【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、添付の請求の範囲に記載のハイブリッドエネルギシステムにより解決される。
【0014】
以降の文脈において、「電気道路システム」あるいはERSという用語は、車両に電力を供給するための手段が設けられた道路ネットワークについて用いる。下記の実施例は、電力供給源が架線から構成される場合について説明する。しかしながら、本発明は、ボルボトラックによる「電気道路コンセプト」において提案されるような頭上の帯電ワイヤ又は路面上のもしくはそれに隣接する軌道/レールを用いる導電性の電力供給源には限定されず、誘導性の電力供給源を使用することもできる。本発明は、商用のハイウェイトラックあるいはトラクタとの関係において、説明するが、オフハイウェーのトラック/トラクタ、バス、建設車両あるいは他のタイプの作業車両にも等しく適用できる。
【0015】
以降の文脈では、多くの異なる専門用語及び電気部品の例に言及するが、それらは以下のように簡潔に定義される。
【0016】
電圧の変動率は、例えば送電あるいは配電ラインといった要素の送る側と受け取る側との間の電圧振幅の一定の変化である。電圧の変動率は、広範囲の負荷条件にわたってほぼ一定な電圧をもたらすシステムの能力を言う。この用語は、様々な負荷条件の下でのより大きいあるいはより小さい電圧降下に帰着する受動的な特性、あるいは電圧を調整するという特定目的の装置との能動的な干渉を指し得る。
【0017】
電力の変換は、電気エネルギの一つの形態から他の形態への変換、ACとDCとの間の変換、電圧あるいは周波数の実際の変化、又はこれらのいくつかの組合せである。この文脈において、「電力コンバータ」という一般用語は、電気エネルギを変換するための電気的なあるいは電気機械的な装置として定義される。これは、交流電力の電圧を変換するトランスとすることができる。しかしながら、この用語はまた、一つの周波数の交流を他の周波数に変換するために用いるある種の電機を指す。電力変換システムは、多くの場合に冗長性と電圧変動を含んでいる。電力変換システムを分類する一つの方法は、入力及び出力が交流電流(AC)であるか直流電流(DC)であるかによるものである。
【0018】
一つの種類の電力コンバータは、DC〜DCあるいはDC/DCコンバータであり、一つの電圧レベルから他の電圧レベルに直流電流(DC)の供給源を変換する電子回路である。DC/DCコンバータは、既存の技術的なデザインを用いるものであり、主な位相幾何学的な分類は、固定周波数パルス幅変調(PWM)及び可変周波数疑似共振型ゼロ電流スイッチング(ZCS)である。
【0019】
PWMは、多少は簡単な設計とすることができるが、それは作動周波数に対する効率を本質的にトレードオフするものであり、それらは共に電気車両(EV)あるいはハイブリッド車両(HEV)にとって重要なパラメータである。高い周波数での作動は、高い電力密度、例えば、スイッチモードコンバータにおけるより小さい磁気部品、フィルタ及びコンデンサを達成するための主要なキーのうちの一つであると長く認められてきた。しかしながら、固定周波数スイッチモードコンバータでは、スイッチング損失が作動周波数に応じて直接的に高まり、達成可能な出力密度を制限する相応な状態に陥る。可変周波数コンバータは、スイッチのターンオン及びターンオフをゼロ電流で発生させることにより、この周波数の壁を克服する。
【0020】
固定周波数と可変周波数のDC/DCコンバータの更なる違いは、ノイズである。そして、EV/HEVにとって重要なパラメータは、スイッチにより発生するノイズである。PWMのハードスイッチングは、ZCSのソフトスイッチングよりも大きなノイズを発生させる。
【0021】
これまでは、主なEV/HEVのDC/DCコンバータの用途は、高電圧バッテリから12ボルトの典型的な車両用電圧への変換であるが、例えばパワーステアリングのための42ボルトといった、より高い電圧も必要である。この用途に用いるDC/DCコンバータは、典型的に入力が250〜450ボルトであり、調整可能な出力は12.5〜15.5ボルト、出力電力は250Wから3.5kWである。利用可能なDC/DCコンバータの寸法及び重量は、実質的に作動周波数に応じて、かつある程度は入力及び出力の電圧及び電力に応じて変動する。従来の位相幾何学によると、効率は、典型的に80〜90%の中間であるが、低ライン電圧での効率は、おそらくは4あるいは5パーセンテージポイント低くなりがちである。その結果、AC―DC及びいくつかのワイドレンジDC/DC製品は、低ライン電圧において、性能を低下させる必要がある。
【0022】
車両における高電圧/高電力変換は、EV及びHEV用途にとって好適な解決策である。そのようなコンバータについての技術的なチャレンジには、それらの多くが相互に関連しているが、寸法、重量、効率、電磁場適合性/電磁障害(EMC/EMI)、信頼性、高電圧絶縁、熱除去/熱の管理、及びコストが含まれる。加えて、道路車両の熱い、寒い、衝撃、振動の環境において、信頼できる性能が必要である。
【0023】
商用EV及びHEVのためのDC/DCコンバータは、高電力密度、効率、及びスケーラビリティを必要とし、それらは低周波の嵩張るコンバータ設計によってはコスト的に効率よくサポートすることができない。2kWのDC/DCコンバータは一般的な設計目標とすることができるが、ハイエンドの車両はより多くの電力を必要とし、より低い電力定格のより小型のDC/DCコンバータはエントリーレベルのEV及びHEVにとって低いコストをもたらす。この範囲の電力ニーズに対処するために、高いパワー密度と、効果的なバス変換、絶縁及び電圧調整ができるモジュラコンバータを用いる柔軟で、スケーラブルな電力システムの方法論は、より高い性能、費用対効果、及び市場投入までの時間を早める。
【0024】
最新のDC/DC電力コンバータは、車両内における効果的な高電圧電力の配電をサポートできるとともに、電力システムの設計者に対し、小さい寸法、低い重量、高い電力密度、高い効率、設計の自由度、及び電気的な要求の変化に対する高速な応答を含む鍵となる利点をもたらす。詳しくは、EV/HEV車両に特に適しているDC/DC電力コンバータには、1kW/立方インチの出力密度において、効率が95%であるゼロ電圧スイッチング(DC/ZVS)DC/DCコンバータ、1kW/立方インチで97%以上の効率を有するZVSバックブーストレギュレータ、及びSine Amplitude Converter(登録商標)の1kW/立方インチにおいて、97%の効率を有する高電圧(SAC HV)バスコンバータが含まれる。
【0025】
二重クランプゼロ電圧スイッチング(DC/ZVS)コンバータは、極めて広い入力範囲から調整された出力を与える能力を有している。適応型電池発電装置は、広範囲、高電圧、高周波の電力処理をもたらすべくアレイに構成された多数のコンバータを含んでいる。一つのコンバータブロックは、典型的に、選択的に直列あるいは並列に構成された2つの磁気結合コンバータセルを利用する。いずれの構成においても、コモンモードノイズは基本的にキャンセルされ、EV及びHEVについての主要なフィルタリングの挑戦をなくす。
【0026】
EV及びHEVのDC/DCコンバータの性能のためにDC/ZVS DC/DCコンバータにおいて実施されるアダプティブセルトポロジには、正弦波振幅コンバータ(SAC)セルを含めることができる。SACエンジンは、スイッチング損失を除去するためにゼロ電圧/ゼロ電流スイッチングを利用する。スイッチング損失を取り除くことにより、SACは比較的高い周波数、典型的にMHzの範囲において、効率的に作動させることができ、より小さい製品サイズに帰着する。高い動作周波数は多くのコンポーネントの小型化を可能とし、全体的なコンバータ出力密度を高める。高周波で作動するソフトスイッチングコンバータはまた、電磁障害(EMI)及び低周波で作動するハードスイッチングコンバータが必要とするフィルタリングコンポーネントを最小化する。
【0027】
SACエンジンは、高電圧分離による定電圧比バス変換をもたらすために典型的に用いられる。DC―ZVSエンジンは、調整及び分離によるDC/DC変換をもたらす。
【0028】
ZVSバックブーストレギュレータは、安定化されていない入力源から安定化された出力をもたらす。ZVSバックブーストレギュレータは、非絶縁型電圧レギュレータとして単独で用いることができるし、あるいは絶縁型DC/DCコンバータを作成するためにSAC電流増幅器と組み合わせることができる。レギュレータは、効果的な配電と導体の重量及びコストの削減をサポートしつつロードの際の密度を高めるためにSAC電流増幅器から「因数分解する」ことができる。組合せにより、これらのエンジンは、従来のコンバータより著しく高い密度、柔軟性及び効率を有するDC/DCコンバータシステムを可能にする。ZVSバックブーストレギュレータの能力には、最大で少なくとも650Vdcの入出力電圧と、最大で98%の変換効率が含まれる。
【0029】
ユニークなソフトスイッチングトポロジー及びZVS制御アーキテクチャは、1MHzにおける効率的なHV動作を可能にする。レギュレータは、出力パワーの増加を達成するために並列化できる。レギュレータ制御アーキテクチャの特徴は、そのスイッチングシーケンスが昇圧モードあるいは降圧モードのいずれにおいても変化しないことである。電圧のステップアップあるいはステップダウンを生じさせるために、各動作サイクルの範囲内の位相の相対的な長さだけが制御される。
【0030】
SAC HVバスコンバータを含む固定比率コンバータは、効果的なHVバス変換できる。SAC HVバスコンバータの能力には、最大で少なくとも650Vdcの入出力電圧と、最大で98%の変換効率が含まれる。
【0031】
低QパワートレーンのZVS―ZCS正弦波振幅コンバータトポロジーは、高い信号純度とコモンモード対称性を有する固定周波数発振器による効果的な高周波電力の処理をサポートし、基本的にノイズがない作動に帰着する。制御アーキテクチャは、動作周波数をパワートレーンの共振周波数にロックし、効率を最適化し、かつ出力インピーダンスを最小化する。無効成分を有効にキャンセルすることにより、出力インピーダンス、Zoutを相対的に低くすることができる。更にZoutを減少させるために、あるいはより大きな電力能力のために、バスコンバータを正確な電流シェアリングで並列化できる。静かで強力なSACバスコンバータは、最大で約1MHzまでの平坦な出力インピーダンスを有する基本的に線形な電圧/電流の変換をもたらす。
【0032】
組合せると、これらの解決策は、小型、軽量、極めて高い効率、低EMI性、高圧分離、熱の管理、モジュール性、設計の自由度、スケーラビリティ及びコストを含めて商用のEV及びHEVによく適したパワーコンバータの実例となる。それらは、フォールトトレラントなハイパワーアレイを構成するために、容易に並列化される。
【0033】
他のタイプの電力コンバータは、DC〜ACへの、あるいはDC/AC電源コンバータであり、多くの場合にインバータと称される。これは、直流電流(DC)を交流(AC)に変換する電力変換装置である。変換される交流は、適切なトランス、切替器及び制御回路を用いて任意の必要電圧及び周波数とすることができる。ソリッドステートインバータは、可動部分を有しておらず、かつコンピュータの小型スイッチング電源から大電力を輸送する大規模電気事業の高圧直流用途に至る広範囲にわたる用途に用いられている。インバータは、一般的に、例えば架線あるいはバッテリといった直流電源からAC電源を供給するために用いられる。
【0034】
可変周波数ドライブ(VFD)は、モータに供給される電力の周波数と電圧を制御することにより交流電動機の動作速度を制御する。インバータは、制御された電力を供給する。ほとんどの場合、可変周波数ドライブは整流器を含んでいて、インバータのための直流電力は主交流電源から供給できる。発電機として作動するモータから供給される交流電力は、バッテリを充電するために整流することもできる。インバータがキー要素であるので、可変周波数ドライブは、時にはインバータドライブあるいは正にインバータと呼ばれる。最初にそれを直流に変換することなく交流電源で直接作動するVFDは、サイクロコンバータと呼ばれる。それらは、現在ではトラクションモータを駆動するために一般的に用いられている。
【0035】
可変速モータ制御インバータは、現在、いくつかの電気及びディーゼル発電型の鉄道車両、並びにいくつかのバッテリ電気車両及びハイブリッド電気ハイウェイ車両において、トラクションモータに電力を与えるべく用いられている。インバータ技術の様々な改良は、特に電気自動車の用途のために開発されている。回生制動する自動車において、インバータはまた、発電機として作動しているモータから電力を得て、バッテリあるいは類似の適切なエネルギ貯蔵システムに貯蔵する。
【0036】
好適な実施形態によると、本発明は車両におけるハイブリッドエネルギシステムに関する。このハイブリッドエネルギシステムは、自律的電力供給源を備えるとともに、その車両の経路に沿った外部電力供給インフラストラクチャあるいは送電網に接続可能である。その車両は、車載のエネルギ貯蔵システムを用いる自律的電力供給源モードで、架線又は路肩軌道からの電力を用いる外部電力供給源モードで、あるいは両方の電力供給源からの電力を用いる自律的電力供給源モードと外部電力供給源モードの組み合わせで作動するように構成される。
【0037】
本発明によると、ハイブリッドエネルギシステムは、車両内部で二つの部分あるいは高電圧回路に分割された高電圧の推進システムを備える。ハイブリッドエネルギシステムは、第1の電力コンバータによりエネルギ貯蔵システムに接続された車両を推進するための第1のトラクションモータを含む第1の高電圧回路を備えている。ハイブリッドエネルギシステムは、第2の電力コンバータにより外部電力供給源に接続可能な車両を推進するための第2のトラクションモータを含む第2の高電圧回路を更に備えている。第1及び第2のトラクションモータは、車両を推進するためのモータとして、あるいはエネルギの再生のための発電機として、作動させることができる。
【0038】
第1及び第2のトラクションモータは、例えば一対の車輪が設けられた被駆動車軸といった個々のあるいは共通の地面係合要素に、それぞれ機械的に接続できる。その機械的な接続は、例えば駆動軸及び差動装置又は一対の車輪モータといった直接的な接続とし、あるいは例えば変速機あるいはギアボックスを含む動力伝達経路といった間接的な接続とすることができる。トラックの場合、第1及び第2のトラクションモータは、第1及び第2の被駆動車軸を個別に、あるいは一つの共通の被駆動車軸を駆動できる。第1及び第2のトラクションモータは、発電機として作動させることもできる。
【0039】
第1の高電圧回路及び第2の高電圧回路は、同一のあるいは類似の電圧で作動し、かつ第1及び第2の高電圧回路と第1及び第2の電力コンバータとの間のブリッジとしての第3の電力コンバータにより接続可能である。この文脈において、「高電圧」という用語は500〜800Vの好適な範囲の電圧を指す。例えば、第1の高電圧回路は500〜700Vで作動し、かつ第2の高電圧回路は550〜800Vで作動できる。
【0040】
第1及び第2の電力コンバータは、第1及び第2のトラクションモータを駆動するために用いる交流へと高電圧の直流を変換するように構成された、好ましくはDC/AC電力コンバータ、あるいはインバータである。第1及び第2のトラクションモータは、好ましくは同期型及び/又は非同期型の三相交流電動機であり、同期型電動機は多くの場合に永久磁石を用いる(PMSM)。本発明のためにはDCモータを用いることもでき、そのDCモータはブラシ型あるいはブラシレス型(BLDC)とすることができる。
【0041】
第3の電力コンバータはDC/DC電力コンバータである。このDC/DC電力コンバータという独自の構造は、そのような電力コンバータの従来の位置づけに対しDC/DC電力コンバータの寸法を大幅に減少させるので、有利である。DC/DC電力コンバータの相対的な寸法の実例は、下記のテキストに示される。このDC/DC電力コンバータの位置付けは、極めて柔軟な使用と多くの選択的な作動モードを可能とし、それぞれがより高いエネルギ効率での作動とエネルギ損失の低下を可能にする。そのような作動モードの実例は、下記のテキストに示される。
【0042】
一つの利点は、外部電力供給源からの電力の全てがブリッジを通過する必要がないことである。それに代えて、電力の主要な部分を車両の第2の高電圧回路において、直接利用できる。他の利点は、高電圧システムを分割することにより、第3のコンバータあるいはブリッジコンバータを、ハイブリッド車両推進システムのフルパワーの範囲とする必要がないことである。このことは、第3のコンバータの寸法とコストを減少させる。そのようなハイブリッド車両の電気エネルギ貯蔵システムは、バッテリ、スーパーコンデンサ、燃料電池及びフライホイールを含む、何れかの適切な技術とすることができる。ハイブリッドシステムにエネルギ貯蔵システムを用いることにより、ハイブリッドシステムのための給電コンバータの必要寸法を更に減少させることができる。
【0043】
自律的電力供給源は、必ずという訳ではないが好ましくは、第1のトラクションモータに接続された内燃機関を含む。内燃機関は、第1の電力コンバータを整流器として用いつつ第1のトラクションモータを発電機として作動させることにより、エネルギ貯蔵システム、例えばバッテリを充電するために用いることができる。
【0044】
第2の高電圧回路は、架線あるいは軌道の形態の外部電力供給源に接続できる。架線は、車両上の適切な位置に搭載された従来のパンタグラフあるいは類似のものでアクセスすることができる。レールは、車両が辿る経路に隣接する路肩の軌道とし、あるいは道路の表面に凹設された軌道とすることができる。そのような解決策の実施例は、ボルボにより提唱される「電気道路コンセプト」、あるいは例えば特許文献1及び特許文献2といった従来技術の文献に見いだすことができる。なお、それらはこの参照によって、本明細書に援用される。
【0045】
上記したように、第1のトラクションモータ及び第2のトラクションモータは、個々の被駆動車軸に接続することができ、あるいは共通の被駆動車軸に接続できる。モータについて選択された機械的な接続に応じて、異なる作動モードを利用できる。
【0046】
制御可能なスイッチは、第3の電力コンバータに並列に接続される。そのスイッチは、閉じたときに第3の電力コンバータを迂回するように構成される。制御可能なスイッチの作動は選択された作動モードにより決定されるが、それについては以下に説明する。
【0047】
本発明は、更に、自律的電力供給源を備えるとともに車両の経路に沿った外部電力供給源インフラストラクチャに接続可能な車両のハイブリッドエネルギシステムを作動させる方法に関する。
【0048】
上記したように、ハイブリッドエネルギシステムは、第1の電力コンバータによって、エネルギ貯蔵システムに接続されて車両を推進する第1のトラクションモータを含む第1の高電圧回路と、第2の電力コンバータによって、外部電力供給源に接続可能な車両を推進するための第2のトラクションモータを含む第2の高電圧回路とを備える。第1の高電圧回路及び第2の高電圧回路は、第3の電力コンバータにより、かつ第1及び第2の電力コンバータの間の並列な制御可能スイッチにより、接続可能である。
【0049】
この方法は、多くの選択的なモードのうちの一つにおいて、ハイブリッドエネルギシステムを作動させることを含み、それらの作動モードには、少なくとも、
・ エネルギ貯蔵システムを用いて第1及び第2のトラクションモータを作動させることを含む自律的電力供給源モード、
・ 第3の電力コンバータを接続すると共に、外部電力供給源を用いて第1及び第2のトラクションモータのうちの一方あるいは両方を作動させることを含む外部電力供給源モード、及び、
・ エネルギ貯蔵システムを用いて第1のトラクションモータを作動させること、及び外部電力供給源を用いて第2のトラクションモータを作動させることを含む、自律的電力供給源と外部電力供給源を組み合わせるモード、
が含まれる。
【0050】
自律的電力供給源モードにおいては、外部電力供給源との接続が断たれたときに、車両の電気作動のためにエネルギ貯蔵システムを用いる。エネルギ貯蔵システムは、第1の電力コンバータを直接介してエネルギ貯蔵システムを用いることで、第1のトラクションモータだけを作動させるために用いることができる。
【0051】
外部電力供給源モードにおいて、第2のトラクションモータは、第3の電力コンバータに生じる損失なしに、第2の電力コンバータを介して外部電力供給源に直接接続できる。加えて、外部電力供給源は、第1及び第2のトラクションモータの両方を作動させるために、第3及び第1の電力コンバータを介して第1のトラクションモータに接続することもできる。エネルギ貯蔵システムは、後者の作動モードの間に、外部電力供給源により充電できる。
【0052】
自律的電力供給源と外部電力供給源を組み合わせるモードにおいて、第1のトラクションモータは第1の電力コンバータを介しエネルギ貯蔵システムを用いて作動させることができ、かつ第2のトラクションモータは第1の電力コンバータを介し外部電力供給源を用いて作動させることができる。この場合、第2のトラクションモータは、第3の電力コンバータに生じる損失無しに外部電力供給源により直接作動させることができる。
【0053】
上記したように、本発明の方法は、第3の電力コンバータの使用を最小化しつつ、複数の選択的なモードで作動させることができる柔軟なハイブリッドエネルギシステムを可能にする。この柔軟さは、DC/DCコンバータである第3の電力コンバータの配置により可能となる。このDC/DCコンバータの低い電力要求は、比較的小さい電力定格の寸法決めを可能にする。このことは、翻って、DC/DCコンバータが極めて高い効率と低い発熱でありながら小さなサイズ及び低い重量であることを可能にする。
【0054】
更なる実施例によると、ハイブリッドエネルギシステムは、第3の電力コンバータを迂回させること及びエネルギ貯蔵システムを用いて第1及び第2のトラクションモータの両方を作動させることを含む、選択的な自律的電力供給源モードで作動させることができる。この実施例において、エネルギ貯蔵システムは、第3の電力コンバータを迂回すべく並列に接続されたスイッチを制御することにより、第1及び第2のトラクションモータの両方を作動させるために用いることができる。エネルギ貯蔵システムは、第2の電力コンバータを直接介してエネルギ貯蔵システムを用いることにより、第2のトラクションモータを作動させるために用いることもできる。後者の場合、第2のトラクションモータは、第3の電力コンバータに生じる損失無しに、エネルギ貯蔵システムによって、直接駆動できる。車両の動力伝達系路の設計に応じ、第1及び第2のトラクションモータは、独立した第1及び第2の被駆動車軸をそれぞれ駆動するために、あるいは共通の被駆動車軸を駆動するために用いることができる。
【0055】
更なる実施例によると、ハイブリッドエネルギシステムは、第3の電力コンバータを迂回することにより、選択的な外部電力供給源モードで作動させることができる。この実施例は、エネルギ貯蔵システムを第1の高電圧回路に接続する既存の接触器あるいはサーキットブレーカを用いるとともに、各電力コンバータを介して外部電力供給源を用いつつ第1及び第2のトラクションモータの両方を作動させることにより、エネルギ貯蔵システムを切り離すことを含んでいる。前の実施例におけるように、第1及び第2のトラクションモータは、独立した第1及び第2の被駆動車軸をそれぞれ駆動するために、あるいは共通の被駆動車軸を駆動するために用いることができる。
【0056】
この両方の選択的な作動モードは、DC/DCコンバータである第3の電力コンバータにおける損失を招くことなしに、車載のエネルギ貯蔵システムあるいは外部電力供給源から、第1及び第2のトラクションモータに直接電力を供給できるようにすることにより、ハイブリッドエネルギシステムの柔軟性を高めることに貢献する。
【0057】
本発明のハイブリッドエネルギシステムは、システムの柔軟性を追加する多数の選択的な再生作動モードで作動させることもできる。
【0058】
更なる実施例によれば、ハイブリッドエネルギシステムは、第1の選択的な再生作動モードで作動させることができる。この第1の選択的な再生モードにおいて、第2のトラクションモータは、地面係合要素を駆動すべく、外部電力供給源を用いて駆動される。上述したように、第1及び第2のトラクションモータは、例えば一対の車輪が設けられている被駆動車軸といった、個別のあるいは共通の地面係合要素にそれぞれ機械的に接続できる。従って、第1及び第2のトラクションモータが個別の地面係合要素に機械的に接続されているときに、第2のトラクションモータは、地面係合要素を介して第1のトラクションモータを間接的に駆動できる。第2のトラクションモータが一つの地面係合要素を駆動すると、それによって、更なる地面係合要素がエネルギ貯蔵システムを充電するために第1のトラクションモータを駆動する。第1の電力コンバータは、このための整流器として用いることができる。
【0059】
第1の選択的な再生モードは、第3の(DC/DC)パワーコンバータがこのために充分な電力を供給できないときにエネルギ貯蔵システムを充電するために用いることができる。
【0060】
更なる実施例によると、このハイブリッドエネルギシステムは、第2の選択的な再生作動モードで作動させることができる。第2の選択的な再生モードにおいては、第3の電力コンバータを迂回するために並列に搭載された制御可能なスイッチを用いることにより、かつ第1及び第2のトラクションモータのうちの一つあるいは両方を地面係合要素を用いて発電機として作動させることにより、外部電力供給源に電力が供給される。上述したように、第1及び第2のトラクションモータは、例えば一対の車輪が設けられている被駆動車軸といった個別のあるいは共通の地面係合要素に、それぞれ機械的に接続できる。第2の選択的な再生モードは、常用ブレーキを用いることなしに、あるいは下り坂を進行するときに、車両を制動するために用いることができる。運動エネルギは、一つあるいは両方のトラクションモータにより電気エネルギに変換されるとともに、第1及び/又は第2の各電力コンバータを介して外部電力供給源に直接供給される。
【0061】
第2の選択的な再生モードは、再生された電力を、第3の(DC/DC)電力コンバータを用いることなしに送電網に戻すことができるようにする。
【0062】
更なる実施例によれば、ハイブリッドエネルギシステムは、第3の選択的な再生作動モードで作動させることができる。第3の選択的な再生モードにおいては、電力は、第3の(DC/DC)電動コンバータを迂回するために並列に搭載された制御可能なスイッチを用いることにより、かつ第1及び第2のトラクションモータのうちの一つあるいは両方を地面係合要素を用いて発電機として作動させることにより、エネルギ貯蔵システムに供給される。上述したように、第1及び第2のトラクションモータは、例えば一対の車輪が設けられている被駆動車軸といった個別のあるいは共通の地面係合要素に、それぞれ機械的に接続できる。第2の選択的な再生モードは、常用ブレーキを用いることなしに、あるいは下り坂を進行するときに、圧縮ブレーキを用いることに代えて車両を制動するために用いることができる。運動エネルギは、一つあるいは両方のトラクションモータにより電気エネルギに変換されるとともに、第1及び/又は第2の各電力コンバータを介してエネルギ貯蔵システムに直接供給される。この作動の間、外部電力供給源は切り離さなければならない。
【0063】
第3の選択的な再生モードは、再生された電力を、第3の(DC/DC)電力コンバータを用いることなしにエネルギ貯蔵システムに戻すことができるようにする。
【0064】
更なる実施例によると、このハイブリッドエネルギシステムは、第4の選択的な再生作動モードで作動させることができる。第4の選択的な再生作動モードにおいて、第2のトラクションモータは、外部電力供給源を用いて駆動される。第1及び第2のトラクションモータが共通の地面係合要素に機械的に接続されているときに、第2のトラクションモータは、エネルギ貯蔵システムを充電するために、変速機の内部の機械的な接続を介して第1のトラクションモータを直接駆動できる。このことは、それらを地面係合要素に接続している車両変速機の一部から両方のトラクションモータを分離することを含む。次いで、第1のトラクションモータは、エネルギ貯蔵システムを充電すべく第2のトラクションモータを用いて駆動される。
【0065】
第4の選択的な再生モードは、車両が静止しているときに、第3の(DC/DC)電動コンバータを用いることなしにエネルギ貯蔵システムを充電するために用いることができる。
【0066】
本発明は、上述した、かつ上記のテキストに従って作動するハイブリッドエネルギシステムを備える、好ましくは商用自動車であるが必ずしもそうではない車両に更に関する。
【0067】
本発明はまた、上記した実施例のいずれかに記載した方法を実行するために全てをコンピュータに用いる、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ用記憶媒体に関する。
【0068】
上述したハイブリッドエネルギシステムは、DC/DCコンバータにより接続されるとともに異なる許容度レベルで作動させることができる2つの高電圧回路を備える。例えば、例示的なシステムにおいて、2つの電気回路の名目上の電圧は例えば650Vとすることができるが、それらの第1の回路における実電圧は500V〜900Vの間で変化し得る。第2の回路の許容偏差が550V〜800Vに限定される場合、干渉あるいはシステムの損傷のリスクを冒すことなしにパワー伝達を可能にするために、二つの回路の間にDC/DCコンバータを接続できる。
【0069】
この構造による更なる利点は、車両のシャシから直流電気絶縁する必要がある部品が少ないことである。本発明によると、DC/DCコンバータ、第2の電気モータ、及びそのインバータ(第2の電力コンバータ)を直流電気絶縁すれば充分である。例えば
図4において説明した従来システムは、第1の電気モータ及びエネルギ貯蔵システムを含むシステム全体を直流電気絶縁する必要がある。二つの高電圧回路を接続するDC/DCコンバータの形態の電力コンバータを設けることにより、このシステムは、全ての電力をDC/DCコンバータに通す必要なしに複数の異なるモードで作動できる。このことは変換損失及び冷却を必要とする発熱の低減に帰着し、これは翻ってシステム全体の効率を改善すると共に、車載の冷却システムの必要性を低下させる。DC/DCコンバータの電力定格を低くすることもでき、それはコンバータの寸法の減少を可能にすると共に、よりコンパクトな取付けに寄与する。