(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のゾーンの内の1つのゾーンは、前記複数のゾーンの内の別の1つのゾーンの横断面積とは異なる横断面積を有し、または、前記別の1つのゾーンを形成する材料とは異なる電気抵抗率を有する材料で形成される請求項2に記載の誘導加熱可能物品。
前記ボディは、底壁および前記底壁から上向きに延びる側壁構造体を有する食物加熱鍋であり、前記底壁および前記側壁構造体の内側表面は、共同で食物保持キャビティを定義する請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱可能物品。
前記食物加熱鍋は、前記底壁および前記側壁構造体を有する相互接続した内側および外側の接続シェルを含み、前記サセプタコイルは、前記内側および前記外側の接続シェルの間に挟まれる請求項4に記載の誘導加熱可能物品。
【背景技術】
【0003】
先行技術の説明
従来、容器および鍋は、容器または鍋の内容物を所望の温度レベルに維持するために、所望の温度に能動的に維持された表面の壁を備えていた。例えば、通常、コーヒーを入れるための水タンクは、直立した円筒状のステンレススチールのタンク壁の周囲に巻き付けられた抵抗加熱素子を使用し、さらに、タンクの底壁に隣接した同様の素子を有する。抵抗素子を通って流れる電流は、素子を加熱し、タンクの外壁に取り付けられた、または水の中に配置された熱センサを使用した温度フィードバックによって温度調節する。
【0004】
さらに、食物サービスアプリケーション用のスチーム容器の中で使用された、ステンレススチールまたはポリマ構造の食物鍋は、その中で食物を所望の安全な温度に維持するために、その全ての4つの側面および底面が蒸気によって加熱される。スチーム発生器システムの容器は、容器の中の1つ以上の温度センサからの温度フィードバックによって調節されても良い。蒸気は、全ての鍋表面に接触し、その表面エリアの温度の関数としてその表面で凝縮するので、スチーム容器は、その容器の中で鍋の全ての表面をほとんど同じ温度に維持することができる。要するに、スチーム加熱では、鍋のそれぞれ個別の表面エリアは、スチーム熱源へのフィードバック用のそれ自身の熱センサとして作用する。
【0005】
しかしながら、従来のスチームテーブルには、多数の欠点があった。まず、これらの器具は、加熱蒸気を創出しかつ維持するために相当なエネルギ入力を必要とする。スチームテーブルが発生させた熱および湿度を打ち消すために、スチームテーブルを収容した建物のHVACシステムを動作させなければならないという事実のために、このエネルギの非効率状態は、一段と悪化する。さらに、温水/熱湯を含むスチームテーブルは、出される食物を次々に汚染することができる有害な微生物で汚染されているかもしれない。
【0006】
複数の表面壁の誘導電流によって加熱される容器または鍋も同様に、先行技術の中で公知である。例えば、米国特許第5,954,984号には、巻き付けられたコイル加熱素子を使用し、ワークコイルを使用した誘導加熱によるコイル素子のジュール加熱によって加熱される容器が開示されている。インピーダンス検出能力を備えた誘導ヒータを使用して、それ自体が関連した温度スイッチの状態の関数である負荷(即ち容器)のインピーダンスに応じて磁界のオンオフを引き起こす。さらに、米国特許第6,504,135号には、コイル素子が第‘984号特許に記載された誘導加熱システムに相互作用できるようにする、温度スイッチのような開閉可能な素子を備えた誘導加熱可能なコイル加熱素子が記載されている。
【0007】
イリノイ州シカゴのクックテクインダクションシステムズ社(CookTek Induction Systems, LLC)は、ステンレススチール鍋が誘導加熱される無水の食物加熱/加温テーブルシステム(「シンアクア(SinAqua)」システムと呼ばれる)を商品化した。しかしながら、ステンレススチールの食物保持鍋のそれぞれ異なる部分を区別して加熱する手段はない、即ち、適切に配置された誘導ワークコイルによって、鍋全体が加熱される。
【0008】
米国特許公開第2011/0090937号には、導電性部材を交番磁界で査問し、次に、その部材に渦電流が引き起こされた結果生じる特性時定数を確認する装置の使用を通じて、小さなディスクなどのような導電性部材の温度を遠隔測定することができる構造が記載されている。
【0009】
このように、鍋の誘導加熱が公知であるのに対して、多数の問題が残存している。最も重要なのは、以前の誘導加熱システムが、鍋または容器の各部分を、それぞれ異なる温度にまたはそれぞれ異なる時間の間、区別して加熱するための効果的な手段を与えなかったことである。特に、これは、それぞれ異なる種類の食物を保持する、それぞれ異なるサイズのそれぞれ異なる鍋を有する食物加熱/加温テーブルシステムに関する場合である。最適には、そのような鍋は、例えば、鍋の底壁を通る一次的な加熱で個別に加熱されると同時に、さらに鍋の側面および端面の周囲に二次的な加熱が与えられるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施形態の詳細な説明
まず
図3を参照すると、本発明に記載の食物保持鍋10が示されている。鍋10は、商用食品産業の中で一般に使用される4分の1サイズの鍋の標準的な形状および寸法を有し、底壁12ならびに対向する側壁16と対向する端壁18とを含む側壁構造体14を有する。壁12、16、および18の内側表面は、共同で食物保持キャビティ20を定義する。鍋10の上側エッジには、外側に延びた連続的な周辺の縁22が設けられる。さらに、鍋10は、複数のゾーンから成る埋め込まれたサセプタコイル24を備え、そのサセプタコイルは、合成樹脂(例えば、マイラー(Mylar)(R)またはカプトン(Kapton)(R))のベースシート26を含み、そのベースシートは、シート26の外側の面に装着されかつ全体が符号28によって示された一連の導電性パターン配線を有する。さらに、端壁18のコイル24の一部は、記載された目的にとって重要な金属の温度検出ディスク30を有する。
【0022】
鍋10は、適切な合成樹脂材料、典型的にはポリスルホン材料で形成される。
図3に示された一実施形態では、鍋10は、内側シェル32および外側シェル34で構成され、内側シェルは、接着または他の方法で内側シェルの外側表面に付けられたサセプタコイル24のベースシートを備え、外側シェルは、完成した鍋10を形成するために内側シェル32に結合する。それによって、もちろん、サセプタコイル24およびディスク30は、鍋10の構造体の内部に効果的に埋め込まれ、内側および外側シェル32、34の間に挟まれる。
図3の構造では、まず内側シェル32がモールドされ、その外側表面にシート26が付けられる。次に、一体構造を創出するために、内側シェル32に外側シェル34がオーバーモールドされ、一体設計を創出するために、コイル24およびディスク30がその中に埋め込まれる。外側シェルのオーバーモールド材料は、内側シェル32に使用されるのと同じポリマを使用して形成されても良く、または、その代わりに断熱性を強化した、ブロー成形されるプラスチック材料でも良い。
【0023】
あるいは、内側および外側シェル32、34は、サセプタコイル24およびディスク30を収容するのに十分なスペースをそれらの間に設けるように、別々にモールドされても良い。次に、後者の構成要素は、内側シェル32に付けられ、内側および外側シェルは、超音波溶接または接着剤のようなあらゆる公知の手段によって相互接続される。通常、内側および外側シェルの間の残りのオープンスペースは、高温発泡断熱材、例えばポリウレタンまたはシリコーンで満たされる。発泡断熱材は、鍋10が防水処理されて食器洗い機で洗えるように、加圧下でシェル32、34の間のフリースペースの中に注入されることが可能なクローズドセルタイプであるのが好ましい。説明したように、図示された鍋10は、4分の1サイズの鍋である。さらに、ハーフサイズの鍋10aおよびフルサイズの鍋10b(
図1)のような他の鍋のサイズおよび形状、または、さらに言えばあらゆる所望の鍋の形状またはサイズを設けることができる。本発明の好ましい鍋は、以下に詳細に記載されるような1つ以上のサセプタコイルを備える。
【0024】
第1の実施形態(
図4)−各パターン配線の厚さ、単一の温度スイッチ、および薄いディスク状の渦電流温度計のセンサによって、調節可能なワット密度のジュール加熱をする複数のジュール加熱ゾーンを有するサセプタコイル
図4のサセプタコイル24は、薄い合成樹脂のベースシート26を含み、そのベースシートは、その上側の面の上に印刷されたパターン配線28を有する。図示された一実施形態では、パターン配線28は、連続的であり、銅で形成されるが、電気的に、銀またはカーボンインクのような他の導電性材料が使用されても良い。この一実施形態は、コイル24とさらには鍋10の所望の調節可能なワット密度のジュール加熱をするために、主としてパターン配線の厚さにおける変化に依存する。
【0025】
図4を詳細に参照すると、コイル24は、装着時に鍋10の底壁12に隣接した中心ゾーン36と、ゾーン36を取り囲み、装着時に底壁12および側壁構造体14の間のエッジまたは境界に隣接した周辺ゾーン38と、周辺ゾーン38から間隔を開けて配置され、装着時に鍋の端壁18に隣接した対向する端壁ゾーン40および41と、周辺ゾーン38から外側に延び、装着時に鍋の側壁16に隣接した対向する側壁ゾーン42および43と、を有する。
【0026】
ゾーン36のパターン配線44は、幅0.1インチ(2.54mm)および厚さ0.001インチ(0.0254mm)である。パターン配線44は、ゾーン36の中心の近くの接点46で始まり、右側から左側まで延び、次に上方向に、そして右方向に曲がり、わずかな間隔を開けて配置されかつ接点50で終了する、多重化された1群の矩形パターン配線48を形成する。接点50では、パターン配線44は、ゾーン38のパターン配線52に相互接続し、パターン配線52は、パターン配線44と同じ幅を有するが、パターン配線44の2倍の厚さを有する、即ち、パターン配線52は、幅0.1インチ(2.54mm)および厚さ0.002インチ(0.0508mm)である。そのような追加の厚さは、これらのパターン配線の重ね刷りによって形成される。周辺ゾーン38は、多重化された1群の4つの矩形パターン配線53を設け、接点54で終了する。
【0027】
外側に延びかつ電気的に相互接続されたゾーン40〜43は、それぞれ同じ基本的なパターン配線の設計を有し、ゾーン36のパターン配線44と同じ寸法を有するパターン配線を使用し、一連の相互接続された各蛇行セクションとして形成される。
【0028】
詳細には、パターン配線52は、ゾーン42のパターン配線56に接点54で相互接続し、外側に延びた接続レッグ58と、隣接しかつ並置され、接点62で終了する一連の蛇行セクション60を含む。パターン配線52は、接点68で終了する一連の蛇行セクション66を形成するために、ゾーン40のパターン配線64に接点62で相互接続する。パターン配線64は、接点74で終了する蛇行セクション72を形成するために、ゾーン43のパターン配線70に接点68で相互接続する。最後に、パターン配線70は、蛇行セクション78を形成しかつコイル終端の接点80で終了するゾーン41のパターン配線76に接点74で相互接続する。
【0029】
コイル24の加熱パスを終了させ、それによって、引き起こされた循環電流がコイルを通過できるようにするために、接点46および80の間が電気的に接続されなければならない。この接続は、パターン配線44、56、64、70、および76と同じ寸法を有し、同じ材料で形成された個別の配線82を介するが、接点46および80以外の全てのパターン配線44、52、56、64、70、および76から電気的に絶縁されるのが好ましい。
【0030】
配線82の中に温度スイッチ84および温度ヒューズ86が設けられる。好ましい温度スイッチ84は、ポーティジエレクトリカルプロダクツインク(Portage Electrical Products, Inc.)によって商品化されたモデルBサーモスタット/サーマルプロテクタのような、少なくとも100,000サイクルの高接触回数を可能にするシャント付きバイメタル構造を有するクリープ動作型バイメタルスイッチである。もちろん、電子スイッチを含む他のタイプのスイッチは、この状況で使用されても良い。しかしながら、モデルBスイッチは、スイッチの接点が開く温度がスイッチの接点が閉じる温度の数℃以内であるような低ヒステリシスを有する。この設計では、スイッチ84は、212°F(100℃)で開く上昇時オープン型スイッチである。図示されるように、スイッチ84のボディは、ゾーン36の複数のパターン配線に熱的接触する位置に置かれる。
【0031】
温度ヒューズ86(サーマルカットアウトとも呼ばれる)は、配線82の導電パスに沿って設けられ、キャンサームコーポレーション(Cantherm Corporation)によって商品化されたモデルDF260Sサーマルカットアウトであるのが好ましい。ヒューズ86は、その温度が所定のレベルを超えた場合に永続的に開くように設計されている。この設計では、ヒューズ86は、サセプタコイル24(とさらには鍋10の底)のこの部分が、ヒューズ(この場合260°F(126.7℃))の温度リミットを超えた場合に、ヒューズがコイル24のさらなるジュール加熱を防ぐために永続的に開くように装着され、ゾーン36の複数のパターン配線に良好に熱的接触する。
【0032】
ディスク30は、0.080インチ(2.032mm)の厚さの純粋な銅シートで作製され、1インチ(25.4mm)の直径を有するのが好ましい。ディスクは、ゾーン40および41のパターン配線64および76から電気的に絶縁されるが、それらのパターン配線に直接熱的接触する。ディスクは、前述の特許公開第2011/0090937号に記載された、改良された渦電流温度計を使用する、取捨選択可能な検出アセンブリの一部である。
【0033】
ゾーン36、38、および40のパターン配線44、52、および64の間の厚さにおける変化は、
図5に示される。即ち、パターン配線の全ての幅は、同一であるが、パターン配線52は、パターン配線44および64の2倍の厚さを有する。従って、パターン配線52の単位長さ当たりの電気抵抗は、パターン配線44および64の2倍である。
【0034】
動作
図1および8に示されるように、サセプタコイル24を備えた鍋10が、誘導ヒータ89の誘導ワークコイル88の上に置かれ、交番磁界を創出するのに適したエネルギがワークコイル88に与えられた場合に、コイル24とさらには鍋10が加熱される。誘導ヒータ89は、ワークコイル88に加えて、インバータ回路89aおよびマイクロプロセッサ89bを含む。
【0035】
コイル24および鍋10の加熱は、2つのメカニズムを用いる。第1の一次的メカニズムは、コイル24のフルパスに沿って流れかつゾーン36〜43の全てに等しい電流を供給する、引き起こされた循環電流に起因するジュール加熱である。第2のメカニズムは、コイル24のパターン配線の内部に形成された渦電流から発生する二次的ジュール加熱である。しかしながら、これらの渦電流は、ワークコイルの直接上方にあるゾーン36のパターン配線エリア、即ち、磁束がパターン配線エリアに直接貫通する場所の実質的に内部のみに形成される。ワークコイルの上にゾーン38のパターン配線52の内のいくつかが直接あるように、鍋10がワークコイルに対してオフセットした関係に置かれた場合でも、パターン配線52の配置の結果として、ゾーン36のパターン配線44と比較して実質的により少ないその渦電流加熱が得られる。
【0036】
鍋10のこの誘導加熱中に、ゾーン36および40〜43は、循環電流を介して同じ程度に、即ち、これらのゾーンのそれぞれの内部に引き起こされた循環電流に伴うジュール加熱誘導エネルギの割合が同じである程度にジュール加熱される。しかしながら、ゾーン38は、ゾーン36および40〜43よりも50%少ない割合で引き起こされた循環電流を介してジュール加熱される。これは、他のパターン配線44、56、64、70、および76と比較してゾーン38のパターン配線52の高さが区別されるために生じる。従って、鍋10は、パターン配線に隣接したその対応する部分毎に区別して加熱される。
【0037】
鍋10の正常な誘導加熱中の温度制御は、ディスク30の存在、および特許公開第2011/0090937号に記載されたタイプの渦電流温度計の対応する使用によって与えられる。概して、ディスク30は、渦電流温度計のリーダの磁界送信コイルによって生み出された交番磁界にさらされる。この磁界は、ディスクの温度とさらにはコイル24の上の対応する位置の温度を測定するために検出されて解読される渦電流をディスク30の内部に引き起こす。渦電流温度計のリーダは、温度計のリーダがディスク30から測定する温度が、ワークコイル88の出力を制御するためにフィードバック情報として使用されるように、ワークコイル88のドライバ構成要素に電子通信し、次に、予め選定された温度範囲内にコイル24および鍋10の温度を制御する手段を与える。好ましい渦電流温度計およびその動作の詳細は、
図1〜2に示された食物加温テーブルの動作に関連付けて以下に記載される。
【0038】
鍋10が加熱され、(渦電流の温度制御の不備のためまたは他のある理由で)スイッチ84の所定の動作温度に達すると共に、スイッチが開き、それによってコイル24の内部の循環電流のさらなる通過を防ぐ。さらに、誘導ヒータは、そのワークコイルに交番磁界の連続的生成を止めさせる「無負荷」状態を検出する。従って、鍋10のさらなるジュール加熱は生じない。その後、鍋10が冷えると共に、再びコイル24のジュール加熱を可能にするために、再度スイッチ84が閉じる。この時点で、鍋10の温度制御は、ディスク30の存在、および特許公開第2011/0090937号に記載されたタイプの渦電流温度計の対応する使用によって、再び与えられる。スイッチ84のこの開閉動作が継続し、それによって鍋の温度がスイッチ84の動作温度を超えるのを効果的に防いでも良い。
【0039】
ヒューズ86は、スイッチ84の動作温度よりも著しく高い不適当な高温の事象が、コイル24および鍋10によって感知される、さらなるバックアップメカニズムを与える。この場合、ヒューズは、コイル24の内部の循環電流のさらなる通過を終了させるように動作し、鍋10は、ヒューズ86が交換されるまで、抑制された誘導加熱が動作できないようにされる。通常、鍋10は、ヒューズ86の動作時には廃棄されるであろう。
【0040】
スイッチ84が開いたまたはヒューズ86が動作した後に、ワークコイル88が動作し続けた場合には、底のゾーン36、および周辺ゾーン38のより狭い範囲は、引き起こされた渦電流によるかなりの加熱を今まで通り受けるであろう。しかしながら、米国特許第6,504,135号に記載されるように、ワークコイル88に関連した負荷検出システムが、磁界の周期的なテストパルスを除いてワークコイルをシャットダウンするので、実際には、そのような渦電流加熱は、無視できる。
【0041】
具体的には、前述のインバータ回路89aは、一次的コイルであるワークコイル88に対して二次的検出コイルを含む共振回路、および二次的検出コイルに結合された検出回路を有する(図示されないが、特許第6,504,135号の
図18に示される)。これは、従来通りに誘導ヒータを備えた「無負荷検知器」を与える。インバータ回路89aの検出コイルは、コイル24が共振回路に対して示す外部負荷のインピーダンスを検出するように動作可能であり、そのようなインピーダンスに関する適切なフィードバックパラメータを測定できるようにする。実際には、共振回路の電流の振幅Ircは、加熱動作中にインバータ回路89aの一部を形成する検出回路の中に引き起こされた電流の振幅を測定することによって決定される。スイッチ84が開いた場合には、ワークコイル88を通る電流は、遮断される。その後、ワークコイル88を通る電流を再開させるためにスイッチ84が閉じたことを検出するために、ワークコイル88には、交番磁界のテストパルスを周期的に創出するエネルギだけが与えられる。
【0042】
第2の実施形態(
図6)−各パターン配線の幅および複数の温度スイッチによって、調節可能なワット密度のジュール加熱をする複数のジュール加熱ゾーンを有するサセプタコイル
図6は、同様に、
図3に示されたタイプの4分の1サイズの鍋に使用するように意図された別のサセプタコイル90を示す。同様に、コイル90は、薄い合成樹脂の裏当てシート92、およびその上に形成されかつ全体が符号94によって示された一連のパターン配線を有する。コイル24の場合には、コイル90は、それぞれ異なるジュール加熱特性を有する一連のゾーン、即ち、鍋10の底壁12への装着用の底ゾーン96と、鍋10の底壁12および側壁構造体14の間のエッジまたは境界に隣接した位置への装着用の、ゾーン96を取り囲む周辺ゾーン98と、鍋10の端壁18への装着用の、外側に延びかつ対向する端壁ゾーン100および102と、鍋10の側壁16への装着用の、外側に延びかつ対向する側壁ゾーン104、106と、を有する。
【0043】
より詳細に説明すると、ゾーン96は、幅0.1インチ(2.54mm)および厚さ0.001インチ(0.0254mm)のパターン配線108で構成される。パターン配線は、接点110で始まり、右側から左側まで延び、次に上方向に、そして右方向に曲がり、多重化された1群の矩形パターン配線112を形成する。パターン配線108は、パターン配線108が周辺ゾーン98のパターン配線116に相互接続する接点114まで延びる。同様に、パターン配線116は、多重化された一連の矩形パターン配線118を形成し、接点120で終了する。留意すべきは、パターン配線116が、ゾーン96のパターン配線108よりも狭い幅を有することである。従って、ゾーン98を含むパターン配線の電気抵抗の合計は、コイル90全体の電気抵抗の合計の少なくとも20%である。さらに、パターン配線108と比較してパターン配線116の幅が狭いことは、以下に記載されるように、その誘導加熱中の鍋10の底壁12の加熱速度を等しくするのに役立つ。
【0044】
ゾーン104のパターン配線122は、パターン配線116の終端に接点120で接続され、セグメント124、126、および128の各幅を有する。具体的には、最も幅が広いパターン配線セグメント124は、接点120から延び、蛇行した形状であり、中間のセグメント126に続き、中間のセグメントは、セグメント124と比較して幅がより狭く、同様に蛇行した形状である。最後に、最も幅が狭いセグメント128は、セグメント126から延び、接点130で終了する。ゾーン100のパターン配線132は、パターン配線122に接点130で相互接続し、同様に各幅のセグメント、即ち、最も幅が広い蛇行セグメント134、セグメント134よりも幅が狭い中間のセグメント136、および最も幅が狭くかつ接点140で終了するセグメント138を有する。
【0045】
ゾーン106のパターン配線142は、ゾーン104のパターン配線122の鏡像と同一であるので、パターン配線142が接点144で終了すること以外は記載する必要はない。同様に、端壁ゾーン102のパターン配線146は、反対側の端壁ゾーン100のパターン配線132の鏡像と同一であるので、さらなる記載を必要としない。パターン配線146は、接点148で終了する。
【0046】
コイル90のための加熱パスを終了させるために、接点110から148まで配線150が延び、接点110、148以外の他の全てのパターン配線から電気的に絶縁される。配線150は、同様に、前述のモデルBサーモスタット/サーマルプロテクタであるのが好ましい少なくとも1つの温度スイッチ152を含む。それらのパターン配線とさらには鍋10の底壁表面が212°F(100℃)に達した場合に、コイル90の内部に引き起こされた循環電流を終了させるためにスイッチ152が開くように、スイッチ152のボディは、ゾーン96のパターン配線108に熱的接触する位置にある。配線150は、同様に、上述のモデルDF260Sであるのが好ましい温度ヒューズ154を含む。
【0047】
接点114および120の間には、別の配線156が延び、接点114および120で接続される。前述のように、配線156は、コイル94の接点114、120以外の他の全てのパターン配線から電気的に絶縁される。配線156は、同様に、記載されたモデルBサーモスタット/サーマルプロテクタであるのが好ましい第2の温度スイッチ158を備える。しかしながら、この場合には、温度スイッチは、スイッチ152の開く温度が212°F(100℃)であるのと比較して、175°F(79.4℃)で開くように設計される。従って、スイッチ152は、閾値の高いスイッチであるのに対して、スイッチ158は、閾値の低いスイッチであると考えられても良い。
【0048】
動作
コイル90を備えた鍋の動作中には、鍋は、
図1に見られるようにワークコイル88の上に置かれ、コイル90に結合するワークコイルには、交番誘導磁界を創出するためのエネルギが与えられる。ゾーン96は、コイル90の一次的エネルギ伝達領域であり、対応する誘導ワークコイル88よりも大きいサイズである。ゾーン96は、同様に、サセプタコイル90およびワークコイル88を有する二次的変圧器の主要部分として作用する。
【0049】
ゾーン98のパターン配線116は、底ゾーン96のパターン配線108よりも狭い幅を有する。このように、ゾーン98を構成するパターン配線の抵抗の合計は、サセプタコイル90全体の抵抗の合計の少なくとも20%である。さらに、パターン配線108と比較してパターン配線116の幅が狭いことは、別の目的、即ち、加熱中の鍋10の底壁12の加熱速度を等しくするのに役立つ。第1の実施形態の場合のように、鍋10の底壁12が、ワークコイル88に対して適切な位置にあり、ワークコイルに磁気的に結合される場合には、2つのエネルギ伝達メカニズムが働いている。これらの2つのメカニズムの大きい方は、引き起こされかつコイル90のフルパスに沿って移動する循環電流に起因するジュール加熱であり、その場合には、電流量は、コイル90の中の全ての接点で一定である。第2のエネルギ伝達メカニズムは、コイル90の各パターン配線で形成された渦電流に起因するジュール加熱である。これらの渦電流は、ワークコイル88の上に直接置かれかつ磁束がパターン配線を直接貫通するパターン配線エリアの内部だけに形成される。ワークコイル88は、コイル90の底ゾーン96よりも著しく小さいサイズなので、鍋10がワークコイル88の上に置かれた場合に、渦電流の大半は、ゾーン96の中に生じるであろう。渦電流は、同じ材料の中で(即ち、ゾーン96および98が同じ導電性材料で優先的に形成される)、ワークコイル88から生じる同じ交番磁界から生じるので、通常、ゾーン96のパターン配線108は、引き起こされた渦電流によるジュール加熱にさらされる唯一のパターン配線になるであろう。しかしながら、ゾーン98のパターン配線116の内のいくつかがコイル88の真上にくるように、鍋10がコイル88に対してオフセットした関係に置かれる場合には、幅が相対的に狭いパターン配線116は、ゾーン96のパターン配線108よりも実質的に少ない渦電流加熱を受けるであろう。ゾーン96のより幅が広いパターン配線108が、2つのメカニズムのジュール加熱(引き起こされた循環電流および引き起こされた渦電流)を受けると共に、ゾーン98のより幅が狭いパターン配線116が、ほとんど循環電流からのジュール加熱だけを受けると考えれば、ゾーン96および98のパターン配線の設計は、後者の誘導加熱中に鍋10の底壁12の全エリアにわたって受ける加熱速度を均一にする。即ち、ゾーン98のより幅が狭いパターン配線116は、ゾーン96のより幅が広いパターン配線108と比較して、単位長さ当たりより大きい電気抵抗を受ける。
【0050】
側壁のゾーン104は、対向する側壁16の内の一方の垂直表面を覆う、上方向に延びるコイル90の一部であり、同様に、ゾーン106は、他方の側壁16の垂直表面を覆う。ゾーン104および106は、変化する幅のパターン配線、即ちセグメント124〜128を有し、側壁16の表面エリア全体の加熱速度を変化させるように設計される。ポリマ鍋の内側表面の熱伝導性は、不十分なので、ゾーン104および106のパターン配線122によって与えられる加熱速度は、対応するポリマ表面に存在するかもしれない可変冷却負荷に対応するために、底壁12の近くでは相対的に高くかつ鍋10の上側エッジで外側に延びる縁22の近くでは低いのが好ましい。例えば、誘導加熱用のポリマ鍋10の内部に食物が置かれ、食物鍋の内部の温度を安全なレベルよりも高い所望の温度に維持する場合には、通常、鍋の底(コイル90のゾーン96および98によって覆われた)は、食物の少なくともある一部で覆われているであろう。しかしながら、ゾーン104および106によって覆われた側壁16に接触する食物の量は、食物が消費のために取り除かれるかまたは維持のために追加されるので、加熱サイクルの間ずっと変化するかもしれない。従って、コイルゾーン104および106に隣接した側壁は、変化した冷却負荷を受けるであろう。平均的には、鍋10の底壁12に最も近い側壁16の部分が、より多くの冷却負荷を受けるので、セグメント128を構成するパターン配線116の幅は、中間および上側のセグメント124および126のパターン配線と比較してより狭い。
【0051】
鍋底から包まれかつ端壁18に接触するコイルゾーン100および102は、ゾーン104および106と比較して同様の方法で設計される、即ち、セグメント138のパターン配線は、中間および最も上側のセグメント136および134よりも幅が狭い。これは、端壁18の同じタイプの区別された加熱を与える。
【0052】
スイッチ152は、212°F(100℃)で開くように設計された上昇時オープン型スイッチであり、スイッチが212°F(100℃)よりも数度低い温度で再び閉じる低いヒステリシスを有する。従って、隣接した鍋表面が212°F(100℃)を超えた場合には、スイッチ152は、結合された誘導加熱によるコイル90の中のあらゆる循環電流の形成を防ぐために開くであろう。もちろん、コイル88が磁界を生成し、ゾーン96がワークコイル88の真上にくる緊密に結合された位置に鍋が置かれた場合には、ゾーン96、およびゾーン98のより狭い範囲は、スイッチ152が開いても、引き起こされた渦電流加熱によるかなりの加熱を今まで通り受けるかもしれない。しかしながら、第1の実施形態に関して前述したように、誘導ヒータの負荷検出システムが、温度スイッチ152が開いた場合に生成される磁界のテストパルス以外のあらゆるものを防ぐので、そのような加熱は、無視できるであろう。以下、スイッチ152は、高閾値スイッチという。
【0053】
導電性配線156は、2つの重要な機能を果たす。第1は、ユーザに選定された保持温度を可能にすることであり、第2は、スイッチ152および158によって開閉された1時間当たりの鍋動作の温度スイッチのサイクル数を減らすことによって、鍋の寿命を延ばすことである。具体的には、配線156は、スイッチ152に似ているが175°F(79.4℃)の上昇時クローズ型スイッチ温度を有する温度スイッチ158を含む。このように、ゾーン96の隣接したパターン配線108が175°F(79.4℃)を超えた場合には、コイル90の実効抵抗が少なくとも20%低減されるように、スイッチ158が閉じるので、ゾーン98をバイパスしてゾーン96および104を電気的に接続させるであろう。コイル加熱素子の抵抗のこの急激な低減は、前述の負荷検出システムによって検出されることが可能である。従って、スイッチ158は、低閾値スイッチという。
【0054】
温度スイッチ158が再び開くまで循環電流がパターン配線116を通過しないので、スイッチ158が閉じている間には、ゾーン98のパターン配線116は、もはや循環電流によるジュール加熱を受けないであろう。さらに、鍋10がワークコイル88の上の中心に適切に配置された場合には、パターン配線116の内部での渦電流の形成によるジュール加熱は、生じないであろう。ゾーン98のパターン配線116によって覆われた鍋底の表面エリアが小さいので、鍋10の内部の食物は、実質的に均一な温度に維持されるであろう。
【0055】
第3の実施形態(
図7)−ハーフサイズの鍋用のダブルモジュールのサセプタコイル
図7は、
図1に示された合成樹脂のハーフサイズの鍋10aに使用するように意図された、2つの構成要素の誘導加熱コイルアセンブリ160を示す。コイルアセンブリ160は、一体の合成樹脂の裏当てシート165の上に形成された、同一かつ鏡像対称の2つのコイル162および164で構成される。コイル162、164は、互いに電気的に絶縁され、所定のワークコイル88に対して4分の1サイズの鍋用のコイルと同様に動作するように設計される。コイル162、164の性質は同一なので、コイル162だけが詳細に記載されるであろう。
【0056】
具体的には、コイル162は、パターン配線168を有する一次的な底ゾーン166と、ゾーン166を取り囲みかつパターン配線172で構成された周辺ゾーン170とを含み、パターン配線168は、接点173で始まり、パターン配線172に接点174で接続する。前述の実施形態の場合には、パターン配線168および172は、多重化された各矩形を定義し、その時のパターン配線172は、パターン配線168よりも幅が狭い状態である。
【0057】
さらに、コイル162は、ハーフサイズの鍋の対向する側壁の約2分の1の周りを上方向に包むように設計された、外側に延びかつ対向する1対のゾーン176および178を、鍋の端壁の内の一方の周りを上方向に包むように設計された端壁ゾーン180と共に含む。最後に、コイル162は、ゾーン166および170と共に鍋の底壁の約2分の1を覆う二次的底ゾーン182を含む。
【0058】
ゾーン176、178は、幅広い外側のセグメント188、より狭い幅の中間のセグメント190、およびセグメント190よりも狭い幅の最も内側のセグメント192を有する、同一かつ互いに鏡像対称のパターン配線184および186を有する。ゾーン180は、最も幅広い最も外側のパターン配線セグメント196、より狭い幅の中間のパターン配線セグメント198、および最も狭い幅の最も内側のパターン配線セグメント200を備えたパターン配線194を含む。二次的底ゾーン182は、一定の幅のパターン配線202を含む。
図7に示されるように、パターン配線184、186、および194は、全て蛇行セクションとして設計される。
【0059】
周辺ゾーン170のパターン配線172は、ゾーン182のパターン配線202に接点204で相互接続し、パターン配線202の反対側の端部は、ゾーン178のパターン配線186に接点206で相互接続する。ゾーン178のパターン配線186は、ゾーン180のパターン配線194に接点208で相互接続する。最後に、ゾーン180のパターン配線194は、ゾーン176のパターン配線184に相互接続し、そのようなパターン配線は、接点210で終了する。
【0060】
接点173および210の間には、配線212が設けられ、接点以外の他の全てのパターン配線から電気的に絶縁される。配線212は、前の実施形態で前述したタイプの温度スイッチ214およびヒューズ216を含む。接点174および204の間には、電気的に絶縁された別の配線218が設けられ、温度スイッチ220を備える。スイッチ214は、高閾値スイッチであるのに対して、スイッチ220は、低閾値スイッチである。スイッチ214および220、ならびにヒューズ216は、
図6の第2の実施形態に関して前述したように、同様に動作する。
【0061】
好ましい形態では、コイル162および164は、それぞれ、個別の関連した誘導ヒータ89に対して同様に、かつ
図6の一実施形態のコイル90と同様に作用する。従って、それらは、コイルモジュールになると共に、同一の誘導ヒータ89のアレイを使用して、鍋10、10a、および10bのようなそれぞれ異なる鍋の組み合わせを調節できるようにするように考慮されるかもしれない。
【0062】
第4の実施形態(
図1および2)−食物保持鍋を加熱するための同一の誘導ヒータのネットワークに接続されたアレイを使用した誘導加熱加温テーブル
図1および2は、デッキ226を支持する垂直レッグ224を有する食物加温または加熱テーブル222を示す。デッキ226は、凹部が形成され、デッキの上側表面よりも下方にガラスまたはセラミック材料で形成された非導電性の底壁228を有する。底壁228の下側には、それぞれワークコイル88を有する合計8つの同一の誘導ヒータ89が、そのワークコイルが露出した状態で固定される。8つのヒータ89がデッキ226の長手方向に沿って2つ1組で配置されていることが分かるであろう。凹部が形成されたデッキは、
図1の左側端部に示された1対の4分の1サイズの鍋10、鍋10に直接隣接したハーフサイズの鍋10a、鍋10aに隣接したフルサイズの鍋10bのような様々な食物保持鍋を保持するように設計される。前述のように、4分の1サイズの鍋10のそれぞれは、単一のサセプタコイル24を備えるのに対して、ハーフサイズの鍋10aは、同一のコイル162、164を有するコイルアセンブリ160を備える。フルサイズの鍋10bは、それぞれコイル162、164を有する2つのコイルアセンブリ160に相当する物を有する。
【0063】
図8は、1対の誘導ヒータ89を模式的に示し、それらと中央のデジタルプロセッサまたは制御ユニット230との相互接続を示す。さらに、1つ以上の誘導ヒータに関連付けられた渦電流温度計232の内の1つが図示される。テーブル222に関しては、それぞれ制御ユニット230に動作可能に結合された、合計8つの誘導ヒータおよび少なくとも1つの渦電流温度計があることが認識されるであろう。示された一実施形態では、改良された渦電流温度計システムからの温度フィードバックを用いた温度調節方法を使用するそれぞれの誘導ヒータ89は、鍋の平坦な薄いディスク30を査問するために関連した磁界発生コイル242および磁界受信コイル248を有しなければならないが、単一の渦電流温度計232が、同じ波形発生器244および信号処理回路252で動作する複数の磁界発生コイル242および複数の磁界受信コイル248を有することもできる。複数の発生/受信コイルを備えたそのような多重の渦電流温度計は、各誘導ヒータ89によって加熱された個別のコイルアセンブリにそれぞれ関連付けられた複数の平坦な薄いディスク30から中央の制御ユニットに、温度情報を与えるかもしれない。
【0064】
前述のように、それぞれの誘導ヒータ89は、ワークコイル88、ならびにインバータ回路89aおよびマイクロプロセッサ89bを含む制御電子回路を有する。それぞれのヒータ89のマイクロプロセッサ89bは、制御ユニット230の一部を形成する通信マルチプレクサ234に動作可能に接続される。さらに、制御ユニットは、制御マイクロプロセッサ236、ディスプレイ238、およびユーザ入力240を含む。それぞれの渦電流温度計は、ディスクの温度を測定し、それによって、関連したコイル24とさらには鍋またはその鍋の関連した部分の加熱を制御するために、コイル24の1つ以上のディスク30を周期的に査問するように設計される。それぞれの温度計232は、磁界査問246を創出するために波形発生器244によって駆動される磁界発生コイル242を含む。さらに、温度計232は、ディスク30から磁界応答250を受信する磁界受信コイル248を含む。コイル248は、インターフェース254を有する信号処理回路252に結合される。最後に、回路252は、ユニット230の通信マルチプレクサ234に接続される。
【0065】
それぞれの誘導ヒータ89は、1つ以上の制御アルゴリズム、例えば、前述のインピーダンス検出温度制御システムを制御するためのアルゴリズム、および/またはインピーダンス検出温度制御および渦電流温度計232の連続的な閉ループフィードバック温度制御の組み合わせを使用したアルゴリズムを統括管理することができるマイクロプロセッサ89bを使用する。第2に、それぞれの誘導ヒータ89は、多数の個別のパワーレベルを出力する能力を有するのが好ましい、即ち、好ましい設計では、それぞれの誘導ヒータ89は、0〜9に番号付けされた10個の個別のパワーレベルに到達させるために、そのインバータ出力のデューティサイクルを使用する。パワーレベル0は、0%のデューティサイクル(60サイクル当たりのインバータサイクル数)を有し、パワーレベル9は、98%のデューティサイクルを有し、パワーレベル1〜8は、レベル0および9の間に等間隔に設定される。第3に、それぞれの誘導ヒータ89は、前述のような、ならびに米国特許第6,504,135号および第5,954,984号に開示されるような、無負荷検出器を備える。最後に、それぞれの誘導ヒータ89は、ユーザが個別のインバータ用に「高」、「中」、および「低」温度設定を少なくとも選択できるようにする、入力240のような外部ユーザインターフェースからの入力を受け取ることができるのが好ましい。以下で検討するインピーダンス変化制御アルゴリズムに記載のように、いくつかの鍋状態が検出された場合には、この入力は、最初のパワーレベルに影響するであろう。
【0066】
個別の誘導ヒータ89のための好ましい取捨選択可能な機能は、ヒータがマスタ/スレーブの関係で互いにリンクされる能力を含む。リンクされたマスタ/スレーブの低ワット数かつ低コストの誘導ヒータは、生成された結果生じる磁界が同相になるように、ゼロクロスで同期化されたそれらのインバータを有することができる。
【0067】
もちろん、インピーダンス変化フィードバック制御に加えて、温度フィードバック制御用の渦電流温度計232が使用される場合には、ヒータ89は、渦電流温度計のリーダ、即ち、磁界受信コイル248、信号処理回路252、およびインターフェース254を含まなければならない。それぞれの誘導ヒータ89は、リーダの磁界発生コイルおよび磁界受信コイルが単に単一の容器に結合するように、それ自身の専用の渦電流温度計のリーダに電子的に一体化されることが可能である。あるいは、複数の誘導ヒータ89に温度フィードバック情報を与えるために、単一の信号処理回路252および磁界発生コイル242、ならびに複数の関連した磁界発生コイル242および磁界受信コイル248を備えた多重(多チャンネル)の渦電流温度計が使用されても良い。
【0068】
渦電流温度計232は、導電性部材(例えばディスク30)の中に渦電流を引き起こすことによって、鍋のサセプタコイルの温度を測定する方法および装置を与え、そこでは、時間と共に実質的に直線的に変化する大きさ(即ち、実際の直線性の約±30%以下)を有する磁界にディスクをさらすことによって、対応する渦電流の大きさが時間と共に指数関数的に変化するように、渦電流が引き起こされる。次に、指数関数的な電流量の変化の特性時定数が決定され、この特性時定数を使用して鍋のコイル温度が計算される。
【0069】
好ましい形態では、コイル242は、ディスク30の中の渦電流を引き起こすために三角波形の交流電流を使用して駆動され、受信コイルアセンブリの磁界受信コイル248、信号処理回路252、インターフェース254は、対応する渦電流が引き起こした磁界を検出するために設けられる。次に、受信コイルアセンブリの出力電圧は、特性時定数を決定するために使用される。受信コイル248は、電気的に直列接続だが互いに逆位相の、磁界送信コイルの両側に位置する1対の受信コイルを有するという特徴を有する。温度測定を容易にするために、導電性部材がない場合には、受信コイルアセンブリからの電圧出力がゼロになるように受信コイルが補正される。
【0070】
あるいは、1つの渦電流温度計のリーダが、その波形発生器および信号処理回路がそのインターフェースを通って複数の誘導ヒータと通信するために作用するように、多チャンネルの送信/受信を有するように作製されるかもしれない。いずれの場合も、そのワークコイル88の出力を制御し、さらには電磁的に結合された容器のサセプタコイルの温度を制御するために、それぞれの容器のサセプタコイルの上の、ディスク30のような少なくとも1つの薄い導電性の構成要素の温度が、適切な誘導ヒータのマイクロプロセッサ89bによって使用されるであろう。好ましい実施形態では、ユニットが、パワーレベル9(98%は当番で循環します)にセットされた場合には、ワークコイル88が発生させた、関連した鍋の方向へのほぼ全ての磁界の磁束が、サセプタコイルゾーンの長方形のループを通過するので、関連したモジュール式サセプタコイルには、それぞれの誘導ヒータ89が150〜250ワットの間で結合することができる。
【0071】
図2に最も良く見られるように、テーブル222のモジュール式設計の重要な利点は、誘導ヒータ89の内のいずれか1つが、動作中に故障した場合には、安価なインバータ回路89aを簡単に低コストで置き換えることができることである。
【0072】
動作
テーブル222の動作がユニット230を通して制御されることが直ぐに明らかになるであろう。ユーザ入力の所望の温度は、それぞれ個別の誘導ヒータ89の動作のために変動し、その選定によって、関連したサセプタコイルとさらには鍋または鍋の一部のそれぞれを加熱するために、関連したワークコイル88の動作が始まる。その加熱は、それぞれのヒータ89のためのアルゴリズムによって、インピーダンス変化および/または渦電流温度計の温度制御を使用して制御される。
【0073】
第2の実施形態のようなインピーダンス変化温度制御だけを使用するシステム用の誘導ヒータアルゴリズム説明書
第2の実施形態(
図6)の誘導加熱可能なサセプタコイル90の設計は、複数のコイルゾーン96〜106、高および低閾値スイッチ152および158、ならびに温度ヒューズ154を使用する。従って、サセプタコイル90と誘導ヒータ89の内の1つのワークコイル88との相互作用の結果として、ユーザに選定された複数のそれぞれ異なる温度で、またはその温度付近で温度制御用の論理的なアルゴリズムを実行するために、誘導ヒータのマイクロプロセッサ89bを特定して使用することができる複数の個別の状態が得られる。以下の状態図(表1)は、これらの各状態を定義する。表2、3、および4には、本発明の記載されたモジュール式サセプタコイルを有するあらゆるサイズの鍋の温度を調節するために使用されるシンプルかつ典型的な制御アルゴリズムが記載されている。ユーザが入力240で「高」(表2)、「中」(表3)、または「低」(表4)を選択した場合には、ヒータ89のマイクロプロセッサ89bによって表2〜4のアルゴリズムが使用される。
【0075】
表1の状態は、前述のように、関連した誘導ヒータ89が10個の個別のパワーレベルを有すると仮定した状態である。
【0076】
表1で仮定したのは、誘導ヒータが、シンプルにするために0から9に番号付けされた10個の個別のパワーレベルを有し、パワーレベル0は、0%のデューティサイクル(60サイクル当たりのインバータサイクル数)を有し、パワーレベル9は、98%のデューティサイクル有し、パワーレベル1〜8は、その間に等間隔に設定される。
【0077】
「状態フラグ」は、インバータのパワーレベルをセットしたり、ひょっとすると状態フラグの値を変更したりするために誘導ヒータの負荷検出システムによって検出された負荷の現在値および/または負荷の変化と共に使用されるソフトウェアアルゴリズムの中でセットされる(デフォルトでは0)。以下のシンプルな論理ステップは、いくつかの現在の状況(現在の状態フラグの値、検出された負荷の値、および検出された負荷の変化)に基づいて、結合したアクション(状態フラグの設定およびパワーレベルの設定)が生じるものを定義するものである。一般に、「状態フラグ」の設定は、システム状態を反映する(表1を参照すること)。
【0078】
1)使用された「最後のパワーレベル」、即ち、任意の係属中の結合したアクションの直前のパワーレベル、および2)使用された「第1の維持パワーレベル」、即ち、状態フラグが1と等しくなり、鍋の上の低温閾値スイッチがゾーン98のコイル加熱素子を短絡させるために閉じたことを負荷検出システムが検出した時にセットされた最後のパワーレベルの、2つのソフトウェアメモリの値が絶えず更新される。
【0079】
重要なのは、本発明の誘導ヒータが負荷閾値を使用した負荷検出システムを有し、その負荷閾値よりも低い負荷では、インバータがワークコイルの中で交流電流の(持続時間が数ミリ秒の)テストパルスだけを生成することを思い出すことである。低閾値よりも大きいが最大値よりも小さい重さの(容器からの)負荷が検出された場合だけは、誘導ヒータの共振回路が共振点の近くで動作する。従って、誘導ヒータのワークコイルの上にスチール鍋が置かれた場合には、負荷検出システムは、重さが範囲外の負荷を検出し、インバータ共振回路は、共振点からはるか遠く離れた周波数で振動するであろう。即ち、インバータは、スタンバイモード(状態0)に移行するであろう。
【0080】
さらに、この一実施形態では、ユーザは、誘導ヒータの制御インターフェースの上で、「高」、「中」、または「低」のいずれかを選択することによって、鍋用の3つの個別の温度設定を選択しても良い。その設定によって、以下に記載されるような、表2(「高」温度設定用のアルゴリズム説明書)、表3(「中」温度設定用のアルゴリズム説明書)、および表4(「中」温度設定用のアルゴリズム説明書)の中のソフトウェアアルゴリズムが単に変更される。表2、3、および4に見られるように、高、中、および低用のアルゴリズムの主な相違点は、状態フラグが2と等しい場合のパワーレベルの変化と同様に、「第1の維持パワーレベル」のデフォルト値(高用の9、中用の7、低用の5)である。
【0081】
もちろん、以下に記載されるこれらのシンプルなアルゴリズムを、例えば、誘導ヒータの内部のサイクルタイミングを用いた時間計算を使用することによって、より複雑にすることができる。誘導ヒータのマイクロプロセッサは、状態フラグが値2のままである間(最初に値1から2に変化した時から、値2から3に変化した時まで)に経過する60(または50)Hzのサイクル数を測定することができる。この経過時間を使用することによって、「低負荷」状況が検出される(高い閾値スイッチが開く場合)ごとに低減されるべきパワーレベルの数と同様に、「第1の維持パワーレベル」の値を、より正確にセットすることができる。
【0082】
表2:高パワー設定用の誘導ヒータアルゴリズム説明書
【表2】
【0083】
表3:中パワー設定用の誘導ヒータアルゴリズム説明書
【表3】
【0084】
表4:低パワー設定用の誘導ヒータアルゴリズム説明書
【表4】
インピーダンス変化温度制御および渦電流温度計の温度制御の両方を使用したシステムの制御(
図4)
【0085】
再度説明すると、1つ以上の第1の実施形態のモジュール式サセプタコイル24を使用した鍋は、少なくとも1つの温度スイッチを有し、その温度スイッチは、動作時に、関連した誘導ヒータのワークコイル88に対して鍋が有するインピーダンスを変化させる。例えば、
図4では、高閾値スイッチ84は、212°F(100℃)で完全に加熱素子の回路を開き、その後、コイル24の中には循環電流を引き起こすことができない。さらに、第1の実施形態は、1つ以上の薄い導電性ディスク30を使用して、関連した誘導ヒータのマイクロプロセッサが、鍋の温度調節を可能にするフィードバックとして使用することができる周期的な温度情報を収集できるようにする。
【0086】
この場合、標準的なPID制御アルゴリズムが、適切な誘導ヒータのパワーレベルをセットし、鍋(またはその中の食物)のためにユーザによって選定された(またはプリセットされた)温度に到達させ、その温度を保持できるようにするために、誘導ヒータのマイクロプロセッサ89b(および/または誘導ヒータのマイクロプロセッサ89bと通信する中央の制御マイクロプロセッサ236)は、渦電流温度計232からのフィードバック情報を使用することができる。これは、誘導ヒータの上の鍋の使用全体にわたる最も優れた温度調節方法になるであろう。
【0087】
しかしながら、高閾値スイッチ84によって与えられるインピーダンス変化情報を使用して、複数の方法の中でこの一次的温度制御方法を増大させることができる。第1に、それを、単に制限する制御温度として使用することができる。高閾値スイッチ84が開いた時点で、(周期的なテストパルス以外によるものを除いて)誘導ヒータ89が鍋にエネルギを伝達しなくなるので、このスイッチ84が故障して閉じた状態(その場合には、温度ヒューズ86が破滅的な高温を防ぐであろう)にならない限り、鍋の温度は、高閾値スイッチの温度を常に超えることができないに違いない。
【0088】
第2に、高閾値スイッチ84を使用して、定期的に渦電流温度計232を較正することができる。高閾値スイッチの温度は、公知であり、誘導ヒータの上の鍋の有無は、渦電流温度計の磁界受信コイルの付近の薄い導電性ディスクの有無によって識別することができるので、誘導ヒータは、高閾値スイッチが動作するまで、容器の誘導加熱回路の周期的な加熱を実行することができる。その時点で、鍋が今まで通り誘導ヒータの上の適切な場所にあることが渦電流温度計232によって検出された場合には、誘導ヒータのマイクロプロセッサ89bは、薄い導電性ディスク30が公知の較正温度(212°F(100℃))になったことを渦電流温度計232に通信することができ、渦電流温度計の信号処理ユニットは、自分自身を212°F(100℃)に自己較正することができる。
【0089】
当業者は、本発明の原理が、本書の中に具体的に記載されたもの以外の、様々なそれぞれ異なる材料、寸法、および技術を使用して実施されても良いことを認識するであろう。例えば、現在はポリスルホン樹脂で製造された食物鍋の使用が好まれているが、選択された樹脂が使用状況に耐えることができ、適切な熱伝導特性を有する限り、他のタイプの合成樹脂材料を使用しても良い。同様に、記載されたサセプタコイルは、合成樹脂の裏当てに装着された銅のパターン配線を有する。銅の代わりに、例えば銀またはカーボンインクのような他の導電性材料を使用することができる。さらに、裏当てシートを使用せずに、合成樹脂の鍋自体の表面にサセプタのパターン配線を直接装着させることができる。さらに、サセプタコイルは、本書の中に具体的に図示され、記載されたコイルと比較して異なる寸法または形状を有することができる。さらに、好ましい温度検出ディスクは、0.08インチ(2.032mm)の厚さおよび1インチ(25.4mm)の直径を有する純粋な銅シートで製造されるが、銅の代わりに、異なる厚さおよび寸法の他の導電性金属または材料を使用することができる。さらに、検出ディスクの配置は、設計者が取捨選択可能である。