特許第6441255号(P6441255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441255
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ロボットの線条体処理構造
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   B25J19/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-77495(P2016-77495)
(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公開番号】特開2017-185603(P2017-185603A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】本門 智之
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 航
【審査官】 松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−238320(JP,A)
【文献】 特開2005−131761(JP,A)
【文献】 特開平02−292189(JP,A)
【文献】 特開2009−028875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側が前腕に第1軸線回りに回転可能に連結され先端側に複数の作業ツールが装着された手首を有するロボットの線条体処理構造であって、
前記前腕から前記手首の先端までにわたって前記第1軸線に沿って配置された可撓性を有する第1の導管と、
該第1の導管内に長手方向に沿って配置された可撓性を有する第2の導管とを備え、
一の前記作業ツール用の第1の線条体が、前記第2の導管内を長手方向に貫通するように配置され、
他の前記作業ツール用の第2の線条体が、前記第1の導管と前記第2の導管との間の空間に長手方向に貫通するように配置され
前記手首の先端に、複数の前記作業ツールを取り付ける取付フランジ部材を備え、
前記第1の導管の先端が、前記手首に設けられた孔内に前記第1軸線に沿う方向に移動可能に嵌合させられ、
前記第1の導管の前記第1軸線に沿う方向の移動を前記手首の先端面より前記取付フランジ部材側に突出しないように制限する移動制限部を備えるロボットの線条体処理構造。
【請求項2】
前記取付フランジ部材に、前記第2の導管を貫通させる貫通孔と、前記第1の導管と前記第2の導管との間の空間を径方向外方に開口させ、前記第2の線条体を貫通させる窓部とが設けられている請求項1に記載のロボットの線条体処理構造。
【請求項3】
前記第1の導管が、前記前腕および前記手首に設けられた孔内に両端を嵌合させられるとともに、先端または基端の少なくとも一方が、前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されている請求項1または請求項2に記載のロボットの線条体処理構造。
【請求項4】
前記第2の導管が、前記前腕に固定された部材および前記取付フランジ部材または前記作業ツールに設けられた孔内に両端を嵌合させられるとともに、先端または基端の少なくとも一方が、前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されている請求項から請求項のいずれかに記載のロボットの線条体処理構造。
【請求項5】
前記第2の導管の先端が、前記作業ツールに設けられた孔内に前記第1軸線に沿う方向に移動可能に嵌合させられ、
前記作業ツールによって、該第2の導管の前記第1軸線に沿う先端側への移動が制限されている請求項に記載のロボットの線条体処理構造。
【請求項6】
前記第1の導管および前記第2の導管の基端が、前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されるとともに、
前記前腕に固定された部材が、前記作業ツールを制御する作業ツール制御機器であり、
前記第1の導管および前記第2の導管の前記第1軸線に沿う基端側への移動が、前記作業ツール制御機器により制限されている請求項または請求項に記載のロボットの線条体処理構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの線条体処理構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前腕の先端に装着された作業ツールを制御する線条体を前腕内部に貫通させてルーティングした線条体処理構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この線条体処理構造においては、前腕の先端に装着された作業ツールが複数ある場合には、1つの作業ツールを制御するための線条体は前腕内部を貫通させられるが、残りの作業ツールを制御するための線条体については、前腕の外側を通すことが通常であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4286684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の線条体処理構造では、前腕の外側を通されて手首要素まで導かれる線条体は、前腕の長手軸回りの第1手首要素の回転に伴って前腕の外側を周方向に移動させられるため、第1手首要素の回転に必要な余裕を持たせて配線する必要がある。その結果、前腕の外側を通される線条体が、前腕の径方向外方に弛むため、線条体が周辺装置に干渉する可能性が高くなるという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、前腕の先端に複数の作業ツールを装着する場合であっても、各作業ツールの制御用の線条体が周辺装置に干渉しないように配線することができるロボットの線条体処理構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、基端側が前腕に第1軸線回りに回転可能に連結され先端側に複数の作業ツールが装着された手首を有するロボットの線条体処理構造であって、前記前腕から前記手首の先端までにわたって前記第1軸線に沿って配置された可撓性を有する第1の導管と、該第1の導管内に長手方向に沿って配置された可撓性を有する第2の導管とを備え、一の前記作業ツール用の第1の線条体が、前記第2の導管内を長手方向に貫通するように配置され、他の前記作業ツール用の第2の線条体が、前記第1の導管と前記第2の導管との間の空間に長手方向に貫通するように配置されているロボットの線条体処理構造を提供する。
【0007】
本態様によれば、可撓性を有する第1の導管および第2の導管が、2重管構造を形成して、第1軸線に沿って配置され、一の作業ツール用の第1の線条体は、内側の第2の導管内を貫通させられて配線され、他の作業ツール用の第2の線条体は、2つの導管の間の筒状の空間を貫通させられて配線される。これにより、複数の作業ツール用の線条体を前腕に対する手首の回転軸線である第1軸線の近傍に同時に配置することができ、前腕に対して手首を第1軸線回りに回転させても線条体の経路を大きく変動させずに済み、周辺装置と線条体との干渉を低減することができる。
【0008】
上記態様においては、前記手首の先端に、複数の前記作業ツールを取り付ける取付フランジ部材を備え、該取付フランジ部材に、前記第2の導管を貫通させる貫通孔と、前記第1の導管と前記第2の導管との間の空間を径方向外方に開口させ、前記第2の線条体を貫通させる窓部とが設けられていてもよい。
【0009】
このようにすることで、内側の第2の導管は、手首の先端に取り付けられた取付フランジ部材の貫通孔を貫通して取付フランジ部材によって手首の先端に取り付けられた一の作業ツールまで到達し、内部を貫通する第1の線条体を一の作業ツールまで容易に配線することができる。また、2つの導管の間の空間を経由してきた第2の線条体は、取付フランジ部材の窓部を通過して他の作業ツールの直近において径方向外方に引き出されるので、取付フランジ部材によって手首の先端に取り付けられた他の作業ツールまで容易に配線することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記第1の導管が、前記前腕および前記手首に設けられた孔内に両端を嵌合させられるとともに、先端または基端の少なくとも一方が、前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されていてもよい。例えば、手首の先端側は先端にて第2手首要素に固定され、作業ツール制御機器側は基端にて前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されている場合もある。
このようにすることで、手首の回転または曲げによって第1の導管の経路長が変動しても、前腕の孔内において基端を、または手首の孔内において先端を第1軸線に沿う方向に移動させることによって、経路長の変動を吸収することができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記第1の導管の先端が、前記手首に設けられた孔内に前記第1軸線に沿う方向に移動可能に嵌合させられ、前記第1の導管の前記第1軸線に沿う方向の移動を前記手首の先端面より前記取付フランジ部材側に突出しないように制限する移動制限部を備えていてもよい。
このようにすることで、手首に設けられた孔内に第1軸線に沿う方向に移動可能に嵌合された第1の導管の移動を移動制限部によって制限し、2つの導管の間の空間を経由してきた第2の線条体の窓部からの取り出しを容易にすることができる。
【0012】
また、上記態様においては、前記第2の導管が、前記前腕に固定された部材および前記取付フランジ部材または前記作業ツールに設けられた孔内に両端を嵌合させられるとともに、先端または基端の少なくとも一方が、前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されていてもよい。例えば、作業ツール制御機器側は基端にて第2の線条体に固定され、手首の先端側は先端にて前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されている場合もある。
このようにすることで、手首の回転または曲げによって第2の導管の経路長が変動しても、前腕に固定された部材の孔内において基端を、または作業ツールの孔内において先端を第1軸線に沿う方向に移動させることによって、経路長の変動を吸収することができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記第2の導管の先端が、前記作業ツールに設けられた孔内に前記第1軸線に沿う方向に移動可能に嵌合させられ、前記作業ツールによって、該第2の導管の前記第1軸線に沿う先端側への移動が制限されていてもよい。
このようにすることで、作業ツールに設けられた孔内に第2の導管の先端を嵌合させるだけで、第2の導管の先端が第1軸線に沿う方向に移動可能に支持されるとともに、先端側への移動が制限され、第2の導管の基端側が前腕に固定された部材の孔から外れることを防止することができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記第1の導管および前記第2の導管の基端が、前記第1軸線に沿う方向に移動可能に配置されるとともに、前記前腕に固定された部材が、前記作業ツールを制御する作業ツール制御機器であり、前記第1の導管および前記第2の導管の前記第1軸線に沿う基端側への移動が、前記作業ツール制御機器により制限されていてもよい。
【0015】
このようにすることで、作業ツール制御機器に設けられた孔内に第2の導管の基端を嵌合させるだけで、第2の導管の基端が第1軸線に沿う方向に移動可能に支持されるとともに、作業ツール制御機器によって第1の導管および第2の導管の基端側への移動が制限されることにより、第1および第2の導管の先端側が手首または作業ツールに設けられた孔から外れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前腕の先端に複数の作業ツールを装着する場合であっても、各作業ツールの制御用の線条体が周辺装置に干渉しないように配線することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの線条体処理構造を示す前腕および手首の側面図である。
図2図1のロボットの線条体処理構造における線条体の配線を説明する横断面図である。
図3図1のロボットの線条体処理構造の第1の変形例であって、導管の先端側が固定されている一例を示す横断面図である。
図4図1のロボットの線条体処理構造の第2の変形例であって、導管の基端側が固定されている一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るロボット2の線条体処理構造1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る線条体処理構造1が適用されるロボット2は、図1に示されるように、上腕3の先端に水平軸線P回りに揺動可能に支持された前腕4と、該前腕4に第1軸線A回りに回転可能に支持された手首5とを備えている。
【0019】
手首5は、第1軸線A回りに回転させられる第1手首要素6と、第1軸線Aに直交する第2軸線B回りに回転させられる第2手首要素7と、第2軸線Bに直交する第3軸線C回りに回転させられる第3手首要素8とを備えている。図1には、第1軸線Aと第3軸線Cとが一直線上に配置された状態が示されている。
【0020】
前腕4、第1手首要素6、第2手首要素7および第3手首要素8には、第1軸線A近傍に、第1軸線Aに沿って、前腕4の後方から第3手首要素8の前方まで貫通する貫通経路9が設けられている。前腕4の後部には、作業ツールを制御する作業ツール制御機器が固定されるようになっている。
【0021】
本実施形態においては、作業ツールとして、溶接トーチ11および該溶接トーチ11による溶接状態を検出するセンサ12の2つが手首5の先端に装着された場合について説明する。したがって、本実施形態において、作業ツール制御機器は、溶接トーチ11へのワイヤの送給を制御するワイヤ送給装置10であり、ワイヤ送給装置10から溶接トーチ11まで導かれる線条体(第1の線条体)13は、アシストガスを供給するガスホース14、溶接ワイヤを供給するワイヤコンジット16および溶接トーチ11に給電する給電ケーブル17等を含んでいる。また、センサ12まで導かれる線条体(第2の線条体)23は、センサ12への給電および検出信号の伝送用のケーブル18およびセンサ12をパージするエアを供給する配管24である。
【0022】
本実施形態に係るロボット2の線条体処理構造1は、図1に示されるように、前腕4の後方から第3手首要素8の前方まで貫通する貫通経路9内に収容された可撓性を有する第1の導管19と、該第1の導管19内を長手方向に貫通して配置された可撓性を有する第2の導管20と、第3手首要素8の先端面に固定され、第3手首要素8に溶接トーチ11およびセンサ12を固定する取付フランジ部材21とを備えている。
【0023】
第1の導管19および第2の導管20は、例えば、樹脂成形されたチューブ状の部材であり、縦断面が波形に形成されて、容易に湾曲することができるようになっている。
図2に示されるように、第2の導管20の外径は、第1の導管19の内径よりも十分に小さく、2つの導管19,20の間には筒状空間Qが形成されるようになっている。
【0024】
本実施形態に係る線条体処理構造1においては、図1および図2に示されるように、内側の第2の導管20内を長手方向に貫通して溶接トーチ11用の第1の線条体13が配線され、第1の導管19と第2の導管20との間の筒状空間Qを長手方向に貫通してセンサ12用の第2の線条体23が配線されている。
【0025】
第1の導管19は、第2手首要素7および第3手首要素8に貫通経路9を形成している横断面円形の貫通孔内に、先端を嵌合させている。また、第1の導管19は、前腕4に貫通経路9を形成している横断面円形の貫通孔に基端を嵌合させている。これにより、第1の導管19は、その両端を貫通経路9を形成している貫通孔に嵌合させることによって第3手首要素8と前腕4とにより支持されている。第1の導管19は、その両端を長手軸に沿う方向に移動可能に貫通孔に嵌合されている。
【0026】
取付フランジ部材21は、第2の導管20を貫通させる貫通孔を有するとともに、第1の導管19の外径寸法より大きな外径寸法を有する略円板状部材である。取付フランジ部材21の貫通孔は、第2の導管20の外径寸法より大きくかつ第1の導管19の外径寸法より小さく設定されている。
【0027】
また、取付フランジ部材21には、第3手首要素8の先端面に取り付けられたときに、貫通孔に嵌合されている第1の導管19とその内側に配置されている第2の導管20との間の筒状空間Qに連通し、該筒状空間Qを外周面に開口させる窓部22が設けられている。窓部22は、上述したセンサ12用の第2の線条体23を貫通させることができる口径を有している。
【0028】
これにより、取付フランジ部材21を第3手首要素8の先端面に取り付けると、貫通孔を貫通して第2の導管20が溶接トーチ11側に延びるとともに、第1の導管19が嵌合されている第3手首要素8の貫通孔が閉塞されて、第1の導管19が第3手首要素8の先端面よりも先端側に移動しないように第1軸線A方向に沿う移動が制限されるようになっている。すなわち、取付フランジ部材21によって、移動制限部が構成されている。また、前腕4の貫通孔の後方に近接する位置にワイヤ送給装置10が配置されているので、第1の導管19はワイヤ送給装置10によって基端側への移動を制限されている。
【0029】
第1の導管19と第2の導管20との間の筒状空間Qを経由してきたセンサ12用の第2の線条体23は、取付フランジ部材21の窓部22を経由して取付フランジ部材21の径方向外方に引き出され、取付フランジ部材21によって第3手首要素8の先端面に固定されているセンサ12まで配線されるようになっている。
【0030】
第2の導管20は、取付フランジ部材21および溶接トーチ11のブラケットに設けられた横断面円形の貫通孔に先端を嵌合させている。また、第2の導管20は、前腕4の後部に固定されたワイヤ送給装置10に設けられた横断面円形の貫通孔に基端を嵌合させている。これにより、第2の導管20は、その両端を貫通孔に嵌合させることによって溶接トーチ11とワイヤ送給装置10とにより支持されている。また、第1の導管19は、その両端を長手軸に沿う方向に移動可能に貫通孔に嵌合されている。
【0031】
第2の導管20の先端は溶接トーチ11に突き当たって先端側への移動が制限されているとともに、第2の導管20の基端はワイヤ送給装置10の貫通孔内の段部に突き当たって基端側への移動も制限されている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係るロボット2の線条体処理構造1について、以下に説明する。
本実施形態に係るロボット2の線条体処理構造1によれば、可撓性を有する第1の導管19および第2の導管20が、2重管構造を形成して、第1軸線Aに沿って配置され、溶接トーチ11用の第1の線条体13は、内側の第2の導管20内を貫通させられて配線され、センサ12用の第2の線条体23は、2つの導管19,20の間の筒状の空間を貫通させられて配線される。
【0033】
これにより、複数の作業ツール用の複数の線条体13,23を前腕4に対する手首5の回転軸線である第1軸線Aの近傍に同時に配置することができ、前腕4に対して手首5を第1軸線A回りに回転させても線条体13,23の経路を大きく変動させずに済み、周辺装置と線条体13,23との干渉を低減することができるという利点がある。
【0034】
この場合において、前腕4に対して第1手首要素6を第1軸線A回りに回転させたり、第2手首要素7を第2軸線B回りに揺動させたり、第3手首要素8を第3軸線C回りに回転させたりすると、第1の導管19および第2の導管20の経路長が変動するが、第1の導管19および第2の導管20が、それぞれ両端を長手軸方向に移動可能に支持されており、両端を長手軸方向に移動させることで経路長の変動を吸収することができる。
【0035】
また、第1の導管19は、取付フランジ部材21とワイヤ送給装置10とによって長手軸方向に挟まれて、長手軸方向の移動を所定量以下に制限されているので、貫通孔に対して大きく移動することが防止され、貫通孔との嵌合が外れることを防止することができる。
同様に、第2の導管20は、溶接トーチ11とワイヤ送給装置10の貫通孔内の段部とによって長手軸方向に挟まれて、長手軸方向の移動を所定量以下に制限されているので、貫通孔に対して大きく移動することが防止され、貫通孔との嵌合が外れることを防止することができる。
【0036】
すなわち、第1の導管19および第2の導管20はいずれも、貫通孔に両端を嵌合させるだけの簡易な構造によって、貫通孔から脱落しないように支持され、各手首要素6,7,8の動作によっても線条体13,23に無理な外力が加わらないように保護することができるという利点がある。
【0037】
なお、本実施形態においては、第1の導管19および第2の導管20がいずれも両端において貫通孔に移動可能に支持されることとしたが、先端または基端のいずれか一方が移動可能に支持され、他方は固定部材25によって移動しないように固定されていてもよい。
【0038】
具体的には、固定部材25は、図3に示されるように、第2手首要素7にネジ等により固定され、第3手首要素8付近の貫通孔内で第1の導管19の外面を締め付けるように構成してもよいし、図4に示されるように、前腕4にネジ等により固定され、前腕4の貫通孔内で第1の導管19の外面を締め付けるように構成してもよい。
また、固定部材25は、第1の導管19と第2の導管20との間に挿入されて、第2の導管20の外面を締め付けるように構成してもよいし、ワイヤ送給装置10に固定され、ワイヤ送給装置10内において第2の導管20の外面を締め付けるように構成してもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、溶接トーチ11およびセンサ12を作業ツールとして例示したが、これに限定されるものではない。また、作業ツールの数も2つに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 線条体処理構造
2 ロボット
4 前腕
5 手首
10 ワイヤ送給装置(作業ツール制御機器)
11 溶接トーチ(作業ツール)
12 センサ(作業ツール)
13 第1の線条体
19 第1の導管
20 第2の導管
23 第2の線条体
21 取付フランジ部材(移動制限部)
22 窓部
A 第1軸線
図1
図2
図3
図4