(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1,2は、本発明に係る電池管理装置の第1の実施の形態を説明する図である。本実施の形態の電池システムは、例えば、HEVやPHEVのようなハイブリッド車両に搭載される。
図1は、電池システム1の最小構成を示すブロック図である。電池システム1は、電池管理装置100、蓄電池101および充放電制御部102を備えている。蓄電池101は複数の蓄電素子(例えば、リチウムイオン二次電池セル)を備える。
【0010】
電池管理装置100は、電池情報取得部103、履歴記憶部104、寿命予測部105、乖離量演算部106、寿命目標値記憶部107、制限値変更部108、制御部109および時刻情報取得部110を備えている。制御部109は、管理装置全体をコントロールする。なお、破線矢印は後述する第3実施形態に関係する処理であり、本実施の形態では説明を省略する。電池情報取得部103は、蓄電池101またはその周辺に取り付けられた電圧センサ、電流センサ、温度センサなどによるセンサ測定情報を基に、電圧、充電状態(SOC:State of Charge)、電流、温度。現時点での電池劣化状態(SOH:State of Health)などの電池状態パラメータを算出する。そして、それらの電池状態パラメータを、充放電制御部102と履歴記憶部104とに出力する。
【0011】
履歴記憶部104は、過去から現在における任意時点、または任意期間に関する時刻情報、および前記時刻情報と関連付けられた過去の電池状態パラメータ、またはユーザーの使用傾向、過去の充放電制限値における瞬時値、平均値、最大値、最小値、ヒストグラム値などの履歴情報の代表値を演算し、演算結果を揮発メモリまたは不揮発メモリ等の記憶媒体(不図示)に記憶する。寿命予測部105は、履歴記憶部104に記憶された履歴情報の代表値と、現在の電池性能の制限値とに基づき、寿命目標値時点における劣化量目標値に到達するまでの寿命予測値τを予測する。
【0012】
ここで、電池性能の制限値とは、蓄電池101に流すことが可能な電流上限値である許容充放電電流値や、蓄電池101に入出力することが可能な電力上限値である許容充放電電力、蓄電池101のSOC作動範囲、蓄電池101の温度作動範囲など、を表す制御パラメータである。電池管理装置100は、これらの制限値を充放電制御部102に出力する。
【0013】
また、寿命目標値とは、電池開始から所定使用期間が経過した時点であって、例えば、蓄電池101の寿命保証期限となる時点や、蓄電池101を備える電池システム1の寿命保証期限となる時点や、電池システム1を搭載する車両の寿命保証期限となる時点などである。また、それらの寿命保証期限にマージンを含めた期限となる時点であっても良い。以下では、寿命目標値として、車両の寿命保証期限時点(車両寿命終了時点と呼ぶことにする)を例に説明する。
【0014】
乖離量演算部106は、寿命予測部105から出力される劣化量目標値に到達するまでの寿命予測値τと、劣化量目標値に到達するまでの寿命目標値τ
tarとの間の乖離量Zを算出する。寿命目標値τ
tarは寿命目標値記憶部107に予め記憶されている。制限値変更部108は、算出された乖離量Zに基づいて上述した制限値を変更し、その制限値を充放電制御部102に出力する。充放電制御部102は、前記制限値と電池管理装置100から出力された電池情報(電池状態パラメータ)とに応じて、蓄電池101に流れる充放電電流を制御する。
【0015】
図2は、
図1の電池管理装置100が搭載されるハイブリッド自動車の、車両制御システム(ハイブリッド車両制御システム)の一例を示したものである。ハイブリッド車両制御システムは、電池管理装置100、蓄電池101、ユーザー209に制御状態を表示する表示装置201、本制御を実行するか否かをユーザー209が操作可能な入力装置202、パワーコントロールユニット203、エンジンコントロールユニット204、モータ・発電機205、エンジン206、動力分割機構207、および駆動輪208を備えている。
【0016】
電池管理装置100からは、電池性能の制限値の一つである許容充放電電力が上位コントローラであるパワーコントロールユニット203に出力される。パワーコントロールユニット203は、電池管理装置100から許容充放電電力に基づいてモータ・発電機205を駆動制御する。パワーコントロールユニット203とエンジンコントロールユニット204とは、互いに情報の授受を行っている。エンジンコントロールユニット204は、エンジン206の動作を制御している。
【0017】
電池管理装置100から出力される許容充放電電力が大きくなった場合には、車両駆動時におけるモータの駆動力配分を大きくし、エンジンの駆動力配分を小さくする。反対に、電池管理装置100から出力される許容充放電電力が小さくなった場合には、車両駆動時におけるモータの駆動力配分を小さくし、エンジンの駆動力配分を大きくする。
【0018】
図3は、本実施の形態の制御フローチャートの一例を示す図である。この制御プログラムは
図2の制御部109において実行される。
図3に示す一連の処理は、所定時間間隔で行われる。ステップS101では、前回の演算処理から所定時間が経過したかどうかを判定し、所定時間が経過していなければ処理を停止し、所定時間が経過していればステップS102に進む。ここで、所定時間とは、本発明に基づき制限値を変更するための制御周期を表す時間間隔であり、例えば、1月や1年等の時間が選定される。
【0019】
ステップS102では、履歴記憶部104から履歴情報(電池状態パラメータの代表値)を取得する。ステップS103では、所定の劣化量に到達するまでの寿命予測値τを、後述する予測方法により算出する。ステップS104では、算出された寿命予測値τと寿命目標値記憶部107に記憶されている寿命目標値τ
tarとの間の乖離量Zを算出する。ステップS105では、算出された乖離量Zおよび上述した履歴情報の代表値に基づき電池性能の制限値を決定する。ステップS106では、決定した制限値を充放電制御部102へ出力する。
【0020】
次に、寿命予測部105における寿命予測値τの算出方法の一例を説明する。寿命予測部105では、所定の劣化量目標値に到達するまでの寿命予測値、または所定の寿命目標値における劣化量予測値のいずれかを算出するが、以下では、所定の劣化量目標値に到達するまでの寿命予測値を算出する場合の方法の一例を説明する。ここでは、電池容量Qの劣化挙動は時間のルート則に従うと仮定し、電池容量Qの予測には次式(1)のような関数を用いる。式(1)において、Q
iniは電池の初期容量、Dは劣化量、tは経過時間、kは劣化進行速度である。劣化進行速度は、式(1)における根号の中の部分を、式(2)のように劣化進行度Xと定義した場合の時間当たりの劣化進行度Xの変化量とし、劣化進行度は劣化進行の度合いを表す物理量であるため負の値を取らない。また、劣化進行速度Xは、ユーザーの使用傾向Uや、電池の充放電における制限値L、電池の仕様Sに基づく値である。式(2)を将来のある時点tにおける劣化量D(t)に対して式変形すると、式(3)のように、現在の時刻t
0と、現在の劣化量D(t
0)、現時刻t
0から将来のある時点までの劣化進行速度kで表される。
【数1】
【0021】
この時,式(4)のように、現時刻t
0から将来のある時点tまでの未来の劣化進行速度の平均値をk
futureと定義した場合、時刻tにおける劣化量は式(5)のように表すことが出来、時刻tにτ
tarを代入すると、式(6)のように寿命目標値τ
tar時点での劣化量予測値D(τ
tar)を求めることが出来る。また、時間tに対して式(5)を式変形すると、時間tは式(7)のように表せる。式(7)の劣化量Dに所定の劣化量D
tarを代入すると、所定の劣化量D
tarに到達するまでの時刻t、つまり寿命予測値τが式(8)のように求まる。
【数2】
【0022】
しかし、式(8)において、蓄電池101の使用開始時点ではユーザーの使用傾向Uが分からないため、現時点t
0から将来のある時点tまでの未来の劣化進行速度の平均値k
futureの値は分からない。そこで、過去のある時点t
1から現時点t
0までのユーザーの使用傾向が反映された過去の劣化進行速度の実績値k
pastを式(9)のように求め、劣化進行速度の実績値k
pastが今後も継続すると仮定して、未来の劣化進行速度の平均値k
futureに劣化進行速度の実績値k
pastを代入することで寿命予測値τを求める。
【数3】
【0023】
次に,乖離量演算部106における乖離量Zの算出方法の一例を説明する。乖離量Zとしては、前記寿命予測値と前記寿命目標値に関する比率、または差分を用いる。現時点t
0からの残寿命予測値と残寿命目標値との比率を用いた場合の乖離量Zの一例として、式(10)を用いる。式(10)において、τ
tarは寿命目標値、τは寿命予測値である。
【数4】
【0024】
次に、制限値変更部108における制限値変更方法の一例を説明する。制限値変更部108では乖離量演算部106で算出された乖離量Z、および過去のある時点から現時点までの制限値L
pastに基づき制限値Lを変更する。前述したように、乖離量Zとして、残寿命予測値と残寿命目標値との比率を用いた場合の制限値変更方法の一例を説明する。この場合、乖離量Zが1より小さい場合、過去のある時点から現時点までの制限値L
pastよりも劣化進行速度kが小さくなるように制限を厳しくする方向に制限値Lを変更する。反対に、乖離量Zが1よりも大きい場合、過去のある時点から現時点までの制限値L
pastよりも劣化進行速度kが大きくなるように制限を緩める方向に制限値Lを変更する。この制限値Lの最適値を求める方法は複数ある。
【0025】
制限値Lの最適値を求める例の第1の例としては、予め試験した電池寿命評価データに基づくマップデータ、または関数などを用いて、ユーザーの使用傾向Uの実績値U
pastに基づき制限値Lの最適値を直接求める方式がある。ここで、ユーザーの使用傾向Uの実績値U
pastとは、履歴記憶部104に記憶されている、過去の電池状態パラメータの瞬時値、平均値、最大値、最小値、ヒストグラム値などの履歴情報の代表値のことである。ハイブリッド自動車などの車両システムの場合は、アクセル開度やブレーキ頻度などの運転傾向や、エアコンの使用頻度などの電装品の使用傾向も、ユーザーの使用傾向として含めてもよい。
【0026】
また、制限値Lの最適値を直接求めることが出来ない場合には、制限値Lの最適値を求める第2の例として次のような方式がある。まず、乖離量Zに基づき振動または発散しない程度に制限値を変更する。そして、所定時間が経過した後に制限値変更後の乖離量Zの再計算、制限値Lの再度変更、を繰返し、制限値Lの最適値を探索する。
【0027】
本実施の形態では、所定の劣化量目標値D
tarに到達するまでの寿命予測値τを算出するに当たって、現時点までの制限値L
past、および現在までの使用傾向の履歴と同様の運転傾向が継続されるものと仮定する。すなわち、上述したステップS103の処理においては、式(6)の未来の劣化進行速度の平均値k
futureを,過去の劣化進行速度の実績値k
pastで置き換える、または、式(4)のUおよびLを過去の履歴に基づくU
pastおよびL
pastで置き換えることにより、所定の劣化量目標値D
tarに到達するまでの寿命予測値τを予測する。
【0028】
図4は、本実施の形態における制限値の設定方法を説明する図である。一方、
図5は、比較例として従来の制御における制限値の設定方法の一例を示したものである。いずれの場合も、寿命目標値到達時点までの、(a)負荷の大きさ、(b)電池容量、(c)制限値のそれぞれの推移を示している。蓄電池101は劣化するにつれて電池容量が減少するので、(b)に示す電池容量の推移は電池劣化の推移を表していることになる。ここでは、寿命目標値τ
tarを10年として説明する。
【0029】
先ず、比較例である
図5について説明する。
図5(a)に示した想定基準値の負荷、および、
図5(c)に示す想定基準値の制限値で使用した場合、
図5(b)に示す想定劣化曲線L1のように電池容量が推移する。そして、寿命目標値τ
tarに到達した時点において劣化量目標値D
tarに到達して電池寿命となる。
【0030】
図5(a)に示す使用パターンでは、一定の負荷であって、その大きさは想定基準値よりも小さいと仮定している。
図5(c)に示すように、電池使用開始時の制限値は想定基準値と同じ大きさに設定されている。また、
図5(b)のラインL2は、
図5(a)のような使用パターンの場合の電池容量の実際の推移を示している。なお、制限値の見直しは1年毎に行われるものとする。
【0031】
使用開始1年目は、負荷が想定基準値よりも低いので、電池容量の減少は想定劣化曲線L1の場合よりも少ない、比較例では、劣化量差分=(想定劣化量)−(実際の劣化量)に基づいて制限値を変更しており、劣化量差分の大きさに応じて変更量の大きさを設定している。1年経過時においては、1年後の電池容量が想定劣化曲線L1上の値となるような制限値=(想定基準値)+d2に、制限値が変更される。このように制限値が大きくなると、電池管理装置100から出力される許容充放電電力が大きくなる。それにより、モータ・発電機205の駆動力配分は大きくされ、エンジン206の駆動力配分は小さくされる。その結果、蓄電池101の劣化進行(電池容量の減少)が速くなり、2年経過時の電池容量は想定劣化曲線L1の値となる。
【0032】
2年経過時における劣化量差分は非常に小さく、想定通りの劣化状態となっているので、制限値は当初の想定基準値の大きさに変更される。その結果、3年目は電池容量の減少が想定よりも小さくなる。そのため、3年経過時においては劣化量差分が大きくなり、制限値は(想定基準値)+d4のように変更される。4年目以降の推移については説明を省略するが、10年経過時には電池容量が劣化量目標値に到達して、電池寿命となる。
【0033】
このように、
図5に示す比較例においては、1年毎にその時点における劣化量と、予め理想的な制御モデルにおける想定劣化曲線L1とを比較する。そして、それらの差分に基づいて、1年後の電池容量が想定劣化曲線L1で想定される値となるように、次の1年間において使用される制限値が設定される。そのため、
図5(c)に示すように制限値は毎年大きく変動することになる。
【0034】
一方、
図4の場合、(a)に示す負荷は
図5(a)の場合と同様で、車両寿命終了時点(10年)までの各年の負荷は一定で、その値は想定基準値よりも小さく設定されている。最初の1年目は、負荷の大きさおよび制限値の大きさが
図5の場合と同一であり、最初の1年間における電池容量の減少は
図5に示した場合と同等になっている。
【0035】
図4,5に示す例は、
図3のステップS101における所定時間を1年としたものであり、1年毎に
図3のステップS102以降の処理が実行される。上述したように、最初の1年目は、負荷の大きさおよび制限値のいずれも
図5に示す場合と同条件であるので、電池容量の減少(劣化の進行)は
図5(b)の1年目の場合と同様である。
【0036】
図4の劣化予想曲線L3は、次式(11)で示される劣化量予測値D(t)に基づく電池容量変化をプロットしたものである。式(11)において、t
0は現時点までの経過時間(=1年)、X(t
0)はt=t
0時点の劣化進行度X、k
pastは劣化進行速度kの実績値である。1年目の電池容量の変化曲線は、この劣化予想曲線の一部(最初の1年間)を成している。
【数5】
【0037】
図3のステップS103では、劣化予想曲線L3の劣化量目標値D
tar到達までの寿命予測値τが算出される。
図4(b)の電池容量の下限値はステップS104における寿命目標値τ
tarに対応しており、このτ
tarとτとの差分が乖離量Zに対応する。そして、ステップS105では、乖離量Zおよび過去1年間(前回の処理から今回の処理までの1年間)のユーザーの使用傾向Uに基づく制限値を、「(想定基準値)+e」のように決定する。前述したように、ユーザーの使用傾向Uは、上述した履歴情報の代表値という形で履歴記憶部104に記憶されている。制限値は、乖離量Zおよびユーザーの使用傾向Uをパラメータとするマップとして、予め制限値変更部108に設けられた記憶媒体(不図示)に記憶されている。
【0038】
このように、1年経過時に制限値が「(想定基準値)+e」に変更されると、モータ・発電機205の駆動力配分が大きくなり、電池容量の減少が1年目に比べて大きくなる。
図4に示すラインL4は、
図4(a)の負荷状態と
図4(c)に示す制限値=想定基準値+eとが継続された場合の、想定劣化曲線を示したものである。制限値の「想定基準値+e」は、劣化量目標値D
tar到達までの寿命予測値τと寿命目標値τ
tarが一致するように設定される。すなわち、上述した制限値のマップは、劣化量目標値D
tar到達までの寿命予測値τが寿命目標値τ
tarとなるような制限値を与えるものである。例えば、
図4の想定劣化曲線L4を与える制限値である。
【0039】
2年目の制限値および負荷の大きさは、想定劣化曲線L4を導出する際の制限値および負荷の大きさと同一である。そのため、2年経過時の電池容量(符号Pで示す位置の値)は、想定劣化曲線L4が与える値とほぼ同じ値となる。さらに、ステップS103で算出される寿命予測値τは、2年目の負荷と、2年目の制限値(=想定基準値+e)とが3年目以降も継続された場合の劣化量目標値D
tar到達までの寿命予測値τである。そのため、寿命予測値τは、寿命目標値τ
tarと同じ値となる。その結果、2年経過時にステップS105で決定される制限値は、「想定基準値+e」となる。3年目以降も全く同様であり、丸印で示す電池容量は、想定劣化曲線L4が与える値とほぼ同じ値となる。その結果、2年目から10年目までの制限値は全て「想定基準値+e」に設定されることになる。
【0040】
図6は、所定のSOC範囲で定電流充放電サイクルを行った場合の、電池劣化進行速度kのサイクル電流依存性を示す図である。
図6から分かるように、サイクル電流を増加させると電池の劣化進行速度kは加速度的に増加する。
【0041】
図4および
図5に示す制御では、いずれの場合も、車両寿命終了時点において蓄電池101の電池容量は下限値に到達する。すなわち、車両寿命終了時に蓄電池101も寿命となる。しかしながら、電池の劣化進行速度kは
図6に示すような特性を有しているため、電池性能を有効に利用するという観点において差が生じる。電池性能の有効利用に関して
図7を用いて説明する。
【0042】
図7は、サイクル電流の平均値を固定した場合の電流変動の有無が、電池の劣化進行速度kにどのような影響を与えるかを説明する図である。まず、電流変動が無い場合、例えば、サイクル電流が50(A)に固定された場合の電池の劣化進行速度kはAとなる。一方、電流変動がある場合、例えば、上述の場合の半分の時間におけるサイクル電流が30(A)で、残り半分の時間におけるサイクル電流が70(A)であった場合を考える。サイクル電流が30(A)における電池の劣化進行速度kはBとなり、サイクル電流が70(A)における電池の劣化進行速度kはCとなる。
【0043】
そのため、30(A)と70(A)の電流サイクルの時間が半々であった場合には、電池の劣化進行速度kは(B+C)/2となる。電池の劣化進行速度kはサイクル電流の変化に対して加速度的に増加するため、一般的に、{(B+C)/2}<Aとなる。このことから,電流変動が大きいほど電池の劣化進行速度kが大きくなることが分かる。
【0044】
例えば、30Aで100時間かつ70Aで100時間使う場合と、50Aで200時間使う場合とを比較すると、いずれの場合もトータルの容量使用量(Ah)は10000(Ah)であるが、後者の場合の方が電池劣化は少ない。言い換えると、電池使用による電池劣化が同一である場合には、後者の方がより多くの容量(Ah)を利用することができる。
図7に示すグラフにおいて、電池の劣化進行速度kが(B+C)/2と同じになるサイクル電流は約65(A)なので、65(A)で200時間使用すると容量使用量(Ah)は13000(Ah)となる。
【0045】
図4に示す本実施の形態の場合には、制限値が電池寿命となるまで一定であるが、
図5に示す比較例では、制限値が年毎に大きく変動している。そのため、蓄電池101の電池容量が下限値に達するまでに流せる容量(Ah)は、
図4の場合の方が大きくなる。
【0046】
−第2の実施の形態−
図8は、第2の実施の形態における制御フローチャートである。なお、
図8に示すフローチャートにおいて、ステップS101からステップS104までの処理は、
図3のステップS101からステップS104までの処理と同様である。すなわち、ステップS101で、前回の演算処理から所定時間が経過したと判定されると、ステップS102に進んで、履歴記憶部104から履歴情報を取得する。そして、ステップS103で劣化量目標値到達までの寿命予測値τを算出した後に、ステップS104で寿命予測値τと寿命目標値τ
tarとの間の乖離量Zを算出する。
【0047】
ステップS301では、算出された乖離量Zに基づき電池性能の制限値を算出する。ステップS302では、算出された制限値を表示し、その制限値を許可するか否かの指示を求める選択画面を、
図2の表示装置201に表示する。ユーザー209は、
図2の入力装置202を操作することにより、許可または不許可の指示を入力する。ステップS303では、許可信号が入力されたか否かを判定し、許可の場合にはステップS304へ進み、不許可の場合には処理を停止する。ステップS304では、ステップS301で算出された制限値の値を制限値として変更すると共に、変更した制限値を充放電制御部102へ出力する。
【0048】
このように、本実施の形態では、制限値変更部108で算出された制限値を実際に採用するか否かをユーザーが選択することができる。例えば、
図4の1年経過時点において、ユーザーの判断により制限値の変更が行われなかった場合、2年目の劣化推移は劣化予想曲線L3と同様になる。しかし、2年経過時において、制限値の変更が許可された場合には、劣化量目標値D
tarに到達した時点の寿命予測値が寿命目標値と一致するような制限値に決定されるので、車両寿命終了時点で電池寿命となるように制御できると共に、蓄電池101の性能をより効果的に利用することができる。
【0049】
−第3の実施の形態−
図9は、第3の実施の形態における制御フローチャートである。上述した第1、第2の実施形態では、算出された乖離量Zおよび電池情報の履歴に基づいて、劣化量目標値D
tar到達までの寿命予測値τが寿命目標値τ
tarとなる制限値を決定した。ただし、最適な制限値Lを直接算出する手段を持たない場合(たとえば,制限値変更部が乖離量Zの正負判定に応じて制限値を所定量変更する場合など)、寿命目標値到達時点の電池の劣化量が劣化量目標値とならないおそれがある。第3の実施の形態では、制限値の変更値案を用いて電池寿命を予測し,乖離量を算出する処理を、その乖離量が許容される閾値範囲内となるまで繰り返し行い、乖離量が閾値範囲内となった時の変更値案を制限値として採用するようにした。このように制限値変更後の乖離量が閾値範囲内となることを寿命予測により確認計算しているので、寿命目標値到達時点の劣化量が劣化量目標値とならない事態の発生を防止するための最尤値を得ることができる。なお、
図9に示すフローチャートにおいて、ステップS101からステップS104までの処理は
図3のステップS101からステップS104までの処理と同様であり、説明を省略する。
【0050】
ステップS104で寿命予測値τと寿命目標値τ
tarとの間の乖離量Zが算出されると、ステップS205において、その乖離量Zが予め設定された閾値以上か否かを判定する。ステップS205で乖離量Zが閾値範囲内と判定されると処理を停止し、乖離量Zが閾値以上であると判定されるとステップS206へ進む。ステップS206からステップS209までの処理は、最適な制限値を求めるための処理であり、一連の処理を繰り返し行うことで閾値範囲内の乖離量Zが得られる制限値を取得することができる。
【0051】
ステップS206では、乖離量Zを0に近づけるために、電池性能の制限値の変更値案を算出する。算出された制限値の変更案は、
図1の破線矢印のように寿命予測部105へ出力される。制限値の変更値案の設定方法としては、例えば、ステップS104で算出された乖離量Zに基づいて設定しても良いし、履歴記憶部104に記憶されている履歴情報の代表値(電池状態パラメータである電圧、電流、蓄電量などの平均値等)に基づいて設定しても良い。ここでは、乖離量Zに基づいて設定する場合を例に説明する。
【0052】
ステップS207では、制限値を変更値案に変更した場合における劣化量目標値到達までの寿命予測値τを、
図1の寿命予測部105において算出する。ステップS208では、ステップS207で算出された寿命予測値τと寿命目標値記憶部107に記憶されている寿命目標値τ
tarとの間の乖離量Zを、乖離量演算部106において算出する。ステップS209では、ステップS208で算出された乖離量Zが閾値範囲内か否かを判定し、閾値範囲外の場合にはステップS206へ進み、閾値範囲内の場合にはステップS210へ進む。ステップS210では、ステップS206で算出された変更値案を制限値として設定することで、制限値が変更される。
【0053】
一方、ステップS209からステップS206へ進んだ場合には、制限値の変更案を改めて設定する。例えば、ステップS208のZをZ=(τ―t
0)/(τ
tar−t
0)と定義した場合、Z<0.9であれば、前回の制限値の変更案Lを強化する方向に、変更案をL+ΔLのように再設定する。逆に、Z>1.1であれば、前回の制限値の変更案Lを緩和する方向に、変更案をL−ΔLのように再設定する。そして、ステップS207、ステップS208、ステップS209の順に処理し、ステップS209において下限閾値<Z<上限閾値と判定されるとステップS210へ進む。このように、乖離量Zが閾値範囲内となるまでステップS206からステップS209までの処理が繰り返される。
【0054】
以上のように制限値を設定することにより、本実施の形態においても上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、制限値の精度をより向上させることができる。なお、本実施の形態に対しても、上述した第2の実施の形態の処理を適用することができる。
【0055】
以上説明したように、履歴記憶部104には過去から現在までの任意期間における蓄電池101の電圧、電流および蓄電量などの代表値に基づき算出された電池使用条件が記憶され、寿命目標値記憶部107には、蓄電池101を劣化量目標値D
tar到達まで使用した時の寿命目標値τ
tarが記憶される。寿命予測部105は、予め設定された第1充放電制限値(制御パラメータ)および電池使用条件で蓄電池101を劣化量目標値D
tar到達まで使用した場合の寿命予測値τを算出する。例えば、
図4に示す例の1年経過時においては、予め設定された
図4(c)の1年目の制限値および
図4(a)の1年目の負荷で蓄電池101を劣化量目標値D
tar到達まで使用した場合の寿命予測値τを算出する。さらに、乖離量演算部106は、寿命目標値記憶部107の寿命目標値τ
tarと算出された寿命予測値τとの間の乖離量Zを算出する。そして、制限値変更部108は、算出された乖離量Zおよび履歴記憶部104に記憶された電池使用条件に基づいて第2充放電制限値(制御パラメータ)を算出し、該第2充放電制限値を前記第1充放電制限値として再設定する。このように劣化量目標値D
tar到達までの寿命予測値τと寿命目標値τ
tarの乖離量Zに基づいて制限値を決定されるので、
図4(c)に示すように、電池充放電条件の変化を低く抑えることができる。その結果、寿命目標値τ
tarと電池寿命が一致するように制御できると共に、蓄電池101の性能をより効果的に利用することができる。
【0056】
なお、上述した実施の形態では、予め設定された第1充放電制限値および前記電池使用条件で蓄電池101を劣化量目標値D
tar到達まで使用した場合の寿命予測値τを寿命予測部105で予測し、寿命目標値τ
tarと寿命予測値τとの間の乖離量Zを乖離量演算部106で算出したが、寿命予測部105で寿命目標値時点での蓄電池101の劣化量予測値を予測し、乖離量演算部106において劣化量目標値と劣化量予測値との間の乖離量を算出するようにしても良い。
【0057】
好ましくは、第2充放電制限値としては、算出された乖離量Zおよび履歴記憶部104に記憶されている電池使用条件に基づいて蓄電池101を劣化量目標値D
tar到達まで使用した場合に寿命予測値τが寿命目標値τ
tarとなるように算出される。なお、上述のように、乖離量演算部106において劣化量目標値と劣化量予測値との間の乖離量を算出する場合には、劣化量予測値が劣化量目標値となるように第2充放電制限値を算出する。
【0058】
また、
図9に示すように、制限値変更部108で、乖離量演算部106で算出された乖離量Zが閾値以上と判定されると(S205)、制御部109は、前記第1充放電制限値として変更値案を設定し、変更値案および履歴記憶部104に記憶された電池使用条件で蓄電池101を劣化量目標値D
tar到達まで使用した場合の寿命予測値τを予測し、その予測された寿命予測値τと記憶された寿命目標値τ
tarとの間の乖離量Zを算出する一連の処理を、前記乖離量演算部で算出される乖離量Zが前記閾値範囲内となるまで繰り返し行わせる。そして、算出される乖離量Zが閾値範囲内となったときの変更値案を前記第1充放電制限値として再設定するようにしても良い。
【0059】
なお、前述したように、乖離量演算部106において劣化量目標値と劣化量予測値との間の乖離量を算出する場合には、劣化量目標値と劣化量予測値との間の乖離量を算出する一連の処理を、前記乖離量演算部で算出される乖離量が前記閾値範囲内となるまで繰り返し行うようにすれば良い。
【0060】
−第4の実施の形態−
以上説明した第1〜第3の実施の形態では、乖離量演算部106により算出された乖離量Zに基づいて、許容充放電電流、許容充放電電力、SOC作動範囲、温度作動範囲などの制御パラメータに対する制限値Lを制限値変更部108により変更し、この変更後の制限値Lに基づいて蓄電池101に流れる充放電電流を制御する例を説明した。これに対して本実施の形態では、乖離量演算部106により算出された乖離量Zに基づいて、複数種類の制御パラメータの各々に対する制限値を組み合わせた制限値セットを制限値変更部108により演算し、この制限値セットに基づいて蓄電池101に流れる充放電電流を制御する例を以下に説明する。
【0061】
なお、本実施の形態では、
図1の制限値変更部108の処理内容以外は、第1〜第3の実施の形態でそれぞれ説明したものと同一である。すなわち、本実施の形態における電池管理装置100の構成や、電池管理装置100が含まれるハイブリッド車両制御システムの構成は、
図1、
図2にそれぞれ示したものと同一である。そのため以下の説明では、本実施の形態における制限値変更部108の処理内容以外の部分については、特に必要のない限りは説明を省略する。
【0062】
図10は、本発明の第4の実施の形態における制限値変更部108の制御ブロック図である。
図10に示すように、本実施の形態において制限値変更部108は、制限パラメータ設定部1081および第1制限値演算部1082の各制御ブロックにより構成される。
【0063】
制限パラメータ設定部1081は、制限値変更部108が制限値セットの演算対象とする複数種類の制御パラメータの各々に対する重み付けを決定するための制限パラメータPを設定する。制限パラメータ設定部1081は、たとえば履歴記憶部104に記憶された履歴情報に基づいて、蓄電池101の充放電時における最小電圧や中心SOCなどの値を制限パラメータPとして設定する。あるいは、制限パラメータ設定部1081に制限パラメータPを予め記憶しておき、これを用いても制限パラメータPの設定を行ってもよい。これにより、蓄電池101の最小電圧をV
minと表したときにV
min=2.5Vや、蓄電池101の中心SOCをSOC
centerと表したときにSOC
center=50%などの値が制限パラメータPとして設定される。
【0064】
第1制限値演算部1082は、乖離量演算部106により算出された乖離量Zと、制限パラメータ設定部1081により設定された制限パラメータPとに基づいて、蓄電池101の充放電を制御するための制御パラメータに対する制限値L
1A、L
2Aを演算する。なお以下の説明では、制限値L
1A、L
2Aの組み合わせを第1制限値セットと称する。第1制限値演算部1082は、たとえば乖離量Zと制限パラメータPの様々な組み合わせに対応する制限値L
1Aおよび制限値L
2Aのデータを表すマップデータを記憶しておき、このマップデータを用いて、入力された乖離量Zおよび制限パラメータPから第1制限値セットを演算することができる。そして、第1制限値セットの演算結果を充放電制御部102に出力する。
【0065】
充放電制御部102は、制限値変更部108の第1制限値演算部1082により演算された第1制限値セットと、電池管理装置100から出力された電池情報(電池状態パラメータ)とに基づいて、蓄電池101の充放電電流を制御する。
【0066】
図11は、第1制限値演算部1082による第1制限値セットの演算方法の一例を説明する図である。第1制限値演算部1082は、マップデータとして、たとえば
図11に示すようなグラフのデータを記憶している。このグラフでは、乖離量Zの値に応じた様々な第1制限値セットを曲線状のグラフ111〜115により示している。グラフ111〜115のそれぞれについて、横軸に示したSOC
centerの値は蓄電池101の中心SOCを表しており、これは制御パラメータの一つであるSOC作動範囲に対する制限値L
1Aに相当する。一方、縦軸に示したI
limitの値は蓄電池101の許容電流を表しており、これは他の制御パラメータの一つである許容充放電電流に対する制限値L
2Aに相当する。これらの制御値L
1A、L
2Aに従ってその値がそれぞれ制限される制御パラメータは、グラフ111〜115に従って、互いに相関関係を持ってそれぞれ変化する。なお、グラフ111〜115では、図中で右上方向に位置するものほど、蓄電池101のエネルギー活用度が高いことを示している。
【0067】
また、図中に破線で示した直線状のグラフ116は、制限パラメータPの一つである蓄電池101の最小電圧V
minを表している。ここでは、たとえばV
min=2.5Vとして、この最小電圧V
minの値に対応するSOC
centerとI
limitの比率をグラフ116で示している。このグラフ116に従って、制御値L
1Aによって制限される制御パラメータであるSOC作動範囲と、制限値L
2Aによって制限される制御パラメータである許容充放電電流との間で、重み付けが決定される。
【0068】
第1制限値演算部1082は、乖離量Zの値に基づいて、グラフ111〜115のうちいずれか、たとえばグラフ112を選択する。そして、選択したグラフ112と、制限パラメータPに対応するグラフ116との交点117を検出し、この交点117に対応するSOC
centerとI
limitの値であるSOC
centerAおよびI
limitAを第1制限値セットとして求める。第1制限値演算部1082は、たとえばこのようにして、乖離量Zおよび制限パラメータPに基づく第1制限値セットを演算することができる。
【0069】
以上説明した本発明の第4の実施の形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0070】
(1)電池管理装置100は、二次電池である蓄電池101の寿命目標値または劣化量目標値と、過去から現在までの任意期間における蓄電池101の使用履歴に応じた寿命予測値または劣化量予測値との間の乖離量Zを算出する乖離量演算部106と、乖離量演算部106により算出された乖離量Zに基づいて、蓄電池101の劣化を制御するための充放電制限値L
1A、L
2Aを変更する制限値変更部108とを備える。制限値変更部108は、乖離量Zに基づいて、互いに相関関係を持ってそれぞれ変化する複数種類の制御パラメータの各々に対する充放電制限値L
1A、L
2Aを組み合わせた第1制限値セットを演算する第1制限値演算部1082を有する。このようにしたので、電池負荷の大小が異なるユーザーに対して電池寿命を確保しつつ、電池性能の制限値が安定した値で可能な限り開放され、電池性能を効果的に利用することができる。
【0071】
(2)制限値変更部108は、複数種類の制御パラメータの各々に対する重み付けを決定するための制限パラメータPを設定する制限パラメータ設定部1081をさらに有する。第1制限値演算部1082は、乖離量Zおよび制限パラメータPに基づいて、第1制限値セットを演算する。このようにしたので、乖離量Zに基づく第1制限値セットの各制限値を適切な重み付けで同時に求めることができる。
【0072】
−第5の実施の形態−
図12は、本発明の第5の実施の形態における制限値変更部108の制御ブロック図である。
図12に示すように、本実施の形態において制限値変更部108は、第4の実施の形態で説明した制限パラメータ設定部1081および第1制限値演算部1082に加えて、さらに第2制限値演算部1083を有する。
【0073】
本実施の形態では、制限パラメータ設定部1081は、2種類の制限パラメータP
1、P
2を設定する。たとえば、制限パラメータP
1としてV
min=2.5Vを設定すると共に、制限パラメータP
2としてSOC
center=50%を設定する。
【0074】
第1制限値演算部1082は、乖離量演算部106により算出された乖離量Zと、制限パラメータ設定部1081により設定された制限パラメータP
1とに基づいて、第4の実施の形態で説明したのと同様に、第1制限値セット、すなわち制限値L
1A、L
2Aを演算する。
【0075】
一方、第2制限値演算部1083は、乖離量演算部106により算出された乖離量Zと、制限パラメータ設定部1081により設定された制限パラメータP
2とに基づいて、蓄電池101の充放電を制御するための制御パラメータに対する制限値L
1B、L
2Bを演算する。以下では、制限値L
1B、L
2Bの組み合わせを第2制限値セットと称する。
【0076】
第2制限値セットの各制限値L
1B、L
2Bは、第1制限値演算部1082で演算される第1制限値セットの各制限値L
1A、L
2Aとそれぞれ同じ制御パラメータの異なる値を示すものであり、第1制限値セットと同様の演算方法によって求められる。たとえば、
図11に示したマップデータにおいて、前述の制限パラメータV
min=2.5Vとは別の制限パラメータであるSOC
center=50%を制限パラメータP
2として用いることで、第2制限値セットの各制限値SOC
centerB、I
limitBが求められる。なおこの場合、SOC
centerB=50%であり、
図11からSOC
centerA<SOC
centerBであることが分かる。一方、グラフ112の形状からI
limitA>I
limitBであることが分かる。
【0077】
充放電制御部102は、制限値変更部108の第1制限値演算部1082により演算された第1制限値セットと、第2制限値演算部1083により演算された第2制限値セットとのいずれかを用いて、蓄電池101の充放電電流を制御する。充放電制御部102において第1制限値セットと第2制限値セットのどちらを用いるかの選択は、任意の方法で行うことができる。たとえば、電池負荷の状態、ユーザーの要求、電池管理装置100の動作モード等の様々な条件に応じて、充放電制御部102が第1制限値セットまたは第2制限値セットを選択し、蓄電池101の充放電電流の制御に用いることができる。
【0078】
以上説明した本発明の第5の実施の形態によれば、第4の実施の形態で説明した(1)、(2)の作用効果に加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0079】
(3)制限値変更部108は、乖離量Zに基づいて、複数種類の制御パラメータの各々に対する充放電制限値を組み合わせた、第1制限値セットとは異なる第2制限値セットを演算する第2制限値演算部1083をさらに有する。制限パラメータ設定部1081は、制限パラメータとして、第1制限パラメータP
1および第2制限パラメータP
2を設定する。第1制限値演算部1082は、乖離量Zおよび第1制限パラメータP
1に基づいて、第1制限値セットを演算する。第2制限値演算部1083は、乖離量Zおよび第2制限パラメータP
2に基づいて、第2制限値セットを演算する。このようにしたので、電池負荷の大小が異なるユーザーに対して電池寿命を確保しつつ、状況に応じて適切な電池性能の制限値を利用することができる。
【0080】
−第6の実施の形態−
図13は、本発明の第6の実施の形態における制限値変更部108の制御ブロック図である。
図13に示すように、本実施の形態において制限値変更部108は、第4の実施の形態で説明した制限パラメータ設定部1081および第1制限値演算部1082と、第5の実施の形態で説明した第2制限値演算部1083とに加えて、さらに選択回路1084を有する。
【0081】
本実施の形態では、制限パラメータ設定部1081、第1制限値演算部1082および第2制限値演算部1083は、第5の実施の形態で説明したのと同様の動作をそれぞれ行う。すなわち、制限パラメータ設定部1081は、2種類の制限パラメータP
1、P
2を設定する。第1制限値演算部1082は、乖離量Zおよび制限パラメータP
1に基づいて制限値L
1A、L
2Aを演算し、第1制限値セットとして出力する。第2制限値演算部1083は、乖離量Zおよび制限パラメータP
2に基づいて制限値L
1B、L
2Bを演算し、第2制限値セットとして出力する。
【0082】
選択回路1084は、充放電制御部102から出力される選択信号SELに基づいて、複数種類の制御パラメータの各々について、第1制限値セットまたは第2制限値セットのいずれかに含まれる制限値を選択する。具体的には、選択回路1084は、第1制限値セットの制限値L
1Aまたは第2制限値セットの制限値L
1Bのいずれかを選択すると共に、第1制限値セットの制限値L
2Aまたは第2制限値セットの制限値L
2Bのいずれかを選択する。そして、選択した制限値L
1Aまたは制限値L
1Bを選択後の制限値L
1として充放電制御部102に出力すると共に、選択した制限値L
2Aまたは制限値L
2Bを選択後の制限値L
2として充放電制御部102に出力する。
【0083】
充放電制御部102は、選択回路1084に選択信号SELを出力し、この選択信号SELに応じて選択回路1084から出力される選択後の制限値L
1および制限値L
2を用いて、蓄電池101の充放電電流を制御する。このとき充放電制御部102は、第5の実施の形態で説明したのと同様に、電池負荷の状態、ユーザーの要求、電池管理装置100の動作モード等の様々な条件に応じて、第1制限値セットと第2制限値セットのどちらを用いるかを選択し、その選択結果に応じて選択信号SELを出力することができる。
【0084】
以上説明した本発明の第6の実施の形態によれば、第4の実施の形態で説明した(1)、(2)の作用効果と、第5の実施の形態で説明した(3)の作用効果とに加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0085】
(4)制限値変更部108は、複数種類の制御パラメータの各々について、第1制限値セットまたは第2制限値セットのいずれかに含まれる充放電制限値を選択する選択回路1084をさらに有する。このようにしたので、電池負荷の大小が異なるユーザーに対して電池寿命を確保しつつ、状況に応じて適切な電池性能の制限値を利用することができる。
【0086】
−第7の実施の形態−
図14は、本発明の第7の実施の形態における制限値変更部108の制御ブロック図である。
図14に示すように、本実施の形態において制限値変更部108は、第1制限値演算部1082、第2制限値演算部1083および選択回路1084を有するが、制限パラメータ設定部1081は有していない。
【0087】
本実施の形態では、第5の実施の形態で説明したような制限パラメータ設定部1081の動作が充放電制御部102において行われる。すなわち、充放電制御部102は、2種類の制限パラメータP
1、P
2を設定し、第1制限値演算部1082、第2制限値演算部1083にそれぞれ出力する。さらに充放電制御部102は、蓄電池101に対する前述の劣化量目標値D
tarを演算し、乖離量演算部106に出力する。この劣化量目標値D
tarには、たとえば、寿命目標値として設定された所定期間を経過した後の蓄電池101における充電状態、充電状態の変化率、内部抵抗値、内部抵抗変化率などを用いることができる。すなわち、劣化量目標値D
tarは、これらのいずれか少なくとも一つを含む値として設定可能である。
【0088】
乖離量演算部106は、充放電制御部102からの劣化量目標値D
tarに基づいて乖離量Zを演算し、第1制限値演算部1082および第2制限値演算部1083に出力する。第1制限値演算部1082は、乖離量演算部106からの乖離量Zおよび充放電制御部102からの制限パラメータP
1に基づいて制限値L
1A、L
2Aを演算し、第1制限値セットとして出力する。第2制限値演算部1083は、乖離量演算部106からの乖離量Zおよび充放電制御部102からの制限パラメータP
2に基づいて制限値L
1B、L
2Bを演算し、第2制限値セットとして出力する。
【0089】
選択回路1084は、充放電制御部102から出力される選択信号SELに基づいて、第6の実施の形態で説明したのと同様に、第1制限値セットの制限値L
1Aまたは第2制限値セットの制限値L
1Bのいずれかを選択すると共に、第1制限値セットの制限値L
2Aまたは第2制限値セットの制限値L
2Bのいずれかを選択する。そして、選択した制限値L
1Aまたは制限値L
1Bを選択後の制限値L
1として充放電制御部102に出力すると共に、選択した制限値L
2Aまたは制限値L
2Bを選択後の制限値L
2として充放電制御部102に出力する。
【0090】
以上説明した本発明の第7の実施の形態によれば、第4の実施の形態で説明した(1)の作用効果に加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0091】
(5)制限値変更部108は、乖離量Zに基づいて、複数種類の制御パラメータの各々に対する充放電制限値を組み合わせた、第1制限値セットとは異なる第2制限値セットを演算する第2制限値演算部1083と、複数種類の制御パラメータの各々について、第1制限値セットまたは第2制限値セットのいずれかに含まれる充放電制限値を選択する選択回路1084とをさらに有する。制限値変更部108には、複数種類の制御パラメータの各々に対する重み付けをそれぞれ決定するための第1制限パラメータP
1および第2制限パラメータP
2が充放電制御部102から入力される。第1制限値演算部1082は、乖離量Zおよび入力された第1制限パラメータP
1に基づいて、第1制限値セットを演算する。第2制限値演算部1083は、乖離量Zおよび入力された第2制限パラメータP
2に基づいて、第2制限値セットを演算する。このようにしたので、電池負荷の大小が異なるユーザーに対して電池寿命を確保しつつ、状況に応じて適切な電池性能の制限値を利用することができる。
【0092】
上記の通り、種々の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。また、以上説明した各実施の形態やこれらの変形例は、それぞれ任意に組み合わせ可能である。