特許第6441180号(P6441180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許6441180侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置
<>
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000002
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000003
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000004
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000005
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000006
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000007
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000008
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000009
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000010
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000011
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000012
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000013
  • 特許6441180-侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441180
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】侵入異物による回路異常を未然に検出する機能を有するモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20181210BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20181210BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20181210BHJP
【FI】
   H02P27/06
   H02M7/06 H
   H02M7/48 M
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-152807(P2015-152807)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-34858(P2017-34858A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】立田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】平井 朗
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 樹一
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−091144(JP,A)
【文献】 特開2007−084243(JP,A)
【文献】 特開2004−132937(JP,A)
【文献】 特開2011−009148(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0119311(US,A1)
【文献】 特開2007−252134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00− 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する直流電源部と、
前記直流電源部の電圧を測定する独立した複数の電圧測定回路と、を備え、
前記直流電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動装置であって、
前記複数の電圧測定回路から得られる電圧情報を収集する電圧収集部と、
正常動作電圧を格納する正常動作電圧情報格納部と、
前記電圧収集部が収集した電圧値に基づいて、各々の出力信号の重なりの電圧を特定し、前記正常動作電圧と比較し、正常動作電圧との相違に基づいて侵入異物による故障箇所を検出する異常判断部と、
を具備し、
前記複数の電圧測定回路は、それぞれ前記コンデンサの端子間に直列して配置された複数の抵抗を備え、前記複数の抵抗のうちの1つの抵抗の両端に印加される電圧に基づいて前記直流電源部の電圧を測定し、
前記複数の抵抗は、切削油を含む侵入異物が絶縁を劣化させることにより抵抗値が低下することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記複数の電圧測定回路は、アナログデジタル変換して数値を算出する検出方式、及びある閾値を以て信号が変化する検出方式の少なくとも何れか一方を備えた、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記直流電源部の電圧測定回路を3つ以上備え、
ある1つだけの電圧検出レベルが異常であることを以て、侵入異物による影響を受けた故障箇所を特定する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記直流電源部の電圧の測定する複数の回路より電圧情報を集約するときに、各モータ駆動装置間の通信遅れを計算し、電圧検出レベルの診断に加味する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ駆動装置に関し、特に、モータを駆動することができるモータ駆動装置に侵入した異物による回路異常を未然に検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置は、切削油などの異物が駆動装置内部に侵入するという問題がある。異物が侵入することによって、駆動装置の特性に影響を及ぼし、動作不良となる恐れがある。特に、小型の高抵抗部品を使用している場合に、侵入異物による電流のリークにより、部品本来の抵抗値より小さい回路特性になる問題があり、検出の為には検出用の回路を別途用意する必要があるという問題がある。
【0003】
この問題について、さらに詳しく説明する。モータ駆動装置には様々な検出回路を搭載している。特に、高電圧を測定する必要もある。その為には、検出用に電圧を分圧するための抵抗が用いられる。分圧用の抵抗には測定による無駄な消費電流を減らしたり、抵抗に流れる電流の損失を抑えたりするために、高い抵抗値の抵抗が用いられる。
【0004】
例えば、図1のような高電圧測定回路1000があった場合、電圧の計算には、分圧後の電圧測定回路1003による電圧測定結果から、分圧された比率を電圧測定結果に掛けることによって、求めたい高電圧の電圧値が得られる。例えば、図1に示す抵抗1001の抵抗値をR1、抵抗1002の抵抗値をR2とし、電圧測定回路1003の測定値をVとしたときに、求めたい電圧測定対象である2つの端子1004及び1005の間の電圧V0は、以下の式で求められる。
0=(R1+R2)/R2×V
【0005】
しかしながら、分圧された比率は設計値に基づいた数値を使用するしかない。その結果、この分圧用の抵抗1001及び1002が侵入異物による影響で抵抗値に変化が生じた場合、分圧後の電圧測定結果が異常となるため、正常な電圧値を測定することが出来なくなる。侵入異物は高抵抗の部品に対し、リークする電流のパスを形成して本来の抵抗値よりも小さい特性に変化させてしまったり、腐食による断線を起こしたりする可能性もある。
【0006】
回路の異常を検出する装置として、電圧または電流を検出する複数の検出器を備え、少なくとも1つが所定の許容値を超えた時に、どこが壊れたかを特定し可能であれば運転を継続するという負荷駆動装置が知られている(例えば、特許文献1)。この発明では、1つの検出器だけで正常か異常かを判断できることを前提としている。しかしながら、1つの検出器だけでは正常か異常かを判断することができない場合には、異常を検出することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−252134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の従来技術で課題であった、「侵入異物による回路異常を検出」し、「回路異常箇所を特定」し、かつ「専用の検出回路を追加せず、不要なコストをかけずに実現する」ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例に係るモータ駆動装置は、交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する直流電源部と、直流電源部の電圧を測定する独立した複数の電圧測定回路と、を備え、直流電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動装置であって、複数の電圧測定回路から得られる電圧情報を収集する電圧収集部と、正常動作電圧を格納する正常動作電圧情報格納部と、電圧収集部が収集した電圧値に基づいて、各々の出力信号の重なりの電圧を特定し、正常動作電圧と比較し、正常動作電圧との相違に基づいて侵入異物による故障箇所を検出する異常判断部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施例に係るモータ駆動装置は、侵入異物による回路異常を未然に検出でき、専用の検出回路を追加せずコストを掛けずに回路異常箇所を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の電圧測定回路の一例を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路の例を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置に用いるコンバータ部及びインバータ部の電圧測定回路の電圧測定結果の例を示す図である。
図4】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置の構成図である。
図5】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路の電圧測定結果が正常な場合の例、及び電圧測定結果が異常な場合の例を示す図である。
図6】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置を用いて、コンバータ部、インバータ部共に、アナログデジタル変換して数値を算出する検出方式を用いた場合の測定例を示す。
図7】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置を用いて、コンバータ部、インバータ部共に、ある閾値を以て信号が変化する検出方式である場合の測定例を示す。
図8】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置の動作手順を説明するためのフローチャートである。
図9】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置の電圧測定回路の変形例である。
図10】本発明の実施例2に係るモータ駆動装置の構成図である。
図11】本発明の実施例2に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路の電圧測定結果が正常な場合の例、及び電圧測定結果が異常な場合の例を示す図である。
図12】本発明の実施例3に係るモータ駆動装置の構成図である。
図13】本発明の実施例3に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路の電圧測定結果が正常な場合の例、及び電圧測定結果が異常な場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係るモータ駆動装置について説明する。
【0013】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置について図面を用いて説明する。図4に本発明の実施例1に係るモータ駆動装置101の構成図を示す。本発明の実施例1に係るモータ駆動装置101は、交流電源200から供給された電力を整流回路1で整流し、かつコンデンサ2で平滑化する直流電源部3と、直流電源部3の電圧を測定する独立した複数の電圧測定回路4,5と、を備え、直流電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動装置であって、複数の電圧測定回路から得られる電圧情報を収集する電圧収集部6と、正常動作電圧を格納する正常動作電圧情報格納部7と、電圧収集部が収集した電圧値に基づいて、各々の出力信号の重なりの電圧を特定し、正常動作電圧と比較し、正常動作電圧との相違に基づいて侵入異物による故障箇所を検出する異常判断部8と、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明では、モータ駆動装置に具備されている直流電源部の複数の電圧測定回路によって、電圧を測定し、測定結果に基づいて回路の異常を検出する点を特徴としている。そこで、まず、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置で用いる電圧測定回路について説明する。
【0015】
図2に本発明の実施例1に係るモータ駆動装置で用いる電圧測定回路のみを抜き出して示したモータ駆動装置100の構成図を示す。モータ駆動装置100は、コンバータ部10とインバータ部20に分離され、コンバータ部10の端子1a及び1bと、インバータ部20の端子2a及び2bを用いて接続された例を示す。ただし、コンバータ部10とインバータ部20は一体化していてもよい。
【0016】
交流電源200からの交流電圧はダイオードD1〜D6を備えた整流回路1で整流され、コンデンサ2で平滑化される。直流電源部3の電圧であるコンデンサ2の端子間電圧は、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5によって測定される。
【0017】
第1電圧測定回路4は、アナログデジタル変換して数値を算出する検出方式を採用した電圧測定回路である。第1電圧測定回路4は、コンデンサ2の端子間に直列して配置された抵抗41,42と、A/Dコンバータ43と、第1電圧検出部44とを備えている。抵抗41,42の抵抗値をそれぞれr1,r2とし、抵抗42の両端に印加される電圧をV1とすれば、コンデンサ2の両端の電圧Vc1は以下の式により求めることができる。
c1=(r1+r2)/r2×V1
【0018】
コンデンサ2が十分放電されているとすると、コンデンサ2の両端の電圧Vc1図3(a)に示すように時間的に変化する。
【0019】
一方、インバータ部20は、コンデンサ2で平滑化された直流電圧をインバータ9でモータ(図示せず)を駆動するための交流電圧に変換する。インバータ9は、6つのトランジスタTr1〜Tr6と、これらに並列にダイオードD10〜D60が設けられている。
【0020】
インバータ部20にはコンデンサ2の端子間電圧を測定する第2電圧測定回路5が設けられている。第2電圧測定回路5は、ある閾値を以て信号が変化する検出方式を採用した電圧測定回路である。第2電圧測定回路5は、抵抗51,52と、検出した電圧が所定の電圧より高いか否かを判定し、高い場合にHighレベルの信号を出力する電圧判定部53と、第2電圧検出部54とを備えている。
【0021】
抵抗51,52の抵抗値をそれぞれr3,r4とし、抵抗52の両端に印加される電圧をV2とすれば、コンデンサ2の両端の電圧Vc2は以下の式により求めることができる。
c2=(r3+r4)/r4×V2
【0022】
コンデンサ2が十分放電しているとすると、コンデンサ2の端子間電圧は時間とともに増加し、測定値Vc2が予め設定した閾値Vthを超えた時点で出力信号がHighとなる。図3(b)に第2電圧測定回路5の出力信号の時間的変化の一例を示す。同図の例では、時刻t0において、測定値Vc2がVthと等しくなったことを示している。
【0023】
以上のように、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置においては、コンデンサ2の端子間電圧を2つの電圧測定回路を用いて測定し、その値を比較することによって、各電圧測定回路に設けた抵抗41,42,51,52の異常を検出することができる。
【0024】
そこで、図4に示すように、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置101では、第1電圧測定回路4が検出した直流電源部3の電圧(コンデンサ2の端子間電圧)、及び第2電圧測定回路5が検出した直流電源部3の電圧(コンデンサ2の端子間電圧)を比較するために、電圧取集部6と、正常動作電圧情報格納部7と、異常判断部8とをさらに設けている。なお、図4では、電圧収集部6、電圧測定回路の正常動作情報を格納する正常動作電圧情報格納部7、異常判断部8はインバータ部20に設けた例を示しているが、コンバータ部10に設けてもよい。
【0025】
電圧収集部6は、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5からコンデンサ2の端子間電圧の測定値を収集する。正常動作電圧情報格納部7は、電圧判定部53が電圧測定結果と対比するための閾値電圧Vthである正常動作電圧情報を格納する。異常判断部8は、電圧収集部6が収集した電圧測定結果に基づいて、回路の異常の有無を判断する。なお、図2に示した第2電圧検出部54は電圧収集部6に含まれている。
【0026】
図5に、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路の電圧測定結果が正常な場合の例、及び電圧測定結果が異常な場合の例を示す。図5(a)は、電圧測定回路の電圧測定結果が正常な場合の例である。コンバータ部10に設けた第1電圧測定回路4の測定結果(以下、「コンバータ部検出結果」という)と、インバータ部20に設けた第2電圧測定回路5の測定結果(以下、「インバータ部検出結果」という)を重ね合わせると、図5(a)にように一部で測定結果が重なることとなる。この各々の出力信号の重なりの電圧をVaとする。第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の両者が正常な場合、重なりの電圧Vaは正常動作電圧であるVthと一致する。そこで、異常判断部8は、VaがVthに等しいとことに基づいて第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の両者が正常であると判断する。
【0027】
図5(b)〜(e)は、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の少なくともいずれか一方が異常である場合の測定結果の例を示す。例えば、図5(b)は、コンバータ部検出結果とインバータ部検出結果の重なりの電圧がVbであり、VbはVthより大きいことから、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の少なくともいずれか一方が異常であることが判断できる。同様に、図5(c)は重なりの電圧Vc<Vthの例を示し、図5(d)は重なりの電圧Vd<Vthの例を示し、図5(e)は重なりの電圧Ve>Vthの例を示しており、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の少なくともいずれか一方が異常であることが判断できる。
【0028】
なお、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の両者が異常である場合であっても、コンバータ部検出結果とインバータ部検出結果の重なりの電圧が、正常動作電圧と等しくなる場合は、理論上は起こり得る。しかしながら、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の抵抗41,42,51,52のうちの複数の抵抗が同時に異常となり、しかも、重なりの電圧が正常電圧と一致するように異常となることは極めて稀であると考えられるため、重なりの電圧が正常動作電圧と一致していれば、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の両者が正常であると判断することができる。
【0029】
図5(a)〜(e)に示した測定例においては、コンバータ部10の電圧測定回路が、アナログデジタル変換して数値を算出する検出方式であり、インバータ部20の電圧測定回路が、ある閾値を以て信号が変化する検出方式である場合の例を示したが、このような例には限られない。
【0030】
コンバータ部10、インバータ部20共にアナログデジタル変換して数値を算出する検出方式を用いて、検出した電圧値の差を以て、正常・異常の判定を行う場合の測定例を図6に示す。図6(a)は、コンバータ部及びインバータ部が共に正常である場合を示し、両者の測定結果は一致する。
【0031】
図6(b)〜(e)は、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の少なくともいずれか一方が異常である場合の測定結果の例を示す。例えば、図6(b)は、コンバータ部検出結果は正常であるのに対して、インバータ部検出結果である測定電圧が異常に低く、両者の電圧差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。図6(c)は、インバータ部検出結果は正常であるのに対して、コンバータ部検出結果である測定電圧が異常に低く、両者の電圧差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。図6(d)は、コンバータ部検出結果は正常であるのに対して、インバータ部検出結果である測定電圧が異常に高く、両者の電圧差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。図6(e)は、インバータ部検出結果は正常であるのに対して、コンバータ部検出結果である測定電圧が異常に高く、両者の電圧差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。以上のようにして、コンバータ部10、インバータ部20共にアナログデジタル変換して数値を算出する検出方式を採用した場合でも、異常の検出を行うことができる。
【0032】
また、コンバータ部10、インバータ部20共に、ある閾値を以て信号が変化する検出方式を用いて、電圧値が変化した時間の差を以て、正常・異常の判定を行う場合の測定例を図7に示す。図7(a)は、コンバータ部及びインバータ部が共に正常である場合を示し、両者の測定結果は一致する。
【0033】
図7(b)〜(e)は、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の少なくともいずれか一方が異常である場合の測定結果の例を示す。例えば、図7(b)は、コンバータ部検出結果は正常であるのに対して、インバータ部検出結果である測定電圧が異常に遅れ、両者の時間差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。図7(c)は、インバータ部検出結果は正常であるのに対して、コンバータ部検出結果である測定電圧が異常に遅れ、両者の時間差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。図7(d)は、コンバータ部検出結果は正常であるのに対して、インバータ部検出結果である測定電圧が異常に進み、両者の時間差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。図7(e)は、インバータ部検出結果は正常であるのに対して、コンバータ部検出結果である測定電圧が異常に進み、両者の時間差が所定の値より大きいことに基づいて、異常と判断される場合である。以上のようにして、コンバータ部10、インバータ部20共にある閾値を以て信号が変化する検出方式を採用した場合でも、異常の検出を行うことができる。
【0034】
次に、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置の動作手順について図8に示したフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101において、コンバータ部10から電圧情報を収集する。具体的には、コンバータ部10に設けた第1電圧測定回路4が測定したコンデンサ2の端子間電圧の測定結果を電圧収集部6が収集する。
【0035】
次に、ステップS102において、インバータ部20から電圧情報を収集する。具体的には、インバータ部20に設けた第2電圧測定回路5が測定したコンデンサ2の端子間電圧の測定結果を電圧収集部6が収集する。
【0036】
電圧収集部6は、第1電圧測定回路4が測定したコンデンサ2の端子間電圧(コンバータ部電圧)の測定結果、及び第2電圧測定回路5が測定したコンデンサ2の端子間電圧(インバータ部電圧)の測定結果の重なりの電圧、即ち、インバータ部電圧が変化したときのコンバータ部の電圧を求める。
【0037】
次に、ステップS103において、正常動作電圧格納部7から正常動作電圧を収集する。具体的には、異常判断部8が、正常動作電圧格納部7に予め格納されている、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5が正常である時の重なりの電圧を収集する。
【0038】
次に、ステップS104において、インバータ部電圧が変化したときのコンバータ部の電圧と正常動作電圧が一致しているか否かを判断する。
【0039】
インバータ部電圧が変化したときのコンバータ部の電圧と正常動作電圧が一致している場合は、ステップS105において、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の両者が正常であると判断する。
【0040】
一方、インバータ部電圧が変化したときのコンバータ部の電圧と正常動作電圧が一致していない場合は、ステップS106において、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の少なくとも一方が異常であると判断する。
【0041】
以上のようにして、コンデンサ2の端子間電圧を2つの電圧測定回路で測定し、測定結果に基づいて電圧測定回路の異常の有無を検出することができる。
【0042】
以上の本発明の実施例1に係るモータ駆動装置の説明では、第1電圧測定回路4に、アナログデジタル変換して数値を算出する検出方式を採用し、第2電圧測定回路5に、ある閾値を以て信号が変化する検出方式を採用した例を示したが、このような例には限られない。即ち、第1電圧測定回路4に、ある閾値を以て信号が変化する検出方式を採用し、第2電圧測定回路5に、アナログデジタル変換して数値を算出する検出方式を採用してもよい。さらに、第1電圧測定回路4及び第2電圧測定回路5の両者をアナログデジタル変換して数値を算出する検出方式、あるいは、ある閾値を以て信号が変化する検出方式としてもよい。
【0043】
なお、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路においては、直流電源部の電圧を測定する範囲に、侵入異物による影響を受けやすい部品が存在するように構成することが好ましい。さらに侵入異物による影響を受けやすい部品が、直流電源部の電圧の測定に影響を与えるようにすることが好ましい。
【0044】
図9に本発明の実施例1に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路の変形例を示す。抵抗41及び42を電圧測定対象である端子A及びBに直列に配置し、抵抗42に印加される電圧を電圧測定回路44で測定する。
【0045】
部品サイズが小さく高い抵抗値を持つ抵抗41,42は、切削油などの侵入異物が絶縁を劣化させるため、本来の高い抵抗値よりも低い特性となる恐れがある。また、腐食の起きやすい材質を使用していると侵入異物によって故障する可能性が高くなる。さらに、これらの部品を風の通り道に配置することで、より侵入異物による影響を受けやすくなる。
【0046】
実施例1に記載の測定回路に、これらの特性を利用し測定の感度を良くすることで、侵入異物による故障を検出する回路が、モータ駆動装置に存在する回路の中で最も早く故障しやすくなり、モータ駆動装置全体の予防保全が可能となる。
【0047】
また、例えば図9のような測定回路であれば、どの部品が異常になっても電圧の測定結果に影響が出るため、いち早く故障の検出が可能となる。
【0048】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係るモータ駆動装置について説明する。図10に本発明の実施例2に係るモータ駆動装置102の構成図を示す。実施例2に係るモータ駆動装置102が実施例1に係るモータ駆動装置101と異なっている点は、直流電源部の電圧測定回路(4,5,50)を3つ以上備え、ある1つだけの電圧検出レベルが異常であることを以て、侵入異物による影響を受けた故障箇所を特定している点である。実施例2に係るモータ駆動装置102におけるその他の構成は、実施例1に係るモータ駆動装置101における構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0049】
実施例2に係るモータ駆動装置102においてはインバータ部を2つ接続しており、1つのインバータ部をインバータA部20’とし、もう1つのインバータ部をインバータB部30とする。インバータA部20’とインバータB部30は端子3a,3bと4a,4bによって接続されている。インバータB部30はコンデンサ21の端子間電圧を測定する第3電圧測定回路50を備えている。第3電圧測定回路50は抵抗510、520と、第2電圧判定部530と、第2電圧収集部60とを備えている。さらに、インバータB部30は、第2正常動作情報格納部70と、第2異常判断部80とを備えている。
【0050】
図11(a)〜(d)は、本発明の実施例2に係るモータ駆動装置に用いる電圧測定回路の電圧測定結果が正常な場合の例、及び電圧測定結果が異常な場合の例を示す図である。どれか1つの回路が異常だった場合、電圧測定回路が2つあるだけでは、どちらの回路が異常なのか判断することが出来なかったが、3つ以上あることで異常のある回路の特定が可能となる。図11(b)〜(d)の場合、以下のようになる。
(1)第1のケース(図11(b))
・コンバータ部で検出された電圧値と、インバータA部の信号の切換えタイミングが一致しない。
・コンバータ部で検出された電圧値と、インバータB部の信号の切換えタイミングが一致する。
この場合は、インバータA部の回路の異常と判定できる。
(2)第2のケース(図11(c))
・コンバータ部で検出された電圧値と、インバータA部の信号の切換えタイミングが一致する。
・コンバータ部で検出された電圧値と、インバータB部の信号の切換えタイミングが一致しない。
この場合はインバータB部の回路の異常と判定できる。
(3)第3のケース(図11(d))
・コンバータ部で検出された電圧値と、インバータA部の信号の切換えタイミングが一致しない。
・コンバータ部で検出された電圧値と、インバータB部の信号の切換えタイミングが一致しない。
この場合はコンバータ部の回路の異常と判定できる。
【0051】
以上説明したように、実施例2に係るモータ駆動装置によれば直流電源部の電圧の測定結果から異常個所を特定することができる。
【0052】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係るモータ駆動装置について説明する。図12に本発明の実施例3に係るモータ駆動装置103の構成図を示す。実施例3に係るモータ駆動装置103が実施例1に係るモータ駆動装置101と異なっている点は、直流電源部の電圧の測定する複数の回路より電圧情報を集約するときに、各モータ駆動装置間の通信遅れを計算し、電圧検出レベルの診断に加味する点である。実施例3に係るモータ駆動装置103におけるその他の構成は、実施例1に係るモータ駆動装置101における構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0053】
電圧収集部6に電圧情報を集める場合、電圧情報をモジュール間で通信をして通知する場合がある。その場合、通信に遅れが生じる場合がある。通信遅れがない場合は図13(a)に示すようにコンバータ部検出結果とインバータ部検出結果が得られる。これに対して、コンバータ部からの電圧測定結果の通信において通信遅れがある場合には、図13(b)に示すように、ただ単に得られた情報を重ね合わせただけでは異常な判定とされる恐れがある。そこで、本発明の実施例3に係るモータ駆動装置においては、通信の遅れを予め加味しておき、電圧情報の重ね合わせの時に補正することで正確な比較が可能となる。
【0054】
例えば、図13(b)の実線で示すように、通信遅れのためにコンバータ部検出結果が時間t0だけ遅れて電圧収集部6へ送信された場合、この時間t0を考慮して、点線で示すように時間0から電圧が増加するように補正することで正確な測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 整流回路
2 コンデンサ
3 直流電源部
4 第1電圧測定回路
5 第2電圧測定回路
6 電圧収集部
7 正常動作電圧情報格納部
8 異常判断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13