特許第6441306号(P6441306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441306
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/06 20060101AFI20181210BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20181210BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20181210BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20181210BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H05B33/06
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/04
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-503907(P2016-503907)
(86)(22)【出願日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2014054381
(87)【国際公開番号】WO2015125309
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】大峡 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】島崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】駒田 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】奥山 賢一
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−060738(JP,A)
【文献】 特開2004−158442(JP,A)
【文献】 特開2012−103698(JP,A)
【文献】 特開2001−311954(JP,A)
【文献】 特開2011−232654(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/190638(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/017075(WO,A1)
【文献】 特開2005−346982(JP,A)
【文献】 特開2008−004865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−28
H01L 51/50−56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成された発光素子と、
前記基板に形成され、前記発光素子に接続する配線と、
を備え、
前記配線の一部は絶縁層で覆われており、
前記配線は、第1層と、前記第1層の上に位置していて前記第1層よりも薄い第2層と、前記第1層の下に位置していて前記第2層よりも厚い第3層と、を備え、
前記第1層の側面は、前記第2層に近づくにつれて前記第1層の幅が狭くなる方向に傾斜しており、
前記第2層の厚さは20nm以下である発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第3層の厚さは40nm以上60nm以下である発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第2層の厚さは5nm以上である発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発光装置において、
前記絶縁層は開口を有しており、
前記発光素子は、前記開口に形成されており、
前記第2層の一部は前記絶縁層に接している発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発光装置において、
前記絶縁層のうち前記配線と重なる領域の一部には、前記配線から電気的に独立している導電層が位置している発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置において、
前記第1層はアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、
前記第2層は、モリブデン又はモリブデン合金からなる発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置において、
前記基板の端子に接続しているボンディングワイヤを備え、
前記配線は前記端子を前記発光素子に接続している発光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の発光装置において、
前記端子が前記配線と連続して同じ構造で形成され、
前記第1層と前記ボンディングワイヤが接合している発光装置。
【請求項9】
請求項6に記載の発光装置において、
前記基板の端子に接続している異方性導電膜を備え、
前記端子が前記配線と連続して同じ構造で形成され、
前記第1層と前記異方性導電膜が接合している発光装置。
【請求項10】
請求項6に記載の発光装置において、
前記基板に形成され、前記発光素子及び前記絶縁層を被覆する被覆膜を備える発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、発光装置の光源に有機EL素子が用いられるようになっている。有機EL素子は、有機層を2つの電極で挟んだ構成を有している。そして、これら2つの電極は、配線を介して端子に接続している。
【0003】
一方、発光装置には、有機EL素子の発光領域を定めるために、絶縁層が設けられている。この絶縁層は、有機EL素子の周囲を囲んでいる。そして、有機EL素子の電極に接続する配線は、厚さ方向で見た場合、この絶縁層と基板の間を延在する箇所がある。
【0004】
特許文献1には、有機EL素子に接続する配線として、2つのMo合金層の間にAl−Nd層を挟むことが記載されている。特許文献1において、Mo合金層の厚さは50〜200nmであり、Al−Nd層の厚さは200〜400nmである。
【0005】
特許文献2には、液晶表示装置の配線に、アルミニウム層を他の金属層で挟んだ3層構造の配線を用いることが記載されている。特許文献2において、この配線の上に透明電極層が形成されている。特許文献2には、さらに、アルミニウム層の側面が他の2つの金属層の側面に対して窪むため、透明電極層が配線の側面から剥がれることが記載されている。
【0006】
なお、特許文献3には、配線の一部に透明導電膜と金属膜の積層構造を用いることが記載されている。特許文献3において、配線の金属層には、クロム、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、モリブデン、チタン、タングステン、タンタルなどの単層又はこれらの金属の2層〜3層の積層膜が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−108437号公報
【特許文献2】特開2004−158826号公報
【特許文献3】特開2003−163080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の発光装置の有機EL素子の電極に接続する配線構造の例を図1に示す。基板500上に形成された配線510の一部は、有機EL素子の発光領域を定めるための絶縁層520に覆われている。ここで、配線510を、第1層512の上に第2層514を積層した構造にした場合、配線510をパターニングする際に、円Aのように第1層512の側面が第2層514の側面よりも内側に入る。この場合、第2層514の端部が折れて絶縁層520を突き破る可能性が出てくる。この場合、発光装置に電極と配線のショートなどの不具合が生じる可能性がでてくる。また、絶縁膜520の成膜不良により、絶縁膜520内に空洞522が生じる可能性がでてくる。この場合、絶縁膜の成膜不良などにより発光装置に不具合が生じる可能性が出てくる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題としては、有機EL素子に接続する配線を、第1層の上に第2層を積層した構造にした場合において、配線構造や絶縁膜の成膜状態による発光装置の不具合を回避することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、基板と、
前記基板に形成され、開口を有する絶縁層と、
前記開口に形成された発光素子と、
前記基板に形成され、前記発光素子に接続する配線と、
を備え、
前記配線の一部は前記絶縁膜で覆われており、
前記配線は、第1層と、前記第1層の上に形成されていて前記第1層よりも膜厚が薄い第2層を備え、
前記第2層の厚さは20nm以下である発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0012】
図1】課題を説明するための断面図である。
図2】実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図3図2から絶縁層を取り除いた図である。
図4】有機EL素子の構成を説明するための断面図である。
図5図3のA−A断面図である。
図6】実施例1に係る発光装置の平面図である。
図7図6から封止膜、隔壁、第2電極、有機層、及び絶縁層を取り除いた図である。
図8図6のB−B断面図である。
図9図6のC−C断面図である。
図10図6のD−D断面図である。
図11図6のE−E断面図である。
図12図6のG−G断面図である。
図13】実施例2に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図14図13のE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図2は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す平面図である。図3は、図2から絶縁層120を取り除いた図である。図4は、有機EL素子102の構成を説明するための断面図である。実施形態に係る発光装置10は、基板100、絶縁層120、有機EL素子102、及び配線300を備えている。絶縁層120は基板100に形成されており、開口122を有している。有機EL素子102は、絶縁層120の開口122に形成されている。配線300は基板100に形成されており、有機EL素子102に接続している。配線300の一部は絶縁層120に覆われている。
【0015】
配線300は、第1層324及び第2層326を備えている。第2層326は第1層324の上に形成されている。第2層326の膜厚は、第1層324よりも膜厚が薄く、50nm以下であり、好ましくは20nm以下である。第2層326の膜厚は、5nm以上であるのが好ましい。発光装置10は、例えばディスプレイであるが、照明装置であってもよい。以下、詳細に説明する。
【0016】
基板100は、たとえばガラス基板や樹脂基板などの透明基板である。基板100は、可撓性を有していてもよい。この場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。この場合においても、基板100は無機材料及び有機材料のいずれで形成されていてもよい。基板100は、例えば矩形などの多角形である。
【0017】
有機EL素子102は、図4に示すように、第1電極110及び第2電極150の間に有機層140を挟んだ構成を有している。有機層140は、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層をこの順に積層した構成を有している。第1電極110が陽極の場合は、正孔輸送層が第1電極110の上に形成される。また、第1電極110が陰極の場合は、電子輸送層が第1電極110の上に形成される。なお、正孔輸送層と発光層の間に正孔注入層が設けられていても良いし、電子輸送層と発光層の間に電子注入層が設けられていても良い。有機層140の各層、塗布法によって形成されても蒸着法によって形成されてもよく、一部を塗布法、残りを蒸着法で形成しても良い。なお、有機層140は蒸着材料を用いて蒸着法で形成してもよく、また、塗布材料を用いて、インクジェット法、印刷法、スプレー法で形成してもよい。
【0018】
第1電極110及び第2電極150のうち少なくとも一方は透光性の電極になっている。また、残りの電極は、例えばAlやAgなどの金属によって形成されている。透光性の電極の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の無機材料、またはポリチオフェン誘導体などの導電性高分子、又は銀もしくは炭素からなるナノワイヤを利用した網目状電極である。本図に示す例では、ボトムエミッション型の有機EL素子102であって、第1電極110は透光性の電極になっており、第2電極150は、Alなど光を反射する電極になっている。また、トップエミッション型の有機EL素子102であって、基板100の上に第1電極110、有機層140、及び第2電極150をこの順に積層した構成を有している場合、第1電極110はAlなど光を反射する電極になっており、第2電極150は透光性の電極になっている。また、両方の電極(第1電極110、第2電極150)を透光性の電極として、透光型の発光装置としても良い(デュアルエミッション型)。
【0019】
絶縁層120は、例えばポリイミド系樹脂などの感光性の樹脂であり、露光及び現像されることによって、所望のパターンに形成されている。絶縁層120としては、例えば、ポジ型の感光性樹脂が用いられる。なお、絶縁層120はポリイミド系樹脂以外の樹脂、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂であっても良い。
【0020】
絶縁層120には開口122が形成されている。そして開口122を用いて有機EL素子102による発光領域が形成されている。発光装置10がディスプレイの場合、絶縁層120には複数の開口122が形成されており、これら複数の開口122を用いて複数の有機EL素子102が形成されている。また発光装置10が照明装置の場合、絶縁層120には一つの開口122が形成されている場合もあれば、複数の開口122が形成されている場合もある。後者の場合、これら複数の開口122を用いて複数の有機EL素子102が形成されている。
【0021】
配線300は、第1層324の上に第2層326を積層した構成を有している。配線300は、例えば有機EL素子102に接続する配線である。第1層324は、例えばAl又はAl合金で形成されており、第2層326は、Mo又はMo合金で形成されている。第1層324がAlNd合金で形成されている場合、第2層326は、MoNb合金で形成されている。
【0022】
図5は、図3のA−A断面図である。本図に示す例では、配線300は、透明導電層310の上に導電層320を積層した構成を有している。透明導電層310は、例えば有機EL素子102が有する2つの電極のうち基板100側に位置する電極と同様の材料(例えば透光性の導電材料)によって形成されている。そして導電層320は、第3層322、第1層324、及び第2層326をこの順に積層した構成を有している。第3層322は、第2層326と同様の材料により形成されており、第2層326よりも厚い。第3層322の厚さは、例えば40nm以上60nm以下である。そして、第1層324の側面は、上に行くにつれて第1層324の幅が細くなる方向に傾斜している。なお、第1層324の厚さは、例えば100nm以上1000nm以下である。
【0023】
また、図5に示す断面において、第2層326は絶縁層120に接している。言い換えると、第2層326の一部は絶縁層120に接している。
【0024】
ここで、有機EL素子102の配線は、透明導電層310としてITO、導電層320としてアルミニウムを利用する場合が多い。特に、導電層320は、MoNb/AlNd/MoNbの積層構造を採用している場合が多い。この理由は、以下の通りである。
【0025】
まず、アルミニウムとITOとを直接接触させた場合、電気化学的効果により、ITOの化学的耐性が弱まる。また、アルミニウムとITOとの電気的な接触は粗悪であり、これらの間の接触抵抗は経時劣化してしまう。これらの問題を避けるため、アルミニウムとITOとの間にモリブデン(Mo)、クロム(Cr)など異種金属を介在させ、直接の接触を絶つことが好ましい。特に、Moは、アルミニウムとITOとの反応を遮断し、両者との接触抵抗も低い。
【0026】
更に、アルミニウムやアルミニウムにネオジウム(Nd)を含有したAlNd合金には酸化しやすいものが多い。導電層320を形成する材料が酸化された場合、その酸化物中の酸素がアルミニウムやAlNd合金に拡散するおそれが生じる。この現象を抑制するために、特定の数量のニオブ(Nb)を含有したMoNb合金層を導電層320の表面に保護膜として形成する。この保護層(MoNb)およびAlNd合金の導電層320は燐酸、酢酸、及び硝酸の混合水溶液よりなるエッチング液で一括エッチングすることも可能である。有機EL素子を用いた一般的な発光装置において、絶縁層120の材料であるポリイミド膜をスピンコーティングし、フォトリソ工程でパターニングを行った後、320℃程度の温度で熱処理することにより、絶縁層120を作成する。この熱処理により、導電層320のAlNd合金の抵抗を低くすることができる。この理由は、熱処理の熱でNdがAlの粒界に移動するためと考えられる。
【0027】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100上に第1電極110となる導電層を形成する。次いで、この導電層をエッチング(例えばドライエッチング又はウェットエッチング)などを利用し、選択的に除去する。これにより、基板100上には、第1電極110及び配線300の透明導電層310が形成される。
【0028】
次いで、基板100上及び透明導電層310上に、配線300の第3層322となる導電層、第1層324となる導電層、及び第2層326となる導電層をこの順に形成する。これらの各層は、例えばスパッタリング法や蒸着法を用いて形成される。次いで、これらの導電層の上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてエッチング(例えばウェットエッチング)を行う。これにより、透明導電層310上には導電層320が形成される。
【0029】
ここで、第1層324は第2層326よりもエッチングされやすい。このため、第2層326を厚く形成した場合、第2層326のうちレジストパターンで覆われていない領域が除去される前に、第1層324が側面からエッチングされていく。このため、第1層324の側面は第2層326の側面よりも配線300の内側に位置してしまう。これに対して本実施形態では、第2層326の厚さは20nm以下である。このため、第1層324の側面が第2層326の側面よりも配線300の内側に位置することを抑制できる。なお、この結果、第1層324の側面は、上に行くにつれて第1層324の幅が狭くなる方向に傾斜する。
【0030】
なお、第2層326の厚さが5nm未満の場合、このエッチングにおいて第2層326の全てが除去される可能性が出てくる。この場合、第1層324もエッチングによって除去される可能性が高くなる。
【0031】
次いで、基板100上、第1電極110上、及び配線300に絶縁層を形成し、この絶縁層を、薬液(例えば現像液)を利用して選択的に除去する。これにより、絶縁層120及び開口122が形成される。絶縁層120が感光性の絶縁層で形成されている場合、絶縁層120及び開口122は、露光処理及び現像処理によって形成される。絶縁層120がポリイミドで形成されている場合、絶縁層120には、さらに加熱処理が行われる。これにより、絶縁層120のイミド化が進む。
【0032】
次いで、開口122内に有機層140を形成する。有機層140は、全ての層を塗布法によって形成されてもよいし、全ての層を蒸着法によって形成されてもよいし、一部を塗布法、残りを蒸着法で形成しても良い。有機層140を構成する少なくとも一つの層(例えば正孔輸送層)は、例えばスプレー塗布、ディスペンサー塗布、インクジェット、又は印刷などの塗布法を用いて形成されてもよい。なお、有機層140の残りの層は、例えば蒸着法を用いて形成されるが、これらの層も塗布法を用いて形成されてもよい。
【0033】
次いで、有機層140上に第2電極150を、例えば蒸着法やスパッタリング法を用いて形成する。
【0034】
以上、本実施形態によれば、第2層326の厚さは20nm以下である。このため、エッチングによって配線300を形成する際に、第1層324の側面が第2層326の側面よりも配線300の内側に位置することを抑制できる。従って、第2層326の端部が折れて絶縁層120を突き破ることを抑制できる。
【0035】
また、第2層326の厚さは20nm以下であるため、配線300の端部にボンディングワイヤを接続するときに、第2層326は割れやすい。従って、ボンディングワイヤを容易に第1層324に接続することができる。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
図6は、実施例1に係る発光装置10の平面図である。図7は、図6から封止膜210、隔壁170、第2電極150、有機層140、及び絶縁層120を取り除いた図である。図8図6のB−B断面図であり、図9図6のC−C断面図であり、図10図6のD−D断面図である。図11図6のE−E断面図である。なお、図6のF−F断面図も、図11と同様である。図12は、図6のG−G断面図である。本図に示す発光装置10は、例えばディスプレイとして用いられる。
【0037】
発光装置10は、基板100、第1電極110、有機EL素子102、絶縁層120、複数の開口122、複数の開口124、複数の引出配線130、有機層140、第2電極150、複数の引出配線160、及び複数の隔壁170を有している。引出配線130,160は、実施形態における配線300に対応している。
【0038】
第1電極110は、基板100の第1面側に形成され、第1方向(図6におけるY方向)にライン状に延在している。第1電極110は透光性の材料によって形成されている。第1電極110は、光が透過する程度に薄い金属薄膜であっても良い。そして第1電極110の端部は、引出配線130に接続している。
【0039】
引出配線130は、第1電極110を端子に接続する配線である。本図に示す例では、引出配線130の一端側は第1電極110に接続しており、引出配線130の他端側は端子となっている。引出配線130は、実施形態における配線300の一例であり、実施形態に示した配線300と同様の構成を有している。引出配線130の各層の構成は、実施形態と同様である。
【0040】
絶縁層120は、図6、及び図8図10に示すように、複数の第1電極110上及びその間の領域に形成されている。絶縁層120には、複数の開口122及び複数の開口124が形成されている。複数の第2電極150は、詳細を後述するように、第1電極110と交差する方向(例えば直交する方向:図6におけるX方向)に互いに平行に延在している。そして、複数の第2電極150の間には、詳細を後述する隔壁170が延在している。開口122は、平面視で第1電極110と第2電極150の交点に位置している。複数の開口122は、所定の間隔を空けて設けられている。そして、複数の開口122は、第1電極110が延在する方向(図6におけるY方向)に並んでいる。また、複数の開口122は、第2電極150の延在方向(図6におけるX方向)にも並んでいる。このため、複数の開口122はマトリクスを構成するように配置されていることになる。
【0041】
開口124は、平面視で複数の第2電極150のそれぞれの一端側に位置している。また開口124は、開口122が構成するマトリクスの一辺に沿って配置されている。そしてこの一辺に沿う方向(例えば図6におけるY方向、すなわち第1電極110に沿う方向)で見た場合、開口124は、所定の間隔で配置されている。開口124からは、引出配線160の一部分が露出している。そして、引出配線160は、開口124を介して第2電極150に接続している。言い換えると、複数の引出配線160は、互いに異なる有機EL素子102に接続している。
【0042】
引出配線160は、第2電極150を端子に接続する配線である。引出配線160の一端側は開口124の下に位置しており、引出配線160の他端側は、絶縁層120の外部に引き出されている。そして本図に示す例では、引出配線160の他端側が端子となっている。引出配線160は、実施形態における配線300の一例である。
【0043】
また、引出配線160の一部は絶縁層120によって覆われている。そして、図6及び図12に示すように、第2電極150(導電層)は、絶縁層120のうち引出配線160が位置している領域の上にも形成されている。このため第2電極150は、その第2電極150とは異なる第2電極150に接続する引出配線160(すなわちその第2電極150から電気的に独立している引出配線160)と、絶縁層120を介して対向している。従って、引出配線160の第2層326の端部が折れて絶縁層120を突き破った場合、その引出配線160は、他の第2電極150と短絡する可能性が出てくる。本実施例では、図11に示すように、引出配線160において、第2層326の幅は第1層324よりも狭くなっているため、第2層326の端部が折れる可能性は低い。従って、このような短絡が生じることを抑制できる。
【0044】
なお、第2電極150(導電層)は、絶縁層120のうち引出配線160が位置している領域の上にも形成されている。第2電極150(導電層)にアルミニウムなどの無機材料の導電材料を利用した場合、第2電極150は水分や酸素等の保護膜としても機能する。このため、引出配線160は第2電極150によって水分や酸素等から保護されることになる。従って、引出配線160に水分や酸素が到達して引出配線160が変質することを抑制できる。
【0045】
開口122と重なる領域には、有機層140が形成されている。有機層140の正孔輸送層は第1電極110に接しており、有機層140の電子輸送層は第2電極150に接している。このようにして、有機層140は第1電極110と第2電極150の間で挟持されている。
【0046】
なお、図8及び図9に示す例では、有機層140を構成する各層は、いずれも開口122の外側まではみ出している場合を示している。そして図6に示すように、有機層140を構成する各層は、隔壁170が延在する方向において、隣り合う開口122の間にも連続して形成されていてもよいし、連続して形成していなくてもよい。ただし、図10に示すように、有機層140は、開口124には形成されていない。
【0047】
上記したように、有機層140は、第1電極110及び第2電極150に挟持されている。第2電極150は、図6図8図10に示すように、有機層140より上に形成され、第1方向と交わる第2方向(図6におけるX方向)に延在している。第2電極150は、有機層140に電気的に接続している。例えば第2電極150は、有機層140上に形成されていても良いし、有機層140の上に形成された導電層の上に形成されていても良い。発光装置10は、互いに平行な複数の第2電極150を有している。一つの第2電極150は、複数の開口122上を通過する方向に形成されている。
【0048】
隣り合う第2電極150の間には、隔壁170が形成されている。隔壁170は、第2電極150と平行すなわち第2方向に延在している。隔壁170の下地は、例えば絶縁層120である。隔壁170は、例えばポリイミド系樹脂などの感光性の樹脂であり、露光及び現像されることによって、所望のパターンに形成されている。隔壁170は、例えばネガ型の感光性樹脂を用いて形成される。なお、隔壁170はポリイミド系樹脂以外の樹脂、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂、二酸化珪素等の無機材料で構成されていても良い。
【0049】
隔壁170は、断面が台形の上下を逆にした形状(逆台形)になっている。すなわち隔壁170の上面の幅は、隔壁170の下面の幅よりも大きい。このため、隔壁170を第2電極150より前に形成しておくと、蒸着法やスパッタリング法を用いて、第2電極150を基板100の一面側に形成することで、複数の第2電極150を一括で形成することができる。
【0050】
また、隔壁170は、有機層140を分断する機能も有している。
【0051】
また、発光装置10は封止部材200を備えている。封止部材200は、複数の有機EL素子102を封止しており、基板100と同様の多角形の金属箔又は金属板(例えばAl箔又はAl板)の縁部の全周を押し下げた形状を有している。そして、縁部は接着材202(又は粘着剤)で基板100に固定されている。ただし、封止部材200はガラスで形成されていてもよい。この場合、封止部材200は基板100とに接着剤を用いて固定されても良い。
【0052】
次に、本実施例における発光装置10の製造方法を説明する。まず、基板100上に第1電極110、引出配線130,160の透明導電層310を形成する。これらの形成方法は、実施形態と同様である。
【0053】
次いで、透明導電層310上に導電層320を形成する。導電層320の形成方法は、実施形態と同様である。次いで、絶縁層120を形成する。絶縁層120の形成方法は、実施形態と同様である。この工程において、複数の開口122及び複数の開口124が形成される。
【0054】
次いで、絶縁層120上に隔壁170を形成し、さらに有機層140及び第2電極150を形成する。これらの形成方法は、実施形態と同様である。
【0055】
本実施例によっても、第2層326の端部が折れて絶縁層120を突き破ることを抑制できる。従って、第2電極150を、絶縁層120のうち引出配線160が位置している領域の上にも形成しても、その第2電極150が、他の第2電極150に接続している引出配線160と短絡することを抑制できる。
【0056】
(実施例2)
図13は、実施例2に係る発光装置10の構成を示す平面図である。図14は、図13のE−E断面図である。図13は、実施例1の図6に対応しており、図14は実施例1の図11に対応している。本実施例に係る発光装置10は、封止部材200の代わりに封止膜210(被覆膜)を備えている点を除いて、実施例1に係る発光装置10と同様の構成である。
【0057】
封止膜210は例えば酸化アルミニウム膜であり、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成されている。封止膜210の膜厚は、例えば10nm以上200nm以下である。封止膜210は、絶縁層120、有機EL素子102、引出配線160、及び引出配線130を被覆している。なお、封止膜210は、ALD法以外の成膜法、例えばCVD法を用いて形成されても良い。封止膜210は、段差被覆性が高い。このため、封止膜210は、基板100の上及び配線300の端面も連続して被覆している。
【0058】
なお、封止膜210は、発光装置10の端子(すなわち引出配線130,160の端部)を覆っていない。そしてこの端子には、導電部材の一端、例えばボンディングワイヤ400の一端が接続している。導電部材の他端、例えばボンディングワイヤ400の他端は、回路基板に接続している。この回路基板には、発光装置10の制御回路が形成されている。
【0059】
ここで、引出配線130、160の断面形状は、絶縁膜120で覆われた箇所と端子部分とで互いに同じ断面構造となっている。そして、端子の第2層326をMo又はMo合金、第1層324をAl又はAl合金で形成している場合、ボンディングワイヤ400は、第2層326を突き破り、第1層324と接合している。そして、第1層324は、第2層326よりもボンディングワイヤ400との接触抵抗が低い。特に、ボンディングワイヤ400の芯部に銅を利用した場合には、銅と第1層324のAlとの合金が形成され、電気的にも、物理的にも良好な接続構造を構築できる。また、ACF(異方性導電膜)を利用する場合でも、導電粒子は、第2層326を突き破るため、第1層324との物理的に接触することができるため、これまでの低抵抗な接続構造になる。
【0060】
本実施例によっても、第2層326の端部が折れて絶縁層120を突き破ることを抑制できる。また、第2電極150を、絶縁層120のうち引出配線160が位置している領域の上にも形成しても、その第2電極150が、他の第2電極150に接続している引出配線160と短絡することを抑制できる。
【0061】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14