【課題を解決するための手段】
【0006】
これの目的は、独立請求項により、達成される。本発明の特に有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0007】
ここで、粉末は、多数の粒子と理解すべきである。ここで、この粒子は、一次粒子及びこれに結合している二次粒子からなる。粒子径が小さければ、粉末冶金プロセスにおいて、多数の粒子、これらは一次粒子及び二次粒子からなっていてもよいのだが、を、粉末顆粒に転換するのに有利である。従って、粉末顆粒粒子は、多数の粒子からなっていてもよい。これらの粒子は、一以上の更なる成分、例えば結合剤、なしで又はこれらと共に、材料結合により互いに結合していてもよい。粉末粒子又は粉末顆粒粒子の大きさは、粒径と呼ばれ、典型的には、レーザー回折法により測定される。測定結果は、分散曲線により規定される。この際、d
50値は中間粒径を意味する。d
50は、粒子の50%がその特定値より小さいことを示す。
【0008】
本発明の粒子又は粉末顆粒は、2〜20質量%の鉄、所望により質量5%までのドーパント、所望により2質量%までの酸素、並びに80質量%を超えるクロム及び典型的な混入物を含有する。典型的には、プロセスに関係する混入物は、この場合、例えば、Si、Al、Ca、V及びNaであり、ここで、それぞれの含有量は、典型的には、500μg/gである。クロム含有量が80質量%未満の場合、多くの用途において、十分に高い耐腐食性が、最早、保証されない。2〜20質量%の鉄の添加により、同時に耐腐食性を許容できないほど悪化させることなく、部品の熱膨張係数を簡単な方法で多くの用途に向けて調整することができる。鉄含有量が2質量%未満では、合金は、多くの用途には過度に低すぎる熱膨張係数を有する。20質量%を超える鉄含有量は、就中、腐食挙動に不利な影響を与える。粉末又は粉末顆粒は、40質量%を超える、好ましくは60質量%を超える、鉄含有量を有する鉄豊富な領域を有するのが好ましい。ここで、鉄含有量豊富な領域は、鉄含有粒子の形で提供されるのが好ましい。鉄粉の生産の場合、出発製品は酸化鉄であるので、酸化鉄粉が費用効果的に利用できる。鉄豊富な領域が酸化鉄の形で提供される場合、これは、簡単で費用効果的なやり方で、粉末又は(例えば焼結プロセスで集積された)圧縮部品の熱処理によって、還元環境において還元することができる。鉄が非結合の/元素の形態で提供される場合、鉄豊富な領域における鉄含有量は、90質量%超が好ましく、98質量%超が特に好ましい。
【0009】
更に、粉末又は粉末顆粒は、5質量%までのドーパントを含有していてもよい。この場合、好ましいドーパント含有量は、0.005〜5質量%である。好ましくは、少なくとも1つのドーパントは、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群から選ばれる。本発明において,ドーパントは、それがクロムの場合に、高温耐腐食性挙動を顕著に改良する。含有量が5質量%を超えても、耐腐食性は、それ以上顕著に向上せず、圧縮性及びコストに不利な影響を与える。0.005質量%未満では、腐食挙動は、ドーパントなしの材料に比べて僅かに改善されるに過ぎない。特に効率的なドーパントは、イットリウムであり、ここで、特に好ましい含有量は、0.01〜1質量%である。
【0010】
好ましい合金組成は、2〜20質量%の鉄、所望により5質量%までの、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群から選ばれる、少なくとも1つのドーパント、所望により2質量%までの酸素、並びに残部クロム及び典型的な混入物であり、ここで、クロム含有量は80質量%を超える。更に好ましい合金組成は、2〜20質量%の鉄、0.005〜5質量%までの、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群から選ばれる、少なくとも1つのドーパント、0.002〜2質量%までの酸素、並びに残部クロム及び典型的な混入物であり、ここで、クロム含有量は80質量%を超える。更に好ましい合金は、3〜10、特に好ましくは3〜7質量%の鉄、0.005〜5質量%のイットリウム、0.002〜2質量%の酸素並びにクロム及び典型的な混入物であり、ここで、クロム含有量は80質量%を超える。
【0011】
この場合、粉末又は粉末顆粒は、少なくとも部分的に、クロム含有量が95質量%を超えるクロム豊富な領域を、有し、これがクロム含有粒子を形成する。クロム豊富な領域は、少なくとも部分的に、クロム豊富な相からなる。これ以後、クロム豊富な領域とクロム豊富な相とは、同義的に用いる。クロム含有量が95質量%を超えるクロム豊富な相とは、溶解した元素の比率が5質量%以下であることを意味する。クロムの過半(90質量%超)は、95質量%を超えるクロムを含有するクロム豊富な相の形態で提供されるのが好ましい。このとき、より低いクロム含有量を有する領域は、クロム豊富な領域/鉄豊富な領域の遷移帯域である。その他の相成分、例えばドーパント、は、クロム豊富な相中にインターカレートすることができる。これらのものは、クロム豊富な相のクロム含有量の解析において考慮していない。溶解元素の含有量が5質量%を超える(クロム含有量が95質量%未満の)場合、これらの領域は、並はずれて高い硬度を有し、これは圧縮挙動、工具の耐用年数及びプレスの投資コストに負の影響を与える。
【0012】
クロム豊富な領域は、粒子(以後、単に、クロム含有粒子又は単に粒子と呼ぶ)を形成する。前述のように、顆粒粒子は、複数の粒子を含有していてもよい。クロム含有粒子又は顆粒粒子が少なくとも部分的に細孔を有することが本発明に必須である。ここで、顆粒粒子の場合には、顆粒を構築する粒子も細孔を含有することが好ましい。細孔を有する粒子又は顆粒粒子の量比は、有利には30質量%超、より有利には50質量%超、更に有利には70質量%超、特に有利には90質量%超である。
【0013】
クロム含有粒子は、定量画像分析によって測定される平均空隙率が20体積%を超えるのが好ましい。平均空隙率は、40体積%を超えるのが好ましく、60体積%を超えるのがより好ましい。85体積%及びこれを超える値を達成することができる。空隙率Pの好ましい範囲は、20体積%<P<85体積%、40体積%<P<85体積%及び60体積%<P<85体積%である。
【0014】
ここで、平均空隙率の測定は、下記の作業指示による。先ず、粉末検鏡試片(Pulverschliffe)を作成する。この目的のために、粉末をエポキシ樹脂に包埋する。8時間のキュア時間の後、金相試料を調製する。即ち、粉末縦方向検鏡試片による研究が後で実施できる。調製は、以下の工程による。800、1,000及び1,200の粒子サイズを有する恒久的に結合したSiC紙を用いて150〜240Nで、粉砕する工程:3μmの粒子サイズを有するダイアモンド懸濁液を用いて研磨する工程;粒子サイズ0.04μmのOPS(酸化物研磨懸濁液)を用いて最終的に研磨する工程;超音波浴で試料を洗浄する工程;及び試料を乾燥する工程。次に、試料ごとに、10の異なった代表的な粒子の画像を作成する。これは、走査型電子顕微鏡(ツァイス社、「ウルトラ プラス 55」)により、後方散乱電子(BSE)を検知するために、四分円検出器を用いて、達成できる。励起電圧は20kVであり、傾斜角は0°である。像のピントを合わせる。正確な画像分析のためには、解像度は少なくとも1024×768ピクセルである。コントラストは、細孔が金属マトリクスから明確に浮き出るように選択する。写真の倍率は、各画像が1つの粒子を含むように選定する。このケースでは、100×及び300×の倍率が選ばれる。定量的画像分析は、ソフトウエアイメージアクセスを用いて実施する。「粒子解析」モジュールを使用した。各画像解析は、以下のステップによる。粒子の開口体積が認識できるようにグレースケール閾値を設定する;粒子内に最大サイズの円/直方体(面積0.02〜0.5mm
2)の測定フレームワークを設置する;検出設定:ROIのみにおける測定、画像端の包囲、対象によるROIの切断。写真の記録中又は解析中には、フィルター機能を使用しない。後方散乱電子画像では、細孔が、金属マトリクスよりも、より暗く見えるので、検出設定の場合は、「暗い物体」を細孔と定義する。10の画像を個別に解析した後、データの統計的解析を行なう。これから、細孔の平均面積比率(%)を決定し、体積百分率の平均空隙率と等しいと設定することができる。
【0015】
本発明における細孔は、少なくとも部分的に、開孔であることが好ましい。ここで、開孔は、細孔チャンネルを通じて表面に通じていると解すべきである。全空隙率に対する開孔の体積比は、有利には30体積%を超え、より有利には50体積%を超え、更に有利には70体積%を超え、特に有利には90体積%を超える。これらの開孔は、お互いに架橋しているのが好ましい。この粉末のモルフォロジーの有利さについては、以下の文節で詳細に議論する。
【0016】
粉末の形状は、ASM(ASMハンドブック、第7巻、粉末金属学、第472頁)に従う分類に依れば、典型的には、針状、不規則棒状、樹枝状、薄片状、球状、結節状、不規則状及び多孔状に分類される(
図1を参照)。この分類によれば、クロム豊富な領域から形成される粒子/顆粒粒子は、少なくとも部分的に多孔性形状を有している。多孔状と分類される粒子/顆粒粒子の体積比率は、有利には30体積%超、より有利には50体積%超、更に有利には70体積%超、特に有利には90質量%超である。特別な態様では、好ましくは、殆ど全て(99質量%超)の粒子/顆粒粒子が多孔性形状を有する。例えば、以前に多孔性の粒子/顆粒粒子であったものの粉砕により生じる粒子は、多孔性粉末形状から外れ得る(例えば、粉末の微細成分)。
【0017】
更に、クロム含有粒子は、レーザー回折法で測定された粒子径d
50が20μmを超える場合は、BET法で測定された表面積が0.05m
2/gを超えることが好ましい。更に好ましい変形は、d
50>50μm且つBET表面積>0.05m
2/g、d
50>70μm且つBET表面積>0.05m
2/g、d
50>90μm且つBET表面積>0.05m
2/g、d
50>110μm且つBET表面積>0.05m
2/g、d
50>30μm且つBET表面積>0.07m
2/g、d
50>50μm且つBET表面積>0.07m
2/g、d
50>70μm且つBET表面積>0.07m
2/g、d
50>90μm且つBET表面積>0.07m
2/g、d
50>110μm且つBET表面積>0.05m
2/g、d
50>30μm且つBET表面積>0.09m
2/g、d
50>50μm且つBET表面積>0.09m
2/g、d
50>70μm且つBET表面積>0.09m
2/g、d
50>90μm且つBET表面積>0.09m
2/g、d
50>110μm且つBET表面積>0.09m
2/gである。これらは、特に、粒子の高い内部空隙率によって達成される。ここで、BET測定は、規格(ISO9277:1995。測定範囲:0.01〜300m
2/g。装置:Gemini II 2370。加熱温度:130℃。加熱時間:2時間。吸着剤:窒素。5点決定法に依る容積分析)に従って実施される。d
50値は、規格(ISO 13320(2009))を適用したレーザー回折法により測定する。
【0018】
細孔は、少なくとも領域によって空孔であってもよく、部分的又は完全に充填されていてもよい。ここで、細孔の少なくとも一部は、鉄及び/又は酸化鉄で少なくとも部分的に充填されているのが好ましい。空の及び/又は部分的に充填された細孔は、少なくとも領域によって、開孔であるか架橋されているのが好ましい。細孔は、少なくとも領域によって、完全に充填されていてもよい。
【0019】
本発明の粉末及び粉末顆粒は、傑出した圧縮特性を有している。更に、従来技術による粉末と比較して、焼結時間を顕著に短縮することができる。実施例に示すように、焼結時間が短縮されたにも拘らず、合金の均質性は、顕著に改善される。更に、後で非常に詳しく説明するように、ドーパントを、簡単なやり方で、非常に微細な形状で(非常に小さな、好ましくは<5μmの、サイズ(分散質のサイズ)を有する粒子の形状のドーパント)非常に均一に(好ましくは50μm未満の小さな平均粒子間隔で)分布させることができる。
【0020】
上述のように、粉末又は粉末顆粒は、2質量%までの酸素を含有するのが好ましい。酸素含有量は、特に好ましくは、0.002〜2質量%である。0.5〜2質量%の酸素含有量は、特に、ドーパント及び/又は鉄が酸化状態で供給されたときに生じる。もし、クロム豊富な領域が、4GPa以下のEN ISO 14577−1による平均ナノハードネス
HIT 0.005/5/1/5を有するならば、非常に有利な圧縮挙動が達成される。ここで、硬度値は、好ましくは、如何なる追加の後処理、例えばアニーリング、に付されていない粉末又は粉末顆粒に関する。ナノハードネス
HIT 0.005/5/1/5は、好ましくは3.5GPa以下である。要求が非常に高度な場合、例えば、非常に薄肉の部品については、3GPa以下のナノハードネス
HIT 0.005/5/1/5が有利である。非常に純粋なクロム相の場合、約1.5GPaのナノハードネス
HIT 0.005/5/1/5を有する金属粉末が実現される。
【0021】
ドーパント及び/又は鉄は、上述のように、元素状態で及び/又は酸化状態で提供することができる。酸化鉄は、好ましくは、粉末冶金後処理、例えば焼結、の間に、還元されるが、ドーパントも、また、酸化状態で腐食挙動を改善する。
【0022】
例えば拡散ミキサー、対流ミキサー若しくはせん断ミキサーにおける混合操作の間に、又は(少なくとも部分的に多孔性粉末形状が維持されるだけの)少エネルギー注入による粉砕操作の間に、鉄粉末及び/又は酸化鉄粉末は、クロム粉末と混合される。クロム豊富な領域から形成された多数の粒子は、クロム粉末と呼ばれる。好ましくは、クロム粉末より小さい粒子サイズを有する鉄含有粉末が使用される。これにより、鉄含有粉末をクロム粉末の細孔中に少なくとも部分的に導入することができる。かくして、粒子サイズが小さく従って流動性(注入性)の乏しいクロム粉末を使う必要なく、鉄を非常に均一に微細な形状で分散させることができる。特に自動充填圧縮の場合に、良好な流動性は、経済的に制御可能なプロセスの前提条件である。更に、本発明の粉末又は粉末顆粒を用いて、鉄がクロム相に溶液で入ることなく、均質な鉄の分布を達成することができる。しかしながら、鉄及び/又は酸化鉄は、クロム粉末の表面上に又はクロム粉末同士の間に存在していてもよい。圧縮操作の間に、注入可能な鉄粉末は、少なくとも部分的に細孔の中に浸透する。より小さな量比の鉄及び/又は酸化鉄は、また、クロム豊富な領域の中にインターカレートされてもよい。
【0023】
多くの用途について、ドーパントなしに粉末を使用できる。しかしながら、より高度の腐食改良効果を望むのであれば、ドーパントを有する粉末を使用するのが有利である。このとき、ドーパントが微分散していると、より有利である。ドーパントの導入は、クロム粉末の製造の出発材料である酸化クロム又は水酸化クロムについて、既になされているのが好ましい。ここで、ドーパントは、固体形態又は溶解状態で、例えば硝酸塩溶液又は蓚酸塩溶液として、混合することができる。このとき、ドーパントは、酸化形態で提供されるのが好ましい。ドーパントの酸化物は、例えばCr
2O
3より動力学的により安定なので、酸化クロムの還元中に還元されない。従って、クロム相中へのドーパントの許容しがたいほどの過度の溶解事象も起こらない。酸化クロムの還元の前にドーパントを添加することにより、クロム豊富な相にドーパントを少なくとも部分的にインターカレートすることが可能となるが、このことは、腐食挙動に非常に有利な効果をもたらす。しかしながら、ドーパントは、細孔中にインターカレートしてもよく、粒子の表面に配置してもよい。本発明の粉末又は粉末顆粒の構造の故に、非常に高度の耐腐食性が生じる。
【0024】
安全かつ経済的な後工程を保証するために、粉末又は粉末顆粒が、10μm<d
50<800μmの粉末サイズ/粉末顆粒サイズを有していると有利である。更に有利な範囲は、30μm<d
50<800μm、50μm<d
50<800μm、70μm<d
50<800μm、90μm<d
50<800μm、110μm<d
50<800μm、30μm<d
50<300μm、50μm<d
50<300μm、70μm<d
50<300μm、90μm<d
50<300μm、110μm<d
50<300μm、30μm<d
50<150μm、50μm<d
50<150μm、70μm<d
50<150μm、90μm<d
50<150μm、110μm<d
50<150μmである。ここで、d
50値は、規格(ISO 13320(2009))を適用したレーザー回折法により測定する。ここで、小さいサイズ範囲の値は、追加的な顆粒化段階なしに達成できる。製造が顆粒化なしで行なわれた場合、生産された製品は、粉末と呼ばれる。上部d
50範囲の数値は、もし、例えば、出発製品(例えば、ドーパントを有していてもよい、酸化クロム又は水酸化クロム)、中間製品(例えば、ドーパントを有していてもよいクロム金属粉末)又はクロム金属粉末+(ドーパントを有していてもよい)鉄含有粉末が典型的な方法によって顆粒化された場合に、達成することができる。このようにして生産された製品は、粉末顆粒と呼ばれる。
【0025】
更に、粉末又は粉末顆粒が550MPaの圧力で75%以上の密度に圧縮可能であり850MPaの圧力で78%以上の密度に圧縮可能であると有利である。これらの値は、粉末が高度の空隙率と低い硬度とを有していれば、達成できる。ASTM B312−09によって測定したグリーンストレングスは、好ましくは、550MPaの圧縮圧で5MPa以上である。グリーンストレングスに関しては、本発明の粒子は、特に好ましい結果をもたらす。というのは、多孔性の粒子は、圧縮操作中に相互に噛み合うからである。従って、本発明の粉末又は粉末顆粒を用いて、高密度でグリーンストレングスの高い機能性部品を製造することができる。高い焼結密度を設定するために、粉末又は粉末顆粒がBET法で0.05m
2/g以上の表面積を有すると、更に有利である。更に好ましい数値は、0.05m
2/g以上、0.07m
2/g以上、0.09m
2/g以上、及び0.1m
2/g以上である。
【0026】
本発明の粉末又は粉末顆粒は、粉末冶金法による部品、特にインタコネクタ、の製造に特に適している。ここで、粉末冶金製造法は、例えば、圧縮/焼結法、圧縮下焼結法、MIM、粉末スプレー法及び生成的製造法(例えば、3D印刷法)を含む。
【0027】
本発明の目的は、また、粉末又は粉末顆粒を製造する方法によって達成される。この方法は、所望により固体炭素源が混合されていてもよい、酸化クロム及び水酸化クロムからなる群から選ばれる、少なくとも1つの化合物を、水素及び炭化水素の少なくとも一時的な作用下に、還元することを含む。好適には、酸化クロム又は水酸化クロムとして、粉末形態のクロム(III)化合物、例えば、Cr
2O
3、CrOOH、Cr(OH)
3が、又は酸化クロム及び水酸化クロムの混合物が考慮の対象となる。好ましいクロム源は、Cr
2O
3である。最終製品で高純度を得るためには、使用するCr
2O
3が少なくとも顔料クレードの品質を有していることが好ましい。
【0028】
酸化クロム及び水酸化クロムからなる群から選ばれる化合物は、固体炭素源が混合されていてもよいが、好適には、1,100℃≦T
R≦1,550℃の温度T
Rに加熱され、所望ならば、この温度に保持される。1,100℃未満又は1,550℃を超える温度では、粉末特性が悪化し乃至は費用効果的な方法ではなくなる。工業的な目的のためには、T
Rを約1,200℃〜1,450℃に選定すると、反応が特に良好に進行する。
【0029】
本発明に依る低温範囲では、90%の好ましい還元度を設定するためには、T
Rにおける非常に長い保持時間が必要であり、本発明に依る高温範囲では、保持時間を非常に短くすることができ乃至は全く省略することができる。還元度Rは、非還元のクロム化合物中に存在する全酸素量に対する、時間tまでに分解した酸化クロム又は水酸化クロム中の酸素の材料量の比率と定義される。
【数1】
ここで、
%red:還元度(%)
Mred,O:還元粉末における質量(g)
Ma,O:還元前の粉末バッチにおける酸素の質量(g)
【0030】
実施例に基づいて、当業者は、簡単な方法で、自分の炉のための最適の温度及び時間(連続炉、バッチ炉、最大可能炉温等)の組合せを決定することができる。反応は、好ましくは、反応時間の30%以上、特に好ましくは50%以上に亘って、基本的に温度T
Rで一定に(等温に)保たれる。
【0031】
炭化水素の存在により、本発明による特性を有する粉末が、化学輸送法によって確実に形成される。反応の全圧は、有利には、0.95〜2バールである。2バールより高い圧力は、方法の対費用効果に不利な影響をもたらす。0.95バールより低い圧力は、結果として生じる炭化水素分圧に不利な影響をもたらし、これが、次に、ガス相を経由する輸送プロセスに非常に不利な影響を与え、本発明による粉末特性(例えば、硬度、グリーンストレングス、比表面積)の設定に大きく影響する。更に、0.95バール未満の圧力は、プロセスコストに不利な影響を与える。
【0032】
実施例は、炭化水素分圧が簡単なやり方で設定される方法を開示する。炭化水素は、有利にはCH
4として提供される。好ましくは、少なくとも加熱操作の間、炭化水素分圧は、少なくとも一時的に5〜500ミリバールである。5ミリバール未満の炭化水素分圧は、粉末特性、特にグリーンストレングス、に不利な影響を与える。500ミリバールを超える炭化水素分圧は、還元された粉末の炭素含有量が高くなる結果を招く。残余のガス雰囲気は、この場合、好ましくは水素である。水素及び炭化水素の作用は、好適には、少なくとも、800℃〜1,050℃の温度範囲で生じる。この温度範囲において、炭化水素分圧は、好ましくは5〜500ミリバールである。出発物質から形成される反応混合物は、この場合、好ましくは少なくとも45分間、更に好ましくは60分間、この温度範囲にとどまる。この時間には、加熱操作及び他のあらゆる等温保持段階が含まれる。本発明のこの方法条件により、好ましくはT
R未満の温度で、酸化クロム及び水酸化クロムからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が、水素及び炭化水素の作用により、少なくとも部分的に反応して炭化クロムに転換することが、確実になる。好ましい炭化クロムは、Cr
3C
2、Cr
7C
3及びCr
23C
6である。炭化水素分圧によって生じる炭化クロムの部分的形成は、次に、粉末特性に好ましい効果をもたらす。更に、本発明による方法条件によって、炭化クロムが、反応混合物中に存在し及び/又は混合されている酸化クロム及び/又は水酸化クロムと反応することが確実となり、クロムを形成する。この際、T
Rでは、このプロセスが支配的となる。
【0033】
炭化水素は、反応系に気相状で、好ましくは固体炭素源を混合することなく、添加することができる。ここで、酸化クロム及び水酸化クロムからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物は、好ましくは、H
2−CH
4ガス混合物の一時的な作用下において還元される。H
2/CH
4容積比は、1〜200の範囲、特に好適には1.5〜20の範囲に選定するのが有利である。H
2−CH
4ガス混合物の作用は、この場合、好ましくは、T
Rへの加熱段階の間に少なくとも一時的に起こり、このとき、粉末形状の形成に対する影響は、特に850〜1,000℃の温度範囲で非常に良好なものとなる。温度が約1,200℃に達すると、プロセスは、好適には、好ましくは(ガス供給領域での測定で)−40℃未満の露点を有する純粋な水素雰囲気に切り換えられる。T
Rが1,200℃未満のとき、純粋な水素雰囲気への切り換えは、好ましくは、T
Rに到達したときに起きる。T
Rにおける等温段階及び室温への冷却は、有利には、水素雰囲気で起きる。特に冷却の間は、再酸化(Rueckoxidation)を避けるために、露点が−40℃未満の水素を使用するのが有利である。
【0034】
1つの変形実施態様において、固体炭素源は、酸化クロム及び/又は水酸化クロムと混合される。この場合、クロム化合物中の酸素1モルあたり、0.75〜1.25モルの間、より好ましくは0.90〜1.05モルの間の炭素を使用するのが好ましい。ここで、これは、クロム化合物との反応に利用し得る炭素量を意味する。特に好ましい態様では、炭素に対する酸素の比率は、化学量論量より僅かに低く、0.98である。固体炭素源は、好ましくは、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、炭素放出化合物、又はこれらの混合物の群から選ばれる。炭素放出化合物の例として、炭化クロム、例えば、Cr
3C
2、Cr
7C
3及びCr
23C
6を挙げることができる。粉末混合物は水素含有雰囲気においてT
Rまで加熱される。このとき、H
2圧は、少なくとも800℃〜1,050℃の温度範囲において、5〜500ミリバールのCH
4分圧が生じるように設定するのが好ましい。有利には、T
Rにおける等温段階及び室温への冷却が、水素雰囲気下で再び起きる。これらのプロセス段階の間、水素の存在は不要である。これらのプロセス段階の間及び冷却段階の間、水素は、再酸化を防ぐ。冷却段階の間、露点が−40℃未満の水素雰囲気を用いるのが有利である。
【0035】
酸化クロム粉末又は水酸化クロム粉末は、還元前に、所望により、既に添加されたドーパントと共に顆粒化することができる。顆粒化とは、既に述べたように、小さな粒子の顆粒−小さな粒子の集積を表わす−への転換を意味する。顆粒化法としては、界面活性添加物、例えばポリビニルピロリドン、を添加して、強力ミキサー中での、例えば、スプレー顆粒化法又は凝塊法によるのが適切である。還元前の顆粒化は、また、ガス状析出物(例えば水素)及びガス状生成物(例えば、CO)の浸透が改善されるので、有利である。というのは、ガスが高摩擦損失なしに流れることのできる領域が、顆粒粒子間に存在するからである。
【0036】
ドーパントは、酸化クロム又は水酸化クロムと、還元前に混合するのが有利であり、起こる可能性がある顆粒化の前に混合するのが特に有利である。ここで、スカンジウム、イットリウム及びランタノイド(例えば、ランタン又はセリウム)は、硝酸塩溶液として、チタン、ジルコニウム及びハフニウムは、シュウ酸塩溶液として混合するのが有利である。下流の乾燥プロセス(これは、還元段階と統合してもよいのだが)の間に、硝酸塩又はシュウ酸塩は、対応する酸化物又は水酸化物に分解する。これにより、ドーパントの非常に微細で均質な分散が可能になる。しかしながら、ドーパントを固体形状で混合することも可能である。スカンジウム、イットリウム及びランタノイドの場合には、酸化物粉末を使用するのが有利である。チタン、ジルコニウム及びハフニウムは、元素形状及び酸化物形状の両方で、また、凝塊生成傾向が十分に低い十分に小さい微粉として他の化合物の形状で、使用することができる。
【0037】
既述したように、鉄(例えば、元素状鉄又は酸化鉄)を、既に還元されたクロム粉に添加するのが有利である。この目的のためには、典型的な方法、例えば、導入エネルギーの小さい混合法又は粉砕法が適切である。鉄豊富な領域のクロム粒子への結合を達成するためには、粉末又は粉末顆粒を、鉄との混合後、400℃<T<1,200℃を満たす温度Tでアニールするのが有利である。これにより、その後のプロセスの間に、粉末がその成分に分解するのを避けることができる。
【0038】
この後、実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。