
本発明の医薬組成物は、1又は複数、好ましくは1〜3の、より好ましくは、1又は2の他の緑内障若しくは高眼圧症治療剤又は眼圧下降剤を含有してもよく、他の緑内障治療剤としては、特に制限はない。具体的には、市販又は開発中の緑内障治療剤等が好ましく、市販の緑内障治療剤等がより好ましく、本化合物と作用機序の異なる市販の緑内障治療剤等が特に好ましい。より具体的には、非選択性交感神経作動薬、α
2受容体作動薬、α
1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、Rhoキナーゼ阻害剤などが挙げられる。
非選択性交感神経作動薬の具体例としては、ジピベフリンが挙げられ、α
2受容体作動薬の具体例としては、ブリモニジン、アプラクロニジンが挙げられ、α
1受容体遮断薬の具体例としてはブナゾシンが挙げられ、β受容体遮断薬の具体例としては、チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロールが挙げられ、副交感神経作動薬の具体例としてはピロカルピンが挙げられ、炭酸脱水酵素阻害剤の具体例としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミドが挙げられ、プロスタグランジン類の具体例としては、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、ビマトプロスト、トラボプロストが挙げられ、Rhoキナーゼ阻害剤の具体例としては、リパスジルが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に製剤例及び試験結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0059】
製剤例
以下に本化合物を用いた代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は組成物100mL中の含量である。
【0060】
[製剤例1]
点眼剤(100mL中)
本化合物 0.001g
ホウ酸 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリソルベート80 0.5g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0061】
[製剤例2]
点眼剤(100mL中)
本化合物 0.001g
リン酸二水素ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ビタミンE TPGS 0.8g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0062】
[製剤例3]
点眼剤(100mL中)
本化合物 0.001g
クエン酸三ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0063】
なお、前記製剤例1〜3における本化合物、非イオン性界面活性剤、エデト酸、添加剤の種類や配合量を適宜調整し所望の組成物を得ることができる。
【0064】
1.安定性評価試験(1)
エデト酸の本化合物の安定性に与える影響を検討した。
【0065】
1−1.被験製剤の調製
ポリオキシル35ヒマシ油5gに10%リン二水素ナトリウム溶液20mL、5%エデト酸二ナトリウム二水和物溶液10mL、および精製水を900mL加え、溶解した。水酸化ナトリウム溶液もしくは希塩酸を適量加えpHを6前後に調整したのちに、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル(以下、化合物Aともいう)0.003gを加え、溶解した。これに精製水を適量加えて全量を1000mLとし、実施例1の製剤を調製した。
【0066】
実施例1の調製方法と同様の方法にて、表1に示す実施例2及び比較例1〜2の製剤を調製した。
【0067】
1−2.試験方法
被験製剤をガラスアンプルに5mL充填し、60℃で、任意期間保存したときの、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの含有量を高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その残存率(%)を算出した。
【0068】
1−3.試験結果及び考察
試験結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1から明らかなように、実施例1〜2の製剤は、比較例1〜2の製剤に比べ60℃で1週間明らかに高い残存率を維持した。これにより、本発明の医薬組成物は、優れた安定性を有することが確認された。
【0071】
2.安定性評価試験(2)
本発明の医薬組成物における添加剤及びpHの影響を検討した。
【0072】
2−1.被験製剤の調製
実施例1の調製方法と同様の方法にて、表2〜8に示す実施例3〜34の製剤を調製した。
【0073】
2−2.試験方法
被験製剤をガラスアンプルに5mL充填し、60℃で、任意期間保存したときの、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの含有量を高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その残存率(%)を算出した。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
表2〜8から明らかなように、実施例3〜34の製剤は、60℃で2又は4週間に亘り、高い残存率を維持した。
【0082】
3.保存効力評価試験
本発明の医薬組成物の保存効力を検討した。
【0083】
3−1.被験製剤の調製
実施例1の調製方法と同様の方法にて、表9及び10に示す実施例35〜43及び比較例3の製剤を調製した。
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
3−2.試験方法
(菌種)
接種菌として以下の菌株を使用した。
細菌:
大腸菌,Escherichia Coli ATCC 8739
緑膿菌,Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027
黄色ブドウ球菌,Staphylococcus aureus ATCC 6538
酵母菌およびカビ類:
カンジダ,Candida albicans ATCC 10231
クロコウジカビ,Aspergillus niger ATCC16404
【0087】
(試験手順)
第16改正日本薬局方に規定された保存効力試験に準じて試験を行った。即ち、10
7〜10
8cfu/mLとなるように接種菌液を調製し、この接種菌液を10
5〜10
6cfu/mLとなるように、実施例35〜43及び比較例3の製剤に各接種菌液を無菌的に接種し、均一に混合し試料とした。これらの試料を遮光下20〜25℃に保存し、14及び28日目に各試料から1mLを採取し、生菌数を測定した。
【0088】
細菌、酵母菌およびカビ類の生菌数の測定は、第16改正日本薬局方の微生物限度試験法に規定された最確数法に準じて実施した。
【0089】
最確数法にて求めた生菌数から、接種菌液から求めた初期菌数を100とした場合の残存率を求めた。
【0090】
(判定方法)
14日後および28日後における生菌数が、いずれの菌種においても表11の基準を満たす場合、「適」とした。また、各サンプリングポイントにおける結果がいずれも「適」の場合、「保存効力あり」と判定した。
【0091】
【表11】
【0092】
3−3.試験結果及び考察
試験結果および判定を表12に示す。
【0093】
【表12】
【0094】
表12から明らかなように、実施例35〜43の製剤は、第16改正日本薬局方に規定された保存効力試験の基準に適合する保存効力を有した。これにより、本発明の医薬組成物は、優れた保存効力を有することが確認された。