(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441321
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】超音波伝送による改良型検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/30 20060101AFI20181210BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20181210BHJP
G01N 29/265 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
G01N29/30
G01N29/44
G01N29/265
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-516218(P2016-516218)
(86)(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公表番号】特表2016-520202(P2016-520202A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】FR2014051202
(87)【国際公開番号】WO2014191661
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】1354956
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルセ−コレラ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】シャテリエ,ジャン−イブ
(72)【発明者】
【氏名】デュバル,ジェレミー
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−263467(JP,A)
【文献】
特開2007−155724(JP,A)
【文献】
特開平06−109712(JP,A)
【文献】
特開平03−205552(JP,A)
【文献】
特開2004−361232(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0051177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波伝送による対象物(O)の検査方法にして、超音波ビームと前記対象物(O)を介して伝送された超音波ビームの振幅を測定することとによる前記対象物への走査が実施され、前記測定は、超音波ビームを電気信号に変換することと、前記信号に増幅ゲインを加えることと、前記信号の振幅を測定することとを備え、
そこから、照射方向に従った前記対象物の映像面の各点が、前記対象物を介して前記点に伝送された超音波ビームの振幅に結び付けられるマッピングを推定する、検査方法であって、
検査されるべき対象物と同一の幾何学形状を有する対比試験片上で前記走査および前記振幅測定(1100)を、そこから前記試験片のマッピングを推定する(1200)ために実施するステップにおいて、振幅測定用に加えられる増幅ゲインは所定の対比ゲイン(Gref)であるステップと、
マッピングの全ての点について、対比試験片を介して伝送される超音波ビーム(Ac)の定振幅を得るために、対比試験片のマッピングの複数の点に対して、走査の対応する点で対比ゲイン(Gref)に対してなされるゲインの補正を決定する(1300)ステップと、
走査の様々な点に、先に決定されたゲイン補正から補正された対比ゲイン(Gref)に対応する増幅ゲイン(Gc)を加えることによって、検査されるべき対象物(O)上で前記走査および前記振幅測定を実施する(2100)ステップとから成るステップとを備え、
対比ゲイン(Gref)が前記対比試験片を介して伝送された超音波の振幅についての増幅器のゲインであり、
増幅ゲイン(Gc)が前記対比試験片を介して伝送された超音波の振幅が走査の全ての点で一定になるように選択されるゲインであることを特徴とする検査方法。
【請求項2】
対象物のマッピング(2200)が、検査されるべき対象物(O)への前記振幅測定から推定され、その結果得られたマッピングは、対象物を介して伝送された振幅に関して異常を検出するべく分析される(2300)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検査されるべき対象物と対比試験片とは対称軸のまわりで回転対称であり、超音波ビームの照射方向は対称軸に関して放射状であり、対比試験片は、対比試験片の表面と対称軸まわりの径方向面との交差部の、前記対比試験片の線に沿って走査される、請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
検査されるべき対象物と対比試験片とが複合材料を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項5】
対比試験片を介して伝送される定振幅(Ac)が、照射される超音波ビームの振幅(As)の60%より大きく、有利には前記振幅の70%から90%の間であり、好ましくは前記振幅の80%と等しい、請求項1から4のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項6】
走査の点で対比ゲイン(Gref)になされるべきゲイン補正が、対比試験片の対応する点への走査と同時に決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項7】
ブレード(10)の検査のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項8】
ブレードケーシングの検査のための、請求項3に記載の方法の使用。
【請求項9】
ターボ機械ファンのブレード(10)の検査のための請求項1から6のいずれか一項に記載の方法の使用であって、前記ブレードは複合材料から形成され、その前縁部に金属補強材(11)も貼り付けられ、前記方法は付着異常を検出する方法の使用。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実施する超音波伝送による対象物の検査システム(100)にして、
超音波ビームの照射探触子(110)と、探触子によって照射された超音波ビームによって前記対象物の走査を実施するように適合された探触子の走査の制御手段(120)と、
前記対象物を介して伝送された超音波ビームを電気信号に変換するように適合された超音波受信器(130)と、
受信器(130)によって得られた電気信号に増幅ゲインを加えるように適合された増幅器(142)を備える処理ユニット(140)と、増幅された信号の振幅を測定し、前記振幅測定から、照射方向に従った前記対象物の映像面の各点が前記対象物を介して前記点に伝送された振幅に結び付けられたマッピングを推定するように構成された制御ユニット(143)と、を備えるシステムであって、
制御ユニット(143)は、超音波ビームによる対比試験片への走査から所定の対比ゲイン(Gref)で実施されたマッピングの複数の点について、マッピングの全ての点について対比試験片を介して伝送される定振幅(Ac)を得るために、走査の対応する点で対比ゲイン(Gref)になされるべきゲイン補正を決定するように、かつ、
検査されるべき対象物への走査および前記振幅測定中に、超音波ビームの走査の様々な点に、そのように決定されたゲイン補正の関数として補正された対比ゲイン(Gref)に対応する増幅ゲイン(Gc)を加えるために増幅器(142)を制御するように、さらに適合されることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波伝送による対象物の非破壊検査方法において、検査対象物の体積内に存在する空隙、層間剥離、き裂などの内部異常、または検査対象物がいくつかの部片を連結することによって形成される場合の付着欠陥を検出するための非破壊検査方法の分野に関する。
【0002】
本発明は特に、ブレードやターボ機械のブレードケーシングなどの複雑な幾何学形状を有する部片の検査に適用される。
【背景技術】
【0003】
超音波による様々な非破壊的制御技法が既に知られている。公知の技法に、反射による制御がある。これは、検査されるべき対象物への走査が所定のゲインを備えた超音波ビームによって実施され、対象物の内部構造の変質を検出するために、反射されるビームの振幅が対象物によって測定される。
【0004】
しかし、超音波反射による制御方法は、超音波を実質的に吸収する材料、例えば複合材料などで製作された対象物には適合されない。それにも関わらず、ターボ機械の構成要素、例えばブレードまたはブレードケーシングなどを製作するために、複合材料が現在は使用されている。
【0005】
この場合、より適合された検査方法に、「C−スキャン」タイプの表示法を使用した伝送による超音波制御がある。これは、制御されるべき部片の対向両面へのアクセスを含む。次いで発信器の反対側に受信器が配置され、それが部片を介して伝送されたエネルギーを回復する。界面または異常物などの反射物はこのエネルギーの減少(a drop)によって検出されるが、その位置を部片の厚み内で突き止めることは可能ではない。
【0006】
この振幅測定から、マッピングが遂行される。これは超音波ビームの方向での検査対象物の映像を表示し、各点が振幅の関数として色付けされる。ターボ機械のブレードの前縁部のレベルで作られたそのようなマッピングが
図4aに示される。暗い区域は、伝送された超音波ビームの振幅が弱い、即ち減衰化が高い区域に対応する。
【0007】
超音波ビームの振幅の縮小は、通過を受ける材料の厚みと遭遇される欠陥部との両方に依存する。例えば、超音波ビームの経路上で検査対象物内に空洞が発見される場合、超音波ビームはこの空洞を介して伝送されず、したがってこの空洞を通して伝送される振幅は、最初の照射振幅に対して大きく縮小される。
【0008】
したがって、検査対象物が複雑な幾何学形状を有する場合、例えばターボ機械のブレードまたはブレードケーシングなどの場合には、超音波伝送による検査方法では、欠陥部を有する区域と通過を受ける材料の厚みが相当なものである区域とを、さらには部片の幾何学形状による探触子の位置合わせ不良とを区別することが不可能である。
【0009】
例えば、
図5aでは、図の左部はブレードの根元に対応し、右部はブレードの頭部に対応する。このブレードは
図1に示される。ブレードの根元に対応する
図5aのマッピングの左端部は暗い色付けを有して、ブレードのこのレベルで超音波を強力に吸収していることを示す。この強力な吸収は、この根元内の欠陥部にリンクされることも可能であり、またはブレードのこのレベルの厚みに起因する可能性もあるが、このマッピングでそれを決定することは可能でない。
【0010】
したがって、検査対象物の幾何学形状の複雑さを克服し、検査対象物の構造内の欠陥を対象物の厚みとは関係なく識別する、物体の検査方法が求められている。
【0011】
これが実現するには、方法が、走査毎かつピッチ毎に異なったゲインを有する超音波ビームによって同じ部片に多数の走査を行うこともあり得る。しかし、全ての部片が使用前に検査されなければならず、この方法は過剰な時間損失を生じることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、物体の構造内に存在する欠陥を即座に識別する、対象物の検査方法を提案することである。
【0013】
本発明の他の目的は、検査対象物のいかなる幾何学形状も使用することが可能となることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この点に関し、本発明の目的は、超音波伝送による対象物の検査方法において、前記対象物への走査は超音波ビームと、前記対象物を介して伝送された超音波ビームの振幅を測定することによって実施され、前記測定は、超音波ビームを電気信号に変換することと、前記信号に増幅ゲインを加えることと、前記信号の振幅を測定することとを備え、そこから、照射方向に従った前記対象物の映像面の各点が、前記対象物を介して前記点に伝送された超音波ビームの振幅に結び付けられるマッピングを推定する、検査方法であって、
検査されるべき対象物と同一の幾何学形状を有する対比試験片上で前記走査および前記振幅測定を、そこから前記試験片のマッピングを推定するために実施するステップにおいて、振幅測定用に加えられる増幅ゲインは所定の対比ゲインであるステップと、
マッピングの全ての点について、対比試験片を介して伝送される超音波ビームの定振幅を得るために、対比試験片のマッピングの複数の点に対して、走査の対応する点で対比ゲインに対してなされるゲインの補正を決定するステップと、
走査の様々な点に、先に決定されたゲイン補正から補正された対比ゲインに対応する増幅ゲインを加えることによって、検査されるべき対象物上で前記走査および前記振幅測定を実施するステップとから成るステップとを備えることを特徴とする方法である。
【0015】
有利に、しかし任意選択によって、本発明による方法は、さらに以下の特徴のうち少なくとも1つを有する。
【0016】
対象物のマッピングは、検査されるべき対象物への前記振幅測定から推定され、その結果得られたマッピングは、対象物を介して伝送された振幅に関して異常を検出するべく分析される。
【0017】
検査されるべき対象物と対比試験片とは軸対称であり、超音波ビームの照射方向は対称軸に
関して
放射状であり、対比試験片は、対比試験片の表面と
径方向面との交差
部の、前記試験片の線に沿って走査される。
【0018】
検査されるべき対象物と対比試験片とは複合材料を備える。
【0019】
対比試験片を介して伝送される定振幅は、照射される超音波ビームの振幅の60%より大きく、有利には前記振幅の70%から90%の間であり、好ましくは前記振幅の80%と等しい。
【0020】
走査の点で対比ゲインになされるべきゲイン補正は、対比試験片の対応する点への走査と同時に決定される。
【0021】
本発明は、ブレード、特に複合材料から形成された、金属補強材がさらに前縁部に貼り付けられたブレードを検査するための検査方法の使用にも関し、前記方法は付着異常を検出する、またはさらにはブレードケーシングを検査するものである。
【0022】
本発明の他の目的は、上記の検査方法を実施する超音波伝送による対象物の検査システムにおいて、
超音波ビームの照射探触子と、探触子によって照射された超音波ビームによって前記対象物の走査を実施するように適合された探触子の走査の制御手段と、
前記対象物を介して伝送された超音波ビームを電気信号に変換するように適合された超音波受信器と、
受信器によって得られた電気信号に増幅ゲインを加えるように適合された増幅器を備える処理ユニットと、増幅された信号の振幅を測定し、前記振幅測定から、照射方向に従った前記対象物の映像面の各点が前記対象物を介して前記点に伝送された振幅に結び付けられたマッピングを推定するように構成された制御ユニットと、を備えるシステムであって、
制御ユニットは、マッピングの全ての点に対して対比試験片を介して伝送される定振幅を得るために、超音波ビームによる対比試験片への走査から所定の対比ゲインで実施されたマッピングの複数の点について、マッピングの全ての点について対比試験片を介して伝送される定振幅(A
c)を得るために、走査の対応する点で対比ゲインになされるべきゲイン補正を決定するように、かつ、
検査されるべき対象物への走査および前記振幅測定中に、超音波ビームの走査の様々な点に、そのように決定されたゲイン補正の関数として補正された対比ゲインに対応する増幅ゲインを加えるために増幅器を制御するように、さらに適合されることを特徴とするシステムである。
【0023】
ここで提案される検査方法は対象物の幾何学形状を不要にすることを可能にして、検査の結果得られたマッピング上に示されるエネルギーの縮小が対象物の構造的欠陥のみにリンクされる。
【0024】
実際、欠陥がないことが分かっている対比試験片を使用すると、超音波受理信号ビームのゲインを照射点のレベルの検査対象物の厚みに用いることになる。このようにして、超音波ビームの振幅は、対象物が一定の厚みを呈示するように思えるべく修正される。最終的に、伝送振幅の変化は、検査対象物の欠陥にしか由来し得えず、対象物の厚みにリンクされるばらつきというものは解消される。
【0025】
したがって、この方法は複雑な幾何学形状を有する部片をより速く、向上された信頼性をもって検査する。
【0026】
非制限的な例としてここに与えられる添付の図面に関する以下の詳しい説明から、本発明の他の特徴、目的、および利点が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】既に述べられているが、ターボ機械のブレードを示す図である。
【
図2】超音波伝送による検査システムの概略図である。
【
図3】超音波伝送による検査方法の主なステップを示す図である。
【
図4a】超音波受理信号のゲインへの補正前に得られた対比ブレードのマッピングを示す図である。
【
図4b】超音波受理信号のゲインへの補正後に得られた対比ブレードのマッピングを示す図である。
【
図5a】超音波受理信号のゲインへの補正前に得られた検査済みブレードのマッピングを示す図である。
【
図5b】(
図5aは既に記述済み)超音波受理信号のゲインへの補正後に得られた検査済みブレードのマッピングを示す図である。
【
図6】ターボ機械のブレードケーシングの軸方向外形を示す図である。
【
図7a】超音波受理信号のゲインへの補正前に得られたブレードケーシングフランジのマッピングを示す図である。
【
図7b】超音波受理信号のゲインへの補正後に得られたブレードケーシングフランジのマッピングを示す図である。
【
図8a】超音波受理信号のゲインへの補正前に得られた検査済みブレードケーシングのマッピングを示す図である。
【
図8b】超音波受理信号のゲインへの補正後に得られた検査済みブレードケーシングのマッピングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2を参照すると、これは以下に説明される方法を実施するための、超音波伝送による対象物Oの検査システム100の概略図である。
【0029】
このシステムは超音波ビームの照射探触子110を備える。これは前記探触子の走査への制御手段120による所定の経路に従って移動される。
【0030】
探触対象物Oの他方側に受信器130が位置決めされる。
【0031】
探触子110および受信器130は圧電変換器であり、電気信号を機械的波動に、またその逆に変換する能力がある。その結果、探触子と受信器の役割は逆にされることが可能である。
【0032】
この場合、探触子は、超音波を照射する処理ユニット140の発生器141によって供給される信号によって電気的に励起され、受信器130は探触対象物を介して伝播されている超音波を電気信号に変換する。
【0033】
対象物を介して伝送される超音波ビームの振幅は以下のように測定される。受信器によって変換された電気信号は処理ユニット140に伝送される。処理ユニット140は、電気信号を好ましいゲインで増幅する増幅器142を備える。前記ゲインは対象物Oを介して伝送される超音波ビームの振幅のゲインに対応する。処理ユニットは、有利には処理器であることが可能な制御ユニット143をさらに備え、次いでこれが現時点で増幅されている電気信号の振幅を測定する。前記振幅は超音波ビームの振幅に対応する。
【0034】
制御ユニット143は、探触対象物の走査の各点に、走査の前記点のレベルで対象物を介して伝送される超音波ビームの振幅を結び付けるようにさらに適合される。この場合、「マッピング」という言葉は、点をそれぞれの振幅にこのように関係付けることを意味する。これは、走査の各点をその伝送振幅に依存した特定の色で表す対象物の2次元表示が後に続くか否かに関わらない。
【0035】
有利に、しかし任意選択で、検査システム100は前記マッピングを示す表示器150をさらに備える。
【0036】
制御ユニット142は、以下に示されるように、受信器130によって受け取られた超音波ビームに対して増幅器142によってなされたゲインを制御するようにも適合される。
【0037】
図3を参照すると、これは、先に述べられたシステムによって実施される、超音波伝送による対象物の検査方法の主なステップを示す。
【0038】
この方法は、「C−スキャン」タイプの超音波伝送による対象物の制御を実施することを備え、これは、検査されるべき対象物が超音波ビームで、対象物を介して伝送された超音波から受け取られた信号を所定のゲインで増幅することによって走査され、対象物を介して伝送された超音波ビームの振幅は増幅後に測定される第1の測定ステップと、これらの振幅測定から、対象物の2次元マッピングが設定され、このマッピングは、超音波ビームの照射方向に従った検査対象物の映像である、第2の解釈ステップとを備える。対象物yは色彩またはグレイの色調で表され、マッピングの各点はその色によって前記対象物を介して伝送された超音波ビームの振幅に結び付けられる。
【0039】
この制御は最初に初期化ステップ1000で対比試験片に行われて、この試験片に対して、前記試験片を介して伝送される超音波の振幅が一定であるように、増幅器142のゲインに対してなされるべき伝送信号のゲイン補正を推定する。
【0040】
次いで本方法は、検査されるべき各対象物Oの実際の検査ステップ2000を備え、これは、初期化ステップで超音波受信ゲインとして決定された補正からの補正ゲインを使用して「C−スキャン」タイプの制御を実施することを備える。
【0041】
次に、対比試験片で行われた初期化ステップ1000について詳しく説明がなされる。
【0042】
対比試験片は、検査されるべき対象物と同じ幾何学形状、即ち同じ寸法を有する試験片である。例えば、検査されるべき対象物がターボ機械のブレードである場合、対比試験片は同じデザインのブレードである。
【0043】
また、対比試験片は、それが欠陥を含まないことを検証する他の手段によって選択および制御されたものでなくてはならない。
【0044】
第1サブステップ1100では、対比試験片は、探触子によって所定の振幅A
sで照射される超音波によって走査される。
【0045】
受信器は超音波ビームを受け取り、対応する電気信号を処理ユニットに伝送する。
【0046】
処理ユニットの制御ユニット143は、走査の各点で、前記試験片を介して伝送された超音波の振幅A
tを増幅器142の所定の対比ゲインP
refについて測定し、そこから、サブステップ1200で、前記点のレベルで伝送された振幅を走査の各点にリンクするマッピングを推定する。
【0047】
制御ユニットはサブステップ1300で、走査の各点で、受け取られたエネルギーG
cの増幅ゲインを決定する。これは、前記試験片を介して伝送された超音波の振幅が走査の全ての点で一定になるように選択されるべきである。制御ユニットはそこから、補正ゲインG
cを得るために、走査の各点で対比ゲインG
refになされるべき補正のリストを推定する。
【0048】
このゲイン補正の決定は、試験片への全ての走査が完了した後になされることが可能である。代替方法として、かつ好ましくは、ゲイン補正の決定はリアルタイムでなされることが可能であり、即ち、試験片の走査点のレベルで対比ゲインG
refになされるべきゲイン補正の決定および付加は、制御ユニット143によって前記点の走査時に決定される。
【0049】
補正ゲインを備えて伝送される定振幅A
cは、好ましくは探触子によって照射される超音波の振幅A
sの60%よりも大きく、これによって獲得データの良好な解像度を達成する。有利には、補正ゲインを備えた振幅は、照射された超音波の振幅A
sの70%から90%の間であり、好ましくは80%程度である。これは、振幅と得られる解像度との間の良好な歩み寄りを表す。
【0050】
これは、以下に示される表と類似の表を作り出す。この表では、走査の各点は対比試験片の制御中に伝送される振幅の関数としてのゲイン補正にリンクされる。
【0052】
対比試験片に対して一定の補正された伝送振幅A
cを得るという事実は、走査の様々な点のレベルでの試験片の厚みのばらつきを考慮に入れること不要にする。その結果、後で前記補正から補正ゲインG
cを、対比試験片と同じ幾何学形状を有する被制御対象物に加えることによって、被制御物体の構造の欠陥から直接的に生じるのは伝送される振幅の変化だけということになる。
【0053】
図4aは、超音波の対比ゲインG
refを加えることによって対比試験片に対して得られたマッピングを示す。
図4bは、補正ゲインGcの場合を示す。マッピングは、試験片の厚みのばらつきに起因する伝送される振幅の変化が解消されること、補正後の伝送振幅A
cが一定であることをはっきりと示している。
【0054】
図3を参照して、次に対象物の検査ステップ2000について説明がなされる。
【0055】
先に示されたように、この対象物は、走査点に設定される補正のリストが有効であるように、対比試験片と同じ幾何学形状および同じ構造を有さなくてはならない。
【0056】
サブステップ2100で、対象物は超音波ビームによって走査され、走査の各点でのそのゲインは補正ゲインG
cであり、即ち、前に決定された補正が加えられている対比ゲインG
refである。
【0057】
受信器が超音波ビームを感知し、制御ユニットが補正ゲインを備えた増幅信号の振幅を測定する。
【0058】
サブステップ2200で、制御ユニット143は、探触対象物のマッピングを、対象物を介して伝送された、受信器によって受信された超音波の振幅を走査の各点に結び付けることによって実施する。有利に、このマッピングはステップ2300で表示器上に示され、走査の各点が、伝送振幅の減衰率または伝送振幅そのものを表す色彩またはグレイの色調で表される。
【0059】
図5aおよび
図5bは、それぞれ超音波の非補正受信ゲインおよび補正受信ゲインを備えた、ターボ機械のブレードに対して得られたマッピングを示す。
【0060】
このターボ機械のブレード10は複合材料から製作され、
図1に示されるように、金属補強材11をその前縁部上に有する。この検査方法は、とりわけ前縁部上の補強材の付着欠陥を識別するために使用される。この点に関して、ブレードの前縁部と金属補強材との間に吸収材料で製作された挿入部材を位置決めすることによって、
図5aおよび
図5bの試験ブレードで付着欠陥が疑似されている。
【0061】
図5bは、ゲイン補正が超音波受理信号に加えられた後は、挿入部材がはるかに視認可能であり、それらの形状がより明らかであることを示す。
【0062】
ステップ2400で実施される、その結果得られたマッピングへの操作者による、または自動的な分析は、例えば伝送振幅の閾値を設定し、走査のいろいろな点で得られた値を前記閾値と比較することによって、被試験対象物の内部構造内の欠陥に対応する、試験片を介して伝送された振幅から極めて容易に異常を検出し、または図表示する。したがって、この方法は、今日まで提案されてきた方法よりも速く欠陥を識別する。
【0063】
また、所与の幾何学形状に対してなされるゲイン補正が設定された後は、これらの補正は同じ幾何学形状の部片全てに適用されることが可能である。したがって、検査ステップ2000は、
図3で示されるようにステップ2000’および2000”で、ステップ1000を繰り返す必要なく、検査されるべき新しい対象物毎に繰り返されることが可能である。
【0064】
特定の実施形態によると、対比試験片と検査対象物とは軸対称、即ち軸のまわりで回転対称であり、それらの表面は対称軸のまわりの線の回転から生じる。これは、例えばターボ機械のブレードケーシングに当てはまる。
【0065】
したがって、軸まわり半径方向のこのような試験片の厚みのばらつきは、試験片の外周全体にわたって同一である。この点に関して、
図6はターボ機械のケーシングの厚みばらつきの外形の一例を示す。
【0066】
この場合、本方法の初期化ステップ1000を行うことは、試験片の半径方向の外形だけに対して、なされるべきゲイン補正のリストを決定することによって単純化することが可能であり、これらのゲイン補正は試験片の外周全体に対して置き換え可能である。
【0067】
その結果、超音波ビームによる対比試験片の走査ステップ1100で、超音波ビームの照射方向は対称軸に
関して
放射状であり、対比試験片は、対比試験片の表面と
径方向面との交差部
の、前記試験片の線に沿って走査される。有利に、対比試験片は単一線に従って走査されるが、得られたゲイン補正を検証するために、いくつかの線で走査が繰り返されることも可能である。
【0068】
次に、対象物の検査ステップ2000で、検査されるべき軸対称対象物の全てが、ゲイン補正を設定するために前記線の各点に対応する補正を加えることによってなされた走査の線と同一の超音波ビームの走査線に従って、探触される。
【0069】
本方法は、複合材料で製作されたターボ機械のブレードケーシングへの、材料内の空隙率の欠陥と層間剥離のタイプとを検出するための検査に特に適合される。これは、ケーシングをターボ機械の他の要素に固定するフランジのレベルを含むが、このフランジのサイズ(a bulk)が、小さな半径(角度90°)での検査を不可能にし、探触子の位置合わせ不良を引き起こして信号損失を引き起こす。
【0070】
図7aと
図7bは、ゲイン補正を加える前と後のブレードケーシングのフランジに対して得られたマッピングを示す。補正済み振幅で得られた画像ははるかに簡単に、部片に存在する欠陥を局在化させ、寸法決取りする。
【0071】
同様に、
図8aと
図8bは、ゲイン補正を加える前と後の、ケーシングに対してその流れのレベルで得られたマッピングを示す。ケーシングの構造内の矩形の欠陥もはるかに視認可能である。
【0072】
ここで提案される対象物の検査方法は、検査されるべき1つの種類の対象物に特段に限定される訳ではなく、ターボ機械のブレードまたはターボ機械のブレードケーシング、または厚みに多数のばらつきのある複雑な幾何学形状を有する任意の他の対象物に有利に適用される。
【0073】
より一般的には、本発明は、超音波吸収率の高い材料で製作された、即ち複合材料などで製作された任意の対象物、特に編組み状の3次元複合材料または3次元インタロック、即ち、例えばポリマー材料などのマトリックス中に補強構造が取り入れられたものに適用される。
【0074】
したがって、本方法はこれらの対象物を容易に制御し、さらにそれらが含む欠陥部を即座に表示する。