(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの前記量を検出しおよび定量化する前に、前記タンパク質消化物を分画する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドを定量化することは、1つの生体試料における、1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を、異なるおよび別個の生体試料における、同じKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの前記量と比較することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドを定量化することは、既知量の添加された内部標準ペプチドとの比較により、生体試料における前記タンパク質のフラグメントペプチドの前記量を測定することを含み、
前記生体試料における、各前記KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドは、同じアミノ酸配列を有する内部標準ペプチドと比較される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載される分析は、相対的または絶対的なレベルの特定の改変されていない、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1を含む、タンパク質由来のペプチドを定量化しまたは測定し、また、相対的または絶対的なレベルの、これらのタンパク質由来の特定の改変されたペプチドを測定することもできる。改変の例は、ペプチドに存在するリン酸化アミノ酸残基およびグリコシル化アミノ酸残基を含む。
【0013】
タンパク質および可能性のあるアイソフォームの相対的な定量のレベルは、SRM/MRM方法論により、例えば、SRM/MRMシグネチャのピーク面積(例えば、シグネチャのピーク面積または集積されたフラグメントイオン強度)を比較することにより測定され得る。個々のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のペプチドの相対的なレベルが、異なるサンプルで測定され得る(例えば、対照サンプルおよび患者のまたは対象の組織から調製されたサンプル)。代替的には、各ペプチドは、それ自身の特定のSRM/MRMシグネチャのピークを有する場合、1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1シグネチャペプチドについての、複数のSRM/MRMシグネチャのピーク面積を比較することができる。ピーク面積を比較することにより、1つの生体試料における、または、1もしくはそれ以上の追加のもしくは異なる生体試料における、相対的なKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質および可能性のあるタンパク質アイソフォーム含有量を測定することができる。このようにすることで、これらのタンパク質由来の、特定の1つのペプチドまたは複数のペプチドの相対量、それゆえにKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の相対量、およびそれらの可能性のあるアイソフォームが測定され得、複数の(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)生体試料にわたって、同じ実験条件下で測定され得る。さらに、単一のサンプル内のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の所与の1つのペプチドまたは複数のペプチドについて、相対的な定量が、SRM/MRM方法論によるそのペプチドについてのシグネチャのピーク面積を、生体試料由来の同じタンパク質調製物内で、異なる1つのタンパク質または複数のタンパク質由来の、別のまたは異なる1つのペプチドまたは複数のペプチドについてのシグネチャのピーク面積に対して比較することにより、測定され得る。このような方法論を用いて、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の特定のペプチドの量、それゆえに対応するタンパク質およびこれらの可能性のあるアイソフォームのそれぞれの量が、同じサンプル内または異なるサンプルにおいて、相対的に相互に測定され得る。個々の1つのペプチドまたは複数のペプチドの相対的な定量は、サンプル内またはサンプル間で別の1つのペプチドまたは複数のペプチドの量に対して相対的に行われるかもしれないので、生体試料におけるタンパク質の、絶対的な体積に対する重量または重量に対する重量の量によらず、(例えば、相互に相対的であるピーク面積を測定することにより)存在するペプチドの相対量を測定することができる。よって、生体試料由来のタンパク質調製物におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のペプチドの量は、種々のサンプルにおけるおよび種々のサンプル間のこれらのタンパク質の量を測定するために使用されるかもしれない。異なるサンプル間の個々のシグネチャのピーク面積についての相対的な定量データは、サンプルごとに分析されるタンパク質の量に対して一般的に正規化される(例えば、サンプルの総タンパク質濃度および分析された体積が、サンプルを正規化するために使用される。)。相対的な定量は、相対的なタンパク質量、他のペプチド/タンパク質に対する1のペプチド/タンパク質のさらなる見識を得るために、単一のサンプルにおいておよび/または多くのサンプルにわたり、複数のタンパク質およびKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質(複数を含む)由来の多くのペプチドにわたって、同時に行われ得る。
【0014】
KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の絶対的な定量レベルは、例えば、SRM/MRM方法論により測定され、これにより、1つの生体試料における、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の個々のペプチドのSRM/MRMシグネチャのピーク面積が、既知量でサンプルに「添加」される、1またはそれ以上の内部標準(例えば、同位体標識化標準物質)の既知量のSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較される。一実施形態では、内部標準は、1またはそれ以上の重同位体で標識された1またはそれ以上のアミノ酸残基を含む、正確に同じKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のペプチドの合成したものである。質量分光分析が、天然のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のペプチドシグネチャのピークとは異なりかつ別個である、予測できるおよび一貫したSRM/MRMシグネチャのピークを生成し、比較部のピークとして使用され得るように、このような同位体標識化内部標準が合成される。よって、内部標準が、既知量で、生体試料由来のタンパク質またはペプチド調製物内に既知量で添加されて、質量分析により分析される場合、天然のペプチドのSRM/MRMシグネチャのピーク面積は、当該内部標準ペプチドのSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較され得る。数値の比較は、対応するタンパク質の濃度または重量が測定される、生体試料由来のもとのタンパク質調製物に存在する天然ペプチドの絶対的なモル濃度および/または絶対的な重量のいずれかの算出を可能にする。フラグメントペプチドについての絶対的な定量データは、典型的に、サンプルごとに分析されるタンパク質の量に従って表示される。個々の生体試料および/または個々のサンプルのコホート全体における、絶対的なタンパク質量の見識を得るために、単一のサンプルにおいておよび/または複数のサンプルにわたって、同時に複数のタンパク質(例えば、2、3、4、5等)の定量測定を可能にする、多くのペプチドにわたって、絶対的な定量が行われ得る。一実施形態では、タンパク質の定量は、米国特許第7,501,286号においてGygiらにより記載される、ペプチド標準物質を用いて行われることとしてもよい。
【0015】
本明細書で使用されるように、用語の、定量化する、定量化、測る、または計測は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、標準物質(例えば、内部標準)のような分析物の相対的または絶対的なレベルを測定することを意味する。
【0016】
ADCとSSCを区別するために有用であることに加えて、本明細書に記載されるSRM/MRM分析方法は、例えば、ホルマリン固定組織のような、患者由来または対象由来の組織を使用する場合、癌のステージを測定するための補助として使用され得る。本明細書に記載されるSRM/MRM分析は、また、どの治療薬が、患者または対象を治療するときの使用に最も有利であるかを決定する際の補助として用いられることとしてもよい。
【0017】
本明細書に記載される肺癌に関連するタンパク質のレベルを試験するために、癌組織、または、疑いのある疾病の存在もしくは不存在を判定するために行われる、部分的もしくは全部の腫瘍の切除により、または生検手順により、患者または対象から取り除かれた癌の疑いがある組織で分析が行われ得る。組織のサンプルは、1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質(複数を含む)、およびこれらのタンパク質を形成するものが、患者または対象の組織に存在するかどうかを判定するために分析される。さらに、1またはそれ以上のこれらのタンパク質の発現レベルが測定され、健康な組織でみられる「正常」または参照レベルと比較され得る。健康な組織でみられる正常または参照レベルのタンパク質は、例えば、癌を有しない1またはそれ以上の個体の関連する組織由来であることとしてもよい。代替的に、正常または参照レベルは、癌による影響を受けない関連する組織(例えば、同じ器官の一部)の分析により、癌を有する個体について得られることとしてもよい。
【0018】
タンパク質またはペプチドの量またはレベルは、SRM/MRM分析により測定されるタンパク質またはペプチドのモル、質量、または重量で表される量として定義され得る。レベルまたは量は、分析される(例えば、タンパク質の1マイクログラムあたりのマイクロモル、またはタンパク質の1マイクログラムあたりのマイクログラムで表される)溶解物におけるタンパク質または別の成分の合計のレベルまたは量に対して正規化されることとしてもよく、または重量あたりに基づくDNAの量(例えば、DNAマイクログラムあたりのマイクロモルまたはマイクログラム)に対して正規化もされ得る。また、タンパク質またはペプチドのレベルまたは量が、体積ベースで測定され、例えば、1マイクロリットルあたりマイクロモルまたはナノグラムとして表されることとしてもよい。また、SRM/MRM分析により測定されるタンパク質またはペプチドの量またはレベルは、分析される細胞の数に対して正規化され得る。
【0019】
KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質、並びにこれらのタンパク質のアイソフォームに関する情報が、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質、およびそれらのアイソフォーム、またはフラグメントペプチドのレベルを正常な組織で観察されるレベルと関連付けまたは比較することにより、癌の組織学的ステージまたは悪性度を判定する際に補助するために使用され得る。いったん、癌の組織学的ステージおよび/もしくは悪性度、並びに/またはKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/もしくはMUC1のタンパク質発現特性が測定されると、その情報が、例えば、分析された1つのタンパク質または複数のタンパク質(例えば、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1の)異常な発現により特徴づけられる、癌組織を特異的に治療するために開発された治療薬(化学的および生物学的)のリストとつき合わされ得る。特定の個体由来の、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質分析からの、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質(複数を含む)を発現する細胞/組織を特異的に標識する治療薬のリストに対するマッチングの情報は、肺癌の疾病を治療するための個別化医療アプローチを示す。本明細書に記載される分析方法は、患者のまたは対象自身の組織由来のタンパク質の分析を用いることにより、診断および治療の決定のソースとして、個別化医療アプローチの基礎を形成する。
【0020】
ペプチドの生成
原則として、既知の特異性のあらゆるタンパク質分解プロセスにより調製されたKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のあらゆる予測されるペプチドが、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の発生量を測定するための代用のレポーターとして使用されることとしてもよい。一実施形態では、サンプルは、既知の特異性の1のプロテアーゼまたは複数のプロテアーゼ(例えば、1またはそれ以上のトリプシン、エンドプロテアーゼ、および/またはLys‐C)により消化される。タンパク分解処理から得られる1またはそれ以上のペプチドは、質量分析に基づくSRM/MRM分析のような適切な分析において、1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の発生量を測定するために、代用のレポーターとして使用され得る。同様に、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質において改変されていることが知られる部位でアミノ酸残基を含む、あらゆる予想されるペプチド配列は、サンプルにおけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の改変の程度を分析するためにも使用されることとしてもよい。
【0021】
KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のフラグメントペプチドが、米国特許第7,473,532号で提供されるLiquid Tissue(商標)プロトコールの使用によるものを含む種々の手段によって生成されることとしてもよい。Liquid Tissue(商標)プロトコールおよび試薬が、組織/生体試料におけるタンパク質のタンパク分解消化による、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織から、質量分光分析に適切なペプチドサンプルの産生を可能にする。Liquid Tissue(商標)プロトコールにおいて、タンパク質架橋結合を戻すまたは解除するために、組織/バイオロジカルが、長時間、緩衝液中で上昇した温度で維持される(例えば、約10分から約4時間の間、約80℃から約100℃)。使用される緩衝液は、中性の緩衝液であり(例えば、トリスベースの緩衝液、または界面活性剤を含む緩衝液)、有利には、質量分光分析を妨げない緩衝液である。次に、組織/生体試料が、当該生体試料の組織および細胞構造を崩壊させるのに、および当該サンプルを液化させるのに、十分な時間の間(例えば、約37℃から約65℃の温度で、約30分から約24時間の期間)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、エンドプロテアーゼ、およびLys‐Cを含むがこれらに限定されない、1またはそれ以上のプロテアーゼで処理される。加熱およびタンパク質分解の結果、液体の、可溶性の、希釈可能な生体分子溶解物となる。一連の実施形態では、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、エンドプロテアーゼ、およびLys‐Cから選択される、2またはそれ以上のプロテアーゼが生体試料のタンパク分解の処理に使用される。
【0022】
ペプチドの分離および分析
いったん溶解物が調製されると、サンプル中のペプチドは、それらの分析および測定(定量化)を促進する、種々技術に供されることとしてもよい。質量分析により分析が行われる場合、1またはそれ以上のクロマトグラフ法が分析を容易にするために使用されることとしてもよい。
【0023】
一実施形態では、ペプチドが、質量分析器具により分析される前に、液体クロマトグラフィー(LC)により分離される。例えば、ペプチドは、Jupiter Proteo 90Å C12,4μm樹脂(Phenomenex,Torrance,CA)で12cmのベッド長さに自己充填したPicoFrit(100μm ID/10μm 先端のID,New Objective)カラムを用いて、nanoAcquityLCシステム(Waters,Milford,MA)またはEASY−nLC II(Thermo Scientific,San Jose,CA)上で分離され得る。ペプチドは、800nL/分の流量で、0.1%ギ酸を含む1%から50%のアセトニトリルの12分のクロマトグラフィー勾配にわたって溶出され得る。いったん液体クロマトグラフィーにより分離されると、溶出されたペプチドは、分析用の質量分析計内に導かれる。一実施形態では、質量分析計は、ナノスプレー源を備える。
【0024】
別の実施形態では、例えば、免疫学ベースの精製(例えば、イムノアフィニティークロマトグラフィー)のようなアフィニティ技術、イオン選択性媒体上でのクロマトグラフィーにより、またはペプチドが改変されている場合には、含水炭素が改変されたペプチドの分離のためのレクチンのような適切な媒体を用いる分離により、ペプチドが分離されることとしてもよい。さらに別の実施形態では、質量分光分析の前に、ペプチドの免疫学的分離を利用するSISCAPA方法が使用される。SISCAPAの技術は、例えば、米国特許第7,632,686号に記載されている。さらに他の実施形態では、レクチンアフィニティ方法(例えば、アフィニティ精製および/またはクロマトグラフィー)が質量分析による分析の前に、溶解物からペプチドを分離するために使用されることとしてもよい。レクチンに基づく方法を含む、ペプチドの群を分離するための方法は、例えば、Geng et al.,J.Chromatography B,752:293-306(2001)に記載される。イムノアフィニティークロマトグラフィー技術、レクチンアフィニティ技術、および別の形態のアフィニティ分離および/またはクロマトグラフィー(例えば、逆相、サイズに基づく分離、イオン交換)が、質量分析によるペプチドの分析を促進するためにあらゆる適切な組み合わせで使用されることとしてもよい。
【0025】
驚くべきことに、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の多くの可能性のあるペプチド配列は、明らかではない理由のために、質量分析に基づくSRM/MRM分析の使用について適切ではないまたは効果がないことが発見された。特に、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の多くのトリプシンペプチドが、ホルマリン固定のパラフィン包埋組織からのLiquid Tissue(商標)溶解物中で、効率よくまたは全く検出できなかったことが発見された。MRM/SRM分析についての最も適切なペプチドを予測することができないため、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質についての確実で正確なSRM/MRM分析を開発するために、実際のLiquid Tissue(商標)溶解物で、改変されたおよび改変されていないペプチドを実験的に識別する必要があった。理論に拘束されることを望まないが、いくつかのペプチドは、例えば、十分にイオン化または他のタンパク質とは別個のフラグメントを産生しないために、質量分析により検出することが難しいかもしれず、また、ペプチドは、分離(例えば、液体クロマトグラフィー)において十分に分解されておらず、またはガラスもしくはプラスチック資材に付着していないかもしれないことが考えられる。よって、ホルマリン固定組織サンプルから調製される、Liquid Tissue(商標)溶解物(例えば、表1および表2のペプチド)で検出され得るKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のこれらのペプチドは、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のSRM/MRM分析において、SRM/MRM分析が使用され得るペプチドである。一実施形態では、単一のサンプルにおいて、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントの同時調製で使用されるプロテアーゼは、トリプシンであろう。
【0026】
本明細書に記載される(例えば、表1および/または表2)種々の実施形態でみられるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のペプチドは、ホルマリン固定された癌組織から得られた細胞から調製された、複合的なLiquid Tissue(商標)溶解物内の全てのタンパク質のトリプシン消化によるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来であった。別途記載しない限り、各例において、プロテアーゼはトリプシンである。Liquid Tissue(商標)溶解物は、質量分析により検出されて分析される、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のこれらのペプチドを測定するために質量分析により分析される。質量分光分析のための特定の好ましいサブセットのペプチドの識別は、1)Liquid Tissue(商標)溶解物の質量分光分析においてタンパク質由来のどの1つのペプチドまたは複数のペプチドがイオン化するかの実験的判定、2)Liquid Tissue(商標)溶解物を調製する際に使用されるプロトコールおよび実験の条件で残存するペプチドの性能に基づく。後者の性能は、ペプチドのアミノ酸配列だけでなく、ペプチド内の改変されたアミノ酸残基がサンプル調製中に改変された形態で残存する性能についても及ぶ。
【0027】
ホルマリン(ホルムアルデヒド)固定組織から直接得られた細胞由来のタンパク質溶解物は、組織のマイクロダイセクションにより、サンプルチューブ内に細胞を収集し、その後、長時間、Liquid Tissue(商標)緩衝液中で細胞を加熱することを必要とする、Liquid Tissue(商標)試薬およびプロトコールを用いて調製される。いったんホルマリン誘導架橋結合が否定的な影響を受けると、組織/細胞は、例えば、プロテアーゼトリプシンを含むがこれに限定されない、プロテアーゼを用いて、予測できる態様で完全に(to completion)その後消化される。各タンパク質溶解物は、プロテアーゼによる未変化のポリペプチドの消化によりペプチドの集合に変化する。各Liquid Tissue(商標)溶解物が、各タンパク質溶解物に存在する全ての細胞のタンパク質から、質量分析により識別され得るような、できるだけ多くのペプチドの同定としてデータが示される、ペプチドの複数の包括的なプロテオミクス調査を行うために(例えば、イオントラップ質量分析により)分析された。単一の複合タンパク質/ペプチド溶解物由来のできるだけ多くのペプチドの同定のための、イオントラップ質量分析計または包括的プロファイリングを行うことができる他の形態の質量分析計が、概して分析のために使用される。SRM/MRM分析が、MALDI、イオントラップ、または三連四重極を含む、あらゆるタイプの質量分析計で開発されて行われ得るが、SRM/MRM分析のための最も有利な器具のプラットフォームは、三連四重極器具のプラットフォームであると考えられることが多い。
【0028】
できるだけ多くのペプチドが、使用される条件下で、単一の溶解物のシングルMS分析でいったん同定されると、その後、そのペプチドのリストが照合されて、その溶解物で検出されたタンパク質を判定するために使用された。そのプロセスは、複数のLiquid Tissue(商標)溶解物で繰り返され、ペプチドの非常に大きなリストが照合されて単一のデータセットにされた。そのタイプのデータセットは、(プロテアーゼ消化後に)分析された生体試料のタイプにおいて、具体的には、生体試料のLiquid Tissue(商標)溶解物において検出し得るペプチドを示すとみなされ得、よって、例えば、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のような特定のタンパク質についてのペプチドを含む。
【0029】
一実施形態では、KRT5(例えば、NCBI受託番号P13647、配列番号12)、KRT7(例えば、NCBI受託番号P08729、配列番号13)、ナプシンA(例えば、NCBI受託番号O96009、配列番号14)、MUC1(例えば、NCBI受託番号P15941、配列番号15)、TTF1(例えば、NCBI受託番号P43699、配列番号16)、および/またはTP63(例えば、NCBI受託番号Q9H3D4、配列番号17)の絶対的または相対的な量の測定において有用であるとして同定されるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のトリプシンペプチドが、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、3もしくはそれ以上の、4もしくはそれ以上の、5もしくはそれ以上の、6もしくはそれ以上の、7もしくはそれ以上の、8もしくはそれ以上の、9もしくはそれ以上の、または10もしくはそれ以上の、または全部の、それぞれが表1に挙げられている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、および配列番号11のペプチドを含む。これらのペプチドのそれぞれが、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織から調製されるLiquid Tissue(商標)溶解物における質量分析により検出された。よって、表1のペプチドのそれぞれ、またはこれらのペプチドのあらゆる組み合わせ(例えば、表1に挙げられる、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、3もしくはそれ以上の、4もしくはそれ以上の、5もしくはそれ以上の、6もしくはそれ以上の、7もしくはそれ以上の、8もしくはそれ以上の、9もしくはそれ以上の、または10もしくはそれ以上のこれらのペプチド)は、ホルマリン固定された患者組織または対象組織において直接を含む、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質についての定量的SRM/MRM分析における使用のための候補である。
【0031】
表1に挙げられるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドは、前立腺、結腸、乳房を含む異なるヒト器官の複数の異なるホルマリン固定された組織の複数のLiquid Tissue(商標)溶解物から検出されたものを含む。これらのペプチドのそれぞれは、ホルマリン固定された組織におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の定量的SRM/MRM分析のために有用であると考えられる。これらの実験のさらなるデータ分析は、いずれの特定の器官部位から任意の特定のペプチドについての優先性が観察されないことを示した。よって、これらのペプチドのそれぞれは、身体におけるあらゆる生体試料またはあらゆる器官部位からもたらされるあらゆるホルマリン固定組織由来のLiquid Tissue(商標)溶解物のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のSRM/MRM分析を行うために適切であることが考えられる。
【0032】
別の実施形態では、SRM/MRM分析は、KRT5およびTP63のそれぞれについて1または2のペプチド(例えば、表1に挙げられるペプチド由来)を使用する。別の実施形態では、SRM/MRM分析は、KRT7、MUC1、TTF1、およびナプシンAのそれぞれについて1または2のペプチド(例えば、表1に挙げられるペプチド由来)を使用する。
【0033】
別の実施形態において、SRM/MRM分析(複数を含む)を用いて、KRT5およびTP63のタンパク質の1つまたは両方が分析され、KRT7、MUC1、TTF1、およびナプシンAのタンパク質の1つ、2つ、3つ、または4つが分析される。このような実施形態の一例において、1つまたは両方のKRT5およびTP63のタンパク質についての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドは、SRM/MRM分析により分析され(例えば、表1に挙げられるKRT5およびTP63のペプチド)、いずれか1つ、2つ、3つ、または4つのKRT7、MUC1、TTF1、およびナプシンAについての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが分析される(例えば、表1に挙げられるペプチド)。このような実施形態の別の例においては、1つまたは両方のKRT5およびTP63のタンパク質についての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドがSRM/MRM分析により分析され(例えば、表1に挙げられるペプチド)、いずれかKRT7、MUC1、TTF1、およびナプシンAについての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが分析される(例えば、表1に挙げられるペプチド)。同位体的に標識されるがそれ以外はこれらの実施形態のいずれかで示されるペプチドの1またはそれ以上のペプチドと同一である組成物が本明細書のために提供され、それらの調製物の使用、特に質量分析スタンダードとしての使用について、以下に記載される。
【0034】
一実施形態では、表1における1またはそれ以上のペプチドまたはこれらのペプチドのあらゆる組み合わせ(例えば、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、3もしくはそれ以上の、4もしくはそれ以上の、5もしくはそれ以上の、6もしくはそれ以上の、7もしくはそれ以上の、8もしくはそれ以上の、9もしくはそれ以上の、または11の全て)が、免疫学的方法(例えば、ウエスタンブロットまたはELISA)を含むがこれに限定されない、質量分析によらない方法により分析される。一実施形態では、分析は、ホルマリン固定された組織を用いて行われる。ペプチド(複数を含む)の量(絶対的または相対的)に関する情報がどのように得られるかに関わらず、情報は、患者もしくは対象における癌の存在を示すこと(診断すること)、癌のステージ/悪性度/状態を判定すること、予後を提供すること、または患者もしくは対象の治療または処置レジメンを決定することを含み、本明細書に記載されるあらゆる方法において使用されることとしてもよい。
【0035】
他の実施形態においては、免疫学的方法(例えば、ウエスタンブロットまたはELISA)を含むがこれに限定されない、質量分析によらない方法により、1つまたは両方のKRT5およびTP63のタンパク質が分析され、1つ、2つ、3つ、または4つのKRT7、MUC1、TTF1、およびナプシンAのタンパク質が分析される。このような実施形態の一例においては、1つまたは両方のKRT5およびTP63のタンパク質についての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが分析され(例えば、表1に挙げられるKRT5およびTP63のペプチド)、いずれか1つ、2つ、3つ、または4つのKRT7、MUC1、TTF1、およびナプシンAについての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが分析される(例えば、表1に挙げられるペプチド)。このような実施形態の別の例においては、1つまたは両方のKRT5およびTP63のタンパク質についての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが(例えば、表1に挙げられるKRT5およびTP63のペプチド)、いずれかKRT7、MUC1、TTF1、およびナプシンAについての少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが分析される(例えば、表1に挙げられるペプチド)。
【0036】
SRM/MRM分析を行うときに重要な考慮すべき事は、ペプチドの分析において使用される機器のタイプである。SRM/MRM分析は、MALDI、イオントラップ、または三連四重極を含むあらゆるタイプの質量分析計で開発されて行われ得るが、現在最も有利なSRM/MRM分析のための器械のプラットフォームは、三連四重極器械のプラットフォームであると考えられることが多い。その質量分析計のタイプは、細胞内に含まれる全てのタンパク質からの数十万から数百万の個々のペプチドからなり得る非常に複雑なタンパク質溶解物内で、単一に分離された標的ペプチドを分析するために最も適切な機器であると思われるであろう。
【0037】
KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の各ペプチドについてのSRM/MRM分析を最も効率よく実行するために、分析におけるペプチド配列に加えて情報を利用することが望ましい。その追加の情報は、分析が効率的に行われるように、特定の標的ペプチド(複数を含む)の正確でフォーカスされた分析を行うために質量分析計(例えば、三連四重極質量分析計)を誘導して指示するときに使用されることとしてもよい。
【0038】
標的ペプチドについての、一般的な、および特定のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドについての追加の情報は、1、2、3、4、またはそれ以上の各ペプチドの単同位体質量、その前駆物質の荷電状態、前駆物質のm/z値、m/z遷移イオン、および各遷移イオンのイオンタイプを含むこととしてもよい。KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質についてのSRM/MRM分析を開発するために使用され得る追加のペプチドの情報が、表1のリストからのKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチド、全ての11(11)について表2に示される。表2に示されるペプチドについて記載されるこの追加の情報が、他のプロテアーゼまたはプロテアーゼの組み合わせ(例えば、トリプシンおよび/またはLys C)の作用により産生されたものを含む、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のあらゆる他のペプチドの分析に対して準備され、得られ、および適用されることとしてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の分析に適するペプチド(例えば、配列番号1から11に示されるペプチド)は、切断された場合にサブペプチドを生じるであろうペプチド配列内部に追加のタンパク分解部位を含み得る。このようなサブペプチドは、所望のプロテアーゼのタンパク分解切断部位について同定されたペプチドの配列を評価することにより認識できる。一実施形態では、トリプシンペプチドは、トリプシンによるさらなる切断でサブペプチドをもたらし得る追加の内部トリプシン切断部位を含むこととしてもよい。別の実施形態では、トリプシンペプチドは、いずれか1つ、2つ、またはそれ以上のトリプシン、GluC、AspN、キモトリプシン、および/またはLys Cによる切断でサブペプチドの形成をもたらし得る、トリプシン、GluC、AspN、キモトリプシン、および/またはLys Cを含むがこれらに限定されない、プロテアーゼについての内部部位を含むこととしてもよい。別の実施形態では、Lys Cペプチドは、いずれか1つ、2つ、またはそれ以上のGluC、AspN、キモトリプシン、および/またはトリプシンによる切断でサブペプチドの形成をもたらし得る、GluC、AspN、キモトリプシン、および/またはトリプシンのような他のプロテアーゼについての内部部位を含むこととしてもよい。このようなサブペプチド、および具体的には、配列番号1から11に示されるいずれか1またはそれ以上のペプチドのトリプシン、GluC、AspN、キモトリプシン、および/またはLys Cの切断フラグメントが示され、本開示の範囲内であることが理解される。
【0041】
本明細書に示される実施形態は、表1および2における、1またはそれ以上のペプチドを含む組成物を含み、同位体標識されているが、それ以外は表1および2にみられる1またはそれ以上のペプチドと同じであるペプチドを任意に含むこととしてもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、表1および2における、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、3もしくはそれ以上の、4もしくはそれ以上の、5もしくはそれ以上の、6もしくはそれ以上の、7もしくはそれ以上の、8もしくはそれ以上の、9もしくはそれ以上の、または11の全てのペプチドを含む。このような組成物は、アミノ酸配列が同位体標識されているが、それ以外は表1および2にみられる1またはそれ以上のペプチドと同じであるペプチドを含む、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を任意に含むこととしてもよい。表1および2に示される、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のペプチドを含む、同位体標識された合成または天然ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が使用される場合、プロテアーゼ処置が、同位体標識されているが、それ以外は表1および2におけるペプチドと同じであるペプチドを放出する。このように同位体標識されている生体または生合成のペプチドは、例えば、プログラムされた細胞溶解物においてまたは同位体標識されているアミノ酸を用いる組織培養において調製されることとしてもよい。それぞれの同位体標識されたペプチドは、
18O、
17O、
34S、
15N、
13C、
2H、またはこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される、1またはそれ以上のアイソトープで標識されることとしてもよい。KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のペプチドを含む組成物は、同位体標識されているかどうかに関わらず、そのタンパク質由来の全てのペプチドを含む必要はない(例えば、完全なセットのトリプシンペプチド)。いくつかの実施形態において、組成物は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の組み合わせにおける全てのペプチド、および、特に、表1および2に表わされる全てのペプチドを含まない。ペプチドを含む組成物は、乾燥もしくは凍結乾燥した材料、液体(例えば、水溶性の)溶液もしくは懸濁液、アレイ、またはブロットの形態であることとしてもよい。
【0042】
一実施形態では、特定のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドについての追加の情報は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のLys Cタンパク質分解がもたらすペプチドについての、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、または3もしくはそれ以上の、各ペプチドの単同位体質量、その前駆物質の荷電状態、前駆物質のm/z値、m/z遷移イオン、および各遷移イオンのイオンタイプを含む。
【0043】
別の実施形態では、特定のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドについての追加の情報は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のトリプシンタンパク質分解がもたらすペプチドについての、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、または3もしくはそれ以上の、各ペプチドの単同位体質量、その前駆物質の荷電状態、前駆物質のm/z値、m/z遷移イオン、および各遷移イオンのイオンタイプを含む。
【0044】
さらに別の実施形態では、特定のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドについての追加の情報は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のトリプシンおよび/またはLys Cのタンパク質分解がもたらすペプチドについての、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、または3もしくはそれ以上の、各ペプチドの単同位体質量、その前駆物質の荷電状態、前駆物質のm/z値、m/z遷移イオン、および各遷移イオンのイオンタイプを含む。一実施形態では、関連する追加の情報に沿って、それぞれのKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1由来の単一のトリプシンのおよび/またはLys Cのタンパク分解ペプチドが、診断測定において使用される。よって、例えば、配列番号2、3、5、6、8、および/または11のペプチド、並びにこれらのペプチドについての追加の情報(表3を参照)が診断分析において使用される。
【0046】
ある実施形態
本発明のある実施形態は、以下に記載される。
1. 質量分析を用いて、生体試料から調製される、タンパク質消化物における1またはそれ以上の改変されたおよび/または改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を検出しおよび/または定量化し、当該サンプルにおける、改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルを算出することを含む、当該生体試料におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルを測定する方法であって、当該量は相対量または絶対量である。
【0047】
2. 1またはそれ以上の改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチの量を検出および/または定量化する前に、当該タンパク質消化物を分画する工程をさらに含む、実施形態1の方法。
【0048】
3. 当該分画する工程は、ゲル電気泳動、液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、ナノ逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、または逆相高速液体クロマトグラフィーからなる群から選択される、実施形態2の方法。
【0049】
4. 当該生体試料の当該タンパク質消化物は、Liquid Tissue(商標)プロトコールにより調製される、実施形態1から3のいずれかの方法。
【0050】
5. 当該タンパク質消化物はプロテアーゼ消化物を含む、実施形態1から3のいずれかの方法。
【0051】
6. 当該タンパク質消化物は、トリプシンおよび/またはlys C消化物を含む、実施形態5の方法。
【0052】
7. 当該質量分析は、タンデム質量分析、イオントラップ質量分析、三連四重極型質量分析、MALDI−TOF質量分析、MALDI質量分析、および/または飛行時間型質量分析を含む、実施形態1から6のいずれかの方法。
【0053】
8. 使用される質量分析のモードは、選択的反応モニタリング(SRM)、多重反応モニタリング(MRM)、および/もしくは複数の選択的反応モニタリング(mSRM)、またはこれらのあらゆる組み合わせである、実施形態7の方法。
【0054】
9. KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、および/または配列番号11として示されるアミノ酸配列を含む、実施形態1から8のいずれかの方法。
【0055】
10. 当該生体試料は、血液サンプル、尿サンプル、血清サンプル、腹水サンプル、喀痰サンプル、リンパ液、唾液サンプル、細胞、または,固形組織である、実施形態1から9のいずれかの方法。
【0056】
11. 当該生体試料はホルマリン固定された組織である、実施形態1から10のいずれかの方法。
【0057】
12. 当該生体試料はパラフィン包埋組織である、実施形態1から11のいずれかの方法。
【0058】
13. 当該生体試料は腫瘍から得られた組織である、実施形態1から12のいずれかの方法。
【0059】
14. 当該腫瘍は原発腫瘍である、実施形態13の方法。
【0060】
15. 当該腫瘍は続発性腫瘍である、実施形態13の方法。
【0061】
16. 改変されたおよび/または改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドを定量化することをさらに含む、実施形態1から15のいずれかの方法。
【0062】
17(a). KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドを定量化することは、1つの生体試料における、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の約8から約45のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を、異なるおよび別個のサンプルまたは生体試料における、同じKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量と比較することを含む、実施形態1から16のいずれかの方法。
【0063】
17(b). KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドを定量化することは、1つの生体試料における、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、および配列番号11に示される、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の約8から約45のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を、異なるおよび別個の生体試料における、同じKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量と比較することを含む、実施形態1から16のいずれかの方法。
【0064】
18. 1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドを定量化することは、既知量の添加された内部標準ペプチドとの比較により、生体試料におけるそれぞれのKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を測定することを含み、生体試料におけるそれぞれのKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドが、同じアミノ酸配列を有する添加された内部標準ペプチドと比較される、実施形態17(a)または17(b)の方法。
【0065】
19. 当該内部標準ペプチドは同位体標識されたペプチドである、実施形態18の方法。
【0066】
20. 同位体標識されている内部標準ペプチドは、
18O、
17O、
34S、
15N、
13C、
2H、またはこれらの組み合わせから選択される1つまたはそれ以上の重安定同位体を含む、実施形態19の方法。
【0067】
21. タンパク質消化物における、1またはそれ以上の改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を検出しおよび/または定量化することは、改変されたおよび/または改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の存在、および患者または対象における癌(例えば、ADCおよび/またはSSC)との関連性を示す、実施形態1から20のいずれかの方法。
【0068】
22. 1またはそれ以上の改変されたおよび/または改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量、または当該KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の量を当該検出しおよび/または定量化することの結果を、癌の診断ステージ/悪性度/状態と関連付けることをさらに含む、実施形態21の方法。
【0069】
23. 1またはそれ以上の改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量、または当該KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の量を当該検出しおよび/または定量化することの結果を、癌の診断ステージ/悪性度/状態と関連付けることは、癌の診断ステージ/悪性度/状態についての追加の情報を提供するために、複合的なフォーマットで他のタンパク質または他のタンパク質由来のペプチドの量を検出しおよび/または定量化することと組み合わせられる、実施形態22の方法。
【0070】
24. 1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/もしくはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの存在、不存在、もしくは量、または、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/もしくはMUC1のタンパク質の量に基づいて、当該生体試料が得られた患者または対象のために、処置を選択することをさらに含む、実施形態1から23のいずれか1つの方法。
【0071】
25. 当該生体試料が得られた患者または対象に、治療上効果のある量の治療薬を投与することをさらに含み、治療薬および/または投与される治療薬の量は、1またはそれ以上の改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量、またはKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の量に基づく、実施形態1から24のいずれかの方法。
【0072】
26. 処置または治療薬は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質を発現している癌細胞に向けられている、実施形態24または25の方法。
【0073】
27. 当該治療薬は、ペメトレキセドおよびベバシズマブから選択される、実施形態26の方法。
【0074】
28. 生体試料は、Liquid Tissue(商標)プロトコールおよび試薬を使用する、1またはそれ以上の改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を定量化するために処理されたホルマリン固定された腫瘍組織である、実施形態1から27のいずれかの方法。
【0075】
29. 当該1またはそれ以上の改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドは、表1における1またはそれ以上のペプチドである、実施形態1から28のいずれかの方法。
【0076】
30. 1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、3もしくはそれ以上の、4もしくはそれ以上の、5もしくはそれ以上の、6もしくはそれ以上の、7もしくはそれ以上の、8もしくはそれ以上の、9もしくはそれ以上の、または10もしくはそれ以上の、表1におけるペプチドおよび/またはこれらに対する抗体を含む、組成物。
【0077】
31. 1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、3もしくはそれ以上の、4もしくはそれ以上の、5もしくはそれ以上の、6もしくはそれ以上の、7もしくはそれ以上の、8もしくはそれ以上の、9もしくはそれ以上の、または10もしくはそれ以上の、表2におけるペプチド、またはこれらに対する抗体を含む、実施形態30の組成物。
【0078】
例示的なSRM/MRM分析方法
1. 1)KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質について、質量分析に基づくSRM/MRM分析のために使用され得る、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の候補ペプチドを識別するために、2)KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の標的ペプチドについての、個々のSRM/MRM分析または複数のSRM/MRM分析を開発するために、3)癌の診断および/または最適な治療を選択するために定量分析を適用するために、以下に記載される方法が使用された。KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質についてのSRM/MRM候補フラグメントペプチドの同定。
a.タンパク質を消化するために、1つのプロテアーゼまたは複数のプロテアーゼを用いて、(トリプシンを含むこととしてもよく、または含まないこととしてもよい)、ホルマリン固定された生体試料由来のLiquid Tissue(商標)タンパク質溶解物を調製。
b.イオントラップタンデム質量分析計でLiquid Tissue(商標)溶解物における全てのタンパク質フラグメントを分析し、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の全てのフラグメントペプチドを同定し、個々のフラグメントペプチドは、リン酸化またはグリコシル化のようなあらゆるペプチド改変を含まない。
c.イオントラップタンデム質量分析計でLiquid Tissue(商標)溶解物における全てのタンパク質フラグメントを分析し、例えば、リン酸化またはグリコシル化残基のようなペプチド改変を保有する、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の全てのフラグメントペプチドを同定する。
d.全ての、全長KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質から特定の消化方法により生成される全てのぺプチドが、潜在的に測定され得るが、SRM/MRM分析の開発のために使用される好ましいペプチドは、ホルマリン固定された生体試料から調製される、複合的なLiquid Tissue(商標)タンパク質溶解物において、直接、質量分析により同定されるものである。
e.ホルマリン固定された生体試料由来のLiquid Tissue(商標)溶解物を分析するときに、質量分析計でイオン化し、よって検出され得る患者または対象組織における、特異的に改変された(リン酸化、グリコシル化等)ペプチドが、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のペプチド改変を分析するための候補ペプチドとして同定される。
【0079】
2. KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のフラグメントペプチドの質量分光分析
a.Liquid Tissue(商標)溶解物で識別される個々のフラグメントペプチドについての三連四重極質量分析計でのSRM/MRM分析が、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のペプチドに適用される。
i. ゲル電気泳動、液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、ナノ逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、または逆相高速液体クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない、最適なクロマトグラフィー条件のためのフラグメントペプチドについての最適な保持時間を測定する。
ii. 各ペプチドについてのSRM/MRM分析を開発するために、ペプチドの単同位体質量、各ペプチドの前駆物質の荷電状態、各ペプチドについての前駆物質m/z値、各ペプチドについてのm/z遷移イオン、および各フラグメントペプチドについての各遷移イオンのイオンタイプを測定する。
iii. SRM/MRM分析は、三連四重極質量分析計で(i)および(ii)からの情報を用いて、その後行われ得、各ペプチドは、固有のSRM/MRM分析が三連四重極質量分析計で行われたと精密に定義する、固有のSRM/MRMシグネチャのピークおよび特性を有する。
b.SRM/MRM質量分光分析からの固有のSRM/MRMシグネチャのピーク面積の関数として検出される、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量が、特定のタンパク質溶解物におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の相対的および絶対的な量の両方を示すことができるようにSRM/MRM分析を行う。
i. 相対的な定量が以下により達成されることとしてもよい。
1. 1つのホルマリン固定された生体試料由来のLiquid Tissue(商標)溶解物で検出された所与のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のペプチドからのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、少なくとも第2の、第3の、第4の、またはそれ以上のホルマリン固定された生体試料由来の少なくとも第2の、第3の、第4の、またはそれ以上のLiquid Tissue(商標)溶解物における同じKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のフラグメントペプチドの同じSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することにより、増加したまたは減少したKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の存在を測定すること。
2. 1つのホルマリン固定された生体試料由来のLiquid Tissue(商標)溶解物において検出された所与のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドからのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、異なるおよび別個の生物源由来の他のサンプルにおける他のタンパク質由来のフラグメントペプチドから発生されたSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することにより、増加したまたは減少したKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の存在を測定し、ペプチドフラグメントについての2つのサンプル間のSRM/MRMシグネチャのピーク面積の比較は、各サンプルで分析されたタンパク質の量に対して正規化される。
3. 種々の細胞条件下で、それらの発現のレベルが変化しない他のタンパク質のレベルに対して、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルの変化を正規化するために、所与のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドについてのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、ホルマリン固定された生体試料からの同じLiquid Tissue(商標)溶解物内の異なるタンパク質由来の他のフラグメントペプチドからのSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することにより、増加したまたは減少したKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の存在を測定すること。
4. これらの分析は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の改変されていないフラグメントペプチドおよび改変されたフラグメントペプチドの両方に適用され得、改変は、リン酸化および/またはグリコシル化を含むがこれらに限定されず、改変されたペプチドの相対的なレベルは、改変されていないペプチドの相対量を測定することと同じ態様で測定される。
ii. 所与のペプチドの絶対的な定量が、個々の生体試料におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の所与のフラグメントペプチドについてのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、生体試料由来のタンパク質溶解物内に添加されたフラグメントペプチド内部標準のSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することにより達成されることとしてもよい。
1. 内部標準は、調べられるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のフラグメントペプチドの標識された合成バージョンである。この標準物質は、既知量でサンプルに添加され、SRM/MRMシグネチャのピーク面積が、生体試料におけるフラグメントペプチド内部標準と天然フラグメントペプチドの両方について別個に測定され得、続いて両方のピーク面積を比較する。
2. これは、改変されていないフラグメントペプチドおよび改変されたフラグメントペプチドに適用され得、改変は、リン酸化および/またはグリコシル化を含むがこれらに限定されず、改変されたペプチドの絶対的なレベルは、改変されていないペプチドの絶対量を測定することと同じ態様で測定され得る。
【0080】
3. 癌の診断および処置に対してフラグメントペプチド定量を適用する。
a.KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドレベルの相対的および/または絶対的な定量を行い、患者または対象の腫瘍組織における癌のステージ/悪性度/状態に対する、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質発現の、癌の分野で十分に理解される、あらかじめ測定された関連性が確認されることを示す。
b.KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドレベルの相対的および/または絶対的な定量を行い、異なる処置ストラテジーからの臨床成績との関連付けを示し、この関連付けはすでに当該分野で示されており、または患者もしくは対象のコホートにわたる関連付けの研究およびこれらの患者もしくは対象からの組織により将来的に示され得る。いったん、あらかじめ確立された関連付け、または将来得られる関連付けのいずれかがこの分析により確認され、その後、当該分析は、最適な処置ストラテジーを決定するために使用され得る。
【0081】
KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来のフラグメントペプチドについての質量分光分析。
a.タンパク質溶解物における、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の相対的および/または絶対的な量を測定するために検出されるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を測定するためのSRM/MRM分析。
i. 相対的な定量が以下により達成されることとしてもよい。
1. 1つのホルマリン固定された生体試料からのLiquid Tissue(商標)溶解物で検出された所与のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質ペプチドからのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、少なくとも第2の、第3の、第4の、またはそれ以上のホルマリン固定された生体試料由来の少なくとも第2の、第3の、第4の、またはそれ以上のLiquid Tissue(商標)溶解物における同じKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの同じSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することにより、増加したまたは減少したKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の存在を測定すること。
2. 1つのホルマリン固定された生体試料由来のLiquid Tissue(商標)溶解物において検出された所与のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のペプチドからのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、異なるおよび別個の生物源由来の他のサンプルにおける他のタンパク質由来のフラグメントペプチドから発生されたSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することにより、増加したまたは減少したKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の存在を測定し、ペプチドフラグメントについての2つのサンプル間のSRM/MRMシグネチャのピーク面積の比較は、各サンプルで分析されたタンパク質の量に対して正規化される。
3. 種々の細胞条件下で、それらの発現のレベルが変化しない他のタンパク質のレベルに対して、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルの変化を正規化するために、所与のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質ペプチドについてのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、ホルマリン固定された生体試料からの同じLiquid Tissue(商標)溶解物内の異なるタンパク質由来の他のフラグメントペプチドからのSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することによる、増加したまたは減少したKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の存在を測定すること。
4. これらの分析は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の改変されていないフラグメントペプチドおよび改変されたフラグメントペプチドの両方に適用され得、改変は、リン酸化および/またはグリコシル化を含むがこれらに限定されず、改変されたペプチドの相対的なレベルは、改変されていないペプチドの相対量を測定することと同じ態様で測定される。
ii. 所与のペプチドまたはそれが由来するタンパク質の絶対的な定量が、個々の生体試料におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質由来の所与のフラグメントペプチドについてのSRM/MRMシグネチャのピーク面積を、生体試料由来のタンパク質溶解物内に添加されたフラグメントペプチド内部標準のSRM/MRMシグネチャのピーク面積と比較することにより達成されることとしてもよい。
【0082】
内部標準は、調べられるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質(または、タンパク質分解で放出されるフラグメントペプチドの標識された合成バージョンを含むタンパク質、もしくはポリペプチド)由来のフラグメントペプチドの標識された合成バージョンであり得る。この標準物質は、既知量でサンプルに添加され、SRM/MRMシグネチャのピーク面積が、生体試料におけるフラグメントペプチド内部標準と天然フラグメントペプチドの両方について別個に測定され得、続いて両方のピーク面積を比較する。
【0083】
これは、改変されていないフラグメントペプチドおよび改変されたフラグメントペプチドに適用され得、改変は、リン酸化および/またはグリコシル化を含むがこれらに限定されず、改変されたペプチドの絶対的なレベルは、改変されていないペプチドの絶対的なレベルを測定することと同じ態様で測定され得る。
【0084】
ホルマリン固定された患者由来または対象由来の組織の分析に基づく、組織におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質レベルの評価は、特定の各患者または対象についての、診断、予後、および治療に関する情報を提供し得る。本明細書に記載されるのは、質量分析を用いて、生体試料から調製されたタンパク質消化物における、1またはそれ以上の改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドの量を検出しおよび/または定量化すること、当該サンプルにおいて、改変されたまたは改変されていないKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルを算出することを含む、生体試料における、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルを測定するための方法であって、当該レベルは相対的レベルまたは絶対的レベルである。関連する実施形態において、1またはそれ以上のKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドを定量化することは、既知量の添加された内部標準ペプチドに対する比較により、生体試料におけるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドのそれぞれの量を測定することを含み、生体試料におけるそれぞれのKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1のタンパク質のフラグメントペプチドは、同じアミノ酸配列を有する内部標準ペプチドと比較される。いくつかの実施形態において、内部標準は、
18O、
17O、
34S、
15N、
13C、
2H、またはこれらの組み合わせから選択される1またはそれ以上の重安定同位体を含む、同位体標識されている内部標準ペプチドである。
【0085】
本明細書に記載される、生体試料においてKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質(または、その代用となるフラグメントペプチド)のレベルを測定する方法は、患者または対象における癌の診断の指標として使用されることとしてもよい。一実施形態では、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルの測定からの結果は、組織でみられるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルを、正常なおよび/または癌のもしくは前癌組織でみられるKRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質のレベルと関連付ける(例えば、比較する)ことにより、癌の診断ステージ/悪性度/状態を測定するために使用されることとしてもよい。
【0086】
ホルマリン固定された患者組織における特定のタンパク質のレベルを検出するための使用における唯一の現在の方法は、免疫組織化学(IHC)である。この方法は、患者の腫瘍組織サンプルからの単一の組織切片で一度に1つのタンパク質のみを分析する。そのため、複数のタンパク質を分析するために、複数の組織切片が、多くの時間と労力をかけて調べられなければならない。IHCは、標的タンパク質の存在を検出するために抗体を用い、タンパク質に対する抗体の非特異的な結合の可能性があるために、あらゆるIHC実験においてシグナルのバックグラウンドの大きく内在する可能性がある。また、IHCは、せいぜい半定量のみである。これらの問題により、IHCは、複数のタンパク質の同時の客観的な定量分析を提供していない。本実施形態は、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の発現についての非常により有用なデータを提供する一方、患者組織サンプルの単一の切片を利用する、100%の分析特異性で、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質の同時の客観的な定量を提供することができ、多大な時間とお金を節約する。
【0087】
この複合的なSRM/MRM分析は、また、EGFR、IGF−1R、およびcMetのような、薬物標的のタンパク質を含む、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質以外の、他の追加のタンパク質の同時の分析を含み得る。このことは、追加のタンパク質の分析が、NSCLCタイプ(ADCまたはSCC)の測定を可能にし、よって、対象がペメトレキセドまたはベバシズマブのいずれを受けるべきかの指標を提供するだけでなく、ペメトレキセドおよびベバシズマブと組み合わせて使用されるどの追加の薬物が、NSCLCを治療するために有用であり得るのかをも示すので有用である。これらの追加の薬物標的タンパク質の分析に基づく追加の薬物の例は、EGFRレセプターを標的とするアービタックス、IGF‐1Rを標的とするフィギツムマブ、およびc‐Metおよび血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR‐2)を標的とするフォレチニブを含む。
【0088】
核酸およびタンパク質の両方が、同じLiquid Tissue(商標)の生体分子の調製物から分析され得るので、タンパク質が分析される同じサンプルにおける核酸から、疾病の診断および薬物治療の決定についての追加の情報を生成することが可能となる。例えば、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/またはMUC1のタンパク質が、増加したレベルで、ある細胞により発現される場合、SRMにより分析される際、データは、細胞の状態についての情報を提供し得、およびそれらの未制御な増殖、潜在的薬物耐性、および癌の発達の可能性が得られ得る。同時に、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、およびMUC1の遺伝子、並びに/または核酸およびそれらがコードするタンパク質の状態についての情報(例えば、mRNA分子およびそれらの発現レベルまたはスプライスのバリエーション)が、同じ生体分子の調製物内に存在する核酸から得られ得る。一実施形態では、KRT5、KRT7、ナプシンA、TTF1、TP63、および/もしくはMUC1のタンパク質、並びに/または1、2、3、4、もしくはそれ以上の追加のタンパク質についての情報が、これらのタンパク質をコードする核酸を試験することにより評価されることとしてもよい。これらの核酸は、例えば、1もしくはそれ以上の、2もしくはそれ以上の、または3もしくはそれ以上のシーケンス法、ポリメラーゼ連鎖反応方法、制限断片多型分析、欠失の識別、挿入、並びに/または、単一塩基対の多型、移行、塩基転換、もしくはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、突然変異の存在の測定により試験され得る。
【実施例】
【0089】
実施例1 腺癌および扁平上皮癌で観察されるKRT7、ナプシンA、TTF1、MUC1、KRT5およびTP63のレベル
腺癌と診断された4人の患者および扁平上皮癌と診断された4人の患者のホルマリン固定された肺組織標本が得られた。各サンプルは、米国特許第7,473,532号で提供されるLiquid Tissueプロトコールを用いて、トリプシンによりタンパク分解的に消化された。得られた溶解物は、同位体標識されているが、それ以外はその強度が質量分析計において測定されたペプチドと化学的に同じである、内部標準を用いて、質量分光分析に供された。KRT7、ナプシンA、TTF1、MUC1、KRT5およびTP63についての溶解物の分析から得られたデータは、
図1におけるヒストグラムに示される。ヒストグラムの1から4(1〜4)は、腺癌を有する患者の組織サンプルから得られたデータを示し、ヒストグラムの5から8(5〜8)は、扁平上皮癌を有する患者から得られたデータを示す。各セットのヒストグラムは、左から右にかけて、タンパク質のアトモル/マイクログラム(amol/μg)で示されるKRT7、ナプシンA、TTF1、MUC1、KRT5およびTP63の量を示す。また、データは、表4に数値的に表される。
【0090】
【表4】
【0091】
上記記載ならびに方法および組成物の例示的な実施形態は、本開示の範囲の説明である。当業者にとって明らかである変形のため、しかしながら、本開示は、上述される具体的な実施形態に限定されることを意図しない。