特許第6441355号(P6441355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441355
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】骨の標的化穿孔のための照準装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/17 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   A61B17/17
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-538665(P2016-538665)
(86)(22)【出願日】2014年11月24日
(65)【公表番号】特表2016-539737(P2016-539737A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】US2014067102
(87)【国際公開番号】WO2015088759
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月17日
(31)【優先権主張番号】61/914,563
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/103,338
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】アエビ・ディス
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−015735(JP,A)
【文献】 特開2005−334446(JP,A)
【文献】 特開2004−105481(JP,A)
【文献】 米国特許第08187281(US,B2)
【文献】 特表2013−524945(JP,A)
【文献】 特表2010−510032(JP,A)
【文献】 特表2009−530035(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0088767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/17
A61B 17/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面(16)及び反対側の第2の表面(17)を備える、骨の中に孔を標的化穿孔するための照準装置(1)であって、
少なくとも1つのスロット孔(10)が、前記第1の表面(16)から前記第2の表面(17)まで前記照準装置(1)を通って延び、前記少なくとも1つのスロット孔(10)は、スリーブ(3)を前記スロット孔(10)の縦方向延伸部分に対して異なる場所でかつ異なる角度で、前記スロット孔(10)の縦方向延伸部分の中に受け取るように構成されており、前記角度は前記縦方向延伸部分の中で増加又は減少し、
前記スロット孔(10)は、前記スロット孔(10)の中に受け取られたスリーブ(3)が前記異なる場所で少なくとも1つの所定の角度で固定されることを可能にする構造(34,35)を有する内面を有し、
前記構造(34,35)は、前記所定の角度の方向に延びる溝又はリブを備え、
前記少なくとも1つのスロット孔(10)は、2つの相互に重なり合ったスロット孔を備え、前記2つの相互に重なり合ったスロット孔は、相互に平行に延びており、かつ異なる方向にそれらの縦方向延伸部分に対して横方向に傾斜されている、照準装置。
【請求項2】
前記溝又はリブは、前記第1の表面(16)又は前記第2の表面(7)の側において前記照準装置(1)からある距離に位置する共通点と位置合わせされている、請求項に記載の照準装置。
【請求項3】
前記異なる角度は、相互に対して最大で15°ずつ変化する、請求項1又は2に記載の照準装置。
【請求項4】
前記スロット孔(10)を含む照準装置(1)、又は少なくとも前記スロット孔(10)は、前記第1の表面(16)と前記第2の表面(17)との間に延びている平面に対してミラー対称に形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の照準装置。
【請求項5】
前記スロット孔(10)は、前記第1の表面(16)及び前記第2の表面(17)に垂直な平面に砂時計様断面を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の照準装置。
【請求項6】
前記照準装置(1)は、前記スロット孔(10)が中に配列されている第1の細長い部分(11)と、複数の貫通孔(12)が中に配列されている第2の細長い部分(13)と、を備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の照準装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の細長い部分(11,13)は、並んで延び、近位端部(37,19)と遠位端部(36,18)とをそれぞれ有し、前記近位端部(37,19)は相互接続されている、請求項に記載の照準装置。
【請求項8】
前記第1の細長い部分(11)は、直線に延びている、請求項又はに記載の照準装置。
【請求項9】
前記第2の細長い部分(13)は、弧状に延びている、請求項のいずれか一項に記載の照準装置。
【請求項10】
前記スロット孔(10)と前記複数の貫通孔(12)との間に、孔軸を有する少なくとも1つの更なる貫通孔(14)を備え、前記更なる貫通孔は、前記照準装置(1)の第1の表面(16)及び前記第2の表面17)に対して斜めに前記照準装置(1)を通って延びている、請求項のいずれか一項に記載の照準装置。
【請求項11】
前記照準装置(1)は、ヒトの近位大腿骨用の骨板(5)を係合するように寸法決めされている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の照準装置。
【請求項12】
照準装置(1)を骨板(5)に対して設置するための設置装置(2;2’)であって、
基部(20;20’)であって、表面が骨板(5)に明白に隣接するように形成されている第1の面(23;23’)と、前記照準装置(1)が上に配列可能である、反対側の第2の面(24;24’)と、を有する、基部(20;20’)と、
前記第1の面(23;23’)から第2の面(24;24’)まで前記基部(20;20’)を貫通するガイド孔(22;22’)であって、スロット孔として形成されており、スリーブ(3)を異なる角度で受け取るように構成されている、ガイド孔と、
を備え
前記ガイド孔(22;22’)は、前記基部(20;20’)の前記第1の面(23;23’)の方向に先細りになっている、設置装置。
【請求項13】
前記ガイド孔(22;22’)は、少なくとも1つの平面の内壁を有する、請求項12に記載の設置装置。
【請求項14】
前記第2の面(24;24’)の上に前記基部(20;20’)から離れる方に延びる脚(21;21’)を備え、照準装置継手(25;25’)が前記脚(21,21’)の上に形成されている、請求項12又は13に記載の設置装置。
【請求項15】
前記第1の面(23;23’)の上に前記基部(20;20’)から突き出て、前記基部(20;20’)に対して回転可能であることによって前記設置装置(2;2’)を骨板(5)に締着する締着要素(26;26’)を備える、請求項1214のいずれか一項に記載の設置装置。
【請求項16】
骨の中に孔を穿孔するためのシステムであって、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の照準装置と、
前記照準装置(1)を骨板(5)に対して設置するための設置装置(2;2’)であって、
請求項12〜15のいずれか一項に記載の設置装置と、を備える、システム。
【請求項17】
スロット付きスリーブ(3)を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記スロット付きスリーブ(3)は、前記照準装置(1)の前記スロット孔(10)及び前記設置装置(2;2’)のガイド孔(22;22’)を通って延びてそれらを係合するように適合されており、前記スロット付きスリーブ(3)は、前記照準装置(1)の前記スロット孔(10)の前記縦方向延伸部分及び前記設置装置(2;2’)に対して異なる角度をとることができる、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記スロット付きスリーブ(3)の内径(31)に対応する外径を有するドリルスリーブ(4)を備え、前記ドリルスリーブ(4)は、前記スロット付きスリーブ(3)の中に導入可能である、請求項17又は18に記載のシステム。
【請求項20】
前記照準装置(1)の前記スロット孔(10)の前記縦方向延伸部分に対する前記スロット付きスリーブ(3)の角度は、前記スロット付きスリーブ(3)が半径方向に圧縮されるときに可変であり、前記ドリルスリーブ(4)が前記外径を伴って前記スロット付きスリーブ(3)の前記内径(31)の中に導入されているときに固定されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記設置装置(2;2’)は照準装置継手(25;25’)を有し、前記照準装置(1)は設置装置継手(15)を有し、これらの継手は、相互に相補的な表面を有しており、前記設置装置継手(15)は、継手軸を有し、前記継手軸を通る平面に対してミラー対称でないことにより、前記照準装置(1)は、前記照準装置(1)の前記第1の表面(16)及び前記第2の表面17)の側から前記設置装置(2;2’)における所定の向きにそれぞれ固定可能である、請求項1620のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記設置装置(2)に対してミラー反転した設置装置(2’)を備えることにより、前記照準装置(1)を、前記設置装置(2)によって患者の左の近位大腿骨用の骨板(5)に締着することと、前記ミラー反転した設置装置(2’)によって患者の右の近位大腿骨用の骨板(5)に締着することとを可能にする、請求項1621のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用器具の分野に関する。特に、本発明は、骨の中に標的化穿孔するための照準装置に関する。本発明は、照準装置を骨板に対して設置するための設置装置、及び照準装置と設置装置とを備える、骨の中に穿孔するためのシステム、特に、左右の大腿骨用の骨板との組み合わせにおけるものに更に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折は、例えば、骨ネジ、ピンなどの好適な締着要素によって骨に固定された骨板の固定によって安定化されることが多い。孔は直下の骨の中に穿孔されることにより、骨ネジ、ピン及び別のインプラントのような固定要素の挿入を容易にすることが多い。骨片相互の及び骨板の骨への確実な固定を保証するためには、固定要素が骨の中に正確に設置されなければならない。特に、固定要素が骨の中に挿入される角度は、非常に重要である。この理由から、照準装置が、これらの孔の穿孔をより正確に標的化するために用いられてきた。かかる照準装置は、望ましい穿孔経路に沿ってドリルスリーブを位置合わせする穿孔テンプレートとして機能し得る。照準装置は、例えば、ドリルスリーブが中へと導入されることができる貫通孔を備え、そのとき、穿孔器具が、ネジ孔を標的化穿孔するためにドリルスリーブを通して誘導される。ドリルスリーブは、照準装置の貫通孔の向きを介して骨板の孔と位置合わせされている。
【0003】
本発明は、骨の中に孔を標的化穿孔するための改善された照準装置、及び、照準装置を骨板に対して設置するための対応する設置装置を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によると、少なくとも1つのスロット孔が、骨板及び照準装置が上に設置される骨に面する第1の表面と、その骨から離れる方に面する反対側の第2の表面との間で照準装置を通って延びている。スロット孔は、その縦方向延伸部分に沿った異なる場所で縦方向延伸部分に対する異なる角度で、スリーブをその中に受け取るように構成されている。傾斜角度は、縦方向延伸部分に沿って増加又は減少し得る。1つの例示的な実施形態では、スロット孔は、相互に対向する実質的に平行な表面を有する。
【0005】
照準装置にスロット孔を設けることによって、スロット孔を通して挿入されたスリーブが照準装置を通って、より正確には、スロット孔の縦方向延伸部分を通って延びている状態の角度を変化させることが可能である。スリーブは、スロット孔の中にしっかりと固定されてはいないが、スロット孔の縦方向延伸部分に沿って移動させられることにより、スロット孔の縦方向延伸部分に沿って角度を増加又は減少することによって、傾斜角度を調整することができる。言い換えると、スロット孔の中に受け取られているスリーブの角度は、スリーブをスロット孔の縦方向延伸部分に沿って移動させることによって、増加され得、スリーブを反対方向に移動させることによって減少され得る。好ましくは、角度は±15°ずつ増加又は減少され得る。これにより、ユーザが、処置の間に、固定要素が骨の中に挿入される状態での望ましい角度を選ぶことが可能になる。
【0006】
例示的な実施形態によると、スロット孔の内面は位置合わせ構造を含み、位置合わせ構造は、スロット孔の中に受け取られたスリーブを様々な位置のうちのいずれかに一時的に固定し、それらの位置のそれぞれは、孔がそれに沿って穿孔され得る所定の軸に対応する。軸のそれぞれが異なる所定の角度でスロット孔を通過することにより、ユーザは、骨固定要素の望ましい挿入経路に対応する所定の角度のうちから1つを選択し得る。ガイドスリーブは、次に、直下の骨の中への信頼性の高い標的化穿孔を可能にするために選ばれた位置に固定され得る。
【0007】
例示的な実施形態によると、位置合わせ構造は、スロット孔の側面に形成された一連の溝を備え、一連の溝のそれぞれは、所定の角度の1つに対応する軸に沿って延びている。代替として、位置合わせ構造は、スロット孔の中に延びている一連のリブを備え得、一連のリブのそれぞれは、所定の角度のうちの1つに対応する軸に沿って延びている。当業者であれば、位置合わせ構造は、溝とリブの任意の組み合わせ、又は、スロット孔を通して挿入されたガイドスリーブをそれに対する望ましい角度で維持するように動作可能な任意の別の構造を備え得ることもまた理解するであろう。位置合わせ構造の個々の特徴とスロット孔を通る望ましい挿入角度との間の対応は、スロット孔の中に導入されたスリーブの特に正確な固定を提供する。以下で更に詳しく述べるように、スリーブは、スリーブが所定の角度のうちの望ましい1つの角度に到達するまでの、スロット孔を通るスリーブの動きを可能にするラチェットのような機構を介して位置合わせ構造を有利に係合する。ラチェットのような機構は、スリーブを選択された所定の角度で一時的に固定し、その後、スリーブは、以下で述べるような位置によりしっかりと固定され得る。位置合わせ構造の個々の特徴のそれぞれは、好ましくは、孔がそれに沿って穿孔され得る軸のうちの1つに平行な直線に沿って延びている。異なる特徴又は溝、リブ及び別の特徴の任意の組み合わせが、スロット孔の内部において所定の角度のうちの任意の望ましい1つでスリーブを固定することを可能にする限り、このようなものを含む代替の位置合わせ構造が、スロット孔の内面に提供され得ることを理解されたい。例えば、かかる構造は、球形突起物、不定の突起又は陥凹を含み得る。1つの例示的な実施形態では、位置合わせ構造のかかるこれらの特徴の形状は、スリーブの外面の形状に対応する。
【0008】
1つの例示的な実施形態によると、位置合わせ構造の軸は、骨に面した表面の側において、照準装置の骨に面した表面から選択された距離にある共通点において交差する。好ましくは、共通点は直下の骨の表面の近傍にある。特に、共通点は、対応する骨板の貫通孔の中に位置し得る。この共通点が、スロット孔の中に受け取られたスリーブがその周りを枢動され得る中心を形成することにより、照準装置に対するスリーブの角度、したがって、骨の中への固定要素の導入角度を変化させる。スリーブが共通点の周りを枢動させられる間に、スリーブは、スロット孔の縦方向延伸部分に沿って移動させられ、それと共に、スリーブとスロット孔の縦方向延伸部分との間の角度は増加又は減少する。
【0009】
1つの例示的な実施形態によると、照準装置は、ミラー対称に(例えば、照準装置の第1の表面と第2の表面とに平行で、その間にある照準装置を通って延びている中央面について対称に)形成される。特に、照準装置全体は、好ましくは、第1及び第2の表面に平行に延びており、第1の表面と第2の表面との間で照準装置を2つのミラー反転した半分に分ける中央面に対してミラー対称に形成され得る。別の例示的な実施形態では、スロット孔だけが、ミラー対称に形成され得る。ミラー対称の構成によって、患者の右半身及び左半身の両方に対して全く同一の照準装置を使用することが可能である。例えば、単一の照準装置は、患者の右の近位大腿骨用の骨板と共に使用され得、次に、左の近位大腿骨での使用のために180度回転させられ得る。
【0010】
1つの例示的な実施形態によると、スロット孔は、第1及び第2の表面に垂直で、かつスロット孔の縦方向延伸部分に対する横方向の平面において砂時計様又は腰のくびれた断面を有する。先に述べたように、スロット孔は対称に形成され得る。砂時計様腰のくびれた断面は、スリーブがスロット孔の横方向に傾斜した状態でスロット孔の中に導入されることを可能にする。例えば、スリーブは、スリーブがスロット孔の内面の一部分を係合するように、照準装置の相互に対向する表面から斜めにスロット孔の中に導入され得る。例示的な実施形態では、スリーブは、スリーブの周囲のうちの半分以下の周りに延びている位置合わせ構造の1つ以上の表面を係合する。スリーブは、例えば、スロット孔の内面の上側領域のようなスロット孔の片側だけ、及びスロット孔の反対側の面においてはスロット孔の内面の下側領域とだけ係合し得る。このように、構造は、スロット孔の内面に、照準装置の横方向に逆転した適用のための2つの相互に独立した領域を備え得る。2つの相互に独立した領域は、スロット孔の内面の不連続部分によって形成され得、第1の領域は、照準装置の第1の表面から照準装置の中央面に向かって延びており、第2の領域は、照準装置の第2の表面から中央面に向かって延びている。
【0011】
上記の砂時計様断面を有するスロット孔は、1つの例示的な実施形態によると、相互に平行に延びており、かつ異なる方向にそれらの縦方向延伸部分に対する横方向に傾斜された2つの相互に重なり合ったスロット孔によって形成され得る。2つの相互に重なり合ったスロット孔は、第1の表面と第2の表面との間に延びている平面に対してミラー対称に(例えば中央面について対称に)形成され得る。これにより、スリーブを照準装置の両側からそれぞれのスロット孔に導入できるので、例えば左の大腿骨での使用、及び代替として右の大腿骨での使用に対する、照準装置の横方向に逆転した使用が可能である。
【0012】
更なる例示的な実施形態によると、照準装置は、スロット孔がその中に配列されている第1の細長い部分と、複数の貫通孔がその中に配列されている第2の細長い部分と、を有する。複数の貫通孔は、実質的に円筒状であり、照準装置の縦軸に対して垂直に、照準装置の第1の表面から第2の表面まで照準装置を通って延びている。貫通孔は相互に重なり得ることを当業者であれば理解するであろう。
【0013】
1つの例示的な実施形態では、第1の細長い部分と第2の細長い部分とは並んで延びている。照準装置の2つの細長い部分のそれぞれは、それぞれの近位端部と遠位端部との間に延びている状態にあり得、それと共に、第1及び第2の細長い部分の近位端部は相互接続されている。遠位端部は、自由な状態(すなわち、相互に接続されていない状態)か、同じように相互接続された状態にあり得る。第1の細長い部分と第2の細長い部分とは、また、全長の全体又は任意の一部分に沿って相互接続した状態で並んで配列され得ることを理解されたい。1つの例示的な実施形態では、スロット孔を有する第1の細長い部分の長さは、複数の貫通孔を含む第2の細長い部分よりも短い。別の例示的な実施形態では、第1の部分と第2の部分とは、長さが等しくてもよく、又は第2の部分が第1の部分よりも長くてもよい。スロット孔は、第1の細長い部分の全長を実質的に占め得る。複数の貫通孔は、第2の細長い部分の全長に実質的に沿って分布し得る。1つの例示的な実施形態では、貫通孔は、第2の細長い部分に沿って規則的な間隔で分布し得る。
【0014】
1つの例示的な実施形態では、第1の細長い部分は、実質的に直線であるが、第2の細長い部分は、弧のような曲線に沿って延びている。曲線形状は、例えば、ヒト大腿骨治療用の骨板のような、照準装置がそれと位置合わせされているべき骨板の曲線に対応し得る。特に、貫通孔は、骨板の貫通孔の配列に対応するように配列され得ることを理解されたい。
【0015】
更なる例示的な実施形態によると、照準装置は、スロット孔と複数の貫通孔との間の照準装置の一部分を通って延びている少なくとも1つの更なる貫通孔を更に含む。少なくとも1つの更なる貫通孔は、照準装置の第1及び第2の表面に対して斜めに照準装置を通って延びている孔軸に沿って延びている。特に、照準装置がヒトの近位大腿骨用の骨板と共に使用することを意図される場合には、少なくとも1つの更なる貫通孔が照準装置の近位部分に配列されることにより、骨ネジを大腿骨頚部の中に誘導し得るか、又は、該当する場合には、プロテーゼ周囲骨ネジを誘導し得る。
【0016】
本発明の更なる態様によると、設置装置が、照準装置を骨板に対して設置するために提供される。設置装置の基部は、第1の面及び反対側の第2の面を有する。第1の面の表面は、骨板に隣接されるべき形状にされ、この目的のためには、非平面であるか、湾曲しているか、隆起しているか、又は起伏している状態であり得ることを当業者であれば理解するであろう。反対側の第2の面、すなわち、骨から離れる方に面している基部の面において、照準装置は、そこに連結され得る。基部は、スロット孔として形成された、第1の面から第2の面までそれを通って延びており、スリーブ、すなわち、照準装置のスロット孔を通して挿入されたスリーブを異なる角度で受け取るように構成されたガイド孔を含む。用語「スロット孔」は、本明細書において用いられるとき、その横方向延伸部分よりも大きい縦方向延伸部分を有する細長い孔を指す。言い換えると、ガイド孔は、円形断面を有さず、円筒状ではない。
【0017】
例示的な実施形態によると、ガイド孔は、骨板に面している基部の第1の面の方向に先細りになる。ガイド孔は、例えば、砂時計形状であり得る。この形状によって、ガイド孔の中に導入されたスリーブは、例えば、ガイド孔の内部で枢動させられることにより、設置装置に対する望ましい角度で設置される。
【0018】
1つの例示的な実施形態によると、設置装置の基部にあるガイド孔は、少なくとも1つの平面内壁を有する。好ましくは、ガイド孔は、相互に平行な2つの相互に対向する平面内壁を有する。ガイド孔の中に受け取られたスリーブは、例えば、ドリル用又はドリルスリーブ用のガイドスリーブとして役立つことができるが、このように、画定された平面において1つの平面内壁又は2つの平面内壁に沿ってガイド孔を通して誘導され得る。照準装置のスロット孔の縦方向延伸部分は、また、設置装置に接続されているとき、この平面において延びていてもよい。
【0019】
1つの例示的な実施形態によると、設置装置は、第2の面において基部から離れる方に延びている脚を含む。照準装置継手は、脚に、好ましくは、その自由端に形成されている。脚の長さは、照準装置と設置装置との間の距離に対応し、照準装置に対する特定の望ましい角度でのガイドスリーブの位置合わせを容易にする。
【0020】
更なる例示的な実施形態は、第1の面において設置装置の基部から突き出ている締着要素を含む。締着要素は、設置装置を骨板に締着するために、基部に対して回転可能である。締着要素は、例えば、刻み付き頭ネジのようなネジであり得るが、骨板の対応ネジ付き孔の中にねじ込まれ得る。しかし、例えば、バイオネットロックなどのような他の締着要素が提供されてもよい。1つの例示的な実施形態では、設置装置は、骨板を骨に固定した後に設置装置が取り除かれ得るように、骨板に解放可能に結合可能であり得る。
【0021】
本発明の更なる態様は、先に述べたような照準装置と設置装置とを有する、骨の中に孔を穿孔するためのシステムを提供する。例示的な実施形態に従うシステムは、好ましくは、円筒状の外周を有する上記のスリーブを備える。円筒状スリーブは、ドリル用、又は別の工具用、例えばドリルスリーブ用のガイドスリーブとして役立つ。スリーブは、スロット孔及びガイド孔を係合するために、照準装置のスロット孔及び設置装置のガイド孔を通って延びるように適合されている。スリーブは、照準装置のスロット孔の縦方向延伸部分に対して、及び、設置装置に対して様々な所定の角度のうちの任意の角度で、スロット孔の内部に設置され得る。1つの例示的な実施形態では、スリーブがスロット付きスリーブであってもよく、例えば、スリーブがスリーブの縦方向の少なくとも1つのスロットを有し、スロットが、好ましくは、スリーブの縦軸に実質的に平行に延びているー、その結果、スリーブは、半径方向に圧縮可能である。
【0022】
更なる例示的な実施形態によると、システムは、例えばドリル又は別の道具を誘導するために役立つドリルスリーブを更に備え、ドリルスリーブがスロット付きスリーブの内径に対応する外径を有することにより、ドリルスリーブは、スロット付きスリーブの中に挿入され得る。照準装置のスロット孔の縦方向延伸部分に対するスロット付きスリーブの角度は、スロット付きスリーブが半径方向に圧縮されているとき可変であり、ドリルスリーブがスロット付きスリーブの中に挿入されているとき固定されている。スロット付きスリーブが圧縮された構成にないとき、ドリルスリーブの外径がスロット付きスリーブの内径に一致するので、ドリルスリーブのスロット付きスリーブの中への導入は、スロット付きスリーブが圧縮されることを防いで、スロット付きスリーブをスロット孔の内部の望ましい位置に固定する。この目的のために、スロット付きスリーブの外径は、それに応じてスロット孔に適合されている。スロット孔の縦方向延伸部分に沿ってスロット孔の内部でスロット付きスリーブを移動させると、ラチェット動作がスロット孔の内面の位置合わせ構造によって実行され得る。ドリルスリーブがスロット付きガイドスリーブの中に導入されるとすぐに、ガイドスリーブの半径方向の圧縮が、ガイドスリーブがスロット孔の内面の位置合わせ構造を係合するまで防止されることにより、スロット付きガイドスリーブは、所定の角度でスロット孔の中に固定されている。スロット孔の中でのスロット付きスリーブの確実な固定は、スロット孔の内面の位置合わせ構造によって、特に、その中に形成された溝及び/又はリブによって、予め定められた角度位置を伴って、なんら更なる締着要素によらずこのように簡単な方法で生み出され得る。
【0023】
更なる例示的な実施形態によると、設置装置は照準装置継手を有し、照準装置は設置装置継手を含み、これらの継手は相互に相補的な表面を有する。照準装置継手及び設置装置継手は、誤接続を防ぐために、照準装置を設置装置にただ1つの向きにだけ取り付けることを可能にするように構成され得る。例えば、設置装置継手は、継手軸を有し得、それと共に、設置装置継手及び照準装置継手のうちの少なくとも1つが継手軸を通る平面に対して非対称であることにより、患者の左半身及び右半身のうちの1つに対してシステムを使用する際に、照準装置のただ1つのそれぞれの正しい向きだけが得られることができる。しかし、同一の継手構造が、照準装置の第1及び第2の表面の側において提供されてもよく、その結果、同じ照準装置が、異なる骨板に対して、例えば、左の大腿骨及び右の大腿骨に対して対応する設置装置と共に使用され得る。
【0024】
更なる例示的な実施形態によると、システムは、相互に対してミラー反転した(例えば、相互の鏡像)の2つの設置装置を提供することにより、1つの設置装置によって、照準装置を右の近位大腿骨用の骨板に締着すること、及び、ミラー反転した設置装置によって、左の近位大腿骨用の骨板に締着することを可能にする。照準装置は、先に述べたように、好ましくはミラー対称であり、単に照準装置の向きを変える(例えば、照準装置をその縦軸の周りにおよそ180°回転させる)ことによって、それが患者の別の半身に対して用いられるときに、両方の設置装置と共に使用され得る。照準装置と2つの設置装置とは、キットで供給されて得、それらは、また、スロット付きガイドスリーブ及び1つ又は複数の異なるドリルスリーブを備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明についての前述の要旨及び例示的な実施形態についての以下の説明は、添付図面に照らせばより容易に理解可能であろう。本発明の例示的な実施形態を、添付図面を参照して以下において説明する。しかし、本願は、示された例示的な実施形態に限定されないことを理解されたい。図面は以下のとおりである。
図1】本発明の例示的な実施形態による、設置装置によって骨板に取り付けられた照準装置の斜視図である。
図2図1の照準装置の斜視図である。
図3図1の照準装置の別の斜視図を示す。
図4図1の照準装置の平面図である。
図5図1の照準装置の底面図である。
図6図1の照準装置の側面図である。
図7図1の照準装置の別の側面図である。
図8図1の設置装置の斜視図である。
図9図1の設置装置の側面図である。
図10図1の設置装置の平面図である。
図11】本発明の別の例示的な実施形態による設置装置の斜視図である。
図12図11の設置装置の側面図である。
図13図11の設置装置の平面図である。
図14a図1の照準装置の設置装置継手の第1の平面図である。
図14b図8図10の設置装置の照準装置継手の平面図である。
図15a図1の照準装置の設置装置継手の第2の平面図である。
図15b図11図13の設置装置の照準装置継手の平面図である。
図16図1の照準器具の設置装置継手の断面図である。
図17図1のスロット付きガイドスリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、以下の説明及び添付図面を参照することによって更によく理解し得、同様の要素は同じ参照符号によって参照される。例示的な実施形態は、骨の中に孔を標的化穿孔するための照準装置に関する。例示的な実施形態は、また、照準装置を骨板に対して望ましい位置に設置するための設置装置に関する。例示的な実施形態は、孔を近位大腿骨の中に標的化穿孔するための照準装置及び設置装置について述べているが、当業者であれば、本発明の照準装置及び設置装置は、任意の長骨の標的化穿孔に対して同様に使用され得ることを理解するであろう。
【0027】
図1に示すように、照準装置1は、設置装置2によって骨板5の上に取り付けられ得る。照準装置1は、設置装置2を介して所定の構成で骨板5と位置合わせされ、その結果、照準装置1は、骨板5が上に設置される骨の中に孔を標的化穿孔するために使用されることができる。円筒状ガイドスリーブ3は、照準装置1のスロット孔10の中に挿入されることにより、それを通してドリルスリーブ4を誘導し得る。照準装置1及び設置装置2に対してガイドスリーブ3、したがってドリルスリーブ4の角度は、調整され得る。例えば刻み付き頭ネジのような締着要素6が、照準装置1を設置装置2に対して固定するために用いられ得る。
【0028】
骨板5(部分的にだけ示されている)は、患者の左の近位大腿骨用の骨板であり得る。以下においてより詳細に述べるように、同じ照準装置1は、また、右の近位大腿骨用に構成された設置装置2’を用いることによって、患者の右の近位大腿骨用の骨板と共に使用され得る。骨板5は、骨板5の近位端部にある頭部分52と、そこから骨板5の遠位端部の方向に延びているシャフト部分51と、を備える。頭部分52及びシャフト部分51は、それらを通って延びている貫通孔を有し、それにより、骨板5がそれによって骨の上に取り付けられる骨ネジのような固定要素を受け取る。骨板5のシャフト部分51にある貫通孔50は、例えば、圧縮部分と可変角度のロッキング部分とを有する組み合わせ孔として形成され得る。近位頭部分52にある貫通孔は、図1においては設置装置2によって隠されている。
【0029】
図2図7に示すように、照準装置1は、例示的な実施形態では、第1の細長い部分11と第2の細長い部分13とを含む照準アームとして構成され得る。照準装置1は、第1の表面16と第2の表面17とを更に含み、表面16又は表面17のいずれかが、用途によって直下の骨に面する。第1の細長い部分11は、それを通って第1の表面16から第2の表面17まで延びているスロット孔10を含み、それにより、ドリルスリーブ4と共にガイドスリーブ3を受け取る。第2の細長い部分13は、それを通って第1の表面16から第2の表面17まで延びている複数の実質的に円筒状の貫通孔12を含む。照準装置1が骨板5に取り付けられるとき、円筒状貫通孔12は骨板5のシャフト部分51の貫通孔50と位置合わせされていることにより、貫通孔12を通して挿入されたドリルスリーブは、骨板5の貫通孔50と位置合わせしている骨の中に孔を穿孔するために用いられ得る。照準装置1は、設置装置継手15を更に含むことにより、以下において更に詳しく述べるように、照準装置1を設置装置2に接続し得る。
【0030】
ガイドスリーブの点線表示によって図1に示すように、ガイドスリーブ3は、照準装置1に対して複数の離散角度で照準装置1のスロット孔10の中に受け取られ得る。ガイドスリーブ4がスロット孔10の中に挿入されるとき、ガイドスリーブ3は、スロット孔としても形成されている設置装置2のガイド孔22(図10を参照)を通過させられ、その結果、ガイドスリーブ3はガイド孔22の内部で動かされ得る。例示的な実施形態では、ガイドスリーブ3は、大腿骨の大腿距の中に導入されるべき距ネジのための孔の標的化穿孔に用いられ得る。
【0031】
図2図5に示すように、スロット孔10は、その内面に沿って延びている位置合わせ構造34、35を介して画定され得る。位置合わせ構造34、35は、それぞれ、例えば、スロット孔10の反対側の内面に沿って形成され得る。好ましくは、位置合わせ構造34、35は、ガイドスリーブ3が位置合わせされるべき、所定の角度の方向に延びている軸に沿ってスロット孔10の中に延びている溝又はリブを備える。更なる例示的な実施形態では、位置合わせ構造34、35のそれぞれについての軸は、骨に面する表面17又は表面16の側において、照準装置1からある距離に位置する共通点で交差する。特に、共通点は、照準装置1が骨板5に取り付けられているとき、設置装置2のガイド孔22の下の骨表面の近傍又はガイド孔22の中に位置し得る。位置合わせ構造34、35の軸が共通点において交差する場合、スロット孔10に挿入されたガイドスリーブ3は、ガイドスリーブを共通点の周りで枢動させることによって、スロット孔10の縦方向延伸部分に沿って動かされ得る。位置合わせ構造34、35の軸は、しかし、共通点で交差する必要がない。位置合わせ構造34、35の軸は、スロット孔10の内面に沿ってガイドスリーブ3の望ましい方向に一致するように延びて、スロット孔10及びガイド孔22の中に受け取られる。
【0032】
ガイドスリーブ3は、スロット孔10の内面に位置合わせ構造34、35と共にラッチ機構を形成するように、寸法決め及び成形される。ガイドスリーブ3は、位置合わせ構造34、35によって画定された、照準装置1に対して所定の角度のうちの任意の角度の場所にきちんと嵌まる。図17に示すように、ガイドスリーブ3は、ガイドスリーブ3を半径方向に圧縮可能にする軸方向スロット30を含むことにより、ガイドスリーブ3は、位置合わせ構造34、35の突起の間を通るときに圧縮され得、次に、望ましい角度のうちのそれぞれに対応するスロット孔10の拡張部分の内部の場所にきちんと嵌まるように拡張することにより、ガイドスリーブ3は、スロット孔10の内部の離散位置の間を動いて、ラチェットのような方式でそこに保持される。ガイドスリーブ3の遠位端部33は、スロット孔10を通って設置装置2のガイド孔22の中に通され、その結果、スロット30は、照準装置1のスロット孔10の領域の中に設置される。外科医又は他のユーザは、次に、ガイドスリーブ3をラチェット方式でスロット孔10の内部を移動させる。ドリルスリーブ4の外径は、ガイドスリーブ3の拡張した内径に適合するように選択されており、その結果、ドリルスリーブ4がガイドスリーブ3の中に導入されているとき、ガイドスリーブ3は、もはやガイドスリーブ3が位置合わせ構造34、35の突起の間を動くように半径方向に圧縮されることができないので、望ましい場所及び角度でスロット孔10の中に固定されている。図6に示され、スケール38が示すように、ガイドスリーブ3とスロット孔10の縦方向延伸部分との間の角度は、最大で15°ずつ変化され得る。しかし、当業者であれば理解するであろうように、スロット孔10は、また、最大で20°、又は最大で25°、又は更に最大で30°のより大きい角度変化を有し得、その角度は、好ましくは、2つの照準装置表面16、17に対して垂直に延びている縦軸に対する0°から始まるが、適用可能な場合には、負の角、例えば−5°又は−10°から始まる。
【0033】
図2図7から明らかなように、照準装置1は、第1の表面16と第2の表面17との間に延びている中央面に対してミラー対称にされ得る。言い換えると、照準装置1は、中央面について対称であり、中央面は、第1の表面16と第2の表面17とに平行かつその間に延びている。このように、照準装置1は、左の近位大腿骨用の骨板と共に使用され得、同様に、単に照準装置1をその縦軸の周りに180°回転させることによって右の近位大腿骨用の骨板と共に使用され得、そして、設置装置2、2’のうちの対応する1つを用いて照準装置1を骨板に取り付ける。特に、かかる実施形態のスロット孔10は、中央面に対してミラー対称である。このように、スロット孔10が2つの重畳したスロット孔によって形成されることにより、ガイドスリーブ3は、照準装置1を通して誘導されることができ、第1の表面16及び反対側の表面17から設置装置2、2’の対応するガイド孔22、22’の中に導入され得る。
【0034】
図1図5を参照すると、スロット孔10の内面の位置合わせ構造34、35は、2つの相互に独立した領域34a、34b及び35a、35bを備える。このことは、実質的に領域34a、34bだけが照準装置1の使用中に1つの側からガイドスリーブ3を係合し、一方、ガイドスリーブ3は、照準装置1のミラー反転した使用においては、実質的に位置合わせ構造34、35の領域35a、35bとだけ係合されることを意味する。位置合わせ構造の領域34a、34bは、好ましくは、スロット孔10の内面の実質的に半分を占め、一方、領域34b、35bは、その他の半分を占める。言い換えると、領域34a及び34bを領域35a及び35bから分離している点は、第1の表面16及び第2の表面17のそれぞれから実質的に等距離である。領域34a、34bは、照準装置1の表面16から中央面の方向に延びる部分34aと、照準装置1の中央面から表面17まで延びる、スロット孔10の横方向延伸部分に関して反対側の側上の部分34bと、を備える。構造のこれらの2つの部分34a、34bは連続していないが、中央面について対称であることにより、スロット孔10の中に受け取られたガイドスリーブ3は、スロット孔10の1つの側の構造34の1つの部分34a、及びスロット孔10の別の側の構造の別の部分34bを係合する。同じことが、照準装置1が逆に使用されている場合に、構造35の領域35a、35bに対して当てはまる。ガイドスリーブ3が照準装置1に対して傾斜している平面内で移動可能であるので、照準装置1の横方向に逆の適用を可能にする、構造の2つの相互に独立した領域34a、34b及び35a、35bをスロット孔10の内面に提供することが可能である。形成されたスロット孔10は、したがって、照準装置1の表面16、17に垂直な平面で見ると、砂時計様断面を有し得る。
【0035】
上記のように、照準装置1は、第1の細長い部分11と第2の細長い部分13とを備える。第1の細長い部分11は、近位端部37と遠位端部36とを有する。第2の細長い部分13は、近位端部19と遠位端部18とを有する。2つの細長い部分11、13は、それらの近位端部37、19において相互接続された状態であり得る。例示的な実施形態では、遠位端部36、18は自由である、すなわち、遠位端部36、18は、相互に直に接続されていない。2つの細長い部分11、13は、照準装置1の縦軸に沿って並んで延び得、1つの例示的な実施形態では、共通平面に沿って相互に対して実質的に平行に延び得る。
【0036】
照準装置1は、それを通って第1の表面16から第2の表面17まで斜めに延びている貫通孔14を更に含み得る。貫通孔14は、第1の細長い部分11と第2の細長い部分13との近位端部37、19をそれぞれ接続する照準装置1の一部分を通って延び得る。貫通孔14は、例えば、大腿骨、特に大腿骨頚部の近位部分の内部に骨ネジを設置するための孔を標的化穿孔するためのドリルスリーブを受け取るように寸法決め及び成形され得る。
【0037】
図8図10は、図1に表すように、左の近位大腿骨用の骨板5と共に使用するように構成された設置装置2を示す。図11図13は、右の近位大腿骨用の骨板と共に使用するように構成された設置装置2’を示す。設置装置2、2’は、相互に対してミラー反転した状態、例えば、相互の鏡像であり得る。
【0038】
左の近位大腿骨用の骨板のための設置装置2は、使用中に骨板5に隣接する表面23を有する基部20を有し、それに応じて凹凸がある。言い換えると、表面23は平面ではなく、例えば、骨板5の形状にしたがって隆起しているか、湾曲しているか、又は起伏している。脚21は、基部20の反対側の面24から延びており、その端部に照準装置継手25を含む。脚21の長さは、照準装置1の骨板5からの望ましい距離に対応し、ガイドスリーブ3は、その距離を越えて延びる。設置装置2は、例えば、骨板5の対応するネジ付き孔を係合するための、表面23から突き出ているネジ26を介して骨板5に締着され得る。例えばバイオネットロックなどのような別の締着要素が、また、設置装置2を骨板に締着するために可能であることを理解されたい。
【0039】
図10に示すように、設置装置2の基部20にあるガイド孔22は、スロット孔として形成され得る。言い換えると、ガイド孔22は、円形断面を有していないが、その縦軸に沿って細長い、すなわち、ガイド孔の縦方向延伸部分は、その横方向延伸部分よりも大きい。照準装置1と関連して上記で説明したように、ガイドスリーブ3は、その遠位端部33がガイド孔22の中に導入されており、ガイド孔22の形状のためにその中で移動可能である。ガイドスリーブ3をガイド孔22の内部で動かすことによって、基部20とガイドスリーブ3との間の角度は、変化され得る。特に、ガイドスリーブ3は、第1及び第2の表面16、17を実質的に垂直に通ってスロット孔10の反対側の内面の間を延びている平面内で、ラチェットのような様式で照準装置1のスロット孔10の内部で動かされ得るので、ガイド孔22は、ガイドスリーブ3がそれに沿って移動可能な、少なくとも1つ、そして、本実施形態におけるように、好ましくは2つの平面の内壁を有する。
【0040】
同じことが、ミラー反転した設置装置2’に対して当てはまる。右の近位大腿骨用の骨板のための設置装置2’は、使用中に骨板に隣接する表面23’を有する基部20’を有し、それに応じて凹凸がある。言い換えると、表面23’は平面でなく、例えば、骨板の形状にしたがって、隆起しているか、湾曲しているか、又は起伏している。脚21’は、基部20’の反対側の面24’から延びており、その端部に照準装置継手25’を含む。脚21’の長さは、照準装置1の骨板5からの距離に対応し、ガイドスリーブ3は、その距離を越えて延びる。設置装置2’は、例えば、骨板5の対応するネジ付き孔を係合するための、表面23’から突き出ているネジ26’を介して骨板に締着される。設置装置2’を骨板に締着するためには、例えばバイオネットロックなどの他の締着要素も可能であることを理解されたい。
【0041】
図13に示すように、設置装置2’の基部20’にあるガイド孔22’は、スロット孔として形成され得、そのことは、ガイド孔22’が円形断面を有しないが、その横方向延伸部分よりも大きい縦方向延伸部分を有する細長い孔であることを意味している。照準装置1と関連して上記で説明したように、ガイドスリーブ3は、ガイド孔22’の中にその遠位端部33によって導入され、ガイド孔22’の形状のためにその中で移動可能である。ガイド孔22’の内部でガイドスリーブ3を動かすことによって、基部20’とガイドスリーブ3との間の角度は、変化され得る。特に、照準装置1のスロット孔10を通るガイドスリーブ3は、第1及び第2の表面16、17に対して実質的に垂直にスロット孔10の反対側の内面の間を延びている平面内で移動可能であるので、ガイド孔22’は、また、ガイドスリーブ3がそれに沿って移動可能な少なくとも1つの平面の内壁を有する。
【0042】
図14aは、例えば、左側構成での使用のための設置装置継手15の一部分を説明するために、照準装置1の第1の表面16を示している。図14aに示すように、照準装置1は、設置装置継手15を含み、それは、例示的な実施形態では、照準装置1の開口部の中に挿入可能な差込み40を備える。例示的な実施形態では、差込み40は金属から形成され、一方、照準装置1は、好ましくはプラスチック、例えばPEEKから形成される。しかし、差込み40は、また、それと共に一体的に形成された設置装置2の一部分を通して形成され得る。設置装置継手15は、設置装置2が望ましい向きにのみ固定可能であるように形成される。特に、このことは、照準装置1が、患者の右半身に対して意図された設置装置2’に、左半身に対して意図された向きで取り付けられることを防ぎ、その逆も同様である。好ましくは、設置装置継手15は、この目的のために、例示的な実施形態では、照準装置1の表面16、17に垂直に差込み40を通って延びる、継手軸を通る平面に対して非対称である。この目的のために、ピン45又は別の調整要素が差込み40の開口部の中に突き出ることにより、設置装置2の照準装置継手25の対応する陥凹44に係合して誤った取付けを防ぐ。照準装置1を設置装置2に対して更に正確な位置合わせのために、設置装置継手15は、ここでは照準装置継手25のピン43を係合する陥凹41を備える(図14bを参照)。照準装置継手25の面にあるネジ孔を係合する刻み付き頭ネジ6を締め付けることによって、ピン43は、陥凹41に引き入れられ、照準装置1は、正しい向きに固定されている。ピン45の軸と陥凹41の軸とは、相互に中心線を(例えば35°だけ)外して置かれ得る。ピン45は、好ましくは、照準装置1の本体を通って及び差込み40を通って突き出ており、その結果、差込み40は、照準装置1の本体に対する意図的でない回転に対して固定されている。接続継手が前述の鍵付きの位置合わせを提供する限りは、照準装置継手25の別の構成及び設置装置継手15の別の構成が可能であることを理解されたい。
【0043】
図15aは、例えば、右側構成における使用のための設置装置継手15の一部分を図示ために、照準装置1の反対側の側面17から照準装置1を示している。差込み40は、この側面に、設置装置2’の照準装置継手25’のピン43を係合する対応する陥凹42を有する(図15bを参照)。その他の点では、図14a、図14bに関連してなされた所見がしかるべく適用される。
【0044】
このように、本発明の1つの例示的な実施形態に従うと、システムは、左側用の設置装置2と、右側用のミラー反転した設置装置2’と、自身の縦軸の周りに180°回転されることによって両方の設置装置2、2’と共に利用されるようにミラー対称に(すなわち中央面について対称に)形成されている、1つだけの照準装置1と、を備える。
【0045】
好ましい実施形態が患者の左又は右の近位大腿骨に関して述べられたが、当業者であれば、発明の原理は、また、別の骨のための照準装置及び設置装置に適用され得ることを理解するであろう。例えば、前述のシステムは、また、遠位大腿骨、脛骨又は別の長骨のために利用され得る。照準装置及び設置装置の形状及び寸法は、発明の原理を損なうことなく、適用の事例にしたがって適合されることができることを理解されたい。
【0046】
様々な修正及び変更が、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の構造及び方法においてなされ得ることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、本発明の修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に含まれるものであれば、それらを包含するものとする。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 第1の表面(16)及び反対側の第2の表面(17)を備える、骨の中に孔を標的化穿孔するための照準装置(1)であって、
少なくとも1つのスロット孔(10)が、前記第1の表面(16)から前記第2の表面(17)まで前記照準装置(1)を通って延び、前記少なくとも1つのスロット孔(10)は、スリーブ(3)を前記スロット孔(10)の縦方向延伸部分に対して異なる場所でかつ異なる角度で、前記スロット孔(10)の縦方向延伸部分の中に受け取るように構成されており、前記角度は前記縦方向延伸部分の中で増加又は減少する、照準装置。
(2) 前記スロット孔(10)は、前記スロット孔(10)の中に受け取られたスリーブ(3)が前記異なる場所で少なくとも1つの所定の角度で固定されることを可能にする構造(34,35)を有する内面を有する、実施態様1に記載の照準装置。
(3) 前記構造(34,35)は、前記所定の角度の方向に延びる溝又はリブを備える、実施態様2に記載の照準装置。
(4) 前記溝又はリブは、前記第1又は第2の表面(16,17)の側において前記照準装置(1)からある距離に位置する共通点と位置合わせされている、実施態様3に記載の照準装置。
(5) 前記異なる角度は、相互に対して最大で15°ずつ変化する、実施態様1〜4のいずれかに記載の照準装置。
【0048】
(6) 前記スロット孔(10)を含む照準装置(1)、又は少なくとも前記スロット孔(10)は、前記第1の表面(16)と第2の表面(17)との間に延びている平面に対してミラー対称に形成されている、実施態様1〜5のいずれかに記載の照準装置。
(7) 前記スロット孔(10)は、前記第1の表面(16)及び第2の表面(17)に垂直な平面に砂時計様断面を有する、実施態様1〜6のいずれかに記載の照準装置。
(8) 前記少なくとも1つのスロット孔(10)は、2つの相互に重なり合ったスロット孔を備え、前記2つの相互に重なり合ったスロット孔は、相互に平行に延びており、かつ異なる方向にそれらの縦方向延伸部分に対して横方向に傾斜されている、実施態様1〜7のいずれかに記載の照準装置。
(9) 前記照準装置(1)は、前記スロット孔(10)が中に配列されている第1の細長い部分(11)と、複数の貫通孔(12)が中に配列されている第2の細長い部分(13)と、を備える、実施態様1〜8のいずれかに記載の照準装置。
(10) 前記第1及び第2の細長い部分(11,13)は、並んで延び、近位端部(37,19)と遠位端部(36,18)とをそれぞれ有し、前記近位端部(37,19)は相互接続されている、実施態様9に記載の照準装置。
【0049】
(11) 前記第1の細長い部分(11)は、直線に延びている、実施態様9又は10に記載の照準装置。
(12) 前記第2の細長い部分(13)は、弧状に延びている、実施態様9〜11のいずれかに記載の照準装置。
(13) 前記スロット孔(10)と前記複数の貫通孔(12)との間に、孔軸を有する少なくとも1つの更なる貫通孔(14)を備え、前記更なる貫通孔は、前記照準装置(1)の第1及び第2の表面(16,17)に対して斜めに前記照準装置(1)を通って延びている、実施態様9〜12のいずれかに記載の照準装置。
(14) 前記照準装置(1)は、ヒトの近位大腿骨用の骨板(5)を係合するように寸法決めされている、実施態様1〜13のいずれかに記載の照準装置。
(15) 照準装置(1)を骨板(5)に対して設置するための設置装置(2;2’)であって、
基部(20;20’)であって、表面が骨板(5)に明白に隣接する(defined adjoining)ように形成されている第1の面(23;23’)と、前記照準装置(1)が上に配列可能である、反対側の第2の面(24;24’)と、を有する、基部(20;20’)と、
前記第1の面(23;23’)から第2の面(24;24’)まで前記基部(20;20’)を貫通するガイド孔(22;22’)であって、スロット孔として形成されており、スリーブ(3)を異なる角度で受け取るように構成されている、ガイド孔と、
を備える、設置装置。
【0050】
(16) 前記ガイド孔(22;22’)は、前記基部(20;20’)の前記第1の面(23;23’)の方向に先細りになっている、実施態様15に記載の設置装置。
(17) 前記ガイド孔(22;22’)は、少なくとも1つの平面の内壁を有する、実施態様15又は16に記載の設置装置。
(18) 前記第2の面(24;24’)の上に前記基部(20;20’)から離れる方に延びる脚(21;21’)を備え、照準装置継手(25;25’)が前記脚(21,21’)の上に形成されている、実施態様15〜17のいずれかに記載の設置装置。
(19) 前記第1の面(23;23’)の上に前記基部(20;20’)から突き出て、前記基部(20;20’)に対して回転可能であることによって前記設置装置(2;2’)を骨板(5)に締着する締着要素(26;26’)を備える、実施態様15〜18のいずれかに記載の設置装置。
(20) 骨の中に孔を穿孔するためのシステムであって、
第1の表面(16)及び反対側の第2の表面(17)を備える、骨の中に孔を標的化穿孔するための照準装置(1)であって、
少なくとも1つのスロット孔(10)が、前記第1の表面(16)から前記第2の表面(17)まで前記照準装置(1)を通って延び、前記少なくとも1つのスロット孔(10)は、スリーブ(3)を前記スロット孔(10)の縦方向延伸部分に対して異なる場所でかつ異なる角度で、前記スロット孔(10)の縦方向延伸部分の中に受け取るように構成されており、前記角度は前記縦方向延伸部分の中で増加又は減少する、
好ましくは、実施態様2〜14のいずれかに記載の照準装置と、
前記照準装置(1)を骨板(5)に対して設置するための設置装置(2;2’)であって、
基部(20;20’)であって、表面が骨板(5)に明白に隣接するように形成されている第1の面(23;23’)と、前記照準装置(1)が上に配列可能である、反対側の第2の面(24;24’)と、を有する、基部(20;20’)と、
前記第1の面(23)から第2の面(24)まで前記基部(20;20’)を貫通するガイド孔(22;22’)であって、スロット孔として形成され、スリーブ(3)を異なる角度で受け取るように構成されている、ガイド孔と、を備える、
好ましくは、実施態様16〜19のいずれかに記載の設置装置と、を備える、システム。
【0051】
(21) スロット付きスリーブ(3)を備える、実施態様20に記載のシステム。
(22) 前記スロット付きスリーブ(3)は、前記照準装置(1)の前記スロット孔(10)及び前記設置装置(2;2’)のガイド孔(22;22’)を通って延びてそれらを係合するように適合されており、前記スロット付きスリーブ(3)は、前記照準装置(1)の前記スロット孔(10)の前記縦方向延伸部分及び前記設置装置(2;2’)に対して異なる角度をとることができる、実施態様21に記載のシステム。
(23) 前記スロット付きスリーブ(3)の内径(31)に対応する外径を有するドリルスリーブ(4)を備え、前記ドリルスリーブ(4)は、前記スロット付きスリーブ(3)の中に導入可能である、実施態様21又は22に記載のシステム。
(24) 前記照準装置(1)の前記スロット孔(10)の前記縦方向延伸部分に対する前記スロット付きスリーブ(3)の角度は、前記スロット付きスリーブ(3)が半径方向に圧縮されるときに可変であり、前記ドリルスリーブ(4)が前記外径を伴って前記スロット付きスリーブ(3)の前記内径(31)の中に導入されているときに固定されている、実施態様23に記載のシステム。
(25) 前記設置装置(2;2’)は照準装置継手(25;25’)を有し、前記照準装置(1)は設置装置継手(15)を有し、これらの継手は、相互に相補的な表面を有しており、前記設置装置継手(15)は、継手軸を有し、前記継手軸を通る平面に対してミラー対称でないことにより、前記照準装置(1)は、前記照準装置(1)の前記第1及び第2の表面(16,17)の側から前記設置装置(2;2’)における所定の向きにそれぞれ固定可能である、実施態様20〜24のいずれかに記載のシステム。
【0052】
(26) 前記設置装置(2)に対してミラー反転した設置装置(2’)を備えることにより、前記照準装置(1)を、前記設置装置(2)によって患者の左の近位大腿骨用の骨板(5)に締着することと、前記ミラー反転した設置装置(2’)によって患者の右の近位大腿骨用の骨板(5)に締着することとを可能にする、実施態様20〜25のいずれかに記載のシステム。
図1
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図15b
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