特許第6441151号(P6441151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441151
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/64 20060101AFI20181210BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   B29C45/64
   B22D17/26 J
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-73970(P2015-73970)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193516(P2016-193516A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】芝山 智彦
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−189575(JP,A)
【文献】 実開昭62−185018(JP,U)
【文献】 特開2007−007931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型が取り付けられるプラテンを備え、
前記プラテンは、型締時の面圧分布を調整する面圧分布調整機構と、プラテン本体と、前記金型が取り付けられる金型取付部材とを有し、
前記面圧分布調整機構は、前記金型取付部材と前記プラテン本体との間に配設され、
前記面圧分布調整機構は、前記金型取付部材と前記プラテン本体との間に空間を確保するスペーサ部と、前記空間における隙間を調整するものであって型開閉方向に対し垂直な基準面からの高さを異なる高さに変更自在な高さ調整部とを有し、
前記スペーサ部は、前記高さ調整部の外側に配置され、
前記金型取付部材は、前記高さ調整部の外側に、溝部を有し、前記高さ調整部と前記スペーサ部との間に前記溝部を有する、射出成形機。
【請求項2】
金型が取り付けられるプラテンを備え、
前記プラテンは、型締時の面圧分布を調整する面圧分布調整機構と、プラテン本体と、前記金型が取り付けられる金型取付部材とを有し、
前記面圧分布調整機構は、前記金型取付部材と前記プラテン本体との間に配設され、
前記面圧分布調整機構は、前記金型取付部材と前記プラテン本体との間に空間を確保するスペーサ部と、前記空間における隙間を調整するものであって型開閉方向に対し垂直な基準面からの高さを異なる高さに変更自在な高さ調整部とを有し、
前記スペーサ部は、前記高さ調整部の外側に配置され、
前記金型取付部材は、前記高さ調整部の外側に、その内側よりも型開閉方向寸法の小さい肉薄部を有し、前記高さ調整部と前記スペーサ部との間に前記肉薄部を有する、射出成形機。
【請求項3】
前記金型取付部材は、前記高さ調整部の外側に、溝部を有し、前記高さ調整部と前記スペーサ部との間に前記溝部を有する、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記面圧分布調整機構は、前記高さ調整部を保持する保持部を有し、
前記保持部は、前記基準面に対し平行にスライドする、請求項1〜のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
複数の前記高さ調整部独立に前記基準面に対し平行にスライドする、請求項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記面圧分布調整機構は、前記高さ調整部の荷重を検出する荷重検出部を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型装置の型閉、型締、および型開を行う型締装置を有する。型締装置は、固定金型が取り付けられる固定プラテンと、可動金型が取り付けられる可動プラテンを有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−249637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、型締時の面圧分布の調整が煩雑であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、型締時の面圧分布の調整を容易にした、射出成形機の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
金型が取り付けられるプラテンを備え、
前記プラテンは、型締時の面圧分布を調整する面圧分布調整機構と、プラテン本体と、前記金型が取り付けられる金型取付部材とを有し、
前記面圧分布調整機構は、前記金型取付部材と前記プラテン本体との間に配設され、
前記面圧分布調整機構は、前記金型取付部材と前記プラテン本体との間に空間を確保するスペーサ部と、前記空間における隙間を調整するものであって型開閉方向に対し垂直な基準面からの高さを異なる高さに変更自在な高さ調整部とを有し、
前記スペーサ部は、前記高さ調整部の外側に配置され、
前記金型取付部材は、前記高さ調整部の外側に、溝部を有し、前記高さ調整部と前記スペーサ部との間に前記溝部を有する、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、型締時の面圧分布の調整を容易にした、射出成形機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による射出成形機を示す図である。
図2図1の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機を示す図である。図2は、図1の一部拡大図である。射出成形機は、金型装置30の型閉、型締、および型開を行う型締装置10を有する。
【0011】
型締装置10は、固定金型32が取付けられる固定プラテン12と、可動金型33が取付けられる可動プラテン13とを有する。固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。型締装置10は、固定プラテン12に対し可動プラテン13を移動させることにより金型装置30の型閉、型締、および型開を行う。型締状態の固定金型32と可動金型33との間にキャビティ空間が形成される。キャビティ空間に成形材料を充填し、冷却固化させることにより成形品が得られる。成形品は、型開後に、金型装置30から突き出される。
【0012】
固定プラテン12は、型締時の面圧分布を調整する面圧分布調整機構50と、面圧分布調整機構50を支持する固定プラテン本体70とを有する。面圧分布調整機構50は、固定金型32と固定プラテン本体70との間に配設される。
【0013】
尚、本実施形態では、固定プラテン12が面圧分布調整機構50を有するが、可動プラテン13が面圧分布調整機構を有してもよく、固定プラテン12と可動プラテン13の両方が面圧分布調整機構を有してもよい。
【0014】
固定プラテン12は、固定金型取付部材80をさらに有してよい。固定金型取付部材80は、固定金型32がボルトなどで取り付けられるものであり、例えば板状に形成される。面圧分布調整機構50は、固定金型取付部材80と固定プラテン本体70との間に配設されてよい。
【0015】
面圧分布調整機構50は、固定金型32(より詳細には固定金型32における可動金型33とのパーティング面)の面圧分布を調整する。面圧分布調整機構50は、型開閉方向に対し垂直な基準面からの高さを調整する高さ調整部51を保持する。基準面は仮想面であってもよい。高さ調整部51は、型締時に力を伝達するものである。面圧分布調整機構50は、複数の高さ調整部51を間隔をおいて保持してもよい。複数の高さ調整部51は、複数の方向(例えば図1において紙面上下方向、および紙面垂直方向)に間隔をおいて配列されてよい。面圧分布調整機構50は、例えば、高さ調整部51、スペーサ部54、保持部55、荷重検出部60などを有する。
【0016】
高さ調整部51は、基準面からの高さを異なる高さに変更自在とされる。例えば、高さ調整部51は、基準面からの高さの異なるものに替えられる。高さ調整部51は、着脱自在とされてよい。替える方法は、交換、削除、追加のいずれでもよい。例えば、高さ調整部51が型開閉方向に分割され積層されたものある場合、複数の積層板の一部のみ厚さの異なる他の積層板に交換してもよいし、複数の積層板の一部のみ削除してもよいし、他の積層板を追加してもよい。複数の積層板の全部を交換してもよい。いずれの場合も、高さ調整部51は、高さの異なる別のものに替わる。尚、高さ調整部51は、型開閉方向に分割され積層されたものではなく、分割されていない一体ものでもよい。
【0017】
少なくとも1つの高さ調整部51を高さの異なる別のものに替えることで、型締時の固定金型32の面圧分布を容易に調整することができる。一の高さ調整部51の高さと、他の一の高さ調整部51の高さとは、異なってよい。
【0018】
尚、高さ調整部51は、圧電素子などで構成されてもよく、伸縮することで異なる高さに変更されてもよい。
【0019】
固定プラテン12は、固定金型取付部材80と固定プラテン本体70との間に、空間53を有する。空間53は、型開閉方向視で、固定金型32と重なるように形成され、固定金型32よりも大きくてよい。
【0020】
高さ調整部51は、空間53における隙間を調整してもよい。例えば、高さ調整部51は、固定金型取付部材80側に配設され、固定プラテン本体70と高さ調整部51との間に形成される隙間を調整する。隙間は、型締時以外に形成される。型締時に、高さ調整部51は固定プラテン本体70と接触し、隙間はなくなる。隙間の大きさに応じた面圧分布が型締時に固定金型32に生じる。隙間が大きいところ(高さ調整部51の高さが低いところ)は、隙間が小さいところ(高さ調整部51の高さが高いところ)よりも、型締時の荷重が小さい。
【0021】
尚、高さ調整部51は、固定プラテン本体70側に配設され、固定金型取付部材80と高さ調整部51との間に形成される隙間を調整してもよい。
【0022】
スペーサ部54は、空間53を確保する。スペーサ部54は、固定金型取付部材80と、固定プラテン本体70とを間隔をおいて連結する。型開閉時に、固定金型32の姿勢が安定化でき、金型装置30のガイドピン(不図示)のかじりなどが抑制できる。
【0023】
尚、本実施形態では、固定金型取付部材80、スペーサ部54、および固定プラテン本体70が別々に形成されるが、一体に形成されてもよい。
【0024】
保持部55は、高さ調整部51を保持する。高さ調整部51は、保持部55の保持穴56に嵌め込まれる。保持部55の保持穴56は、貫通穴であるが、有底穴でもよい。尚、高さ調整部51は保持部55にボルトや磁石などで固定されてもよく、その保持方法は特に限定されない。
【0025】
保持部55は、基準面に対し平行にスライドしてよい。固定金型32が固定金型取付部材80に取付けられた状態で、保持部55をスライドさせることで、高さ調整部51を高さの異なる別のものに替えることが可能である。
【0026】
保持部55は、複数の分割部55−1、55−2、55−3、55−4に分割されてよい。複数の分割部55−1、55−2、55−3、55−4は、それぞれ高さ調整部51を保持し、独立に基準面に対し平行にスライドしてよい。特定の高さ調整部51のみをスライドさせることができ、作業効率が良い。
【0027】
固定金型取付部材80は、ガイド部81を有してよい。ガイド部81に沿って保持部55がスライドする。ガイド部81としては、ガイドレールが用いられるが、ガイド溝が用いられてもよい。ガイド溝は、固定金型取付部材80における固定プラテン本体70との対向面に形成されてもよい。
【0028】
固定金型取付部材80は、高さ調整部51の外側に、溝部82を有してよい。高さ調整部51とスペーサ部54とは、溝部82を挟んで反対側に配設される。溝部82は、例えば固定金型取付部材80における固定プラテン本体70との対向面に形成されるが、その反対面(固定金型32の取付面)に形成されてもよい。型締時に、溝部82を中心に固定金型取付部材80が変形することで、外側部分の曲げが内側部分に伝達するのを抑制できる。


【0029】
固定金型取付部材80は、高さ調整部51の外側に、その内側よりも型開閉方向寸法の小さい肉薄部83を有してよい。肉薄部83は、固定金型取付部材80における固定金型32の取付面に段差を形成してなるが、固定金型取付部材80における固定プラテン本体70との対向面に段差を形成してなってもよい。肉薄部83にスペーサ部54が配設される。型締時に、肉薄部83が変形することで、外側部分の曲げが内側部分に伝達するのを抑制できる。
【0030】
尚、肉薄部83は、固定金型取付部材80の表面に段差を形成してなるが、有底穴を形成してなってもよく、スペーサ部54の周辺のみ薄くなっていてもよい。
【0031】
荷重検出部60は、高さ調整部51の荷重を検出する。例えば、荷重検出部60は、歪みゲージ式であって、高さ調整部51の歪みを検出することによって高さ調整部51の荷重を検出する。尚、荷重検出部60は、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよい。荷重検出部60は、高さ調整部51毎に取付けられてよく、高さ調整部51毎に高さ調整部51の荷重を検出する。型締時に面圧分布調整機構50における荷重分布が検出できる。
【0032】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態の固定プラテン12は固定金型取付部材80と固定プラテン本体70との間に空間53を有し、高さ調整部51は空間53における隙間を調整するが、本発明はこれに限定されない。例えば、高さ調整部51は固定金型取付部材80と固定金型32との間に配設されてもよく、空間53はなくてもよい。
【0034】
また、上記実施形態の面圧分布調整機構50は、型締時の固定金型32の面圧分布の調整に用いられるが、型締時の固定金型32の面圧分布の測定に用いられてもよい。
【0035】
また、上記実施形態の型締装置10は、型開閉方向が水平方向の横型であるが、型開閉方向が鉛直方向の竪型であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 型締装置
12 固定プラテン
13 可動プラテン
30 金型装置
32 固定金型
33 可動金型
50 面圧分布調整機構
51 高さ調整部
53 空間
54 スペーサ部
55 保持部
55−1、55−2、55−3、55−4 分割部
56 保持穴
60 荷重検出部
70 固定プラテン本体
80 固定金型取付部材
81 ガイド部
82 溝部
83 肉薄部
図1
図2