特許第6441285号(P6441285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441285
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】天井裏足場の仮設支持装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/22 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   E04G3/22 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-203568(P2016-203568)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-66118(P2018-66118A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2017年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241474
【氏名又は名称】トヨタT&S建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591195189
【氏名又は名称】株式会社杉孝
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【弁理士】
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】樋田 伸明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 信夫
(72)【発明者】
【氏名】相沢 宜也
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−283514(JP,A)
【文献】 特許第4781090(JP,B2)
【文献】 特開平07−019290(JP,A)
【文献】 実開平01−012856(JP,U)
【文献】 特許第5374070(JP,B2)
【文献】 登録実用新案第3206551(JP,U)
【文献】 実開平03−018351(JP,U)
【文献】 特開2002−295438(JP,A)
【文献】 実開昭53−104024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/00−3/34
E04B 9/18
F16B 37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井構造体を構成する天井吊りボルトによって天井裏足場を支持するための天井裏足場の仮設支持装置において、
枢動手段によって枢動可能に相互連結した左右の係留部からなる開閉可能な係留具と、
少なくとも一方の前記係留部に取付けられ、足場板支持用の横架材を解放可能に保持する保持具とを有し、
左右の前記係留部は夫々、鉛直方向に延びる金属板の上縁及び下縁を枢動方向内側に屈曲し又は折曲げた形態を有する箱形又は筐体形の金属部材からなり、
各々の前記金属部材の枢動方向内側には、天井吊りボルトの雄螺子に適合する雌螺子半部が一体的に形成され、
左右の係留部の雌螺子半部は、該係留部を前記枢動手段によって閉じた状態において、実質的に前記吊りボルトの全周に亘って該吊りボルトに螺着する雌螺子を協働して形成し、
前記枢動手段は、前記金属部材を枢動可能又は回動可能に支持又は支承する枢軸又は回動中心軸、或いは、前記金属部材を枢動可能に連結するヒンジ部材又は蝶番を有し、
前記保持具は、天井吊りボルト廻りの回転運動を前記横架材及び保持具の一体化によって拘束又は阻止されるとともに、前記雌螺子半部及び天井吊りボルトの螺合によって前記天井吊りボルトに支持されることを特徴とする天井裏足場の仮設支持装置。
【請求項2】
前記保持具は、単管足場用の緊締具からなり、前記横架材は、単管足場用の単管パイプであることを特徴とする請求項1に記載の仮設支持装置。
【請求項3】
枢動方向に前記金属部材を付勢し又は押圧する付勢手段と、前記係留部を閉鎖位置に拘束する閉鎖位置保持手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設支持装置。
【請求項4】
前記保持具を取付けた前記金属部材の上縁及び下縁は夫々、保持具を取付けられていない前記金属部材の上縁及び下縁の上に重なって接触し、前記保持具の荷重が、前記上縁及び下縁を介して左右の金属部材に分散することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の仮設支持装置。
【請求項5】
左右の係留部の双方に前記保持具が取付けられたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の仮設支持装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載された仮設支持装置を使用した天井裏足場の構築方法であって、
前記係留部を開放して前記雌螺子半部が吊りボルトに対向するように係留具を位置決めした後、係留部を閉鎖して雌螺子半部を吊りボルトの外螺子に螺合せしめ、
前記保持具によって前記横架材を保持し、
両端部、或いは、間隔を隔てた二カ所又は二部分を前記保持具によって支持された前記横架材によって前記足場板を天井裏空間に懸架し、天井裏空間に足場を形成することを特徴とする天井裏足場の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井裏足場の仮設支持装置に関するものであり、より詳細には、既存建築物等の建築物の天井裏空間に工事用足場等の足場を天井吊りボルトによって支持するための天井裏足場の仮設支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模地震時に発生し得る天井構造体の落下事故等が建築業界において近年殊に注目されており、既存構造物等の天井構造体の落下又は脱落を防止する対策として、天井構造体を耐震補強する耐震補強工事の必要性が多くの建築物等において認識されている。一般に、天井構造体は、建築物の上階床版、上階床組、梁、屋根構造体等から垂下する天井吊りボルトの下部に軽量鉄骨製又は木製の野縁等を支承し、野縁の下面に石膏ボード等のボード建材を固定した構造を有する。
【0003】
天井構造体を耐震補強する耐震補強工事においては、例えば、隣り合う天井吊りボルトを補強用の鋼製ブレース(斜材)によって架橋し、天井構造体の全体的耐震性を向上させる。このような工事においては、作業者等が天井裏空間において作業を実施する必要があるので、通常は、天井裏空間に作業用仮設足場(天井裏足場)を仮設しなければならない。
【0004】
この種の天井裏足場として、例えば、天井吊りボルトに螺着した鋼製ナットに対して足場支持金具を係止し、足場支持金具によって足場支持部材を支承し、足場板を足場支持部材によって支持する支持構造を備えた天井裏足場が、特許第5374070号公報及び特許第5319426号公報(特許文献1及び2)に記載されている。
【0005】
また、足場支持構造に関するものではないが、天井吊りボルトを用いた仮設支持方式の一種として、本出願人の一者が出願した特願2005−335257号に係る特許第4781090号公報には、安全帯を天井吊りボルト等に係止するためのフック保持装置が記載されている。このフック保持装置は、天井吊りボルトに作業者等の安全帯のフックを係留するためのものである。フック保持装置は、一対の開閉板を有し、各開閉板には、雌螺子を分割した係止部が形成される。開閉板には、安全帯のフックを掛止可能なリング部が取付けられる。このフック保持装置においては、左右の開閉板を閉じて係止部を天井吊りボルトに係止すると、各開閉板の係止部を天井吊りボルトに係留することができる。作業者等は、安全帯のフックをリング部に掛止することにより、安全帯を天井吊りボルトに係留することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5374070号公報
【特許文献2】特許第5319426号公報
【特許文献3】特許第4781090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載された天井裏足場の支持構造では、足場支持金具を係止するための予備的又は付加的な鋼製ナットを天井構造体の新設時に予め天井吊りボルトに螺着しておかなければならない。しかし、既存建築物の天井構造体は、通常は、このような予備的又は付加的な鋼製ナットを備えていない。このため、この種の鋼製ナットを備えてない既存建築物の天井構造体に天井裏足場を仮設する場合、特許文献1及び2に記載された支持構造を使用することはできない。
【0008】
これに対し、特許文献3に記載されたフック保持装置は、予備的又は付加的な鋼製ナットを要しない。しかし、フック保持装置は、安全帯に作用するにすぎない作業者の自重を支持する簡易な構造のものであり、天井裏足場のような比較的大きな重量を支持することはできない。また、フック保持装置は、天井吊りボルトの雄螺子上で自由回転又は遊動回転する構造を有するので、天井裏足場を所定位置に固定する手段としては、使用し難い構成のものである。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天井裏足場を支持するための予備的又は付加的なナットを備えていない既存建築物の天井吊りボルトによって、天井裏足場を迅速且つ安定的に支持することができる天井裏足場の仮設支持装置及びその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成すべく、天井構造体を構成する天井吊りボルトによって天井裏足場を支持するための天井裏足場の仮設支持装置において、
枢動手段によって枢動可能に相互連結した左右の係留部からなる開閉可能な係留具と、
少なくとも一方の前記係留部に取付けられ、足場板支持用の横架材を解放可能に保持する保持具とを有し、
左右の前記係留部は夫々、鉛直方向に延びる金属板の上縁及び下縁を枢動方向内側(閉鎖側)に屈曲し又は折曲げた形態を有する箱形又は筐体形の金属部材からなり、
各々の前記金属部材の枢動方向内側には、天井吊りボルトの雄螺子に適合する雌螺子半部が一体的に形成され、
左右の係留部の雌螺子半部は、該係留部を前記枢動手段によって閉じた状態において、実質的に前記吊りボルトの全周に亘って該吊りボルトに螺着する雌螺子を協働して形成し、
前記枢動手段は、前記金属部材を枢動可能又は回動可能に支持又は支承する枢軸又は回動中心軸、或いは、前記金属部材を枢動可能に連結するヒンジ部材又は蝶番(丁番)を有し、
前記保持具は、天井吊りボルト廻りの回転運動を前記横架材及び保持具の一体化によって拘束又は阻止されるとともに、前記雌螺子半部及び天井吊りボルトの螺合によって前記天井吊りボルトに支持されることを特徴とする天井裏足場の仮設支持装置を提供する。
【0011】
本発明の上記構成によれば、左右の係留部を閉じることにより、実質的に吊りボルトの全周に亘って吊りボルトに螺着する雌螺子が形成される。天井吊り足場及び横架材の荷重(以下、「足場荷重」という。)は、保持具を介して係留具の雌螺子半部に伝達する。雌螺子半部は、実質的に吊りボルトの全周に亘って吊りボルトに螺着する雌螺子を構成するので、係留具は、ナットと同様、足場荷重を天井吊りボルトに確実に伝達し、従って、天井吊りボルトは、足場荷重を確実に支持することができる。また、保持具の自由回転又は遊動回転は、横架材及び保持具の一体化によって拘束又は阻止されるので、雌螺子が雄螺子に対して回転する虞はなく、従って、仮設支持装置の位置は、安定する。
【0012】
このような構成の仮設支持装置は、天井吊りボルトに螺着した予備的又は付加的なナットを要しない。しかも、左右の係留具を開放した係留具を天井吊りボルトの所望の位置に位置決めして係留具を閉じることにより、係留具を天井吊りボルトに螺着することができるので、極めて迅速且つ簡単に係留具を天井吊りボルトに取付けることができる。
【0013】
本発明者等の実験によれば、このような構成の仮設支持装置により、天井裏足場を支持する十分な支持力が得られることが判明した。
【0014】
他の観点より、本発明は、上記構成の仮設支持装置を使用した天井裏足場の構築方法であって、
前記係留部を開放して前記雌螺子半部が吊りボルトに対向するように係留具を位置決めした後、係留部を閉鎖して雌螺子半部を吊りボルトの外螺子に螺合せしめ、
前記保持具によって前記横架材を保持し、
両端部、或いは、間隔を隔てた二カ所又は二部分を前記保持具によって支持された前記横架材によって前記足場板を天井裏空間に懸架し、天井裏空間に足場を形成することを特徴とする天井裏足場の構築方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、天井裏足場を支持するための予備的又は付加的なナットを備えていない既存建築物の天井吊りボルトによって、天井裏足場を迅速且つ安定的に支持することができる天井裏足場の仮設支持装置及びその構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、既存の鋼構造建築物に設けられた天井構造体の全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、梁と平行な方向に切断した天井構造体の縦断面図ある。
図3図3は、梁と直交する方向に切断した天井構造体の縦断面図ある。
図4図4(A)〜図4(D)は、仮設支持装置の構造を示す正面図、背面図、平面図及び底面図である。図4(A)及び図4(B)において、クランプ(保持具)の図示は、省略されている。
図5図5(A)〜図5(D)は、図4及び図5のI−I線、II−II線、III−III線及びIV−IV線における断面図であり、図5(E)及び図5(F)は、仮設支持装置右側面図及び左側面図である。図5の各図において、クランプ(保持具)の図示は、省略されている。
図6図6(A)〜図6(C)は、仮設支持装置を天井吊りボルトに係合する過程を示す横断面図である。
図7図7(A)〜図7(C)は、仮設支持装置が天井吊りボルトに係合した状態を示す縦断面図及び平面図である。
図8図8は、仮設支持装置の構造と関連した足場荷重伝達経路の相違を示す仮設支持装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の或る実施形態によれば、左右の係留部の双方に上記保持具が取付けられる。好ましくは、上記保持具は、単管足場用の緊締具(クランプ)からなり、上記横架材は、単管足場用の単管パイプである。
【0018】
好適には、保持具を取付けた金属部材の上縁及び下縁(屈曲部又は折曲げ部)は、保持具を取付けられていない金属部材の上縁及び下縁(屈曲部又は折曲げ部)の上に重なり且つ接触するように配置され、保持具の荷重は、これらの縁部を介して左右の金属部材に均等に分散する。
【0019】
好適には、枢動方向内側(閉鎖側)又は外側(開放側)に金属部材を付勢し又は押圧する付勢手段と、上記係留具の閉鎖位置を維持するように左右の係留部を互いに拘束する閉鎖位置保持手段とを有する。付勢手段は、係留部の開放(又は閉鎖)運動を規制又は制限するように係留部を付勢する。
【実施例】
【0020】
図1は、既存の鋼構造建築物に設けられた天井構造体の全体構成を示す斜視図である。図2は、梁と平行な方向に切断した天井構造体の縦断面図あり、図3は、梁と直交する方向に切断した天井構造体の縦断面図ある。
【0021】
天井構造体20は、2層の面材31、32を鋼製下地21〜27の下面に固定した構造を有する。鋼製下地は、軽量鉄骨製の野縁21、クリップ22、野縁受け23及びハンガー24を有する。ハンガー24は、鋼製吊りボルト25及び鋼製フック26によって鋼製水平部材27に懸吊される。鋼製吊りボルト25は、全長に亘って雄螺子を形成した所謂全螺子ボルトである。
【0022】
野縁21は、約450mm〜約600mm間隔を隔てて配置される。所望により、振れ止め材等の金属部材(図示せず)が鋼製下地の適所に配置される。鋼製水平部材27は、チャンネル形鋼、溝形鋼等の形鋼からなり、鋼構造の梁29の下面に固定された棒鋼、鋼製バー材等の鋼製支持具28(図2及び図3)を介して梁29の下側に固定される。梁29は、鋼構造の柱30(図2及び図3)によって支持される。
【0023】
2層の面材として、下張り面材31及び上張り面材32がビス、ステープル、接着剤等の固定具又は固定手段によって野縁21の下面に固定される。面材27、28として、板厚9.5〜15mm程度の石膏ボード、珪酸カルシウム板等を好適に使用し得る。下張り面材31の上側には、天井裏空間Sが形成され、上張り面材32の下側には、室内空間Rが形成される。
【0024】
天井裏足場1が、天井裏空間Sに仮設される。天井裏足場1は、天井構造体を耐震補強する耐震補強工事等において、作業者等が天井裏空間Sで作業し、或いは、天井裏空間S内を移動するための作業用足場を構成する。天井裏足場1は、鋼製又は木製の足場板2と、足場板2を敷設可能な横架材3と、横架材3を天井吊りボルト25によって支持するための仮設支持装置4とから構成される。仮設支持装置4は、横架材3を支持する保持具5と、天井吊りボルト25に係止する係留具6とから構成される。
【0025】
足場板2は、例えば、木製足場板、或いは、枠組足場用の鋼製踏板からなり、横架材3は、例えば、単管足場で使用される単管パイプからなる。保持具5は、単管足場で使用される仮設工事用の緊締具(一般にクランプ又はクランプ部材と呼ばれる。)からなる。横架材3は、保持具5の締付け力によって保持具5に一体的に支持され、保持具5の締付け力解放によって保持具5から解放される。
【0026】
図4(A)〜図4(D)は、仮設支持装置4の構成を示す正面図、背面図、平面図及び底面図である。図5(A)〜図5(D)は、図4及び図5のI−I線、II−II線、III−III線及びIV−IV線における断面図であり、図5(E)及び図5(F)は、仮設支持装置4の右側面図及び左側面図である。図6(A)〜図6(C)は、仮設支持装置4を開放して天井吊りボルト25に係合せしめる過程を示す横断面図である。図7(A)〜図7(C)は、固定具5が天井吊りボルト25に係合した状態を示す縦断面図及び平面図である。なお、図4(A)、図4(B)、図5(全図)、図6(B)、図6(C)、図7(A)及び図7(B)において、保持具5の図示は、図を簡略化すべく省略されている。
【0027】
図4及び図5に示す如く、係留具6は、左右一対の係留部61、62を有し、係留部61、62は、枢動部63によって枢動可能且つ開閉可能に連結される。枢動部63の枢動軸線を中心に係留部61、62を枢動して係留部61、62を開放した状態が、図6(A)に示されている。
【0028】
各係留部61、62は、鉛直方向に延びる金属板の上縁及び下縁を枢動方向内側(閉鎖側)に屈曲し又は折曲げた箱形又は筐体形の金属部材からなる。係留部61、62は、鉛直壁61a、62a、上端屈曲部61b、62b及び下端屈曲部61c、62cを有する。鉛直壁61a、62aは、平行に延在して係留部61、62の外側鉛直面を形成する。下端屈曲部61c、62cは、互い上下に重なり合った状態で接触又は近接し、上端屈曲部61b、62bも、互い上下に重なり合った状態で接触又は近接する。
【0029】
枢動部63は、鉛直方向に延びる中心軸63aと、鉛直壁61a、62aを枢動方向内方に付勢し又は押圧するトーションスプリング(ねじりコイルばね)63bとを有する。係留部61、62は、トーションスプリング63bの弾発力によって枢動方向内方(閉鎖方向)に付勢される。中心軸63aは、上端屈曲部61b、62b、トーションスプリング63bおよび下端屈曲部61c、62cを貫通し、上端部及び下端部の拡大部分63c、63dによって上端屈曲部61b、62bおよび下端屈曲部61c、62cを拘束し、これにより、係留部61、62の枢軸(回動軸)を構成する。
【0030】
図4及び図5には、係留部61、62の閉鎖位置が示されている。係留部61、62は、拘束具(ストッパ)66によって閉鎖位置に拘束される。拘束具66は、係留部62に固定された支軸66aと、支軸66aを中心に揺動可能な揺動部66bとから構成される。揺動部66bは、枢動部63と反対の側に位置する係留具6の端部上面及び端部側面を部分的に囲繞するとともに、開閉操作時に手指で把持する把持部66cを備える。図4及び図5に示す拘束具66の拘束位置では、揺動部66bは、係留具6の端部上面及び端部側面に当接し、枢動部63を中心とした係留部61、62の枢動(回動)を阻止する。
【0031】
鉛直壁61a、62aの内側面には、雌螺子半部71、81を備えた雌螺子部材70、80が配設される。雌螺子部材70、80は、ビス又は螺子等の固定手段71、81によって鉛直壁61a、62aに固定される。雌螺子半部71、81は、吊りボルト25の雄螺子(外螺子)に適合する雌螺子(内螺子)の半部である。図4及び図5に示す係留部61、62の閉鎖位置において、雌螺子半部71、81は対向し、吊りボルト25の雄螺子に適合する実質的に単一の雌螺子を形成する。雌螺子半部71、81を合成した単一の雌螺子の中心軸線X−Xが、図5(A)〜図5(C)に示されている。なお、「実質的に単一の雌螺子・・・」又は「実質的に吊りボルト25の全周・・・」等の表現は、雌螺子半部70、80の間に若干の隙間又は不連続部分等が生じたとしても、概ね全周に亘って連続する螺子溝が形成されることを意味する。
【0032】
係留具6は、中心軸線X−X上に整列した円形開口6a、6bを頂部及び底部に備える。円形開口6a、6bは、図7に示す如く、吊りボルト25が係留具6を上下方向に貫通するための開口である。円形開口6a、6bは、上端屈曲部61b、62bおよび下端屈曲部61c、62cの縁部に切欠き部又は凹所等を形成することにより係留具6の頂部及び底部に形成される。
【0033】
係留具6とともに仮設支持装置4を構成する保持具5は、前述のとおり、垂直壁61aに取付けられた単管足場用の緊締具(クランプ)からなる。保持具5は、垂直壁61aを水平に貫通する支軸51を有し、支軸51は、保持具5の本体を支軸51の中心軸線を中心に回転可能に支持する。外螺子(雄螺子)を備えた支軸51の先端部に螺着可能なナット64(破線で示す)が、係留具6内に配置される。ナット64は、係留具6内で支軸51の先端外螺子部に螺着し、支軸51は、ナット64の締付け力によって垂直壁61aに固定される。なお、所望により、保持具5を垂直壁62aに取り付け、或いは、垂直壁61a、62aの双方に取付けても良い。
【0034】
次に、仮設支持装置4の使用方法について説明する。
【0035】
拘束具66の把持部66cを手指で把持して揺動部66bを図4(A)及び図5(A)に矢印αで示すように上方に揺動し、揺動部66bによる係留具6の拘束を解除又は解放すると、係留部61、62を図6(A)に示す如く開放することができる。枢動部63の中心軸63aを中心に係留部61、62を枢動させる際、トーションスプリング63bの弾発力が増大するので、係留部61、62の過剰な回動は、制限される。
【0036】
係留部61、62を図6(A)に示す如く開放し、吊りボルト25(図6(A)に破線で示す)に接近させ、図6(B)に示す如く、雌螺子半部70、80が吊りボルト25に対向するように係留具6を位置決めした後、係留部61、62を閉鎖すると、図6(C)に示す如く、雌螺子半部70、80が吊りボルト25の雄螺子に螺合し、雌螺子半部70、80が構成する単一の雌螺子が吊りボルト25に螺着した状態が形成される。この状態で拘束具66の把持部66cを手指で把持して揺動部66bを下方に揺動し、揺動部66bにより係留部61、62を拘束すると、係留具6が吊りボルト25に螺着した状態を維持することができる。但し、この状態は、係留具6が吊りボルト25上で自由回転可能な状態である。
【0037】
このようにして複数の係留具6を吊りボルト25に係留した状態が図1図3に示されている。仮設支持装置4の使用においては、足場板2支持するための横架材3の各端部が、係留具6に支持された保持具5に緊締(クランプ)され、両端支持梁の形態で天井裏空間Sに懸架される。足場板2の敷設方向と直交する方向に間隔を隔てて配置された保持具5によって横架材3の両端部が緊締され、各足場板2の端部が各横架材3上に敷設される。
【0038】
足場板2の積載荷重及び自重は、横架材3を介して各保持具5に伝達し、係留具6を介して吊りボルト25に伝達し、吊りボルト25によって支持される。前述の如く、係留具6は、吊りボルト25の雄螺子に螺着した状態であるので、吊りボルト25の軸線を中心として自由回転し得るが、横架材3に締付けられた保持具5が係留具6の回転を拘束するので、係留具6の回転及び上下変位が拘束又は制限され、係留具6の位置は安定する。
【0039】
かくして、足場板2が天井裏空間Sに配設されるが、本発明者等の載荷試験によれば、このような構成の仮設支持装置4は、足場支持手段として十分な強度を発揮することが確認された。
【0040】
以上説明したとおり、仮設支持装置4は、枢動部63によって枢動可能且つ開閉可能に連結した左右の係留部61、62からなる係留具6と、少なくとも一方の係留部61、62に取付けられ、足場板支持用の横架材3を解放可能に保持する保持具5とを有する。各々の係留部61、62の枢動方向内側には、天井吊りボルト25の雄螺子に適合する雌螺子半部70、80が一体的に形成される。左右の係留部61、62の雌螺子半部70、80は、係留部61、62を枢動部63によって閉じた状態において、実質的に吊りボルト25の全周に亘って吊りボルト25に螺着する雌螺子を協働して形成する。保持具5は、天井吊りボルト25廻りの回転運動を横架材3及び保持具5の一体化によって拘束又は阻止されるとともに、雌螺子半部70、80及び天井吊りボルト25の螺着によって天井吊りボルト25に支持される。
【0041】
このような構成によれば、左右の係留部61、62を閉じることにより、実質的に吊りボルト25の全周に亘って吊りボルト25に螺着する雌螺子が形成される。足場板2及び横架材3の荷重(足場荷重)は、保持具5を介して係留具6の雌螺子半部70、80に伝達する。雌螺子半部70、80は、実質的に吊りボルト25の全周に亘って吊りボルト25に螺着する雌螺子を構成するので、係留具6は、ナットと同様、足場荷重を吊りボルト25に確実に伝達し、従って、吊りボルト25は、足場荷重を確実に支持することができる。また、係留具6の回転は、横架材3及び保持具5の一体化によって拘束又は阻止されるので、係留具6が吊りボルト25に対して回転する虞はなく、従って、仮設支持装置4の位置は、安定する。
【0042】
図8は、係留部61、62の構造と関連した足場荷重伝達経路の相違を示す仮設支持装置4の概略断面図である。
【0043】
図8(A)には、吊りボルト25を両側から挟み込む構成の係留具6が示されている。係留部61、62は、左右対称の断面を有し、上下に重なる部分を備えていない。また、図8(B)に示す係留具6は、図4図7に示す構造のものであり、係留部61が係留部62を全体的に囲む弁当箱形態の構成を有する。係留部61の高さは係留部62の高さよりも大きく、下端屈曲部61cは、下端屈曲部62cの下側に位置した状態で下端屈曲部62cと重なり合い、上端屈曲部61bは、上側屈曲部62bの上側に位置した状態で上側屈曲部62bと重なり合う。更に、図8(C)に示す係留具6は、同一高さの係留部61、62を段違いに配置した構成を有する。下端屈曲部61cは、下端屈曲部62cの上側に位置した形態で下端屈曲部62cと重なり合い、上端屈曲部61bも又、上側屈曲部62bの上側に位置した形態で上側屈曲部62bと重なり合う。
【0044】
各図に示す横架材3の足場荷重Fは、荷重Pとして雌螺子半部70、80から吊りボルト25に作用する。図8(A)に示す係留具6では、足場荷重Fを係留部61から係留部62に伝達する伝達経路が限定されるので、荷重伝達経路に位置する部分を局所的に厚肉化し又は補強し、或いは、係留部61、62を全体的に厚肉化し又は高強度化する必要が生じる。他方、図8(B)に示す係留具6では、足場荷重Fの多くは、鉛直荷重F'として示す如く、上端屈曲部61b、62bの重り部を介して係留部62に伝達する。このため、図8(B)に示す係留具6においても、伝達経路が限定され、上端屈曲部61b、62bの部分を厚肉化し又は補強し、或いは、係留部61、62を全体的に厚肉化し又は高強度化する必要が生じる。これに対し、図8(C)に示す係留具6では、鉛直荷重F"として示す如く、足場荷重Fの多くは、上端屈曲部61b、62bの重なり部と、下端屈曲部61c、62cの重なり部とを介して係留部62に伝達する。このため、図8(C)に示す係留具6においては、荷重伝達経路が分散し、応力集中が生じ難いので、係留部61、62を局所的にも全体的にも厚肉化又は高強度化することなく製作し、機器重量の軽量化を図ることができる。
【0045】
従って、係留具6を比較的薄い材料又は比較的低強度な材料で製作し、その軽量化を図るには、図8(A)に示す挟み込む構成よりも、図8(B)に示す弁当箱形態の構成が好ましく、更に好ましくは、図8(C)に示す段違い形態の構成を採用することが望ましい。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において種々の変更又は変形が可能であり、かかる変更又は変形例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上記枢動部は、ヒンジ、蝶番等の他の構造のものに設計変更することも可能である。
【0048】
また、上記トーションスプリング(ねじりコイルばね)に換えて、他の構造のばね又はゴム等を付勢手段又は押圧手段として使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、天井裏足場の仮設支持装置に適用され、殊に、既存建築物等の建築物の天井裏空間に工事用足場等の足場を天井吊りボルトによって支持するための天井裏足場の仮設支持装置に好ましく適用される。本発明の仮設支持装置によれば、天井裏足場を支持するための予備的又は付加的なナットを備えていない既存建築物の天井吊りボルトによって、天井裏足場を迅速且つ安定的に支持することができるので、その実用的価値は、顕著である。
【符号の説明】
【0050】
1 天井裏足場
2 足場板
3 横架材
4 仮設支持装置
5 保持具
6 係留具
25 天井吊りボルト
61、62 係留部
63 枢動部
66 拘束具(ストッパ)
70、80 雌螺子半部
R 室内空間
S 天井裏空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8