(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441277
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】多糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20181210BHJP
A23L 2/42 20060101ALI20181210BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20181210BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20181210BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20181210BHJP
A23D 7/00 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/00 N
A23L2/42
A23L2/52
A23L33/115
A23L33/125
A23L29/10
!A23D7/00 504
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-168062(P2016-168062)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2017-99378(P2017-99378A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】201510852421.1
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516260925
【氏名又は名称】ハンヂョウ シンウェイ ローカーボン テクノロジー アールアンドディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Hangzhou Xinwei Low−carbon Technology R&D Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ゾンシン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チュンフゥイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェンミン
(72)【発明者】
【氏名】チィゥ カンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン リーチン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン フォン
【審査官】
伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−518091(JP,A)
【文献】
特開2004−248593(JP,A)
【文献】
特開平05−176677(JP,A)
【文献】
特開2007−269714(JP,A)
【文献】
特開2012−200190(JP,A)
【文献】
特開2007−068536(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/034068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖を用いて食用油飲料を製造する方法であって、
(1)多糖を緩衝液に溶解し、殺菌し、混合し、急速に撹拌することにより、多糖の緩衝液を得る多糖緩衝液準備工程と、
(2)乳化剤に食用油を添加し、急速に強撹拌することで乳化することにより、食用油乳化液を得る食用油乳化工程と、
(3)前記多糖の緩衝液を前記食用油乳化液と混合し、分散液を添加し、急速に撹拌することにより、多糖懸濁食用油母液を得る工程と、
(4)前記多糖懸濁食用油母液を希釈し、配合剤を入れ、撹拌し、殺菌することにより、多糖懸濁食用油飲料を得る工程と、を含み、
前記工程(1)における多糖の緩衝液は、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウム、又は、リン酸水素二カリウム及びクエン酸を含み、
前記工程(2)における食用油は、アスタキサンチン油、DHA、EPA、オリーブ油、ツバキ油、パルミトレイン酸、及び微細藻類油のうちの一つ、二つ又はそれ以上の油の組み合わせを含み、
前記工程(2)における乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステル、大豆リン脂質、ショ糖エステル、無水ソルビトールエステル、プロピレングリコールエステル、モノステアリン、スパン、及びツインのうちの一つ、二つ又はそれ以上の組み合わせを含むことを特徴とする多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項2】
前記工程(1)における多糖は、キサンタンガム、キトサン、ガラクトマンナン、高分子の直鎖多糖、及びポリガラクツロン酸のうちの一つ、二つ又はそれ以上の組み合わせを含み、
前記多糖の緩衝液のpH値は2〜7.5であることを特徴とする請求項1に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項3】
前記工程(1)における多糖と緩衝液との割合は0.1〜4:1〜9であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項4】
前記工程(2)における食用油と、乳化剤と、水との割合は0.1〜3:0.2〜4:1〜8であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項5】
前記工程(3)における分散液は、キサンタンガム、キトサン、ガラクトマンナン、高分子の直鎖多糖及びポリガラクツロン酸の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項6】
前記工程(3)における多糖の緩衝液と食用油乳化液との混合割合は2〜8:1〜6であることを特徴とする請求項1に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項7】
前記工程(2)における撹拌速度は1000〜20000回転/分間であり、撹拌時間は2〜30分間であり、
前記工程(3)における撹拌速度は1000〜20000回転/分間であり、撹拌時間は2〜30分間であり、
前記工程(4)における撹拌速度は500〜10000回転/分間であり、撹拌時間は1〜15分間であることを特徴とする請求項1に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項8】
前記工程(4)において、食用油飲料に添加された配合剤は、甘味剤、香味料及び防腐剤を含む食品添加剤であり、前記工程(4)における殺菌方法は、低温殺菌、高温殺菌、高圧殺菌及びマイクロ波殺菌の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【請求項9】
前記工程(4)における多糖の含有量は0.1〜10%であることを特徴とする請求項1に記載の多糖を用いて食用油飲料を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多
糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法、特に多
糖を用いてアスタキサンチン油、DHA、EPA、オリーブ油、ツバキ油、パルミトレイン酸、微細藻類油などの高付加価値の油類飲料を製造する方法に関し、食品、健康食品及び生物製薬分野に属する。
【背景技術】
【0002】
多糖(polysaccharide)は、グリコシド結合で形成された糖鎖であり、一般的に10個以上の単糖で構成され
た多糖類の天然高分子化合物を指し、一般式は(C
6H
10O
5)
nと表される。同じ単糖で構成した多糖は単純多糖と称され、例えば、デンプン、セルロースとグリコーゲンであり、異なる単糖で構成した多糖は複合多糖と称され、例えば、アラビアガムはペントースとガラクトースなどで構成される。多糖は純粋な化学物質ではなく、重合度の異なる物質の混合物である。多糖類は、一般的に水に溶解せず、甘味がなく、結晶を形成することができず、還元性と変旋光がない。
【0003】
食品産業では、水溶性の高い天然多糖を用いて増粘、安定化、ゲル化等の効果を生み出している。このような多糖にはキサンタンガム、キトサン、ガラクトマンナン、高分子直鎖多糖、ポリガラクツロン酸などが含まれる。これらは、いずれも直鎖程度が高い鎖状高分子であり、側鎖のあるものか又は側鎖のないものがあり、側鎖が非常に短く、主鎖上に均一又は不均一に分布する。このような多糖を構成するグリコシル基は幾つかあるが、中性、アルカリ性又は酸性グリコシル基で、グリコシル基中に荷電基を有するか又は有さず、結晶化しにくく、全体的にアモルファス状態である。分子の広がり程度が高いことで、多くの親水基が遊離して露出されるため、分子の親水性が高い。このような多糖は増粘多糖類と総称される。
【0004】
高付加価値の食用油は、主に人体に不可欠な不飽和脂肪酸を大量に含む油類であり、アスタキサンチン油(ヘマトコッカス藻から抽出されるもの)、DHA、EPA、オリーブ油、パルミトレイン酸、魚油(深海魚油を含む)、ツバキ油、菜種油、低エルカ酸菜種油、ミリストオレイン酸、高オレイン酸菜種油、サフラワー油、アーモンド油、ピーナッツオイルなどがある。
【0005】
高付加価値の食用油は、人体にとって大きなメリットがあり、食物から体内に摂取する必要のある、欠かすことのできない油脂である。日常生活において、不飽和脂肪酸は主に日々の飲食から摂取するが、その主な欠点は高温酸化後では不飽和脂肪酸の大半が破壊されてしまい、人体への摂取量不足を招き、特に成長発育期にある児童の場合に顕著になる。本発明が提供する多
糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法は、その中の不飽和脂肪酸を効果的に保護することができ、賞味期限が長く、人体への吸収利用効率が高く、この方法で製造されたオイルドリンクは保健機能を有する日常飲料として、多くの人に適用され、飲食しやすく、食感に優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多
糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法を提供することである。この方法で製造されたオイルドリンクは、不飽和脂肪酸が酸化されにくく、賞味期限が長く、人体への吸収利用効率が高く、多くの人に適用され、飲食しやすく、食感に優れた飲料製品である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に用いた技術的解決手段は以下のとおりである。多
糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0008】
(1)多
糖を緩衝液に溶解し、殺菌し、混合し、急速に撹拌することにより、多
糖の緩衝液を得る多
糖緩衝液準備工程。
【0009】
(2)乳化剤に食用油を添加し、急速に強撹拌することで乳化することにより、食用油乳化液を得る食用油乳化工程。
【0010】
(3)前記多
糖の緩衝液を前記食用油乳化液と混合し、分散液を添加し、急速に撹拌することにより、多
糖懸濁食用油母液を得る工程。
【0011】
(4)前記多
糖懸濁食用油母液を希釈し、配合剤を入れ、撹拌し、殺菌することにより、多
糖懸濁食用油飲料を得る工程。
【0012】
前記工程(1)における多
糖は、キサンタンガム、キトサン、ガラクトマンナン、高分子の直鎖多糖、及びポリガラクツロン酸のうちの一つ、二つ又はそれ以上の組み合わせを含むことが好ましい。前記工程(1)における多
糖の緩衝液は、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウム、又は、リン酸水素二カリウム及びクエン酸を含むことが好ましく、前記多
糖の緩衝液のpH値は2〜7.5であることが好ましい。
【0013】
前記工程(1)における多
糖と緩衝液との割合は0.1〜4:1〜9である。
【0014】
前記工程(2)における食用油は、アスタキサンチン油、DHA、EPA、オリーブ油、ツバキ油、パルミトレイン酸、及び微細藻類油のうちの一つ、二つ又はそれ以上の油の組み合わせを含むことが好ましい。前記工程(2)における乳化剤には、グリセリン脂肪酸エステル、大豆リン脂質、ショ糖エステル、無水ソルビトールエステル、プロピレングリコールエステル、モノステアリン、スパン、及びツインのうちの一つ、二つ又はそれ以上の組み合わせを含むことが好ましい。
【0015】
前記工程(2)における食用油と、乳化剤と、水との割合は0.1〜3:0.2〜4:1〜8である。
【0016】
前記工程(3)における分散液は、キサンタンガム、キトサン、ガラクトマンナン、高分子の直鎖多糖及びポリガラクツロン酸の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0017】
前記工程(3)における多
糖の緩衝液と食用油乳化液との混合割合は2〜8:1〜6である。
【0018】
前記工程(2)における撹拌速度は1000〜20000回転/分であり、撹拌時間は2〜30分間である。前記工程(3)における撹拌速度は1000〜20000回転/分であり、撹拌時間は2〜30分間である。前記工程(4)における撹拌速度は500〜10000回転/分であり、撹拌時間は1〜15分間である。
【0019】
前記工程(4)において、食用油飲料に添加される配合剤は、甘味剤、香味料及び防腐剤を含む食品添加剤であることが好ましい。前記工程(4)における殺菌方法には、低温殺菌、高温殺菌、高圧殺菌又はマイクロ波殺菌を利用できる。
【0020】
前記工程(4)における多
糖の含有量は0.1〜10%である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法で製造された製品は、従来技術と比べ活性成分が十分に保護され、酸化しにくく、賞味期限が長く、人体への吸収利用効率が高い。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。以下の実施例は本出願を詳細に説明するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0024】
実施例1:
図1には、多
糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法を示している。この方法は、以下の工程を含む。
(1)多
糖緩衝液の準備工程、すなわち、多
糖(キサンタンガム、キトサン、及びガラクトマンナン)を緩衝液(リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウム、pH値は2である)に溶解し、ここで多
糖と緩衝液との割合は0.1:1である、殺菌(高温殺菌)し、混合し、急速に撹拌することにより、多
糖の緩衝液を得る多
糖緩衝液を準備する工程。
【0025】
(2)食用油乳化工程、すなわち、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル及び大豆リン脂質)に食用油(アスタキサンチン油、オリーブ油、及びツバキ油)を添加し、1000〜20000rpm(回転/分)で2分間急速に強撹拌することで乳化することにより、食用油乳化液を得る工程。ここで、食用油と、乳化剤と、水との割合は0.1:0.2:1である。
【0026】
(3)前記多
糖の緩衝液と前記食用油乳化液とを2:1の割合で混合し、分散液(キサンタンガム及びキトサン)を添加し、500〜20000rpm(回転/分)の速度で2分間急速に撹拌することにより、多
糖懸濁食用油母液を得る工程。
【0027】
(4)前記多
糖懸濁食用油母液を希釈し、食品添加剤(甘味剤、香味料及び防腐剤)を入れ、500rpm(回転/分)の速度で1分間撹拌し、高圧殺菌することにより、多
糖懸濁食用油飲料を得る工程。ここで、多
糖の含有量は0.2%である。
【0028】
実施例2:
多
糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0029】
(1)多
糖緩衝液の準備工程、すなわち、多
糖(ガラクトマンナン、高分子の直鎖多糖、及びポリガラクツロン酸)を緩衝液(リン酸水素二カリウム及びクエン酸、pH値は5である)に溶解し、ここで多
糖と緩衝液との割合は2:5である、殺菌し、混合し、急速に撹拌することにより、多
糖緩衝液を得る工程。
【0030】
(2)乳化剤(ショ糖エステル、無水ソルビトールエステル、及びプロピレングリコールエステル)に食用油(オリーブ油、ツバキ油、パルミトレイン酸、及び微細藻類油)を添加し、10000rpm(回転/分)で15分間急速に強撹拌することで乳化することにより、食用油乳化液を得る工程。ここで、食用油と、乳化剤と、水との割合は1.5:2:4である。
【0031】
(3)前記多
糖の緩衝液と前記食用油乳化液とを5:3の割合で混合し、分散液(ガラクトマンナン、高分子の直鎖多糖、ポリガラクツロン酸)を添加し、10000rpm(回転/分)の速度で10分間急速に撹拌することにより、多
糖懸濁食用油母液を得る工程。
【0032】
(4)前記多
糖懸濁食用油母液を希釈し、食品添加剤(甘味剤、香味料及び防腐剤)を入れ、5000rpm(回転/分)の速度で7分間撹拌し、マイクロ波殺菌することにより、多
糖懸濁食用油飲料を得る工程。ここで、多
糖の含有量は5%である。
【0033】
実施例3:
多
糖を用いて食用油飲料(オイルドリンク)を製造する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0034】
(1)多
糖緩衝液の準備工程、すなわち、多
糖(キサンタンガム)を緩衝液(リン酸水素二カリウム及びクエン酸、pH値は7.5である)に溶解し、ここで多
糖と緩衝液との割合は4:9である、殺菌し、混合し、急速に撹拌することにより、多
糖の緩衝液を得る工程。
【0035】
(2)乳化剤(大豆リン脂質及びショ糖エステル)に食用油(アスタキサンチン油及び微細藻類油)を添加し、20000rpm(回転/分)で30分間急速に強撹拌することで乳化することにより、食用油乳化液を得る食用油乳化工程。ここで、食用油と、乳化剤と、水との割合は3:4:8である。
【0036】
(3)前記多
糖の緩衝液と前記食用油乳化液とを8:6の割合で混合し、分散液(ガラクトマンナン及び高分子の直鎖多糖)を添加し、20000rpm(回転/分)の速度で20分間急速に撹拌することにより、多
糖の懸濁食用油母液を得る工程。
【0037】
(4)前記多
糖懸濁食用油母液を希釈し、食品添加剤(甘味剤、香味料及び防腐剤)を入れ、10000rpm(回転/分)の速度で15分間撹拌し、低温殺菌することにより、多
糖懸濁食用油飲料を得る工程。ここで、多
糖の含有量は0.1〜10%である。