【課題を解決するための手段】
【0003】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態および改善点は、従属請求項の主題である。
【0004】
本開示の一態様は、薬物送達デバイス用のキャップアセンブリに関し、このキャップアセンブリは、連結機能を有する固定要素、開口部を有する外側部材、および外側部材の内側に位置する内側部材を含む。内側部材はさらに、対応連結機能を含む。固定要素の一区間(section)は、連結機能と対応連結機能との相互作用によって固定要素が内側部材に、好ましくは確実に連結されるように、外側部材の開口部を通って延びる。有利には、固定要素は、別の構成要素(下記参照)へのキャップアセンブリの固定または取付けを可能にする。さらに、内側部材および/または外側部材の動きは、固定要素の手段によって防止される、または範囲を定められる。好ましくは、開口部は外側部材の遠位端またはその近くに配置される。近位端に、外側部材はさらに、たとえばカートリッジ用またはカートリッジホルダ用の挿入開口部を含む。
【0005】
本開示の別の態様は、薬物送達デバイス、たとえば、キャップアセンブリを含むペン型デバイスなどの、注射器型デバイスに関する。
【0006】
一実施形態では、連結機能と対応連結機能の相互作用はスナップ相互作用である。この実施形態では、特に、費用対効果が大きく容易な固定要素と内側部材の連結が可能になる。
【0007】
キャップアセンブリは、長手方向軸を含む。長手方向軸は、キャップアセンブリの近位端およびキャップアセンブリの遠位端を通って延びる。
【0008】
キャップアセンブリ、薬物送達デバイス、またはアセンブリおよび/またはデバイスの構成要素の「遠位端」とは、薬物送達デバイスの投薬端に最も近い端部を意味する。キャップアセンブリ、薬物送達デバイス、またはアセンブリおよび/またはデバイスの構成要素の「近位端」とは、デバイスの投薬端から最も遠い端部を意味する。
【0009】
一実施形態では、固定要素は、内側部材が外側部材の中に保持されるようにして連結機能が外側部材に対する内側部材の動きを阻止するように構成される。特に、外側部材に対する内側部材の近位の動きは、連結機能によって阻止される。適切には、これは、外側部材に対する内側部材の固定を可能にする。
【0010】
一実施形態では、固定要素は、内側部材に対する外側部材の動きを固定要素が阻止するように構成される。特に、内側部材に対する外側部材の遠位の動きが固定要素によって阻止される。有利なことに、それによって外側部材は内側部材に対して固定される。
【0011】
一実施形態では、薬物送達デバイスは注射針またはニードルアセンブリを含む。前記注射針またはニードルアセンブリを通して、デバイスのカートリッジ内に保持される薬物または医療物質が薬物送達デバイスから投薬される。
【0012】
一実施形態では、内側部材はスリーブであり、キャップアセンブリは、カートリッジの少なくとも一区間および、好ましくはデバイスの注射針を内側部材によって収容できるように寸法設定される。有利な点として、キャップアセンブリは、カートリッジの少なくとも一区間および薬物送達デバイスの注射針を収容し、かつ/または外部の影響から保護する。カートリッジの一区間はさらに、カートリッジの主要区間に関連する。
【0013】
一実施形態では、外側部材は、内側部材を収容するスリーブである。
【0014】
一実施形態では、固定要素は、キャップアセンブリを別の要素に取り付けるためのクリップである。この別の要素は、キャップアセンブリおよび/または薬物送達デバイスの使用者がキャップアセンブリを固定または取り付けることができる任意の要素、たとえばシャツポケットである。
【0015】
一実施形態では、固定要素は取付け機能を含み、外側部材は、開口部から軸方向に離隔されている凹部を含み、取付け機能は、凹部内、または少なくともその近傍内で外側部材と接触する。取付け機能は、たとえば凹部の中に延びる。この実施形態によれば、別の要素へのキャップアセンブリまたは薬物送達デバイスの固定または取付けが容易になる。特に、取付け機能と凹部の接触、好ましくは機械的接触は、取付け機能と外側部材の間の摩擦を増大させ、それによってキャップアセンブリと別の要素の取付けまたは固定の確実性を向上させる。言い換えると、キャップアセンブリおよび/または薬物送達デバイスは、別の要素にいっそう確実に固定または取り付けられる。
【0016】
一実施形態では、固定要素は案内要素を含み、外側部材は対応案内機能を含み、案内要素および対応案内機能は、外側部材に対する固定要素の半径方向の動きを防止するために協働するように構成される。この実施形態によって、固定要素が、特に半径方向の動きにより、キャップアセンブリの残りの部材から取り外されることが防止される。対応案内機能は案内スロットである。
【0017】
一実施形態では、案内要素はT字形区間を含む。T字形区間によって、特に、外側部材に対する固定要素の半径方向の動きを防止する対策がもたらされる。
【0018】
一実施形態では、案内要素は、固定部分または本体、受け部分および案内部分を含み、受け部分は、好ましくは案内部分を介して固定部分に連結される。受け部分は、上記のT字形区間の「T」の水平の一画すなわち横棒を構成し、案内部分は、前記「T」の垂直の一画を構成する。
【0019】
一実施形態では、開口部は、対応案内機能を画成するように構成される。この実施形態の利点として、対応案内機能および開口部は、単一プロセスステップで、たとえば外側部材の製作中に確立される。
【0020】
一実施形態では、開口部は、案内要素の受け部分を受けるために、受け部分が外側部材の内側に配置されるように構成され、対応案内機能は、案内要素の案内部分を受けるために、案内部分が対応案内機能の内側に配置されるように構成される。それによって、特に、受け部分は外側部材の内側に保持され、それにより、外側部材に対する上記の固定要素の半径方向の動きを確実に防止することができる。それによって、受け部分もまた、好ましくは、内側部材の内部に配置される。組立ての際、案内部分は、好ましくは、キャップアセンブリの外側から外側部材の対応案内機能を通って延びる。それによって、案内部分は、たとえば固定部分から逸れた方を向く外側部材の内側に配置される。受け部分はさらに、適切には、案内部分よりも広く構成される。
【0021】
一実施形態では、外側部材は金属部材である。この実施形態によって、外側部材はより丈夫に、または長持ちするように具現化される。さらに、設計の面で、金属製外側部材は有利であり、かつ/または望ましい。
【0022】
一実施形態では、内側部材はプラスチック部材である。それによって、内側部材は、費用効率の高い、たとえば射出成形によって製造することができる。
【0023】
一実施形態では、キャップアセンブリは近位端に開口部を有する。外側部材は近位区間、および近位区間の内面に位置する空洞を有する。内側部材は、変形可能領域およびキャップスナップ手段を含む近位区間を有し、内側部材の変形可能領域は、外側部材の空洞の中に変形可能である。この実施形態によれば、薬物送達デバイスの別の構成要素へのキャップアセンブリの組立てが容易になる。特に、空洞は、キャップアセンブリが上記の薬物送達デバイスの構成要素に組み立てられる、または取り付けられるときに、内側部材の近位区間のたわみを受ける空間を提供する。
【0024】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、好ましくは少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0025】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0026】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0027】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0028】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0029】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0030】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0031】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0032】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0033】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0034】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0035】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0036】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0037】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0038】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0039】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0040】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0041】
異なる態様または実施形態と併せて以上および以下に本明細書で説明される特徴はまた、他の態様および実施形態にも当てはまる。本開示の主題のさらなる特徴および有利な実施形態は、図と併せた例示的な実施形態についての以下の説明から明らかになろう。