特許第6441282号(P6441282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6441282物理化学特性の改良された農園芸用水和剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441282
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】物理化学特性の改良された農園芸用水和剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/14 20060101AFI20181210BHJP
   A01N 25/14 20060101ALI20181210BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20181210BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20181210BHJP
   A01N 43/56 20060101ALI20181210BHJP
   A01N 47/34 20060101ALI20181210BHJP
   A01N 55/10 20060101ALI20181210BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20181210BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A01N47/14 C
   A01N25/14
   A01N25/30
   A01N25/34 Z
   A01N43/56 C
   A01N47/34 A
   A01N55/10 300
   A01N59/16 Z
   A01P3/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-188111(P2016-188111)
(22)【出願日】2016年9月27日
(62)【分割の表示】特願2012-162282(P2012-162282)の分割
【原出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-216512(P2016-216512A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】303020956
【氏名又は名称】三井化学アグロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】江崎 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 京子
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−114603(JP,A)
【文献】 特開2005−187418(JP,A)
【文献】 特開平11−228309(JP,A)
【文献】 特開平6−47275(JP,A)
【文献】 特公昭40−11396(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンゼブと、シメコナゾール、ヒドロキシイソキサゾール、テクロフタラム、ジクロメジン、フルスルファミド、ペンチオピラド、フルオピラム、フルキサピロキサド、アミスルブロム、シアゾファミド、ペンフルフェン、ボスカリド、アゾキシストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピリベンカルブ、ピロキロン、キャプタン、TPN、フサライド、トリクロホスメチル、ホセチル、チオファネートメチル、ベノミル、カルベンタゾール、チアベンタゾール、ジフェノコナゾール、イミベンコナゾール、オキスポコナゾールフマル酸塩、ミクロブタニル、ジエトフェンカルブ、イプロジオン、メパニピリム、ビンクロゾリン、プロシミドン、フルオルイミド、オキシカルボキシン、メプロニル、フルトラニル、ペンシクロン、メタラキシル、メタラキシルM、オキサジキシル、トリアジメホン、ヘキサコナゾール、テブコナゾール、トリホリン、ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシンA、PCNB、ダゾメット、トリアジン、プロベナゾール、イソプロチオラン、トリシクラゾール、テトラコナゾール、トリクラミド、オキソリニック酸、ジメトモルフ、シモキサニル、トルプロカルブ、チフルザミドおよびテブフロキンからなる群から選ばれる殺菌剤と、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールとを含む農園芸用水和剤をポリビニルアルコール製フィルムで包装したことを特徴とする低起泡性農園芸用水和剤包装物
【請求項2】
殺菌剤が、シメコナゾール、シモキサニル、ペンチオピラド、メタラキシル、メタラキシルM、ジフェノコナゾール、イミベンコナゾール、オキスポコナゾールフマル酸塩及びミクロブタニルからなる群から選ばれる殺菌剤である請求項1に記載の低起泡性農園芸用水和剤包装物
【請求項3】
殺菌剤が、シメコナゾール、シモキサニルまたはペンチオピラドである、請求項1または2に記載の低起泡性農園芸用水和剤包装物
【請求項4】
殺菌剤が、ペンチオピラドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の低起泡性農園芸用水和剤包装物
【請求項5】
2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールの含有量が、水和剤の総量に対して0.01〜10質量%である請求項1〜のいずれか1項に記載の低起泡性農園芸用水和剤包装物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジチオカーバメート系殺菌剤及びアセチレンジオール系界面活性剤を含有する農園芸用水和剤組成物に関する。更に詳しくは、使用時に水に希釈する際に速やかに水に馴染み、且つ特に高濃度における泡立ちが少ない農園芸用水和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジチオカーバメート系殺菌剤は非常に広範囲の病害に卓効を持ち、特に亜鉛イオン配位マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート(以下「マンゼブ」と略記する。)は作物に対する安全性も高いことから、長年農園芸用殺菌剤として使用されている。農園芸用農薬組成物の使用場面では、乳剤、フロアブル、水和剤及び顆粒水和剤などに製剤化した薬剤を水で一定割合に希釈した薬液として、専用の散布装置を用いて対象となる作物に散布する処理方法が一般的である。このような水希釈製剤の求められる性能として、希釈時に薬剤が速やかに水になじみ、均一に分散し、また、分散状態を長く保持する、即ち懸垂性に優れることが望まれる。また、散布機器によっては実使用濃度よりも濃厚な希釈液を作製し、使用時に所定の濃度に再度希釈するような場合もあり、このような施用場面では高濃度水希釈液における分散安定性も重要である。水和剤においてこのような濡れ性、均一分散性を向上するためには濡れ効果の高い湿潤剤ならびに分散性の高い分散剤を併用して用いる技術が一般的に採用される。一方で、このように濡れ効果の高い湿潤剤ならびに分散性の高い分散剤を配合した場合、希釈液の泡立ちが問題となる場合があり、特に希釈倍率200倍以下の高濃度で希釈する場面では顕著である。すなわち、泡立ちが過剰に起こった場合、希釈のための撹拌を行なっている間に容器から泡が溢れ出してきたり、また泡が薬液を送出するポンプに影響し、薬液の送液が不安定になるなどの問題が発生する。また、粉末状の水和剤は一般的に使用時の粉立ち防止や使用者と薬剤との接触を避けるため必要に応じて水溶性フィルム袋に包装することがあるが、水溶性のフィルムで一般に使用されることが多い成分であるポリビニルアルコールは単独でも泡立ちやすく、希釈液の泡立ちをさらに助長していることがある。
【0003】
一般的にこのように泡立ちが問題となる場合、薬剤とは別に使用時に消泡剤を添加することがある。例えば農業分野では薬剤希釈液の調製時に外部からタンクに添加する消泡剤が市販されている。しかし、これらは泡が発生するたびに薬剤を添加する処理が必要で、それだけ手間や費用を要するという問題がある。また消泡効果が高い消泡剤としてシリコーン系の消泡剤が一般に知られており、これを水和剤にあらかじめ内添しておくこともできるが、保存期間が長いと消泡効果が低下すること、またシリコーン系消泡剤は親油性であるため、これを含有する水和剤は水に馴染みにくいという問題が発生する。
【0004】
一方、アセチレンジオール系界面活性剤と農薬の組み合わせについては、主に水で希釈せず水田などにそのまま施用される水面浮遊性製剤(ジャンボ剤)や水性懸濁製剤(フロアブル)の有効成分の拡展性向上に高い効果があることが知られている(例えば、特許文献1、2)。
また、特許文献3にはテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩および界面活性剤との組み合わせで発生しうる泡をアセチレンジオール系界面活性剤が効果的に抑えることが可能であると記されている。しかしながら、農薬、特にジチオカーバメート系殺菌剤を配合した農園芸用水和剤の希釈液で発生する泡に対する効果については何ら記されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2815535号公報
【特許文献2】特開2011−126786号公報
【特許文献3】特表2002−506795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薬液調整時に水に馴染みやすく、また高濃度においても泡立ちの少ない農園芸用水和剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、マンゼブを含むジチオカーバメート系殺菌剤とアセチレンジオール系界面活性剤を含む水和剤が、水に馴染み易く、さらに高濃度における泡立ちが極めて少ないことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、1種以上のジチオカーバメート系殺菌剤と、1種以上のアセチレンジオール系界面活性剤とを含むことを特徴とする農園芸用水和剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の組み合わせでは困難であった水への馴染みやすさ(水和性)と、特に希釈倍率200倍以下の高濃度溶液における低起泡性とを両立する組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、殺菌活性成分としての1種以上のジチオカーバメート系殺菌剤と、界面活性剤として1種以上のアセチレンジオール系界面活性剤とを含むことを特徴とする農園芸用水和剤である。
【0011】
[成分及び組成]
本発明において使用するジチオカーバメート系殺菌剤としては、例えば、マンゼブ、プロピネブ、ジネブ、メチラム、マンネブ、ジラム、チウラム等が挙げられ、好適にはマンゼブである。ジチオカーバメート系殺菌剤としては、任意のジチオカーバメート系殺菌剤の1種又は2種以上が使用される。2種以上のジチオカーバメート系殺菌剤の組み合わせとしては、マンゼブと、マンゼブ以外のジチオカーバメート系殺菌剤の1種以上との組合せ、例えば、マンゼブと、プロピネブ、ジネブ、メチラム、マンネブ、ジラム及びチウラムから選択した1種以上との組合せが好ましい。
本発明に係るジチオカーバメート系殺菌剤の配合量は、農園芸用水和剤中に、通常、0.5〜95質量%であり、好適には、10〜92質量%である。
【0012】
本発明の農園芸用水和剤は、ジチオカーバメート系殺菌剤以外に、更にもう1種類以上の公知の農薬、例えば、殺菌剤、殺虫剤等を配合することもでき、それ自体の物理的性状に特に限定はない。ジチオカーバメート系殺菌剤と、ジチオカーバメート系殺菌剤以外のその他の農薬との組み合わせとして、(1)マンゼブと、1種以上のジチオカーバメート系殺菌剤以外のその他の農薬との組み合わせ、たとえば、マンゼブと、以下に具体的に述べる、ジチオカーバメート系殺菌剤以外のその他の殺菌剤及び殺虫剤から選択した1種以上との組み合わせ、(2)マンゼブと、1種以上のマンゼブ以外のジチオカーバメート系殺菌剤と、1種以上のジチオカーバメート系殺菌剤以外のその他の農薬との組み合わせ、例えば、マンゼブと、プロピネブ、ジネブ、メチラム、マンネブ、ジラム及びチウラムから選択した1種以上と、以下に具体的に述べる、ジチオカーバメート系殺菌剤以外のその他の殺菌剤及び殺虫剤から選択した1種以上との組み合わせが好ましい。
その他の農薬の配合量は、農園芸用水和剤中に、通常、0.5〜30質量%であり、好適には、1〜20質量%である。
【0013】
更なる殺菌剤としては、例えば、シメコナゾール、ヒドロキシイソキサゾール、テクロフタラム、ジクロメジン、フルスルファミド、ペンチオピラド、フルオピラム、フルキサピロキサド、アミスルブロム、シアゾファミド、ペンフルフェン、ボスカリド、アゾキシストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピリベンカルブ、ピロキロン、ジラム、チウラム、キャプタン、TPN、フサライド、トリクロホスメチル、ホセチル、チオファネートメチル、ベノミル、カルベンタゾール、チアベンタゾール、ジフェノコナゾール、イミベンコナゾール、オキスポコナゾールフマル酸塩、ミクロブタニル、ジエトフェンカルブ、イプロジオン、メパニピリム、ビンクロゾリン、プロシミドン、フルオルイミド、オキシカルボキシン、メプロニル、フルトラニル、ペンシクロン、メタラキシル、メタラキシルM、オキサジキシル、トリアジメホン、ヘキサコナゾール、テブコナゾール、トリホリン、ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシンA、PCNB、ダゾメット、トリアジン、プロベナゾール、イソプロチオラン、トリシクラゾール、テトラコナゾール、トリクラミド、オキソリニック酸、ジメトモルフ、シモキサニル、トルプロカルブ、チフルザミド、テブフロキンなどが挙げられる。好適には、シメコナゾール、シモキサニル、ペンチオピラド、メタラキシル、メタラキシルM、ジフェノコナゾール、イミベンコナゾール、オキスポコナゾールフマル酸塩、ミクロブタニルである。
【0014】
更なる殺虫剤としては、例えば、インドキサカルブ、クロマフェノジド、ピリミジフェン、ミルベメクチン、レピメクチン、エマメクチン安息香酸塩、メソミル、アセフェート、ジノテフラン、チオシクラム、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、チアクロプリド、ピリダフェンチオン、ジメトエート、PMP、CVMP、ジメチルビンホス、DEP、NAC、MTMC、MIPC、PHC、MPMC、XMC、ベンフラカルブ、ピリミカルブ、オキサミル、チオジカルブ、シペルメトリン、カルタップ、ベンスルタップ、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、クロルフルアズロン、ブプロフェジン、ヘキシチアゾクス、酸化フェンブタスズ、ピリダベン、クロフェンテジン、バチルス・チューリンゲンシス及びそれらが生産する毒素、MPP、MEP、ダイアジノン、イソキサチオン、エチルチオメトン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、シラフルオフェン、シクロプロトリン、ベンフラカルブ、メタフルミゾン、クロラントラニリプロール、フィプロニル、ピメトロジン、フルベンジアミド、シアントラニリプロール、スピネトラム、ピリダリルなどが挙げられる。
【0015】
本発明において使用するアセチレンジオール系界面活性剤には、アセチレンジオール及びアセチレンジオールのアルキレンオキサイド付加物が含まれる。
【0016】
アセチレンジオールは、一般式HOCR12−C≡C−CROH(R1,2,3及びR4は、同一又は異なって、C1〜C8のアルキル基を示す。)で表される化合物であり、アルキル基として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等が挙げられる。アセチレンジオールには、例えば、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。
アセチレンジオールのアルキレンオキサイド付加物は、例えば、上記アセチレンジオールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した界面活性剤である。
アセチレンジオール系界面活性剤の配合量は、農園芸用水和剤中に、通常、0.01〜10質量%であり、好適には、0.1〜2質量%である。
また、アセチレンジオールを他のグリコール類やアルコールで希釈し、ホワイトカーボンに吸着させることで粉末化して使用することもできる。
【0017】
本発明の農園芸用水和剤は、必要に応じて、その他の界面活性剤又は補助剤を配合することができる。
【0018】
1つの実施形態において使用されるその他の界面活性剤としては、通常の農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤などのいずれの界面活性剤をも用いることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、α−オレフィンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸の縮合物、フェノールスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルケニルスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、スチレンスルホン酸とカルボン酸の縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル、アルキル又はジアルキルスルホコハク酸、高級脂肪酸等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又は種々のアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアリールアリールエーテルリン酸エステル及びこれらリン酸エステルのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又は種々のアミン塩などが挙げられ、好適には、アルキルナフタレンスルホン酸縮合物の塩、リグニンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩又は(ジ)アルキルスルホコハク酸塩である。
【0020】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアリールアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンの共重合物、高級脂肪酸アルカノールアマイドなどが挙げられ、水に対する溶解度や湿潤作用の点から、好適には、HLB値が9〜13の範囲のものである。
【0021】
尚、これらエチレンオキサイドを付加したタイプの界面活性剤においては、その一部にプロピレンオキサイドを含有してもよい。
【0022】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アミンオキサイドなどが挙げられる。
【0023】
両性イオン性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型やベタイン型の界面活性剤が挙げられる。
【0024】
本発明の1つの実施形態で用いられるその他の界面活性剤としては、好適には、陰イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であり、より好適には、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム又はHLB値が9〜13の非イオン性界面活性剤である。
【0025】
本発明の1つの実施形態で用いられるその他の界面活性剤の量は、通常、農園芸用水和剤中に、0.01〜20質量%であり、好適には、0.1〜10質量%である。
【0026】
本発明の農園芸用水和剤には、通常の農園芸用水和剤に用いられるその他の添加剤を含有させることができ、添加剤としては、例えば、着色剤、無機及び有機担体、防腐剤、pH調節剤などが挙げられ、これらは使用される農薬活性成分の種類に応じて選択すればよい。
【0027】
着色剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、色素が挙げられ、好適には、ブリリアントブルーFCF、シアニングリーンG又はエリオグリーンGである。用いられる着色剤の量は、通常、農園芸用水和剤中に、0.05〜0.5質量%であり、好適には、0.1〜0.3質量%である。
【0028】
本発明の農園芸用水和剤に配合出来る担体としては、例えば、ベントナイト、タルク、クレー、カオリン、珪藻土、無晶形二酸化ケイ素、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのような、一般的に農薬の担体として用いられる鉱物質微粉;グルコース、砂糖及び乳糖のような糖類、カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩類、澱粉、デキストリン及び/又はその誘導体並びに微結晶セルロースのような有機物;硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム及び塩化カリウムのような水溶性無機塩類;又は尿素であり得、好適にはデキストリンである。担体の配合量は、本発明の農園芸用水和剤の必須成分を除いた必要な最小量であり、担体の種類により異なるが、通常、農園芸用水和剤中に、0.1〜90質量%であり、好適には、0.5〜70質量%である。
【0029】
防腐剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、好適には、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラクロロメタキシレノ−ル、パラオキシ安息香酸ブチル、又はデヒドロ酢酸ナトリウムである。用いられる防腐剤の量は、通常、農園芸用水和剤中に、0.1〜3質量%であり、好適には、0.2〜2質量%である。
【0030】
pH調節剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、塩酸、リン酸のような無機酸;クエン酸、フタル酸、コハク酸のような有機酸;クエン酸ナトリウム、フタル酸水素カリウムのような有機金属塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウムのような無機金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような水酸化物;及び、トリエタノールアミンのような有機アミン類等を挙げることができ、好適には、無機酸、無機金属塩、水酸化物であり、より好適には、塩酸、クエン酸、コハク酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は炭酸ナトリウムである。また、使用されるpH調節剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0031】
pH調節剤は、通常、水で0.1〜5規定の適当な濃度に希釈し、その希釈液を0.01〜5質量%添加することにより使用される。
【0032】
[製造方法]
本発明の農園芸用水和剤は、種々の方法で製造することができる。例えば、乾式粉砕する場合は、ジチオカーバメート系殺菌剤及びアセチレンジオール系界面活性剤を少なくとも含み、また必要に応じてその他の界面活性剤及び担体と共に混合し、以下のような乾式粉砕機を用いて、所定の粒度まで乾式粉砕する。次いで必要に応じてその他補助成分を加えて混合することにより、本発明の農園芸用水和剤を得ることができる。これらの成分は一度に配合してもよく、または成分ごとに分割して配合し、その都度粉砕しながら所定の粒度に調整しても良い。
【0033】
乾式粉砕機は、例えば、SK−ジェット・オー・マイザー(株式会社セイシン企業)、シングルトラック・ジェットミル(株式会社セイシン企業)等のジェットミル、ACMパルペライザー(ホソカワミクロン株式会社)、サンプルミル(株式会社ダルトン)等のハンマーミル、ピンミル、ボールミル、ターボミル等が挙げられる。
【0034】
[使用方法]
本発明の農園芸用水和剤の使用方法としては、通常の農薬散布方法を用いることができる。本発明の農園芸用水和剤を水に希釈して使用する場合、通常、2〜20000倍程度に希釈して散布液を調製し、この散布液を散布することができる。また散布液の調整にあたっては、通常行なわれているように一度で所定濃度に希釈するという方法の他に、一旦実使用濃度よりも濃厚な希釈液を作製しておき、使用時に所定の濃度に再度希釈するという方法を取ってもよい。散布液の散布方法としては、希釈液をスプリンクラー等の噴霧器やジョロ等による散布、又は近年普及してきているラジコンヘリ(RCヘリ)等のラジコンによる方法などが挙げられる。
【0035】
本発明の農園芸用水和剤は湿気を避けるため、防湿性の容器などに保存するのが好ましい。このような容器としては、例えば、樹脂、アルミ、紙等を必要に応じて貼り合わせた材料や、樹脂や紙等の表面にアルミや珪酸を蒸着させた材料からなる瓶、袋、箱などが望ましい。また、使用時の粉立ち防止や使用者と薬剤の接触を避けるため、必要に応じて水溶性フィルム袋に包装して防湿性の容器などに保存して使用することができる。水溶性フィルムは、水に迅速に溶解あるいは分散するフィルムが適当であり、フィルムの素材としては、ポリビニルアルコール、ポリオキシポリアルキレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸、ゼラチン、プルラン及び可溶化澱粉等が例示される。また、用いられる水溶性フィルムの厚さは特に限定されないが、一般に20μm〜100μm程度が好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例、比較例及び試験例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ここにおいて用いられる%及び部は、特に記載がない限り、全て質量に関する%及び部を示す。
【0037】
[実施例1]
マンゼブ原体 91部、サーフィノール104S(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、日信化学工業製)0.2部、パールレックスNP(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル製)3部、カオリンHA(カオリン、山陽クレー工業製)5.8部を均一に混合後、不二パウダルサンプルミルにより混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0038】
[実施例2]
マンゼブ原体 91部、サーフィノール104S 1部、パールレックスCP(リグニンスルホン酸カルシウム、日本製紙ケミカル製)3部、昭和微粉クレー(クレー、昭和KDE製)5部を均一に混合後、ジェット・オー・マイザー0101型により混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0039】
[実施例3]
マンゼブ原体 74.5部、シメコナゾール原体 2.4部、サーフィノール104S 2部、パールレックスCP 1部、カオリンHA 20.1部を均一に混合後、不二パウダルサンプルミルにより混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0040】
[実施例4]
マンゼブ原体 74.5部、シモキサニル原体 12.3部、サーフィノール104S 1部、サンエキスP252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル製)1部、昭和微粉クレー 11.2部を均一に混合後、不二パウダルサンプルミルにより混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0041】
[実施例5]
マンゼブ原体 74.5部、ペンチオピラド原体 4.5部、サーフィノール104S 0.5部、パールレックスCP 2部、モルウェットD425パウダー(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、アクゾノーベル製)2部、ソルポール5050 (ジアルキルスルホコハク酸塩、東邦化学工業製)0.5部、昭和微粉クレー 16部を均一に混合後、ジェット・オー・マイザー0101型により混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0042】
[比較例1]
マンゼブ原体91部、サンエキスP252 3部、昭和微粉クレー 6部を均一に混合後、不二パウダルサンプルミルにより混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0043】
[比較例2]
マンゼブ原体 91部、サンエキスP201(リグニンスルホン酸カルシウム、日本製紙ケミカル製)3部、ソルポール5050 1部、昭和微粉クレー 5部を均一に混合後、不二パウダルサンプルミルにより混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0044】
[比較例3]
マンゼブ原体 91部、パールレックスCP 3部、ニューカルゲンSX−C(アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、竹本油脂製)1部、昭和微粉クレー 5部を均一に混合後、ジェット・オー・マイザー0101型により混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0045】
[比較例4]
マンゼブ原体 74.5部、シメコナゾール原体 2.4部、hostapon TPHC(脂肪酸メチルタウリンナトリウム、クラリアント製)3部、パールレックスCP 1部、カオリンHA 19.1部を均一に混合後、不二パウダルサンプルミルにより混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0046】
[比較例5]
マンゼブ原体74.5部、シモキサニル原体12.3部、パールレックスNP 1部、昭和微粉クレー 12.2部を均一に混合後、不二パウダルサンプルミルにより混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0047】
[比較例6]
マンゼブ原体 74.5部、ペンチオピラド原体 4.5部、パールレックスCP 2部、モルウェットD425パウダー 2部、ソルポール5050 2部、昭和微粉クレー 15部を均一に混合後、ジェット・オー・マイザー0101型により混合、粉砕し、水和剤を得た。
【0048】
[試験例1](水和性の測定)
500mlのビーカーに20℃の3度硬水200mlを入れ、これに試料5gを355μmの標準ふるいを通過させて、水面上約10cmの位置よりうすく広がるように落した。試料を落し終わってから水面下に没するまでの時間を測定して水和性とした。結果を表1に示す。
【0049】
[試験例2](起泡性の測定)
試料4.17gを20℃の蒸留水を定量入れた250ml有栓シリンダーにとり、30秒間に15回倒立した後、静置した。静置1分後、泡の高さを測定した。結果を試験例1の結果と併せて表1に示す。
【表1】

試験例1〜2より明らかなように、本発明による農園芸用水和剤は比較例として挙げた公知技術等による製剤では達成困難であった良好な水和性と、良好な起泡性との両立した農園芸用水和剤を得ることができた。
【0050】
[試験例3]
試料100gを水溶性PVAフィルムで作製した袋(縦210mm横148mmの長方形の形状)に入れ、水溶性パック入り水和剤を作製した。作製したパック1つを蒸留水6Lに溶解した後、その溶液を定量入れた250ml有栓シリンダーにとり、30秒間に15回倒立した後、静置した。静置1分後、泡の高さを測定した。結果を試験例2の結果と合わせて表2に示す。
【表2】

試験例3より明らかなように、本発明による農園芸用水和剤は水溶性PVAフィルムに入れて溶解した場合、水和剤単独よりさらに低い起泡性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、従来の組み合わせでは困難であった水への馴染みやすさ(水和性)と、特に希釈倍率200倍以下の高濃度溶液における低起泡性を両立するので、農園芸用水和剤として有用である。