特許第6441310号(P6441310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441310
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】車体骨格構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/02 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   B62D25/02 B
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-507780(P2016-507780)
(86)(22)【出願日】2015年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2015057111
(87)【国際公開番号】WO2015137379
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-51995(P2014-51995)
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】山口 博司
(72)【発明者】
【氏名】安井 健
(72)【発明者】
【氏名】山根 昌晃
(72)【発明者】
【氏名】竿尾 周太郎
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−88495(JP,A)
【文献】 特開2006−231956(JP,A)
【文献】 特開2006−159626(JP,A)
【文献】 特開2001−48054(JP,A)
【文献】 特表2010−510921(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0313859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外パネルが溶接されることにより閉断面を有する閉断面枠部が形成され、前記閉断面内に配置された内パネルが前記閉断面枠部に設けられる車体骨格構造において、
前記内パネルは、
前記閉断面枠部の長手方向と直交し、かつ、前記閉断面枠部の内面に沿って形成された外周縁を有する遮蔽壁と、
該遮蔽壁の外周縁から前記閉断面枠部の内面に沿って張り出された接合片と、を有し、
該接合片、前記閉断面枠部の一方に他方から離れるように凹む凹部が形成されることにより、前記接合片および前記閉断面枠部間に隙間が設定され、
該隙間に発泡性接着体が設けられ、該発泡性接着体が発泡されることにより、前記内パネルおよび前記閉断面枠部を接着する、ことを特徴とする車体骨格構造。
【請求項2】
前記発泡性接着体は、
前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に仮止めする仮止部と、
該仮止部に設けられ、前記内パネルおよび前記閉断面枠部を接着する発泡性接着部と、
を備える、請求項1記載の車体骨格構造。
【請求項3】
前記閉断面枠部、前記内パネルの他方で、かつ、前記発泡性接着部に対峙する部位に案内孔を備える、請求項2記載の車体骨格構造。
【請求項4】
前記発泡性接着体は、
前記仮止部および前記発泡性接着部が、前記内パネル、前記閉断面枠部を接着可能な発泡性接着剤で一体に形成された、請求項2または請求項3記載の車体骨格構造。
【請求項5】
前記発泡性接着剤は、
金属接着性樹脂を主成分とし、加熱により発泡することにより、前記内パネルおよび前記閉断面枠部に接着し、かつ、高剛性となる特性を備える成形組成物である、請求項4記載の車体骨格構造。
【請求項6】
前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に形成され、前記仮止部が差し込まれる貫通孔を備え、
前記仮止部は、
前記貫通孔に差込可能に、先端部に向けて縮径する差込部と、
該差込部の基部に設けられ、前記貫通孔に嵌入可能に凹状に形成された嵌入部と、を備え、
該嵌入部が前記貫通孔に嵌入されることにより前記仮止部が前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に仮止めされる、請求項2記載の車体骨格構造。
【請求項7】
前記仮止部は、
前記差込部の先端部で開口され、前記差込部の基部に向けて延びる溝部を少なくとも1つ有する、請求項6記載の車体骨格構造。
【請求項8】
前記仮止部は、
前記発泡性接着体の軸線方向に延び、かつ、前記発泡性接着体の軸線方向に対して直交する方向に開口されたスリット部を少なくとも1つ有する、請求項6記載の車体骨格構造。
【請求項9】
前記スリット部は、
前記発泡性接着体のうち前記閉断面枠部、前記内パネルの他方に対向する面が開口するように前記発泡性接着部まで延長された、請求項8記載の車体骨格構造。
【請求項10】
前記閉断面枠部、前記内パネルの一方は、
前記貫通孔に差し込まれる前記仮止部に当接した状態で変形可能な係止片を有する、請求項6記載の車体骨格構造。
【請求項11】
前記発泡性接着体は、
前記仮止部および前記発泡性接着部が、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方を挟み込むように側面視略U字状に形成され、
前記仮止部、前記発泡性接着部の一方に設けられた爪部を有し、
前記閉断面枠部、前記内パネルの一方を前記発泡性接着体で挟み込んだ状態において、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に形成された係合孔に前記爪部が係合する、請求項4記載の車体骨格構造。
【請求項12】
複数の外パネルが溶接されることにより閉断面を有する閉断面枠部が形成される車体骨格構造において、
前記複数の外パネルは、第1外パネルと、少なくとも2つの第2外パネルとを備え、
前記第1外パネルに少なくとも2つの第2外パネルが組み付けられることにより、車体骨格となる前記閉断面枠部が形成され、
前記少なくとも2つの第2外パネルが前記閉断面枠部の長手方向において分割されることにより各第2外パネルに分割部を有し、
該分割部同士が重ね合わされることにより、重ね合わされた一方の分割部が前記閉断面の外側に配置され、他方の分割部が前記閉断面の内側に配置される重なり部を有し、
該重なり部間に隙間が設定され、
該隙間に発泡性接着体が設けられ、該発泡性接着体が発泡されることにより、前記重なり部を接着する、ことを特徴とする車体骨格構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の外パネルで閉断面枠部が形成され、閉断面枠部の閉断面内に内パネルが設けられた車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体骨格構造のなかには、複数の外パネルがスポット溶接で接合されることにより閉断面枠部が形成され、閉断面枠部で形成された閉断面内に内パネルが設けられることにより、車体骨格構造の剛性・強度を確保するものがある。
ここで、車体骨格構造の剛性・強度を確保するためには、内パネルを閉断面枠部に複数箇所で接合することが好ましい。しかし、内パネルが閉断面枠部の閉断面内に設けられている。
【0003】
よって、内パネルを閉断面枠部にスポット溶接で接合するためには、閉断面枠部に挿通孔を形成して、挿通孔からスポット溶接用のスポットガンを閉断面内に挿通させる必要がある。閉断面枠部に挿通孔を形成するために、車体骨格構造の剛性・強度を確保することが難しい。また、閉断面枠部が小閉断面の場合、スポットガン用の挿通孔を閉断面枠部に形成することができないことも考えられる。
【0004】
スポット溶接以外の接合手段として、ミグ溶接、ボルト・ナットを用いて接合する方法が知られている。ミグ溶接は、閉断面枠部に内パネルを閉断面枠部の外側から溶接ワイヤを用いて接合することが可能である。さらに、ボルト・ナットは、内パネルや閉断面枠部に予めナットを溶接することにより内パネルを各パネルにボルトで接合することが可能である。
しかし、ミグ溶接は、車体骨格構造の用途によっては、溶接ワイヤを所定の溶接箇所に移動することが難しいことが考えられる。さらに、ボルト・ナットは、内パネルや閉断面枠部の組付公差(精度)が要求され、作業性の低下が考えられる。
【0005】
ここで、内パネルや閉断面枠部などの金属を接着するものとして高剛性発泡体(以下、発泡性接着体という)が知られている。発泡性接着体は、金属接着性樹脂を主成分とし、加熱により発泡して高剛性となり、かつ、金属面に接着する特性を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
この発泡性接着体を用いることにより内パネルを閉断面枠部に接着することが考えられる。
【0006】
ところで、従来の発泡性接着体を用いて内パネルを閉断面枠部に接着するためには、内パネルと閉断面枠部との間に発泡性接着体を配置する必要がある。しかし、車体骨格構造は、閉断面枠部で形成された閉断面内に内パネルが設けられる。
よって、車体骨格構造を組み付ける際に、内パネルと閉断面枠部との間に発泡性接着体を配置することが難しく、発泡性接着体を配置する技術の実用化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−176358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、閉断面内に設けられた内パネルを閉断面枠部に発泡性接着体を介して接合できる車体骨格構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、複数の外パネルが溶接されることにより閉断面を有する閉断面枠部が形成され、前記閉断面内に配置された内パネルが前記閉断面枠部に設けられる車体骨格構造において、前記内パネルは、
前記閉断面枠部の長手方向と直交し、かつ、前記閉断面枠部の内面に沿って形成された外周縁を有する遮蔽壁と、
該遮蔽壁の外周縁から前記閉断面枠部の内面に沿って張り出された接合片と、を有し、
該接合片、前記閉断面枠部の一方に他方から離れるように凹む凹部が形成されることにより、前記接合片および前記閉断面枠部間に隙間が設定され、
該隙間に発泡性接着体が設けられ、該発泡性接着体が発泡されることにより、前記内パネルおよび前記閉断面枠部を接着する、ことを特徴とする車体骨格構造を提供する。
【0012】
請求項2に係る発明では、好ましくは、前記発泡性接着体は、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に仮止めする仮止部と、該仮止部に設けられ、前記内パネルおよび前記閉断面枠部を接着する発泡性接着部と、を備える。
【0013】
請求項3に係る発明では、好ましくは、前記閉断面枠部、前記内パネルの他方で、かつ、前記発泡性接着部に対峙する部位に案内孔を備える。
【0014】
請求項4に係る発明では、好ましくは、前記発泡性接着体は、前記仮止部および前記発泡性接着部が、前記内パネル、前記閉断面枠部を接着可能な発泡性接着剤で一体に形成される。
【0015】
請求項5に係る発明では、好ましくは、前記発泡性接着剤は、金属接着性樹脂を主成分とし、加熱により発泡することにより、前記内パネルおよび前記閉断面枠部に接着し、かつ、高剛性となる特性を備える成形組成物である。
【0016】
請求項6に係る発明では、好ましくは、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に形成され、前記仮止部が差し込まれる貫通孔を備え、前記仮止部は、前記貫通孔に差込可能に、先端部に向けて縮径する差込部と、該差込部の基部に設けられ、前記貫通孔に嵌入可能に凹状に形成された嵌入部と、を備え、該嵌入部が前記貫通孔に嵌入されることにより前記仮止部が前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に仮止めされる。
【0017】
請求項7に係る発明では、好ましくは、前記仮止部は、前記差込部の先端部で開口され、前記差込部の基部に向けて延びる溝部を少なくとも1つ有する。
【0018】
請求項8に係る発明では、好ましくは、前記仮止部は、前記発泡性接着体の軸線方向に延び、かつ、前記発泡性接着体の軸線方向に対して直交する方向に開口されたスリット部を少なくとも1つ有する。
【0019】
請求項9に係る発明では、好ましくは、前記スリット部は、前記発泡性接着体のうち前記閉断面枠部、前記内パネルの他方に対向する面が開口するように前記発泡性接着部まで延長される。
【0020】
請求項10に係る発明では、好ましくは、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方は、前記貫通孔に差し込まれる前記仮止部に当接した状態で変形可能な係止片を有する。
【0021】
請求項11に係る発明では、好ましくは、前記発泡性接着体は、前記仮止部および前記発泡性接着部が、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方を挟み込むように側面視略U字状に形成され、前記仮止部、前記発泡性接着部の一方に設けられた爪部を有し、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方を前記発泡性接着体で挟み込んだ状態において、前記閉断面枠部、前記内パネルの一方に形成された係合孔に前記爪部が係合する。
【0023】
請求項12に係る発明では、複数の外パネルが溶接されることにより閉断面を有する閉断面枠部が形成される車体骨格構造において、前記複数の外パネルは、第1外パネルと、少なくとも2つの第2外パネルとを備え、前記第1外パネルに少なくとも2つの第2外パネルが組み付けられることにより、車体骨格となる前記閉断面枠部が形成され、前記少なくとも2つの第2外パネルが前記閉断面枠部の長手方向において分割されることにより各第2外パネルに分割部を有し、該分割部が重ね合わされることにより、重ね合わされた一方の分割部が前記閉断面の外側に配置され、他方の分割部が前記閉断面の内側に配置される重なり部を有し、該重なり部間に前記隙間が設定され、該隙間に発泡性接着体が設けられ、該発泡性接着体が発泡されることにより、前記重なり部を接着する、ことを特徴とする車体骨格構造を提供する
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明では、内パネルに遮蔽壁を有し、遮蔽壁を閉断面枠部の長手方向と直交させて取り付けた。これにより、閉断面枠部の閉断面が変形することを遮蔽壁で防ぐことができ、閉断面枠部の剛性・強度を遮蔽壁で高めることができる。
さらに、接合片、閉断面枠部の一方に凹部を形成し、接合片および閉断面枠部間に隙間を形成した。よって、隙間に発泡性接着体を備えることにより、接合片と閉断面枠部とを発泡性接着体を介して接合できる。
これにより、内パネルを閉断面枠部に接合する部位を増すことができ、閉断面枠部の閉断面が変形することを遮蔽壁で一層好適に防ぐことができる。
【0026】
請求項2に係る発明では、発泡性接着体に仮止部と発泡性接着部とを備えた。よって、車体骨格構造を組み付ける際に、仮止部を閉断面枠部、内パネルの一方に予め仮止めすることができる。
これにより、発泡性接着体の発泡性接着部を、内パネルおよび閉断面枠部間に設定された隙間に簡単に備えることができる。
【0027】
請求項3に係る発明では、閉断面枠部、内パネルの他方で、かつ、発泡性接着部に対峙する部位に案内孔を備えた。よって、発泡性接着部が発泡した際に、発泡した発泡性接着部を案内孔に導入させることができる。
これにより、発泡性接着部に対峙する部位を、発泡した発泡性接着部で一層強固に接着することができ、閉断面枠部および内パネルの接合強度をさらに高めることができる。
【0028】
請求項4に係る発明では、仮止部を発泡性接着剤で形成した。この仮止部は、閉断面枠部、内パネルの一方に形成された貫通孔に差し込まれることにより一方に仮止めされる。一方に仮止めされた仮止部が、貫通孔に差し込まれて差込側の反対側に突出される。
よって、差込側の反対側において仮止部を発泡させることができる。これにより、差込側の反対側を、発泡した仮止部で強固に接着することができ、閉断面枠部および内パネルの接合強度を一層高めることができる。
【0029】
請求項5に係る発明では、発泡性接着剤の成形組成物を、発泡した状態で高剛性となるように設定した。この発泡性接着剤(すなわち、発泡性接着部)を閉断面枠部および内パネルに接着することにより、閉断面枠部および内パネルが高剛性の発泡性接着剤で接合される。
よって、閉断面枠部および内パネル間において荷重を好適に伝達できる。これにより、閉断面枠部の閉断面が変形することを内パネルで防ぐことができ、閉断面枠部の剛性・強度を内パネルで高めることができる。
【0030】
請求項6に係る発明では、仮止部の差込部を先端部に向けて縮径することにより、差込部を貫通孔に差込可能とした。よって、差込部を貫通孔に手間をかけることなく容易に差し込むことができる。
これにより、仮止部(すなわち、発泡性接着体)を、閉断面枠部、内パネルの一方に仮止めする作業性を高めることができる。
【0031】
請求項7に係る発明では、仮止部に溝部を少なくとも1つ設け、溝部を差込部の先端部で開口させた。よって、仮止部を貫通孔に差し込む際に、差込部を貫通孔の周縁に干渉させて溝部側に弾性変形させることができる。
これにより、差込部を貫通孔に対応させて縮径させることができ、仮止部を貫通孔に一層容易に差し込むことができる。
【0032】
請求項8に係る発明では、仮止部にスリット部を少なくとも1つ設けた。よって、仮止部を貫通孔に差し込む際に、差込部を貫通孔の周縁に干渉させてスリット部側に弾性変形させることができる。
これにより、差込部を貫通孔に対応させて縮径させることができ、仮止部を貫通孔に一層容易に差し込むことができる。
【0033】
請求項9に係る発明では、スリット部を発泡性接着部まで延長させて発泡性接着部を開口させた。よって、仮止部を貫通孔に差し込む際に、差込部とともに嵌入部や発泡性接着部をスリット部側に移動させることができる。
これにより、嵌入部を貫通孔に対応させて縮径させることができるので、貫通孔の孔径を小さくしても差込部を貫通孔に一層容易に差し込むことができる。貫通孔の孔径を小さく抑えることにより、閉断面枠部、内パネルの一方の剛性・強度を高めることができる。
さらに、嵌入部を貫通孔に対応させて縮径させることにより貫通孔の加工公差を吸収できる。これにより、仮止部を貫通孔に差し込む作業をさらに容易におこなうことができる。
【0034】
請求項10に係る発明では、閉断面枠部、内パネルの一方に係止片を有し、係止片を仮止部に当接した状態で変形可能とした。これにより、仮止部を貫通孔に差し込む際に、仮止部で係止片を変形させて、仮止部を貫通孔に容易に差し込むことができる。
さらに、貫通孔に差し込まれた仮止部に係止片を当接させることができる。これにより、貫通孔から仮止部が抜け出すことを係止片で防止でき、仮止部を貫通孔に確実に仮止めできる。
【0035】
請求項11に係る発明では、発泡性接着体を仮止部および発泡性接着部で側面視略U字状に形成し、仮止部、発泡性接着部の一方に爪部を形成した。よって、閉断面枠部、内パネルの一方を発泡性接着体で挟み込むようにスライド移動させることにより、爪部を係合孔に係合させることができる。
これにより、発泡性接着体を閉断面枠部、内パネルの一方に容易に取り付けることができ、かつ、発泡性接着体を閉断面枠部、内パネルの一方に確実に仮止めできる。
【0038】
請求項12に係る発明では、第1外パネルに少なくとも2つの第2外パネルを組み付けて閉断面枠部を形成し、第2外パネルに分割部を備えた。また、分割部が重なり部を備えた。このように、閉断面枠部に重なり部を備えることにより、重なり部を溶接することが困難となることが考えられる。そこで、重なり部間に隙間を設定して隙間に発泡性接着体を備えた。
よって、重なり部(すなわち、分割部)を発泡性接着体で接着させることができる。これにより、第2外パネル(すなわち、閉断面枠部)の分割部を重なり部で補強でき、閉断面枠部の剛性・強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る実施例1の車体骨格構造を示す断面図である。
図2図1の2部拡大図である。
図3】実施例1の発泡性接着体を第2外パネルに仮止めした状態を示す側面図である。
図4図3の発泡性接着体を示す斜視図である。
図5】実施例1の車体骨格構造を組み付ける例を説明する図である。
図6】本発明に係る実施例2の車体骨格構造を示す断面図である。
図7図6の7部拡大図である。
図8】(a)は本発明に係る実施例3の発泡性接着体が発泡された状態を示す断面図、(b)は実施例3の発泡性接着体が発泡する前の状態を示す断面図である。
図9】(a)は本発明に係る実施例4の発泡性接着体を第2外パネルに仮止めした状態を示す側面図、(b)は実施例4の発泡性接着体を示す斜視図である。
図10】(a)は本発明に係る実施例5の発泡性接着体を第2外パネルに仮止めした状態を示す側面図、(b)は実施例5の発泡性接着体を示す斜視図である。
図11】(a)は本発明に係る実施例6の発泡性接着体を第2外パネルに仮止めした状態を示す側面図、(b)は実施例6の発泡性接着体を示す斜視図である。
図12】(a)は本発明に係る実施例7の発泡性接着体を第2外パネルに仮止めした状態を示す側面図、(b)は実施例7の発泡性接着体を示す斜視図、(c)は図12(a)の12c−12c断面図である。
図13】(a)は本発明に係る実施例8の発泡性接着体を第2外パネルに仮止めした状態を示す側面図、(b)は実施例8の発泡性接着体を示す斜視図、(c)は(a)の発泡性接着体を発泡させた状態を示す側面図である。
図14】(a)は本発明に係る実施例9の発泡性接着体を第2外パネルに仮止めした状態を示す側面図、(b)は実施例9の発泡性接着体を示す斜視図、(c)は(a)の発泡性接着体を発泡させた状態を示す側面図である。
図15】(a)は本発明に係る実施例10の発泡性接着体を示す側面図、(b)は実施例10の発泡性接着体を発泡させた状態を示す側面図である。
図16】本発明に係る実施例11の車体骨格構造を備えた車体側部を示す斜視図である。
図17図16の17−17線断面図である。
図18】実施例11の車体側部を示す分解斜視図である。
図19】実施例11の車体骨格構造に備えた第4内パネルを示す斜視図である。
図20】実施例11の車体骨格構造に備えた第2内パネルおよび第3内パネルを示す斜視図である。
図21】実施例11の閉断面枠部に備える第4内パネルに発泡性接着体を仮止めする例を説明する図である。
図22】実施例11の閉断面枠部に第4内パネルを発泡性接着体で接合する例を説明する図である。
図23】本発明に係る実施例12の車体骨格構造を備えた車体後部を示す斜視図である。
図24図23の24矢視図である。
図25図23の25部拡大図である。
図26図25の車体骨格構造を示す分解斜視図である。
図27図25の27−27線断面図である。
図28】実施例12の閉断面枠部に発泡性接着体を仮止めする例を説明する図である。
図29】実施例12の閉断面枠部を発泡性接着体で接合する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0041】
実施例1に係る車体骨格構造10について説明する。
図1に示すように、車体骨格構造10は、略矩形状の枠体に形成された閉断面枠部11と、閉断面枠部11の閉断面12内に配置された内パネル14と、内パネル14および閉断面枠部11を接着する発泡性接着体16とを備えている。
閉断面枠部11は、断面略ハット状に形成された第1外パネル21と、第1外パネル21に接合される第2外パネル31とを備えている。
【0042】
第1外パネル21は、金属製の板材であり、第1壁部22、第1左折曲部23、第1右折曲部24、第1左フランジ25および第1右フランジ26を有する。
第1壁部22は、水平に延びることにより平坦状に形成されている。第1左折曲部23は、第1壁部22の左端部から下方に向けて延びるように折り曲げられている。第1右折曲部24は、第1壁部22の右端部から下方に向けて延びるように折り曲げられている。
第1左フランジ25は、第1左折曲部23の下端部から左方向に張り出されるように折り曲げられている。第1右フランジ26は、第1右折曲部24の下端部から右方向に張り出されるように折り曲げられている。
【0043】
第1壁部22、第1左折曲部23および第1右折曲部24で断面略U字状の部位が形成されている。また、第1壁部22、第1左折曲部23、第1右折曲部24、第1左フランジ25および第1右フランジ26で第1外パネル21が断面略ハット状に形成されている。
【0044】
第2外パネル31は、第1外パネル21と上下方向において略対象に形成された部材である。第2外パネル31は、金属製の板材であり、第2壁部32、第2左折曲部33、第2右折曲部34、第2左フランジ35および第2右フランジ36を有する。
【0045】
第2壁部32は、水平に延びることにより平坦状に形成されている。第2左折曲部33は、第2壁部32の左端部から上方に向けて延びるように折り曲げられている。第2右折曲部34は、第2壁部32の右端部から上方に向けて延びるように折り曲げられている。
第2左フランジ35は、第2左折曲部33の上端部から左方向に張り出されるように折り曲げられている。第2右フランジ36は、第2右折曲部34の上端部から右方向に張り出されるように折り曲げられている。
【0046】
第2壁部32に貫通孔38が円弧状に形成され、貫通孔38に発泡性接着体16が差し込まれている。
第2壁部32、第2左折曲部33および第2右折曲部34で断面略U字状の部位が形成されている。また、第2壁部32、第2左折曲部33、第2右折曲部34、第2左フランジ35および第2右フランジ36で第2外パネル31が断面略ハット状に形成されている。
【0047】
第1左フランジ25および第2左フランジ35がスポット溶接で接合され、第1右フランジ26および第2右フランジ36がスポット溶接で接合されている。これにより、第1外パネル21および第2外パネル31で閉断面枠部11が形成されている。
閉断面枠部11の内部に閉断面12が形成されている。具体的には、閉断面12は、第1壁部22、第1左折曲部23、第1右折曲部24、第2壁部32、第2左折曲部33および第2右折曲部34で略矩形状に形成されている。
【0048】
閉断面枠部11の閉断面12内に金属製の内パネル14が配置されている。
内パネル14は、第1壁部22および第2壁部32間に上下方向に延ばされた遮蔽壁41と、遮蔽壁41の上端部から第1壁部22に沿って右方向に延びる上接合片42と、遮蔽壁41の下端部から第2壁部32に沿って右方向に延びる下接合片43とを有する。
【0049】
遮蔽壁41、上接合片42および下接合片43で内パネル14が断面略U字状に形成されている。第1壁部22の内面に上接合片42がスポット溶接で接合されている。第2壁部32および下接合片43間に隙間45が設定されている。
第2壁部32および下接合片43間に隙間45を設定した理由は以下の通りである。
【0050】
すなわち、車体骨格構造10を組み付ける際には、第1外パネル21の第1壁部22に内パネル14の上接合片42を接合する。この状態で、第1外パネル21の第1左フランジ25に第2外パネル31の第2左フランジ35を接合し、第1外パネル21の第1右フランジ26に第2外パネル31の第2右フランジ36を接合する。
この接合工程において、内パネル14の下接合片43が第2外パネル31の第2壁部32に干渉することが考えられる。そこで、第2壁部32に下接合片43が干渉することを避けるために、第2壁部32と下接合片43との間に隙間45を設定するようにした。
【0051】
このように、第2壁部32および下接合片43間に隙間45が設定されるため、隙間45が設定された部位をミグ溶接やボルト・ナットで接合することが難しい。このため、車体骨格構造10においてミグ溶接やボルト・ナットによる接合箇所が限定される。
そこで、隙間45を発泡性接着体16の発泡性接着部55で埋めて、発泡性接着部55で第2壁部32および下接合片43を接合するようにした。
【0052】
図2に示すように、第2壁部32および下接合片43間の隙間45が、発泡された発泡性接着体16の発泡性接着部55で埋められている。
なお、想像線で示す発泡性接着体16は、発泡前の状態の発泡性接着体16を示す。
発泡性接着体16が想像線で示す状態から発泡することにより、発泡された発泡性接着体16の発泡性接着部55で隙間45が埋められる。これにより、第2壁部32と下接合片43とが発泡性接着部55で接合されている。
【0053】
図3図4に示すように、発泡性接着体16は、断面略円形に形成され、貫通孔38に差し込まれる仮止部51と、仮止部51に設けられた発泡性接着部55とを備えている。仮止部51および発泡性接着部55で発泡性接着体16がクリップ状に形成されている。
この発泡性接着体16は、仮止部51および発泡性接着部55が発泡性接着剤で一体に形成されている。
【0054】
発泡性接着剤は、金属接着性樹脂を主成分とし、加熱により発泡することにより、第2壁部32および下接合片43に接着し、かつ、高剛性となる特性を備える成形組成物である。この発泡性接着剤は、金属同士を接着するものとして一般に知られている接着剤である。
【0055】
仮止部51は、貫通孔38に差し込まれて仮止めされるように形成されている。この仮止部51は、貫通孔38に差込可能に形成された差込部52と、差込部52の基部52aに設けられた嵌入部53とを備えている。
【0056】
差込部52は、基部52aから先端部52bに向けて縮径するように逆円錐台状に形成されている。先端部52bは、下方に向けて突出する凸形湾曲面状(球面状)に形成されている。差込部52を貫通孔38に差し込むことにより、差込部52が貫通孔38の周縁38aに当接する。差込部52が周縁38aで押圧されることにより、差込部52が縮径する方向に弾性変形して貫通孔38に貫通される。
【0057】
このように、差込部52の先端部52bを凸形湾曲面状(球面状)に形成し、仮止部51の差込部52を先端部52bに向けて縮径することにより、差込部52を貫通孔38に差込可能とした。よって、差込部52を貫通孔38に手間をかけることなく容易に差し込むことができる。
これにより、仮止部51(すなわち、発泡性接着体16)を第2壁部32に仮止めする作業性を高めることができる。
【0058】
差込部52の基部52aに嵌入部53が設けられている。さらに、嵌入部53に発泡性接着部55が設けられている。嵌入部53は、貫通孔38に嵌入可能となるように、発泡性接着部55や基部52aに対して凹状に形成されている。
嵌入部53が貫通孔38に嵌入された状態において、発泡性接着部55および基部52aで第2壁部32が挟み込まれる。これにより、仮止部51(具体的には、発泡性接着体16)が第2壁部32に仮止めされている。
【0059】
この状態において、発泡性接着部55が第2壁部32および下接合片43間の隙間45に配置されている。発泡性接着部55は、所定の肉厚を有し、差込部52や嵌入部53より外径が大きな円板状に形成されている。
【0060】
図2に戻って、発泡性接着体16が加熱により発泡し、発泡した発泡性接着体16の発泡性接着部55で隙間45が埋められる。よって、発泡した発泡性接着部55が第2壁部32および下接合片43に接着される。これにより、第2壁部32および下接合片43が、発泡した発泡性接着部55で接合され、車体骨格構造10の剛性・強度が好適に確保される。
【0061】
ここで、仮止部51は発泡性接着部55と同様に発泡性接着剤で一体に形成されている。仮止部51が貫通孔38に差し込まれることにより、仮止部51が第2壁部32の表面32a(すなわち、仮止部を差し込む側の反対側)から外側に突出される。
よって、第2壁部32の表面32a側において仮止部51を発泡させることができる。これにより、第2壁部32の表面32a側を、発泡した仮止部51で強固に接着することができ、第2壁部32および下接合片43の接合強度を一層高めることができる。
【0062】
また、仮止部51および発泡性接着部55が、発泡することにより高剛性となる特性を備えた発泡性接着剤で一体に形成されている。すなわち、第2壁部32および下接合片43を高剛性の発泡性接着部55で接合することができる。
よって、閉断面枠部11および内パネル14間において荷重を好適に伝達できる。これにより、閉断面枠部11の閉断面12が変形することを内パネル14で防ぐことができ、閉断面枠部11の剛性・強度を内パネル14で高めることができる。
【0063】
つぎに、実施例1の車体骨格構造10を組み付ける例を図1図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、第1外パネル21の第1壁部22に内パネル14の上接合片42を当接し、第1壁部22および上接合片42をスポット溶接で接合する。
さらに、第2外パネル31(具体的には、第2壁部32)の貫通孔38に発泡性接着体16の仮止部51を矢印Aの如く差し込み、嵌入部53を貫通孔38に嵌入させる。よって、第2壁部32に発泡性接着体16を予め仮止めすることができる。
【0064】
図5(b)に示すように、第1壁部22および上接合片42を接合した状態において、第1外パネル21の第1左フランジ25に第2外パネル31の第2左フランジ35をスポット溶接で接合する。さらに、第1外パネル21の第1右フランジ26に第2外パネル31の第2右フランジ36をスポット溶接で接合する。
【0065】
これにより、第1外パネル21および第2外パネル31で閉断面枠部11が形成され、閉断面枠部11の内部に閉断面12が形成される。
さらに、第2壁部32および下接合片43間に隙間45が確保され、隙間45に発泡性接着体16の発泡性接着部55が配置される。
このように、第2壁部32に発泡性接着体16を予め仮止めすることより、発泡性接着体16の発泡性接着部55を、第2壁部32および下接合片43間の隙間45に簡単に配置することができる。
【0066】
図1に示すように、発泡性接着体16を加熱して発泡させることにより、発泡した発泡性接着部55が隙間45に埋められる。よって、発泡された発泡性接着部55が第2壁部32および下接合片43に接着され、発泡された発泡性接着部55で第2壁部32および下接合片43が接合される。
このように、第2壁部32および下接合片43間に隙間45が設定されるために、ミグ溶接やボルト・ナットによる接合が難しい部位を、発泡性接着部55で接合することができる。これにより、車体骨格構造10の剛性・強度を好適に確保することができる。
【0067】
つぎに、実施例2〜実施例12を図6図29に基づいて説明する。なお、実施例2〜実施例12において実施例1の各構成部材と同一・類似部材については実施例1と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
まず、実施例2〜実施例10を図6図15に基づいて説明する。
【実施例2】
【0068】
実施例2に係る車体骨格構造60を図6図7に基づいて説明する。
図6図7に示すように、実施例2の車体骨格構造60は、実施例1の発泡性接着体16を内パネル14の下接合片43に仮止めするように構成したもので、その他の構成は実施例1の車体骨格構造10と同様である。
【0069】
すなわち、内パネル14は、下接合片43に貫通孔62が形成されている。貫通孔62に発泡性接着体16の仮止部51が矢印Bの如く差し込まれることにより、発泡性接着体16が下接合片43に仮止めされる。
【0070】
この状態において、第1左フランジ25に第2左フランジ35をスポット溶接で接合し、第1右フランジ26に第2右フランジ36をスポット溶接で接合することにより、隙間45に発泡性接着体16の発泡性接着部55が配置される。
このように、下接合片43に発泡性接着体16を予め仮止めすることより、発泡性接着体16の発泡性接着部55を、第2壁部32および下接合片43間の隙間45に簡単に配置することができる。
【0071】
発泡性接着体16を加熱して発泡させることにより、発泡した発泡性接着部55が隙間45に埋められ、発泡された発泡性接着部55で第2壁部32および下接合片43が接合される。
これにより、車体骨格構造60は、実施例1の車体骨格構造10と同様に、剛性・強度が好適に確保される。
【実施例3】
【0072】
実施例3に係る車体骨格構造70を図8に基づいて説明する。
図8に示すように、実施例3の車体骨格構造70は、実施例1の内パネル14に案内孔72を形成したもので、その他の構成は実施例1の車体骨格構造10と同様である。
内パネル14は、下接合片43に案内孔72が形成されている。案内孔72は、下接合片43のうち発泡性接着部55に対峙する部位43aに配置されている。
【0073】
よって、発泡性接着部55が発泡した際に、発泡した発泡性接着部55の一部55aを案内孔72を経て下接合片43の裏面43bまで案内することができる。
これにより、発泡性接着部55に対峙する部位43aを、発泡した発泡性接着部55で一層強固に接着することができ、閉断面枠部11および内パネル14の接合強度をさらに高めることができる。
【0074】
なお、実施例2のように、発泡性接着体16を内パネル14の下接合片43に仮止めする場合は、第2外パネル31の第2壁部32に案内孔72を形成する。これにより、実施例3と同様に、第2壁部32を、発泡した発泡性接着部55で一層強固に接着することができる。
【実施例4】
【0075】
実施例4に係る発泡性接着体74を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、実施例4の発泡性接着体74は、実施例1の発泡性接着体16に溝部77を形成したもので、その他の構成は実施例1の発泡性接着体16と同様である。
発泡性接着体74は、仮止部75に溝部77が形成されている。溝部77は、差込部76の先端部76aで開口され、差込部76の基部76bに向けて発泡性接着体74の軸線78方向に延長されている。
【0076】
よって、仮止部75を貫通孔38に差し込む際に、差込部76を貫通孔38の周縁38aに干渉させて溝部77側に矢印Cの如く弾性変形させることができる。これにより、差込部76を貫通孔38に対応させて縮径させることができ、仮止部75を貫通孔38に容易に差し込むことができる。
すなわち、発泡性接着体74を第2壁部32に仮止めする作業性を高めることができる。
【実施例5】
【0077】
実施例5に係る発泡性接着体80を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、実施例5の発泡性接着体80は、実施例1の発泡性接着体16に複数の溝部83を形成したもので、その他の構成は実施例1の発泡性接着体16と同様である。
【0078】
発泡性接着体80は、仮止部81に複数の溝部83が形成されている。複数の溝部83は、仮止部81の周方向(矢印D方向)に一定の間隔をおいて、一例として3つ形成されている。各溝部83は、差込部82の先端部82aで開口され、差込部82の基部82bに向けて発泡性接着体80の軸線84方向に延長されている。
【0079】
よって、仮止部81を貫通孔38に差し込む際に、差込部82を貫通孔38の周縁38aに干渉させて溝部83側に矢印Eの如く弾性変形させることができる。これにより、差込部82を貫通孔38に対応させて縮径させることができ、仮止部81を貫通孔38に容易に差し込むことができる。
すなわち、発泡性接着体80を第2壁部32に仮止めする作業性を高めることができる。
【0080】
なお、実施例5では、複数の溝部83を仮止部81に3つ形成した例について説明したが、これに限らないで、3つ以外の複数の溝部83を仮止部81に形成することも可能である。
【実施例6】
【0081】
実施例6に係る発泡性接着体86を図11に基づいて説明する。
図11に示すように、実施例6の発泡性接着体86は、実施例1の発泡性接着体16にスリット部89を形成したもので、その他の構成は実施例1の発泡性接着体16と同様である。
【0082】
発泡性接着体86は、仮止部87にスリット部89が形成されている。スリット部89は、発泡性接着体86の軸線91方向に延び、かつ、軸線91方向に対して直交する方向に開口されることにより長孔に形成されている。
スリット部89の下端部89aが差込部88の先端部88a近傍に形成され、差込部88の先端部88aが凸形湾曲面状(球面状)に形成されている。また、スリット部89の上端部89bが差込部88の基部88b近傍に形成され、嵌入部53まで延びている。
差込部88の先端部88aが凸形湾曲面状に形成されることにより、差込部88の先端部88aを貫通孔38に容易に差し込むことができる。
【0083】
さらに、仮止部87を貫通孔38に差し込む際に、差込部88を貫通孔38の周縁38aに干渉させてスリット部89側に矢印Fの如く弾性変形させることができる。これにより、差込部88を貫通孔38に対応させて縮径させることができ、仮止部87を貫通孔38に容易に差し込むことができる。
すなわち、発泡性接着体86を第2壁部32に仮止めする作業性を高めることができる。
【実施例7】
【0084】
実施例7に係る発泡性接着体93を図12に基づいて説明する。
図12に示すように、実施例7の発泡性接着体93は、実施例1の発泡性接着体16に複数のスリット部96を形成したもので、その他の構成は実施例1の発泡性接着体16と同様である。
【0085】
発泡性接着体93は、仮止部94に複数のスリット部96が形成されている。複数のスリット部96は、仮止部94の周方向(矢印G方向)に一定の間隔をおいて、一例として3つ形成されている。
【0086】
各スリット部96は、発泡性接着体93の軸線97方向に沿って発泡性接着部55まで延長され、かつ、軸線97方向に対して直交する方向に開口されている。さらに、各スリット部96が発泡性接着部55まで延長されることにより、発泡性接着部55のうち下接合片43に対向する面55bが各スリット部96で開口されている。すなわち、発泡性接着部55が各スリット部96で複数個に分割されている。
また、各スリット部96の下端部96aが差込部95の先端部95a近傍に形成され、差込部95の先端部95aが凸形湾曲面状(球面状)に形成されている。よって、差込部95の先端部95aを貫通孔38に容易に差し込むことができる。
【0087】
さらに、発泡性接着部55を各スリット部96で複数個に分割することにより、仮止部94を貫通孔38に差し込む際に、差込部95とともに嵌入部53や発泡性接着部55を各スリット部96側に移動させることができる。
これにより、嵌入部53を貫通孔38に対応させて縮径させることができるので、貫通孔38の孔径を小さくしても仮止部94を貫通孔38に容易に差し込むことができる。
【0088】
貫通孔38の孔径を小さく抑えることにより、第2壁部32(すなわち、閉断面枠部11)の剛性・強度を高めることができる。
さらに、嵌入部53を貫通孔38に対応させて縮径させることにより、貫通孔38に対する発泡性接着体93の抜止めが一層良好に可能となり、かつ、発泡性接着体93のガタツキを防止できる。
【実施例8】
【0089】
実施例8に係る車体骨格構造100を図13に基づいて説明する。
図13(a),(b)に示すように、実施例8の車体骨格構造100は、実施例1の第2外パネル31および発泡性接着体16を第2外パネル102および発泡性接着体107に代えたもので、その他の構成は実施例1の車体骨格構造10と同様である。
【0090】
第2外パネル102は、金属製の板材であり、第2壁部103に貫通孔104が形成され、貫通孔104の縁部から貫通孔104内に向けて突出する係止片105を有する。貫通孔104が一対の長辺104aと一対の短辺104bで略矩形状に形成されている。一方の短辺104bから他方の短辺104bに向けて係止片105が弾性変形可能に張り出されている。
【0091】
貫通孔104に発泡性接着体107の仮止部108が差し込まれる。仮止部108は、基部108aから先端部108bまで外径が均一に保たれ、円柱状に形成されている。仮止部108を円柱状に形成することにより、発泡性接着体107の形状を簡素化できる。
発泡性接着体107は、仮止部108および発泡性接着部55でクリップ状に形成されている。
【0092】
貫通孔104に発泡性接着体107の仮止部108が矢印Iの如く差し込まれることにより、仮止部108が係止片105の先端部105aに当接(干渉)する。この状態で、仮止部108が貫通孔104に差し込まれることにより、係止片105が仮止部108の差込方向に弾性変形する。
【0093】
このように、仮止部108を貫通孔104に差し込む際に、仮止部108で係止片105を弾性変形させることにより、仮止部108を貫通孔104に容易に差し込むことができる。
また、係止片105を弾性変形させて貫通孔104に仮止部108を差し込むように構成することにより、仮止部108(すなわち、発泡性接着体107)を硬質の発泡性接着剤で形成することが可能になる。
【0094】
さらに、貫通孔104に差し込まれた仮止部108に係止片105が当接された状態に保たれる。よって、貫通孔104から仮止部108が抜け出すことを係止片105で防止でき、円柱状の仮止部108を貫通孔104に確実に仮止めできる。
【0095】
図13(c)に示すように、発泡性接着体107を加熱して発泡させることにより、発泡した発泡性接着部55が隙間45に埋められ、発泡された発泡性接着部55で第2壁部103および下接合片43が接合される。
これにより、車体骨格構造100は、実施例1の車体骨格構造10と同様に、剛性・強度が好適に確保される。
【0096】
なお、実施例8では、係止片105を弾性変形させる例について説明したが、これに限らないで、係止片105を塑性変形させて仮止部108に当接させた状態に保つことも可能である。
【実施例9】
【0097】
実施例9に係る車体骨格構造110を図14に基づいて説明する。
図14(a),(b)に示すように、実施例9の車体骨格構造110は、実施例1の第2外パネル31および発泡性接着体16を第2外パネル112および発泡性接着体117に代えたもので、その他の構成は実施例1の車体骨格構造10と同様である。
【0098】
第2外パネル112は、金属製の板材であり、第2壁部113に開口部114が略矩形状に形成され、開口部114の近傍113aに係合孔115が略矩形状に形成されている。
発泡性接着体117は、仮止部118および発泡性接着部119が側面視略U字形のクリップ状に形成され、仮止部118および発泡性接着部119間にクリップ隙間123が確保されている。クリップ隙間123に第2外パネル112の第2壁部113が嵌入されることにより、第2壁部113が仮止部118および発泡性接着部119で挟み込まれる。
発泡性接着部119は、仮止部118に対峙する面119aから仮止部118に向けて爪部121が突出されている。
【0099】
発泡性接着体117を開口部114側から係合孔115に向けて矢印Jの如く移動し、仮止部118および発泡性接着部119間のクリップ隙間123に第2壁部113を嵌入する。この状態で、発泡性接着体117を矢印Jの如くスライド移動することにより、第2壁部113を仮止部118および発泡性接着部119で挟み込むことができる。
【0100】
発泡性接着体117を矢印Jの如く引き続きスライド移動することにより係合孔115に爪部121が係合する。これにより、発泡性接着体117を第2壁部113に容易に取り付けることができ、かつ、発泡性接着体117を第2壁部113に確実に仮止めできる。この状態において、第2外パネル112を第1内パネル14(図14(c)参照)に接合することにより、発泡性接着部119が隙間45(図14(c)参照)に配置される。
【0101】
このように、発泡性接着体117を仮止めする際に、仮止部118および発泡性接着部119のクリップ隙間123に第2壁部113を嵌入させることにより、仮止部118の変形量を小さく抑えることができる。
これにより、仮止部118(すなわち、発泡性接着体117)を硬質の発泡性接着剤で形成することが可能になる。
【0102】
図14(c)に示すように、発泡性接着体117を加熱して発泡させることにより、発泡した発泡性接着部119が隙間45に埋められ、発泡された発泡性接着部119で第2壁部113および下接合片43が接合される。
これにより、車体骨格構造110は、実施例1の車体骨格構造10と同様に、剛性・強度が好適に確保される。
【0103】
なお、実施例9では、第2外パネル112の第2壁部113に発泡性接着体117を挟み込んで仮止めする例について説明したが、これに限らないで、内パネル14の下接合片43を発泡性接着体117で挟み込んで仮止めすることも可能である。
また、実施例9では、発泡性接着部119に爪部121を設けた例について説明したが、これに限らないで、仮止部118に爪部121を設けることも可能である。
【実施例10】
【0104】
実施例10に係る発泡性接着体125を図15に基づいて説明する。
図15(a)に示すように、実施例10の発泡性接着体125は、仮止部126および発泡性接着部127がそれぞれ別部材で形成されている。
【0105】
仮止部126は、樹脂材などの軟質材料で形成されている。よって、仮止部126を第2壁部32の貫通孔38に矢印Kの如く差し込む際に、貫通孔38の周縁38aに仮止部126を当接させることにより、仮止部126を容易に変形させることができる。
これにより、第2壁部32の貫通孔38に仮止部126を容易に差し込むことができ、発泡性接着体125を第2壁部32に仮止めする作業性を高めることができる。
【0106】
発泡性接着部127は、仮止部126の頭部126aに設けられている。この発泡性接着部127は、実施例1と同様に、発泡性接着剤で一体に形成されている。
発泡性接着剤は、金属接着性樹脂を主成分とし、加熱により発泡することにより、第2壁部32および下接合片43に接着し、かつ、高剛性となる特性を備える成形組成物である。
【0107】
図15(b)に示すように、発泡性接着部127を加熱して発泡させることにより、発泡した発泡性接着部127が隙間45に埋められ、発泡された発泡性接着部127で第2壁部32および下接合片43が接合される。
【0108】
つぎに、実施例11〜12を図16図29に基づいて説明する。なお、図16図29において、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例11】
【0109】
実施例11に係る車体骨格構造134を図16図20に基づいて説明する。
図16に示すように、車体側部130は、車室131の床部がフロアパネル132で形成され、フロアパネル132の側部が車体骨格構造134で支えられている。車体骨格構造134は、車体側部130の下部を補強することにより車体側部130の剛性・強度を確保するためのサイドシルである。
車体骨格構造134の前端部からフロントピラー137が立設されている。車体骨格構造134の中央部からセンタピラー138が立設されている。
【0110】
図17に示すように、車体骨格構造134は、略矩形状の枠体に形成された閉断面枠部135と、閉断面枠部135の閉断面136内に配置された内パネル群139と、内パネル群139および閉断面枠部135を接着する発泡性接着体16とを備えている。
閉断面枠部135は、断面略ハット状に形成された第1外パネル141と、第1外パネル141に接合される第2外パネル151とを備えている。
【0111】
第1外パネル141は、金属製の板材であり、第1壁部142、第1上折曲部143、第1下折曲部144、第1上フランジ145および第1下フランジ146を有する。
第1壁部142は、上下方向に延びることにより平坦状に立設されている。第1上折曲部143は、第1壁部142の上端部から外方に向けて延びるように折り曲げられている。第1下折曲部144は、第1壁部142の下端部から外方に向けて延びるように折り曲げられている。
第1上フランジ145は、第1上折曲部143の外端部から上方に向けて張り出されるように折り曲げられている。第1下フランジ146は、第1下折曲部144の外端部から下方に向けて張り出されるように折り曲げられている。
【0112】
第1壁部142、第1上折曲部143および第1下折曲部144で断面略U字状の部位が形成されている。また、第1壁部142、第1上折曲部143、第1下折曲部144、第1上フランジ145および第1下フランジ146で第1外パネル141が断面略ハット状に形成されている。
【0113】
第2外パネル151は、第1外パネル141と左右方向において略対象に形成された部材である。第2外パネル151は、金属製の板材であり、第2壁部152、第2上折曲部153、第2下折曲部154、第2上フランジ155および第2下フランジ156を有する。
【0114】
第2壁部152は、上下方向に延びることにより平坦状に立設されている。第2上折曲部153は、第2壁部152の上端部から内方に向けて延びるように折り曲げられている。第2下折曲部154は、第2壁部152の下端部から内方に向けて延びるように折り曲げられている。
第2上フランジ155は、第2上折曲部153の内端部から上方に向けて張り出されるように折り曲げられている。第2下フランジ156は、第2下折曲部154の内端部から下方に向けて張り出されるように折り曲げられている。
【0115】
第2壁部152、第2上折曲部153および第2下折曲部154で断面略U字状の部位が形成されている。また、第2壁部152、第2上折曲部153、第2下折曲部154、第2上フランジ155および第2下フランジ156で第2外パネル151が断面略ハット状に形成されている。
【0116】
第1上フランジ145および第2上フランジ155がスポット溶接で接合され、第1下フランジ146および第2下フランジ156がスポット溶接で接合されている。これにより、第1外パネル141および第2外パネル151でサイドシルの閉断面枠部135が形成されている。
閉断面枠部135の内部に閉断面136が形成されている。具体的には、閉断面136は、第1壁部142、第1上折曲部143、第1下折曲部144、第2壁部152、第2上折曲部153および第2下折曲部154で略矩形状に形成されている。
【0117】
図18に示すように、閉断面枠部135の閉断面136内に金属製の内パネル群139が配置されている。内パネル群139は、閉断面136の前端部に配置された第1内パネル161と、第1内パネル161の車体後方に配置された第2内パネル162および第3内パネル163と、第3内パネル163の車体後方に配置された第4内パネル164とを備えている。
【0118】
図17図19に示すように、第4内パネル164は、閉断面枠部135の長手方向(すなわち、車体前後方向)と直交するように配置された遮蔽壁171と、遮蔽壁171の外周縁171aから張り出された第1〜第6の接合片172〜177とを有する。
【0119】
遮蔽壁171は、閉断面枠部135の閉断面136内に長手方向と直交するように配置され、外周縁171aが閉断面枠部135の内面135aに沿って略六角形に形成されている。第1〜第6の接合片172〜177は、遮蔽壁171の外周縁171aから閉断面枠部135の内面135aに沿って車体前方に向けて張り出されるように折り曲げられている。
【0120】
第6接合片177が第1上折曲部143にスポット溶接で接合されている。第5接合片176が第1壁部142にスポット溶接で接合されている。第4接合片175が第1下折曲部144にスポット溶接で接合されている。
【0121】
第2接合片173は、閉断面枠部135の第2壁部152に沿って張り出され、凹部181が形成されている。凹部181は、底部181aが第2壁部152から離れるように閉断面136の中心に向けて凹状に形成されている。これにより、凹部181(特に、凹部181の底部181a)および第2壁部152間に隙間184が形成されている。
凹部181の底部181aに貫通孔182が円弧状に形成され、貫通孔182に発泡性接着体16が車外側から矢印Lの如く差し込まれている。発泡性接着体16が貫通孔182に差し込まれることにより、凹部181(具体的には、底部181a)に発泡性接着体16が仮止めされている。
【0122】
この状態において、発泡性接着体16が加熱により発泡し、発泡した発泡性接着体16の発泡性接着部55で隙間184が埋められる。発泡した発泡性接着部55が凹部181および第2壁部152に接着される。よって、凹部181および第2壁部152が、発泡した発泡性接着部55で接合される。
【0123】
ここで、第4内パネル164の遮蔽壁171が閉断面枠部135の長手方向と直交させて取り付けられている。これにより、閉断面枠部135の閉断面136が変形することを遮蔽壁171で防ぐことができ、閉断面枠部135の剛性・強度を遮蔽壁171で高めることができる。
さらに、凹部181および第2壁部152を発泡性接着部55で接合することにより、第4内パネル164を閉断面枠部135に接合する部位を、スポット溶接の接合部位に加えて増すことができる。
これにより、閉断面枠部135の閉断面136が変形することを遮蔽壁171(すなわち、第4内パネル164)で好適に防ぐことができ、車体骨格構造(すなわち、サイドシル)134の剛性・強度を好適に確保できる。
【0124】
図20に示すように、第2内パネル162および第3内パネル163は、第2接合片186で連結されている。
第2内パネル162および第3内パネル163は、第2接合片186が第4内パネル164と異なるだけで、他の部位が第4内パネル164と類似している。よって、以下、第2内パネル162および第3内パネル163の第2接合片186について説明して他の部位の説明を省略する。
【0125】
第2接合片186は、第4内パネル164の第2接合片173と同様に、閉断面枠部135の第2壁部152に沿って張り出され、凹部187が形成されている。凹部187は、第4内パネル164の凹部181と同様に、底部187aが第2壁部152から離れるように閉断面136の中心に向けて凹状に形成されている。これにより、凹部187(特に、凹部187の底部187a)および第2壁部152間に隙間188が形成されている。
【0126】
凹部181の底部181aに貫通孔(図示せず)が円弧状に形成され、この貫通孔に発泡性接着体16が車外側から差し込まれている。発泡性接着体16が貫通孔に差し込まれることにより、凹部187(具体的には、底部187a)に発泡性接着体16が仮止めされている。
【0127】
この状態において、発泡性接着体16が加熱により発泡し、発泡した発泡性接着体16の発泡性接着部55で隙間188が埋められる。発泡した発泡性接着部55が凹部187および第2壁部152に接着される。よって、凹部187および第2壁部152が、発泡した発泡性接着部55で接合される。
これにより、第2内パネル162および第3内パネル163で車体骨格構造(すなわち、サイドシル)134の剛性・強度を好適に確保できる。
【0128】
図18に戻って、第1内パネル161は、第4内パネル164と類似しているので、以下、第1内パネル161の説明を省略する。
第1内パネル161も、第2〜第4の内パネル162〜164と同様に、車体骨格構造(すなわち、サイドシル)134の剛性・強度を好適に確保できる。
【0129】
つぎに、実施例11の閉断面枠部135に第4内パネル164を接合する例を図21図22に基づいて説明する。
図21(a)に示すように、第1外パネル141の第1壁部142に第4内パネル164の第5接合片176をスポット溶接で接合する。また、第1上折曲部143に第6接合片177をスポット溶接で接合する。さらに、第1下折曲部144に第4接合片175をスポット溶接で接合する。
また、第2接合片173の凹部181に形成された貫通孔182に発泡性接着体16の仮止部51を矢印Mの如く差し込み、凹部181に発泡性接着体16を予め仮止めする。
【0130】
図21(b)に示すように、第1外パネル141の第1上フランジ145に第2外パネル151の第2上フランジ155を矢印Nの如く当接する。さらに、第1外パネル141の第1下フランジ146に第2外パネル151の第2下フランジ156を矢印Nの如く当接する。
【0131】
図22(a)に示すように、第1外パネル141の第1上フランジ145に第2外パネル151の第2上フランジ155をスポット溶接で接合する。さらに、第1外パネル141の第1下フランジ146に第2外パネル151の第2下フランジ156をスポット溶接で接合する。
これにより、第1外パネル141および第2外パネル151で閉断面枠部135が形成され、閉断面枠部135の内部に閉断面136が形成される。
【0132】
さらに、第2壁部152および凹部181間に隙間184が確保され、隙間184に発泡性接着体16の発泡性接着部55が配置される。凹部181に発泡性接着体16を予め仮止めすることより、発泡性接着体16の発泡性接着部55を、第2壁部152および凹部181間の隙間184に簡単に配置することができる。
【0133】
図22(b)に示すように、発泡性接着体16を加熱して発泡させることにより、発泡した発泡性接着部55が隙間184に埋められる。よって、発泡された発泡性接着部55が第2壁部152および凹部181に接着され、発泡された発泡性接着部55で第2壁部152および凹部181が接合される。
これにより、車体骨格構造(すなわち、サイドシル)134の剛性・強度を好適に確保することができる。
【0134】
なお、実施例11では、第2接合片173に凹部181を形成して閉断面枠部135の第2壁部152との間に隙間184を形成した例について説明したが、これに限らないで、第2壁部152に凹部を形成して第2接合片173との間に隙間を形成することも可能である。
あるいは、第2接合片173を第2壁部152から離すことにより第2接合片173および第2壁部152間に隙間を形成することも可能である。
【実施例12】
【0135】
実施例12に係る車体骨格構造195を図23図27に基づいて説明する。
図23図24に示すように、車体後部190は、車室191の床部がフロアパネル193で形成され、フロアパネル193の後端部193aが車体骨格構造195で支えられている。車体骨格構造195は、車体後部190を補強することにより車体後部190の剛性・強度を確保するためのリヤバルクヘッドである。
車体骨格構造195の車体前方にサイドシル197が設けられ、車体骨格構造195の車体後方にリヤフロアフレーム198が設けられている。
【0136】
図25図26に示すように、車体骨格構造195は、略矩形状の枠体に形成された中空状の閉断面枠部201と、閉断面枠部201を接着する発泡性接着体16とを備えている。
閉断面枠部201は、フロアパネル193の後端部193aに沿ってホイールハウス194まで車幅方向左側に延出され、さらにホイールハウス194に沿って上方に延出されることにより正面視略L字状に形成されている。
【0137】
図26図27に示すように、閉断面枠部201は、車外199側に対峙する第1外パネル202と、第1外パネル202に接合されて車室191側に対峙する第2車室側外パネル(第2外パネル)203と、第1外パネル202に接合されて荷室192側に対峙する第2荷室側外パネル(第2外パネル)204とを備えている。
第1外パネル202、第2車室側外パネル203および第2荷室側外パネル204(即ち、複数の外パネル)が接合されて組み付けられることにより、閉断面枠部201の内部に閉断面206が略矩形状に形成されている。
【0138】
第1外パネル202は、ホイールハウス194(具体的には、インナホイールハウス)の一部を構成する略平坦状の部位である。
第2車室側外パネル203は、正面視略L字状に延長され(図25も参照)、断面略平坦状に形成されている。第2車室側外パネル203は、車室191側に対峙する第2車室壁部208と、第2車室壁部208の外端部から第1外パネル202に沿って車体前方に折り曲げられた第2車室フランジ209とを有する。
【0139】
第2車室側外パネル203は、閉断面枠部201の長手方向(矢印O方向(図25参照))において第2上車室パネル211および第2下車室パネル214に分割されている。第2上車室パネル211は下端部に第2上車室分割部212を有する。第2下車室パネル214は上端部に第2下車室分割部215を有する。
第2下車室分割部215に第2上車室分割部212が車室191側から重ね合わされている。
【0140】
第2荷室側外パネル204は、正面視略L字状に延長され、断面略V字状に形成されている。
第2荷室側外パネル204は、荷室192の車体後方側に対峙する第2荷室後壁部221と、第2荷室後壁部221の内端部から車体前方側に折り曲げられて荷室192の内側に対峙する第2荷室内壁部222と、第2荷室後壁部221の外端部から第1外パネル202に沿って車体後方に折り曲げられた第2荷室後フランジ223と、第2荷室内壁部222の前端部から第2車室壁部208の内端部208aに沿って車幅方向内側に折り曲げられた第2荷室内フランジ224とを有する。
【0141】
第2荷室側外パネル204は、閉断面枠部201の長手方向(矢印O方向(図25参照))において第2上荷室パネル226(内パネル)および第2下荷室パネル231に分割されている。第2上荷室パネル226は下端部に第2上荷室分割部(内パネル)227を有する。第2下荷室パネル231は上端部に第2下荷室分割部232を有する。
第2上荷室分割部227に第2下荷室分割部232が荷室192側から重ね合わされている。
【0142】
第2下車室パネル214の第2下車室分割部215に第2上車室パネル211の第2上車室分割部212が車室191側から重ね合わされることにより、第2上車室分割部212および第2下車室分割部215で車室重なり部217が形成されている。車室重なり部217が接合部218においてミグ溶接により接合されている。
これにより、第2上車室パネル211および第2下車室パネル214が接合されて第2車室側外パネル203が形成されている。第2車室側外パネル203の第2車室フランジ209および第1外パネル202が接合部219においてスポット溶接により接合されている。
【0143】
第2上荷室パネル226の第2上荷室分割部227に第2下荷室パネル231の第2下荷室分割部232が荷室192側から重ね合わされることにより、第2上荷室分割部227および第2下荷室分割部232で荷室重なり部234が形成されている。
荷室重なり部234のうち荷室192内側の内重なり部235が接合部236においてミグ溶接により接合されている。また、荷室重なり部234のうち荷室192後側の後重なり部237が発泡性接着体16で接合されている。
【0144】
これにより、第2上荷室パネル226および第2下荷室パネル231が接合されて第2荷室側外パネル204が形成されている。第2荷室側外パネル204の第2荷室後フランジ223および第1外パネル202が接合部241においてスポット溶接により接合されている。
また、第2荷室側外パネル204の第2荷室内フランジ224および第2車室側外パネル203(具体的には、第2車室壁部208)の内端部208aが接合部242においてスポット溶接により接合されている。
第1外パネル202、第2車室側外パネル203および第2荷室側外パネル204が接合されて組み付けられることにより閉断面枠部201が形成されている。
【0145】
ここで、荷室重なり部234の後重なり部237について詳しく説明する。なお、後重なり部237は荷室192の後側に対峙する部位であり、例えばミグ溶接用の工具を後重なり部237まで搬入することが難しい。このため、後重なり部237をミグ溶接で接合することが困難になる。そこで、後重なり部237を発泡性接着体16で接合するようにした。
【0146】
すなわち、後重なり部237は、第2上荷室分割部227のうち荷室192後側の上後部位227aと、第2下荷室分割部232のうち荷室192後側の下後部位232aとを有する。
上後部位227aに凹部245が形成されている。凹部245は、底部245aが下後部位232aから離れるように閉断面206の中心に向けて凹状に形成されている。これにより、凹部245(特に、凹部245の底部245a)および下後部位232a間に隙間248が形成されている。
【0147】
凹部245の底部245aに貫通孔246が円弧状に形成され、貫通孔246に発泡性接着体16が荷室192後側から矢印Pの如く差し込まれている。発泡性接着体16が貫通孔246に差し込まれることにより、凹部245(具体的には、底部245a)に発泡性接着体16が仮止めされている。
この状態において、発泡性接着体16が加熱により発泡し、発泡した発泡性接着体16の発泡性接着部55で隙間248が埋められる。発泡した発泡性接着部55が凹部245および下後部位232aに接着される。ここで、凹部245が上後部位227aに形成されている。
【0148】
よって、凹部245および下後部位232aが発泡した発泡性接着部55で接合されることにより、上後部位227aおよび下後部位232a(すなわち、後重なり部237)が接合される。これにより、第2荷室側外パネル204の第2上荷室分割部227および第2下荷室分割部232が後重なり部237で補強され、閉断面枠部201の剛性・強度が高められる。
【0149】
つぎに、実施例12の閉断面枠部201を接合する例を図28、29に基づいて説明する。
図28(a)に示すように、第2上荷室分割部227の上後部位227aの凹部245に貫通孔246が形成されている。この貫通孔246に発泡性接着体16の仮止部51を荷室192後側から矢印Qの如く差し込む。仮止部51が貫通孔246に差し込まれることにより、凹部245に発泡性接着体16が仮止めされる。
凹部245に発泡性接着体16が仮止めされた状態で、第2上荷室分割部227に第2下荷室分割部232を矢印Rの如く重ね合わせる。
【0150】
図28(b)に示すように、第2下車室分割部215および第2上車室分割部212の車室重なり部217を接合部218においてミグ溶接で接合する。また、第2車室フランジ209および第1外パネル202を接合部219においてスポット溶接で接合する。
さらに、第2上荷室分割部227および第2下荷室分割部232の荷室重なり部234のうち荷室192内側の内重なり部235を接合部236においてミグ溶接で接合する。また、第2荷室後フランジ223および第1外パネル202を接合部241においてスポット溶接で接合する。
さらに、第2荷室内フランジ224および第2車室壁部208の内端部208aを接合部242においてスポット溶接で接合する。
【0151】
ここで、後重なり部237の上後部位227aおよび下後部位232aは、ミグ溶接などで接合することが困難な部位である。そこで、上後部位227aの凹部245に発泡性接着体16を仮止めして、後重なり部237を発泡性接着体16で接合するようにした。
【0152】
図29に示すように、発泡性接着体16を加熱により発泡させて、発泡した発泡性接着体16の発泡性接着部55で隙間248を埋める。よって、凹部245および下後部位232a(すなわち、後重なり部237)が、発泡した発泡性接着部55で接合されることにより、上後部位227aおよび下後部位232a(すなわち、後重なり部237)が接合される。
このように、後重なり部237がミグ溶接などで接合することが困難な場合でも、後重なり部237を発泡性接着体16で接合することができる。これにより、第1外パネル202、第2車室側外パネル203および第2荷室側外パネル204を強固に組み付けることができ、閉断面枠部201の剛性を確保できる。
【0153】
なお、実施例12では、上後部位227aに凹部245を形成して後重なり部237間に隙間248を形成した例について説明したが、これに限らないで、下後部位232aに凹部を形成して後重なり部237間に隙間を形成することも可能である。
あるいは、上後部位227aを下後部位232aから離すことにより後重なり部237間に隙間を形成することも可能である。
【0154】
なお、本発明に係る車体骨格構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1〜12で示した車体骨格構造、閉断面枠部、閉断面、内パネル、発泡性接着体、第1、第2の外パネル、貫通孔、隙間、仮止部、差込部、嵌入部、発泡性接着部、案内孔、溝部、スリット部、係止片、係合孔、第1〜第4の内パネル、遮蔽壁、第1〜第6の接合片、凹部、第2車室側外パネル、第2荷室側外パネル、第2上下の車室分割部、車室重なり部、第2上下の荷室分割部および荷室重なり部などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、複数の外パネルで閉断面枠部が形成され、閉断面枠部の閉断面内に内パネルが設けられた車体骨格構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0156】
10,60,70,100,110,134,195…車体骨格構造
11,135,201…閉断面枠部
12,136,206…閉断面
14,227…内パネル
16,74,80,86,93,107,117,125…発泡性接着体
21,31,102,112,141,151,202,203,204…第1、第2の外パネル(複数の外パネル)
38,62,104,182,246…貫通孔
43a…発泡性接着部に対峙する部位
45,184,188,248…隙間
51,75,81,87,94,108,118,126…仮止部
52,76,82,88,95…差込部
53…嵌入部
55,119,127…発泡性接着部
55b…発泡性接着部のうち下接合片に対向する面(閉断面枠部、内パネルの他方に対向する面)
72…案内孔
52b,76a,82a,88a,95a…差込部の先端部
52a,76b,82b,88b…差込部の基部
77,83…溝部
89,96…スリット部
105…係止片
115…係合孔
135a…閉断面枠部の内面
161〜164…第1〜第4の内パネル(内パネル)
171…遮蔽壁
171a…遮蔽壁の外周縁
172〜177,186…第1〜第6の接合片(接合片)
181,187,245…凹部
203…第2車室側外パネル(第2外パネル)
204…第2荷室側外パネル(第2外パネル)
212,215…第2上下の車室分割部(分割部)
217…車室重なり部(重なり部)
227…第2上荷室分割部(分割部、内パネル)
232…第2下荷室分割部(分割部)
234…荷室重なり部(重なり部)
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