特許第6441245号(P6441245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441245
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 11/04 20060101AFI20181210BHJP
   G01G 11/00 20060101ALI20181210BHJP
   G01G 7/04 20060101ALI20181210BHJP
   G01G 23/02 20060101ALI20181210BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   G01G11/04
   G01G11/00 H
   G01G7/04
   G01G23/02 B
   G01G19/52 J
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-27169(P2016-27169)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-146166(P2017-146166A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 淳一
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−213823(JP,A)
【文献】 実開昭57−002429(JP,U)
【文献】 特開2012−173247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0161386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 7/04
G01G 11/00
G01G 11/04
G01G 19/52
G01G 23/02
G01L 1/08
G01L 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重の作用する大きさに応じた秤量信号を出力する秤量部(21)を備えた計量装置(1)であって、
前記秤量部に供給する電流が所定の許容範囲を超えた場合に、前記秤量部に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断し、該遮断時間の経過後に前記秤量部に電流を再供給する遮断部(100)を備えたことを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記遮断部は、前記秤量部に前記荷重が作用する周期である荷重負荷周期を予め記憶し、
前記遮断時間は、前記荷重負荷周期に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記秤量部は、電磁コイル(84)を有し、被計量物(W)による負荷と前記電磁コイルに流す電流で発生する力とを平衡させ、このとき前記電磁コイルに流れる電流値を測定して前記秤量信号として出力する電磁平衡式の秤であり、
前記遮断部は、前記秤量信号が前記許容範囲に対応する動作範囲を超えた場合に、前記電磁コイルに供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記動作範囲は、前記秤量部に作用する荷重の所定の基準範囲に基づいて設定されることを特徴とする請求項3に記載の計量装置。
【請求項5】
前記秤量信号はアナログ信号であり、
前記遮断部は、前記アナログ信号が前記動作範囲を超えた場合に前記秤量部に供給する電流を遮断するスイッチ(101)を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の計量装置。
【請求項6】
前記秤量信号は、アナログ信号から変換されたディジタル信号であり、
前記遮断部は、前記ディジタル信号が前記動作範囲を超えた場合に前記秤量部に供給する電流を遮断するスイッチ(101)を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の計量装置。
【請求項7】
前記秤量部は、起歪体(120)および該起歪体の応力集中部に貼り付けた電気抵抗線(123a〜123d)を有し、前記電気抵抗線からなるブリッジ回路の抵抗値の変化を秤量信号として出力する電気抵抗線式の秤であり、
前記遮断部は、前記ブリッジ回路に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を搬送しながら計量する計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の生産ラインにおいては、生産ラインに組み込まれ、生産される物品が前段から順次搬入され、搬入された物品を搬送しながら計量し、後段に搬出または選別手段により生産ラインから排除する計量装置が用いられている。計量装置は、被計量物からの荷重を受けて秤量信号を出力する秤量部を備えており、秤量部は電磁平衡式の秤またはロードセル式(電気抵抗線式)の秤からなる。
【0003】
従来のこの種の計量装置としては特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のものは、秤量部が電磁平衡式の秤から構成されており、秤量部の電磁コイルに印加された電圧が飽和(オーバーフロー)している場合に、秤量部からの秤量信号が異常であると判定するようになっている。この計量装置によれば、異常な秤量信号に基づいて被計量物が良品と誤って判定されることが防止される。また、秤量部のサーボ制御部のゲインを下げる必要が無いため、応答性が下がることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−173247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、電磁平衡式の秤において、異常な秤量信号が生成される原因は、例えば秤量部への過負荷である。秤量部への過負荷により電磁コイルに大きな電流が流れると、その電磁コイルが発熱してゼロ点や感度がドリフトしてしまう。
【0006】
また、ロードセル式の秤において、異常な秤量信号が生成される原因は、例えば不適切な歪みゲージが誤って起歪体に装着されたことである。この場合、適切な歪みゲージに交換されるまで秤量信号の異常が続いてしまう。
【0007】
したがって、異常な秤量信号を引き起こす原因を取り除かない限り、秤量信号が長期に渡って異常になる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、異常な秤量信号が生成される原因を取り除くものではないため、秤量信号が長期に渡って異常になってしまうおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、秤量部を過電流から保護しつつ秤量部による計測を効率よく行うことができる計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る計量装置は、荷重の作用する大きさに応じた秤量信号を出力する秤量部(21)を備えた計量装置(1)であって、前記秤量部に供給する電流が所定の許容範囲を超えた場合に、前記秤量部に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断し、該遮断時間の経過後に前記秤量部に電流を再供給する遮断部(100)を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、秤量部に不適切な電流を供給することが回避され、遮断時間の経過後に電流が再供給されて秤量部が計測を再開する。この結果、秤量部を過電流から保護しつつ秤量部による計測を効率よく行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る計量装置において、前記遮断部は、前記秤量部に前記荷重が作用する周期である荷重負荷周期を予め記憶し、前記遮断時間は、前記荷重負荷周期に基づいて設定されることを特徴とする。
【0013】
この構成により、遮断時間を荷重負荷周期に基づいて設定しておくことで、複数の被計量物が所定の周期で秤量部に順次搬送されてくる場合に、ある被計量物の計量時に秤量部への電流が遮断されても、後続する次の被計量物に対しては電流の供給が再開されるため支障なく計量動作を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る計量装置において、前記秤量部は、電磁コイル(84)を有し、被計量物(W)による負荷と前記電磁コイルに流す電流で発生する力とを平衡させ、このとき前記電磁コイルに流れる電流値を測定して前記秤量信号として出力する電磁平衡式の秤であり、前記遮断部は、前記秤量信号が前記許容範囲に対応する動作範囲を超えた場合に、前記電磁コイルに供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断することを特徴とする。
【0015】
この構成により、秤量部が電磁平衡式の秤である場合、大きな荷重が秤量部に作用すると電磁コイルに流れる電流が増大して温度ドリフトが大きくなってしまうが、秤量部が計測すべき範囲を、この秤量部に供給される電流値で予め規定し、秤量信号の動作範囲として設定しておくことにより、秤量信号が所定の動作範囲を超えた場合に、電磁コイルに供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断することができ、温度ドリフトが大きくなるのを防止できる。
【0016】
また、本発明に係る計量装置において、前記動作範囲は、前記秤量部に作用する荷重の所定の基準範囲に基づいて設定されることを特徴とする。
【0017】
この構成により、秤量部に作用する荷重の所定の基準範囲に基づいて秤量信号の動作範囲を設定するので、荷重の値として動作範囲を管理することができる。
【0018】
また、本発明に係る計量装置において、前記秤量信号はアナログ信号であり、前記遮断部は、前記アナログ信号が前記動作範囲を超えた場合に前記秤量部に供給する電流を遮断するスイッチ(101)を含むことを特徴とする。
【0019】
この構成により、アナログ信号に基づいて動作するアナログ回路とスイッチとで遮断部を構成することができるため、遮断部がAD変換器の性能に左右されることなく動作できる。
【0020】
また、本発明に係る計量装置において、前記秤量信号は、アナログ信号から変換されたディジタル信号であり、前記遮断部は、前記ディジタル信号が前記動作範囲を超えた場合に前記秤量部に供給する電流を遮断するスイッチ(101)を含むことを特徴とする。
【0021】
この構成により、ディジタル信号に基づいて動作するディジタル回路とスイッチとで遮断部を構成することができるため、遮断部をノイズに強く小型なものにできる。
【0022】
また、本発明に係る計量装置において、前記秤量部は、起歪体(120)および該起歪体の応力集中部に貼り付けた電気抵抗線(123a〜123d)を有し、前記電気抵抗線からなるブリッジ回路の抵抗値の変化を秤量信号として出力する電気抵抗線式の秤であり、前記遮断部は、前記ブリッジ回路に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断することを特徴とする。
【0023】
この構成により、秤量部が電気抵抗線式の秤である場合、電気抵抗線に流れる電流が増大すると秤量信号が異常をきたしてしまうが、ブリッジ回路への供給電圧を検知して電気抵抗線に流れる電流が所定の許容範囲を超えた場合に、電気抵抗線に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断するようにしたため、秤量信号が異常をきたすのを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、秤量部を過電流から保護しつつ秤量部による計測を効率よく行うことができる計量装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態に係る計量装置の概要を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る計量装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る計量装置の秤量部および遮断部の構成を示す図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る計量装置の計量部の計量動作を説明する図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る計量装置の、電気抵抗線式秤である場合の秤量部の機械的構成を示す図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る計量装置の、電気抵抗式秤である場合の秤量部の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る計量装置の実施の形態について図面を参照して説明する。図1図6は、本発明に係る計量装置の一実施の形態を示している。
【0027】
まず、計量装置1の概要を説明する。図1において、計量装置1は、装置本体部2と、搬送部3と、搬入センサ4とを備えて構成されている。また、計量装置1の後段には選別部5が接続されている。
【0028】
計量装置1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wの重量を測定し、得られた測定値(以下、計量値という)を計量結果として出力している。
【0029】
また、計量装置1は、計量値が基準値の範囲内にあるか否か等により、被計量物Wを良品と不良品の何れかに判定している。さらに、計量装置1は、得られた計量値に基づいて、複数の基準値に対応して被計量物Wを重量ランク判定をしている。
【0030】
また、測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果は、表示部10に表示されるとともに、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力されるようになっている。選別部5では、計量装置1が出力した測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果に応じて被計量物Wを振り分けるようになっている。
【0031】
次に、計量装置1の詳細な構成を説明する。図1図2に示すように、装置本体部2は、秤量部21と、総合制御部7と、表示部10と、設定部11と、これらの各部を収納する収納筐体2aとにより構成されている。
【0032】
搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬入されてくる被計量物Wを所定の搬送条件により搬送している。被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、搬送されている間に重量が秤量部21により計量されるようになっている。
【0033】
秤量コンベア32は、被計量物を所定の搬送条件により搬送している。また、被計量物Wは、計量の後にさらに後段の選別部5に搬送され、振り分けられるようになっている。
【0034】
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されている。助走コンベア31は、前段のベルトコンベア14から搬送されてきた被計量物Wが秤量コンベア32に移動する前に、被計量物Wの助走を行うものであり、2つのローラ31a、31cと、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。
【0035】
秤量コンベア32は、被計量物Wの計量を行う秤量部21の上部に支持されており、2つのローラ32a、32cとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bと、ローラ32cを駆動する図示しないモータとにより構成されている。ローラ32cは、モータの駆動により回転駆動されるようになっている。
【0036】
搬入センサ4は、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されており、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されている。投光部4aは搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置されている。受光部4bは搬送ベルト32bの他の側面側に、投光部4aに対向するように配置されている。
【0037】
搬入センサ4は、被計量物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過して被計量物Wにより受光部4bが遮光されることで、被計量物Wの搬入が開始されたことを検出するようになっている。搬入センサ4で検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の総合制御部7に出力されるようになっている。
【0038】
秤量部21は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する荷重センサであり、電磁平衡式秤の構成を有し、被計量物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、秤量部21に加わる荷重を測定するようになっている。
【0039】
具体的には、秤量部21は、図3に示すように、秤量コンベア32とともに上下する吊り板85と、吊り板85を懸架する平行バネ86と、一端が吊り板85に固定されたさお82と、さお82を支持する支点81と、さお82の他端の位置を検出する位置センサ83と、さお82の他端に力を作用させる磁石88付きの電磁コイル84と、電磁コイル84を駆動するコイル印加部92と、位置センサ83からの検出信号に基づいてPID制御等のサーボ制御によりコイル印加部92を制御するサーボ制御部91と、を備えている。なお、平行バネ86は、その一端側は吊り板85に固定されているが、他端側は支点81および電磁コイル84との基台87に固定されており、ロバーバル機構を構成している。
【0040】
また、秤量部21は、電磁コイル84に流れる電流を検出するために電磁コイル84に直列に接続された電流検出抵抗93と、検出された信号を増幅する増幅器94と、増幅された信号をフィルタ処理するアナログフィルタ95と、を備えている。
【0041】
秤量部21としての電磁平衡式秤においては、無負荷時にさお82の平衡をとっておき、被計量物Wが秤量コンベア32に載ると支点81回りのバランスが崩れて、さお82が図中右上がりに傾こうとするが、この傾きを位置センサ83により検出し、傾きをゼロとするように電磁コイル84に電流を流すことにより、この電流は被計量物Wの重量に比例するので、重量値にグラム換算することができるようになっている。すなわち、被計量物Wの質量による負荷と、磁石88と電磁コイル84に流す電流で発生する力を平衡させ、このとき電磁コイル84に流れる電流値を被計量物Wの重量として測定している。
【0042】
総合制御部7は、信号処理部71、計量部72、記憶部73、制御部74、良否判定部76、モード切替部77を備えている。
【0043】
信号処理部71は、秤量部21からの秤量信号を受け所定の信号処理条件に基づいて信号処理して信号処理済信号を出力するようになっていて、アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備えている。具体的には、信号処理部71は、秤量部21からの秤量信号に対して、種類や特性の異なる複数のローパスフィルタから選択したフィルタを用いて、秤量信号の低周波成分のみを信号処理済信号として通過させるようになっている。なお、信号処理部71が選択するローパスフィルタは、1つの場合、または、複数を組み合わせたものの場合がある。このローパスフィルタとしては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとがある。ここで、FIRフィルタは、インパルス応答波形が入力された場合に、ある決まった時間(有限時間)だけ出力を出す有限インパルス応答フィルタであり、IIRフィルタは、無限にインパルス応答波形の減衰波形を出力する無限インパルス応答フィルタである。
【0044】
ここで、FIRフィルタは、A/D変換器によりディジタル信号に変換された秤量信号に対して、所定の低周波成分を通過するローパスフィルタを構成し、単純平均化処理や公知の窓関数を用いた重み付け平均化処理を行うようになっている。IIRフィルタは、スイッチトキャパシタフィルタのように特性変更が可能なハードウェアを用いて秤量部21からの秤量信号(アナログ秤量信号)を直接受けて処理済信号をA/D変換器に出力するアナログフィルタで構成してもよいし、A/D変換器からのディジタル秤量信号(図示せず)を受けるディジタルフィルタで構成してもよい。
【0045】
信号処理部71は、具体的には、図3に示すように、アナログフィルタ95でフィルタ処理された信号をディジタル変換するA/D変換器96と、ディジタル変換された信号をフィルタ処理するフィルタ97と、を備えている。
【0046】
計量部72は、信号処理部71が出力する信号処理済信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)するようになっている。また、計量部72においては、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから所定の基準時間Tkが経過し、秤量部21から秤量信号が出力された被計量物Wに対して、計量値を算出するようになっている。計量部72により算出された個々の重量は、記憶部73に算出データとして記憶されるようになっている。
【0047】
計量部72は、図4に示すように、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから予め設定された基準時間Tkが経過したときに計量を行うようになっている。ここで、基準時間Tkは、搬入センサ4で被計量物Wが秤量コンベア32に搬入を開始したことを検出してから、被計量物Wが秤量コンベア32に完全に乗り移り、さらに秤量部21から出力された秤量信号が安定するまでに必要な時間を意味する。具体的には、基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被計量物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被計量物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。また、基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは、搬入開始検出位置PoからL1だけ移動して質量測定位置Psに到達し、計量が行われる。
【0048】
また、計量値の算出は、基準時間Tkが経過した以降、被計量物Wが秤量コンベア32から搬出されるまでの測定時間Tsにおいて行われる。
【0049】
なお、計量部72においては、被計量物Wの品種(特に、サイズ)に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件(パラメータ)が選択されるようになっており、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が6g〜600g、測定能力が最大150個/minで選択されるようになっている。
【0050】
この場合、被計量物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになり、基準時間Tkは400msec以上であればよいが、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産その他の条件により設定されるようになっている。
【0051】
記憶部73は、記憶媒体などから構成されており、秤量コンベア32による被計量物Wの所定の搬送条件、および計量部72で使用する計量パラメータを含む条件パラメータを被計量物Wの品種に対応させて記憶するようになっている。
【0052】
記憶部73には、被計量物Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF(Low Pass Filter)特性が記憶されている。また、記憶部73には、被計量物Wの良否を判定するための良品範囲として、上限および下限の基準値が記憶されている。
【0053】
ここで、搬送速度は、被計量物Wを搬送する搬送部3の速度であり、LPF特性は、どのような特性のローパスフィルタであるかを示すものであり、良品範囲とは、良品と判定される被計量物Wの計量値の範囲である。
【0054】
これらの記憶情報は、設定部11からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。記憶部73は、計量値、良否判定結果等の種々のデータを記憶するようになっている。
【0055】
制御部74は、被計量物Wの品種に応じて記憶部73から所定の搬送条件および所定の信号処理条件を読み出して秤量コンベア32をそれぞれ制御するようになっている。
【0056】
また、制御部74は、記憶部73に記憶している複数の品種に対応する条件パラメータを順次切り換えて搬送部3を制御するようになっている。また、制御部74は、図示しないモータの回転速度(rpm)を駆動制御して、搬送部3による被計量物Wの搬送速度を制御するようになっている。
【0057】
良否判定部76は、判定回路などから構成されており、計量部72が算出した計量値と良否判定基準値との比較に基づく良否判定結果を判定して出力するようになっている。
【0058】
具体的には、良否判定部76は、計量部72から出力された被計量物Wの計量値を受けると、記憶部73に予め記憶されている上限値および下限値を読み出し、算出した被計量物Wの計量値と上限値および下限値とをそれぞれ比較し、上限値および下限値で決定される許容範囲内に被計量物Wの計量値が入っているか否かを判定するようになっている。
【0059】
良否判定部76において判定された判定結果は、表示部10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっている。また、判定結果は、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力され、被計量物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。さらに、この判定結果は、記憶部73に出力され、各被計量物Wについての判定結果が記憶されるようになっている。
【0060】
モード切替部77は、制御部74に指令を出し、計量装置1の動作モードを、本稼働モードと設定モードとの間で切り換えるものである。ここで、本稼働モードとは、計量装置1が被計量物Wの計量値の算出および良否判定を行う通常の動作モードのことであり、設定モードとは、各種パラメータの設定をしたり、本稼働モードの動作を正常に行うことができるか否かの動作確認のための動作モードである。
【0061】
表示部10は、図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。表示部10は、計量装置1の動作状態、被計量物Wの計量値、良否判定結果を表示したり、パラメータの設定や動作確認に関する表示をするようになっている。なお、表示部10と設定部11とを一体化してタッチパネルとして構成し、表示部10に表示された数字、文字などが設定部11からタッチ操作で入力される構成にしてもよい。
【0062】
選別部5は、計量装置1の後段に接続されており、選別機構部5aおよび搬送ベルト5bにより構成されている。選別機構部5aは、例えば、押し出し型の選別機構により構成されている。
【0063】
選別機構部5aは、良品と不良品とを選別できるものであればよく、フリッパ機構、ドロップアウト機構、エアジェット機構などの選別機構で構成してもよい。選別機構部5aは、上流の秤量コンベア32から搬送される被計量物Wが搬送ベルト5bで矢印B方向に搬送されている間に、不良品と判定された被計量物Wに対して搬送ベルト5bの側面方向への押し出しやジェットエアの吹き付けを行うようになっており、不良の被計量物Wを搬送ベルト5b上から排出し、良品の被計量物Wと区別することにより選別を行っている。
【0064】
また、搬送ベルト5bは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとして構成されており、測定を終了した被計量物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
【0065】
本実施形態では、総合制御部7は、遮断部100を更に備えている。遮断部100には、秤量部21のアナログフィルタ95から出力されたアナログ信号の秤量信号、または信号処理部71からのディジタル信号の秤量信号が入力される。遮断部100は、秤量部21に供給する電流の所定の許容範囲に対応する秤量信号の動作範囲を秤量信号が超えた場合に、秤量部21に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断するようになっている。
【0066】
遮断部100は、秤量部21に荷重が作用する周期である荷重負荷周期を予め記憶し、遮断時間は、荷重負荷周期に基づいて設定されるようになっている。すなわち、被計量物Wは一定周期で順次搬送されてくるため、被計量物Wの搬送周期が秤量部21への荷重負荷周期となる。この場合、遮断時間は、1つの被計量物Wの荷重が秤量部21に作用している時間と等しい長さに設定される。これにより、ある被計量物Wの検査時に秤量部21への電流が遮断された場合、後続する被計量物Wの検査時は、秤量部21への電流供給が復帰する。
【0067】
また、動作範囲は、秤量部21に作用する荷重の所定の基準範囲に基づいて設定されるようになっている。すなわち、秤量部21が支障なく計測できる範囲を、この秤量部21に供給される電流値で予め規定し、この電流値を秤量信号の動作範囲として設定しておくが、この動作範囲は、許容荷重値としての基準範囲に基づいて設定される。言い換えると、遮断部100が電流供給を遮断する閾値は、電流値として規定するか、または荷重値として規定され、その規定に対応する秤量信号の信号レベルに対して設定される。
【0068】
この遮断部100は、具体的には、出力切替部101、リミット判定部102、コイル電流リミット設定部103、リミット切替部104を備えている。
【0069】
出力切替部101は、スイッチからなり、サーボ制御部91からコイル印加部92への電流を通電または遮断するようになっている。
【0070】
リミット判定部102は、秤量部21のアナログフィルタ95から出力された秤量信号を受けて、この秤量信号の信号レベルが所定の動作範囲を超えたか否かを判定する。そして、リミット判定部102は、秤量信号が動作範囲を超えた場合に、出力切替部101を通電状態から遮断状態に所定の遮断時間だけ切替える。これにより、コイル印加部92に供給する電流が所定の遮断時間だけ遮断される。
【0071】
コイル電流リミット設定部103は、動作範囲をリミット判定部102に設定するようになっている。リミット切替部104は、リミット判定部102に設定する動作範囲を切替えるようになっている。
【0072】
なお、秤量部21は、電気抵抗線式秤(ロードセル)であってもよい。秤量部21が電気抵抗線式秤からなる場合にも本発明を適用することができる。秤量部21が電気抵抗線式秤からなる場合、秤量部21は、図5図6に示すように、金属性の起歪体120と、この起歪体120の応力集中部に貼り付けた電気抵抗線(ひずみゲージ)123a〜123dとを含んで構成される。起歪体120は、その固定端121が基台87に固定される一方、その自由端122には秤量コンベア32の荷重を受ける支持部21aの下端部が連結されている。電気抵抗線(ひずみゲージ)123a〜123dはブリッジ回路123を構成している。
【0073】
電気抵抗式秤からなる秤量部21においては、秤量コンベア32に作用する荷重を受けて起歪体120の応力集中部が変形すると、電気抵抗線123a、123dが伸張されて電気抵抗値が増加する一方、電気抵抗線123b、123cが圧縮されて電気抵抗値が減少し、ブリッジ回路123の抵抗値が変化する。秤量部21は、ブリッジ回路123の抵抗値の変化を秤量信号として測定するようになっている。
【0074】
このような電気抵抗式秤では、検査対象の被計量物Wの品種を変更する際に、被計量物Wの重量レンジ等に応じた最適な抵抗値の電気抵抗線123a〜123dが起歪体に装着されて用いられる。このため、オペレータが不適切な抵抗値の電気抵抗線123a〜123dを誤って装着することもあり得る。電気抵抗線123a〜123dの抵抗値が不適切な場合、電気抵抗線123a〜123dに流れる電流が大きくなって装置に異常をきたすおそれがある。
【0075】
そこで、電流検出抵抗124a、124bを用いてブリッジ回路123から電流を取出し、この電流をA/D変換器126でディジタル信号に変換し、この信号が所定値を超えた場合に、スイッチ125を遮断状態(開放状態)にすることで、電源(図中Vcと記す)から秤量部21への電流の供給を遮断できる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る計量装置1は、秤量部21に供給する電流が所定の許容範囲を超えた場合に、秤量部21に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断し、この遮断時間の経過後に前記秤量部に電流を再供給する遮断部100を備えている。
【0077】
この構成により、秤量部21に不適切な電流を供給することが回避され、遮断時間の経過後に電流が再供給されて秤量部21が計測を再開する。この結果、秤量部21を過電流から保護しつつ秤量部21による計測を効率よく行うことができる。
【0078】
なお、秤量部21による計測を効率よく行うことができる、とは、遮断時間が経過すると電流の供給が自動的に再開されるのでオペレータが電流の供給を再開する操作をする必要がないことを表す。
【0079】
また、本実施形態に係る計量装置1において、遮断部100は、秤量部21に荷重が作用する周期である荷重負荷周期を予め記憶している。そして、遮断時間は、荷重負荷周期に基づいて設定される。
【0080】
この構成により、遮断時間を荷重負荷周期に基づいて設定しておくことで、複数の被計量物が所定の周期で秤量部21に順次搬送されてくる場合に、ある被計量物の計量時に秤量部21への電流が遮断されても、後続する次の被計量物に対しては電流の供給が再開されるため支障なく計量動作を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態に係る計量装置1において、秤量部21は、電磁コイル84を有し、被計量物Wによる負荷と電磁コイル84に流す電流で発生する力とを平衡させ、このとき電磁コイル84に流れる電流値を測定して秤量信号として出力する電磁平衡式の秤である。そして、遮断部100は、秤量信号が許容範囲に対応する動作範囲を超えた場合に、電磁コイル84に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断する。
【0082】
この構成により、秤量部21が電磁平衡式の秤である場合、大きな荷重が秤量部21に作用すると電磁コイルに流れる電流が増大して温度ドリフトが大きくなってしまうが、秤量部21が計測すべき範囲を、この秤量部21に供給される電流値で予め規定し、秤量信号の動作範囲として設定しておくことにより、秤量信号が所定の動作範囲を超えた場合に、電磁コイル84に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断することができ、温度ドリフトが大きくなるのを防止できる。
【0083】
また、本実施形態に係る計量装置1において、動作範囲は、秤量部21に作用する荷重の所定の基準範囲に基づいて設定される。
【0084】
この構成により、秤量部21に作用する荷重の所定の基準範囲に基づいて秤量信号の動作範囲を設定するので、荷重の値として動作範囲を管理することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る計量装置1において、秤量信号はアナログ信号である。そして、遮断部100は、アナログ信号が動作範囲を超えた場合に秤量部に供給する電流を遮断するスイッチを含んでいる。
【0086】
この構成により、アナログ信号に基づいて動作するアナログ回路とスイッチとで遮断部100を構成することができるため、遮断部100がAD変換器の性能に左右されることなく動作できる。
【0087】
また、本実施形態に係る計量装置1において、秤量信号は、アナログ信号から変換されたディジタル信号である。そして、遮断部100は、ディジタル信号が動作範囲を超えた場合に秤量部21に供給する電流を遮断するスイッチを含んでいる。
【0088】
この構成により、ディジタル信号に基づいて動作するディジタル回路とスイッチとで遮断部100を構成することができるため、遮断部100をノイズに強く小型なものにできる。
【0089】
また、本実施形態に係る計量装置において、秤量部21は、起歪体120およびこの起歪体120の応力集中部に貼り付けた電気抵抗線123a〜123dを有し、電気抵抗線123a〜123dからなるブリッジ回路123の抵抗値の変化を秤量信号として出力する電気抵抗線式の秤であり、遮断部100は、ブリッジ回路123に供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断する。
【0090】
この構成により、秤量部21が電気抵抗線式の秤である場合、電気抵抗線123a〜123dに流れる電流が増大すると発熱が大きくなって秤量信号が異常をきたしてしまうが、ブリッジ回路123への供給電圧を検知して電気抵抗線123a〜123dに流れる電流が所定の許容範囲を超えた場合に、電気抵抗線123a〜123dに供給する電流を所定の遮断時間だけ遮断するようにしたため、発熱が大きくなって秤量信号が異常をきたすのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明に係る計量装置は、秤量部を過電流から保護しつつ秤量部による計測を効率よく行うことができるという効果を有し、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を搬送しながら計量する計量装置として有用である。
【符号の説明】
【0092】
1 計量装置
21 秤量部
100 遮断部
101 出力切替部(スイッチ)
W 被計量物
図1
図2
図3
図4
図5
図6