【実施例】
【0020】
図1は、既存の鋼構造建築物に設けられた天井構造体の全体構成を示す斜視図である。
図2は、梁と平行な方向に切断した天井構造体の縦断面図あり、
図3は、梁と直交する方向に切断した天井構造体の縦断面図ある。
【0021】
天井構造体20は、2層の面材31、32を鋼製下地21〜27の下面に固定した構造を有する。鋼製下地は、軽量鉄骨製の野縁21、クリップ22、野縁受け23及びハンガー24を有する。ハンガー24は、鋼製吊りボルト25及び鋼製フック26によって鋼製水平部材27に懸吊される。鋼製吊りボルト25は、全長に亘って雄螺子を形成した所謂全螺子ボルトである。
【0022】
野縁21は、約450mm〜約600mm間隔を隔てて配置される。所望により、振れ止め材等の金属部材(図示せず)が鋼製下地の適所に配置される。鋼製水平部材27は、チャンネル形鋼、溝形鋼等の形鋼からなり、鋼構造の梁29の下面に固定された棒鋼、鋼製バー材等の鋼製支持具28(
図2及び
図3)を介して梁29の下側に固定される。梁29は、鋼構造の柱30(
図2及び
図3)によって支持される。
【0023】
2層の面材として、下張り面材31及び上張り面材32がビス、ステープル、接着剤等の固定具又は固定手段によって野縁21の下面に固定される。面材27、28として、板厚9.5〜15mm程度の石膏ボード、珪酸カルシウム板等を好適に使用し得る。下張り面材31の上側には、天井裏空間Sが形成され、上張り面材32の下側には、室内空間Rが形成される。
【0024】
天井裏足場1が、天井裏空間Sに仮設される。天井裏足場1は、天井構造体を耐震補強する耐震補強工事等において、作業者等が天井裏空間Sで作業し、或いは、天井裏空間S内を移動するための作業用足場を構成する。天井裏足場1は、鋼製又は木製の足場板2と、足場板2を敷設可能な横架材3と、横架材3を天井吊りボルト25によって支持するための仮設支持装置4とから構成される。仮設支持装置4は、横架材3を支持する保持具5と、天井吊りボルト25に係止する係留具6とから構成される。
【0025】
足場板2は、例えば、木製足場板、或いは、枠組足場用の鋼製踏板からなり、横架材3は、例えば、単管足場で使用される単管パイプからなる。保持具5は、単管足場で使用される仮設工事用の緊締具(一般にクランプ又はクランプ部材と呼ばれる。)からなる。横架材3は、保持具5の締付け力によって保持具5に一体的に支持され、保持具5の締付け力解放によって保持具5から解放される。
【0026】
図4(A)〜
図4(D)は、仮設支持装置4の構成を示す正面図、背面図、平面図及び底面図である。
図5(A)〜
図5(D)は、
図4及び
図5のI−I線、II−II線、III−III線及びIV−IV線における断面図であり、
図5(E)及び
図5(F)は、仮設支持装置4の右側面図及び左側面図である。
図6(A)〜
図6(C)は、仮設支持装置4を開放して天井吊りボルト25に係合せしめる過程を示す横断面図である。
図7(A)〜
図7(C)は、固定具5が天井吊りボルト25に係合した状態を示す縦断面図及び平面図である。なお、
図4(A)、
図4(B)、
図5(全図)、
図6(B)、
図6(C)、
図7(A)及び
図7(B)において、保持具5の図示は、図を簡略化すべく省略されている。
【0027】
図4及び
図5に示す如く、係留具6は、左右一対の係留部61、62を有し、係留部61、62は、枢動部63によって枢動可能且つ開閉可能に連結される。枢動部63の枢動軸線を中心に係留部61、62を枢動して係留部61、62を開放した状態が、
図6(A)に示されている。
【0028】
各係留部61、62は、鉛直方向に延びる金属板の上縁及び下縁を枢動方向内側(閉鎖側)に屈曲し又は折曲げた箱形又は筐体形の金属部材からなる。係留部61、62は、鉛直壁61a、62a、上端屈曲部61b、62b及び下端屈曲部61c、62cを有する。鉛直壁61a、62aは、平行に延在して係留部61、62の外側鉛直面を形成する。下端屈曲部61c、62cは、互い上下に重なり合った状態で接触又は近接し、上端屈曲部61b、62bも、互い上下に重なり合った状態で接触又は近接する。
【0029】
枢動部63は、鉛直方向に延びる中心軸63aと、鉛直壁61a、62aを枢動方向内方に付勢し又は押圧するトーションスプリング(ねじりコイルばね)63bとを有する。係留部61、62は、トーションスプリング63bの弾発力によって枢動方向内方(閉鎖方向)に付勢される。中心軸63aは、上端屈曲部61b、62b、トーションスプリング63bおよび下端屈曲部61c、62cを貫通し、上端部及び下端部の拡大部分63c、63dによって上端屈曲部61b、62bおよび下端屈曲部61c、62cを拘束し、これにより、係留部61、62の枢軸(回動軸)を構成する。
【0030】
図4及び
図5には、係留部61、62の閉鎖位置が示されている。係留部61、62は、拘束具(ストッパ)66によって閉鎖位置に拘束される。拘束具66は、係留部62に固定された支軸66aと、支軸66aを中心に揺動可能な揺動部66bとから構成される。揺動部66bは、枢動部63と反対の側に位置する係留具6の端部上面及び端部側面を部分的に囲繞するとともに、開閉操作時に手指で把持する把持部66cを備える。
図4及び
図5に示す拘束具66の拘束位置では、揺動部66bは、係留具6の端部上面及び端部側面に当接し、枢動部63を中心とした係留部61、62の枢動(回動)を阻止する。
【0031】
鉛直壁61a、62aの内側面には、雌螺子半部71、81を備えた雌螺子部材70、80が配設される。雌螺子部材70、80は、ビス又は螺子等の固定手段71、81によって鉛直壁61a、62aに固定される。雌螺子半部71、81は、吊りボルト25の雄螺子(外螺子)に適合する雌螺子(内螺子)の半部である。
図4及び
図5に示す係留部61、62の閉鎖位置において、雌螺子半部71、81は対向し、吊りボルト25の雄螺子に適合する実質的に単一の雌螺子を形成する。雌螺子半部71、81を合成した単一の雌螺子の中心軸線X−Xが、
図5(A)〜
図5(C)に示されている。なお、「実質的に単一の雌螺子・・・」又は「実質的に吊りボルト25の全周・・・」等の表現は、雌螺子半部70、80の間に若干の隙間又は不連続部分等が生じたとしても、概ね全周に亘って連続する螺子溝が形成されることを意味する。
【0032】
係留具6は、中心軸線X−X上に整列した円形開口6a、6bを頂部及び底部に備える。円形開口6a、6bは、
図7に示す如く、吊りボルト25が係留具6を上下方向に貫通するための開口である。円形開口6a、6bは、上端屈曲部61b、62bおよび下端屈曲部61c、62cの縁部に切欠き部又は凹所等を形成することにより係留具6の頂部及び底部に形成される。
【0033】
係留具6とともに仮設支持装置4を構成する保持具5は、前述のとおり、垂直壁61aに取付けられた単管足場用の緊締具(クランプ)からなる。保持具5は、垂直壁61aを水平に貫通する支軸51を有し、支軸51は、保持具5の本体を支軸51の中心軸線を中心に回転可能に支持する。外螺子(雄螺子)を備えた支軸51の先端部に螺着可能なナット64(破線で示す)が、係留具6内に配置される。ナット64は、係留具6内で支軸51の先端外螺子部に螺着し、支軸51は、ナット64の締付け力によって垂直壁61aに固定される。なお、所望により、保持具5を垂直壁62aに取り付け、或いは、垂直壁61a、62aの双方に取付けても良い。
【0034】
次に、仮設支持装置4の使用方法について説明する。
【0035】
拘束具66の把持部66cを手指で把持して揺動部66bを
図4(A)及び
図5(A)に矢印αで示すように上方に揺動し、揺動部66bによる係留具6の拘束を解除又は解放すると、係留部61、62を
図6(A)に示す如く開放することができる。枢動部63の中心軸63aを中心に係留部61、62を枢動させる際、トーションスプリング63bの弾発力が増大するので、係留部61、62の過剰な回動は、制限される。
【0036】
係留部61、62を
図6(A)に示す如く開放し、吊りボルト25(
図6(A)に破線で示す)に接近させ、
図6(B)に示す如く、雌螺子半部70、80が吊りボルト25に対向するように係留具6を位置決めした後、係留部61、62を閉鎖すると、
図6(C)に示す如く、雌螺子半部70、80が吊りボルト25の雄螺子に螺合し、雌螺子半部70、80が構成する単一の雌螺子が吊りボルト25に螺着した状態が形成される。この状態で拘束具66の把持部66cを手指で把持して揺動部66bを下方に揺動し、揺動部66bにより係留部61、62を拘束すると、係留具6が吊りボルト25に螺着した状態を維持することができる。但し、この状態は、係留具6が吊りボルト25上で自由回転可能な状態である。
【0037】
このようにして複数の係留具6を吊りボルト25に係留した状態が
図1〜
図3に示されている。仮設支持装置4の使用においては、足場板2
を支持するための横架材3の各端部が、係留具6に支持された保持具5に緊締(クランプ)され、両端支持梁の形態で天井裏空間Sに懸架される。足場板2の敷設方向と直交する方向に間隔を隔てて配置された保持具5によって横架材3の両端部が緊締され、各足場板2の端部が各横架材3上に敷設される。
【0038】
足場板2の積載荷重及び自重は、横架材3を介して各保持具5に伝達し、係留具6を介して吊りボルト25に伝達し、吊りボルト25によって支持される。前述の如く、係留具6は、吊りボルト25の雄螺子に螺着した状態であるので、吊りボルト25の軸線を中心として自由回転し得るが、横架材3に締付けられた保持具5が係留具6の回転を拘束するので、係留具6の回転及び上下変位が拘束又は制限され、係留具6の位置は安定する。
【0039】
かくして、足場板2が天井裏空間Sに配設されるが、本発明者等の載荷試験によれば、このような構成の仮設支持装置4は、足場支持手段として十分な強度を発揮することが確認された。
【0040】
以上説明したとおり、仮設支持装置4は、枢動部63によって枢動可能且つ開閉可能に連結した左右の係留部61、62からなる係留具6と、少なくとも一方の係留部61、62に取付けられ、足場板支持用の横架材3を解放可能に保持する保持具5とを有する。各々の係留部61、62の枢動方向内側には、天井吊りボルト25の雄螺子に適合する雌螺子半部70、80が一体的に形成される。左右の係留部61、62の雌螺子半部70、80は、係留部61、62を枢動部63によって閉じた状態において、実質的に吊りボルト25の全周に亘って吊りボルト25に螺着する雌螺子を協働して形成する。保持具5は、天井吊りボルト25廻りの回転運動を横架材3及び保持具5の一体化によって拘束又は阻止されるとともに、雌螺子半部70、80及び天井吊りボルト25の螺着によって天井吊りボルト25に支持される。
【0041】
このような構成によれば、左右の係留部61、62を閉じることにより、実質的に吊りボルト25の全周に亘って吊りボルト25に螺着する雌螺子が形成される。足場板2及び横架材3の荷重(足場荷重)は、保持具5を介して係留具6の雌螺子半部70、80に伝達する。雌螺子半部70、80は、実質的に吊りボルト25の全周に亘って吊りボルト25に螺着する雌螺子を構成するので、係留具6は、ナットと同様、足場荷重を吊りボルト25に確実に伝達し、従って、吊りボルト25は、足場荷重を確実に支持することができる。また、係留具6の回転は、横架材3及び保持具5の一体化によって拘束又は阻止されるので、係留具6が吊りボルト25に対して回転する虞はなく、従って、仮設支持装置4の位置は、安定する。
【0042】
図8は、係留部61、62の構造と関連した足場荷重伝達経路の相違を示す仮設支持装置4の概略断面図である。
【0043】
図8(A)には、吊りボルト25を両側から挟み込む構成の係留具6が示されている。係留部61、62は、左右対称の断面を有し、上下に重なる部分を備えていない。また、
図8(B)に示す係留具6は、
図4〜
図7に示す構造のものであり、係留部61が係留部62を全体的に囲む弁当箱形態の構成を有する。係留部61の高さは係留部62の高さよりも大きく、下端屈曲部61cは、下端屈曲部62cの下側に位置した状態で下端屈曲部62cと重なり合い、上端屈曲部61bは、上側屈曲部62bの上側に位置した状態で上側屈曲部62bと重なり合う。更に、
図8(C)に示す係留具6は、同一高さの係留部61、62を段違いに配置した構成を有する。下端屈曲部61cは、下端屈曲部62cの上側に位置した形態で下端屈曲部62cと重なり合い、上端屈曲部61bも又、上側屈曲部62bの上側に位置した形態で上側屈曲部62bと重なり合う。
【0044】
各図に示す横架材3の足場荷重Fは、荷重Pとして雌螺子半部70、80から吊りボルト25に作用する。
図8(A)に示す係留具6では、足場荷重Fを係留部61から係留部62に伝達する伝達経路が限定されるので、荷重伝達経路に位置する部分を局所的に厚肉化し又は補強し、或いは、係留部61、62を全体的に厚肉化し又は高強度化する必要が生じる。他方、
図8(B)に示す係留具6では、足場荷重Fの多くは、鉛直荷重F'として示す如く、上端屈曲部61b、62bの重り部を介して係留部62に伝達する。このため、
図8(B)に示す係留具6においても、伝達経路が限定され、上端屈曲部61b、62bの部分を厚肉化し又は補強し、或いは、係留部61、62を全体的に厚肉化し又は高強度化する必要が生じる。これに対し、
図8(C)に示す係留具6では、鉛直荷重F"として示す如く、足場荷重Fの多くは、上端屈曲部61b、62bの重なり部と、下端屈曲部61c、62cの重なり部とを介して係留部62に伝達する。このため、
図8(C)に示す係留具6においては、荷重伝達経路が分散し、応力集中が生じ難いので、係留部61、62を局所的にも全体的にも厚肉化又は高強度化することなく製作し、機器重量の軽量化を図ることができる。
【0045】
従って、係留具6を比較的薄い材料又は比較的低強度な材料で製作し、その軽量化を図るには、
図8(A)に示す挟み込む構成よりも、
図8(B)に示す弁当箱形態の構成が好ましく、更に好ましくは、
図8(C)に示す段違い形態の構成を採用することが望ましい。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において種々の変更又は変形が可能であり、かかる変更又は変形例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上記枢動部は、ヒンジ、蝶番等の他の構造のものに設計変更することも可能である。
【0048】
また、上記トーションスプリング(ねじりコイルばね)に換えて、他の構造のばね又はゴム等を付勢手段又は押圧手段として使用しても良い。