特許第6441172号(P6441172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441172
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】表面増強ラマン散乱ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   G01N21/65
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-119451(P2015-119451)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2017-3500(P2017-3500A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓也
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−538264(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0034729(US,A1)
【文献】 特表2011−511933(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0097022(US,A1)
【文献】 特公昭48−036917(JP,B1)
【文献】 特開2015−034728(JP,A)
【文献】 特開2014−196981(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0061737(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0019834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面増強ラマン散乱素子と、
前記表面増強ラマン散乱素子を収容する収容空間を規定しているとともに、第一及び第二開口が設けられている容器と、
前記収容空間から前記第一開口を通して気体を吸引する吸引部と、を備え、
前記容器は、
前記収容空間に面し、かつ、前記表面増強ラマン散乱素子が配置される配置部と、
前記収容空間を介して前記表面増強ラマン散乱素子と対向し、かつ、前記表面増強ラマン散乱素子に向かう励起光及び前記表面増強ラマン散乱素子からの表面増強ラマン散乱光を透過させる光透過部と、を有する、
表面増強ラマン散乱ユニット。
【請求項2】
前記配置部は、
前記表面増強ラマン散乱素子が載置されている第一領域と、
前記収容空間に面し、前記第一領域の周囲に位置している第二領域と、を含み、
前記第一領域が前記光透過部から離れる方向にくぼんでいるように前記第一領域と前記第二領域との間に段差が形成されている、請求項1記載の表面増強ラマン散乱ユニット。
【請求項3】
前記段差の高さは、前記表面増強ラマン散乱素子の厚さと同等である、請求項2記載の表面増強ラマン散乱ユニット。
【請求項4】
前記表面増強ラマン散乱素子は、前記第一開口と前記第二開口との間に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項記載の表面増強ラマン散乱ユニット。
【請求項5】
前記容器は管状をなし、前記第一開口は前記容器の一端に設けられているとともに、前記第二開口は前記容器の他端に設けられている、請求項1〜4のいずれか一項記載の表面増強ラマン散乱ユニット。
【請求項6】
前記吸引部は、前記収容空間と前記第一開口を介して連通する内部空間を規定しているとともに、前記内部空間を少なくとも増大させるように変形する、請求項1〜5のいずれか一項記載の表面増強ラマン散乱ユニット。
【請求項7】
前記容器は、前記配置部を有する本体部材と、前記本体部材と対向し、かつ、前記光透過部を有する蓋部材とを備えており、
前記本体部材と前記蓋部材とにより、前記収容空間が規定されている、請求項1〜6のいずれか一項記載の表面増強ラマン散乱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面増強ラマン散乱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)を生じさせる光学機能部を備える表面増強ラマン散乱ユニットが記載されている。この表面増強ラマン散乱ユニットでは、光学機能部上に形成される空間が、液体試料の配置されるセルとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−196981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の表面増強ラマン散乱ユニットに液体試料をセットするには、液体試料を上記空間に滴下した後、上記空間をカバーガラスで密閉する必要があり、作業が煩雑であった。
【0005】
本発明は、液体試料のセット作業の作業性を向上させることが可能な表面増強ラマン散乱ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表面増強ラマン散乱ユニットは、表面増強ラマン散乱素子と、表面増強ラマン散乱素子を収容する収容空間を規定しているとともに、第一及び第二開口が設けられている容器と、収容空間から第一開口を通して気体を吸引する吸引部と、を備え、容器は、収容空間に面し、かつ、表面増強ラマン散乱素子が配置される配置部と、収容空間を介して表面増強ラマン散乱素子と対向し、かつ、表面増強ラマン散乱素子に向かう励起光及び表面増強ラマン散乱素子からの表面増強ラマン散乱光を透過させる光透過部と、を有する。
【0007】
本発明に係る表面増強ラマン散乱ユニットは、吸引部を備え、吸引部は容器の収容空間から第一開口を通して気体を吸引する。これにより、容器の収容空間内が負圧となる。したがって、容器の第二開口を液体試料に接触させると、容器の収容空間に液体試料が導入される。また、表面増強ラマン散乱素子は、収容空間に収容され、励起光及び表面増強ラマン散乱光を透過させる光透過部と対向する配置部に配置されている。したがって、導入された液体試料は、光透過部と対向する表面増強ラマン散乱素子上に配置される。この結果、液体試料のセット作業の作業性を向上させることができる。
【0008】
配置部は、表面増強ラマン散乱素子が載置されている第一領域と、収容空間に面し、第一領域の周囲に位置している第二領域と、を含み、第一領域が光透過部から離れる方向にくぼんでいるように第一領域と第二領域との間に段差が形成されていてもよい。この場合、段差が形成されていない場合と比べて、光透過部と表面増強ラマン散乱素子との間の空間が大きくなるため、収容空間に導入された液体試料が光透過部と表面増強ラマン散乱素子との間の空間を通過する際の圧力損失が減る。これにより、収容空間に導入された液体試料の移動がスムーズとなる。したがって、収容空間に導入された液体試料が表面増強ラマン散乱素子上に配置され易い。
【0009】
段差の高さは、表面増強ラマン散乱素子の厚さと同等であってもよい。この場合、第二領域の表面が表面増強ラマン散乱素子の表面と面一となる。したがって、収容空間に導入された液体試料の移動が更にスムーズとなる。
【0010】
表面増強ラマン散乱素子は、第一開口と第二開口との間に設けられていてもよい。この場合、吸引部により、液体試料を収容空間に導入することで、表面増強ラマン散乱素子の位置まで液体試料が導入され易い。したがって、表面増強ラマン散乱素子上に液体試料を配置し易い。
【0011】
容器は管状をなし、第一開口は容器の一端に設けられているとともに、第二開口は容器の他端に設けられていてもよい。この場合、表面増強ラマン散乱素子は、第一開口と第二開口との間に確実に設けられるので、表面増強ラマン散乱素子上に液体試料を確実に配置し易い。
【0012】
吸引部は、収容空間と第一開口を介して連通する内部空間を規定しているとともに、内部空間を少なくとも増大させるように変形してもよい。この場合、吸引部は、内部空間を増大させるように変形するので、容器の収容空間から容易に気体を吸引することができる。
【0013】
容器は、配置部を有する本体部材と、本体部材と対向し、かつ、光透過部を有する蓋部材とを備えており、本体部材と蓋部材とにより、収容空間が規定されていてもよい。この場合、本体部材と蓋部材とにより、収容空間を容易に規定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体試料のセット作業の作業性を向上させることが可能な表面増強ラマン散乱ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る表面増強ラマン散乱ユニットの分解斜視図である。
図2図1の表面増強ラマン散乱ユニットの概略平面図である。
図3図2のIII−III線に沿った断面図である。
図4図2のIV−IV線に沿った断面図である。
図5図1の表面増強ラマン散乱ユニットに液体試料に導入する方法の一例について説明する図である。
図6図1の表面増強ラマン散乱ユニットを適用した測定装置の構成図である。
図7】変形例1に係る表面増強ラマン散乱ユニットの断面図である。
図8】変形例2に係る表面増強ラマン散乱ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1図4を参照して、本実施形態に係る表面増強ラマン散乱ユニットの構成について説明する。図1は、表面増強ラマン散乱ユニットの分解斜視図である。図2は、図1の表面増強ラマン散乱ユニットの概略平面図である。図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【0018】
図1に示されるように、表面増強ラマン散乱ユニット(以下、SERSユニットという)1は、表面増強ラマン散乱素子(以下、SERSチップという)2と、容器10と、吸引部3と、を備えている。
【0019】
SERSチップ2は、例えば、厚さ0.5mmで、一辺が4mmの正方形板状を呈している。SERSチップ2は、第一方向D1で互いに対向する一対の主面2aを有している。SERSチップ2は、一方の主面2a上に光学機能部(不図示)を有している。光学機能部は、金等の材質からなる数nm〜数百nmサイズの金属ナノ構造により構成されている。
【0020】
光学機能部に励起光EL(図6参照)が入射されると、金属ナノ構造の周りに表面プラズモンが励起されるとともに、強電磁場が誘起される。この金属ナノ構造に分子が吸着されると、共鳴ラマン効果によりラマン散乱が10〜10程度増強される表面増強ラマン散乱(SERS)が生じる。ラマン散乱光には、励起光ELの周波数νよりも分子の振動周波数νだけ高い周波数(ν+ν)に変調されたアンチストークス散乱光と、励起光ELの周波数νよりも分子の振動周波数νだけ低い周波数(ν−ν)に変調されたストークス散乱光とがある。
【0021】
容器10は、本体(本体部材)11と、カバー(蓋部材)12とを有している。本体11は、第一本体13と、一対の第二本体14と、第三本体15と、を含んでいる。
【0022】
第一本体13は、例えば、直方体形状を呈している。第一本体13は、一対の主面13aと、一対の端面13bと、一対の側面13cと、を有している。一対の主面13aは、第一方向D1で互いに対向している。一対の端面13bは、一対の主面13aを接続するように第一方向D1に延び、かつ、第二方向D2で互いに対向している。一対の側面13cは、一対の主面13aを接続するように第一方向D1に延び、かつ、第三方向D3で互いに対向している。なお、第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は、互いに交差している。ここでは、第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は、互いに直交している。
【0023】
各主面13aは、長方形状を呈している。各主面13aの第二方向D2に沿う長さ(即ち、長辺の長さ)は、例えば、30mmであり、第三方向D3に沿う長さ(即ち、短辺の長さ)は、例えば、10mmである。各端面13bは、長方形状を呈している。各端面13bの第三方向D3に沿う長さ(即ち、長辺の長さ)は、例えば、10mmであり、第一方向D1に沿う長さ(即ち、短辺の長さ)は、例えば、2mmである。各側面13cは、長方形状を呈している。各側面13cの第二方向D2に沿う長さ(即ち、長辺の長さ)は、例えば、30mmであり、第一方向D1に沿う長さ(即ち、短辺の長さ)は、例えば、2mmである。
【0024】
各第二本体14は、例えば、直方体形状を呈している。第二本体14は、一対の主面14aと、一対の端面14bと、一対の側面14cと、を有している。一対の主面14aは、第一方向D1で互いに対向している。一対の端面14bは、一対の主面14aを接続するように第一方向D1に延び、かつ、第二方向D2で互いに対向している。一対の側面14cは、一対の主面14aを接続するように第一方向D1に延び、かつ、第三方向D3で互いに対向している。
【0025】
各主面14aは、長方形状を呈している。各主面14aの第二方向D2に沿う長さ(即ち、長辺の長さ)は、例えば、30mmであり、第三方向D3に沿う長さ(即ち、短辺の長さ)は、例えば、4mmである。各端面14bは、長方形状を呈している。各端面14bの第三方向D3に沿う長さ(即ち、長辺の長さ)は、例えば、4mmであり、第一方向D1に沿う長さ(即ち、短辺の長さ)は、例えば、0.5mmである。各側面14cは、長方形状を呈している。各側面14cの第二方向D2に沿う長さ(即ち、長辺の長さ)は、例えば、30mmであり、第一方向D1に沿う長さ(即ち、短辺の長さ)は、例えば、0.5mmである。
【0026】
第三本体15は、例えば、厚さが1.5mmで、一辺が6mmの正方形の板状部材である。第三本体15は、第一方向D1で互いに対向する一対の主面15aを含んでいる。
【0027】
第一及び第二本体13,14は、少なくともその表面が、測定対象の液体試料L(図6参照)に化学的な影響を与えず、かつ、測定対象の液体試料Lから化学的な影響を受けない材質により構成されている。第一及び第二本体13,14は、その表面と表面以外とが異なる材質により構成されていてもよい。第一及び第二本体13,14は、例えば、樹脂(ポリプロピレン、スチロール樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、PET、PMMA、シリコーン、液晶ポリマー等)、セラミック、ガラス、シリコン等の材質により構成されている。
【0028】
第三本体15は、例えば、第一及び第二本体13,14と同じ材質により構成されている。なお、第三本体15は、第一及び第二本体13,14と異なる材質により構成されていてもよい。
【0029】
第一本体13には、第二方向D2の中央よりも他方の端面13b側に、第一本体13を第一方向D1に貫通する貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、一方の主面13a側に位置する一方の領域と、他方の主面13a側に位置する他方の領域とからなっている。この二つの領域は、第一方向D1に並び、かつ、開口面積が異なっている。第一方向D1から見て、一方の領域の外縁は、他方の領域の外縁の内側に位置している。
【0030】
一方の領域の外縁と、他方の領域の外縁とは、接続面16aにより接続されている。接続面16aと一対の主面13aとは、互いに平行をなしている。接続面16aと一方の主面13aとの間に形成された段差16bは、SERSチップ2の厚さと同等で、例えば、0.5mmとされている。接続面16aと他方の主面13aとの間に形成された段差16cは、第三本体15の厚さと同等で、例えば、1.5mmとされている。なお、SERSチップ2の厚さとは、光学機能部における金属ナノ構造の厚さも含む厚さである。また、同等とは、完全に一致する場合だけでなく、例えば、±0.1mm以内の製造誤差も含まれる意味である。
【0031】
貫通孔16の一方の領域は、他方の端面13bから、例えば、5mmの位置にある。一方の領域は、SERSチップ2の形状と同等の形状を有している。即ち、一方の領域は、SERSチップ2と嵌り合う形状を有している。なお、一方の領域とSERSチップ2とは、互いに嵌り合う形状であればよく、平面形状が、円形、多角形状等であってもよい。
【0032】
貫通孔16の他方の領域は、他方の端面13bから、例えば、4mmの位置にある。他方の領域の形状は、第三本体15の形状と同等の形状を有している。即ち、他方の領域は、第三本体15と嵌り合う形状を有している。なお、他方の領域と第三本体15とは、互いに嵌り合う形状であればよく、平面形状が、円形、多角形状等であってもよい。
【0033】
第一本体13と、一対の第二本体14とは、一方の主面13aと、他方の主面14aとを互いに対向させた状態で、一体的に形成されている。一対の第二本体14は、一方の主面13aの第三方向D3の両側に配置され、第三方向D3で互いに離間している。一方の第二本体14の他方の側面14cと、他方の第二本体14の一方の側面14cとは、第三方向D3で互いに離間し、かつ、対向している。一方の第二本体14の他方の側面14cと、他方の第二本体14の一方の側面14cとは、一方の主面13aとともに、溝17を規定している。
【0034】
溝17は、各端面13b間、及び各端面14b間を接続している。溝17の側面は、一方の第二本体14の他方の側面14cと、他方の第二本体14の一方の側面14cとにより構成されている。溝17の深さ(第一方向D1に沿う長さ)は、これらの側面14cの短辺の長さに一致し、例えば、0.5mmとされている。
【0035】
溝の底面17aは、一方の主面13aのうち、一対の第二本体14間に位置する部分により構成されている。底面17aは、長方形状を呈している。溝17の幅は、第一本体13の幅よりも狭い。溝17の幅は、底面17aの第三方向D3に沿う長さ(即ち、短辺の長さ)に相当し、例えば、2mmである。一方の主面13a側において、貫通孔16の第三方向D3での中央部分は、溝17内に連通し、貫通孔16の第三方向D3での両端部分は、一対の第二本体14により覆われている。
【0036】
第一本体13の一方の端面13bと、第二本体14の一方の端面14bとは、U字状を呈する一つの平面をなしている。第一本体13の他方の端面13bと、第二本体14の他方の端面14bとは、U字状を呈する一つの平面をなしている。第一本体13の一方の側面13cと、第二本体14の一方の側面14cとは、長方形状を呈する一つの平面をなしている。第一本体13の他方の側面13cと、第二本体14の他方の側面14cとは、長方形状を呈する一つの平面をなしている。
【0037】
カバー12は、長方形状を呈する平板である。カバー12は、例えば、長さが30mm、幅が10mm、厚さが0.15mmとされている。カバー12は、第一方向D1で互いに対向する一対の主面12aを含んでいる。
【0038】
カバー12は、光透過性を有するとともに、少なくともその表面が、測定対象の液体試料L(図6参照)に化学的な影響を与えず、かつ、測定対象の液体試料Lから化学的な影響を受けない材質により構成されている。カバー12は、その表面と表面以外とが異なる材質により構成されていてもよい。ここでは、カバー12の全体が、例えば、ガラス等の光透過性を有する材質により構成されている。したがって、カバー12の全体が、SERSチップ2に向かう励起光EL(図6参照)及びSERSチップ2からの表面増強ラマン散乱光SL(図6参照)を透過させる光透過部として機能している。換言すると、カバー12は、光透過部を有している。
【0039】
吸引部3は、楕円球状を呈し、内部空間S1を規定している。吸引部3には、開口31が設けられている。開口31は、例えば、長方形状を呈し、長辺が容器10の第三方向D3に沿う長さに対応し、短辺が容器10の第一方向D1に沿う長さに対応している。吸引部3は、例えば、ゴム等の弾性部材により構成され、外圧を加えることにより内部空間S1を縮小させるように変形するとともに、外圧の除去により内部空間S1を増大させるように変形する。
【0040】
以上のように構成された各部材から、SERSユニット1を組み立てる方法の一例について説明する。まず、第三本体15の一方の主面15aとSERSチップ2の他方の主面2aとを、第一方向D1で対向させるようにして、第三本体15の一方の主面15aの中央部分に、SERSチップ2を載置する。続いて、SERSチップ2及び第三本体15を、第一本体13の貫通孔16の二つの領域のそれぞれに嵌合させる。具体的には、SERSチップ2を貫通孔16の一方の領域に嵌合させ、第三本体15を貫通孔16の他方の領域に嵌合させる。続いて、第一本体13と第三本体15とを接着剤による接着、融着、圧着等の方法で一体化させる。これにより、第一〜第三本体13〜15が一体化されてなる本体11が得られる。
【0041】
SERSチップ2及び第三本体15は、貫通孔16に嵌合することにより、第二及び第三方向D2,D3の位置が固定されている。第三本体15の一方の主面15aの周縁部分は、接続面16aに当接している。他方の主面15aは、第一本体13の他方の主面13aとともに一つの平面をなしている。
【0042】
SERSチップ2は、本体11に配置された状態となる。この状態において、SERSチップ2の一方の主面2aの第三方向D3での両端部分は、各第二本体14の他方の主面14aに当接している。SERSチップ2は、各第二本体14の他方の主面14aと、第三本体15の一方の主面15aとの間に挟み込まれ、第一方向D1の位置が固定されている。SERSチップ2の一方の主面2aの第三方向D3での中央部分は、貫通孔16から溝17内に露出し、溝17の底面17aの一部を構成する。SERSチップ2の一方の主面2aと、溝17の底面17aの貫通孔16を除く部分とは、面一となり、一つの平面をなしている。即ち、SERSチップ2の一方の主面2aを含んだ状態で、溝17の底面17aは平面をなしている。
【0043】
続いて、各第二本体14の一方の主面14aとカバー12の他方の主面12aとを、第一方向D1で対向させるようにして、各第二本体14上にカバー12を載置し、各第二本体14とカバー12とを接着剤による接着、融着、圧着等の方法で一体化させる。これにより、本体11と、カバー12とが一体化されてなる容器10が得られる。
【0044】
図2図4に示されるように、容器10では、本体11とカバー12とにより、液体試料L(図5参照)を収容する収容空間S2が規定されている。即ち、容器10は、収容空間S2を規定している。収容空間S2は、本体11の溝17と、カバー12の他方の主面12aとにより規定される直方体形状の空間(以下、直方体空間という)を含んでいる。この直方体空間は、容器10を第二方向D2に貫通している。即ち、容器10は、管状をなしている。容器10の第二方向D2の一方の端(一端)10aには、第一開口P1が設けられている。容器10の第二方向D2の他方の端(他端)10bに第二開口P2が設けられている。
【0045】
容器10において、SERSチップ2は、第一開口P1と第二開口P2との間に設けられている。カバー12は、直方体空間を介してSERSチップ2と対向している。本体11は、収容空間S2に面し、かつ、SERSチップ2が配置される配置部20を有している。配置部20は、SERSチップ2が実際に載置されている第一領域21と、収容空間S2に面し、第一領域21の周囲に位置している第二領域22とを含んでいる。
【0046】
第一領域21は、具体的には、第三本体15の一方の主面15aの中央部分である。第二領域22は、具体的には、溝17の底面17aのうち、貫通孔16を除く部分である。ここで、溝17の底面17aのうち、貫通孔16を除く部分は、第二方向D2で第三本体15の一方の主面15aの中央部分と隣り合っている。したがって、第二領域22は、第一領域21の周囲に位置していると言える。
【0047】
上述のように、接続面16aと一方の主面13aとの間には、段差16bが形成されている。第一領域21は、接続面16aと第一方向D1での位置が一致しており、第二領域22は、一方の主面13aの一部である。したがって、第一領域21と第二領域22との間には、第一領域21がカバー12から離れる方向にくぼんでいるように、段差16bが形成されているといえる。段差16bの高さは、SERSチップ2の厚さと同等であるため、SERSチップ2の一方の主面2aと第二領域22とは、面一となり、一つの平面をなす。
【0048】
次に、このようにして組み立てられた容器10に吸引部3を取り付ける。具体的には、容器10の一方の端10aを、開口31を通って内部空間S1内に挿入する。開口31の形状は、容器10の一方の端10aの形状に対応している。これにより、吸引部3が第一開口P1を覆い、吸引部3の内部空間S1が第一開口P1を介して容器10の収容空間S2と連通する。
【0049】
図5は、図1の表面増強ラマン散乱ユニットに液体試料に導入する方法の一例について説明する図である。
【0050】
図5に示されるように、まず、SERSユニット1と、液体試料Lが貯留された貯留容器とを用意し、SERSユニット1を貯留容器中の液体試料Lから離間させた状態で、SERユニット1の吸引部3に外圧を加える。外圧の印加は、例えば、使用者が吸引部3を指でつまむ等することにより行われる。この結果、吸引部3は、内部空間S1(図1参照)を縮小させる向きに変形する。
【0051】
続いて、SERSユニット1の第二開口P2を貯留容器中の液体試料Lと接触させ、この状態で吸引部3の外圧を除去する。これにより、吸引部3は、内部空間S1を増大させるように変形する。これに伴い、収容空間S2内の空気が第一開口P1を通って内部空間S1内に吸引される。この結果、収容空間S2内が負圧となるので、液体試料Lが貯留容器から第二開口P2を通って収容空間S2内に導入される。収容空間S2に導入された液体試料Lにより、SERSチップ2が濡れることで、SERSチップ2上に液体試料Lが配置される。ここで、負圧とは、SERSユニット1の外部の気圧、即ち、大気圧よりも低い圧力を意味している。最後に、SERSユニット1を貯留容器中の液体試料Lから離間させ、処理を終了する。
【0052】
図6は、図1の表面増強ラマン散乱ユニットを適用した測定装置の構成図である。
【0053】
図6に示されるように、測定装置100は、SERSユニット1と、光源101と、第一レンズ102と、ハーフミラー103と、第二レンズ104と、フィルタ105と、第三レンズ106と、分光器107と、を具備している。SERSユニット1の収容空間S2には、液体試料Lが導入されている。
【0054】
光源101は、例えば、レーザ光源である。光源101を半導体レーザ光源とすることにより、光源101、更には測定装置100の小型化が可能となる。光源101は、SERSチップ2において表面プラズモンを励起可能な波長の光、即ち、励起光ELを出射する。
【0055】
第一レンズ102は、光源101から出射された励起光ELを平行光とする。これにより、第一レンズ102から第二レンズ104までの距離を自由に設定できるので、光路調整が容易となる。ハーフミラー103は、第一レンズ102により平行光とされた励起光ELを透過させる。第二レンズ104は、ハーフミラー103を透過した励起光ELを貫通孔16(図3参照)から溝17内に露出するSERSチップ2上に集光する。励起光ELのスポット径は、例えば、溝17の幅と同等とされる。第二レンズ104は、焦点位置を調整する機構を備え、これにより、液体試料Lの屈性率に合わせて励起光ELをSERSチップ2上に集光することができる。
【0056】
SERSユニット1は、カバー12が収容空間S2の上方に配置されるとともに、配置部20が収容空間S2の下方に配置されている。SERSユニット1は、第二レンズ104により集光された励起光ELを入射し、励起光ELの反射光RLを出射する。SERSユニット1はまた、励起光ELの入射により、表面プラズモンが励起されるとともに、強電磁場が誘起される結果、液体試料Lの表面増強ラマン散乱光SLを出射する。励起光EL、反射光RL及び表面増強ラマン散乱光SLは、カバー12を通って入射及び出射される。なお、SERSユニット1は、励起光EL、反射光RL及び表面増強ラマン散乱光SLは、カバー12を通って入射及び出射されるように配置されていれば、どのように配置されていてもよい。また、第二レンズ104により焦点位置を調整する代わりに、SERSユニット1の位置を調整することにより、焦点位置を調整してもよい。
【0057】
第二レンズ104はまた、SERSユニット1から出射された反射光RL及び表面増強ラマン散乱光SLを集光し、平行光とする。ハーフミラー103はまた、第二レンズ104により平行光とされた反射光RL及び表面増強ラマン散乱光SLを反射する。フィルタ105は、ハーフミラー103で反射された反射光RL及び表面増強ラマン散乱光SLのうち反射光RLをカットする。これにより、分光器107で反射光RLが迷光として観測されるのを防ぐ。このように、表面増強ラマン散乱光SLに対する反射光RLの影響が排除されるので、微弱な表面増強ラマン散乱光SLの測定精度が向上する。第三レンズ106は、フィルタ105を通過した表面増強ラマン散乱光SLを分光器107上に集光する。
【0058】
分光器107は、スリットを有し、第三レンズ106により集光された表面増強ラマン散乱光SLをスリットに入射し、スペクトルを測定する。分光器107は、0から4000cm−1までの波数のスペクトルを測定できればよい。物質の指紋領域と呼ばれる0から1500cm−1程度のスペクトル範囲を調べる用途であれば、分光器107は、例えば、2000cm−1まで測定できればよい。分光器107は、アンチストークス散乱光又はストークス散乱光のいずれかのスペクトルを測定する。分光器107は、通常は強度の高いストークス散乱光のスペクトルを測定する。
【0059】
以上のように構成された測定装置100では、まず、光源101から出射された励起光ELは、第一レンズ102により平行光とされた後、ハーフミラー103を透過する。続いて、励起光ELは、第二レンズ104によりSERSユニット1上に集光されて入射する。励起光ELの入射により、SERSユニット1から反射光RL及び表面増強ラマン散乱光SLが出射される。反射光RL及び表面増強ラマン散乱光SLは、第二レンズ104により平行光とされた後、ハーフミラー103で反射される。反射光RLはフィルタ105でカットされる。表面増強ラマン散乱光SLはフィルタ105を通過した後、第三レンズ106により分光器107のスリットに入射する。これにより、表面増強ラマン散乱光SLのスペクトルが測定される。
【0060】
以上説明したように、SERSユニット1は、内部空間S1を規定している吸引部3を備えている。吸引部3は、ゴム等の弾性部材により構成され、外圧を加えることにより内部空間S1を縮小させるように変形するとともに、外圧の除去により内部空間S1を増大させるように変形する。吸引部3は第一開口P1を覆い、吸引部3の内部空間S1が第一開口P1を介して容器10の収容空間S2と連通している。このため、吸引部3に外圧を加え、内部空間S1を縮小させた後、外圧を除去し、内部空間S1を増大させると、収容空間S2内の空気を内部空間S1内に吸引することができる。この結果、収容空間S2内が負圧となる。したがって、SERSユニット1によれば、第二開口P2を液体試料Lに接触させると、収容空間S2に液体試料Lが導入される。
【0061】
SERSチップ2は、収容空間S2に収容され、励起光EL及び表面増強ラマン散乱光SLを透過させるカバー12と対向する配置部20に配置されている。したがって、SERSユニット1では、収容空間S2に導入された液体試料Lは、SERSチップ2上に配置されることになる。カバー12が本体11と一体化されているので、液体試料Lの導入後に別途カバー12を設ける作業及びカバー12を固定する作業等が不要となる。この結果、液体試料Lのセット作業の作業性を向上させることができる。
【0062】
SERSユニット1では、SERSチップ2の載置されている第一領域21は、カバー12から離れる方向にくぼんでいるように、第一領域21と第二領域22との間に段差16bが形成されている。これにより、段差16bが形成されていない場合と比べて、カバー12とSERSチップ2との間の空間が大きくなる。このため、収容空間S2に導入された液体試料Lがカバー12とSERSチップ2との間の空間を通過する際の圧力損失が減る。これにより、収容空間S2に導入された液体試料Lの移動がスムーズとなる。したがって、収容空間S2に導入された液体試料LがSERSチップ2上に配置され易い。
【0063】
特に、段差16bの高さは、SERSチップ2の厚さと同等であり、SERSチップ2一方の主面2aと第二領域22とは、面一となり一つの平面をなしている。即ち、SERSチップ2一方の主面2aを含んだ状態で、溝17の底面17aは平面となっている。したがって、SERSチップ2の一方の主面2aが第二領域22から突出している場合と比べて、収容空間S2に導入された液体試料Lの移動が更にスムーズとなる。これにより、液体試料LがSERSチップ2上に更に配置され易い。また、SERSチップ2の一方の主面2aが第二領域22よりもくぼんでいる場合と比べて、第一本体13の厚さを薄くできることにより、容器10の小型化を図ることができる。
【0064】
SERSユニット1が測定装置100に適用される際、通常、SERSチップ2は、カバー12が収容空間S2の上方に配置されるとともに、配置部20が収容空間S2の下方に配置される。したがって、収容空間S2に導入された液体試料Lが、SERSチップ2の一方の主面2a上の光学機能部に配置されるためには、液体試料Lの量をSERSチップ2の一方の主面2a上まで達する量とする必要がある。SERSユニット1では、段差16bが形成されていることにより、液体試料Lの量が少なくても、SERSチップ2の一方の主面2a上の光学機能部に液体試料Lが配置され易い。
【0065】
SERSチップ2は、第一領域21に載置され、貫通孔16内に収容されている。仮に、SERSチップ2が第二領域22、即ち、底面17a上に載置され、直方体空間に収容されていた場合、直方体空間を、SERSチップ2を収容可能なサイズに設定する必要がある。具体的には、直方体空間の厚さ(第一方向D1に沿う長さ)を、SERSチップ2の厚さ以上に設定する必要がある。直方体空間の底面、即ち、底面17aの面積は、第一領域21の面積、即ち、貫通孔16の開口面積よりも広い。このため、SERSチップ2を直方体空間に収容させるよりも、貫通孔16に収容させた方が、収容空間S2の増大が抑制される。SERSユニット1では、SERSチップ2が貫通孔16内に収容され、直方体空間に収容されていないので、収容空間S2の増大が抑制される。
【0066】
SERSチップ2は、第一開口P1と第二開口P2との間に設けられている。このため、吸引部3により、液体試料Lを収容空間S2に導入することで、SERSチップ2の位置まで液体試料Lが導入され易い。したがって、SERSチップ2の一方の主面2a上に液体試料Lを配置し易い。
【0067】
容器10は管状をなし、第一開口P1は容器10の一方の端10aに設けられているとともに、第二開口P2は容器10の他方の端10bに設けられている。したがって、SERSチップ2は、第一開口P1と第二開口P2との間に確実に設けられるので、SERSチップ2上に液体試料Lを確実に配置し易い。また、収容空間S2全体を液体試料Lで充填し易い。収容空間S2全体が液体試料Lで充填されることにより、SERSチップ2上に配置される液体試料Lの量(厚さ、深さ)が一定となる。これにより、光の減衰量が一定となるので、励起光率、検出効率といった測定条件を一定に揃えることができる。
【0068】
第一開口P1が一方の端10aに配置され、第二開口P2が他方の端10bに配置されることで、第一開口P1に接続されている吸引部3を構成する部位により、第二開口P2が閉塞されるのを抑制することができる。また、SERSユニット1に液体試料Lを導入する際、吸引部3が貯留容器中の液体試料Lから最も離れた位置に配置される。これにより、吸引部3、及び吸引部3を操作する使用者の指が液体試料Lに接触しない。
【0069】
収容空間S2全体が液体試料Lで充填されると、液体試料Lの表面が容器10により規定されることになる。これにより、液体試料Lの表面が表面張力により湾曲し、レンズ効果が発生することを抑制できる。また、外部からの振動が液体試料Lに伝わり、液体試料Lの表面が振動することを抑制できる結果、光学的な攪乱の発生も抑制できる。更に、カバー12は、平板であるため、カバー12によるレンズ効果の発生も抑制できる。
【0070】
容器10は、配置部20を有する本体11と、本体11と対向し、かつ、光透過部を有するカバー12とを備えている。このため、本体11とカバー12とにより、収容空間S2を容易に規定することができる。また、容器10は、第二方向D2の中央よりも一方の端10b側にSERSチップ2が配置されていない部分を有しているので、この部分をSERSユニット1の把持部として機能させることができる。したがって、使用者は、SERSチップ2に触れずに、SERSユニット1を指で挟んで容易に取り扱うことができる。
【0071】
容器10は、第一及び第二開口P1,P2以外は密閉されているので、液体試料Lの状態変化を抑制可能となる。具体的には、液体試料Lが蒸発によりなくなること、及び、蒸発により液体試料Lの濃度が変化することを抑制可能となる。また、液体試料Lが容器10の外部に流出し難い。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0073】
図7は、変形例1に係る表面増強ラマン散乱ユニットの断面図である。図7に示されるように、変形例1に係るSERSユニット1Aでは、吸引部3の開口31が容器10の一方の端10a全体を覆うのではなく、第一開口P1と直接接続されていてもよい。SERSユニット1Aは、実施形態に係るSERSユニット1とこれ以外の点で一致している。
【0074】
以上のように構成されたSERSユニット1Aにおいても、SERSユニット1と同様に、液体試料Lのセット作業の作業性を向上させることができる。
【0075】
図8は、変形例2に係る表面増強ラマン散乱ユニットの断面図である。図8に示されるように、変形例2に係るSERSユニット1Bでは、第一領域21と第二領域22との間に段差が形成されていない。また、吸引部3Bは、一面が開口34をなす箱状の容器32と、開口34を覆うシート33と、を有している。容器32は、例えば、本体11と同じ材質により構成されている。シート33は、例えば、ゴム等の弾性部材により構成されている。シート33は、その周縁が接着等により容器32に固定され、開口34を隙間なく覆っている。吸引部3Bは、容器10と一体化され、吸引部3Bの規定する内部空間S1は、容器32の側面に形成された開口35を介して収容空間S2と連通している。吸引部3Bは、シート33に対する外圧の印加及び外圧の除去により、内部空間S1を縮小及び増大させるように変形する。
【0076】
以上のように構成されたSERSユニット1Bにおいても、SERSユニット1と同様に、液体試料Lのセット作業の作業性を向上させることができる。
【0077】
SERSユニット1,1Aにおいて、段差16bの高さは、必ずしもSERSチップ2の厚さと同等でなくてもよい。例えば、段差16bの高さがSERSチップ2の厚さよりも高い場合でも、SERSチップ2の一方の主面2aが溝17の底面17aよりもくぼんでいるので、収容空間S2に導入された液体試料LがSERSチップ2上に配置され易い。また、SERSチップ2は直方体空間に収容されていないので、収容空間S2の増大を抑制できる。なお、この場合、SERSチップ2の第一方向D1の位置を固定するために、SERSチップ2を接着剤等により第三本体15の一方の主面15a上に固定してもよい。
【0078】
SERSチップ2は、第一開口P1と第二開口P2との間に設けられていなくてもよい。この場合であっても、SERSユニット1を立てた状態で収容空間S2に液体試料Lを導入した後、SERSユニット1を傾けた状態で液体試料LをSERSチップ2上に移動させることができる。したがって、第一及び第二開口P1,P2は、少なくとも、収容空間S2に液体試料Lが導入可能となるよう、離間した位置に設けられていればよい。
【0079】
容器10に液体試料Lを導入した後、第一及び第二開口P1,P2を閉じる構成としてもよい。これにより、容器10が密閉されるので、容器10内に導入された液体試料Lの状態変化を更に抑制可能となる。
【0080】
カバー12は、その全体が光透過部として機能しているが、カバー12は、実際に励起光EL及び表面増強ラマン散乱光SLが通過する部分だけが光透過部(光学窓)として機能していてもよい。即ち、カバー12は、光透過部以外が光透過性を有さない材質により構成されていてもよい。また、容器10は、一方の端10a側に、把持部として機能する部分を設けず、小型化してもよい。これにより、収容空間S2が更に縮小するので、液体試料Lの必要量を更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…SERSユニット、2…SERSチップ、3…吸引部、10…容器、10a…一方の端、10b…他方の端、11…本体、12…カバー、20…配置部、21…第一領域、22…第二領域、16b…段差、101…光源、EL…励起光、RL…反射光、SL…表面増強ラマン散乱光、S1…内部空間、S2…収容空間、P1…第一開口、P2…第二開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8